以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施の形態1]
図1は、本発明にかかる内燃機関の構成例を示す図である。同図に示すように、実施の形態1にかかる内燃機関1−1は、燃料供給装置2と、複数の気筒30a〜30d(実施の形態1では、直列4気筒)により構成される内燃機関本体3と、バルブ装置4と、内燃機関本体3に接続される吸気経路5と、内燃機関本体3に接続される排気経路6と、内燃機関1−1の運転を制御する制御装置であるECU7とにより構成されている。なお、8は、図示しない運転者が操作するアクセルペダルの開度であるアクセル開度を検出し、ECU7に出力するアクセル開度センサである。
燃料供給装置2は、燃料タンク23内に貯留されている燃料、例えばガソリンを内燃機関1−1に供給するものである。燃料供給装置2は、吸気経路燃料噴射弁21と、筒内燃料噴射弁22と、燃料タンク23と、低圧燃料ポンプであるPFI燃料ポンプ24と、高圧燃料ポンプであるDI燃料ポンプ25と、PFI燃料ポンプ24と吸気経路燃料噴射弁21とを接続するPFI燃料配管26と、PFI燃料配管26とDI燃料ポンプ25とを接続する分岐配管27と、DI燃料ポンプ25と筒内燃料噴射弁22とを接続するDI燃料配管28と、DI燃料圧力センサ29とにより構成されている。
筒内燃料噴射弁22(以下、単に「DI22」と称することがある。)は、内燃機関本体3の各気筒30a〜30dにそれぞれ対応して設けられており、各気筒30a〜30dの筒内、すなわち燃焼室AにPFI燃料ポンプ24およびDI燃料ポンプ25により加圧された燃料タンク23の燃料をそれぞれ噴射することで、内燃機関1−1に燃料を供給するものである。各DI22は、ECU7とそれぞれ接続されており、DI22による燃料噴射量や噴射時期などの制御、すなわち噴射制御がECU7により行われる。
吸気経路燃料噴射弁21(以下、単に「PFI21」と称することがある。)は、内燃機関本体3の各気筒30a〜30dにそれぞれ対応して設けられており、内燃機関1−1の吸気経路5、ここでは、各気筒30a〜30dにそれぞれ対応してシリンダヘッド32に形成された吸気ポート37にPFI燃料ポンプ24により加圧された燃料タンク23の燃料をそれぞれ噴射することで、内燃機関1−1に燃料を供給するものである。各PFI21は、ECU7とそれぞれ接続されており、PFI21による燃料噴射量や噴射時期などの制御、すなわち噴射制御がECU7により行われる。
燃料タンク23は、燃料を貯留するものである。燃料タンク23に貯留されている燃料は、PFI燃料ポンプ24により加圧され、PFI燃料としてPFI燃料配管26に吐出される。従って、PFI燃料は、PFI燃料配管26を介して各PFI21に供給され、PFI燃料配管26および分岐配管27を介してDI燃料ポンプ25に供給される。
DI燃料ポンプ25は、PFI燃料をさらに加圧するものである。DI燃料ポンプ25は、例えばバルブ装置4のインテークカムシャフト43に取り付けられた図示しないポンプ用駆動カムが回転することによって駆動するものである。インテークカムシャフト43は、クランクシャフト35の回転に連動して回転するものである。つまり、DI燃料ポンプ25は、内燃機関1−1の出力によって駆動するものである。
DI燃料ポンプ25には、図示しない電磁スピル弁が備えられており、電磁スピル弁により、DI燃料ポンプ25に流入するPFI燃料の流入量を調整し、DI燃料ポンプ25により加圧され、DI燃料としてDI燃料配管28に吐出されるDI燃料の圧力を調整するものである。ここで、電磁スピル弁は、ECU7と接続されており、ECU7によりデューディ比が制御される。従って、DI燃料ポンプ25から吐出されるDI燃料の圧力などの制御、すなわち圧力制御は、図示しない電磁スピル弁を用いてECU7により行われる。
DI燃料圧力センサ29は、圧力検出手段であり、DI燃料の圧力であるDI燃料圧力Pを検出するものである。DI燃料圧力センサ29は、DI燃料配管28に設けられており、DI燃料配管28を介してDI燃料ポンプ25により加圧され各DI22に供給されるDI燃料を検出することができる。DI燃料圧力センサ29は、ECU7と接続されており、検出されたDI燃料圧力PがECU7に出力される。
内燃機関本体3は、シリンダブロック31と、シリンダブロック31に固定されたシリンダヘッド32と、各気筒30a〜30dにそれぞれ対応して設けられたピストン33および連結するコンロッド34と、クランクシャフト35と、気筒30a〜30dごとに設けられる点火プラグ36とにより構成されている。ここで、内燃機関本体3の各気筒30a〜30dには、ピストン33と、シリンダブロック31と、シリンダヘッド32とにより燃焼室Aがそれぞれ形成されている。シリンダヘッド32には、各気筒30a〜30dにそれぞれ対応して吸気ポート37および排気ポート38が形成されており、それぞれ吸気経路5および排気経路6に接続されている。各ピストン33は、コンロッド34に回転自在に支持されており、各コンロッド34は、クランクシャフト35に回転自在に支持されている。つまり、クランクシャフト35は、各ピストン33が筒内、すなわち燃焼室A内の吸入空気と燃料とからなる混合気が燃焼することにより、シリンダブロック31内を往復運動することで、回転するものである。なお、各吸気ポート37は吸気経路5の一部を構成し、各排気ポート38は排気経路6の一部を構成する。
点火プラグ36は、各気筒30a〜30dに対応してそれぞれ設けられており、点火し、各気筒30a〜30dの燃焼室A内の混合気を着火させるものである。各点火プラグ36は、ECU7にそれぞれ接続されており、点火時期などの制御、すなわち点火制御がECU7により行われる。なお、39は、クランクシャフト35の角度であるクランク角度(CA)を検出し、ECU7に出力するクランク角度センサである。なお、ECU7は、クランク角度センサ39により検出されたクランク角度から内燃機関1−1の機関回転数の算出や各気筒30a〜30dの気筒の判別を行う。
バルブ装置4は、吸気バルブ41および排気バルブ42の開閉を行うものである。バルブ装置4は、各気筒30a〜30dにそれぞれ対応して設けられた吸気バルブ41および排気バルブ42と、インテークカムシャフト43と、エキゾーストカムシャフト44と、吸気バルブタイミング機構45とにより構成されている。各吸気バルブ41は、吸気ポート37と燃焼室Aとの間に配置され、インテークカムシャフト43が回転することにより開閉が行われる。また、各排気バルブ42は、排気ポート38と燃焼室Aとの間に配置され、エキゾーストカムシャフト44が回転することにより開閉が行われる。インテークカムシャフト43およびエキゾーストカムシャフト44は、タイミングチェーンなどの伝達手段を介してクランクシャフト35に連結されており、このクランクシャフト35の回転に連動して回転するものである。
吸気バルブタイミング機構45は、インテークカムシャフト43とクランクシャフト35との間に配置されている。吸気バルブタイミング機構45は、連続可変バルブタイミング機構であり、インテークカムシャフト43の位相を連続的に変化させるものである。吸気バルブタイミング機構45は、ECU7に接続されており、吸気バルブ41の開閉タイミングの制御、すなわちバルブ開閉タイミング制御がECU7により行われる。また、バルブ装置4には、インテークカムポジションセンサ46が備えられており、インテークカムシャフト43の回転位置を検出し、ECU7に出力する。また、このバルブ装置4は、吸気バルブタイミング機構45により、吸気バルブ41の開閉時期を調整するが、これに限定されるものではなく、例えば排気バルブ42の開閉時期を調整する排気バルブタイミング機構をも備えても良い。
吸気経路5は、外部から空気を吸気し、吸入された空気を内燃機関本体3の各気筒30a〜30dの燃焼室Aに導入するものである。吸気経路5は、エアクリーナ51と、エアフロメータ52と、スロットルバルブ53と、エアクリーナ51から各気筒30a〜30dの吸気ポート37までを連通する吸気通路54とにより構成されている。エアクリーナ51により粉塵が除去された吸入空気は、吸気通路54および各吸気ポート37を介して、各気筒30a〜30dの各燃焼室Aに導入される。エアフロメータ52は、吸入空気量検出手段であり各気筒30a〜30dに導入、すなわち吸気経路5から吸入される吸入空気量を検出し、ECU7に出力するものである。スロットルバルブ53は、上記吸気経路5から吸気される吸入空気量を調整するものである。スロットルバルブ53は、ステッピングモータなどのアクチュエータ53aにより駆動されるものである。アクチュエータ53aは、ECU7と接続されており、スロットルバルブ53のバルブ開度の制御、すなわちバルブ開度制御は、ECU7により行われる。
また、排気経路6は、触媒61と、図示しない消音装置と、各気筒30a〜30dの排気ポート38から触媒61を介して消音装置までを連通する排気通路62と、A/Fセンサ63とにより構成されている。触媒61は、排気通路62を介して吸入された排気ガスに含まれる有害物質、例えば窒化酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)を浄化するものである。また、触媒61は、排気ガスに含まれる硫黄(S)を吸着することができるものである。触媒61の硫黄吸着能力、すなわち最大硫黄吸着量は、触媒温度Tの上昇によって低下するものである。なお、有害物質が浄化された排気ガスは、触媒61から排気通路および図示しない消音装置を介して外部に排気される。
A/Fセンサ63は、空燃比検出手段であり、排気通路62のうち触媒61の上流側に配置されるものである。A/Fセンサ63は、各燃焼室Aから排気経路6に排気された排気ガスのうち、触媒61に吸入される前の排気ガスの排気ガス空燃比を検出し、ECU7に出力するものである。なお、ECU7は、A/Fセンサ63により検出された排気ガス空燃比に基づいて、内燃機関1−1の空燃比、すなわち燃焼室A内の混合気における空気と燃料との比を算出する。つまり、A/Fセンサ63は、内燃機関1−1の空燃比を検出することができるものである。
ECU7は、内燃機関1−1を運転制御することで、内燃機関1−1を運転するものである。また、ECU7は、燃料噴射制御装置でもあり、後述する燃料噴射制御方法を実行するものである。ECU7は、内燃機関1−1が搭載された車両の各所に取り付けられたセンサから、各種入力信号が入力される。具体的には、DI燃料圧力センサ29により検出されたDI燃料圧力P、クランク角度センサ39により検出されたクランク角度、インテークカムポジションセンサ46により検出されたインテークカムシャフト43の回転位置、エアフロメータ52により検出された吸入空気量、アクセル開度センサ8により検出されたアクセル開度、A/Fセンサ63により検出された排気ガス空燃比、などがある。
ECU7は、これら入力信号および記憶部73に格納されている吸入空気量およびアクセル開度に基づいた燃料噴射量マップなどの各種マップに基づいて各種出力信号を出力する。具体的には、各PFI21および各DI22の噴射制御を行う噴射信号、各点火プラグ36の点火制御を行う点火信号、吸気バルブタイミング機構45のバルブ開閉タイミング制御を行う開閉タイミング信号、スロットルバルブ53のバルブ開度制御を行うバルブ開度信号などである。
また、ECU7は、上記入力信号や出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)71と、処理部72と、燃料噴射量マップなどの各種マップなどを格納する記憶部73とにより構成されている。処理部72は、メモリおよびCPU(Central Processing Unit)により構成されている。処理部72は、少なくとも燃料噴射量設定部74と、始動時筒内噴射制御部75と、始動時吸気経路噴射制御部76と、始動時分割噴射制御部77と、筒内充填空気量減少判定部78と、としての機能を有している。処理部72は、内燃機関1−1の運転方法、特にECU7による燃料噴射制御方法などに基づくプログラムをメモリにロードして実行することにより、ECU7による燃料噴射制御方法などを実現させるものであっても良い。また、記憶部73は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
燃料噴射量設定部74は、燃料噴射量設定手段であり、内燃機関1−1の1サイクル当たりの燃料噴射量、実施の形態1では気筒30a〜30dごとに燃料噴射量Qを設定するものである。つまり、燃料噴射量設定部74は、各気筒30a〜30dにそれぞれ対応するPFI21あるいはDI22の少なくともいずれかによる燃料噴射量Qを設定する。燃料噴射量設定部74は、基本的には、検出されたクランク角度に基づいて機関回転数Neおよび検出されたアクセル開度に基づいて設定されるものである。
始動時筒内噴射制御部75は、内燃機関1−1の始動開始直後に、内燃機関1−1の圧縮行程において各DI22のみを噴射させることで、燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Qの燃料を内燃機関1−1に供給する噴射制御である始動時筒内噴射制御を行うものである。実施の形態1では、始動時筒内噴射制御は、設定された燃料噴射量QであるDI噴射量Q2の燃料をDI22による1回噴射で内燃機関1−1に供給する噴射制御である。始動時筒内噴射制御部75は、各点火プラグ36の点火制御を行うものでもあり、始動時筒内噴射制御時に、点火時期が通常時に対して進角するように点火制御を行う。始動時筒内噴射制御部75は、スロットルバルブ53のバルブ開度制御を行うものでもあり、始動時筒内噴射制御時に、バルブ開度が始動時筒内噴射制御に最適なバルブ開度となるようにバルブ開度制御を行うものである。なお、始動時筒内噴射制御部75は、内燃機関1−1の圧縮行程においてDI22のみにより設定された燃料噴射量Qの燃料が噴射できるように、DI22の噴射時期を設定する。
ここで、実施の形態1では、始動時筒内噴射制御部75は、DI燃料圧力センサ29により検出されたDI燃料圧力Pが予め設定された所定圧力P1以上となると、始動時筒内噴射制御を行う。ここで、所定圧力P1は、始動時筒内噴射制御時において、少なくとも設定された燃料噴射量Qの燃料を各DI22により噴射することができる圧力以上である。つまり、始動時筒内噴射制御部75は、始動時筒内噴射制御時において設定された燃料噴射量Qの燃料を各DI22により噴射することができるようになると、内燃機関1−1の始動開始直後であるとして、始動時筒内噴射制御を行う。
始動時吸気経路噴射制御部76は、内燃機関1−1の始動開始直後に、各PFI21のみを噴射させることで、燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Qの燃料を内燃機関1−1に供給する噴射制御である始動時吸気経路噴射制御を行うものである。実施の形態1では、始動時吸気経路噴射制御は、設定された燃料噴射量QであるPFI噴射量Q1の燃料を、PFI21による1回噴射で内燃機関1−1に供給する噴射制御である。始動時吸気経路噴射制御部76は、各点火プラグ36の点火制御を行うものでもある。始動時吸気経路噴射制御部76は、スロットルバルブ53のバルブ開度制御を行うものでもあり、始動時吸気経路噴射制御時に、バルブ開度が始動時筒内噴射制御に最適なバルブ開度となるようにバルブ開度制御を行うものである。なお、始動時吸気経路噴射制御部76は、PFI21のみにより設定された燃料噴射量Qの燃料が噴射できるように、PFI21の噴射時期を設定する。また、各PFI21は、例えば内燃機関1−1の吸気行程において噴射するものである。
始動時分割噴射制御部77は、上記始動時筒内噴射制御部75による始動時筒内噴射制御後に、内燃機関1−1の例えば吸気行程において各PFI21を、圧縮行程において各DI22を噴射させることで、燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Qの燃料を内燃機関1−1に供給する噴射制御である始動時分割噴射制御を行うものである。つまり、始動時分割噴射制御は、設定された燃料噴射量Qの燃料をPFI21とDI22とにより分割して噴射させる噴射制御である。実施の形態1では、始動時分割噴射制御は、設定された燃料噴射量QのうちPFI21に対応する燃料噴射量であるPFI噴射量Q1の燃料を、PFI21による1回噴射で内燃機関1−1に供給するとともに、設定された燃料噴射量QのうちDI22に対応する燃料噴射量であるDI噴射量Q2の燃料をDI22による1回噴射で内燃機関1−1に供給する噴射制御である。始動時分割噴射制御部77は、各点火プラグ36の点火制御を行うものでもあり、始動時分割噴射制御時に、点火時期が通常時に対して進角するように点火制御を行う。始動時分割噴射制御部77は、スロットルバルブ53のバルブ開度制御を行うものでもあり、始動時分割噴射制御時に、バルブ開度が始動時分割噴射制御に最適なバルブ開度となるようにバルブ開度制御を行うものである。なお、始動時分割噴射制御部77は、内燃機関1−1の吸気行程においてPFI21によりPFI噴射量Q1の燃料が各燃焼室Aに到達できるように各PFI21の噴射時期を設定するとともに、内燃機関1−1の圧縮行程においてDI22によりDI噴射量Q2の燃料が噴射できるように、DI22の噴射時期を設定する。
ここで、実施の形態1では、始動時分割噴射制御部77は、切替条件が成立すると、始動時筒内噴射制御から始動時分割噴射制御に切り替え、始動時分割噴射制御を行う。ここで、切替条件は、吸気経路5の吸気圧力(各燃焼室A内の筒内圧力)あるいは吸気圧力に影響を与える物理量の少なくともいずれかに基づいて設定されるものである。実施の形態1では、切替条件として、吸気圧力に影響を与える物理量である内燃機関1−1の機関回転数を用い、検出された機関回転数Neが第1所定回転数Ne1以上であると切替条件が成立したとする。なお、吸気圧力に影響を与える物理量は、機関回転数に限定されるものではなく、DI22の燃料の噴射回数(噴射回数の増加により機関回転数が上昇し、吸気圧力が低下)や、DI22による燃料の噴射開始からの経過時間(時間経過により、噴射回数が増加し、機関回転数が上昇し、吸気圧力が低下)であっても良い。この場合は、噴射回数が第1所定噴射回数以上であると、あるいはDI22による燃料の噴射開始から第1所定時間以上経過すると、切替条件が成立したとする。ここで、第1所定回転数、第1所定噴射回数、第1所定時間は、吸気経路5に十分に負圧が発生しており、各PFI21により噴射された燃料が各燃焼室A内に流入することができる値に設定されている。また、切替条件は、上記複数の条件が成立した場合に成立したとしても良い。
筒内充填空気量減少判定部78は、内燃機関1−1の始動時に筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定するものである。筒内充填空気量減少判定部78は、内燃機関1−1の始動時に筒内、すなわち燃焼室Aに充填される空気量である筒内充填空気量が内燃機関1−1の始動時に通常の筒内充填空気量よりも少なくなる筒内充填空気量減少状態であるか否かにより、内燃機関1−1の始動時に筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定するものである。筒内充填空気量減少判定部78は、実施の形態1では、検出されたインテークカムシャフト43の回転位置に基づく吸気バルブ41の開閉タイミング、特に閉タイミングに基づいて、内燃機関1−1の始動時に筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定する。ここで、内燃機関1−1の始動時における吸気バルブ41の通常の閉タイミングは、ピストン33の下死点から遅角側(吸気バルブタイミング機構45の最遅角(吸気バルブが最も遅く開弁し、最も遅く閉弁する)まで)に設定されているので、吸気バルブ41の閉タイミングが通常の閉タイミングよりも遅角側であると筒内の空気充填効率が通常の筒内の空気充填効率よりも低くなる。つまり、内燃機関1−1の始動時に吸気バルブ41の閉タイミングが通常の閉タイミングである基準閉タイミングに対して遅角側であると、内燃機関1−1の始動時に筒内充填空気量が内燃機関1−1の始動時に通常の筒内充填空気量よりも少なくなることとなる。従って、筒内充填空気量減少判定部78は、内燃機関1−1の始動時において検出されたインテークカムシャフト43の回転位置に基づく吸気バルブ41の閉タイミングが基準閉タイミングに対して所定値以上遅角側であると、内燃機関1−1が筒内充填空気量減少状態であると判定する。ここで、所定値とは、内燃機関1−1の始動直後における始動時筒内噴射制御では、内燃機関1−1を始動することができない虞がある値である。
次に、実施の形態1にかかる内燃機関1−1の運転方法、すなわち燃料噴射制御装置であるECU7による燃料噴射制御方法について説明する。図2は、実施の形態1にかかる燃料噴射制御装置の動作フローを示す図である。なお、ECU7による燃料噴射制御方法は、ECU7の制御周期ごとに行われるものである。
まず、図2に示すように、ECU7の処理部72は、内燃機関1−1の始動要求があるか否かを判定する(ステップST101)。ここでは、処理部72は、例えば、運転者により図示しないイグニッション(スタートスイッチ)のON/OFFで内燃機関1−1の始動要求があるか否かを判定する。
次に、処理部72は、内燃機関1−1の始動要求があると判定する(ステップST101肯定)と、DI燃料の昇圧を開始する(ステップST102)。ここで、処理部72は、まず図示しないスタータ(ハイブリッド車両の場合電動機)を駆動制御して、スタータとクランクシャフト35が連結している内燃機関1−1を強制的に回転させる。これにより、DI燃料ポンプ25が駆動する。次に、処理部72は、駆動するDI燃料ポンプ25の圧力制御(一定のデューディ比で図示しない電磁スピル弁を制御)を行い、DI燃料ポンプ25によりPFI燃料を加圧し、DI燃料配管28に吐出し、DI燃料を昇圧する。ここで、DI燃料の昇圧は、クランク角度センサ39により検出され、内燃機関1−1のクランク角度が確定する前から行い、始動のために内燃機関1−1のスタータにより回転開始から素早くDI燃料圧力を上昇させる。なお、処理部72は、内燃機関1−1の始動要求がないと判定する(ステップST101否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
次に、筒内充填空気量減少判定部78は、筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定する(ステップST103)。ここでは、筒内充填空気量減少判定部78は、インテークカムポジションセンサ46により検出され、ECU7により取得されたインテークカムシャフト43の回転位置に基づいて、ECU7に取得された吸気バルブ41の閉タイミングが基準閉タイミングに対して所定値以上遅角側であるか否かを判定することにより、内燃機関1−1の始動時において筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定する。
次に、始動時吸気経路噴射制御部76は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態であると判定される(ステップST103肯定)と、始動時吸気経路噴射制御を行う(ステップST104)。ここでは、始動時吸気経路噴射制御部76は、燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量QであるPFI噴射量Q1の燃料を各PFI21による1回噴射で内燃機関1−1に供給する噴射制御を行う。従って、各燃焼室Aに均質混合気が生成され、均質燃焼が行われ、各燃焼室A内での爆発により内燃機関1−1の機関回転数Neが増加する。なお、処理部72は、始動時吸気経路噴射制御部76が始動時吸気経路噴射制御を行うと、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
また、処理部72は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態でないと判定すると(ステップSTST103否定)、DI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であるか否かを判定する(ステップST105)。ここでは、処理部72は、DI燃料圧力センサ29により検出され、ECU7により取得されたDI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であるか否かを判定することで、内燃機関1−1の始動開始直後であるか否かを判定する。なお、処理部72は、DI燃料圧力Pが所定圧力P1未満であると判定する(ステップST105否定)と、DI燃料ポンプ25によりDI燃料圧力Pが所定圧力P1以上となるまで、DI燃料を昇圧する。
次に、処理部72は、DI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であると判定する(ステップST105肯定)と、切替条件が成立しているか否かを判定する(ステップST106)。ここでは、処理部72は、検出された機関回転数Neが第1所定回転数Ne1以上であるか否かを判定することで切替条件が成立しているか否かを判定する。
次に、始動時筒内噴射制御部75は、切替条件が成立していないと判定される(ステップST106否定)と、始動時筒内噴射制御を行う(ステップST107)。ここでは、始動時筒内噴射制御部75は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態でないと判定されると、内燃機関1−1の始動開始直後に始動時筒内噴射制御を行う。始動時筒内噴射制御部75は、DI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であり、切替条件が成立していない、すなわち検出された機関回転数Neが第1所定回転数Ne1未満であると、始動時筒内噴射制御を行う。つまり、始動時筒内噴射制御部75は、燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量QであるDI噴射量Q2の燃料を内燃機関1−1の圧縮行程における各DI22による1回噴射で内燃機関1−1に供給する噴射制御を行う。従って、各燃焼室Aに成層混合気が生成され、成層燃焼が行われ、各燃焼室A内での爆発により内燃機関1−1の機関回転数Neが増加する。なお、処理部72は、始動時筒内噴射制御部75が始動時筒内噴射制御を行うと、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
また、始動時分割噴射制御部77は、切替条件が成立していると判定される(ステップST106肯定)と、始動時分割噴射制御を行う(ステップST108)。ここでは、始動時分割噴射制御部77は、PFI噴射量Q1の燃料を各PFI21による1回噴射で内燃機関1−1に供給するとともに、DI噴射量Q2の燃料を内燃機関1−1の圧縮行程における各DI22による1回噴射で内燃機関1−1に供給する噴射制御を行う。従って、各燃焼室A内には、PFI21により噴射された燃料と、DI22により噴射された燃料とにより、点火プラグ36近傍領域の混合気を燃焼室A内の他の領域混合気よりもリッチ側としつつ、燃焼室A全体で弱リーンな弱成層混合気(均質混合気よりも点火プラグ36近傍領域の混合気がリッチ側であり、成層混合気よりも燃焼室A内の他の領域の混合気がリーン側である)が生成され、弱成層燃焼が行われ、各燃焼室A内での爆発により内燃機関1−1の機関回転数Neが増加する。なお、処理部72は、始動時分割噴射制御部77が始動時分割噴射制御を行うと、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上のように、実施の形態1にかかる燃料噴射制御装置であるECU7では、内燃機関1−1の始動開始直後に始動時筒内噴射制御部75による始動時筒内噴射制御を行う場合に、内燃機関1−1の始動時において筒内充填空気量減少状態となると、始動時吸気経路噴射制御部76による始動時吸気経路噴射制御に切り替える。従って、内燃機関1−1の始動開始直後に、始動時筒内噴射制御部75による始動時筒内噴射制御を行う場合であっても、筒内充填空気量減少状態となり、筒内の空気充填効率が通常の筒内の空気充填効率よりも低く、筒内の空燃比がリッチ側となり、始動時筒内噴射制御により点火プラグ近傍領域の混合気が可燃範囲を超えてリッチとなる虞がある場合には、始動時筒内噴射制御を禁止するので、内燃機関1−1の始動時における燃焼が悪化することを抑制することができる。
また、内燃機関1−1の始動時において筒内充填空気量減少状態でないと、内燃機関1−1の始動時にまず始動時筒内噴射制御を行うことで機関回転数Neを上昇し、吸気圧力が低下、すなわち筒内負圧が上昇した後に、始動時分割噴射制御を行うので、PFI21により噴射された燃料が燃焼室A内に確実にそれぞれ導入され、DI22により噴射された燃料とともに、燃焼室A内に弱成層混合気を生成することができ、内燃機関1−1の始動時における燃焼形態が成層燃焼から弱成層燃焼に切り替わる。従って、点火プラグ36の点火時には、点火プラグ36近傍領域の混合気が確実に着火し、燃焼室A内全体の混合気を確実に燃焼させることができる。これにより、点火プラグ36近傍領域の混合気が可燃範囲を超えてリッチ側となることを抑制できるので、燃焼室A内全体の混合気がリーン側となることを抑制でき、HC(炭化水素)の排出の増加を抑制することができる。また、設定された燃料噴射量の燃料を各PFI21とDI22とで分割して噴射するので、始動時筒内噴射制御のみの場合と比較して、ピストンウェットの増加を抑制でき、エミッションが悪化、ここではスモーク(黒煙)の排出の増加を抑制することができる。また、始動時筒内噴射制御のみの場合と比較して、DI22に供給される燃料の圧力の低下を抑制することができ、始動時分割噴射制御時においてDI噴射量Q2の燃料をDI22により確実に噴射することができる。また、始動時分割噴射制御時には、設定された燃料噴射量Qの燃料をPFI21とDI22とで分割して噴射するので、始動時吸気経路噴射制御のみの場合と比較して、重質燃料における霧化・気化性の悪化による影響を抑制でき、ポートウェットの増加を抑制することができる。これらにより、始動性を確保しつつ、燃費の向上およびエミッションの悪化の抑制を図ることができる。
また、始動時分割噴射制御によりPFI21とDI22とで分割して燃料を噴射する場合は、始動時筒内噴射制御後に始動時分割噴射制御を行う代わりに始動時筒内噴射制御によりDI22のみにより燃料を噴射する場合と比較して、実際の燃料噴射量が設定された燃料噴射量Qに対して変動(例えば±20%程度)しても、燃料噴射量に対する内燃機関1−1で発生するトルクの変動を抑制でき、HC(炭化水素)の排出の増加を抑制することができる。従って、ロバスト性を向上することができる。
[実施の形態2]
次に、実施の形態2にかかる内燃機関1−2について説明する。図3は、実施の形態2にかかる内燃機関の構成例を示す図である。図3に示す実施の形態2にかかる内燃機関1−2が、図1に示す実施の形態1にかかる内燃機関1−1と異なる点は、始動時筒内噴射制御時および前記始動時分割噴射制御時に、筒内充填空気量の減少に伴い燃料噴射量Qを減少補正する点である。ここで、実施の形態2にかかる内燃機関1−2の基本的構成において、図1に示す実施の形態1にかかる内燃機関1−1の基本的構成と同一部分は、その説明を省略する。
図3に示すように、噴射量補正部79は、噴射量補正手段である。噴射量補正部79は、上記燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Qを減少補正するものである。噴射量補正部79は、実施の形態2では、始動時筒内噴射制御部75による始動時筒内噴射制御時および始動時分割噴射制御部77による始動時分割噴射制御時に、内燃機関1−2の始動時における大気圧あるいは吸気バルブ41の開閉タイミングの少なくともいずれか1つに基づいて、設定された燃料噴射量Qを減少補正する。ここで、内燃機関1−1の始動時における大気圧が低下すると、内燃機関1−2が同一始動条件であっても、筒内充填空気量が減少することとなる。また、内燃機関1−2の始動時に吸気バルブ41の閉タイミングが通常の閉タイミングである基準閉タイミングに対して遅角側であると、上述のように筒内充填空気量が減少することとなる。従って、例えば、噴射量補正部79は、低地での大気圧を基準大気圧として、内燃機関1−2の始動時における大気圧が基準大気圧に対して減少、あるいは内燃機関1−2の始動時に吸気バルブ41の閉タイミングが上記基準閉タイミングに対して所定値未満遅角側のいずれか1つに応じて、燃料噴射量Qが減少するように設定された燃料噴射量Qを減少補正する。なお、ECU7は、例えば、内燃機関1−2の外部に設けられ、大気圧を検出する圧力センサにより検出され、ECU7に出力されることで大気圧を取得する。
次に、実施の形態2にかかる内燃機関1−2の運転方法、特に燃料噴射制御装置であるECU7による燃料噴射制御方法について説明する。図4は、実施の形態2にかかる燃料噴射制御装置の動作フローを示す図である。なお、図4に示す実施の形態2にかかる燃料噴射制御方法のうち、図2に示す実施の形態1にかかる燃料噴射制御方法と、同一部分あるいはほぼ同一部分については簡略化して説明する。
まず、図4に示すように、ECU7の処理部72は、内燃機関1−2の始動要求があるか否かを判定する(ステップST201)。
次に、処理部72は、内燃機関1−2の始動要求があると判定する(ステップST201肯定)と、DI燃料の昇圧を開始する(ステップST202)。なお、処理部72は、内燃機関1−2の始動要求がないと判定する(ステップST201否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
次に、筒内充填空気量減少判定部78は、筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定する(ステップST203)。
次に、始動時吸気経路噴射制御部76は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態であると判定される(ステップST203肯定)と、始動時吸気経路噴射制御を行う(ステップST204)。なお、処理部72は、始動時吸気経路噴射制御部76が始動時吸気経路噴射制御を行うと、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
また、処理部72は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態でないと判定すると(ステップST203否定)、DI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であるか否かを判定する(ステップST205)。なお、処理部72は、DI燃料圧力Pが所定圧力P1未満であると判定する(ステップST205否定)と、DI燃料ポンプ25によりDI燃料圧力Pが所定圧力P1以上となるまで、DI燃料を昇圧する。
次に、処理部72は、DI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であると判定する(ステップST205肯定)と、切替条件が成立しているか否かを判定する(ステップST206)。
次に、噴射量補正部79は、切替条件が成立していないと判定される(ステップST205否定)と、筒内充填空気量に基づいて燃料噴射量Qを補正する(ステップST207)。ここでは、噴射量補正部79は、上述のように、内燃機関1−2の始動時における大気圧あるいは吸気バルブ41の開閉タイミングの少なくともいずれか1つに基づいて、設定された燃料噴射量Qを減少補正する。
次に、始動時筒内噴射制御部75は、始動時筒内噴射制御を行う(ステップST208)。ここでは、始動時筒内噴射制御部75は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態でないと判定されると、内燃機関1−2の始動開始直後に始動時筒内噴射制御を行う。始動時筒内噴射制御部75は、DI燃料圧力Pが所定圧力P1以上であり、切替条件が成立していない、すなわち検出された機関回転数Neが第1所定回転数Ne1未満であると、始動時筒内噴射制御を行う。つまり、始動時筒内噴射制御部75は、噴射量補正部79により減少補正された燃料噴射量Q(燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Q以下の燃料噴射量)であるDI噴射量Q2の燃料を内燃機関1−2の圧縮行程における各DI22による1回噴射で内燃機関1−2に供給する噴射制御を行う。従って、始動時筒内噴射制御時にDI22により筒内、すなわち燃料室Aに噴射される燃料が筒内充填空気量の減少に応じて減少する。なお、処理部72は、始動時筒内噴射制御部75が始動時筒内噴射制御を行うと、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
また、噴射量補正部79は、切替条件が成立していると判定される(ステップST206肯定)と、筒内充填空気量に基づいて燃料噴射量Qを補正する(ステップST209)。ここでは、噴射量補正部79は、上述のように、内燃機関1−2の始動時における大気圧あるいは吸気バルブ41の開閉タイミングの少なくともいずれか1つに基づいて、設定された燃料噴射量Qを減少補正する。
また、始動時分割噴射制御部77は、始動時分割噴射制御を行う(ステップST210)。ここでは、始動時分割噴射制御部77は、筒内充填空気量減少判定部78により筒内充填空気量減少状態でないと判定されると、始動時筒内噴射制御後に始動時分割噴射制御を行う。始動時分割噴射制御部77は、減少補正された燃料噴射量QのうちPFI噴射量Q1の燃料を各PFI21による1回噴射で内燃機関1−2に供給するとともに、補正された燃料噴射量QのうちDI噴射量Q2の燃料を内燃機関1−2の圧縮行程における各DI22による1回噴射で内燃機関1−2に供給する噴射制御を行う。従って、始動時分割噴射制御時にDI22により筒内、すなわち燃料室Aに噴射される燃料が筒内充填空気量の減少に応じて減少する。なお、処理部72は、始動時分割噴射制御部77が始動時分割噴射制御を行うと、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
以上のように、実施の形態2にかかる燃料噴射制御装置であるECU7では、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、噴射量補正部79により、始動時筒内噴射制御および始動時分割噴射制御における燃料噴射量Qが筒内充填空気量の減少に応じて減少するので、DI22により筒内、すなわち燃料室Aに噴射される燃料が減少する。従って、筒内、すなわち燃焼室Aの空気充填効率が通常の筒内の空気充填効率よりも低く、筒内の空燃比がリッチ側となる場合に、DI22により燃焼室Aに噴射される燃料を減少することができ、始動時筒内噴射制御および始動時分割噴射制御により点火プラグ近傍領域の混合気が可燃範囲を超えてリッチとなることを抑制することができ、内燃機関1−2の始動時における燃焼が悪化することを抑制することができる。
なお、実施の形態2では、噴射量補正部79は、設定された燃料噴射量Qを減少補正するが本発明はこれに限定されるものではなく、設定された燃料噴射量QのうちDI噴射量Q2のみを減少補正しても良い。つまり、噴射量補正部79は、始動時分割噴射制御部77による始動時分割噴射制御時に、筒内充填空気量の減少に応じてDI噴射量Q2のみが減少するように設定された燃料噴射量QのうちDI噴射量Q2のみを補正しても良い。
なお、実施の形態1,2では、処理部72は、終了条件が成立すると、始動時分割噴射制御を終了し、噴射制御として通常制御を行うようにしても良い。通常制御は、例えば始動が完了した内燃機関1−1,1−2の運転を維持できる燃料噴射量の燃料を内燃機関1−1,1−2に供給することができる噴射制御である。ここで、終了条件は、内燃機関1−1,1−2の始動が完了したと判断できる物理量あるいは始動時分割噴射制御を行うことができないと判断できる物理量の少なくともいずれかに基づいて設定されるものである。実施の形態1,2では、終了条件として、例えば、内燃機関1−1,1−2の始動が完了したと判断できる物理量である内燃機関1−1,1−2の機関回転数を用い、検出された機関回転数Neが第2所定回転Ne2(上記第1所定回転数Ne1よりも高い値)以上であると終了条件が成立したとする。内燃機関1−1,1−2の始動が完了したと判断できる物理量は、機関回転数に限定されるものではなく、DI22の燃料の噴射回数(噴射回数の増加により機関回転数が上昇し、内燃機関1−1,1−2の始動が完了したと判断できる)や、DI22による燃料の噴射開始からの経過時間(時間経過により、噴射回数が増加し、機関回転数が上昇し、内燃機関1−1,1−2の始動が完了したと判断できる)であっても良い。この場合は、噴射回数が第2所定噴射回数(上記第1所定噴射回数よりも高い値)以上であると、あるいはDI22による燃料の噴射開始から第2所定時間(上記第1所定時間よりも高い値)以上経過すると、終了条件が成立したとする。ここで、第2所定回転数Ne2、第2所定噴射回数および第2所定時間は、内燃機関1−1,1−2の始動が完了したと判断できる値に設定されている。また、終了条件として、始動時分割噴射制御を行うことができないと判断できる物理量である負荷率、すなわち筒内充填効率を用い、例えば検出された機関回転数Neおよび検出された吸入空気量に基づいて推定された負荷率が所定値以下であると終了条件が成立したとしても良い。始動時分割噴射制御を行うことができないと判断できる物理量は、負荷率に限定されるものではなく、燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Qのうち、DI22に対応する燃料噴射量であるDI噴射量Q2、あるいは燃料噴射量設定部74により設定された燃料噴射量Qのうち、PFI21に対応する燃料噴射量であるPFI噴射量Q1であっても良い。この場合は、DI噴射量Q2がDI22の最低噴射量未満であると、あるいはPFI噴射量Q1がPFI21の最低噴射量未満であると、終了条件が成立したとしても良い。また、終了条件は、上記複数の条件が成立した場合に成立したとしても良い。
また、上記実施の形態2では、噴射量補正部79は、始動時吸気経路噴射制御時および始動時分割噴射制御時に、設定された燃料噴射量Qのうち、各PFI21に対応する燃料噴射量であるPFI噴射量Q1の増量補正を行っても良い。ここで、補正量は、各PFI21の初回噴射時に、吸気経路5に付着する燃料、すなわちポートウェットに基づいて設定される。また、噴射量補正部79は、補正量を始動時吸気経路噴射制御時および始動時分割噴射制御開始時に設定された基準補正量から時間経過に応じて減少させて設定する。なお、噴射量補正部79は、増量条件が成立すると、増量補正を開始するようにしても良い。ここで、増量条件として、各PFI21の噴射回数が第3所定噴射回数(例えば3回)以下であると増量条件が成立したとする。なお、増量条件として、内燃機関1−1,1−2の冷却水の水温を用い、例えば図示しない水温センサにより検出され、ECU7に出力された水温が所定温度以下である、あるいは各DI22による燃料の噴射開始からの経過時間を用い、各DI22による燃料の噴射開始から第3所定時間以上経過すると、増量条件が成立したとする。また、増量条件は、上記複数の条件が成立した場合に成立したとしても良い。
また、上記実施の形態1,2では、筒内充填空気量減少判定部78は、吸気バルブタイミング機構45の異常を判定することで、内燃機関1−1,1−2の始動時に筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定するが本発明はこれに限定されるものではなく、筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定できるものであればいずれであってもよい。
例えば、筒内充填空気量減少判定部78は、吸気バルブタイミング機構45の位置学習状態に基づいて筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定しても良い。吸気バルブタイミング機構45は、吸気バルブ41の閉タイミングにズレが発生しないように、例えば定期的に始動時において吸気バルブ41の閉タイミングを一度最遅角とし、位置学習を行う。従って、位置未学習の場合は、吸気バルブ41の閉タイミングが基準閉タイミングに対して遅角側となる。筒内充填空気量減少判定部78は、吸気バルブタイミング機構45の位置未学習である場合に、筒内充填空気量減少状態であると判定しても良い。
また、例えば、筒内充填空気量減少判定部78は、内燃機関1−1,1−2の各学習値に基づいて筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定しても良い。内燃機関1−1,1−2は、ECU7とバッテリとの電気的接続を遮断し、ECU7に記憶されていた各学習値を消去する、いわゆるバッテリクリアなどが行われると、吸気バルブタイミング機構45の位置学習値などが消去されるので、上記筒内充填空気量減少状態となる虞がある。従って、筒内充填空気量減少判定部78は、バッテリクリアなどが行われ内燃機関1−1,1−2の各学習値が消去された場合に、吸気バルブ41の筒内充填空気量減少状態となる虞があるとして筒内充填空気量減少状態であると判定しても良い。
また、例えば、筒内充填空気量減少判定部78は、吸気経路5の吸気状態に基づいて筒内充填空気量減少状態であるか否かを判定しても良い。吸気経路5にデポジットなどが付着すると、内燃機関1−1,1−2が同一始動条件であっても、筒内充填空気量が減少する虞がある。筒内充填空気量減少判定部78は、吸気経路5の吸気状態が悪化した場合に、吸気バルブ41の筒内充填空気量減少状態となる虞があるとして筒内充填空気量減少状態であると判定しても良い。ここで、吸気経路5の吸気状態の悪化は、例えば、ECU7に記憶されている内燃機関1−1,1−2の運転条件の履歴など過去のデータから推定する。例えば、筒内充填空気量減少判定部78は、内燃機関1−1,1−2の始動後の通常運転時において、A/Fセンサ63により検出された空燃比に基づいたフィードバック制御により通常時に設定される燃料噴射量Qに対して燃料噴射量Qが少なく設定される場合に、吸気経路5の吸気状態が悪化したと判定し、吸気バルブ41の筒内充填空気量減少状態となる虞があるとして筒内充填空気量減少状態であると判定しても良い。