JP4783486B2 - 光学用ポリカーボネート樹脂成形材料および光ディスク基板 - Google Patents

光学用ポリカーボネート樹脂成形材料および光ディスク基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形材料を用いてDVD基板を射出成形する際に、スタンパー上の付着物量を低減し、DVD基板上の白点の発生数を低減させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光の照射により情報の記録・再生をおこなう光ディスクとしては、デジタルオーディオディスク(いわゆるコンパクトディスク)、光学式ビデオディスク(いわゆるレーザディスク)、各種追記型ディスク、光磁気ディスク、相変化ディスク等が実用化されている。
【0003】
このうち、コンパクトディスクやレーザディスクは、再生専用(Read Only Memory:ROM)型の光ディスクである。これらの光ディスクは、透明基板上に、情報信号に対応したピットが凹凸形状で形成され、この上にAl反射層が40nm以上の厚さで製膜されている。このような光ディスクでは、ピットで生じる光干渉による反射率変化を検出することで情報信号が再生される。
【0004】
一方、追記型光ディスクは、ユーザによって任意情報の書き込みがおこなえるR(Recordable)型の光ディスクであり、光磁気ディスクおよび相変化型ディスクは、繰り返し任意情報の書き込みがおこなえるRAM(Random Acceess Memory)型の光ディスクである。
【0005】
すなわち、R型光ディスクは、透明基板上に、レーザ光の照射によって不可逆的に光学特性が変化したり凹凸形状が形成される追記型の記録層にて構成される。この記録層としては、例えばレーザ光の照射による加熱で分解し、その光学定数が変化するとともに、体積変化によって基板の変形を生じさせるシアニン系、フタロシアニン系、アゾ系の有機色素等が用いられる。
【0006】
光磁気ディスクは、ユーザによって情報の書き込み・消去が繰り返しおこなうことができる、書き換え可能型の光ディスクであり、透明基板上に、Tb−Fe−Co非晶質合金薄膜などの磁気光学効果(例えばカー効果)を有する垂直磁化膜が形成されて構成される。この光磁気ディスクでは、情報信号に対応して垂直磁化膜の微小領域を上向きあるいは下向きに磁化することにより記録ピットが形成される。そして、反射光での直線偏光の回転角θk(カー回転角)が垂直磁化膜の磁化の向きによって異なることを利用して情報信号が再生される。
【0007】
相変化ディスクは、光磁気ディスク同様に書き換え可能型のディスクであり、例えば初期状態で結晶状態を呈し、レーザ光が照射されることによりアモルファス状態に相変化する、Ge−Sb−Te相変化材料等が用いられる。この記録層では、情報信号に対応して微小領域を相変化させることにより記録ピットが形成され、ピットに相当するアモルファス部分とそれ以外の結晶領域との反射率変化を検出することで情報信号が再生される。
【0008】
なお、このような光磁気ディスクや相変化ディスクでは、記録層の酸化防止や多重干渉による信号変調度の増大を目的として、記録層の両側を透明な誘電体層で挟み込み、さらにその上にAl反射層を積層した4層構造がとられる場合が多い。なお、誘電体層としては、窒化シリコン膜、Zn−SiO2混成膜などが用いられる。
【0009】
ところで、最近、このような光ディスクをデジタル映像記録用として用いるための検討が盛んにおこなわれており、そのような光ディスクとしてデジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)が開発されるに至っている。
【0010】
このDVDは、CDと同じ120mm径としながら、映画一本分に相当する映像情報を記録し、現行テレビ並みの画質で再生できるようになされたものである。
【0011】
ここで、このような映像情報を光ディスクに記録するには、例えばCDの6〜8倍の記録容量が必要になる。このため、DVDでは、レーザ波長をCDでの780nmに対して635〜650nmと短波長化するとともに対物レンズの開口数(NA)をCDでの0.45に対して、0.52または0.6に増大させることによりトラックピッチやピットの最短記録マーク長を縮め、記録密度を上げるようにしている。
【0012】
このうち対物レンズの開口数(NA)の増大は、ディスク基板のそりに対する許容量を小さくすることになる。このため、DVDでは、基板の厚さをCDの1.2mmに対して、0.6mmと薄くすることにより、レーザ光がディスク基板を通過する距離を短くし、反りに対する許容量を補償する様にしている(日経エレクトロニクス 1995年2月27日号 No.630)。そして、さらに基板を薄くすることによるディスク強度の低下を補うため、特開平6−274940号公報で記載されるように、基板上に形成された記録層の上に、さらに基板を貼り合わせる、いわゆる貼り合わせ構造が採られている。なお、貼り合わせ光ディスクの記録層としては、上述の単板構成で用いられるROM型の記録層、R型の記録層、RAM型の記録層のいずれもが採用できる。
【0013】
さらに、貼り合わせ光ディスクには、その片側の面のみを利用する片面貼り合わせ光ディスクと、両側の面を利用する両面型貼り合わせ光ディスクとがある。
【0014】
以上のような光学式ディスク基板には、成形性、強度、光線透過率および耐湿性等に優れているポリカーボネート樹脂が多く使用されている。
【0015】
しかし、基板の連続成形を続けていると、転写性、光学、機械特性など基板の特性が悪化するだけでなくゴミが基板に付着すると言う問題が発生する。
この原因として、ポリカーボネートより発生した揮発分が金型やスタンパー上に付着し、ガス抜けの阻害などを引き起こし、これら基板の光学および機械特性の悪化を招いたり、付着物が剥離しスタンパー上に落下、基板に転写されていることが判明している。
【0016】
このため、原料中の低分子量ポリカーボネート化合物が原因物質として、該物質の低減を図る手法が取られている。例えば特開平9−208684に記載されているようにポリカーボネート中に含まれる分子量1,000以下の低分子量ポリカーボネート化合物量を低減することにより付着物を防止することが記載されている。しかしながら付着物の原因物質は低分子量ポリカーボネート化合物のみではないことが判明し、この効果は十分でないことが判った。
【0017】
また、ポリカーボネート樹脂は、高温、高湿下において加水分解しやすく、分子量の低下、衝撃強度の低下などをきたしやすいという欠点がある。さらに、長期間にわたり高温、高湿下に放置すると基板に微小な白点が発生し、長期信頼性が損なわれるという欠点があった。
【0018】
一方、光学式ディスク基板および該基板を用いた光学式情報記録媒体に要求される特性の一つとして、長期間にわたって高い信頼性を維持できるようにすることがある。ところが、上述したようにポリカーボネート樹脂は高温、高湿下において加水分解による劣化を起こしやすく、この要求を満たすことが困難であった。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
現在、一般的に普及しているコンパクトディスク用の基板材料においては金型・スタンパーに付着物が堆積し、そのため、金型・スタンパー洗浄をする必要があり、成形機の運転を一旦休止せねばならず、それ故連続生産枚数に限界がある。特にCD−R、MO、MD−MO等や、さらにはDVD−ROM、DVD−video、DVD−R、DVD−RAM等で代表される高密度光ディスク用の基板材料においてはその生産性が向上しないことがわかった。
【0020】
DVD−ROM、DVD−RAMなどの高密度光ディスク基板成型では流動性、転写性を向上させる為に成型温度を380℃程度にまで上げる必要があるが、これはポリカーボネート樹脂からの揮発成分をより増やす方向であり、さらに金型のガス抜きクリアランスも狭くなる傾向にあり、このため揮発成分が一段と堆積しやすい傾向になっている。
【0021】
また、ポリカーボネート樹脂製の光ディスク(またはその基板)を高温・高湿条件下に長時間保持した場合、その表面または基板中に微小な白点が発生し、その白点が時間の経過とともに生長して拡大し、記録媒体の信頼性に影響を与えることがあり、その原因の究明に研究を進めた。この微小な白点の発生に伴う影響は、通常のコンパクトディスク(CD)よりも、情報担持密度が極めて高い、DVD−ROM、DVD−video、DVD−R、DVD−RAM等のデジタルバーサタイルディスクの方が一層顕著である。
【0022】
ディスク基板の微小な白点の発生原因を究明するため、ポリカーボネート樹脂中に含まれる金属化合物に着眼し、さらに研究を進めた。ポリカーボネート樹脂は、工業的には多くの装置や機器を使用して製造される。すなわち、製造プロセスによっても若干異なるが、原料タンク、重合装置、精製装置、粒状化装置、製品貯蔵タンクおよび移送配管など多くの装置や機器が使用される。その多くはステンレス鋼やその他耐蝕性の鋼材を材質としている。しかし、工業的に製造されたポリカーボネート樹脂中には、これら製造過程の装置や機器の材質から、多くの金属成分が少なからず溶出もしくは混入している。
【0023】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、該問題点について鋭意検討を重ねた結果、まずポリカーボネートからの揮発成分を低減する方法として熱重量分析で5%減量開始温度が400℃以下の物質の総量を0.5重量%以下とすることにより極めて成形中の付着物が少なく、基板特性を十分維持したまま、驚くほど生産性が向上することを発見した。
【0024】
さらにポリカーボネート樹脂中の金属成分と微小な白点の発生との関係について鋭意検討を重ねたところ、樹脂中の鉄金属もしくは鉄化合物に着眼し、この量を鉄金属として0.6ppm以下とすることによりDVD基板の白点発生を極めて有効に制御でき、長期間に亘って高い信頼性を維持できる光ディスクを提供しうることを見出し本発明に到達した。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、成形材料を用いてDVD基板を射出成形する際に、
(1)シリンダー温度380℃および金型温度115℃でDVD基板を1万枚成形したとき、スタンパー上の付着物量を7mg以下にし、かつ
(2)DVD基板の加速劣化試験(80℃×85%RH×1,000時間)後において、大きさ20μm以上の白点欠陥発生数が直径120mmの円板状の基板当り2個以下にする方法であって、
成形材料として、熱重量分析で5%減量開始温度が400℃以下の物質(A)の総量が0.5重量%以下であり、かつ鉄化合物の含有量が鉄金属に換算して0.6ppm以下のポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする方法が提供される。
【0026】
本明細書において「付着物」とは光ディスク基板の成形を続けることによって、スタンパー外周上や金型のガス抜き部や隙間に堆積する液状または固形の物質を示す。従って、本発明において物質(A)は、付着物形成性物質ということもできる。
【0027】
本発明によればDVD基板として十分な生産効率を得るためには、該基板を成形するために供する成形材料(芳香族ポリカーボネート樹脂)の中に含まれる物質に関して熱重量分析で5%減量開始温度が400℃以下であり、該物質の含有量の総量が0.5重量%以下であることが必要である。
【0028】
5%減量開始温度が400℃以上の物質はポリカーボネート樹脂から揮発することはほとんどなく、5%減量開始温度が100℃以下である物質は揮発するが堆積することなく金型系外へ排気されてしまい、スタンパーまたは/および金型内に付着することはない。また5%減量開始温度が400℃以下の物質の総量が1重量%を超える材料で連続成形した場合、付着物が比較的早い段階で堆積し十分な生産性が得られない。
【0029】
なお、5%減量開始温度が400℃以下の物質(A)の総量が0.3重量%以下であることが一層確実な効果を得ることが出来る。これら物質は可能な限り低減することが好ましいが、完全に零にすることは実質的に不可能である。最も少ないもので0.0001重量%であり、0.001重量%以上が経済的に効率がよい。
【0030】
また、ここで示している5%減量開始温度が400℃以下の物質(A)はポリカーボネート中に含まれる物質であれば特に限定されないが、たとえばポリカーボネートの製造に使用する原料、末端停止剤の未反応物やその変性物、触媒、失活剤、さらにはポリカーボネートオリゴマー等の低分子量体などのポリカーボネートの製造に関連した物質(以下、これらをPC製造由来物質と称することがある。)、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤などの添加剤、およびこれらの変性物などのポリカーボネートの樹脂特性を向上させるために添加したもの(以下、これらを添加剤製造由来物質と称することがある。)がこれに含まれる。
【0031】
ここで、PC製造由来物質の例を詳細に述べる。ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量体としては原料として使用した2価フェノール骨格(または、原料モノマー骨格)を1〜5個含む低分子量のカーボネートオリゴマーである。
【0032】
原料の例としてはビスフェノールAなどに代表される2価フェノール、ジフェニルカーボネートに代表されるカーボネートエステル、末端停止剤の例としてはp−tert−ブチルフェノールおよびp−クミルフェノールに代表される単官能フェノール類などがある。原料、末端停止剤の未反応物の変性物としては、例えば原料モノマーと末端停止剤のモノカーボネート化合物、末端停止剤同士のカーボネート化合物などがある。
【0033】
これらPC製造由来物質の大部分は、下記一般式(1)で表される低分子量体である。
【0034】
【化1】
Figure 0004783486
【0035】
式中、Xは、ポリカーボネートを形成する2価フェノールがビスフェノール骨格の化合物である場合、2つのフェノールを結合する基を示し、具体的にはアルキレン基、アルキリデン基、アルキル基置換されていてもよいシクロアルキリデン基、−O−、−CO−、−OCO−、−S−、−SO−または−SO2−を示す。
【0036】
Yは、水素原子または基
【0037】
【化2】
Figure 0004783486
【0038】
を示す。ここでR’は水素原子または炭素数1〜25のアルキル基を示し、rは1〜5の整数を示す。
【0039】
Rは、2個以上の場合には互いに同一もしくは異なり、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【0040】
pおよびqは、同一もしくは異なり1〜4の整数を示す。
【0041】
mは1〜5の整数を示す。
【0042】
nは0または1を示す。
【0043】
これらのPC製造由来物質を低減する方法は特に限定されないが、特にポリカーボネートの低分子量体低減に関してはこれまで様々な手法の提案がされている。例えば特開昭63−278929号公報、特開昭63−316313号公報、特開平1−146926号公報に記載されている。
【0044】
具体的には、これらの方法を繰返して実施したり、これらを適当に組合せたり、またこれらと他の方法とを組合せることによって行うことができる。
【0045】
次に添加剤由来物質について説明する。添加剤由来物質は、代表的には安定剤および離型剤が挙げられる。
【0046】
このうち、安定剤としてはリン含有酸化防止剤が主として使用され、リン含有酸化防止剤の具体例として下記式(2)〜(3)のリン酸エステル、亜リン酸または亜リン酸エステルがある。これらリン含有酸化防止剤の大部分は芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定剤としての機能も有している。
【0047】
【化3】
Figure 0004783486
【0048】
前記式(2)〜(4)において、mおよびnは、それぞれ独立して0〜2の整数を示すが、(m+n)は1または2を示す。
【0049】
1〜A3は、互いに同一もしくは異なり、炭素数1〜9のアルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基(アルキル部分の炭素数は1〜9)またはアルキルフェニル基(アルキル部分の炭素数は1〜9)を示す。ただしA2および/またはA3は水素原子であることもできる。
【0050】
これら前記式(2)〜(4)で示されるリン含有酸化防止剤の具体的化合物としては、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(モノおよびジ−ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’ビフェニレン−ジ−フォスホナイトなどが挙げられる。
【0051】
添加物由来物質のうち、離型剤は下記式(5)で表すことができる。
【0052】
【化4】
Figure 0004783486
【0053】
前記式(5)において、R1は炭素数1〜22のアルキル基またはアルキレン基を示し、R2は炭素数12〜22のアルキル基を示す。tは0または正の整数を示し、uは正の整数を示すが、(t+u)は1〜6好ましくは1〜4の整数を示す。
【0054】
前記式(1)〜(5)で示したPC製造由来物質および添加物由来物質は、例示のために示したものであってそれ以外の物質であっても、5%減量開始温度が400℃以下である限り、本発明の付着物形成性物質としての物質(A)の範疇に含まれる。
【0055】
本発明に用いる成形材料はその中に含まれる前記付着物形成性物質の含有量が、0.5重量%以下であるが、可能な限り少ない方がより好ましい。
【0056】
前記した付着物形成性物質のいくつかの例について、その5%減量開始温度を測定した。すなわち、DuPont社製951TGA装置を用いて、窒素雰囲気中昇温速度毎分10℃の条件下で5%減量開始温度を測定した。ビスフェノールA骨格を1〜2個を含む低分子量ポリカーボネートオリゴマーは370±10℃であった。この他原料関係ではビスフェノールAは257±5℃、ジフェニルカーボネートは139±5℃、p−tert−ブチルフェノールは145±5℃、p−クミルフェノールは170±5℃、末端停止剤のカーボネート結合物であるジ−t−ブチルフェニルカーボネートは240℃±5℃であった。また、添加剤関係では酸化防止剤のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトは254±5℃、トリス(モノ−ノニルフェニル)フォスファイトは218±5℃、離型剤のステアリルステアレート276±5℃、ベヘニルベヘネート302±5℃、ペンタエリスリトールテトラステアレート356±5℃、グリセリントリステアレート355±5℃、グリセリンモノステアレート245±5℃であった。
【0057】
なお、これらの測定値は製品純度または結晶化度により10℃前後変化する。前記の化合物は、5%減量開始温度が400℃以下であることを示したに過ぎない。
【0058】
またポリカーボネート樹脂中には、付着物形成性物質として原料モノマーやその変性体、低分子量ポリカーボネートなどPC製造由来物質(A−1)と熱安定剤や離型剤、およびその変性体などの添加剤由来物質(A−2)の両者が必ず含まれており、その構成比は採取された付着物100重量%に対して(A−1):(A−2)が10〜90重量%:90〜10重量%であり、好ましくは(A−1):(A−2)が15〜85重量%:85〜15重量%であり、より好ましくは(A−1):(A−2)が20〜80重量%:80〜20重量%である。
【0059】
付着物形成性物質は(A−1)および(A−2)の両者が必ず含まれており、また成分比は樹脂組成(添加剤量・含有オリゴマー量)および成形条件によっても変化する。
【0060】
前記した本発明により、ポリカーボネート樹脂成形材料中において、5%減量開始温度が400℃以下の物質(A)の総量が0.5重量%以下とすることによって、その成形材料から、DVD基板を成形した場合、金型やスタンパー上に付着する付着物量が極めて少なくなり、連続成形によって多くの枚数のDVD基板を成形することが可能となる。
【0061】
さらに本発明によればDVD基板として十分な長期信頼性を得るためには、付着物形成性物質の低減とともに該基板を成形するために供する成形材料(芳香族ポリカーボネート樹脂)中の鉄または鉄化合物の含有量が、鉄金属として、0.6ppm以下とすべきことが見出された。
【0062】
鉄の含有量が0.6ppmを超えると、微小白点が増大し、信号の読み取りに問題が生じ、信頼性に悪影響を与える。
【0063】
従って、ポリカーボネート樹脂の製造工程において鉄の溶出もしくは混入が可及的に起こらないような手段を採用することが望ましい。その一つとして鉄含有量の少ない鋼材を材質として使用したりまた鉄の溶出量の少ない材質の選択が推奨される。さらにこれら鉄化合物を除去する方法も採用できる。かかる手段としては、精密濾過を行ったり、金属イオンや水溶性の不純物を含まない高純度の純水で水洗を行う等が挙げられる。
【0064】
なお、このほかの金属成分として、上記鉄のほかにVIII族に属する金属やAl、Si、Ca、Mg、Crなどの金属の含有量もそれぞれ1ppm以下とすることが望ましい。
【0065】
ポリカーボネート樹脂中の鉄化合物の含有量は、鉄金属に換算して0.5ppm以下が特に好ましい。
【0066】
本発明によれば、付着物形成性物質および鉄化合物がともに前記の少ない割合で含むポリカーボネート樹脂を使用して光ディスク基板を成形すると、金型やスタンパー上の付着物量が長時間連続して成形した場合にも極めて少なく、従って高い生産性で光ディスクを成形でき、また得られた光ディスク(または基板)は高温・高湿条件下で長時間保持しても表面もしくは基板中に白点の発生数が極めて少なくなり、長期間信頼性を維持できる光ディスクが得られるという利点が得られる。
【0068】
さらに本発明によれば、(1)シリンダー温度380℃および金型温度115℃でDVD基板を1万枚成形した時、スタンパー上の付着物量がmg以下でありかつ(2)DVD基板の加速劣化試験(80℃×85%RH×1,000時間)後において、大きさ20μm以上の白点欠陥発生数が直径120mmの円板状の基板当り2個以下(好ましくは1個以下)にすることができる。
【0069】
次に本発明におけるポリカーボネート樹脂およびその製法について説明する。
【0070】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、通常2価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものである。ここで使用される2価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0071】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンまたはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンとの共重合体が好ましく使用される。
【0072】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは2価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0073】
上記2価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するにあたっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、2価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0074】
界面重合法による反応は、通常2価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0075】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノールまたは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(T−1)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0076】
【化5】
Figure 0004783486
【0077】
(式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはフェニル置換アルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0078】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、基板としての物性、特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、また、基板の複屈折が低減される効果もあり好ましく使用される。なかでも、下記一般式(T−2)および(T−3)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0079】
【化6】
Figure 0004783486
【0080】
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の2価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
かかる式(T−2)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0081】
また、式(T−3)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0082】
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0083】
溶融重合法による反応は、通常2価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に2価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr(約1,330Pa〜13Pa)程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0084】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0085】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組合せ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の2価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0086】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えばビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、フェニルフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることが好ましい。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0087】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜22,000が好ましく、12,000〜20,000がより好ましく、13,000〜18,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、光学用材料として十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηSP)を次式に挿入して求めたものである。
【0088】
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(ただし[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
ポリカーボネート樹脂は、前記した従来公知の常法(界面重合法、溶融重合法など)により製造した後、溶液状態において濾過処理をしたり、造粒(脱溶媒)後の粒状原料を例えば加熱条件下でアセトンなどの貧溶媒で洗浄したりして低分子量成分や未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。さらに射出成形に供するためのペレット状ポリカーボネート樹脂を得る押出工程(ペレット化工程)では溶融状態の時に濾過精度10μmの焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去したりすることが好ましい。必要により、例えばリン系等の酸化防止剤などの添加剤を加えることも好ましい。いずれにしても射出成形前の原料樹脂は異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
【0089】
上記ポリカーボネート樹脂よりDVD基板を製造する場合には射出成形機(射出圧縮成形機を含む)を用いる。この射出成形機としては一般的に使用されているものでよいが、炭化物の発生を抑制しディスク基板の信頼性を高める観点からシリンダーやスクリューとして樹脂との付着性が低く、かつ耐蝕性、耐摩耗性を示す材料を使用してなるものを用いるのが好ましい。射出成形の条件としてはシリンダー温度300〜400℃、金型温度50〜140℃が好ましく、これらにより光学的に優れた光ディスク基板を得ることができる。成形工程での環境は、本発明の目的から考えて、可能な限りクリーンであることが好ましい。また、成形に供する材料を十分乾燥して水分を除去することや、溶融樹脂の分解を招くような滞留を起こさないように配慮することも重要となる。
【0090】
このように成形された光ディスク基板は、デジタルビデオディスク(以下、DVDと称することがある)、DVD−ROM、DVD−video、DVD−R、DVD−RAM等で代表される高密度光ディスク用基板として使用される。
【0091】
【実施例】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。なお、評価は下記の方法に従った。また、実施例中の「部」は、「重量部」を表す。
【0092】
(a)付着量測定試験
射出成形機、住友重機械工業製DISK3 M III にCD専用の金型を取り付け、この金型にピットの入ったニッケル製のCD用スタンパーを装着し、成形材料を自動搬送にて成形機のホッパに投入し、シリンダー温度340℃、金型温度70℃、射出速度100mm/sec、保持圧力40kgf/cm2の条件で直径120mm、肉厚1.2mmの光ディスク基板を、または、同成形機にDVD専用の金型を取り付け、この金型にアドレス信号などの情報の入ったニッケル製のDVD用スタンパーを装着し、シリンダー温度380℃、金型温度115℃、射出速度300mm/sec、保持圧力40kgf/cm2の条件で直径120mm、肉厚0.6mmの光ディスク基板を連続的に1万枚成形した。
連続1万枚を成形した後、成形後のスタンパー付着物をクロロホルムで抽出乾固し、付着量を測定した。
【0093】
付着量を測定した結果を下記の基準で評価した。
付着量評価基準
A: 1万枚成形後の付着量 1〜7mg
B: 1万枚成形後の付着量 8〜15mg
C: 1万枚成形後の付着量 16mg以上
D: 1万枚の成形に至るまでに基板に付着物が転写した
【0094】
(b)PC製造由来物質の定量
Waters社製GPC装置(カラム充填剤;東ソーTSK−gel G−2000HXL+3000HXL)を用いて、得られた試料ポリカーボネートおよび付着物のチャートに対して低分子量ポリカーボネート、ポリカーボネート原料、末端停止剤、およびその変性物などPC製造由来の付着物形成性物質のピーク面積からその総含有量を求めた。
(c)添加剤由来物質の定量
Varian製 NMR装置UNITY300(300MHz)を用いて得られた付着物の添加剤由来物質の検量線から総含有量を求めた。
(d)鉄量
ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法を用いて鉄金属含有量を求めた。
(e)湿熱処理後の白点数
過酷な雰囲気下に長時間放置した時の白点の発生を調べるために、ディスクを温度80℃、相対湿度85%に制御した恒温恒湿槽に1,000時間保持し、その後偏光顕微鏡を用いて20μm以上の白点の数を数えた。これをCD基板(直径120mm 厚み1.2mm)またはDVD基板(直径120mm 厚み0.6mm)のそれぞれ25枚について行い、その平均値を求め、これを白点個数とした。
【0095】
参考例1
温度計、撹拌機および還流冷却器付き反応器にイオン交換水219.4部、48%水酸化ナトリウム水溶液40.2部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン57.5部およびハイドロサルファイト0.12部を溶解した後、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部およびp−tert−ブチルフェノール2.42部を加え、撹拌を始め、乳化後トリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を完結させた。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けたニーダー中の温水にポリカーボネート溶液を滴下し、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化した。次にこの含液したポリカーボネート樹脂を粉砕、乾燥して、粘度平均分子量15,600のパウダーを得た。このパウダーに添加剤として熱安定剤と離型剤を表1に示す配合で加え、ベント式二軸押出機[神戸製鋼(株)製KTX−46]によりシリンダー温度240℃で脱気しながら溶融混練し、参考例1に示すペレットを得た。このペレットのPC製造由来物質の含有量と鉄含有量を表2に示す。
【0096】
このペレットを用いてCD基板を1万枚成形し、スタンパー上の付着物の重量と付着物の組成比を測定した。さらにCD基板の湿熱処理後の白点個数を測定した。その結果を表2に示す。
【0097】
実施例
参考例1で得られたポリカーボネートパウダー1kg当たりアセトン10Lを加え室温で2時間攪拌し、濾過、減圧乾燥し精製ポリカーボネートを得た以外は全て参考例1と同様の方法で表1に示す配合のペレットを作製した。
このペレットのPC製造由来物質と鉄含有量を表2に示す。以後、このペレットを用いてDVD基板を1万枚成形し、スタンパー上の付着物の重量と付着物の組成比を測定した。さらにこの材料を用いて成形したDVD基板の湿熱処理後の白点個数を測定した。その結果を表2に示す。
【0098】
参考
p−tert−ブチルフェノールを2.72部加えて粘度平均分子量14,500のパウダーを得た以外は、全て参考例1と同様に表1に示す配合のペレットを作製した。このペレットのPC製造由来物質と鉄含有量を表2に示す。以後、全て参考例1と同様にCD基板を成形し、評価した。その結果を表2に示す。
【0099】
実施例
撹拌機および蒸留塔を備えた反応器に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン50.2部、ジフェニルカーボネート(バイエル社製)49.2部および触媒として水酸化ナトリウム0.000005部とテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.0016部を仕込み、窒素置換した。この混合物を200℃まで加熱して撹拌しながら溶解させた。次いで、減圧度を30Torr(約4,000Pa)として加熱しながら1時間で大半のフェノールを留去し、さらに270℃まで温度を上げ、減圧度を1Torr(133Pa)として2時間重合反応を行ったところで、末端停止剤として2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートを0.51部添加した。その後270℃、1Torr(133Pa)以下で5分間末端封鎖反応を行った。次に溶融状態のままで、触媒中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を0.00051部(4×10−5モル/ビスフェノール1モル)添加して270℃、10Torr(約1,330Pa)以下で10分間反応を継続し、粘度平均分子量15,500のポリマーを得た。このポリマーをギアポンプでエクストルーダーに送った。エクストルーダー途中で添加剤として熱安定剤と離型剤を表1に示す配合で加え、実施例に示すトペレットを得た。
【0100】
こうして得られたペレットのポリカーボネート由来物と鉄含有量を表2に示す。以後、全て実施例と同様にDVD基板を成形し、評価した。その結果を表2に示す。
【0101】
比較例1
トリエチルアミンを加えずそのまま2時間攪拌し反応を終了させ、水洗のみ実施した以外は全て参考例1と同様に製造した。このパウダーに添加剤を表1に示す配合で加え、参考例1と同様に比較例1に示すペレットを得た。このペレットのポリカーボネート由来物と鉄含有量を表2に示す。以後、全て参考例1と同様にCD基板を成形し、評価した。その結果を表2に示す。
【0102】
比較例2
参考で得られたポリカーボネートパウダーに添加剤として熱安定剤と離型剤を表1に示す配合で加えた以外は全て参考例1と同様にペレットを製造した。このペレットのポリカーボネート由来物と鉄含有量を表2に示す。以後、全て参考例1と同様にCD基板を成形し、評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
比較例3
参考例1と同様の方法で粘度平均分子量15,500のポリカーボネートパウダーを得、このパウダーに添加剤を表1に示す配合で参考例1と同様の方法でペレットを作製した。このペレットのポリカーボネート由来物と鉄含有量を表2に示す。以後、全て実施例と同様にDVD基板を成形し、評価した。その結果を表2に示す。
【0104】
この結果から、長期間高い信頼性を維持する高密度光ディスク基板を経済的に効率よく得るには基板成形に供する光学用ポリカーボネート樹脂成形材料に関して、その中に含まれる熱重量分析で5%減量開始温度が400℃以下の物質の総量を1重量%以下まで低減すると共に鉄含有量が1ppm以下でなければならないことは明白である。
【0105】
【表1】
Figure 0004783486
【0106】
【表2】
Figure 0004783486
【0107】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば成形材料中の熱重量分析で5%減量開始温度が400℃以下の物質の総量0.5重量%以下とし、さらに鉄含有量を0.6ppm以下とすることにより、付着物を低減し連続生産性を向上させ、且つ高い信頼性を長期間維持する基板を得ることができ、その奏する効果は格別のものである。

Claims (4)

  1. 成形材料を用いてDVD基板を射出成形する際に、
    (1)シリンダー温度380℃および金型温度115℃でDVD基板を1万枚成形したとき、スタンパー上の付着物量を7mg以下にし、かつ
    (2)DVD基板の加速劣化試験(80℃×85%RH×1,000時間)後において、大きさ20μm以上の白点欠陥発生数が直径120mmの円板状の基板当り2個以下にする方法であって、
    成形材料として、熱重量分析で5%減量開始温度が400℃以下の物質(A)の総量が0.5重量%以下であり、かつ鉄化合物の含有量が鉄金属に換算して0.6ppm以下のポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする方法。
  2. 物質(A)の総量が0.3重量%以下のポリカーボネート樹脂を用いる請求項1記載の方法。
  3. 鉄化合物の含有量が鉄金属に換算して0.5ppm以下のポリカーボネート樹脂を用いる請求項1記載の方法。
  4. 粘度平均分子量が10,000〜22,000の範囲のポリカーボネート樹脂を用いる請求項1記載の方法。
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