JP3570124B2 - 連続鋳造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属を溶解または溶湯を保温する容器から溶湯を凝固させながら連続的に引き抜いて鋳造する連続鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の連続鋳造装置は溶解、または保温装置として、例えばセラミック、または黒鉛の定型、または不定型のるつぼを用い、このるつぼの底部に黒鉛の円筒を取付けてその黒鉛の筒に溶湯を通して金属を連続鋳造する装置であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構成では、溶湯はセラミック、または黒鉛のるつぼに接触しており、溶解中、または保温中にるつぼからのガスやセラミック、または黒鉛が混入して汚染される問題がある。またセラミック、または黒鉛のるつぼは溶損、または酸化が起こるために高融点金属の連続鋳造が困難であった。
【0004】
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、るつぼ形の浮揚溶解装置を用いて高純度金属ないし高融点金属の連続鋳造を可能とするとともに、溶湯全体が浮揚力を消失してるつぼ底および流出口に凝固した際にこれを容易に除去できるようにした連続鋳造装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明によれば、有底の円筒状に形成されその底部に溶湯を出す流出口を有する良導電金属製のるつぼと、るつぼの外径側に設けられた誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を供給する交流電源とを備えてなる浮揚溶解装置、前記流出口に装着され連続鋳造時にその内部を通過する溶湯を冷却し凝固させる黒鉛製のスリーブ、このスリーブを外表面から冷却する冷却器、および前記スリーブ内で凝固した鋳片を下方に引き抜く引き抜き装置から構成するとともに、前記スリーブと冷却器とをそれぞれ周方向で少なくとも2分割構成とした連続鋳造装置とする。
【0006】
上記構成により、被溶解金属はるつぼとは非接触の浮揚状態で溶解、保温されるのでるつぼからの異物の混入がなく非汚染で高純度な溶湯を得ることが可能になる。また、るつぼ内の溶湯が減少する等で浮遊力を失いるつぼ底や流出口内で凝固した場合には、分割構成にした冷却器とスリーブとを径方向に引き離して取り外すことにより、スリーブ内に在ったるつぼ内の凝固金属に連らなる鋳片を露出させることができ、この露出した鋳片をるつぼ下方の適宜位置で切断することにより残りの部分をるつぼ内の凝固金属ごとるつぼ内から上方に引き上げて容易に除去できるようになる。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の連続鋳造装置において、前記スリーブの分割位置を前記冷却器の分割位置間の中間位置に位置させた連続鋳造装置とする。
上記の構成により、スリーブと冷却器の分割位置が相互に遠く離れて位置するので、スリーブの分割部を通じて溶湯が不測に外部に洩れ出すのを防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1ないし図2に基づいて説明する。図1において、1は有底の円筒状に形成され円筒状部に放射状に略等間隔で設けられた縦長のスリットを有し、かつ底部に溶湯2の流出口1aを有する良導電金属製のるつぼ、3aは被溶解材に、電磁誘導によって流れる渦電流を利用して主に溶解、加熱電力を与える上誘導コイル、3bは被溶解材に、電磁誘導によって流れる渦電流を利用して溶湯に浮揚力を与える下誘導コイル、4aは上誘導コイル3aに電流を供給する交流電源,4bは下誘導コイル3bに電流を供給する交流電源でありこれらの要素で浮揚溶解装置を構成している。
【0009】
5は流出口1aに装着された、溶湯2をその内部を通過中に冷却、凝固させる黒鉛製の円筒でなるスリーブ(このスリーブが鋳型となる)、6は内部に冷却水を通す給水路6aおよび排水路6bが形成され円筒スリーブ5を包囲して配設された冷却器、7は連続鋳造時に円筒スリーブ5内に先端部が挿入される棒状のスターティングブロック、8はスターティングブロック7および鋳造された鋳片を引き抜く引き抜き装置としてのピンチロールであり、これらは上記の浮揚溶解装置とともに連続鋳造装置を構成している。
【0010】
るつぼ1は電気的に絶縁された2つ以上のセグメントを誘導コイル3a,3bの内側に並べて構成され、この場合その底部に冷却器6の上部を適宜の隙間をあけて包囲する出湯管部1bが一体に形成されている。このるつぼ1内に被溶解材料を入れ、誘導コイル3a,3bに所定の電流を供給すると、誘導コイル3a,3bで発生する磁束はセグメント間のスリットの隙間からるつぼ内に進入して被溶解材料と鎖交する。るつぼ1を構成する各セグメントは溶損しないように内部に冷却水を通す水路1cが形成され水冷されている。
【0011】
誘導コイル3a,3bの電流は、電気的に絶縁されたそれぞれのセグメントに渦電流を誘導するとともに、被溶解材料にも渦電流を誘導する。このるつぼ1と被溶解材料とに流れる渦電流の方向は対向する表面部分では互いに逆方向を向いているので磁気的に反発力となり、るつぼ1は固定されているので被溶解材料には浮揚力が働きこの浮揚力が被溶解材料の重量より大きければ被溶解材料はるつぼ1から離れて浮揚する。被溶解材料は抵抗損により熱を発生して加熱しつづける。このために被溶解材料は溶解金属となりかつ浮揚状態が保持される。
【0012】
ここで浮揚状態の溶解金属はるつぼ1内面との接触を防ぐために、るつぼ1内の中央部に安定して位置することが望ましい。このるつぼ1内で安定して浮揚させるために、るつぼ底部側になるほど溶解金属の重量に対抗するるつぼ1からの電磁反発力を大きくする必要がある。この電磁反発力をるつぼ底部で大きくするために、るつぼ底部に巻かれた下誘導コイル3bには上誘導コイル3aに比べて大きい浮揚力が得られるように低い周波数の交流電源4bから電流を供給し、上誘導コイル3aには被溶解材料を溶解する高周波電流が別の交流電源4aから供給される。そして、下誘導コイル3bが出湯管部1bの外径側にかけて設けられることにより、出湯状態から出湯を停止するときに、所定の周波数の電流を下誘導コイル3bに流して出湯状態にある溶湯に強い横絞り力を発生させて溶湯を絞り切るようになっている。
【0013】
上記のように、連続鋳造に使用する金属の溶解および保温用の装置を浮揚溶解装置とすることにより、溶解時に溶湯が他の物と接触しないために異物の混入が極めて少ないこと、融点の高い材料でも溶解が可能であること、熱伝導損失が小さいこと等の特徴が利用できる。また、るつぼ1の流出口1aに装着された黒鉛製の円筒スリーブ5を冷却器6で冷却することにより、円筒スリーブ5の温度を低く抑えて、円筒スリーブ5内を通過して冷却される溶湯すなわち鋳片に、円筒スリーブ5の炭素成分が溶出して混入するのを少なく抑えることができる。
【0014】
ここまでの構成で連続鋳造は以下のように実施される。まず浮揚溶解装置を構成するるつぼ1内に溶解材料が投入されて溶解運転が開始され、溶解材料はるつぼ1内で浮揚した状態で溶解される。溶解終了後直ちにあるいは保温運転を経た後、スターティングブロック7がその先端が流出口1aに臨む位置まで円等スリーブ5内に下端側から挿入される。そして主に下誘導コイル3bへの電力を浮揚力を弱めるように調整して出湯を開始し、同時にピンチロール8を駆動してスターティングブロック7を徐々に引き抜き操作し連続鋳造運転に移行する。
【0015】
すなわち、スターティングブロック7を徐々に引き抜くと溶湯が円筒スリーブ5内を通過する過程で冷却されて先のものから凝固して円柱状の鋳片となる。この鋳片の形成によりスターティングブロック7の引き抜き抵抗が増大するが、鋳片は先のものがスターティングブロック7の先端に溶着するので以降はその引き抜き抵抗に抗してスターティングブロック7が強制的に引き抜かれる。図1はスターティングブロック7を円筒スリーブ5から完全に引き抜いた状態を示しており、この状態からさらにスターティングブロック7を引き抜いた後は、鋳造された円柱状の鋳片がピンチロール8によって引き抜き操作され、連続鋳造が続行される。
【0016】
ここで、浮揚溶解装置はるつぼ内の溶湯量が極端に少なくなってくると浮揚のための電力の効率が悪化してその浮揚力が急に消失することが知られている。上記の構成でこのような現象が不測に生じるとスリーブ5内に鋳片が在るために溶湯はるつぼ底に溜まり、水冷されているるつぼ1に接触することによって急速に凝固する。こうなるとそのまま再溶解することが困難となり、また鋳片を引き抜くことができなくなるので、るつぼ底に凝固している金属を取り除く必要がある。
【0017】
この凝固金属の除去を容易に行うために、図2に示すように、円筒スリーブ5と冷却器6は周方向でこの場合それぞれ2分割された構造になっている。なお図2では円筒スリーブ5および冷却器6の分割位置を明瞭に示すために分割部に隙間をあけて図示しているが、実際には隙間がなく分割面相互はぴったり合った構造になっている。この円筒スリーブ5と冷却器6の分割部は図示のように相互に90°位置をずらせて設け、円筒スリーブ5の分割位置を冷却器6の分割位置間の中間に位置させることにより、円筒スリーブ5の分割部を通じて溶湯が不測に外部に洩れ出すことが防止される。なお、2分割の他に3分割や4分割でも実施できる。
【0018】
さて、上記した分割構造ではなく、円筒スリーブ5と冷却器6とが一体構造の場合は、凝固金属の除去に際し、まずピンチローラ8で引き抜かれている鋳片をピンチローラ8と冷却器6との間の適当な位置で切断しその切断口をグラインダなどで滑らかに仕上げる。そして冷却器6を適当位置まで引き下ろし、次いで円筒スリーブ5をその流出口1aへの装着を外して鋳片の切断口よりも下方に引き下ろすことにより、るつぼ内の凝固金属を切断した残りの鋳片とともに、るつぼ内から上方に引き上げて除去する。
【0019】
このような作業では円筒スリーブ5の引き下ろしに際し、円筒スリーブ5の内面が鋳片の切断口によって損傷しないように、上記のようなグラインダでの作業が不可欠であり、かつ円筒スリーブ5は鋳片に対して真っ直ぐにかつ慎重に引き下ろさなければ容易に抜けないなど、作業が煩雑になりかつ復旧時間が長引く。また、円筒スリーブ5を鋳片よりも下方に引き下ろすには、るつぼ1とピンチローラ8の相互間の設置間隔を相当大きくしておかなけれはならず、装置全体の設置に要する専有空間が増大するなどの問題がある。
【0020】
これに対し、円筒スリーブ5と冷却器6とが分割構成になる上記構成の連続鋳造装置では、凝固金属の除去に際し、まず冷却器6を出湯管部1b内から引き下ろしてその分割部分で分離し径方向に引き離す。そしてるつぼの流出口1aから円筒スリーブ5の装着を外してその分割部分で径方向に引き離すことにより、円筒スリーブ5内に在った鋳片を露出させる。次いで露出した鋳片を適当な位置で切断すれば、るつぼ内の凝固金属を切断した残りの鋳片とともに、るつぼ内から上方に引き上げて容易に除去できる。
【0021】
このように、円筒スリーブ5と冷却器6とを分割構造にしておくと、不測にるつぼ内に凝固した金属を簡単な作業で除去できて復旧時間が短縮できるとともに、円筒スリーブ5と冷却器6とを径方向に引き離すので、るつぼ1とピンチローラ8の相互間の設置間隔に余裕を持たせる必要がなく、装置全体の設置に要する専有空間が最小限に抑えるられる。
【0022】
【発明の効果】
この発明によれば、溶解部を浮揚溶解装置としたので、高純度ないし高融点金属の連続鋳造を可能とすることができるとともに、装置の設置空間を増大させることなしに、るつぼ内に不測に凝固した金属を簡単な作業で除去でき、その復旧時間が短縮できるという効果を奏する。
【0023】
また、スリーブの分割位置を冷却器の分割位置間の中間位置に位置させることにより、スリーブの分割部を通じて溶湯が不測に外部に洩れ出すのを防止することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す連続鋳造装置の構成図
【図2】図1のA−A断面図
【符号の説明】
1 るつぼ
1a 流出口
2 溶湯
3a 上誘導コイル
3b 下誘導コイル
4a,4b 交流電源
5 スリーブ
6 冷却器
7 スターティングブロック
8 ピンチロール
Claims (2)
- 有底の円筒状に形成されその底部に溶湯を出す流出口を有する良導電金属製のるつぼと、るつぼの外径側に設けられた誘導コイルと、誘導コイルに高周波電流を供給する交流電源とを備えてなる浮揚溶解装置、前記流出口に装着され連続鋳造時にその内部を通過する溶湯を冷却し凝固させる黒鉛製のスリーブ、このスリーブを包囲して設けられこのスリーブを外表面から冷却する冷却器、および前記スリーブ内で凝固した鋳片を下方に引き抜く引き抜き装置から構成するとともに、前記スリーブと冷却器とをそれぞれ周方向で少なくとも2分割構成としたことを特徴とする連続鋳造装置。
- 請求項1記載の連続鋳造装置において、前記スリーブの分割位置を前記冷却器の分割位置間の中間位置に設けたことを特徴とする連続鋳造装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP31440596A JP3570124B2 (ja) | 1996-11-26 | 1996-11-26 | 連続鋳造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP31440596A JP3570124B2 (ja) | 1996-11-26 | 1996-11-26 | 連続鋳造装置 |
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JPH10156488A JPH10156488A (ja) | 1998-06-16 |
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ID=18052958
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JP31440596A Expired - Fee Related JP3570124B2 (ja) | 1996-11-26 | 1996-11-26 | 連続鋳造装置 |
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JP (1) | JP3570124B2 (ja) |
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JP4774590B2 (ja) * | 2000-11-08 | 2011-09-14 | シンフォニアテクノロジー株式会社 | 誘導加熱溶解炉 |
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1996
- 1996-11-26 JP JP31440596A patent/JP3570124B2/ja not_active Expired - Fee Related
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