JP4770718B2 - 高周波フィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、高周波信号から特定の周波数成分をフィルタリングする高周波フィルタに関する。
図10は、従来の一般的な分布定数型ローパスフィルタの構成を示す平面図である。尚、図10に示すローパスフィルタ100は、例えばマイクロストリップラインを用いて形成されるものである。図10に示す通り、従来のローパスフィルタ100は、入力線路101と出力線路102との間に、入力線路101側から順にオープンスタブ103、パターン104、オープンスタブ105、パターン106、及びオープンスタブ107を順に形成したものである。
オープンスタブ103,105,107は、入力線路101から出力線路102に至る高周波信号の伝送線路に対して交差する方向に設けられた分岐線路であり、高周波信号に対して容量成分(キャパシタ)として作用する。パターン104,106は、その幅が入力線路101及び出力線路102の幅よりも狭く、入力線路101から出力線路102に至る方向に延びる線路であり、高周波信号に対して誘導成分(インダクタンス)として作用する。
上記構成において、入力線路101から入力された高周波信号は、オープンスタブ103、パターン104、オープンスタブ105、パターン106、及びオープンスタブ107を順に介することにより高周波信号に含まれる高周波成分が遮断される。これにより、高周波信号に含まれる低周波数成分のみがローパスフィルタ100を通過して出力線路102から出力される。尚、図10に示すローパスフィルタ100は5次のローパスフィルタである。
図11は、一般的なローパスフィルタの透過特性を示す図である。尚、図11においては、チェビシェフフィルタの透過特性を示す曲線L10と、バタワースフィルタの透過特性を示す曲線L20とを図示している。図11に示す通り、チェビシェフフィルタは、通過域においてリプルΔrが生ずるが、遮断周波数(カットオフ周波数fc)近辺の減衰傾度がバタワースフィルタよりも大きい透過特性を有する。これに対し、バタワースフィルタは、減衰傾度がチェビシェフフィルタよりも小さい(緩やかである)が、通過域において平坦な透過特性を有する。尚、図11に示すバタワースフィルタの減衰傾度は−6dB/oct(即ち、周波数が2倍になると6dBだけ減衰する特性)である。尚、従来のフィルタ回路の詳細については、例えば以下の特許文献1を参照されたい。
特開平6−97701号公報
ところで、近年においては各種電子部品の小型化が要求されている。例えば、高周波信号を扱う携帯電話機においては、外形寸法が小さく、軽量であることが本質的に求められるため、携帯電話機に用いられる高周波フィルタも小型であることが要求される。ここで、上述した一般的なチェビシェフフィルタ又はバタワースフィルタを用いて高周波フィルタを設計しようとすると、設計仕様から完成後の大きさをある程度推定することができるが、小型化を図ろうとすると誘電率の高い基板を用いる必要がある。
また、高周波フィルタには、減衰特性が急峻であるという特性が要求されることが多いが、かかる減衰特性を実現しようとすると多くの次数が必要となって益々大型化してしまい、高誘電率を有する基板を用いることが必須となる。しかしながら、高誘電率を有する基板を用いると、他の基板に形成された回路との間でインピーダンス不整合が生じたり、或いはパターン幅が極めて細くなり製造が困難になる可能性がある。更には、高誘電率を有する基板は高価であるためコストが上昇するととともに、高周波フィルタの基板だけ別基板にする必要があるため実装面から望ましくないという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高誘電率を有する基板を用いることなく、低コスト且つ小型で減衰特性が急峻なフィルタ特性を有する高周波フィルタを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の高周波フィルタは、高周波信号から特定の周波数成分をフィルタリングする高周波フィルタ(10、20、30、40、50)において、前記高周波信号の伝送線路(11、12、21、22、31、32)に対して交差する交差方向に設けられ、互いに電磁的に結合する結合部(13b、14b)を有する複数の分岐線路(13、14)を備えており、前記分岐線路は、前記交差方向に延びるように前記高周波信号の伝送線路よりも幅狭に形成され、前記高周波信号に対して誘導成分として作用する第1パターン(13a,14a)と、前記交差方向に延びるように前記第1パターンよりも幅広に形成され、前記高周波信号に対して誘導成分として作用して前記結合部をなす第2パターン(13b、14b)とからなることを特徴としている。
この発明によると、伝送線路に入力された高周波信号は、その一部が伝送線路に対して交差する方向に設けられた分岐線路を伝播し、分岐線路に設けられた結合部を介して他の分岐線路に伝播して分岐線路に戻る。
また、本発明の高周波フィルタは、前記分岐線路が、隣接する一対の分岐線路を単位として電磁的に結合することを特徴としている。
また、本発明の高周波フィルタは、前記結合部が、前記分岐線路の途中又は前記分岐線路の先端に設けられることを特徴としている
また、本発明の高周波フィルタは、前記分岐線路に対応して前記伝送線路の途中に設けられ、前記伝送線路よりも幅が狭く前記高周波信号に対して誘導成分として作用する第2分岐線路(15)を備えることを特徴としている。
また、本発明の高周波フィルタは、前記第2分岐線路がコ字形状であることを特徴としている。
更に、本発明の高周波フィルタは、前記伝送線路及び前記分岐線路は誘電体基板(SB)上に形成されており、隣接する分岐線路の前記結合部は、その間隔が前記誘電体基板の厚みの3倍以下となるよう配置されることを特徴としている。
ここで、本発明の高周波フィルタは、分岐線路の電磁的結合を大きくするために、分岐線路の結合部の間隔を誘電体基板の厚み以下にすることが望ましい。
本発明によれば、伝送線路に入力された高周波信号の一部を分岐し、互いに電磁的に結合された結合部を有する複数の分岐線路を備えているため、分岐線路に伝播した高周波信号に共振が生じてQ値が大きくなり減衰特性を急峻にすることができるとともに、小型化することができる。これにより、高誘電率を有する基板を用いることなく、低コスト且つ小型で減衰特性が急峻なフィルタ特性を有する高周波フィルタを提供することができるという効果がある。
以下、図面を参照して本発明の実施形態による高周波フィルタについて詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態による高周波フィルタの構成を示す平面図であり、図2は図1中のA−A線に沿う断面矢視図である。尚、ここではマイクロストリップラインを用いて形成された高周波フィルタを例に挙げて説明する。図1に示す通り、本実施形態の高周波フィルタ10は、高周波信号の伝送線路としての入力線路11及び出力線路12の間に、分岐線路13,14と分岐線路15(第2分岐線路)とを形成したものである。尚、図1に示す高周波フィルタ10は、入力線路11側から見た場合と入力線路12側から見た場合とで対称な回路である。
入力線路11は高周波信号が入力される線路であり、出力線路12は入力線路11から入力された高周波信号から特定の周波数成分をフィルタリングした信号が出力される線路である。尚、入力線路11及び出力線路15は、例えば特性インピーダンスが50Ωとなるように、その幅w1,w2等が設計されている。尚、図1に示す高周波フィルタ10は対称な回路であるため、入力線路11の幅w1と出力線路12の幅w2とは等しく、1mm程度である。また、入力線路11及び出力線路12は、直接接続されておらず、分岐線路13,14及び分岐線路15を介して互いに電気的に接続されている。
分岐線路13は、入力線路11に接続されており、入力線路11から出力線路12に至る高周波信号の伝送線路に対して交差する方向に設けられている。尚、以下の説明では、入力線路11から出力線路12に至る方向を「伝送方向」といい、この伝送方向に交差する方向を「交差方向」という。分岐線路13は、交差方向に延びる第1パターン13aと第2パターン13bとからなる。第1パターン13aは、その幅w31が入力線路11の幅w1及び出力線路12の幅w2よりも狭く、高周波信号に対して誘導成分(インダクタンス)として作用する。第2パターン13bは、その幅w32が第1パターン13aの幅w31よりも広く、高周波信号に対して誘導成分として作用するとともに、オープンスタブとして機能する。尚、第2パターン13bが有する誘導成分は、第1パターン13aが有する誘導成分とは異なる。
分岐線路14は、出力線路12に接続されており、交差方向に設けられている。この分岐線路14は、分岐線路13と同様に、交差方向に延びる第1パターン14aと第2パターン14bとからなる。第1パターン14aは、その幅w41が入力線路11の幅w1及び出力線路12の幅w2よりも狭く、高周波信号に対して誘導成分(インダクタンス)として作用する。第2パターン14bは、その幅w42が第1パターン14aの幅w41よりも広く、高周波信号に対して誘導成分として作用するとともに、オープンスタブとして機能する。尚、図1に示す高周波フィルタ10は対称な回路であるため、第1パターン14aが有する誘導成分は分岐線路13の第1パターン13aが有する誘導成分と等しく、第2パターン14bが有する誘導成分は分岐線路13の第2パターン13bが有する誘導成分と等しい。
分岐線路13の第2パターン13bと分岐線路14の第2パターン14bとは、分岐線路13と分岐線路14とを互いに電磁的に結合する結合部をなしている。つまり、図1に示す通り、分岐線路13と分岐線路14とは離間して配置されているものの、分岐線路13を伝播する高周波信号が第2パターン部13bに至ると、その成分の一部が第2パターン部14bを介して分岐線路14に伝播される。ここで、分岐線路13と分岐線路14とが「電磁的に結合」しているとは、分岐線路13と分岐線路14との間隔(つまり、第2パターン13b,14bの間隔)Δtが、図2に示す誘電体基板SBの厚みt0の3倍以下である状態をいう。尚、誘電体基板SBの裏面には、接地電位に設定されるグランドパターン16が設けられている。
高周波回路を設計する場合において、パターン間を電磁的に絶縁する場合には、経験的にパターンの間隔を誘電体基板SBの厚みt0の3倍よりも大きくしている。例えば、誘電体基板SBの厚みt0が0.5mmである場合には、パターンの間隔を1.5mmよりも大きくすれば、そのパターン間における高周波信号の伝播を無視することができる。逆に、パターンの間隔が誘電体基板SBの厚みt0の3倍以下である場合には、そのパターン間における高周波信号の伝播を無視することができず、パターン間が電磁的に結合しているということができる。以上から、分岐線路13と分岐線路14との間隔Δtが誘電体基板SBの厚みt0の3倍以下である場合には、分岐線路13と分岐線路14とが「電磁的に結合」しているということができる。
尚、上述の通り、分岐線路13と分岐線路14との間隔Δtが誘電体基板SBの厚みt0の3倍以下であれば分岐線路13と分岐線路14とが「電磁的に結合」しているということができる。しかしながら、分岐線路13と分岐線路14との電磁的結合の度合いを示す結合係数kを大きくするためには、分岐線路13と分岐線路14との間隔(第2パターン13b,14bの間隔)Δtを、誘電体基板SBの厚みt0以下にすることが望ましい。
ここで、分岐線路13,14を電磁的に結合させる結合部を設けるのは、Q値を大きくするためである。つまり、図1に示す高周波フィルタ10が備える分岐線路13,14、更には分岐線路15は、高周波信号に対して誘導成分(正確には、誘導成分及び容量成分)として作用するため、結合部を設けなくともフィルタ回路が形成されており、あるQ値を有する。これに加えて、本実施形態では分岐線路13,14を電磁的に結合させることで共振を生じさせ、上記のQ値と共振との相乗効果によりQ値を大きくして減衰特性を急峻にしている。
分岐線路15は、入力線路11及び出力線路12に接続されたコ字形状の線路であり、その幅w5が入力線路11の幅w1及び出力線路12の幅w2よりも狭く、高周波信号に対して誘導成分として作用する。尚、以上の高周波フィルタ10が形成される誘電体基板SBは、一般的に用いられるガラスエポキシ基板等の安価な基板である。以上説明した、分岐線路13〜15が伝送方向に占める大きさは数mm程度であり、交差方向に占める大きさは十数mm程度である。
上記構成において、入力線路11から入力された高周波信号は、入力線路11に接続された分岐線路13を伝播する信号と、分岐線路15を伝播する信号とに分岐される。分岐された一方の信号は、分岐線路13の第1パターン13aを介して第2パターン13bに至り、その一部が第2パターン13bと電磁的に結合している分岐線路14の第2パターン14bに伝播する。そして、分岐線路の第2パターン14bから第1パターン14aを介して出力線路12に至る。他方、分岐された他方の信号は、コ字形状の分岐線路15を介して出力線路12に至る。分岐線路13,14を介した信号と、分岐線路15を介した信号とは、出力線路12において合成されて出力される。
図3は、本発明の第1実施形態による高周波フィルタの反射・透過特性を示す図である。図3において、符号R11を付した曲線は高周波フィルタ10の反射特性を示しており、符号T11を付した曲線は高周波フィルタ10の透過特性を示している。尚、正確には、曲線R11は、高周波フィルタ10を四端子回路としてみた場合の散乱パラメータ(Sパラメータ)S11,S22の周波数特性を示しており、曲線T11は散乱パラメータS21の周波数特性を示している。
図3を参照すると、周波数が3GHz付近では周波数が上がるにつれて急激に反射量が増大する一方で透過量が減少し始め、周波数が3.4〜4GHz付近では透過率が急激に低下することが分かる。これから、図1に示す高周波フィルタ10は、ローパスフィルタの透過特性を有することが分かる。また、3.4〜4GHz付近における透過特性を示す曲線T11を参照すると、減衰傾度が大きく、減衰特性が急峻であることが分かる。以上から、図1に示す第1実施形態による高周波フィルタ10は、高誘電率を有する基板を用いることなく、低コスト且つ小型で減衰特性が急峻なフィルタ特性を有することが分かる。
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による高周波フィルタの構成を示す平面図である。図4に示す通り、本実施形態の高周波フィルタ20は、図1に示す高周波フィルタ10を複数縦続接続したものである。つまり、高周波信号の伝送線路としての入力線路21及び出力線路22の間に、各々が図1に示す分岐線路13〜15と同様の構成からなるフィルタ部23〜26を設け、フィルタ部23,24を接続線路27で、フィルタ部24,25を接続線路28で、フィルタ部25,26を接続線路29でそれぞれ接続したものである。
図4を参照すると、高周波信号の伝送線路に対して図1に示す分岐線路13,14に相当する分岐線路が合計8本設けられており、図1に示す分岐線路15が合計4本設けられている。分岐線路13,14に相当する合計8本の分岐線路は、隣接する一対の分岐線路を単位として電磁的に結合している。つまり、フィルタ部23〜26をそれぞれ単位として結合している。
尚、フィルタ部23〜26は同一形状ではなく、フィルタ部24,25は、交差方向における長さがフィルタ部23,26よりも若干長く設定されている。また、図4に示す高周波フィルタ20も、入力線路21側から見た場合と入力線路22側から見た場合とで対称な回路であり、図2に示す誘電体基板SBと同様の一般的なガラスエポキシ基板等の安価な基板上に形成される。
尚、ここでは、高周波フィルタ20が対称な回路である場合を説明するが、非対称であっても良く、フィルタ部23〜26の各々における結合係数を各々異ならせても良い。また、ここでは、フィルタ部23〜26の各々に設けられた一対の分岐線路はフィルタ部23〜26内部でのみ電磁的に結合する場合を例に挙げて説明するがフィルタ部23〜26間においても電磁的に結合させても良い。つまり、フィルタ部23〜26の各々の間隔を狭くしてフィルタ部23〜26間における電磁的な結合を実現しても良い。図4に示す高周波フィルタ20は、フィルタ部23〜26が伝送方向に占める大きさは十mm程度であり、交差方向に占める大きさは十数mm程度である。
上記構成において、入力線路21から入力された高周波信号は、入力線路21に接続されたフィルタ部23が備える一対の分岐線路(図1の分岐線路13,14に相当する分岐線路)を伝播する信号と、分岐線路(図1の分岐線路15に相当する分岐線路)を伝播する信号とに分岐される。分岐された一方の信号は、一対の分岐線路における結合部を介して接続線路27に至る。他方、分岐された他方の信号は、コ字形状の分岐線路を介して接続線路27に至る。一対の分岐線路を介した信号と、他の分岐線路を介した信号とは、接続線路27において合成される。以上の動作が、フィルタ部24及び接続線路28、フィルタ部25及び接続線路25、並びにフィルタ部26及び出力線路22で順次行われてフィルタリングされた信号が出力線路22から出力される。
図5は、本発明の第2実施形態による高周波フィルタの反射・透過特性を示す図であって、(a)は透過特性を示す図であり、(b)は反射特性を示す図である。図5(a)において、符号T21を付した曲線は高周波フィルタ20の透過特性の実測値を示しており、符号T22を付した曲線は高周波フィルタ20の透過特性のシミュレーション結果を示している。また、図5(b)において、符号R21を付した曲線は高周波フィルタ20の反射特性の実測値を示しており、符号R22を付した曲線は高周波フィルタ20の反射特性のシミュレーション結果を示している。尚、正確には、曲線T21,T22は、高周波フィルタ20を四端子回路としてみた場合の散乱パラメータ(Sパラメータ)S21の周波数特性を示しており、曲線R21,R22は散乱パラメータS11,S22の周波数特性を示している。
図5(a)を参照すると、周波数が3GHz付近において周波数が上がるにつれてほぼ直線的に、且つ急激に透過量が低下することが分かる。また、図5(b)を参照すると、周波数が3GHz付近から周波数が上がるにつれて急激に反射量が増大し、3.6GHz付近では入射した高周波信号の殆どが反射されることが分かる。また、図5(a),(b)から、図4に示す高周波フィルタ20は、ローパスフィルタの透過特性を有し、実測値がシミュレーション結果にほぼ一致することが分かる。更に、図5(a)と図3とを比較すると、周波数が4〜5GHzのときの透過量が、図3よりも図5(a)の方が抑えられていることが分かる。以上から、図1に示す第2実施形態による高周波フィルタ20は、高誘電率を有する基板を用いることなく、低コスト且つ小型で減衰特性が急峻なフィルタ特性を有することが分かる。しかも、高周波領域(周波数が4〜5GHzの領域)の透過率が第1実施形態よりも抑えられて良好な透過特性が得られている。
図6は、本発明の実施形態による高周波フィルタと従来の高周波フィルタとの大きさを比較するための平面図であって、(a)は従来の高周波フィルタの平面図であり、(b)は本発明の実施形態による高周波フィルタの平面図である。図6(a)に示す従来の高周波フィルタ200は、マイクロストリップラインを用いて形成されたものであり、入力線路201と出力線路202との間に、オープンスタブ203a〜211aとパターン203b〜210bとを交互に形成したものである。
オープンスタブ203a〜211aは、入力線路201から出力線路202に至る高周波信号の伝送線路に対して交差する方向に延びる幅広の分岐線路であり、高周波信号に対して容量成分(キャパシタ)として作用する。パターン203b〜210bは、その幅が入力線路201及び出力線路202の幅よりも狭く、その形状がコ字形状(又はU次形状)であり、高周波信号に対して誘導成分として作用する。
これに対し、図6(b)に示す本発明の実施形態による高周波フィルタ30は、図4に示す高周波フィルタ20を2段縦続接続したものである。つまり、高周波信号の伝送線路としての入力線路31及び出力線路32の間に、各々が図1に示す分岐線路13〜15と同様の構成からなるフィルタ部33〜40を設け、各フィルタ部を接続線路でそれぞれ接続したものである。尚、図6(a)に示す従来の高周波フィルタ200及び図6(b)に示す本発明の実施形態による高周波フィルタ30は、同一の誘電率を有する誘電体基板上に形成されている。
図7は、本発明の実施形態による高周波フィルタ30と従来の高周波フィルタ200との反射・透過特性を示す図であって、(a)は透過特性を示す図であり、(b)は(a)の拡大図(縦軸のスケールのみを拡大した図)であり、(c)は反射特性を示す図であり、(d)は群遅延特性を示す図である。図7(a),(b)において、符号T31を付した曲線は本発明の実施形態による高周波フィルタ30の透過特性の実測値を示しており、符号T201を付した曲線は従来の高周波フィルタ200の透過特性を示している。また、図5(c)において、符号R31を付した曲線は本発明の実施形態による高周波フィルタ30の反射特性の実測値を示しており、符号R201を付した曲線は従来の高周波フィルタ200の反射特性を示している。
更に、図5(d)において、符号V31を付した曲線は本発明の実施形態による高周波フィルタ30の群遅延特性を示しており、符号V201を付した曲線は従来の高周波フィルタ200の群遅延特性を示している。図7(a)〜(d)を参照すると、本発明の実施形態による高周波フィルタ30と従来の高周波フィルタ200との反射・透過特性及び群遅延特性はほぼ同様であることが分かる。
図6(a)に示す従来の高周波フィルタ200と図6(b)に示す本発明の実施形態による高周波フィルタ30は、交差方向に占める大きさは共に十数mm程度であり大差がない。しかしながら、従来の高周波フィルタ200の伝送方向に占める大きさが65mm程度であるのに対し、本発明の実施形態による高周波フィルタ30の伝送方向に占める大きさは20mm程度であり、3分の1以下の大きさである。このように、本発明の実施形態による高周波フィルタ30は、従来の高周波フィルタ200の反射・透過特性と同様の透過特性等を有するが、従来の高周波フィルタ200よりも小型化することができる。
〔他の実施形態〕
図8は、本発明の第2実施形態による高周波フィルタの第1変形例を示す平面図である。図4に示す本発明の第2実施形態による高周波フィルタ20は、フィルタ部23〜26における分岐線路(図1の分岐線路13,14に相当する分岐線路)が高周波信号の伝送線路の片側に配置され、他の分岐線路(図1の分岐線路15に相当する分岐線路)が高周波信号の伝送線路のもう片側に配置されていた。
しかしながら、図8に示す通り、フィルタ部23〜26における分岐線路の配置を変えても良い。例えば、図8に示す高周波フィルタ40においては、フィルタ部23,26の分岐線路(図1の分岐線路13,14に相当する分岐線路)は、高周波信号の伝送線路に対して図中符号D11を付した方向に配置され、他の分岐線路(図1の分岐線路15に相当する分岐線路)は、高周波信号の伝送線路に対して図中符号D12を付した方向に配置されている。これに対しフィルタ部24,25の分岐線路(図1の分岐線路13,14に相当する分岐線路)は、高周波信号の伝送線路に対して図中符号D12を付した方向に配置され、他の分岐線路(図1の分岐線路15に相当する分岐線路)は、高周波信号の伝送線路に対して図中符号D11を付した方向に配置されている。このように、分岐線路の配置を適宜変更しても良い。
図9は、本発明の第2実施形態による高周波フィルタの第2変形例を示す平面図である。図4に示す本発明の第2実施形態による高周波フィルタ20は、フィルタ部23〜26における分岐線路(図1の分岐線路15に相当する分岐線路)の形状はコ字形状であった。しかしながら、この分岐線路の形状はコ字形状に限られず、直線形状にすることも可能である。
図9に示す高周波フィルタ50は、高周波信号の伝送線路としての入力線路21及び出力線路22の間にフィルタ部51〜54を備えているが、フィルタ部51は図1の分岐線路13,14に相当する分岐線路と直線形状の分岐線路55とを備えた構成である。フィルタ部52〜54についても同様に、図1の分岐線路13,14に相当する分岐線路と直線形状の分岐線路56〜58の何れかとを備えた構成にすることができる。
また、前述した第1実施形態による高周波フィルタ10においては、分岐線路13,14の先端部に結合部としての第2パターン13b,14bが形成されていたが、結合部は分岐線路13,14の途中に形成されていても良い。また、結合部としての第2パターン13b,14bは、何れも第1パターン13a,13bよりも幅広に形成されていた。しかしながら、第2パターン13b,14bの幅を第1パターン13a,13bの幅と等しくし、第2パターン13b,14bの間隔を第1パターン13a,13bの間隔よりも狭くすることで分岐線路13,14を電磁的に結合させても良い。以上の事項は、第2実施形態及びその変形例についても同様である。
また、前述した実施形態では、マイクロストリップラインを用いて形成された高周波フィルタを例に挙げて説明したが、エンベデッドマイクロストリップライン、アシンメトリックストリップライン等を用いて形成することも可能である。更に、本発明はマイクロストリップラインに制限されず、導波管及び周波数選択膜(FSS:Frequency Selective Surfaces)にも適用することができる。
本発明の第1実施形態による高周波フィルタの構成を示す平面図である。 図1中のA−A線に沿う断面矢視図である。 本発明の第1実施形態による高周波フィルタの反射・透過特性を示す図である。 本発明の第2実施形態による高周波フィルタの構成を示す平面図である。 本発明の第2実施形態による高周波フィルタの反射・透過特性を示す図である。 本発明の実施形態による高周波フィルタと従来の高周波フィルタとの大きさを比較するための平面図である。 本発明の実施形態による高周波フィルタ30と従来の高周波フィルタ200との反射・透過特性を示す図である。 本発明の第2実施形態による高周波フィルタの第1変形例を示す平面図である。 本発明の第2実施形態による高周波フィルタの第2変形例を示す平面図である。 従来の一般的な分布定数型ローパスフィルタの構成を示す平面図である。 一般的なローパスフィルタの透過特性を示す図である。
符号の説明
10 高周波フィルタ
11 入力線路
12 出力線路
13 分岐線路
13a 第1パターン
13b 第2パターン
14 分岐線路
14a 第1パターン
14b 第2パターン
15 分岐線路
20 高周波フィルタ
21 入力線路
22 出力線路
30 高周波フィルタ
31 入力線路
32 出力線路
40 高周波フィルタ
50 高周波フィルタ
SB 誘電体基板

Claims (6)

  1. 高周波信号から特定の周波数成分をフィルタリングする高周波フィルタにおいて、
    前記高周波信号の伝送線路に対して交差する交差方向に設けられ、互いに電磁的に結合する結合部を有する複数の分岐線路を備えており、
    前記分岐線路は、前記交差方向に延びるように前記高周波信号の伝送線路よりも幅狭に形成され、前記高周波信号に対して誘導成分として作用する第1パターンと、
    前記交差方向に延びるように前記第1パターンよりも幅広に形成され、前記高周波信号に対して誘導成分として作用して前記結合部をなす第2パターンと
    からなることを特徴とする高周波フィルタ。
  2. 前記分岐線路は、隣接する一対の分岐線路を単位として電磁的に結合することを特徴とする請求項1記載の高周波フィルタ。
  3. 前記結合部は、前記分岐線路の途中又は前記分岐線路の先端に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波フィルタ。
  4. 前記分岐線路に対応して前記伝送線路の途中に設けられ、前記伝送線路よりも幅が狭く前記高周波信号に対して誘導成分として作用する第2分岐線路を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の高周波フィルタ。
  5. 前記第2分岐線路はコ字形状であることを特徴とする請求項4記載の高周波フィルタ。
  6. 前記伝送線路及び前記分岐線路は誘電体基板上に形成されており、隣接する分岐線路の前記結合部は、その間隔が前記誘電体基板の厚みの3倍以下となるよう配置されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の高周波フィルタ。
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