JP4770011B2 - 絶縁材用樹脂組成物及びこれを用いた絶縁材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁材に関するものであり、更に詳しくは、電気・電子機器用、半導体装置用として優れた特性を有する絶縁材用樹脂組成物及びこれから製造した絶縁材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子機器用、半導体装置用材料に求められている特性のなかで、電気特性と耐熱性は、最も重要な特性である。特に、近年、回路の微細化と信号の高速化に伴い、誘電率の低い絶縁材料が要求されている。この2つの特性を両立させるための材料として、耐熱性樹脂を用いた絶縁材が期待されている。例えば、従来から用いられている二酸化シリコン等の無機の絶縁材は、高耐熱性を示すが、誘電率が高く、要求特性が高度化している現在では、前述の特性について、両立が困難になりつつある。ポリイミド樹脂に代表される耐熱性樹脂は、電気特性と耐熱性に優れ、2つの特性の両立が可能であり、実際にプリント回路のカバーレイや半導体装置のパッシベーション膜などに用いられている。
【0003】
しかしながら、近年の半導体の高機能化、高性能化にともない、電気特性、耐熱性について、著しい向上が必要とされているため、更に、高性能な樹脂が、必要とされるようになっている。特に、誘電率について、2.5を下回るような低誘電率材料が期待されており、従来の絶縁材では、必要とされる特性に達していない。これに対して、これまでには、例えば、ポリイミド及び溶剤から成る樹脂組成物に、ポリイミド以外の熱分解性樹脂を加え、加熱工程により、この熱分解性樹脂を分解させて空隙を形成することにより、絶縁材の誘電率を低減させることが試みられている。しかし、ポリイミド等の耐熱性樹脂と熱分解性樹脂とが、相溶するとガラス転移点が低くなってしまうために、熱分解性樹脂を分解させる際に、空隙が潰れていまい、誘電率を低減させる効果が少ない。一方、ポリイミド等の耐熱性樹脂と相溶しない熱分解性樹脂を用いた場合は、両樹脂の相分離構造が大きすぎて半導体の配線用絶縁材料としては使用することが出来ない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、極めて低い誘電率と良好な絶縁性を示すとともに、耐熱性にも優れた絶縁材用樹脂組成物及び絶縁材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来の問題点を鑑み、鋭意検討を重ねた結果、以下の手段により、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の1〜4項に記載の絶縁材用樹脂組成物及び絶縁材を提供する。
【0007】
1.界面活性能を有する成分(A)と、樹脂のガラス転移温度が成分(A)の熱分解温度より高い耐熱性樹脂またはその前駆体(B)とを必須成分とする絶縁材用樹脂組成物。
【0008】
2.耐熱性樹脂またはその前駆体(B)が、ポリイミド樹脂またはポリイミド前駆体である前記1項に記載の絶縁材用樹脂組成物。
【0009】
3.耐熱性樹脂またはその前駆体(B)が、ポリベンゾオキサゾール樹脂またはポリベンゾオキサゾール前駆体である前記1項に記載の絶縁材用樹脂組成物。
【0010】
4.前記1〜3項のいずれか1項に記載の絶縁材用樹脂組成物を用いて、成分(A)と耐熱性樹脂またはその前駆体(B)により相分離構造を形成させた後、成分(A)の熱分解温度より高い温度、且つ成分(B)の耐熱性樹脂もしくはその前駆体を閉環させた樹脂のガラス転移温度より低い温度で、熱処理する工程を有する方法で製造されたことを特徴とする絶縁材。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の絶縁材用樹脂組成物は、界面活性能を有する成分(A)と、樹脂のガラス転移温度が成分(A)の熱分解温度よりも高い耐熱性樹脂、または加熱による反応もしくは化学閉環反応により前記耐熱性樹脂を生成する耐熱性樹脂前駆体(B)とを必須成分として成るものである。
【0012】
本発明の絶縁材用樹脂組成物は、基板等の上に塗布して加熱・製膜したり、ガラスクロス等に含浸させて加熱することにより、絶縁材とすることができる。この加熱工程において、溶媒を揮発させる初期の加熱時に、成分(A)は、溶媒の揮発時に濃縮されミセル構造を形成し、それに伴い耐熱性樹脂またはその前駆体(B)と相分離を生じることにより、耐熱性樹脂またはその前駆体を閉環させた樹脂が有する本来の高いガラス転移温度を発現する。さらに、加熱温度を、成分(A)が熱分解する温度より高い温度且つ成分(B)の樹脂のガラス転移温度より低い温度に上昇させることにより、成分(B)の樹脂のガラス転移温度に到達する前に、成分(A)が熱分解して揮散することにより、微細な空隙を形成する。これにより、低い誘電率の絶縁材を得ることが出来るものである。
【0013】
本発明に用いる界面活性能を有する成分(A)は、初期の加熱工程において、溶媒の揮発時に濃縮されミセル構造を形成し、それに伴い成分(B)との相分離構造を形成するものであれば、用いることができ、その具体例を挙げると、脂肪族せっけん、N−アシルアミノ酸およびその塩、ポリオキシエチレンカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチドなどのカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンおよびアルキルナルタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(Na,K,Li,Caなどの塩)−ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸塩(Na,Caなどの塩)−ホルマリン重縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、ジメチル−5−スルホイソフタレートナトリウム塩、アシルスルホン酸塩などのスルホン酸塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルファート、脂肪族アルキロールアマイドの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩などの硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸塩などのリン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の陽イオン界面活性剤、ベタイン類、アミドベタイン類、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイド(ジメチルラウリルアミンオキサイド、ジメチルステアリルアミンオキサイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキサイド)等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油および硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩などのエーテルエステル型非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型非イオン界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリエチレンアルキルアミン、アルキルポリエーテルアミン(ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングルコールラウリルアミン、ポリエチレングリコールアルキル(ヤシ)アミン、ポリエチレングリコールステアリルアミン、ポリエチレングリコール牛脂アミン、ポリエチレングリコール牛脂プロピレンジアミン、ポリエチレングリコールジオレイルアミン、N−ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン)などの含窒素型非イオン界面活性剤、フルオロアルキル(C2〜C10)カルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C11)、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸塩(Li,K,Naなどの塩)、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩(Kなどの塩)、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどのフッ素系界面活性剤、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸などの飽和脂肪酸、牛脂脂肪酸、牛脂微水添脂肪酸、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、アリル化ポリエーテル類(ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールーポリプロピレングリコールアリルエーテル等)などの反応性界面活性剤、ヒマシ硬化脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸)、エルカ酸、塗料用大豆脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、αーリノレン酸、γ−リノレン酸などの不飽和脂肪酸、ラルリルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、オレイルアミン、アルキル(大豆)アミンなどの脂肪族第1アミン類、ジオレイルアミンなどの脂肪族第2アミン類、ジメチルラウリルアミン、ジメチルアルキル(ヤシ)アミン、ジメチルアルキル(硬化牛脂)アミンなどの脂肪族第3アミン類、アルキル(硬化牛脂)プロピレンジアミン、アルキル(牛脂)プロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミン、1、12−ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミン類などであるが、これらに限定されるものではない。また、これらを2種以上、同時に用いてもかまわない。
また、反応性界面活性剤を使用する際には、必要に応じて、重合開始剤を添加することも可能である。
【0014】
本発明に用いる樹脂のガラス転移温度が成分(A)の熱分解温度より高い耐熱性樹脂、または加熱による反応もしくは化学閉環反応により耐熱性樹脂を生成する耐熱性樹脂前駆体(B)の例を挙げると、ポリイミド樹脂、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリヒドロキシイミド樹脂、ポリヒドロキシアミド酸、ポリヒドロキシアミド酸エステル、ポリイソイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリヒドロキシアミド、ポリベンゾチアゾール樹脂等であるが、これらに限られるものではない。これらの中でも、ポリイミド樹脂、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリイソイミド、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリヒドロキシアミド、ポリヒドロキシイミド樹脂、ポリヒドロキシアミド酸、ポリヒドロキシアミド酸エステルは、耐熱性が高く好ましい。
【0015】
本発明の絶縁材用樹脂組成物の成分として、溶剤を添加することが可能であるが、この場合に好ましい溶剤の例を挙げると、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、ジメチルプロピレン・ウレア、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、エチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等であるが、これらに限定されるものではない。また、これらを2種以上同時に用いてもかまわない。さらに、塗布性や含浸性を向上させるために、少量の他の添加剤を添加してもかまわない。
【0016】
本発明の絶縁材の誘電率を低減するために形成される微少な空隙は、その直径が50nm以下のものであり、好ましくは10nm以下のものである。また、微少な空隙の割合としては、絶縁材の形成物全体に対し、5〜90vol%が好ましく、より好ましくは10〜70vol%である。下限値より小さいと誘電率の低減効果がなく、上限値より大きいと絶縁材の機械的強度が低下する。
【0017】
本発明の絶縁材用樹脂組成物は、各成分を前記空隙を形成する範囲で配合され、これらを均一に混合して得られる。配合割合は、成分(A)と成分(B)との重量比A/Bが、好ましくは5/95から90/10、より好ましくは10/90から70/30である。
【0018】
本発明の絶縁材の製造方法の例としては、本発明の絶縁材用樹脂組成物を用い、上記溶剤に溶解しワニスとした後、適当な支持体、例えば、ガラス、金属、シリコーンウエハーやセラミック基盤などに塗布する。具体的な塗布の方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティングなどが挙げられる。このようにして、塗膜形成し、加熱乾燥後、前記の方法により加熱し、微少な空隙を形成させ硬化させることにより、誘電率の低い絶縁材を形成することができる。加熱硬化は、揮散した成分を排気できる加熱装置で行うことが好ましい。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例の内容になんら限定されるものではない。
【0020】
実施例1
(1)ポリイミド樹脂の合成
攪拌装置、窒素導入管、原料投入口を備えたセパラブルフラスコ中で、2,2−ビス(4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン5.18g(0.01mol)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル9.60g(0.03mol)を、乾燥したN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)200gに溶解する。乾燥窒素下、10℃に溶液を冷却して、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.94g(0.01mol)と2,2−ビス(3,4−アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.32g(0.03mol)を投入した。投入から5時間後に室温まで戻し、室温で2時間攪拌し、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得た。
このポリアミド酸溶液にピリジン50gを加えた後、無水酢酸5.1g(0.05mol)を滴下し、系の温度を70℃に保って、7時間イミド化反応を行った。
この溶液を20倍量の水中に滴下して沈殿を回収し、60℃で72時間真空乾燥して耐熱性樹脂であるポリイミド樹脂の固形物を得た。ポリイミド樹脂の分子量は、数平均分子量で26000,重量平均分子量で54000であった。
【0021】
(2)耐熱性樹脂のガラス転移温度の測定
上記により合成したポリイミド樹脂5.0gをNMP15.0gに溶解し、離型処理したガラス基板上に塗布した後、オーブン中120℃で30分間、230℃で90分間保持して成膜し、基板から膜を剥がした後、さらに400℃で90分間加熱し、ポリイミド樹脂のフィルムとした。このポリイミド樹脂のガラス転移温度を示差走査熱量計により測定したところ、335℃であった。
【0022】
(3)界面活性能を有する成分の熱分解温度の測定
ポリオキシエチレンオレインエーテル(親水性−親油性バランス(以下H.L.B.)=8)(第一工業製薬株式会社製ノイゲンET−80E)の熱分解温度を、窒素雰囲気下で熱重量分析により測定したところ、250℃であった。
【0023】
(4)絶縁材用樹脂組成物の調製と絶縁材の製造
上記により合成したポリイミド樹脂10.0gをNMP50.0gに溶解した後、上記ポリオキシエチレンオレインエーテル5.0gを加えて攪拌し、均一に混合して、絶縁材用樹脂組成物を得た。
厚さ200nmのタンタルを成膜したシリコンウエハ上に、この絶縁材用樹脂組成物をスピンコートした後、窒素雰囲気のオーブン中で加熱硬化した。加熱処理は、120℃で30分間、230℃で120分間、315℃で180分間の順で保持し、さらに335℃より若干低い温度まで上げ後、15分間で200℃まで温度を下げ、さらに60分間で室温まで温度を戻して行った。このようにして、厚さ0.8μmの絶縁材の被膜を得た。この絶縁材の皮膜上に、面積0.1cm2のアルミの電極を蒸着により形成し、基板のタンタルとの間のキャパシタンスを、LCRメーターにより測定した。膜厚、電極面積、キャパシタンスから絶縁材皮膜の誘電率を算出したところ、2.4であった。絶縁材皮膜の断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、平均孔径9nmで非連続であった。
【0024】
実施例2
(1)ポリイミド前駆体の合成
実施例1のポリイミド樹脂の合成において、ポリイミド前駆体の合成に用いた2,2−ビス(4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン5.18g(0.01mol)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル9.60g(0.03mol)とを4,4’−ジアミノジフェニルエーテル8.01g(0.04mol)に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.94g(0.01mol)と2,2−ビス(3,4−アンハイドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.32g(0.03mol)とをピロメリット酸二無水物8.72(0.04mol)に代えた以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得た。この溶液を20倍量の水中に滴下して沈殿を回収し、25℃で72時間真空乾燥してポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の固形物を得た。得られたポリアミド酸の数平均分子量は27000、重量平均分子量は55000であった。
【0025】
(2)耐熱性樹脂のガラス転移温度の測定
上記により合成したポリアミド酸5.0gをNMP20.0gに溶解し、離型処理したガラス基板上に塗布した後、オーブン中120℃で30分間、250℃で90分間保持して成膜し、基板から膜を剥がした後、さらに450℃で90分間加熱し、耐熱性樹脂であるポリイミド樹脂のフィルムとした。このポリイミド樹脂のガラス転移温度を示差走査熱量計により測定したところ、419℃であった。
【0026】
(3)界面活性能を有する成分の熱分解温度の測定
N−ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン(分子量約20000、H.L.B.=9)(第一工業製薬株式会社製ディスコールN−509)の熱分解温度を、窒素雰囲気下で熱重量分析により測定したところ、364℃であった。
【0027】
(4)絶縁材用樹脂組成物の調製と絶縁材の製造
上記により合成したポリアミド酸10.0gをNMP50.0gに溶解した後、上記界面活性剤8gを加えて攪拌し、均一に混合して、絶縁材用樹脂組成物を得た。
厚さ200nmのタンタルを成膜したシリコンウエハ上に、この絶縁材用樹脂組成物をスピンコートした後、窒素雰囲気のオーブン中で加熱硬化した。加熱処理は、120℃で30分間、260℃で120分間の順で保持し、さらに400℃で90分間保持した後、20分間で200℃まで温度を下げ、さらに40分間で室温まで温度を戻して行った。このようにして、厚さ0.7μmの絶縁材の被膜を得た。以下実施例1と同様にして、この絶縁材皮膜の誘電率を測定したところ2.4であった。絶縁材皮膜の断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は、平均孔径8nmで非連続であった。
【0028】
実施例3
(1)ポリベンゾオキサゾール樹脂の合成
2,2−ビス(4−カルボキシドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン25g、塩化チオニル45ml及び乾燥ジメチルホルムアミド0.5mlを反応容器に入れ、60℃で2時間反応させた。反応終了後、過剰量の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去した。得られた残査を、ヘキサンを用いて再結晶させて、2,2−ビス(4−クロロベンゾイル)ヘキサフルオロプロパンを得た。
攪拌装置、窒素導入管、滴下漏斗を付けたセパラブルフラスコ中で、2,2−ビス(3ーアミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.32g(0.02mol)を乾燥したジメチルアセトアミド100gに溶解し、ピリジン3.96g(0.05mol)を添加後、乾燥窒素導入下、−15℃でジメチルアセトアミド50gに、上記により合成した2,2−ビス(4−クロロベンゾイル)ヘキサフルオロプロパン8.58g(0.02mol)を溶解したものを、30分間掛けて滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、室温で5時間攪拌した。その後、反応液を水1000ml中に滴下し、沈殿物を集め、40℃で48時間真空乾燥することにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドの固形物を得た。
このポリヒドロキシアミドをNMP200gに溶解した溶液に、ピリジン50gを加えた後、無水酢酸3.1g(0.03mol)を滴下し、系の温度を70℃に保って7時間オキサゾール化反応を行った。
この溶液を20倍量の水中に滴下して沈殿を回収し、60℃で72時間真空乾燥して、耐熱性樹脂であるポリベンゾオキサゾール樹脂の固形物を得た。得られたポリベンゾオキサゾール樹脂の数平均分子量は20000、重量平均分子量は40000であった。
【0029】
(2)耐熱性樹脂のガラス転移温度の測定
上記により合成したポリベンゾオキサゾール樹脂5.0gをNMP8.0gとテトラヒドロフラン12.0gの混合溶媒に溶解し、離型処理したガラス基板上に塗布した後、オーブン中で、120℃で30分間、240℃で90分保持して成膜し、基板から膜を剥がした後、さらに400℃で90分加熱し、耐熱性樹脂であるポリベンゾオキサゾール樹脂のフィルムとした。このポリベンゾオキサゾール樹脂のガラス転移温度を示差走査熱量計により測定したところ、362℃であった。
【0030】
(3)界面活性能を有する成分の熱分解温度の測定
ポリオキシエチレンノニルフェノール(H.L.B.=9)(第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA−80E)の熱分解温度を、窒素雰囲気下で熱重量分析により測定したところ、310℃であった。
【0031】
(4)絶縁材用樹脂組成物の調製と絶縁材の製造
上記により合成したポリベンゾオキサゾール樹脂5.0gをNMP8.0gとテトラヒドロフラン12.0gの混合溶媒に溶解した後、上記界面活性剤4.0を添加して攪拌し、均一に混合して、絶縁材用樹脂組成物を得た。
厚さ200nmのタンタルを成膜したシリコンウエハ上に、この絶縁材用樹脂組成物をスピンコートした後、窒素雰囲気のオーブン中で加熱硬化した。加熱処理は、120℃で30分間、260℃で120分間の順で保持し、さらに350℃で90分間保持した後、15分間で200℃まで温度を下げ、さらに40分間で室温まで温度を戻して行った。このようにして、厚さ0.7μmの絶縁材の被膜を得た。以下実施例1と同様にして、この絶縁材皮膜の誘電率を測定したところ2.1であった。絶縁材皮膜の断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は平均孔径6nm非連続であった。
【0032】
実施例4
(1)ポリヒドロキシアミドの合成
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸22g、塩化チオニル45ml及び乾燥ジメチルホルムアミド0.5mlを反応容器に入れ、60℃で2時間反応させた。反応終了後、過剰量の塩化チオニルを加熱及び減圧により留去した。得られた残査を、ヘキサンを用いて再結晶させて、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸クロリドを得た。
攪拌装置、窒素導入管、滴下漏斗を付けたセパラブルフラスコ中、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.32g(0.02mol)を乾燥したジメチルアセトアミド100gに溶解し、ピリジン3.96g(0.05mol)を添加後、乾燥窒素導入下、−15℃でジメチルアセトアミド50gに、上記により合成した2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸クロリド8.30g(0.02mol)を溶解したものを、30分掛けて滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、室温で5時間攪拌した。その後、反応液を水1000ml中に滴下し、沈殿物を集め、40℃で48時間真空乾燥することにより、ポリベンゾオキサゾール樹脂の前駆体であるポリヒドロキシアミドの固形物を得た。得られたポリヒドロキシアミドの数平均分子量は20000、重量平均分子量は40000であった。
【0033】
(2)耐熱性樹脂のガラス転移温度の測定
上記により合成したポリヒドロキシアミド5.0gをNMP20.0gに溶解し、離型処理したガラス基板上に塗布した後、オーブン中120℃で30分間、240℃で90分間保持して成膜し、基板から膜を剥がした後、さらに400℃で90分間加熱し、耐熱性樹脂であるポリベンゾオキサゾールのフィルムとした。このポリベンゾオキサゾールのガラス転移温度を示差走査熱量計により測定したところ、410℃であった。
【0034】
(3)界面活性能を有する成分の熱分解温度の測定
ポリエチレングリコールステアリルアミン(日本油脂株式会社製ナイミ−ンS−210)の熱分解温度を、窒素雰囲気下で熱重量分析により測定したところ、372℃であった。
【0035】
(4)絶縁材用樹脂組成物の調製と絶縁材の製造
上記により合成したポリヒドロキシアミド10.0gをNMP50.0gに溶解した後、ポリエチレングリコールステアリルアミン8.0gを加えて攪拌し、均一に混合して、絶縁材用樹脂組成物を得た。
厚さ200nmのタンタルを成膜したシリコンウエハ上に、この絶縁材用樹脂組成物をスピンコートした後、窒素雰囲気のオーブン中で加熱硬化した。加熱処理は、120℃で30分間、260℃で120分間の順で保持し、さらに400℃で90分間保持した後、20分間で200℃まで温度を下げ、さらに40分間で室温まで温度を戻して行った。このようにして、厚さ0.7μmの絶縁材の被膜を得た。以下実施例1と同様にして、この絶縁材皮膜の誘電率を測定したところ2.1であった。絶縁材皮膜の断面をTEMにより観察したところ、得られた空隙は平均孔径5nmで非連続であった。
【0036】
比較例1
実施例4の絶縁材用樹脂組成物の調整において用いた界面活性剤成分であるポリエチレングリコールステアリルアミンを添加しなかった以外は、全て実施例4と同様に絶縁材用樹脂組成物の調整と絶縁材の製造を行った。得られた絶縁材皮膜の誘電率は2.6であった。
【0037】
比較例2
実施例4の絶縁材用樹脂組成物の調整において用いたポリエチレングリコールステアリルアミン8.0gのかわりに分子量1000のポリエチレングリコール8gを添加した以外は、全て実施例4と同様に絶縁材用樹脂組成物の調整と絶縁材の製造を行った。得られた絶縁材皮膜の誘電率は2.6であった。空隙は観察されなかった。
【0038】
比較例3
実施例4の絶縁材用樹脂組成物の調整においてポリベンゾオキサゾールの前駆体であるポリヒドロキシアミドのかわりに、実施例3のポリベンゾオキサゾールの合成で得たガラス転移温度362℃のポリベンゾオキサゾール樹脂を用いた以外は、全て実施例4と同様に、絶縁材用樹脂組成物の調整と絶縁材の製造を行った。得られた絶縁材皮膜の誘電率は2.6であった。空隙は観察されなかった。
【0039】
実施例1〜4においては、誘電率が2.1〜2.4と、非常に低い誘電率を有する絶縁材を得ることが出来た。
【0040】
比較例1では、界面活性能を有する成分(A)を、組成物成分中に有していないために、誘電率を低減できなかった。
【0041】
比較例2では、添加したポリエチレングリコールが界面活性能を有していないために、誘電率を低減できなかった。
【0042】
比較例3では、耐熱性樹脂のガラス転移温度が、成分(A)の重合物の熱分解温度より低いために、誘電率を低減できなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の絶縁材用樹脂組成物及びこれを用いた絶縁材は、電気特性、特に誘電特性および耐熱性に優れたものであり、これらの特性が要求される様々な分野、例えば半導体用の層間絶縁膜、多層回路の層間絶縁膜などとして有用である。

Claims (2)

  1. 250℃以上の熱分解温度を有する界面活性能を有する成分(A)と、樹脂のガラス転移温度が成分(A)の熱分解温度より高い耐熱性樹脂またはその前駆体(B)とを必須成分とし、前記成分(A)と成分(B)との重量比A/Bが、5/95から90/10である絶縁材用樹脂組成物であって、耐熱性樹脂またはその前駆体(B)が、ポリベンゾオキサゾール樹脂またはポリベンゾオキサゾール前駆体である絶縁材用樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の絶縁材用樹脂組成物を用いて、成分(A)と耐熱性樹脂またはその前駆体(B)により相分離構造を形成させた後、成分(A)の熱分解温度より高い温度、且つ成分(B)の耐熱性樹脂もしくはその前駆体を閉環させた樹脂のガラス転移温度より低い温度で、熱処理する工程を有する方法で製造されたことを特徴とする絶縁材。
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