JP4774590B2 - 誘導加熱溶解炉 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、誘導加熱により金属を溶解する誘導加熱溶解炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の誘導加熱溶解炉は、互いに電気的に絶縁された縦割り状の導電性セグメントを円周方向に配列することにより形成された容器状の炉本体と、炉本体の周囲に配置された誘導加熱コイルとを備えている。そして、炉本体は、冷却水により効率良く冷却されるように、導電性セグメントの内部に冷却水路が形成されていると共に大きな熱伝導率の純銅により形成されている。また、機種によっては、炉本体を傾倒させることなく溶湯を出湯口から取り出すことができるように、出湯口が炉本体の底部に形成されている。
【0003】
上記のように構成された誘導加熱溶解炉により例えば所望の金属を製造する場合には、先ず、炉本体に対して被溶解金属を投入した後、誘導加熱コイルに交流電力を供給して交番磁場を発生させる。そして、被溶解金属を誘導加熱し、ほぼ全量が溶解して溶湯となったことを確認した後、出湯口を開栓し、溶湯を自重により出湯口から排出して容器に払い出す。この後、1ロット分の製造が終了すると、余った溶湯を出湯口から排出させて回収することにより炉本体を空状態にする。そして、次ロット分の金属を炉本体に投入し、同様の動作により溶解して所望の金属を製造する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、出湯口の出口付近に凝固物が付着したり、余った溶湯を出湯口から排出したときに、炉本体のコーナー部に溶湯の一部や未溶解のスカルが残留することがある。従って、例えば引き続き、溶解および出湯をしようとしても、出湯口の出口付近の凝固物が溶解せずに開栓されたままとなって出湯できない。このため、出湯口先端部の清掃や取替えが必要となる。また、被溶解金属の種類を切り換える場合には、残留した前回の金属が不純物として作用しないように、炉本体を清掃等して完全に被溶解金属を除去することが必要になる。この結果、従来は、ロットの切替え時等に要する被溶解金属の除去作業が生産性を低下させると共にオペレータの負担にもなっているため、除去作業を簡単且つ短時間で行えることが望まれている。
【0005】
また、上記従来の構成では、溶湯を容器に払い出すときに、出湯時に溶湯に発生したコリオリの作用によって回転流が生じて、溶湯が出湯口から周方向に拡散しながら排出されるため、拡散の程度によっては溶湯の一部が容器に収容されない場合がある。従って、歩留りを向上させるため、溶湯の全量を容器に確実に収容できることが望まれている。さらに、生産性の観点から払い出しを短時間で行えることも望まれている。
【0006】
従って、本発明は、簡単且つ短時間で被溶解金属の除去作業を完了することができる誘導加熱溶解炉を提供し、払い出し時に出湯口から溶湯を確実に容器に収容させることができる誘導加熱溶解炉を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の発明の誘導加熱溶解炉は、複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、前記炉本体と誘導加熱コイルとの間に、耐熱性を有すると共に、絶縁性および非磁性の少なくとも一方を有した材料により前記炉本体の側面壁の変形を防止するように形成されたスタンプ部材が設けられ、前記底部出湯機構は、前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、スタンプ部材が側面壁の外周方向への変形を防止するため、側面壁を構成するセグメント間の隙間やセグメントと炉本体の底面壁との隙間が拡大することがない。この結果、被溶解金属が誘導加熱されて溶湯となっても、この溶湯がセグメント間の隙間等に差し込むことを十分に防止することができる。これにより、被溶解金属が凝固したときに、セグメントが外側に膨れて被溶解金属が炉本体に引っ掛かった状態にならないため、被溶解金属を炉本体から引き上げて実施する除去作業を容易且つ短時間で行うことができる。
【0009】
請求項2の発明は、誘導加熱溶解炉であって、複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、前記炉本体の導電性セグメントには、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、該冷却水路中には、流路を2以上に区分する仕切り壁が設けられ、前記底部出湯機構は、前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有することを特徴としている。上記の構成によれば、冷却水路全体としては流動抵抗を増大させることなく、導電性セグメントを仕切り壁により補強して変形し難いものとすることができる。
【0010】
請求項3の発明は、誘導加熱溶解炉であって、複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、前記炉本体が純銅よりも強度の高い銅合金で形成されており、前記底部出湯機構は、前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有することを特徴としている。上記の構成によれば、炉本体が純銅よりも強度の高い銅合金で形成されることにより変形し難いものとなるため、側面壁の変形を防止することができる。
【0015】
また、請求項1乃至3の発明は、上記の構成によれば、溶湯を炉本体から払い出すときに、出湯ノズルにより溶湯の流動方向を規制して排出時の拡散を防止することができるため、底部出湯機構の下方に設けられた容器内に溶湯を確実に収容させることができる。そして、誘導加熱コイルに交流電力を供給することによって、出湯ノズルに残留した溶湯の付着物や凝固物等の残留物を誘導加熱して溶解させ、出湯ノズルから完全に除去することができる。これにより、出湯ノズルが残留物で詰まることによって、次ロット分の溶湯の払い出しが困難や不可能になる等の不具合を防止することができる。
【0016】
請求項の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記出湯構造体の表面温度を検出する温度検出装置を有することを特徴としている。上記の構成によれば、温度検出装置により検出された出湯構造体の表面温度に基づいて被溶解金属の出湯開始時期を推定することができる。
【0017】
請求項の発明の誘導加熱溶解炉は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記炉本体が配置された上側空間部と、前記底部出湯機構が配置された下側空間部とを独立して有した真空容器と、前記上側空間部と下側空間部との圧力差を変更することによって、前記底部出湯機構における出湯流速を制御する出湯制御手段とを有することを特徴としている。上記の構成によれば、出湯時に上側空間部が下側空間部よりも高い圧力となるように両空間部の圧力差を変更することによって、この圧力差と溶湯の自重とで出湯の速度を大きくすることができるため、短時間で溶湯の払い出しを完了することができる。また、出湯終了時に上側空間部が下側空間部よりも低い圧力となるように両空間部の圧力差を変更することによって、この圧力差で出湯の速度を制御でき、また、出湯速度を小さくして溶湯の凝固を促進することができるため、短時間で出湯を停止することができる。
【0018】
請求項の発明の誘導加熱溶解炉は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記炉本体の導電性セグメントには、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、該冷却水路は、冷却能力を高めたい部分の流路断面積が縮小されていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、冷却水路の流路断面積が部分的に縮小されているため、冷却水路全体としては流動抵抗を増大させることなく、流路断面積の縮小により冷却水の流動速度を増大させることによって、この流路断面積の縮小された部分における冷却能力を高めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1ないし図7に基づいて以下に説明する。
本実施の形態に係る誘導加熱溶解炉は、図1に示すように、被溶解金属20を収容する炉本体1を有している。炉本体1は、純銅の熱伝導率(389W/m・k)よりも小さな熱伝導率(322W/m・k)のクロム銅により形成されており、炉本体1の機械的強度を高めていると共に、被溶解金属20の単位時間当たりの抜熱量を純銅の場合よりも低減している。尚、炉本体1は、クロム銅の他、純銅の熱伝導率よりも小さな熱伝導率のジルコニウム銅やベリリウム銅、クロムジルコニウム銅、テルル銅等の金属材料を用いることができる。また、被溶解金属20としては、純銅や銅合金の他、金や銀、アルミニウム、これら各金属の合金等の大きな熱伝導率を有した金属を挙げることができると共に、鉄やコバルト、チタン、ニッケル、ジルコニウム、ハフニウム、クロム、ニオブ、タンタル、モリブデン、ウラン、希土類金属、トリウム、これらの合金等を挙げることができる。
【0021】
上記の炉本体1は、炉本体1の底面壁を構成するように形成されたベース体2と、炉本体1の側面壁を構成するように、ベース体2上に円周方向に配設された複数の導電性セグメント8とを有している。ベース体2は、導電性セグメント8で囲まれた円筒部3と、円筒部3の下縁部から外周方向に突設されたフランジ部4とを有している。フランジ部4には、上下方向に貫設された複数の締結穴4aが導電性セグメント8の配列位置に対応して形成されていると共に冷却水路4bが形成されている。
【0022】
上記の各締結穴4aには、ボルト部材6が挿通されている。ボルト部材6は、ナット部材7とで導電性セグメント8をフランジ部4に固定している。導電性セグメント8は、鉛直方向に立設され、内側面が円筒部3の側周面に当接された側壁部9と、側壁部9の下端部から外周方向に曲折され、下面がフランジ部4の上面に当接された取付部10とを有している。取付部10には、締結穴10aが形成されており、締結穴10aは、フランジ部4の締結穴4aに対応するように配置され、ボルト部材6が挿通されている。
【0023】
上記の導電性セグメント8は、隣接するセグメント8・8同士が互いに電気的に絶縁状態にされている。また、図3にも示すように、各導電性セグメント8における幅方向の中心部には、上端部を残して縦方向にスリット8aと、スリット8aよりも広幅の切欠部9aとが内周側から外周側にかけてこの順に形成されている。スリット8aおよび切欠部9aは、導電性セグメント8を縦方向に二分割しており、導電性セグメント8の側壁部9と取付部10とは、スリット8aを介して互いに電気的に絶縁状態にされている。さらに、切欠部9aは、側壁部9の誘導加熱による損失を減少させるように、所定の強度を維持できる範囲内で側壁部9の横断面積を減少させている。
【0024】
また、各導電性セグメント8の内部には、冷却水路8bと連通路8cとが形成されている。冷却水路8bは、スリット8aで二分割された一方の側壁部9と他方の側壁部9とにそれぞれ形成されている。また、連通路8cは、導電性セグメント8の上端部に形成されており、両側壁部9・9における冷却水路8b・8bの上端部同士を連通している。また、各冷却水路8bの下端は、上述のフランジ部4の冷却水路4bに連通されている。これらの冷却水路8b・4bは、冷却水を流通させることによって、導電性セグメント8を含む炉本体1の全体を所定の温度(被溶解金属20との反応温度)以下に冷却している。
【0025】
また、冷却水路8bの複数箇所には、図4(a)・(b)に示すように、冷却水路8bの流路を2つに区分する平板状の仕切り壁30が設けられている。仕切り壁30は、左右の両端部が冷却水路8bに接合されており、両壁面30aが冷却水の流動方向に対して平行となるように配置されている。また、仕切り壁30の上端部および下端部は、冷却水の流動抵抗を減少させるように縦断面が砲弾形状に形成されている。そして、この仕切り壁30は、冷却水路8bの流路断面積を減少させ、この部分における冷却水の流動速度を増大させることによって、冷却水路8b全体としては流動抵抗を増大させることなく、導電性セグメント8に対する冷却効率を高めると共に、導電性セグメント8を補強するように機能している。尚、仕切り壁30は、冷却水路8bを3つ以上に区分するものであっても良い。また、仕切り壁30は、溶湯20bやスカル20aが導電性セグメント8に接触し易い部分に設けられていることが望ましい。
【0026】
図2に示すように、上記のように構成された炉本体1の外周側には、炉本体1の内側に交番磁場を発生させる誘導加熱コイル11が巻回されている。また、炉本体1の側面壁と誘導加熱コイル11との間には、円筒形状のスタンプ部材31が設けられている。スタンプ部材31は、砂やセメント、ケイ砂等の耐熱性を有すると共に、絶縁性および非磁性の少なくとも一方を有した材料により一体的に形成されており、少なくとも炉本体1の側面壁全体に当接または接合されている。そして、スタンプ部材31は、炉本体1における側面壁の外周方向への変形を防止している。
【0027】
一方、炉本体1の底面壁は、上述のベース体2の円筒部3により形成されている。円筒部3は、炉本体1の底面壁となるように平板状に形成された上面壁3aを有している。上面壁3aの中心部には、溶湯20bを出湯する底部出湯機構21が設けられている。底部出湯機構21は、上面壁3aに形成された開口部3bと、開口部3bの下方に位置するように上面壁3aの下面に設けられた出湯構造体22と、出湯構造体22の両側に配設された永久磁石23と、出湯構造体22から垂下するように取付けられた出湯ノズル25と、出湯構造体22および出湯ノズル25の周囲に配設された誘導加熱コイル24とを有している。
【0028】
上記の開口部3bは、上面壁3aの上面位置から下面位置にかけて開口面積を減少させるように逆円錐状に形成されている。開口部3bの下方には、上述の出湯構造体22が設けられている。出湯構造体22は、上下方向に連通された出湯穴22aを有している。出湯穴22aは、開口部3b側の上端位置から中間位置までの開口面積が開口部3bと同様の割合で減少する逆円錐形状に形成された後、中間位置から下端位置にまでの開口面積が同一となる円柱形状に形成されることによって、全体として漏斗状に形成されている。出湯構造体22は、縦割り状の複数の導電性セグメント22bを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成されている。尚、導電性セグメント22bは、上述の炉本体1と同様に、クロム銅により形成することができると共に、純銅や電気抵抗率の低い金や銀等を用いることができる。
【0029】
上記の出湯構造体22における円柱形状の出湯穴22aには、溶湯20bの払い出し時における流動方向を下方向に規制する出湯ノズル25が設けられている。出湯ノズル25は、熱衝撃に強いカーボンにより形成されている。
【0030】
また、出湯構造体22の両側には、永久磁石23が設けられている。永久磁石23は、N極およびS極が出湯構造体22を挟んで両側に対向配置されている。そして、永久磁石23は、溶湯20bの流動方向に対して垂直方向に直流磁界を生成することによって、溶湯20b内に生じている回転流を減少または消滅させるようになっている。
【0031】
上記の永久磁石23の下方には、出湯構造体22および出湯ノズル25の周囲に巻回され、溶湯20bの流動方向に沿って磁界を生成する誘導加熱コイル24が設けられている。誘導加熱コイル24には、図1に示すように、出湯用電源15が接続されている。出湯用電源15は、被溶解金属20を凝固させる程度の第2周波数の交流電力を出力可能な凝固用電源部と、被溶解金属20を溶解させる程度の第1周波数の交流電力を出力可能な溶解用電源部と、直流電源部とを有している。
【0032】
尚、溶解用電源部の第1周波数は、凝固用電源部の第2周波数よりも高周波数に設定されている。具体的には、溶解用電源部の第1周波数が4kHz程度の高周波数に設定されており、凝固用電源部の第2周波数が例えば商用電源程度の周波数(50〜100Hz程度の低周波数)に設定されている。そして、これらの電源部を備えた出湯用電源15は、電源制御装置18に接続されており、電源制御装置18は、2段階の周波数の交流電力と直流電力とを選択的に出湯用電源15から出力させるように、凝固用電源部と溶解用電源部と直流電源部との作動を切替え可能になっている。
【0033】
また、電源制御装置18には、出湯構造体22の表面温度を検出する温度検出装置が接続されている。温度検出装置は、温度測定器19と図示しない熱電対からなる温度センサとを備えている。尚、温度センサは、非接触式の赤外線センサであっても良い。熱電対からなる温度センサは、出湯構造体22に接合されており、出湯構造体22の表面温度に対応した電流値や電圧値を検出信号として温度測定器19に出力する。また、温度測定器19は、検出信号に基づいて出湯構造体22内を流動する溶湯20bの温度である出湯温度を求めた後、この出湯温度をデジタル値やアナログ値の出湯温度信号として電源制御装置18に出力する。そして、電源制御装置18は、出力温度信号に基づいて出湯開始時期を推定する。
【0034】
さらに、電源制御装置18は、溶解用電源16にも接続されている。溶解用電源16は、上述の炉本体1の周囲を取り囲むように設けられた誘導加熱コイル11に接続されている。溶解用電源16は、交流電力を誘導加熱コイル11に供給して炉本体1の内壁面に沿った交番磁場を生成させ、この交番磁場を炉本体1に収容された被溶解金属20に浸透させて誘導加熱する。
【0035】
また、炉本体1は、真空容器32内に設けられている。真空容器32は、炉本体1を収容し、上面開口部33aを有した収容体33と、収容体33の上面開口部33aに対して着脱可能に設けられた蓋体34とを備えている。収容体33の内壁面には、ベース体2のフランジ部4が気密状態に接合されている。フランジ部4は、真空容器32の内部を二分割することによって、炉本体1により被溶解金属20を溶解する上側空間部35と、炉本体1から被溶解金属20を払い出す下側空間部36とに区分している。
【0036】
上記の収容体33の側面壁には、上側排気穴33aが上側空間部35に対応して形成されていると共に、下側排気穴33bが下側空間部36に対応して形成されている。上側排気穴33aは、電磁バルブ37aおよび圧力調整器37bからなる第1圧力調整機構37(出湯制御手段)を介して真空ポンプ39に接続されている。また、下側排気穴33bは、電磁バルブ38aおよび圧力調整器38bからなる第2圧力調整機構38(出湯制御手段)を介して真空ポンプ39に接続されている。さらに、上側排気穴33aおよび下側排気穴33bには、バルブ37c・38cを介して不活性ガスがそれぞれ導入可能にされており、バルブ37c・38cは、上部空間部35および下部空間部36に圧力差を生じさせることを可能にしている。そして、例えばこれらの圧力調整機構37・38は、炉本体1から被溶解金属20を払い出すときに被溶解金属20の排出を補助するように、下側空間部36の圧力を上側空間部35の圧力よりも低くするように調整する。
【0037】
一方、蓋体34の上面壁には、引上機構40が設けられている。引上機構40は、炉本体1に残留した被溶解金属20と接合される接合部材41と、接合部材41を昇降させる昇降シリンダ42(昇降装置)と、接合部材41と昇降シリンダ42とを着脱可能に連結する連結部材43とを有している。そして、このように構成された引上機構40は、接合部材41を溶融状態の被溶解金属20に浸漬し、被溶解金属20が凝固したときに、この被溶解金属20を接合部材41と共に引き上げることにより炉本体1から抜き取って外部に搬出する。
【0038】
上記の構成において、誘導加熱溶解炉の動作を説明する。
先ず、真空容器32の蓋体34が図示二点鎖線等の待機位置に移動され、収容体33の上面開口部33aが開口されることによって、上面開口部33aの上方から塊状や粉状の被溶解金属20が炉本体1に投入される。そして、1バッチ分の被溶解金属20が投入された後、収容体33の上面開口部33aが蓋体34により密封される。
【0039】
次に、真空容器32内の上側空間部35および下側空間部36の減圧が開始されると共に、側壁部9の冷却水路8bに冷却水が供給されることにより炉本体1が冷却される。この際、図3および図4(a)・(b)に示すように、冷却水路8bの流路断面積が仕切り壁30により縮小されているため、仕切り壁30により分割された各流路を冷却水が他の部分よりも高速で流動する。従って、仕切り壁30が設けられた部分が他の部分よりも高い冷却能力でもって冷却されながら導電性セグメント8の冷却が行われる。尚、仕切り壁30が冷却水路8b中に部分的に配置されているため、仕切り壁30の存在によっては冷却水路8bの流動抵抗が殆ど増大することがない。この結果、導電性セグメント8を含む炉本体1が冷却水により効率良く冷却されることになる。
【0040】
この後、各空間部35・36の圧力が圧力調整機構37・38により例えば4.0×104 Pa等の所定圧力にまで減圧されたときに、電源制御装置18からの指令により溶解用電源16から誘導加熱コイル11に対して交流電力が供給される。誘導加熱コイル11に交流電力が供給されると、誘導加熱コイル11の周囲に交番磁場が生成されることになり、誘導加熱コイル11の内周側における交番磁場は、縦方向に分割された導電性セグメント8および隔壁部材12を介して炉本体1の内側に透過し、被溶解金属20を誘導加熱する。
【0041】
これにより、図2に示すように、被溶解金属20は、溶融温度に昇温した表面側から溶解を開始して溶湯20bとなり、炉本体1の底面壁に向かって流れ落ちる。そして、溶湯20bが炉本体1の底面壁に到達したときに、炉本体1により冷却されて凝固し、皿状のスカル20aを形成する。そして、スカル20aが所定以上の厚みとなって炉本体1による冷却能力よりも誘導加熱による加熱能力が上回ると、スカル20a上に溶湯20bとして滞留していくことになる。そして、溶湯20bの滞留量が増加すると、溶湯20bが交番磁場と誘導電流との相互作用および重力の作用を受けることによって、周辺部から中央部にかけて盛り上がったドーム形状の外形を呈しながら撹拌されることになる。また、このような溶湯20bの形成時において、被溶解金属20のスカル20aと接触する内面側が反応温度以下に冷却されているため、炉本体1の不純物がスカル20aを介して溶湯20bに移行することもない。
【0042】
次に、図1に示すように、電源制御装置18において、被溶解金属20の溶解が開始されてからの経過時間と、温度測定器19により計測された出湯構造体22の表面温度とに基づいて溶湯20bの出湯開始時期が推定される。即ち、図5(a)に示すように、被溶解金属20の溶解が進行することによって、出湯構造体22の上方に位置するスカル20aの層厚が薄くなっていくと、これに伴って出湯構造体22の表面温度が上昇する。そして、スカル20aの層厚が十分に薄くなったときの表面温度となったときに、上述の経過時間も加味されながら出湯開始時期であると推定される。尚、この経過時間と表面温度とに基づく推定は、オペレータにより行われても良い。
【0043】
溶湯20bの出湯開始時期であると推定された場合には、図1に示すように、第2圧力調整機構38の設定圧力が例えば1.3Pa等のように変更されることによって、下側空間部36の圧力が上側空間部35の圧力よりも低くなるように減圧される。また、電源制御装置18から出湯用電源15に対して溶解用電源部を作動させるように指令されることによって、図2に示すように、出湯用電源15から高周波数の交流電力が誘導加熱コイル24に供給され、誘導加熱コイル24の周辺に高周波数の交番磁場が生成される。
【0044】
高周波数の交番磁場は、図5(a)に示すように、出湯構造体22および開口部3bの内面の薄い凝固層(浸透深さ)にのみ渦電流を流す。これにより、図5(b)に示すように、この薄い凝固層での電流密度が高いため、出湯構造体22および開口部3bの内表面に凝固しているスカル20aが凝固界面側から溶解して薄くなることによって、最終的には溶湯20bの自重による圧力および空間部35・36の圧力差により短時間で出湯し始めることになる。
【0045】
尚、図5(c)に示すように、出湯構造体22の表面温度に基づいて溶湯20bの出湯開始時期が推定されずに、出湯構造体22の上方に位置するスカル20aの層厚が厚い状態でこのスカル20aに対して誘導加熱が行われた場合には、図5(d)に示すように、スカル20aの凝固界面側からの溶解だけではスカル20aの層厚を出湯可能な程度にまで薄くすることができないため、溶湯20bを出湯させることはできない。
【0046】
出湯が開始されると、図2に示すように、出湯用電源15の直流電源部が作動するように切り換えられ、出湯構造体22および出湯ノズル25の内部に溶湯20bの流動方向に沿った直流磁場が生成される。また、出湯時においては、溶湯20bが出湯構造体22の深部へ進行するのに従って溶湯20b内の角運動量保存則により高速に旋回する作用を受けることになるが、永久磁石23の直流磁界が回転流を減少させるため、溶湯20bの旋回が抑制される。また、上述の出湯用電源15の直流電源部による溶湯20bの流動方向に沿った直流磁場によって、溶湯20bの旋回や乱れがさらに抑制される。この結果、溶湯20bが出湯ノズル25から排出されたときに、高速の旋回により極端に拡散することがない。さらに、出湯構造体22から垂下された出湯ノズル25が溶湯20bの流動方向を一方向に規制している。これにより、溶湯20bは、出湯ノズル25からほぼ直線的に排出され、排出方向に配置された容器44内に確実に収容されることになる。
【0047】
上記の払い出しにより炉本体1における溶湯20bが少なくなると、溶湯20bの自重によっては単位時間当たりの排出量が減少することになるが、空間部35・36の圧力差により排出量の減少が最小限に抑制される。この結果、払い出しが短時間で完了することになる。そして、払い出しが完了すると、下側空間部36の圧力が上側空間部35の圧力と同等の状態に復帰され、出湯が停止される。尚、払い出しを完了した後の出湯終了時においては、下側空間部36の圧力が上側空間部35の圧力よりも高くなるように圧力調整されても良い。この場合には、両空間部36・35の圧力差により溶湯20bの出湯流速を低下させることができるため、出湯を短時間で停止させることができる。
【0048】
出湯が終了すると、電源制御装置18により指令を受けた出湯用電源15が誘導加熱コイル24に高周波数の交流電力を供給する。これにより、出湯ノズル25内に残留した溶湯20bやスカル20aの付着物や凝固物からなる残留物が誘導加熱され、溶融状態となって滴下することによって、出湯ノズル25から完全に除去される。この結果、出湯ノズル25が残留物で詰まることによって、次ロット分の溶湯20bの払い出しが困難や不可能になる等の不具合が防止される。
【0049】
次に、例えば被溶解金属20の種類を切り換える場合には、炉本体1内の不要な被溶解金属20が引上機構40を用いて除去される。即ち、図1に示すように、誘導加熱コイル11への電力供給が停止されることによって、被溶解金属20に対する誘導加熱が停止される。そして、被溶解金属20が溶湯20bの状態を維持している間に、接合部材41が下降されて溶湯20bに浸漬される。被溶解金属20が凝固したときに、接合部材41が上昇されることによって、全ての被溶解金属20が引き上げられて炉本体1から一気に抜脱される。尚、本実施形態においては、昇降シリンダ42により溶解金属20を引き上げているが、より大きな炉では、接合部材41に例えばネジ構造の連結部を設けておき、工場内のクレーン装置により連結部にワイヤ等を連結して吊り上げるようになっていても良い。
【0050】
この際、被溶解金属20の溶解時においては、炉本体1における側面壁が外周方向に変形し易いという性質を有しているが、この側面壁をスタンプ部材31および図2の仕切り壁30が補強していると共に、炉本体1が純銅よりも大きな強度のクロム銅により形成されているため、炉本体1の側面壁が外周方向に太鼓状に変形することはない。従って、引っ掛かった状態にならないため、引上機構40による被溶解金属20の引き上げが極めて簡単に完了することになる。
【0051】
上記のようにして被溶解金属20の除去作業を完了し、空間部35・36が大気圧になると、引上機構40を搭載した蓋体34が図示二点鎖線の待機位置に移動される。そして、この蓋体34の待機位置において、連結部材43が切り離されることによって、被溶解金属20が回収される。
【0052】
尚、本実施形態においては、スタンプ部材31により炉本体1の側面壁の変形を防止することによって、被溶解金属20の引き上げを簡単化しているが、これに限定されるものではない。即ち、図5に示すように、導電性セグメント8の締結穴10aを半径方向に長径方向が一致した長穴形状とする。そして、被溶解金属20の溶解時においては、導電性セグメント8を図示実線の位置に前進させておき、溶解が完了して被溶解金属20が凝固したときに、導電性セグメント8を図示二点鎖線の位置に後退させることによって、導電性セグメント8の側壁部9と円筒部3との隙間を拡大させた後、被溶解金属20を引き上げるようになっていても良い。そして、この場合には、円筒部3と側壁部9との間に差し込んだ部分を側壁部9から引き離すことができるため、被溶解金属20を容易に引き上げることができる。
【0053】
また、本実施形態においては、図2に示すように、出湯ノズル25を介して出湯する場合について説明しているが、これに限定されるものでもない。図7に示すように、誘導加熱コイル24と永久磁石23とを備えていれば、出湯ノズル25を用いなくても溶湯20bの拡散を十分に防止しながら出湯することができる。
【0054】
【発明の効果】
請求項1の発明の誘導加熱溶解炉は、複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、前記炉本体と誘導加熱コイルとの間に、耐熱性を有すると共に、絶縁性および非磁性の少なくとも一方を有した材料により前記炉本体の側面壁の変形を防止するように形成されたスタンプ部材が設けられ、前記底部出湯機構は、前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有する構成である。
【0055】
上記の構成によれば、スタンプ部材が側面壁の外周方向への変形を防止するため、側面壁を構成するセグメント間の隙間やセグメントと炉本体の底面壁との隙間が拡大することがない。この結果、被溶解金属が誘導加熱されて溶湯となっても、この溶湯がセグメント間の隙間等に差し込むことを十分に防止することができる。これにより、被溶解金属が凝固したときに、セグメントが外側に膨れて被溶解金属が炉本体に引っ掛かった状態にならないため、被溶解金属を炉本体から引き上げて実施する除去作業を容易且つ短時間で行うことができるという効果を奏する。
【0056】
請求項2の発明は、誘導加熱溶解炉であって、複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、前記炉本体の導電性セグメントには、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、該冷却水路中には、流路を2以上に区分する仕切り壁が設けられ、前記底部出湯機構は、前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有する構成である。上記の構成によれば、冷却水路全体としては流動抵抗を増大させることなく、導電性セグメントを仕切り壁により補強して変形し難いものとすることができるという効果を奏する。
【0057】
請求項3の発明は、誘導加熱溶解炉であって、複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、前記炉本体が純銅よりも強度の高い銅合金で形成されており、前記底部出湯機構は、前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有する構成である。上記の構成によれば、炉本体が純銅よりも強度の高い銅合金で形成されることにより変形し難いものとなるため、側面壁の変形を防止することができるという効果を奏する。
【0062】
また、請求項1乃至3の発明は、上記の構成によれば、溶湯を炉本体から払い出すときに、出湯ノズルにより溶湯の流動方向を規制して排出時の拡散を防止することができるため、底部出湯機構の下方に設けられた容器内に溶湯を確実に収容させることができる。そして、出湯終了後に誘導加熱コイルに交流電力を供給することによって、出湯ノズルに残留した溶湯の付着物や凝固物等の残留物を誘導加熱して溶解させ、出湯ノズルから完全に除去することができる。これにより、出湯ノズルが残留物で詰まることによって、次ロット分の溶湯の払い出しが困難や不可能になる等の不具合を防止することができるという効果を奏する。
【0063】
請求項の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記出湯構造体の表面温度を検出する温度検出装置を有する構成である。上記の構成によれば、温度検出装置により検出された出湯構造体の表面温度に基づいて被溶解金属の出湯開始時期を推定することができるという効果を奏する。
【0064】
請求項の発明の誘導加熱溶解炉は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記炉本体が配置された上側空間部と、前記底部出湯機構が配置された下側空間部とを独立して有した真空容器と、前記上側空間部と下側空間部との圧力差を変更することによって、前記底部出湯機構における出湯流速を制御する出湯制御手段とを有する構成である。
【0065】
上記の構成によれば、出湯時に上側空間部が下側空間部よりも高い圧力となるように両空間部の圧力差を変更することによって、この圧力差と溶湯の自重とで出湯の速度を大きくすることができるため、短時間で溶湯の払い出しを完了することができる。また、出湯終了時に上側空間部が下側空間部よりも低い圧力となるように両空間部の圧力差を変更することによって、この圧力差で出湯の速度を制御でき、また、出湯速度を小さくして溶湯の凝固を促進することができるため、短時間で出湯を停止することができるという効果を奏する。
【0066】
請求項の発明の誘導加熱溶解炉は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記炉本体の導電性セグメントには、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、該冷却水路は、冷却能力を高めたい部分の流路断面積が縮小されている構成である。
【0067】
上記の構成によれば、冷却水路の流路断面積が部分的に縮小されているため、冷却水路全体としては流動抵抗を増大させることなく、流路断面積の縮小により冷却水の流動速度を増大させることによって、この流路断面積の縮小された部分における冷却能力を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】誘導加熱溶解炉の動作状態を示す説明図である。
【図2】炉本体内での溶湯の状態を示す説明図である。
【図3】導電性セグメントの要部斜視図である。
【図4】導電性セグメント内の仕切り壁を示すものであり、(a)は正面視した状態、(b)は平面視した状態の説明図である。
【図5】出湯構造体の上方に位置するスカルの状態を示したものであり、(a)はスカルの層厚が薄くなってから誘導加熱した状態の説明図、(b)は出湯した状態の説明図、(c)はスカルの層厚が厚いうちに誘導加熱した状態の説明図、(d)は出湯されない状態の説明図である。
【図6】炉本体内での溶湯の状態を示す説明図である。
【図7】炉本体内での溶湯の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 炉本体
2 ベース体
3 柱状部
4 フランジ部
6 ボルト部材
7 ナット部材
8 導電性セグメント
9 側壁部
10 取付部
11 誘導加熱コイル
20 被溶解金属
20a スカル
20b 溶湯
21 底部出湯機構
22 出湯構造体
24 誘導加熱コイル
25 出湯ノズル
30 仕切り壁
31 スタンプ部材
32 真空容器
34 蓋体
35 上側空間部
36 下側空間部
37 第1圧力調整機構
38 第2圧力調整機構
40 引上機構
41 接合部材
42 昇降シリンダ
43 連結部材
44 容器

Claims (6)

  1. 複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、
    前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと、
    前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、
    前記炉本体と誘導加熱コイルとの間に、耐熱性を有すると共に、絶縁性および非磁性の少なくとも一方を有した材料により前記炉本体の側面壁の変形を防止するように形成されたスタンプ部材が設けられ、
    前記底部出湯機構は、
    前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、
    前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、
    前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、
    前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、
    前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、
    前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有することを特徴とする誘導加熱溶解炉。
  2. 複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、
    前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと
    前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、
    前記炉本体の導電性セグメントには、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、該冷却水路中には、流路を2以上に区分する仕切り壁が設けられ
    前記底部出湯機構は、
    前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、
    前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、
    前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、
    前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、
    前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、
    前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有することを特徴とする誘導加熱溶解炉。
  3. 複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより鉛直方向に形成された側面壁を有し、被溶解金属を冷却可能に収容する炉本体と、
    前記側面壁の外周側に配置され、前記炉本体に収容された被溶解金属を誘導加熱する誘導加熱コイルと
    前記炉本体の底面壁に設けられた底部出湯機構とを有し、
    前記炉本体が純銅よりも強度の高い銅合金で形成されており、
    前記底部出湯機構は、
    前記底面壁に逆円錐形状に形成された開口部と、
    前記開口部の下方に設けられ、上下方向に連通された出湯穴を有するように、縦割り状の複数の導電性セグメントを円周方向に相互に絶縁して配列することにより形成された出湯構造体と、
    前記出湯構造体の出湯穴から垂下されたカーボン製の出湯ノズルと、
    前記出湯構造体および出湯ノズルの周囲に配設された誘導加熱コイルと、
    前記誘導加熱コイルに高周波数の交流電力を供給可能な出湯用電源と、
    前記誘導加熱コイルに前記高周波数の交流電力を供給するように前記出湯用電源を制御する電源制御装置とを有することを特徴とする誘導加熱溶解炉。
  4. 前記出湯構造体の表面温度を検出する温度検出装置を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の誘導加熱溶解炉。
  5. 前記炉本体が配置された上側空間部と、前記底部出湯機構が配置された下側空間部とを独立して有した真空容器と、
    前記上側空間部と下側空間部との圧力差を変更することによって、前記底部出湯機構における出湯流速を制御する出湯制御手段とを有する請求項1乃至4のいずれかに記載の誘導加熱溶解炉。
  6. 前記炉本体の導電性セグメントには、冷却水を流通させる冷却水路が形成されており、該冷却水路は、冷却能力を高めたい部分の流路断面積が縮小されている請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導加熱溶解炉。
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