以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1,2は、本発明の実施形態に係る動力伝達システムを備えた動力出力システムの概略構成を示す図であり、図1は概念図を示し、図2は搭載図を示す。本実施形態に係る動力出力システムは、ハイブリッド型の動力出力システムであり、以下に説明するエンジン10、変速機14、スタータジェネレータ16、遊星歯車機構20、モータジェネレータ22、電子制御装置42、クラッチC1,C2、及びブレーキB1を備えている。そして、本実施形態に係る動力出力システムは、以下に説明するように、エンジン10からの動力を変速機14により変速して負荷へ伝達することが可能であるとともに、エンジン10からの動力を遊星歯車機構20を介して負荷へ伝達することも可能である。なお、本実施形態に係る動力出力システムは、例えば車両の駆動に用いられるものである。
エンジン10の発生する動力は、クラッチC1を介して変速機14の入力軸26へ伝達可能である。変速機14は、入力軸26に伝達された動力を変速して出力軸36へ伝達する。変速機14の出力軸36に伝達された動力は、カウンタギア38(中間軸39)を介して車両の駆動輪40へ伝達されることで、例えば車両の駆動等の負荷の駆動に用いられる。なお、エンジン10の出力軸10−1にはダンパ11が設けられている。
図1,2では、変速機14の一例として、ベルト式無段変速機(CVT)を示している。ベルト式無段変速機14は、入力軸26に連結されたプライマリプーリ(入力回転部材)30、出力軸36に連結されたセカンダリプーリ(出力回転部材)32、及びプライマリプーリ30とセカンダリプーリ32とに巻き掛けられた無端ベルト34を備えており、プライマリプーリ30に伝達されたエンジン10からの動力を変速してセカンダリプーリ32からカウンタギア38を介して駆動輪40へ伝達する。そして、ベルト式無段変速機14は、プライマリプーリ30及びセカンダリプーリ32への無端ベルト34の掛かり径を例えば油圧力により変化させることで変速比γ(=入力軸26の回転速度/出力軸36の回転速度)を変更する。ただし、ここでの変速機14の種類は特に限定されるものではなく、例えばトロイダル式無段変速機であってもよい。
スタータジェネレータ16は、エンジン10の出力軸10−1に連結されており、エンジン10からの動力を利用して回転駆動されることで電気エネルギーを生成する回生運転(発電運転)を行うことが可能である。つまり、スタータジェネレータ16は、発電機(被動機)の機能を有する。スタータジェネレータ16の回生運転により生成された電気エネルギーは、バッテリ等の蓄電装置に蓄積される。さらに、スタータジェネレータ16は、蓄電装置に蓄積された電気エネルギーを基に動力を発生して停止状態のエンジン10を始動することも可能である。なお、スタータジェネレータ16のトルクについては、電子制御装置42により制御することができる。
遊星歯車機構20は、変速機14に対し並列して設けられており、サンギアS、キャリアCR、及びリングギアRを回転要素として有するシングルピニオン遊星歯車により構成されている。サンギアSは、モータジェネレータ22と結合されており、モータジェネレータ22からのトルクが伝達可能である。リングギアRは、クラッチC2を介してエンジン10の出力軸10−1及びスタータジェネレータ16と結合可能であり、エンジン10からのトルクが伝達可能である。キャリアCRは、カウンタギア38(中間軸39)を介して駆動輪40及び変速機14の出力軸36と結合されている。
モータジェネレータ22は、スタータジェネレータ16が発生する電気エネルギーや蓄電装置に蓄積された電気エネルギーを利用して回転駆動されることで動力を発生してサンギアSへ出力する力行運転を行うことが可能である。さらに、モータジェネレータ22は、サンギアSに伝達された動力を基に電気エネルギーを生成する回生運転(発電運転)を行うことも可能である。このように、モータジェネレータ22は、電動モータ(原動機)及び発電機(被動機)の両方の機能を有する。モータジェネレータ22の回生運転により生成された電気エネルギーは、蓄電装置に蓄積される。なお、モータジェネレータ22のトルクについては、電子制御装置42により制御することができる。また、モータジェネレータ22の最大出力は、スタータジェネレータ16の最大出力と等しく(あるいはほぼ等しく)設定されている。
遊星歯車機構20において、サンギアS、キャリアCR、及びリングギアRの3つの回転要素の回転速度は、図3の共線図に示す共線関係にある。ただし、図3の共線図において、ρはサンギアSとリングギアRの歯数比(0<ρ<1を満たす定数)である。図3の共線図では、駆動輪40(変速機14の出力軸36)に結合されたキャリアCRが、モータジェネレータ22に結合されたサンギアSと、エンジン10及びスタータジェネレータ16に結合可能なリングギアRとの間に配置されている。そして、遊星歯車機構20は2自由度の回転自由度を有する機構であり、サンギアS、キャリアCR、及びリングギアRの3つの回転要素のうち2つの回転要素の回転速度が決まると、残りの1つの回転要素の回転速度も決まる。そのため、モータジェネレータ22の動力(サンギアSに伝達される動力)を決定することで、クラッチC2を介してリングギアRに伝達されたエンジン10からの動力を、キャリアCRから出力して駆動輪40へ伝達することができる。
クラッチC1は、その係合/解放により、エンジン10の出力軸10−1及びスタータジェネレータ16と変速機14の入力軸26(プライマリプーリ30)との結合及びその解除を行うことが可能である。このクラッチC1により、エンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40との変速機14を介した結合及びその解除を行うことが可能である。クラッチC2は、その係合/解放により、エンジン10の出力軸10−1及びスタータジェネレータ16とリングギアRとの結合及びその解除を行うことが可能である。このクラッチC2により、エンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40との遊星歯車機構20を介した結合及びその解除を行うことが可能である。また、ブレーキB1は、その係合/解放により、リングギアRの回転の拘束及びその解除を行うことが可能である。ここで、動力断続機構として機能するクラッチC1,C2及び回転拘束機構として機能するブレーキB1の各々は、例えば油圧力や電磁力を利用してその係合/解放を切り替えることが可能である。なお、図1,2は、クラッチC1,C2がドッグクラッチやシンクロクラッチ等の歯の噛み合いによって係合を行う噛み合いクラッチであり、ブレーキB1がバンドブレーキである例を示している。
図1に示すように、変速機14のプライマリプーリ30の回転中心軸は、エンジン10の回転中心軸と一致している。そして、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20が、プライマリプーリ30の回転中心軸方向に沿って並んで配置された状態で、ケーシング15内、より具体的にはエンジン10とプライマリプーリ30との間の空間内に収容されている。スタータジェネレータ16の回転中心軸、モータジェネレータ22の回転中心軸、及び遊星歯車機構20の中心軸は、プライマリプーリ30の回転中心軸及びエンジン10の回転中心軸と一致している。図1,2では、モータジェネレータ22がスタータジェネレータ16及び遊星歯車機構20よりもエンジン10側に配置されており、遊星歯車機構20がモータジェネレータ22とスタータジェネレータ16との間に配置されている。つまり、エンジン10側からプライマリプーリ30側へ、モータジェネレータ22、遊星歯車機構20、スタータジェネレータ16の順に配置されている。クラッチC1は、スタータジェネレータ16とプライマリプーリ30との間に配置されており、クラッチC2は、スタータジェネレータ16と遊星歯車機構20との間に配置されている。
電子制御装置42は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROMと、一時的にデータを記憶するRAMと、入出力ポートと、を備える。この電子制御装置42には、図示しない各センサにより検出されたスロットル開度を示す信号、エンジン10(スタータジェネレータ16)の回転速度を示す信号、変速機14の出力軸回転速度を示す信号、及びモータジェネレータ22の回転速度を示す信号等が入力ポートを介して入力されている。一方、電子制御装置42からは、変速機14の変速比γを制御するための変速制御信号、エンジン10の運転状態を制御するためのエンジン制御信号、スタータジェネレータ16の運転状態を制御するためのジェネレータ制御信号、モータジェネレータ22の運転状態を制御するためのモータ制御信号、及びクラッチC1,C2とブレーキB1の各々の係合状態を制御するためのクラッチ制御信号等が出力ポートを介して出力されている。
以上のように構成された本実施形態に係る動力出力システムにおいては、エンジン10からの動力をクラッチC1及び変速機14を介して駆動輪40へ伝達することが可能な第1動力伝達経路と、エンジン10からの動力をクラッチC2及び遊星歯車機構20を介して駆動輪40へ伝達することが可能な第2動力伝達経路と、が設けられている。そして、クラッチC1,C2の両方が係合された状態では、変速機14及び遊星歯車機構20の両方(第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路の両方)を介してエンジン10と駆動輪40の間で動力伝達を行うことが可能である。
次に、本実施形態に係る動力出力システムの動作、特に、負荷(車両)を駆動する動作について説明する。なお、以下の説明において、遊星歯車機構20のサンギアS、キャリアCR、及びリングギアRの回転方向については、車両が前進するときのキャリアCRの回転方向(図3の共線図の上向き)を正転方向とし、車両が後退するときのキャリアCRの回転方向(図3の共線図の下向き)を逆転方向とする。また、以下の説明においては、説明の便宜上、動力の損失が無いものとして説明する。
まず変速機14及び遊星歯車機構20の両方を介してエンジン10と駆動輪40の間で動力伝達を行う場合の動作について説明する。その場合、電子制御装置42は、ブレーキB1を解放状態に制御するとともにクラッチC1,C2を係合状態に制御する。すなわち、図4に示すように、クラッチC1によりエンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40とが変速機14を介して結合され、且つクラッチC2によりエンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40とが遊星歯車機構20を介して結合された状態に制御する。その状態で、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク及びスタータジェネレータ16のトルクを制御する。
ここで、モータジェネレータ22のトルク(サンギアSのトルク)をTmg、リングギアRのトルクをTin、キャリアCRのトルクをTout、モータジェネレータ22の回転速度(サンギアSの回転速度)をωmg、エンジン10の回転速度(リングギアRの回転速度)をωeng、キャリアCRの回転速度をωout、モータジェネレータ22の動力(サンギアSの動力)をPmg、リングギアRの動力をPin、キャリアCRの動力をPoutとすると、図3の共線図から以下の(1)〜(4)式が成立する。
(1)、(2)式から、リングギアRのトルクTinは、モータジェネレータ22のトルクTmgにより決まり、リングギアRの動力Pinは、モータジェネレータ22のトルクTmgに応じて変化する。したがって、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルクTmgを変化させることで、リングギアRの動力Pinを変化させることができる。
また、(3)式から、キャリアCRのトルクToutは、リングギアRのトルクTinとモータジェネレータ22のトルク(サンギアSのトルク)Tmgを、それらのトルク比Tin/Tmgが所定比1/ρとなる状態で合成したトルクとなる。そして、(4)式から、キャリアCRの動力Poutは、リングギアRの動力Pinとモータジェネレータ22の動力(サンギアSの動力)Pmgを合成した動力となる。
エンジン10の動力Pengにより車両を前進方向に駆動する(駆動輪40を正転方向に駆動する)ときは、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに正転方向(図3の共線図の上向き)のトルクTmgを作用させる。これによって、エンジン10の動力Pengは、図5に示すように、その一部がスタータジェネレータ16の回生運転による発電電力Pgeに変換されるとともに、その残りが変速機14及び遊星歯車機構20の両方に分配されて伝達される。エンジン10から遊星歯車機構20に伝達された動力Pinは、モータジェネレータ22の動力Pmgと合成され、この合成された動力Poutが駆動輪40に伝達される。このとき、リングギアRに伝達されたエンジン10からのトルクTinとサンギアSに伝達されたモータジェネレータ22からのトルクTmgを、それらのトルク比Tin/Tmgが所定比1/ρとなる状態で合成してキャリアCRから駆動輪40へ伝達するトルク合成動作が遊星歯車機構20により行われる。また、エンジン10から変速機14に伝達された動力Peng−Pge−Pinは、変速機14により変速されて駆動輪40に伝達される。
前述したように、モータジェネレータ22のトルクを変化させることで、遊星歯車機構20に伝達される動力Pinを変化させることができる。そして、スタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)を変化させることで、スタータジェネレータ16の発電電力Pgeを変化させることができ、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinを変化させることができる。そこで、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルクTmg及びスタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tgeを制御することで、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinと遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を制御する動力配分制御を実行することができる。その際には、変速機14の変速比γに関係なく、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinと遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を能動的に制御することができる。さらに、モータジェネレータ22の動力Pmg及びスタータジェネレータ16の発電電力Pgeにより、駆動輪40に伝達される動力を制御することもできる。動力損失を無視して考えると、モータジェネレータ22の動力Pmgがスタータジェネレータ16の発電電力Pgeに等しいときは、駆動輪40に伝達される動力がエンジン10の動力Pengに等しくなる。また、モータジェネレータ22の動力Pmgがスタータジェネレータ16の発電電力Pgeよりも大きいときは、駆動輪40に伝達される動力がエンジン10の動力Pengよりも大きくなり、モータジェネレータ22の動力Pmgがスタータジェネレータ16の発電電力Pgeよりも小さいときは、駆動輪40に伝達される動力がエンジン10の動力Pengよりも小さくなる。モータジェネレータ22の動力Pmgとスタータジェネレータ16の発電電力Pgeとの間に差が生じているときは、蓄電装置の充電または放電によってその差分が吸収される。
なお、図6の共線図における上側の共線に示すように、サンギアSの回転がリングギアRの回転と同方向であるときは(主に高車速時)、モータジェネレータ22は力行運転となる(電動モータとして機能する)。一方、図6の共線図における下側の共線に示すように、サンギアSの回転がリングギアRの回転と逆転するときは(主に低車速時)、モータジェネレータ22は回生運転となる(発電機として機能する)。そのため、動力配分制御については、主に高車速時に行うことが好ましい。
また、車両の運動エネルギーを回生するとき(車両の減速運転時)は、電子制御装置42は、図7の共線図の矢印に示すように、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに逆転方向(図7の共線図の下向き)のトルクTmgを作用させる。これによって、駆動輪40の動力は、図8に示すように、変速機14及び遊星歯車機構20の両方に分配されて伝達される。駆動輪40から遊星歯車機構20に伝達された動力は、スタータジェネレータ16及びモータジェネレータ22に分配されて伝達される。このとき、キャリアCRに伝達された駆動輪40からのトルクToutを、リングギアR及びサンギアSにそれらのトルク比Tin/Tmgが所定比1/ρとなる状態で分配してスタータジェネレータ16及びモータジェネレータ22へそれぞれ伝達するトルク分配動作が遊星歯車機構20により行われる。また、駆動輪40から変速機14に伝達された動力は、スタータジェネレータ16に伝達される。なお、スタータジェネレータ16及びモータジェネレータ22に伝達された動力は、スタータジェネレータ16及びモータジェネレータ22の回生運転による発電電力にそれぞれ変換される。
車両の運動エネルギーを回生するときでも、モータジェネレータ22のトルク制御により遊星歯車機構20に伝達される動力を能動的に制御することができ、スタータジェネレータ16のトルク制御により変速機14に伝達される動力を能動的に制御することができる。したがって、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルクTmg及びスタータジェネレータ16のトルクTgeを制御することで、変速機14に伝達される動力と遊星歯車機構20に伝達される動力の配分を制御する動力配分制御を実行することができる。さらに、モータジェネレータ22及びスタータジェネレータ16の回生運転により駆動輪40の動力をモータジェネレータ22及びスタータジェネレータ16の発電電力に変換することができる。なお、電子制御装置42は、例えば図示しないセンサにより検出された車両のアクセルペダルの操作量やブレーキペダルの操作量に基づいて、車両の運動エネルギーが回生されるときか否か(車両の減速運転時であるか否か)を判定することができる。
次に、電子制御装置42により動力配分制御を実行するときの好適な具体例について説明する。
ここで、変速機(CVT)14を介して動力伝達を行うよりも遊星歯車機構20を介して動力伝達を行う方が動力伝達効率を向上させることができる。また、変速機14に伝達されるトルクが小さいときは、変速機14における動力伝達効率が低下する。そこで、電子制御装置42は、動力配分制御を実行するときには、エンジン10のトルクTeに基づいてスタータジェネレータ16のトルクTge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを制御する、すなわち変速機14に伝達される動力と遊星歯車機構20に伝達される動力の配分を制御することが好ましい。より具体的には、電子制御装置42は、エンジン10のトルクTeの減少に対してスタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを増大させることで、変速機14に伝達される動力の配分を減少させるとともに遊星歯車機構20に伝達される動力の配分を増大させることが好ましい。なお、エンジン10のトルクTeについては、例えば図示しないセンサにより検出されたスロットル開度A及びエンジン10の回転速度ωengから推定することができる。
また、無端ベルト34のプライマリプーリ30及びセカンダリプーリ32への接触径比r1/r2を変化させることで変速比γを変更する無段変速機14においては、接触径比r1/r2が1から離れるにつれて動力伝達効率が低下する。そこで、電子制御装置42は、動力配分制御を実行するときには、接触径比r1/r2に基づいてスタータジェネレータ16のトルクTge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを制御することで、変速機14に伝達される動力と遊星歯車機構20に伝達される動力の配分を制御することが好ましい。より具体的には、電子制御装置42は、接触径比r1/r2が1から離れるのに対してスタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを増大させることで、変速機14に伝達される動力の配分を減少させるとともに遊星歯車機構20に伝達される動力の配分を増大させることが好ましい。ここでの接触径比r1/r2については、例えば変速比γ(=エンジン10の回転速度ωeng/出力軸36の回転速度ωout)から求めることができる。そこで、電子制御装置42は、変速比γに基づいてスタータジェネレータ16のトルクTge及びモータジェネレータ22のトルクTmg(変速機14に伝達される動力と遊星歯車機構20に伝達される動力の配分)を制御することができる。なお、変速機14がローラの入出力ディスクへの接触径比r1/r2を変化させることで変速比γを変更するトロイダル式無段変速機である場合でも、電子制御装置42は、動力配分制御を実行するときには、接触径比r1/r2に基づいてスタータジェネレータ16のトルクTge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを制御することが好ましい。ここでの接触径比r1/r2については、例えば変速比γやローラ傾転角から求めることができる。
また、変速機14の最大トルク伝達容量を低減してエンジン10の最大トルクより小さく設定した場合において、エンジン10から変速機14に伝達されるトルクが変速機14の最大トルク伝達容量を超えるときは、変速機14に滑りが発生することになる。そこで、電子制御装置42は、動力配分制御を実行するときには、エンジン10から変速機14に伝達されるトルクが変速機14の最大トルク伝達容量(所定量)を超えないように、スタータジェネレータ16のトルクTge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを制御することで、変速機14に伝達される動力と遊星歯車機構20に伝達される動力の配分を制御することが好ましい。より具体的には、電子制御装置42は、エンジン10のトルクTeが変速機14の最大トルク伝達容量より大きいと判定したときは、エンジン10から変速機14に伝達されるトルクTe−Tge−Tinが変速機14の最大トルク伝達容量を下回るようにスタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tge及びモータジェネレータ22のトルクTmg(=ρ×Tin)を制御することが好ましい。この制御によって、エンジン10のトルクが大きい高負荷走行状態において変速機14に伝達されるトルクを低減することができ、変速機14の最大トルク伝達容量を低減することができる。
なお、変速機14の最大トルク伝達容量を低減することができると、変速機14の伝達効率も向上する。よって、エンジン10のトルクが小さい低負荷走行状態では、遊星歯車機構20に動力を伝達させずに、変速機14による動力伝達を行った方が動力伝達効率が最適となる場合がある。元々変速機14への伝達トルクが小さくなる低負荷走行状態においては、動力配分制御により変速機14に伝達されるトルクをさらに低下させると、変速機14の伝達効率が低下した結果、動力伝達システム全体での伝達効率がかえって低下する場合も生じるためである。そこで、電子制御装置42は、エンジン10のトルクTeが設定値(変速機14の最大トルク伝達容量より十分小さい値)より小さいと判定したときは、動力配分制御を行わずに(遊星歯車機構20による動力伝達を行わずに)、変速機14による動力伝達を行うことが好ましい。つまり、電子制御装置42は、エンジン10のトルクTeが設定値以上であると判定したときに、動力配分制御を行うことが好ましい。
また、本実施形態に係る動力出力システムにおいては、エンジン10の動力を駆動輪40へ伝達させずにモータジェネレータ22の動力により車両を駆動するEV走行を行うこともできる。このEV走行を行う場合、電子制御装置42は、クラッチC1,C2を解放状態に制御するとともにブレーキB1を係合状態に制御する。すなわち、図9に示すように、エンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40との変速機14及び遊星歯車機構20を介した結合が解除され且つリングギアRの回転がロックされた状態に制御する。その状態で、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルクTmgを制御することで、モータジェネレータ22と駆動輪40の間で伝達される動力を制御するEV走行制御を実行する。このEV走行制御については、主に低車速時に行うことが好ましい。
モータジェネレータ22の動力により車両を前進方向に駆動するときは、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに正転方向のトルクTmgを作用させる。これによって、モータジェネレータ22の力行運転が行われ、モータジェネレータ22の動力が遊星歯車機構20により変速(減速)されて駆動輪40に伝達される。一方、車両の運動エネルギーを回生するとき(車両の減速運転時)は、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに逆転方向のトルクTmgを作用させる。これによって、モータジェネレータ22の回生運転が行われ、駆動輪40の動力が遊星歯車機構20を介してモータジェネレータ22に伝達されてモータジェネレータ22の発電電力に変換される。
なお、電子制御装置42は、EV走行制御を実行するときには、図10に示すように、エンジン10及びスタータジェネレータ16の運転を停止した状態で、モータジェネレータ22と駆動輪40の間で伝達される動力を制御することができる。あるいは、電子制御装置42は、EV走行制御を実行するときには、スタータジェネレータ16によりエンジン10を始動した後に、スタータジェネレータ16の回生運転によりエンジン10からスタータジェネレータ16へ伝達される動力を制御するとともに、モータジェネレータ22と駆動輪40の間で伝達される動力を制御することもできる。この動力制御によって、図11に示すように、エンジン10の動力をスタータジェネレータ16の発電電力に変換することができ、この発電電力を用いてモータジェネレータ22の力行運転を行うことで、モータジェネレータ22の動力を駆動輪40へ伝達することができる。
ここでは、例えばバッテリのSOC等の蓄電装置の充電状態に基づいて、エンジン10及びスタータジェネレータ16の運転を行うか否かを選択することができる。より具体的には、電子制御装置42は、EV走行制御を実行する場合にバッテリのSOC(蓄電装置の充電状態)が設定量以上であるときは、エンジン10及びスタータジェネレータ16の運転を停止する方を選択する。一方、電子制御装置42は、EV走行制御を実行する場合にバッテリのSOCが設定量よりも低いときは、エンジン10の運転を行うとともにスタータジェネレータ16の回生運転を行う方を選択する。これによって、蓄電装置の充電状態(バッテリのSOC)を適正範囲内に保つようにEV走行を行うことができる。また、バッテリのSOCが低い場合でもEV走行を行うことができる。なお、バッテリのSOCについては、例えば図示しないセンサにより検出されたバッテリの電流及びバッテリの電圧に基づいて推定することができる。
また、本実施形態に係る動力出力システムにおいては、エンジン10の動力により車両を駆動するときに、モータジェネレータ22の動力により車両の駆動をアシストすることもできる。その場合、電子制御装置42は、クラッチC2を解放状態に制御するとともにクラッチC1を係合状態に制御する。すなわち、図12に示すように、エンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40とが変速機14を介して結合され且つエンジン10及びスタータジェネレータ16と駆動輪40との遊星歯車機構20を介した結合が解除された状態に制御することで、変速機14を介してエンジン10と駆動輪40の間で動力伝達を行う。さらに、電子制御装置42は、図12に示すように、ブレーキB1を係合状態に制御することで、リングギアRの回転がロックされた状態に制御する。その状態で、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルクTmgを制御することで、モータジェネレータ22と駆動輪40の間で伝達される動力を制御する動力補助制御を実行する。この動力補助制御の実行時には、電子制御装置42は、エンジン10の動力が高効率運転可能な所定値になるようにエンジン10の運転状態を制御するとともに、車両(負荷)の要求動力とエンジン10の動力との偏差をモータジェネレータ22の動力により補償することができる。なお、動力補助制御については、主に高車速時に行うことが好ましい。
エンジン10の動力により車両を前進方向に駆動するときに車両の要求動力がエンジン10の動力より大きい場合は、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに正転方向のトルクTmgを作用させる。これによって、モータジェネレータ22の力行運転が行われ、図13に示すように、モータジェネレータ22の動力が遊星歯車機構20により変速(減速)されて駆動輪40に伝達される。それとともに、図13に示すように、エンジン10の動力が変速機14により変速されて駆動輪40に伝達される。一方、車両の要求動力がエンジン10の動力より小さい場合は、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに逆転方向のトルクTmgを作用させる。これによって、モータジェネレータ22の回生運転が行われ、駆動輪40の動力が遊星歯車機構20を介してモータジェネレータ22に伝達されてモータジェネレータ22の発電電力に変換される。
また、車両の運動エネルギーを回生するとき(車両の減速運転時)にも、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに逆転方向のトルクTmgを作用させる。これによって、モータジェネレータ22の回生運転が行われ、図14に示すように、駆動輪40の動力が遊星歯車機構20を介してモータジェネレータ22に伝達されてモータジェネレータ22の発電電力に変換される。それとともに、スタータジェネレータ16の回生運転を行うことで、図14に示すように、駆動輪40の動力が変速機14を介してスタータジェネレータ16に伝達されてスタータジェネレータ16の発電電力に変換される。なお、車両の運動エネルギーを回生するときには、クラッチC1を解放することもできる。その場合は、モータジェネレータ22の回生運転を行うことで、図15に示すように、駆動輪40の動力が遊星歯車機構20を介してモータジェネレータ22に伝達されてモータジェネレータ22の発電電力に変換される。
また、電子制御装置42は、動力補助制御の実行時には、スタータジェネレータ16の回生運転によりエンジン10からスタータジェネレータ16へ伝達される動力(スタータジェネレータ16の発電電力)を制御することで、エンジン10から変速機14へ伝達される動力を制御するとともに、モータジェネレータ22と駆動輪40の間で伝達される動力を制御することもできる。この動力制御によって、図16に示すように、エンジン10の動力をスタータジェネレータ16の発電電力と変速機14へ伝達される動力とに分配することができるとともに、スタータジェネレータ16の発電電力を用いてモータジェネレータ22の力行運転を行うことで、モータジェネレータ22の動力を駆動輪40へ伝達することができる。つまり、エンジン10と駆動輪40の間で動力伝達を行うときに、変速機14を介して伝達される動力とスタータジェネレータ16及びモータジェネレータ22を介して伝達される動力の配分を制御することができる。
前述のように、変速機14の最大トルク伝達容量を低減してエンジン10の最大トルクより小さく設定した場合において、エンジン10から変速機14に伝達されるトルクが変速機14の最大トルク伝達容量を超えるときは、変速機14に滑りが発生することになる。そこで、電子制御装置42は、動力補助制御を実行するときには、エンジン10から変速機14に伝達されるトルクが変速機14の最大トルク伝達容量(所定量)を超えないように、スタータジェネレータ16のトルクTgeを制御することが好ましい。より具体的には、電子制御装置42は、エンジン10のトルクTeが変速機14の最大トルク伝達容量より大きいと判定したときは、エンジン10から変速機14に伝達されるトルクTe−Tgeが変速機14の最大トルク伝達容量を下回るようにスタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tgeを制御することが好ましい。そして、スタータジェネレータ16の回生トルクTgeによる駆動輪40への伝達トルクの低下分をモータジェネレータ22の力行トルクTmgにより補償する。
また、本実施形態に係る動力出力システムにおいて、停止状態の車両を前進方向に駆動する(停止状態の駆動輪40を正転方向に駆動する)発進動作を行うときは、電子制御装置42は、クラッチC1,C2を解放状態に制御するとともにブレーキB1を係合状態に制御する。その状態で、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに正転方向のトルクTmgを作用させることで、車両を前進方向に発進させる。
なお、電子制御装置42は、発進動作を実行するときには、エンジン10の運転を停止した状態でモータジェネレータ22のトルク制御を行うことができる。あるいは、電子制御装置42は、発進動作を実行するときには、エンジン10の運転が行われている状態でモータジェネレータ22のトルク制御を行うこともできる。ここでは、例えば駆動輪40の要求トルクに基づいて、エンジン10の運転を行うか否かを選択することができる。より具体的には、電子制御装置42は、発進動作を実行する場合に駆動輪40の要求トルクが設定値以下のときは、エンジン10の運転を停止する方を選択する。一方、電子制御装置42は、発進動作を実行する場合に駆動輪40の要求トルクが設定値よりも大きいときは、エンジン10の運転を行う方を選択する。これによって、モータジェネレータ22の電流が増大する場合に、エンジン10の動力を利用してスタータジェネレータ16による発電を行うことができ、蓄電装置の充電状態(バッテリのSOC)の低下を抑えることができる。また、車両の急発進時に、EV走行からエンジン10の動力を用いた走行に速やかに切り替えることができる。なお、駆動輪40の要求トルクについては、例えば図示しないセンサにより検出されたアクセル開度から設定することができる。
また、本実施形態に係る動力出力システムにおいて、車両を後退させるリバース走行動作を行うときは、電子制御装置42は、クラッチC1,C2を解放状態に制御するとともにブレーキB1を係合状態に制御する。その状態で、電子制御装置42は、モータジェネレータ22のトルク制御によりサンギアSに逆転方向のトルクTmgを作用させることで、車両を後退させる。
また、本実施形態に係る動力出力システムにおいて、停止状態のエンジン10を始動するエンジン始動動作を実行するときは、電子制御装置42は、クラッチC1,C2を解放状態に制御する(必須ではないがブレーキB1については係合状態に制御する)。その状態で、電子制御装置42は、スタータジェネレータ16の力行運転によりスタータジェネレータ16の動力をエンジン10へ伝達することで、エンジン10のクランキングを行う。エンジン10のクランキング時には、クラッチC1,C2の解放により起震源のエンジン10と振動要素を有する遊星歯車機構20とが切り離されているため、エンジン10のクランキング時の振動・騒音を低減することができる。なお、このエンジン始動動作については、車両停止時に行うこともできるし、車両走行時(EV走行時)に行うこともできる。
以上説明した本実施形態の各動作において、クラッチC1,C2及びブレーキB1の係合/解放をまとめると下表に示すようになる。ただし、下表において、○は係合、空欄は解放を表す。
以上説明した本実施形態においては、変速機14及び遊星歯車機構20の両方を介してエンジン10と駆動輪40の間で動力伝達を行うときに、スタータジェネレータ16のトルクTge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを制御することで、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinと遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を能動的に制御することができる。例えば入力軸26のトルクが小さい状態や無端ベルト34のプライマリプーリ30及びセカンダリプーリ32への接触径比r1/r2が1から大きく離れた状態等の変速機14の動力伝達効率が低下する状態では、スタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを増大させて、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinの配分を減少させるとともに遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を増大させることで、動力伝達効率を向上させることができる。また、エンジン10のトルクTeが変速機14の最大トルク伝達容量より大きくなる状態では、スタータジェネレータ16のトルク(回生トルク)Tge及びモータジェネレータ22のトルクTmgを増大させて、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinの配分を減少させるとともに遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を増大させることで、変速機14の最大トルク伝達容量を小さく設定しても変速機14の滑りを抑制することができる。このように、本実施形態によれば、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinと遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を適切に制御することができるので、変速機14の最大トルク伝達容量を低減することができるとともに動力伝達効率を向上させることができる。さらに、スタータジェネレータ16の発電電力Pgeを利用してモータジェネレータ22に動力Pmgを発生させることができるため、蓄電装置の充電状態(バッテリのSOC)が低いときでも、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinと遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を能動的に制御することができる。さらに、スタータジェネレータ16の最大出力をモータジェネレータ22の最大出力と等しく(あるいはほぼ等しく)設定することで、スタータジェネレータ16の発電電力をモータジェネレータ22の動力に効率よく用いることができる。そのため、バッテリのSOCが低いときでも、スタータジェネレータ16の発電電力Pge及びモータジェネレータ22の動力Pmgを増大させて、変速機14に伝達される動力Peng−Pge−Pinの配分を減少させるとともに遊星歯車機構20に伝達される動力Pinの配分を増大させることができ、動力伝達効率を向上させることができる。
なお、特許文献3〜5においては、無段変速機の入出力軸間を他の伝動装置(例えばギアやチェーン等)により連結可能とし、エンジンの動力を無段変速機及び伝動装置の両方を介して負荷へ伝達可能にしている。しかし、特許文献3〜5においては、無段変速機の変速比が特定の値にあるときしか伝動装置を介した動力伝達を行うことができない。これに対して本実施形態においては、変速機14の変速比γの値に関係なく遊星歯車機構20を介した動力伝達を行うことができる。したがって、広範囲の変速比γにおいて動力伝達効率を向上させることができる。
また、変速機14の最大トルク伝達容量を低減する効果を向上させるためには、スタータジェネレータ16の最大トルク(最大回生トルク)及びモータジェネレータ22の最大トルクを増大させて、エンジン10から変速機14へ伝達される最大トルクを減少させることが望ましい。ただし、スタータジェネレータ16の最大トルク及びモータジェネレータ22の最大トルクを増大させると、スタータジェネレータ16の外径及びモータジェネレータ22の外径も増大するため、システムの大型化を招きやすくなる。また、遊星歯車機構20の中心軸をモータジェネレータ22の回転中心軸からずらして配置すると、モータジェネレータ22と遊星歯車機構20との間の動力伝達効率が低下しやすくなる。これに対し、変速機14の入力軸26上や出力軸36上は、プライマリプーリ30やセカンダリプーリ32がすでに配置され、その外径がすでに同軸上の径方向の面積を占有しているため、新たにスタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20を配置することによる搭載性悪化は相対的に低い。ただし、変速機14の出力軸36には増幅されたトルクが伝達されるため、変速機14の出力軸36側に設けるベアリングやギアについては、その幅を増大させる必要がある。そのため、変速機14の出力軸36上にスタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20を配置すると、出力軸36方向の長さが大幅に増大する。
そこで、本実施形態では、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20を、それらの中心軸をプライマリプーリ30の回転中心軸及びエンジン10の回転中心軸と一致させた状態で、エンジン10とプライマリプーリ30との間の空間内に配置している。この配置によって、モータジェネレータ22と遊星歯車機構20との間の動力伝達効率を向上させることができるとともに、スタータジェネレータ16の外径(最大トルク)及びモータジェネレータ22の外径(最大トルク)を増大させることができる。そのため、変速機14の最大トルク伝達容量を低減する効果を向上させることができ、変速機14の軸方向長さを低減することができる。さらに、変速機14の入力軸26方向の長さを大幅に増大させることなく、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20をケーシング15内に収容することができる。このように、本実施形態によれば、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20の搭載性を悪化させることなく、スタータジェネレータ16の最大トルク及びモータジェネレータ22の最大トルクを増大させることができ、変速機14の最大トルク伝達容量を低減する効果を向上させることができる。その結果、システムの小型化を図ることができる。さらに、モータジェネレータ22をスタータジェネレータ16及び遊星歯車機構20よりもエンジン10側に配置することで、モータジェネレータ22の外径をさらに増大させることができ、モータジェネレータ22の最大トルクをさらに増大させることができる。
また、本実施形態においては、クラッチC1,C2に噛み合いクラッチ、ブレーキB1にバンドブレーキを用いることで、クラッチC1,C2及びブレーキB1を小型化することができ、クラッチC1,C2及びブレーキB1の搭載性を向上させることができる。さらに、クラッチC1,C2及びブレーキB1の解放時の引き摺り損失を低減することができる。
また、本実施形態においては、クラッチC1,C2を解放し且つブレーキB1を係合した状態で、エンジン10の動力を駆動輪40へ伝達させずにモータジェネレータ22の動力により車両を駆動するEV走行を行うことができる。さらに、EV走行の際には、エンジン10の動力を利用してスタータジェネレータ16の発電運転を行うことで、バッテリのSOCが低い場合でもEV走行を行うことができる。さらに、本実施形態では、モータジェネレータ22の最大トルクを増大させることができるとともにモータジェネレータ22の動力を遊星歯車機構20で減速して駆動輪40へ伝達することができるので、EV走行時に車両(駆動輪40)の駆動力を十分に確保することができる。さらに、発進動作時にもモータジェネレータ22により車両の駆動力を十分に確保することができるので、トルクコンバータ等の発進装置をエンジン10と変速機14との間に設ける必要がなくなる。さらに、リバース走行動作時にもモータジェネレータ22により車両の駆動力を十分に確保することができるので、エンジン10のトルクの方向を逆転させるか否かを切り替える前後進切替機構をエンジン10と変速機14との間に設ける必要がなくなる。その結果、システムの小型化を図ることができる。
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
図17,18は、図1,2と比較して、クラッチC1に湿式多板クラッチ等の摩擦クラッチを用いた例を示し、図17は概念図を示し、図18は搭載図を示す。この構成例では、電子制御装置42は、エンジン10の運転が行われている状態で、クラッチC1の締結力を徐々に増大させてエンジン10のトルクを変速機14を介して駆動輪40へ伝達することによっても、発進動作を行うことが可能である。
また、図19に示す構成例では、図1,2に示す構成例と比較して、スタータジェネレータ16がモータジェネレータ22及び遊星歯車機構20よりもエンジン10側に配置されており、遊星歯車機構20がスタータジェネレータ16とモータジェネレータ22との間に配置されている。つまり、エンジン10側からプライマリプーリ30側へ、スタータジェネレータ16、遊星歯車機構20、モータジェネレータ22の順に配置されている。クラッチC1は、モータジェネレータ22とプライマリプーリ30との間に配置されており、クラッチC2は、スタータジェネレータ16と遊星歯車機構20との間に配置されている。この構成例によれば、スタータジェネレータ16の外径をさらに増大させることができ、スタータジェネレータ16の最大トルクをさらに増大させることができる。また、図20は、図19と比較して、クラッチC1に摩擦クラッチを用いた例を示す。
また、図21は、図1,2と比較して、変速機14がトロイダル式無段変速機(CVT)である例を示す。トロイダル式無段変速機14は、入力軸26に連結された入力ディスク(入力回転部材)31、出力軸36に連結された出力ディスク(出力回転部材)33、及び入出力ディスク31,33間に挟持されたローラ35を備えており、ローラ35の入出力ディスク31,33への接触径比r1/r2(ローラ傾転角)を変化させることで変速比γを変更する。入力ディスク31の回転中心軸は、エンジン10の回転中心軸と一致している。そして、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20が、エンジン10と入力ディスク31との間の空間内に、入力ディスク31の回転中心軸方向に沿って並んで配置されている。スタータジェネレータ16の回転中心軸、モータジェネレータ22の回転中心軸、及び遊星歯車機構20の中心軸は、入力ディスク31の回転中心軸及びエンジン10の回転中心軸と一致している。図21では、スタータジェネレータ16がモータジェネレータ22及び遊星歯車機構20よりもエンジン10側に配置されており、遊星歯車機構20がスタータジェネレータ16とモータジェネレータ22との間に配置されている。つまり、エンジン10側からプライマリプーリ30側へ、スタータジェネレータ16、遊星歯車機構20、モータジェネレータ22の順に配置されている。クラッチC1は、モータジェネレータ22と入力ディスク31との間に配置されており、クラッチC2は、スタータジェネレータ16と遊星歯車機構20との間に配置されている。変速機14がトロイダル式無段変速機である場合でも、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、及び遊星歯車機構20の搭載性を悪化させることなく、スタータジェネレータ16の最大トルク(外径)及びモータジェネレータ22の最大トルク(外径)を増大させることができ、変速機14の最大トルク伝達容量を低減することができる。また、図22は、図21と比較して、クラッチC1に摩擦クラッチを用いた例を示す。
また、図23に示す構成例では、図21に示す構成例と比較して、モータジェネレータ22がスタータジェネレータ16と遊星歯車機構20との間に配置されており、エンジン10側からプライマリプーリ30側へ、スタータジェネレータ16、モータジェネレータ22、遊星歯車機構20の順に配置されている。クラッチC1,C2は、遊星歯車機構20と入力ディスク31との間に配置されており、遊星歯車機構20側から入力ディスク31側へ、クラッチC2、クラッチC1の順に配置されている。また、図24は、図23と比較して、クラッチC1に摩擦クラッチを用いた例を示す。
また、図25,26は、図21,23とそれぞれ比較して、遊星歯車機構20がダブルピニオン遊星歯車である例を示す。リングギアRは、変速機14の出力軸36(駆動輪40)と結合されており、キャリアCRは、クラッチC2を介してエンジン10の出力軸10−1及びスタータジェネレータ16と結合可能である。ブレーキB1は、その係合/解放により、キャリアCRの回転の拘束及びその解除を行うことが可能である。また、図27,28は、図25,26とそれぞれ比較して、クラッチC1に摩擦クラッチを用いた例を示す。
以上説明した実施形態においては、電動モータ(原動機)及び発電機(被動機)として機能するモータジェネレータ22の代わりに、油圧モータ(原動機)及び油圧ポンプ(被動機)として機能する油圧ポンプモータを設け、発電機(被動機)として機能するスタータジェネレータ16の代わりに、油圧ポンプ(被動機)として機能する油圧スタータポンプを設けることもできる。ここでの油圧スタータポンプは、エンジン10からの動力を利用して回転駆動されることで作動油のエネルギーを生成することが可能であり、油圧スタータポンプにより生成された作動油のエネルギーは、アキュムレータに蓄積される。さらに、油圧スタータポンプは、アキュムレータに蓄積された作動油のエネルギーを基に動力を発生して停止状態のエンジン10を始動することも可能である。また、油圧ポンプモータは、油圧スタータポンプが発生する作動油のエネルギーやアキュムレータに蓄積された作動油のエネルギーを利用して回転駆動されることで動力を発生して遊星歯車機構20へ出力することが可能である。さらに、油圧ポンプモータは、遊星歯車機構20から伝達された動力を基に作動油のエネルギーを生成してアキュムレータに蓄積することも可能である。そして、油圧ポンプモータの最大出力は、油圧スタータポンプの最大出力と等しく(あるいはほぼ等しく)設定されている。ここでの油圧ポンプモータ及び油圧スタータポンプとしては、可変容量式のものを用いることができる。そして、電子制御装置42は、油圧ポンプモータの容量及び油圧スタータポンプの容量をそれぞれ制御することで、油圧ポンプモータのトルク及び油圧スタータポンプのトルクをそれぞれ制御することができる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 エンジン、14 変速機、15 ケーシング、16 スタータジェネレータ、20 遊星歯車機構、22 モータジェネレータ、26 入力軸、30 プライマリプーリ、31 入力ディスク、32 セカンダリプーリ、33 出力ディスク、34 無端ベルト、35 ローラ、36 出力軸、40 駆動輪、42 電子制御装置、B1 ブレーキ、C1,C2 クラッチ、CR キャリア、R リングギア、S サンギア。