以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係るエンジンの制御システムが適用される車両として、四輪車を例にして説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を二輪車等、他のタイプの車両に適用してもよい。
図1を参照して、本実施の形態に係るエンジンの制御システムについて説明する。図1は、本実施の形態に係るエンジンの制御システムの全体構成図である。なお、エンジンの制御システムは、以下に示す構成に限定されず、適宜変更が可能である。
図1に示すように、本実施の形態に係るエンジンの制御システム1は、内燃機関としてのエンジン2及びその周辺構成の動作を、ECU3(Electronic Control Unit)で制御するように構成されている。詳細は後述するが、ECU3は、本願の制御装置を構成する。エンジン2は、例えば、直動式多気筒のDOHC(Double OverHead Camshaft)エンジンで構成される。エンジン2は、不図示のクランクケース内にクランクシャフト20を収容し、シリンダ21及びシリンダヘッド22等を備えて構成される。
シリンダ21内には、ピストン23が所定方向(図1では上下)に往復可能に収容されている。クランクシャフト20とピストン23とはコンロッド24によって連結されている。エンジン2では、ピストン23が所定方向に往復運動することでクランクシャフト20がコンロッド24を介して回転される。
シリンダヘッド22の内部空間は、燃焼室25を構成する。燃焼室25の上部には、点火装置としてのスパークプラグ26が設けられている。スパークプラグ26は、ECU3から出力される点火信号に基づいて所定のタイミングで点火し、燃焼室25内の混合気を着火する。
シリンダヘッド22には、燃焼室25に連通する吸気ポート27a及び排気ポート27bが形成されている。また、シリンダヘッド22には、吸気ポート27a及び排気ポート27bに対応して、吸気バルブ28a及び排気バルブ28bが設けられている。吸気バルブ28a及び排気バルブ28bの上端には、吸気カムシャフト29a及び排気カムシャフト29bが設けられている。
クランクシャフト20、吸気カムシャフト29a及び排気カムシャフト29bには、不図示のカムチェーンが架け渡されている。クランクシャフト20の回転は、カムチェーンを介して吸気カムシャフト29a及び排気カムシャフト29bに伝達される。吸気カムシャフト29a及び排気カムシャフト29bが回転されることで、吸気バルブ28a及び排気バルブ28bは所定タイミングで燃焼室25に向けて往復動される。
吸気ポート27aの上流端には、不図示の吸気マニホールドを介して吸気管10が接続される。吸気管10内の通路及び吸気ポート27aは、吸入空気の吸気路を構成する。吸気管10の途中には、上流側からエアクリーナ11、スロットルバルブ12、及びサージタンク13が設けられている。エアクリーナ11及びスロットルバルブ12の間の吸気管10には、空気量センサ40が設けられている。空気量センサ40は、エアクリーナ11を通過して吸気管10内を流れる吸入空気量(質量流量)を検出し、その検出値をECU3に出力する。
スロットルバルブ12は、例えばバタフライバルブを含んで構成され、ECU3の指令に応じて開閉されることで、吸気管10内を流れる吸入空気の流量(吸入空気量)を調整する。サージタンク13は、吸気管10に比べて十分に大きい容積を有し、吸入空気の脈動を防止するものである。サージタンク13には、吸気圧センサ41が設けられている。吸気圧センサ41は、サージタンク13内の吸入空気の圧力(吸気圧)を検出し、その検出値をECU3に出力する。ECU3は、上記した吸入空気量や吸気圧からエンジン負荷を推定することが可能である。
サージタンク13の下流側における吸気管10(又は吸気ポート27a)には、燃料を噴射する燃料噴射装置としてのインジェクタ14が設けられている。インジェクタ14は、ECU3の指令に応じて吸気管10内(又は吸気ポート27a内)に所定量の燃料を噴射する。すなわち、本実施の形態に係るエンジン2は、いわゆるポート噴射式のエンジンで構成される。
排気ポート27bの下流端には、不図示の排気マニホールドを介して排気管15が接続される。排気ポート27b及び吸気管10内の通路は、排気ガスの排気路を構成する。排気管15の途中には、排気浄化装置の一部として、エンジン2の排気(排気ガス)を浄化する触媒16が設けられている。触媒16は、例えば、三元触媒で構成され、排気ガス内の汚染物質(一酸化炭素、炭化水素や窒素酸化物等)を無害な物質(二酸化炭素、水、窒素等)に変換する。エンジン2がディーゼルエンジンの場合、触媒16には例えば酸化触媒が用いられる。
触媒16の前後(上流及び下流)には、空燃比センサ42、43が設けられている。空燃比センサ42、43は、触媒16の前後における排気ガスの空燃比を検出し、その検出値をECU3に出力する。
このように構成されるエンジン2においては、エアクリーナ11を通過した吸入空気が、スロットルバルブ12でその流量が調整された後、サージタンク13を通じて吸気ポート27aに流れ込む。このとき、インジェクタ14から所定のタイミングで燃料が噴射され、吸気ポート27a内で吸入空気と燃料が混合される。吸入空気と燃料の混合気は、吸気バルブ28aが開かれたタイミングで燃焼室25内に流れ込み、燃焼室25内で圧縮された後、スパークプラグ26によって所定のタイミングで点火される。点火されて燃焼した後の排気ガスは、排気ポート27bから排気管15を通じて外に排出される。このとき、排気ガスは、触媒16によって浄化された後、図示しないマフラによってその排気音が低減される。
また、エンジン2には、エンジン水温を検出する水温センサ44と、クランクシャフト20の位相を検出するクランクセンサ45が設けられている。水温センサ44及びクランクセンサ45の各検出値は、ECU3に出力される。クランクセンサ45の出力からエンジン回転数を算出することが可能である。
また、車両には、車速を検出する車速センサ46と、ブレーキペダル47と、アクセルペダル48とが設けられている。車速センサ46の検出値は、ECU3に出力される。ブレーキペダル47は、車両に制動力を発生する制動手段を構成し、その踏み込み量(踏力)に応じた所定の電気信号をECU3に出力する。アクセルペダル48は、車両に加速力を発生する加速手段を構成し、その踏み込み量(踏力)に応じた所定の電気信号をECU3に出力する。
ECU3は、エンジン2内外の各種構成を含む車両全体の動作を統括制御する。ECU3は、各種処理を実施するプロセッサやメモリ等により構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体で構成される。メモリには、上記した各種構成を制御する制御プログラム等が記憶されている。
例えばECU3は、車両内に設けられた各種センサから車両の状態を判断し、スパークプラグ26、インジェクタ14、スロットルバルブ12等の駆動の制御を実施する。特にECU3は、アクセルのオンオフに基づいて燃料噴射及び燃料カットを制御する。詳細は後述するが、ECU3は、触媒16の温度やアクセルのオンオフ回数に基づいてインジェクタ14の燃料噴射量を制御する。また、ECU3は、後述する燃料噴射制御を実施する際の所定条件(閾値等)を予め記憶している。
例えばECU3は、本発明に係る燃料噴射制御に必要な複数の機能ブロックを有している。具体的にECU3は、所定時間内におけるアクセルのオンオフの回数をカウントするカウント部30と、所定時間内の所定タイミングにおける触媒16の温度を検出する温度検出部31と、アクセルのオンオフの回数や触媒16の温度に基づいてインジェクタ14の燃料噴射量を制御する噴射制御部32と、を有している。
なお、これらの機能ブロックは、便宜上あくまで一例を示すものであり、ECU3は、これらの機能ブロックに限らず、他の機能ブロックを有してもよい。また、これらの機能ブロックを備えなくとも、ECU3が包括的に以下の各種制御を実施してもよい。
本実施の形態における燃料噴射制御装置は、上記したエンジン2及びその周辺構成(触媒16、ECU3、各種センサ等)を含んで構成される。
ところで、従来のエンジンの制御装置においては、所定のエンジン回転数以上で且つ、アクセル開度がゼロとなった場合に燃料噴射を停止し(燃料カットし)、アクセル開度がゼロより大きくなった場合は燃料噴射を強制復帰させ、通常より空燃比がリッチとなるような燃料噴射(燃料カット復帰後の増量噴射)が実施される。これにより、燃料カット中に触媒に吸蔵された酸素を速やかに適量にし、排気ガス(特にNOx)の排出量を抑制することが可能になっている。
このようなエンジンを備えた車両では、運転時のアクセルのオンオフに伴って、燃料カット及び燃料カット復帰時の噴射量増量が比較的短い周期で繰り返されることがある。この場合、触媒に未燃燃料と酸素とが交互に供給されることによって触媒内で未燃燃料が燃焼し、触媒が過熱される結果、触媒の劣化を促進してしまうことが想定される。
その対策として、例えば、アクセルのオンオフを繰り返したときの触媒の温度上昇量を推定し、その温度上昇量に基づいて燃料カット復帰時の噴射量増量を禁止する技術が提案されている。しかしながら、未燃燃料がどの程度の量で触媒に流入しているか、及び、どの程度の量が燃焼に使用されたかは推定することが難しいため、触媒の過熱状態を判定する精度が低くなることが想定される。
例えば、アクセルが継続的に踏み込まれていれば、触媒の温度をより正確に推定することは可能であるが、アクセルのオンオフが繰り返されると、未燃燃料が触媒に流入することで触媒の温度が上昇してしまう可能性があり、触媒の温度を正確に推定することができない。未燃燃料の触媒への流入が継続されると、推定値以上に実際の触媒の温度が上昇してしまう可能性がある。上記のような未燃燃料量を高精度に推定するためには、エンジンの駆動に関する種々のパラメータを考慮する必要があり、制御装置の計算負荷が増大するおそれがある。
そこで、本件発明者は、触媒の温度を制御するに際し、アクセルのオンオフの回数に着目して本発明に想到した。具体的に本実施の形態では、ECU3が、所定時間内におけるアクセルのオンオフの回数をカウントし、当該アクセルのオンオフの回数が所定回数以上で且つ、所定時間内の所定タイミングにおける触媒16の温度が後述する第1所定温度より高い場合、次のアクセルオン時における燃料噴射量の増量を禁止する。
この構成によれば、触媒16の温度が比較的高温で且つ、アクセルのオンオフが所定回数繰り返された場合に、燃料カットから復帰する際の燃料噴射の増量が禁止されることで、未燃燃料が過剰に触媒16に流入することを抑制することができる。この結果、触媒16の過熱を防止することが可能である。また、複雑な制御構成を必要とすることなく、簡易な構成で、計算負荷を大きくすることなく触媒16の温度を制御することが可能である。
また、温度検出部31は、所定時間のカウント開始直後におけるアクセルオフ時の前記触媒の温度を検出することが好ましい。アクセルオンによって触媒16に未燃燃料が流入するおそれがある場合、そのアクセルオンに伴って触媒16の温度が上昇するおそれがある。上記構成によれば、事前に触媒16の温度を検出することで、より信頼性の高い触媒16の温度に基づいて、アクセルオンに伴う燃料噴射量の増量を禁止すべきか否かを判定することが可能である。
また、ECU3は、上記の所定時間をカウントするに際し、触媒16の温度が第1所定温度より低い第2所定温度を検出した場合、所定時間のカウントを開始することが好ましい。この構成によれば、触媒16の温度に基づいて所定時間のカウントが開始されることで、アクセルのオンオフに伴う触媒16の過熱が発生し得ると予想できる場合に、アクセルオンに伴う燃料噴射量の増量の禁止の判断を適切に実施することが可能である。
また、ECU3は、所定時間内に少なくとも1回のアクセルのオンオフがあった場合、そのアクセルオフ後に燃料カットの実施を遅らせるディレイ時間を設定し、当該ディレイ時間は、触媒16の温度が高い程、及び/又はアクセルオンの継続時間が短い程、長く設定されることが好ましい。この構成によれば、触媒16の過熱が懸念される場合、アクセルオフに伴う燃料カットへの移行をディレイ時間分だけ遅らせることが可能である。すなわち、ディレイ時間の間は、アクセルオフであっても燃料噴射が継続される。アクセルオフ中に燃料噴射が実施されることで、比較的温度の低い燃料のみを触媒16に流入させることができ、触媒16の過熱を防止することが可能である。
次に、図2及び図3を参照して、本実施の形態に係る燃料噴射制御フローについて説明する。図2及び図3は、本実施の形態に係る燃料噴射制御のフロー図である。なお、以下に示すフローでは、特に明示が無い限り、動作(算出(演算)や判定等)の主体はECUとする。なお、ECUは、以下のフローにおいて、アクセルオンが継続されている場合、その継続時間を計測している。また、以下に示すフローでは、所定時間内におけるアクセルのオンオフの回数として、アクセルオフに伴う燃料カット実施後のアクセルオンの回数をカウントするものとする。
図2に示すように、制御が開始されると、ステップST101において、ECU3は、燃料カット(図2及び図3ではF/Cと示す)の実施条件が成立しているか否かを判定する。ECU3は、例えば、エンジン回転数やアクセルオフの信号に基づいて燃料カットの実施条件が成立しているか否かを判定することが可能である。燃料カットの実施条件が成立している場合(ステップST101:YES)、ステップST102の処理に進む。燃料カットの実施条件が成立していない場合(ステップST101:NO)、ステップST101の処理が繰り返される。
ステップST102において、ECU3は、所定タイミング(例えば図4のT0)までの燃料カット後のアクセルオンの実施回数C、すなわち、アクセルオフに伴う燃料カット実施後のアクセルオンの回数を取得する。そして、ステップST103の処理に進む。
ステップST103において、ECU3は、燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cがゼロであるか否かを判定する。燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cがゼロである場合(ステップST103:YES)、所定タイミング(例えば図4のT0)までの燃料カットの実施回数Cがゼロであるとして、ステップST104の処理に進む。燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cがゼロでない場合(ステップST103:NO)、燃料カット後のアクセルオンが少なくとも1回以上実施されたとして、実施ステップST106の処理に進む。
ステップST104において、ECU3は、現在の触媒16の温度及び現在のエンジン回転数を取得する。例えば、温度検出部31は、触媒16を流れる排気ガスの温度から触媒16の温度を推定することが可能である。特に、ステップST104では、アクセルオンの状態が継続されていることで、現在の触媒16の温度を正確に推定することが可能である。また、エンジン回転数は、クランクセンサ45から取得可能である。そして、ステップST105の処理に進む。
ステップST105において、ECU3は、アクセルオンの継続時間をリセットする。そして、ステップST108の処理に進む。
ステップST106において、ECU3は、前回の触媒16の温度及び前回のエンジン回転数を取得する。この前回の触媒16の温度及び前回のエンジン回転数とは、ステップST103において燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cがゼロでない場合(ステップST103:NO)と判定される前の前回のフロー処理において得られた、触媒16の温度及びエンジン回転数である。より具体的には、前回のフロー処理において燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cがゼロである場合(ステップST103:YES)で、ステップST104において、ECU3が取得した、現在の触媒16の温度及び現在のエンジン回転数である。ステップST106では、上記したように、燃料カット後のアクセルオンが少なくとも1回以上実施されているため、これに伴って未燃燃料が触媒16に流入して現在の触媒16の温度を適切に推定できない可能性がある。このため、ステップST106では、前回の値を取得することで、より信頼性の高い触媒16の温度に基づいて以下の処理を実施することが可能である。
ステップST107において、ECU3は、アクセルオンの継続時間を取得する。そして、ステップST108の処理に進む。
ステップST108において、ECU3は、アクセルオフ後の燃料カットの実施を遅らせるディレイ時間を設定する。ECU3は、ステップST104、ST105、ST106、ST107で取得した触媒16の温度、エンジン回転数、アクセルオンの継続時間に基づいてディレイ時間を設定する。具体的にECU3は、触媒16の温度とアクセルオンの継続時間に基づいて設定される所定値に、エンジン回転数に基づいて設定される所定係数を乗じて算出する。
前記所定値は、触媒16の温度が高い程、及び/又はアクセルオンの継続時間が短い程大きく設定される。また、前記所定係数は、ある所定のエンジン回転数において最も大きい値を有し、当該所定のエンジン回転数未満においては、エンジン回転数が小さくなるに従って小さくなり、当該所定のエンジン回転数より大きい場合には、エンジン回転数が大きくなるに従って小さくなる。すなわち、ディレイ時間は、触媒16の温度が高い程、及び/又はアクセルオンの継続時間が短い程、長く設定される。そして、ステップST109の処理に進む。
ステップST109において、ECU3は、ステップST108で設定したディレイ時間が経過したか否かを判定する。ディレイ時間の間は、アクセルオフであっても所定の燃料噴射量で燃料噴射が継続される。これにより、比較的温度の低い燃料のみを触媒16に流入させることができ、触媒16の過熱を防止することが可能である。ディレイ時間が経過した場合(ステップST109:YES)、ステップST110の処理に進む。ディレイ時間が経過していない場合(ステップST109:NO)、ステップST109の処理が繰り返される。
ステップST110において、ECU3は、燃料カットを実施する。これにより、燃料噴射が停止される。そして、ステップST111の処理に進む(図3参照)。
図3に示すように、ステップST111において、ECU3は、アクセルがオンされたか否かを判定する。アクセルがオンされた場合(ステップST111:YES)、ステップST112の処理に進む。アクセルがオンされない場合(ステップST111:NO)、ステップST119の処理に進む。
ステップST112において、燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cが所定回数に達したか(所定回数以上か)否かを判定する。当該判定の基準となる所定回数は、予め設定された固定値でもよく、触媒16の温度に基づいて設定されてもよい。例えば、触媒16の温度が高い程、所定回数を小さくすることが好ましい。触媒16の温度に応じて所定回数を小さくすることで、後述する燃料カット復帰時の噴射量増量禁止を早期に実施することができ、触媒16の過熱を適切に防止することが可能である。燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cが所定回数に達した場合(ステップST112:YES)、ステップST113の処理に進む。燃料カット後のアクセルオンの実施回数Cが所定回数に満たない場合(ステップST112:NO)、ステップST122の処理に進む。
ステップST113において、ECU3は、触媒16の温度が第1所定温度より大きいか否かを判定する。触媒16の温度が第1所定温度より大きい場合(ステップST113:YES)、ステップST114の処理に進む。触媒16の温度が第1所定温度以下の場合(ステップST113:NO)、ステップST123の処理に進む。
ステップST114において、ECU3は、ステップST111のアクセルオン時における燃料噴射量の増量を禁止する。すなわち、ECU3は、燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量を禁止し、通常の燃料噴射量で燃料噴射を実施する。これにより、空気と共に未燃燃料が触媒16に流入することを抑制することができ、触媒16の過熱を防止することが可能である。なお、燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量とは、燃料カット状態から復帰するときのエンジン2の駆動性を高めるための燃料噴射量の増量を示している。また、ECU3は、ステップST114において、触媒中立増量も禁止する。ここで、触媒中立増量とは、アクセルオフ中の触媒16において酸素過多な状態である場合に、触媒16に捕集された酸素を当該触媒16から離脱させるために増量される燃料噴射量を表している。この触媒中立増量は、燃料カット状態から復帰するときの燃料噴射量の増量とは別物で、同じ復帰のタイミングで増量されるものである。そして、ステップST115の処理に進む。
ステップST115において、ECU3は、各種パラメータをリセットする。具体的にECU3は、ディレイ時間及びアクセルオンの継続時間をリセットし、触媒16の温度及びエンジン回転数を次の制御における前回値として設定する。そして、ステップST116の処理に進む。
ステップST116において、ECU3は、燃料カット後のアクセルオンの実施回数CをC+1にインクリメントする。そして、ステップST117の処理に進む。
ステップST117において、ECU3は、アクセルオンが所定時間継続されているか否かを判定する。この所定時間とは、触媒16の温度が、過熱のおそれがないと判断される第1所定温度未満まで低下する時間である。アクセルオンが所定時間継続されている場合(ステップST117:YES)、ステップST118において実施回数Cをゼロとし、制御が終了する。一方、アクセルオンが所定時間継続されていない場合(ステップST117:NO)は実施回数Cを維持し、制御が終了する。
ステップST119において、ECU3は、エンジン回転数が所定回転数より小さいか否かを判定する。エンジン回転数が所定回転数より小さい場合(ステップST119:YES)、ステップST120の処理に進む。エンジン回転数が所定回転数以上の場合(ステップST119:NO)、ステップST111の処理に戻る。
ステップST120において、ECU3は、予め設定された自然復帰用の補正量で燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量及び触媒中立増量を実施する。これにより、燃料カットから復帰する際のエンジン2の駆動性を向上すると共に、触媒16中の酸素離脱を実現することが可能である。そして、ステップST121の処理に進む。
ステップST121において、ECU3は、各種パラメータをリセットする。具体的にECU3は、触媒16の温度、エンジン回転数、燃料カットの実施回数C、ディレイ時間、及びアクセルオンの継続時間をリセットする。そして、制御が終了する。
ステップST122において、ECU3は、所定の補正量で燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量及び触媒中立増量を制限せずに実施する。これより、燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量及び触媒中立増量が実施され、燃料カット復帰からのエンジン2の作動性を確保しつつ、触媒16に吸蔵された酸素を速やかに適量にし、排気ガス(特にNOx)の排出量を抑制することができる。そして、ステップST115の処理に進む。
ステップST123において、ECU3は、燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量及び触媒中立増量を制限して実施する。具体的にECU3は、所定の補正量を減らして上記増量を実施する。これより、燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量及び触媒中立増量が制限して実施され、触媒16に流入する燃料量を低減することで触媒16の過熱を防止できる。また、燃料カット復帰からのエンジン2の作動性の確保と、触媒16に吸蔵された酸素の脱離を行い、排気ガス(特にNOx)の排出量を抑制することができる。そして、ステップST115の処理に進む。
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る制御を適用した場合の各種パラメータの経時変化について説明する。図4は、本実施の形態における各種パラメータの経時変化を示すタイムチャートである。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は上から順にアクセルオフに伴う燃料カット後のアクセルオンの実施回数(カウント値)、アクセルのオンオフ、及び燃料噴射量を示している。なお、図4に示すタイムチャートはあくまで一例を示すものであり、これに限らず、適宜変更が可能である。なお、図4においては、判定の基準となるアクセルオフに伴う燃料カット後のアクセルオンの所定回数は、3回とする。また、タイムチャートの開始時は、C=0とする。
図4に示すように、アクセルがオンされているT0のタイミングにおいて、触媒16の温度が第1所定温度より低い第2所定温度以上となった場合、所定時間のカウントが開始される。その後、T1のタイミングでアクセルがオフになると、燃料カットが実施される。
その後、T2のタイミングでアクセルがオンされると、通常の燃料噴射量に所定の補正量を加えて燃料噴射が実施される。すなわち、カウント値Cが3に満たないため、燃料カット復帰後の燃料噴射量の増量が実施される。そして、カウント値がC=1にインクリメントされる。当該燃料噴射は、次にアクセルがオフになるT3のタイミングまで継続される。T3のタイミングでアクセルがオフになると、燃料カットが実施される。
その後、T4のタイミングでアクセルがオンされると、通常の燃料噴射量に所定の補正量を加えて燃料噴射が実施される。この場合も先と同様に、カウント値Cが3に満たないため、燃料カット復帰後の燃料噴射量の増量が実施される。そして、カウント値がC=2にインクリメントされる。増量した状態での燃料噴射は、その後のT5のタイミングまで継続され、T5以後の次にアクセルがオフになるT6のタイミングまでは、通常の燃料噴射量(増量ゼロ)で燃料噴射が継続される。このように、増量分の燃料噴射は、アクセルオンが継続されている間に常に実施される必要はなく、所定の増量分(補正量)だけ噴射されれば、アクセルオンの途中で中止されてもよい。T6のタイミングでアクセルがオフになると、燃料カットが実施される。
その後、T7のタイミングでアクセルがオンされると、通常の燃料噴射量に所定の補正量を加えて燃料噴射が実施される。この場合も先と同様に、カウント値Cが3に満たないため、燃料カット復帰後の燃料噴射量の増量が実施される。そして、カウント値がC=3にインクリメントされる。増量した状態での燃料噴射は、その後のT8のタイミングまで継続され、T8以後の次にアクセルがオフになるT9のタイミングまでは、通常の燃料噴射量(増量ゼロ)で燃料噴射が継続される。T9のタイミングでアクセルがオフになると、所定のディレイ時間が設定される。
T9以後、ディレイ時間が経過するT10までの間は、燃料カットが実施されることなく、所定の噴射量で燃料噴射が継続される。ディレイ時間中の燃料噴射量は、それまでのアクセルオン時の噴射量と同じ量であってもよく、触媒16の温度に応じて増減させてもよい。T10のタイミングでディレイ時間が経過すると、燃料カットが実施される。これにより、燃料噴射が停止される。
その後、T11のタイミングでアクセルがオンされると、燃料カット復帰後の増量が禁止され、通常の燃料噴射量で燃料噴射が実施される。T11までにカウント値が所定回数であるC=3に達しているためである。そして、カウント値がC=4にインクリメントされる。その後、アクセルがオンされている間は、その踏み込み量に応じた通常の噴射量で燃料噴射が継続される。
このように、本実施の形態では、燃料カット後のアクセルオンの実施回数、すなわち、アクセルのオンオフの回数に基づいて燃料カット復帰時の燃料噴射量の増量補正の実施要否を判断することで、復帰時のエンジン2の駆動性を向上するだけでなく、触媒16の過熱を防止することが可能である。
なお、上記実施の形態では、ポート噴射式のエンジン2を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、直噴式のエンジン2であってもよい。
また、上記実施の形態では、ガソリンエンジンを例にして説明したが、これに限定されない。ディーゼルエンジンであっても、本制御を適用可能である。
また、上記実施の形態では、DOHCエンジンを例にして説明したが、これに限定されない。エンジン2は、SOHC(Single OverHead Camshaft)エンジンであってもよい。
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。