図1は、実施例1にかかる内燃機関の構成例を示す図である。同図に示すように、この実施例にかかる内燃機関1は、燃料供給装置2と、複数の気筒30a〜d(この実施例では、直列4気筒)により構成される内燃機関本体3と、内燃機関本体3に接続される吸気経路5と、この内燃機関本体3に接続される排気経路6と、内燃機関1−1の運転を制御する制御装置であるECU(Engine Control Unit)7とにより構成されている。
燃料供給装置2は、燃料タンク22内に貯留されている燃料、例えばガソリンを内燃機関1に供給するものである。この燃料供給装置2は、燃料噴射弁21と、燃料タンク22と、低圧燃料ポンプ23と、燃料供給配管とにより構成されている。
燃料噴射弁21は、内燃機関本体3の気筒30a〜dごとに設けられており、例えばこの各気筒30a〜dの吸気ポート37などに燃料ポンプ23により加圧された燃料をそれぞれ噴射するものである。この燃料噴射弁21の燃料噴射量、すなわち内燃機関1に供給する燃料の燃料供給量や噴射タイミングなどの制御、すなわち燃料噴射制御は、ECU7により行われる。
内燃機関本体3は、シリンダブロック31と、このシリンダブロック31に固定されたシリンダヘッド32と、気筒30a〜dごとに設けられるピストン33およびコンロッド34と、クランクシャフト35と、気筒30a〜dごとに設けられる点火プラグ36と、バルブ装置4とにより構成されている。ここで、内燃機関本体3の各気筒30a〜dには、各気筒30a〜dのピストン33と、シリンダブロック31と、シリンダヘッド32とによりそれぞれ燃焼室Aが形成されている。シリンダヘッド32には、吸気ポート37および排気ポート38が気筒30a〜dごとに形成されており、それぞれ吸気経路5および排気経路6に接続されている。ピストン33は、コンロッド34に回転自在に支持されており、このコンロッド34は、クランクシャフト35に回転自在に支持されている。つまり、クランクシャフト35は、ピストン33が燃焼室A内の吸入空気と燃料の混合ガスが燃焼することによりシリンダブロック31内を往復運動することで、回転するものである。
点火プラグ36は、気筒30a〜dごとに設けられており、ECU7からの点火信号により、点火し、各気筒30a〜dの燃焼室A内の混合ガスを着火させるものである。点火プラグ36の点火タイミングなどの制御、すなわち点火制御は、ECU7により行われる。なお、39は、クランクシャフト35の角度であるクランク角度(CA)を検出し、ECU7に出力するクランク角度センサである。なお、ECU7は、このクランク角度センサ39により検出されたクランク角度から内燃機関1−1の機関回転数の算出や各気筒30a〜dの気筒の判別を行う。
バルブ装置4は、吸気バルブ41および排気バルブ42の開閉を行うものである。このバルブ装置4は、気筒30a〜dごとに設けられる吸気バルブ41および排気バルブ42と、インテークカムシャフト43と、エキゾーストカムシャフト44と、吸気バルブタイミング機構45とにより構成されている。吸気バルブ41は、吸気ポート37と燃焼室Aとの間に配置され、インテークカムシャフト43が回転することにより開閉が行われる。また、排気バルブ42は、排気ポート38と燃焼室Aとの間に配置され、エキゾーストカムシャフト44が回転することにより開閉が行われる。インテークカムシャフト43およびエキゾーストカムシャフト44は、タイミングチェーンを介してクランクシャフト35に連結されており、このクランクシャフト35の回転に連動して回転するものである。
吸気バルブタイミング機構45は、インテークカムシャフト43とクランクシャフト35との間に配置されている。吸気バルブタイミング機構45は、連続可変バルブタイミング機構であり、インテークカムシャフト43の位相を連続的に変化させるものである。また、バルブ装置4には、インテークカムポジションセンサ46が備えられており、インテークカムシャフト43の回転位置を検出し、ECU7に出力する。また、このバルブ装置4は、吸気バルブタイミング機構45により、吸気バルブ41の開閉時期を調整するが、これに限定されるものではなく、例えば排気バルブ42の開閉時期を調整する排気バルブタイミング機構をも備えても良い。
吸気経路5は、外部から空気を吸気し、この吸入された空気を内燃機関本体3の各気筒30a〜dの燃焼室Aに導入するものである。この吸気経路5は、エアクリーナ51と、エアフロメータ52と、スロットルバルブ53と、エアクリーナ51から各気筒30a〜dの吸気ポート37までを連通する吸気通路54とにより構成されている。エアクリーナ51により粉塵が除去された空気は、吸気通路54および吸気ポート37を介して、各気筒30a〜dの各燃焼室Aに導入される。エアフロメータ52は、吸入空気量検出手段であり各気筒30a〜dに導入、すなわち吸気経路5から吸入される吸入空気量を検出し、ECU7に出力するものである。スロットルバルブ53は、上記吸気経路5から吸気される吸入空気量を調整するものである。このスロットルバルブ53は、ステッピングモータなどのアクチュエータ53aにより駆動されるものである。このスロットルバルブ53のバルブ開度の制御、すなわちバルブ開度制御は、ECU7により行われる。
また、排気経路6は、排気ガス浄化触媒61と、図示しない消音装置と、各気筒30a〜dの排気ポート38から排気ガス浄化触媒61を介して消音装置までを連通する排気通路62と、A/Fセンサ63と、O2センサ64とにより構成されている。排気ガス浄化触媒61は、排気通路62を介して吸入された排気ガスに含まれる有害物質、例えば窒化酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を浄化するものであり。この有害物質が浄化された排気ガスは、排気ガス浄化触媒61から排気通路および図示しない消音装置を介して外部に排気される。
A/Fセンサ63は、空燃比検出手段であり、被毒状態検出手段の一部を構成するものである。このA/Fセンサ63は、排気通路62のうち排気ガス浄化触媒61の上流側に配置されるものである。このA/Fセンサ63は、各燃焼室Aから排気経路6に排気された排気ガスのうち、排気ガス浄化触媒61に吸入される前の排気ガスの排気ガス空燃比を検出し、ECU7に出力するものである。なお、ECU7は、このA/Fセンサ63により検出された排気ガス空燃比に基づいて、吸入された空気と燃料とからなる混合ガスの空燃比、すなわち内燃機関1−1の空燃比を算出する。つまり、A/Fセンサ63は、内燃機関の空燃比を検出することができるものである。
O2センサ64は、酸素濃度検出手段であり、後述する実施例2にかかる被毒状態検出手段の一部を構成するものである。排気通路62のうち排気ガス浄化触媒61の下流側に配置されるものである。このO2センサ64は、各燃焼室Aから排気経路6に排気された排気ガスのうち、排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度を検出し、ECU7に出力するものである。
ECU7は、内燃機関1−1を運転制御することで、この内燃機関1−1を運転するものである。このECU7は、内燃機関1−1が搭載された車両の各所に取り付けられたセンサから、各種入力信号が入力される。具体的には、クランクシャフト35に取り付けられたクランク角度センサ39により検出されたクランク角度、エアフロメータ52により検出された吸入空気量、アクセル開度センサ8により検出されたアクセル開度、A/Fセンサ63により検出された排気ガス空燃比、O2センサ64により検出された酸素濃度などがある。
このECU7は、これら入力信号および記憶部73に格納されている吸入空気量およびアクセル開度に基づいた燃料噴射量マップなどの各種マップに基づいて各種出力信号を出力する。具体的には、燃料噴射弁21の燃料噴射制御を行う噴射信号、点火プラグ36の点火制御を行う点火信号、スロットルバルブ53のバルブ開度制御を行うバルブ開度信号など出力信号である。
また、ECU7は、上記入力信号や出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)71と、処理部72と、燃料噴射量マップなどの各種マップなどを格納する記憶部73とにより構成されている。処理部72は、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。この処理部72は、少なくとも触媒吸入酸素量算出部74と、触媒内酸素吸蔵量算出部75と、被毒状態判断部76と、所定吸蔵量決定部77と、バルブ開度制御部78と、劣化度算出部79を有している。処理部72は、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部72は、内燃機関1−1の運転方法などに基づくプログラムをメモリにロードして実行することにより、この内燃機関1−1の運転方法などを実現させるものであっても良い。また、記憶部73は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
処理部72の触媒吸入酸素量算出部74は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、触媒吸入酸素量算出手段である。この触媒吸入酸素量算出部74は、エアフロメータ52により検出された吸入空気量およびA/Fセンサ63により検出された空燃比に基づいて排気ガス浄化触媒61に吸入される触媒吸入酸素量を算出するものである。
処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、触媒内酸素吸蔵量算出手段である。この触媒内酸素吸蔵量算出部75は、触媒吸入酸素量算出部74により算出された触媒吸入酸素量を積算することで排気ガス浄化触媒61に吸蔵される触媒内酸素吸蔵量を算出するものである。
処理部72の被毒状態判断部76は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、被毒状態判断手段である。この被毒状態判断部76は、触媒内酸素吸蔵量算出部75により積算された触媒内酸素吸蔵量が所定吸蔵量未満であるか否かを判断するものである。
処理部72の所定吸蔵量決定部77は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、所定吸蔵量決定手段である。この所定吸蔵量決定部77は、所定吸蔵量を排気ガス浄化触媒61の劣化度に応じて決定するものである。
処理部72のバルブ開度制御部78は、制御手段であり、スロットルバルブ53のバルブ開度の制御、すなわちバルブ開度制御を行うものである。
処理部72の劣化度算出部79は、劣化度算出手段であり、被毒状態検出手段の一部を構成するものでもある。この劣化度算出部79は、排気ガス浄化触媒61の劣化度を算出するものである。
つまり、実施例1にかかる被毒状態検出手段は、エアフロメータ52と、A/Fセンサ63と、ECU7の触媒吸入酸素量算出部74と、触媒内酸素吸蔵量算出部75と、被毒状態判断部76と、所定吸蔵量決定部77と、劣化度算出部79とにより構成されている。この被毒状態検出手段は、これらを用いて排気経路5に設けられた排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒61の被毒状態を検出する。
次に、実施例1にかかる内燃機関1−1の運転方法について説明する。図2は、実施例1にかかる内燃機関の運転方法の動作フローを示す図である。図3は、触媒内酸素吸蔵量osxと劣化度D1との関係を示す図である。図4は、係数K1と劣化度D1との関係を示す図である。図5は、係数K2と機関回転数Neとの関係を示す図である。
まず、図2に示すように、ECU7の処理部72は、吸入空気量Gaを取得する(ステップST101)。ここでは、処理部72は、エアフロメータ53により検出され、ECU7に出力された吸気経路5から吸気される吸入空気量Gaを取得する。
次に、ECU7の処理部72は、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態であるか否かを判断する(ステップST102)。ここで、フューエルカット状態とは、燃料噴射弁21による燃料の噴射が停止されている状態をいう。このフューエルカット状態は、例えばアクセルペダルから足を離し、アクセル開度センサ8により検出され、ECU7に出力されたアクセル開度が前回検出されたアクセル開度に対して減少、あるいは0となった場合などに発生するものである。
次に、ECU7の処理部72は、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態でないと判断されると、空燃比A/Fを取得する(ステップST119)。ここでは、処理部72は、A/Fセンサ63により検出され、ECU7に出力された排気ガス浄化触媒61に吸入される前の排気ガスの排気ガス空燃比に基づいて算出された空燃比A/Fを算出する。
次に、処理部72の触媒吸入酸素量算出部74は、上記取得された吸入空気量Gaおよび算出された空燃比A/Fから排気ガス浄化触媒61に吸入される触媒吸入酸素量dosaを算出する(ステップST120)。ここでは、この触媒吸入酸素量算出部74は、処理部72により内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態でないと判断されているため、このフューエルカット状態でない場合における触媒吸入酸素量dosaを算出する。触媒吸入酸素量算出部74は、例えば、触媒吸入酸素量dosaを下記の式(1)により算出する。なお、式(1)において、TAは、目標とする空燃比、例えば理論空燃比などである。また、0.23は、空気に含まれる酸素の割合である。従って、この式(1)により算出される触媒吸入酸素量dosaは、目標とする空燃比TAよりも、算出された空燃比A/Fが少ない場合、負の値となる。
dosa=Ga×0.23×((A/F−TA)/A/F) …(1)
次に、処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、上記触媒吸入酸素量算出部74において算出された触媒吸入酸素量dosa(フューエルカット状態でないと判断された場合に算出された触媒吸入酸素量dosa)に基づいて排気ガス浄化触媒61に吸蔵される触媒内酸素吸蔵量osaを算出する(ステップST113)。ここでは、例えば、触媒内酸素吸蔵量osaを下記の式(2)により算出する。なお、式(2)において、osa(n)は、算出される触媒内酸素吸蔵量osaである。また、osa(n-1)は、前回算出された触媒内酸素吸蔵量osaである。ここで、処理部72が内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態でないと判断し続けると、触媒吸入酸素量算出部74により繰り返し算出された触媒吸入酸素量dosaは、触媒内酸素吸蔵量算出部75により触媒内酸素吸蔵量osaとして積算される。
osa(n)=osa(n-1)+dosa …(2)
また、処理部72の劣化度算出部79は、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態であると判断されると、排気ガス浄化触媒61の劣化度D1を算出する(ステップST103)。ここで、劣化度算出部79による劣化度D1の算出方法としては、例えば排気ガス浄化触媒61に吸蔵される酸素の最大酸素吸蔵量Cmaxの変化に基づいた算出方法がある。この場合、劣化度算出部79は、排気ガス浄化触媒61の最大酸素吸蔵量Cmaxを任意の間隔で繰り返し算出する。そして、劣化度算出部79は、繰り返し算出された最大酸素吸蔵量Cmaxのうち、例えば所定時間前近傍で、あるいは所定回数前に算出された最大酸素吸蔵量Cmaxに対する今回算出された最大酸素吸蔵量Cmaxの減少量に基づいて劣化度D1を算出する。この最大酸素吸蔵量Cmaxの算出方法は、既存の算出方法を用いることができるため、ここではその説明を省略する。
次に、処理部72の所定吸蔵量決定部77は、上記算出された排気ガス浄化触媒61の劣化度D1に基づいて、所定吸蔵量γ1を決定する(ステップST104)。ここでは、例えば、図3に示すように、排気ガス浄化触媒61の劣化度D1と所定吸蔵量γ1とに基づいた所定吸蔵量マップを予め記憶部73に格納しておく。そして、劣化度D1および所定吸蔵量マップから所定吸蔵量γ1を決定する。排気ガス浄化触媒61は、その劣化度が高い、すなわち劣化が進行しているほど、最大酸素吸蔵量Cmaxが低下する。従って、この所定吸蔵量マップは、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、すなわち劣化度D1の増加に伴い、所定吸蔵量を増加、すなわちプラス側に変化するように設定されている。つまり、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、後述する内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際におけるバルブ開度qfcを増加させやすくすることができる。
ここで、所定吸蔵量γ1は、排気ガス浄化触媒61のHC被毒が進行していると判断することができる触媒内酸素吸蔵量osaである。なお、内燃機関の種類(構造、排気量、使用燃料など)や排気ガス浄化触媒の種類(構造、担持されている貴金属など)に応じて、排気ガス浄化触媒61のHC被毒が進行していると判断することができる触媒内酸素吸蔵量osaが異なる。従って、劣化度D1に基づいて決定される所定吸蔵量γ1もこれらに応じて異なるものである。
次に、処理部72の被毒状態判断部76は、図2に示すように、上記算出された触媒内酸素吸蔵量osaが決定された所定吸蔵量γ1未満であるか否かを判断する(ステップST105)。つまり、排気ガス浄化触媒61が被毒状態であるか否かを判断する。
次に、処理部72のバルブ開度制御部78は、被毒状態判断部76が上記算出された触媒内酸素吸蔵量osaが決定された所定吸蔵量γ1未満である、すなわち排気ガス浄化触媒61が被毒状態であると判断すると、ベースバルブ開度qfcbを取得する(ステップST106)。ここでは、バルブ開度制御部78は、例えば予め記憶部73に格納されている内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際におけるバルブ開度をベースバルブ開度qfcbとして取得する。
次に、処理部72のバルブ開度制御部78は、機械回転数Neを取得する(ステップST107)。ここでは、処理部72は、クランク角度センサ39により検出され、ECU7に出力されたクランクシャフト35のクランク角度に基づいて算出された機関回転数Neを取得する。
次に、処理部72のバルブ開度制御部78は、劣化度算出部79が算出した劣化度D1に基づいて係数K1を算出する(ステップST108)。ここでは、例えば図4に示すように、排気ガス浄化触媒61の劣化度D1と係数K1とに基づいた係数マップを予め記憶部73に格納しておく。そして、劣化度D1および係数マップから係数K1を算出する。上述のように、排気ガス浄化触媒61は、その劣化度が高い、すなわち劣化が進行しているほど、最大酸素吸蔵量Cmaxが低下する。従って、この係数マップは、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、すなわち劣化度D1の増加に伴い、係数K1が減少(この実施例1では、二次曲線的に減少)、すなわち後述するバルブ開度qfcを増加する際の増加量が減少するように設定されている。
次に、処理部72のバルブ開度制御部78は、図2に示すように、取得した期間回転数Neに基づいて係数K2を算出する(ステップST109)。ここでは、例えば図5に示すように、内燃機関1−1の機関回転数Neと係数K2とに基づいた係数マップを予め記憶部73に格納しておく。そして、劣化度D1および係数マップから係数K2を算出する。内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際には、スロットルバルブ53のバルブ開度qfcに応じた減速度が内燃機関1−1を搭載する車両に発生する。この減速度は、機関回転数Neの上昇に伴い減少するものである。従って、この係数マップは、機関回転数Neの上昇に伴って、係数K2が減少(この実施例1では、二次曲線的に減少)、すなわち後述するバルブ開度qfcを増加する際の増加量が減少するように設定されている。これにより、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際に、バルブ開度qfcを増加しても、車両の減速度の減少を抑制することができる。
次に、処理部72のバルブ開度制御部78は、バルブ開度qfcを算出する(ステップST110)。ここでは、例えば、バルブ開度qfcを下記の式(3)により算出する。なお、この式(3)では、バルブ開度qfcは、ベースバルブ開度qfcbに対してバルブ開度が増加するが、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行あるいは内燃機関1−1の機関回転数Neの上昇に伴ってその増加量が減少するように算出されることとなる。
qfc=qfcb+K1+K2 …(3)
次に、処理部72のバルブ開度制御部78は、上記算出されたバルブ開度qfcに基づいてバルブ開度を制御する(ステップST111)。ここでは、バルブ開度制御部78は、上記算出されたバルブ開度qfcに基づいたバルブ開度信号をアクチュエータ53aに出力し、このアクチュエータ53aを算出されたバルブ開度qfcに基づいて駆動することで、スロットルバルブ53のバルブ開度をバルブ開度qfcに制御する。
次に、上記取得された吸入空気量Gaから排気ガス浄化触媒に吸入される触媒吸入酸素量dosaを算出する(ステップST112)。ここでは、この触媒吸入酸素量算出部74は、処理部72により内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態であると判断されているため、このフューエルカット状態である場合における触媒吸入酸素量dosaを算出する。触媒吸入酸素量算出部74は、例えば、触媒吸入酸素量dosaを下記の式(4)により算出する。なお、式(4)において、0.23は、空気に含まれる酸素の割合である。
dosa=Ga×0.23 …(4)
次に、処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、上述のように、上記触媒吸入酸素量算出部74において算出された触媒吸入酸素量dosa(フューエルカット状態であると判断された場合に算出された触媒吸入酸素量dosa)に基づいて排気ガス浄化触媒61に吸蔵される触媒内酸素吸蔵量osaを算出する(ステップST113)。ここでは、例えば、触媒内酸素吸蔵量osaを上記の式(2)により算出する。
次に、処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、上記算出された排気ガス浄化触媒61の劣化度D1に基づいて、上限値αおよび下限値βを決定する(ステップST114)。この上限値αとは、排気ガス浄化触媒61が実際、酸素を最も吸蔵した際における触媒内酸素吸蔵量(正の値)、例えば上記最大酸素吸蔵量をいう。一方、下限値βとは、排気ガス浄化触媒61のHC被毒が実際、最も進行した際における触媒内酸素吸蔵量(負の値)である。ここでは、例えば図3に示すように、排気ガス浄化触媒61の劣化度D1と上限値αおよび下限値βとに基づいた上限値下限値マップを予め記憶部73に格納しておく。そして、劣化度D1および上限値下限値マップから上限値αおよび下限値βを決定する。この上限値下限値マップは、上記所定吸蔵量マップと同様に、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、すなわち劣化度D1の増加に伴い、上限値αが減少、すなわちマイナス側に変化するように、下限値βが増加、すなわちプラス側に変化するように設定されている。
次に、処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、上記算出された触媒内酸素吸蔵量osaが上限値αを超えるか否かを判断する(ステップST115)。ここで、触媒内酸素吸蔵量算出部75は、算出された触媒内酸素吸蔵量osaが上限値αを超えると判断されると、算出された触媒内酸素吸蔵量osaを上限値αとする(ステップST116)。つまり、触媒内酸素吸蔵量osa=αとする。これにより、フューエルカット状態でないと判断された場合に算出された触媒吸入酸素量dosaあるいはフューエルカット状態であると判断された場合に算出された触媒吸入酸素量dosaを積算した触媒内酸素吸蔵量osaが排気ガス浄化触媒61が実際、酸素を最も吸蔵した際における触媒内酸素吸蔵量を超えることを防止することができる。
次に、処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、上記算出された触媒内酸素吸蔵量osaが上限値α以下であると判断されると、この算出された触媒内酸素吸蔵量osaが下限値β未満であるか否かを判断する(ステップST117)。ここで、触媒内酸素吸蔵量算出部75は、算出された触媒内酸素吸蔵量osaが下限値βを未満であると判断すると、算出された触媒内酸素吸蔵量osaを下限値βとする(ステップST118)。つまり、触媒内酸素吸蔵量osa=βとする。これにより、フューエルカット状態でないと判断された場合に算出された触媒吸入酸素量dosaあるいはフューエルカット状態であると判断された場合に算出された触媒吸入酸素量dosaを積算した触媒内酸素吸蔵量osaが実際の排気ガス浄化触媒61のHC被毒が実際、最も進行した際における触媒酸素吸蔵量未満となることを防止することができる。
なお、処理部72の触媒内酸素吸蔵量算出部75は、上記算出された触媒内酸素吸蔵量osaが下限値β以上であると判断されると、この算出された触媒内酸素吸蔵量osaを維持し、再度ステップST101から繰り返す。
以上のように、バルブ開度制御部78は、触媒内酸素吸蔵量算出部75により算出された排気ガス浄化触媒61に吸蔵される触媒内酸素吸蔵量osaが所定吸蔵量γ1未満であると被毒状態判断部76により判断されるとスロットルバルブ53のバルブ開度qfcを増加する。つまり、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際に、被毒状態検出手段により検出された被毒状態に応じて、スロットルバルブ53のバルブ開度qfcを制御する。従って、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際に、吸気経路5から吸気される吸入空気量Gaが増加するため、排気ガス浄化触媒61に吸入される触媒吸入酸素量dosaをこのフューエルカット状態が一定期間であっても増加することができる。つまり、フューエルカット状態が短時間であっても、触媒吸入酸素量dosaを増加することができる。これにより、排気ガス浄化触媒61に蓄積された炭化水素をより多く浄化することができるため、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際に、排気ガス浄化触媒61をHC被毒から十分に回復することができる。
また、上述のように、所定吸蔵量γ1が劣化度D1に基づいて決定されるため、排気ガス浄化触媒61の劣化が進行しても、内燃機関1−1の運転状態がフューエルカット状態の際に、排気ガス浄化触媒61をHC被毒から十分に回復することができる。また、バルブ開度qfcを増加する際の増加量は、算出された劣化度D1に応じて変更されるため、排気ガス浄化触媒61の劣化が進行具合に応じて、排気ガス浄化触媒61のHC被毒から回復することができる。
次に、実施例2にかかる内燃機関1−2について説明する。図6は、実施例2にかかる内燃機関の構成例を示す図である。同図に示す実施例2にかかる内燃機関1−2が、図1に示す実施例1にかかる内燃機関1−1と異なる点は、被毒状態検出手段がこの排気ガス浄化触媒61の触媒被毒量に基づいて排気ガス浄化触媒61の被毒状態を検出する点である。ここで、図6に示す実施例2にかかる内燃機関1−2の基本的構成のうち、図1に示す実施例1にかかる内燃機関1−1の基本的構成と同一部分は、その説明を省略する。
ECU9は、実施例1にかかるECU7と同様に、内燃機関1−2を運転制御することで、この内燃機関1−2を運転するものである。このECU9には、例えばクランク角度センサ39により検出されたクランク角度、エアフロメータ52により検出された吸入空気量、アクセル開度センサ8により検出されたアクセル開度、A/Fセンサ63により検出された排気ガス空燃比、O2センサ64により検出された酸素濃度などの入力信号が入力される。また、このECU9は、燃料噴射弁21の燃料噴射制御を行う噴射信号、点火プラグ36の点火制御を行う点火信号、スロットルバルブ53のバルブ開度制御を行うバルブ開度信号など出力信号を出力する。
ECU9は、入出力部(I/O)91と、処理部92と、記憶部93とにより構成されている。処理部92は、少なくとも触媒被毒量算出部94と、被毒状態判断部95と、所定被毒量決定部96と、バルブ開度制御部97と、劣化度算出部98を有している。
処理部92の触媒被毒量算出部94は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、触媒被毒量算出手段である。この触媒被毒量算出部94は、少なくともO2センサ64により検出された酸素濃度に基づいて排気ガス浄化触媒61の触媒被毒量を算出するものである。
処理部92の被毒状態判断部95は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、被毒状態判断手段である。この被毒状態判断部95は、触媒被毒量算出部94により積算されたこの触媒被毒量が所定被毒量を超えるか否かを判断するものである。
処理部92の所定被毒量決定部96は、被毒状態検出手段の一部を構成するものであり、所定被毒量決定手段である。この所定被毒量決定部96は、所定被毒量を排気ガス浄化触媒61の劣化度に応じて決定するものである。
処理部92のバルブ開度制御部97は、制御手段であり、スロットルバルブ53のバルブ開度の制御、すなわちバルブ開度制御を行うものである。
処理部92の劣化度算出部98は、劣化度算出手段であり、被毒状態検出手段の一部を構成するものでもある。この劣化度算出部98は、排気ガス浄化触媒61の劣化度を算出するものである。
つまり、実施例2にかかる被毒状態検出手段は、O2センサ64と、ECU9の触媒被毒量算出部94と、被毒状態判断部95と、所定被毒量決定部96と、バルブ開度制御部97と、劣化度算出部98とにより構成されている。この被毒状態検出手段は、これらを用いて排気経路6に設けられた排気ガスを浄化する排気ガス浄化触媒61の被毒状態を検出する。
次に、実施例2にかかる内燃機関1−2の運転方法について説明する。図7は、実施例2にかかる内燃機関の運転方法の動作フローを示す図である。図8は、触媒被毒量Xと劣化度D2との関係を示す図である。図9は、係数K3と劣化度D2との関係を示す図である。図10は、係数K4と機関回転数Neとの関係を示す図である。図11は、係数K5とセンサ出力値oxsとの関係を示す図である。なお、図7に示す実施例2にかかる内燃機関1−2の運転方法のうち、図2に示す実施例1にかかる内燃機関1−1の運転方法と、同一部分あるいはほぼ同一部分については簡略化して説明する。
まず、図7に示すように、ECU9の処理部92は、吸入空気量Gaを取得する(ステップST201)。ここでは、処理部92は、エアフロメータ53により検出され、ECU9に出力された吸気経路5から吸気される吸入空気量Gaを取得する。
次に、ECU9の処理部92は、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態であるか否かを判断する(ステップST202)。ここで、フューエルカット状態とは、燃料噴射弁21による燃料の噴射が停止されている状態をいう。このフューエルカット状態は、例えばアクセルペダルから足を離し、アクセル開度センサ8により検出され、ECU9に出力されたアクセル開度が前回検出されたアクセル開度に対して減少、あるいは0となった場合などに発生するものである。
次に、ECU9の処理部92は、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態でないと判断されると、O2センサ64のセンサ出力値oxsを取得する(ステップST213)。ここでは、処理部92は、O2センサ64により検出され、ECU9に出力された排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度をセンサ出力値oxsとして取得する。なお、センサ出力値oxsは、排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度が低いほど高くなるものである。
次に、処理部92の触媒被毒量算出部94は、取得されたセンサ出力値oxsが所定値B未満であるか否かを判断する(ステップST214)。ここで、所定値Bは、排気ガス浄化触媒61がHC被毒していない場合において、排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度をO2センサ64により検出した際のセンサ出力値である。つまり、触媒被毒量算出部94は、排気ガス浄化触媒61が少なくともHC被毒されているか否かを判断する。
次に、処理部92の触媒被毒量算出部94は、取得されたセンサ出力値oxsが所定値B未満であると判断されると、触媒被毒量Xをリセットする(ステップST215)。ここでは、触媒被毒量算出部94は、排気ガス浄化触媒61がHC被毒していないと判断した際に、積算された触媒被毒量Xをリセット、すなわち触媒被毒量X=0とする。
次に、処理部92の触媒被毒量算出部94は、取得されたセンサ出力値oxsが所定値B以上であると判断されると、上記取得されたセンサ出力値oxsに基づいて、係数K5を算出する(ステップST216)。ここでは、例えば図11に示すように、センサ出力値oxsと係数K5とに基づいた係数マップを予め記憶部93に格納しておく。そして、取得されたセンサ出力値oxsおよび係数マップから係数K5を算出する。上述のように、センサ出力値oxsが高いほど、排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度が低くなる。つまり、排気ガス浄化触媒61のHC被毒が進行する。従って、この係数マップは、排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度の低下に伴って、すなわちセンサ出力値oxsの増加に伴い、係数K5が増大(この実施例2では、直線的に減少)、すなわち後述する触媒被毒量Xが増加するに設定されている。
次に、処理部92の触媒被毒量算出部94は、上記算出された係数K5に基づいて排気ガス浄化触媒61の触媒被毒量Xを算出する(ステップST217)。ここでは、例えば、触媒被毒量Xを下記の式(5)により算出する。なお、式(5)において、X(n)は、算出された触媒被毒量Xである。また、X(n-1)は、前回算出された触媒被毒量Xである。ここで、処理部92が内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態でないと判断し続け、取得されたセンサ出力値oxsが所定値B以上であると判断され続けると、触媒被毒量算出部94により繰り返し算出された触媒被毒量Xが積算される。
X(n)=X(n-1)+K5 …(5)
また、処理部92の劣化度算出部98は、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態であると判断されると、排気ガス浄化触媒61の劣化度D2を算出する(ステップST203)。ここで、劣化度算出部98による劣化度D2の算出方法は、例えば上記実施例1と同様に最大酸素吸蔵量Cmaxの変化に基づいた算出方法がある。
次に、処理部92の所定被毒量決定部96は、上記算出された排気ガス浄化触媒61の劣化度D2に基づいて、所定被毒量γ2を決定する(ステップST204)。ここでは、例えば、図8に示すように、排気ガス浄化触媒61の劣化度D2と所定被毒量γ2とに基づいた所定被毒量マップを予め記憶部93に格納しておく。そして、劣化度D2および所定被毒量マップから所定被毒量γ2を決定する。排気ガス浄化触媒61は、その劣化度D2が高い、すなわち劣化が進行しているほど、最大酸素吸蔵量Cmaxが低下する。従って、この所定被毒量マップは、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、すなわち劣化度D2の増加に伴い、所定被毒量を減少、すなわちマイナス側に変化するように設定されている。つまり、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、後述する内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態の際におけるバルブ開度qfcを増加させやすくすることができる。
ここで、所定被毒量γ2は、排気ガス浄化触媒61がHC被毒され、このHC被毒がある程度進行していると判断することができる触媒被毒量Xである。なお、内燃機関の種類(構造、排気量、使用燃料など)や排気ガス浄化触媒の種類(構造、担持されている貴金属など)に応じて、排気ガス浄化触媒61がHC被毒され、HC被毒が進行していると判断することができる触媒被毒量Xが異なる。従って、劣化度D2に基づいて決定される所定被毒量γ2もこれらに応じて異なるものである。
次に、処理部92の被毒状態判断部95は、図7に示すように、上記算出された触媒被毒量Xが決定された所定被毒量γ2を超えるか否かを判断する(ステップST205)。つまり、排気ガス浄化触媒61が被毒状態であるか否かを判断する。
次に、処理部92のバルブ開度制御部97は、被毒状態判断部95が上記算出された触媒被毒量Xが決定された所定被毒量γ2を超える、すなわち排気ガス浄化触媒61が被毒状態であると判断すると、ベースバルブ開度qfcbを取得する(ステップST206)。次に、バルブ開度制御部97は、機械回転数Neを取得する(ステップST207)。
次に、処理部92のバルブ開度制御部97は、劣化度算出部98が算出した劣化度D2に基づいて係数K3を算出する(ステップST208)。ここでは、例えば図9に示すように、排気ガス浄化触媒61の劣化度D2と係数K3とに基づいた係数マップを予め記憶部73に格納しておく。そして、劣化度D2および係数マップから係数K3を算出する。この係数マップは、実施例1と同様に、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行に伴って、すなわち劣化度D2の増加に伴い、係数K3が減少(この実施例2では、二次曲線的に減少)、すなわち後述するバルブ開度qfcを増加する際の増加量が減少するように設定されている。
次に、処理部92のバルブ開度制御部97は、図7に示すように、取得した期間回転数Neに基づいて係数K4を算出する(ステップST209)。ここでは、例えば図10に示すように、内燃機関1−2の機関回転数Neと係数K4とに基づいた係数マップを予め記憶部73に格納しておく。そして、劣化度D2および係数マップから係数K4を算出する。この係数マップは、実施例1と同様に、機関回転数Neの上昇に伴って、係数K4が減少(この実施例2では、二次曲線的に減少)、すなわち後述するバルブ開度qfcを増加する際の増加量が減少するように設定されている。これにより、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態の際に、バルブ開度qfcを増加しても、車両の減速度の減少を抑制することができる。
次に、処理部92のバルブ開度制御部97は、バルブ開度qfcを算出する(ステップST210)。ここでは、例えば、バルブ開度qfcを下記の式(6)により算出する。なお、この式(6)では、バルブ開度qfcは、ベースバルブ開度qfcbに対してバルブ開度が増加するが、排気ガス浄化触媒61の劣化の進行あるいは内燃機関1−2の機関回転数Neの上昇に伴ってその増加量が減少するように算出されることとなる。
qfc=qfcb+K3+K4 …(6)
次に、処理部92のバルブ開度制御部97は、上記算出されたバルブ開度qfcに基づいてバルブ開度を制御する(ステップST211)。ここでは、バルブ開度制御部97は、上記算出されたバルブ開度qfcに基づいたバルブ開度信号をアクチュエータ53aに出力し、このアクチュエータ53aを算出されたバルブ開度qfcに基づいて駆動することで、スロットルバルブ53のバルブ開度をバルブ開度qfcに制御する。
次に、処理部92の触媒被毒量算出部94は、上記取得された吸入空気量Gaから排気ガス浄化触媒61の触媒被毒量Xを算出する(ステップST212)。ここでは、触媒被毒量算出部94は、フューエルカット状態であると判断された場合における触媒被毒量Xを算出する。例えば、触媒被毒量Xを下記の式(7)により算出する。なお、式(7)において、X(n)は、算出された触媒被毒量Xである。また、X(n-1)は、前回算出された触媒被毒量Xである。また、0.23は、空気に含まれる酸素の割合である。ここで、処理部92が内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態であると判断すると、触媒被毒量算出部94は、触媒被毒量Xが減少して算出される。
X(n)=X(n-1)−Ga×0.23 …(7)
なお、処理部92の触媒被毒量算出部94は、上記算出された触媒被毒量X(上記式(5)あるいは式(7)のいずれかにより算出された触媒被毒量X)を維持し、再度ステップST201から繰り返す。
以上のように、バルブ開度制御部97は、触媒被毒量算出部94により排気ガス浄化触媒61を通過した後の排気ガスの酸素濃度(O2センサ64のセンサ出力値oxs)に基づいて算出された排気ガス浄化触媒の触媒被毒量が所定被毒量を超えると被毒状態判断手段により判断されるとスロットルバルブ53のバルブ開度qfcを増加する。つまり、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態の際に、被毒状態検出手段により検出された被毒状態に応じて、スロットルバルブ53のバルブ開度qfcを制御する。従って、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態の際に、吸気経路5から吸気される吸入空気量Gaが増加するため、排気ガス浄化触媒61に吸入される触媒吸入酸素量をこのフューエルカット状態が一定期間であっても増加することができる。つまり、フューエルカット状態が短時間であっても、触媒吸入酸素量を増加することができる。これにより、排気ガス浄化触媒61に蓄積された炭化水素をより多く浄化することができるため、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態の際に、排気ガス浄化触媒61をHC被毒から十分に回復することができる。
また、上述のように、所定被毒量γ2が劣化度D2に基づいて決定されるため、排気ガス浄化触媒61の劣化が進行しても、内燃機関1−2の運転状態がフューエルカット状態の際に、排気ガス浄化触媒61をHC被毒から十分に回復することができる。また、バルブ開度qfcを増加する際の増加量は、算出された劣化度D2に応じて変更されるため、排気ガス浄化触媒61の劣化が進行具合に応じて、排気ガス浄化触媒61のHC被毒から回復することができる。
なお、この発明にかかる被毒状態検出手段は、上記実施例1,2に記載されている被毒状態検出手段に限定されるものではない。例えば、被毒状態検出手段は、排気ガス浄化触媒前後に設けられたセンサのセンサ出力の同期により判断しても良い。これは、排気ガス浄化触媒のHC被毒が進行すると、排気ガス浄化触媒による炭化水素の浄化能力が低下し、排気ガス浄化触媒を通過する前の排気ガスの状態が変化すると、排気ガス浄化触媒を通過した後の排気ガスの状態が遅れずに変化するためである。従って、内燃機関は、排気ガス浄化触媒の前後に、同一種類のセンサ、例えば2つのO2センサ、あるいは2つのA/Fセンサを設ける。そして、ECUは、排気ガス浄化触媒を通過する前の排気ガスの状態に応じたセンサ出力値と、この排気ガス浄化触媒を通過した後の排気ガスの状態に応じたセンサ出力値とが同期しているか否かを判断し、同期していると判断された際に、排気ガス浄化触媒のHC被毒が検出されたとして、バルブ開度を増加するようにしても良い。
また、例えば、被毒状態検出手段は、ECUが上記目標とする空燃比よりも燃料を内燃機関に多く供給した際、すなわちリッチ補正を行った際のリッチ補正量により判断しても良い。これは、リッチ補正されると、排気ガス浄化触媒のHC被毒が進行するためである。従って、ECUは、リッチ補正を行った際にそのリッチ補正量を算出し、この算出されたリッチ補正量を積算する。そして、積算されたリッチ補正量が所定補正量を超えるか否かを判断し、超えると判断された際に、排気ガス浄化触媒のHC被毒が検出されたとして、バルブ開度を増加するようにしても良い。
さらに、例えば、被毒状態検出手段は、上述の排気ガス浄化触媒の最大酸素吸蔵量により判断しても良い。これは、排気ガス浄化触媒がHC被毒している場合には、一時的であっても排気ガス浄化触媒の最大酸素吸蔵量が低下するためである。従って、ECUは、短期間、例えば60秒間隔などで排気ガス浄化触媒の最大酸素吸蔵量を算出する。そして、今回算出された最大酸素吸蔵量が前回算出された最大酸素吸蔵量よりも所定量未満であるか否かを判断し、所定量未満であると判断された際に、排気ガス浄化触媒のHC被毒が検出されたとして、バルブ開度を増加するようにしても良い。