JP4759781B2 - 一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜及びその製造方法 - Google Patents

一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン交換膜を利用する、電解質水溶液の濃縮もしくは分離、又は脱塩水の製造に好適に使用できる陽イオン交換膜及びその製造方法に関し、より詳しくは、電気透析による、電解質水溶液の濃縮もしくは分離、又は脱塩水の製造に好適に使用できる電荷の小さい陽イオンを特に選択的に透過しやすい一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン交換膜を利用する、電解質水溶液の濃縮もしくは分離、又は脱塩水の製造は、様々な分野で行われている。特に我国では電気透析による海水濃縮の製塩技術の確立に際し、各種海水成分から塩化ナトリウムを選択的に濃縮できる、いわゆる一価イオン選択透過膜が数多く提案され実際に使用されている。また、海水濃縮以外への用途展開も図られている。
【0003】
従来における陽イオン交換膜に一価陽イオン選択透過性を付与する方法としては、以下のとおりのものがある。
(1)陽イオン交換膜の表面部を緻密な構造(例えば表層部に架橋度の高い層あるいは固定イオン濃度の高い層)にする方法
(2)陽イオン交換膜の表面にイオン交換基を含まない電気的に中性の薄層を形成する方法
(3)陽イオン交換膜の表面に反対電荷の薄層を形成する方法
(4)上記(1)〜(3)の2以上を併せ用いる方法
【0004】
それら方法うち、(1)は、一般的に耐久性に優れるが電気抵抗が高い欠点があり、また(2)は選択透過性が充分でない。これらに対し、(3)の方法は、一般的に一価イオン選択性が優れ電気抵抗も低い利点があるが、当初提案された方法(特許第704599号)は反対電荷層を形成する物質の分子量が低く、一価陽イオン選択性の耐久性が不十分であり、また耐久性や選択性を高めるために反対電荷層を厚くすると、直流抵抗の増加や限界電流密度の低下を招く欠点があった。
【0005】
これらの欠点を克服するために数多くの提案がされており、その提案には、例えば特定のHLB値と分子量を有する陰イオン交換基を有する非架橋性物質(特開昭55−8838号公報)や海水に対し特定な溶解度を有する陰イオン交換基を有する高分子(特開平9―48861号公報)など、溶解性をコントロールした反対電荷化合物により選択層を形成する方法がある。それらの方法は、通電下の耐久性は改善されるが、通電を停止した状態では、選択層が徐々に膜から溶離し選択性が低下する問題がある。
【0006】
また、それらの欠点を防止する方法として、膜内に反対電荷層を侵入させ耐久性を向上させる目的で、有機溶媒と水との混合水で浸漬した陽イオン交換膜に反対電荷化合物を処理する方法(特公平6−49786号公報)や無電荷状態の高分子アミンで処理する方法(特開平4−90828号公報)も提案されているが、必ずしも充分なものではない。
【0007】
さらに、反対電荷を有するか反対電荷に転換できる化合物を陽イオン交換膜表面上で高分子化した不溶化せしめた層を形成する方法(特開昭62−205135号公報他)もあるが、その方法では、一価選択性の耐久性は大幅に改善されるものの、膜の交流抵抗は低いにもかかわらず、海水濃縮時の膜の直流抵抗が高い場合がある等の問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の一価陽イオン選択透過性の付与する技術及び一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜が有するこれらの課題を解決する技術を提供するものであり、特には一価陽イオン選択透過性の耐久性、並びに選択性付与による直流抵抗の増加及び限界電流密度の低下を抑制(低減)した新しい一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために採用されたものであり、本発明の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜は、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンの共存下で高分子陽イオンと接触処理した面を陽イオン交換膜の少なくとも一表面に有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜の製造方法は、陽イオン交換膜の少なくとも一表面を、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオン(以下、これらの酸を酸素酸等といい、それらのイオンを酸素酸陰イオン等ということもある)の共存下で高分子陽イオンと接触せしめることを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、前記したとおり陽イオン交換膜の少なくとも一表面を、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンの共存下で高分子陽イオンと接触せしめるものであるが、そのような接触が何故有効であるかの理由は、未だ解明されてないが、後で述べる実施例からその効果は明白である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜は、前記したとおり酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンの共存下で高分子陽イオンと接触処理した面を陽イオン交換膜の少なくとも一表面に有するものであるが、一価陽イオン選択透過性の付与処理を実施する前の陽イオン交換膜としては、以下のものが例示でき、それらは何等制限なく使用できる。
【0013】
(1)補強用クロスにスチレンージビニルベンゼンを含浸重合後スルホン化した陽イオン交換膜
(2)陽イオン交換樹脂粉体とバインダーの混練物から膜状に成形した不均質系陽イオン交換膜
(3)ポリオレフィンやフッ素系フイルムに陽イオン交換基を有するかもしくは陽イオン交換基に変換できるモノマーをグラフト重合した陽イオン交換膜
(4)イオン交換膜法食塩電解膜として有用なパーフルオロ系陽イオン交換膜
【0014】
本発明の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜を製造するには、前記列挙した陽イオン交換膜の少なくとも片面に、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンとの共存下で、高分子カチオンと接触せしめるが、本発明における高分子カチオンとは、陽イオン交換膜の使用時に、カチオンに荷電した陽イオンの平均分子量(平均式量)が5000以上の高分子電解質と定義する。
【0015】
そのような高分子カチオンを与える高分子電解質としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアミジン、ヘキサメチレンジアミン−エピクロロヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物、グアニジン−ホルマリン重縮合物、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(1−ビニルイミダゾール)、ポリ(2−ビニルピラジン)、ポリ(4−ブテニルピリジン)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)又はそれらの塩を含有する水溶性ポリマーが例示される。
【0016】
それらの中でも、分子量5000以上のアリルアミンの単独重合体または共重合体が特に好ましい。具体的には、アリルアミンの単独重合体である分子量5000以上、好ましくは1万、特には5万以上のポリアリルアミンの他、アリルアミンと他のモノマーとの共重合体、例えばアリルアミンとジアリルアミンとの共重合体は、本発明の酸素酸陰イオンとの共存下での陽イオン交換膜との接触処理による一価陽イオン選択透過性付与効果が著しい点で特に好ましい。
【0017】
次に、本発明において上記高分子カチオンと共存させる陰イオンについて説明するに、それには前記したとおり酸素酸アニオン及び有機スルホン酸イオンがある。そのうちの前者の酸素酸アニオンは、酸素以外の非金属又は金属に酸素が配位した酸素酸及びその塩を水に溶解した時生じるアニオンをいう。
【0018】
そのような酸素酸アニオンを生じる化合物としては、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、ピロ硫酸、炭酸、リン酸、ケイ酸、塩素酸、クロム酸、アンチモン酸、マンガン酸、又はそれらの塩から形成されるものが例示できる。このうち、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、ピロ硫酸、炭酸、リン酸、ケイ酸またはそれらの塩から形成されるものは、さらに好ましい。これらの酸の塩としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩を例示できる。
【0019】
また、後者の有機スルホン酸イオンは、ベンゼン核等の芳香環、芳香環に直結したアルキレン基または脂肪族炭化水素の炭素原子等にスルホン基が結合したスルホン酸化合物及びその塩を水に溶解した時に生じるアニオンをいう。そのようなアニオンを生ずる化合物には、ポリスチレンスルホン酸及びその塩、ポリビニルベンジルスルホン酸及びその塩、ポリビニルスルホン酸及びその塩等が例示できる。
【0020】
前記した高分子カチオンを生じる高分子電解質は、かかる酸素酸アニオンを生じる化合物との共存下で、陽イオン交換膜の片面又は両面に接触せしめるが、酸素酸アニオンは高分子カチオンに対し0.5化学当量以上で共存させることが一価陽イオン選択透過性の発現とその耐久性の点で好ましい。また、酸素酸アニオン以外のアニオン、例えば塩素イオン等が共存しても何ら支障がない。
【0021】
共存させる方法としては、酸素酸等及びまたはその塩溶液と高分子電解質溶液を予め混合した溶液を陽イオン交換膜の少なくとも片面に塗布あるいは浸漬する方法、いずれか一方の溶液を陽イオン交換膜に塗布浸漬した後、他方の溶液を塗布浸漬し、陽イオン交換膜上で共存させる方法等の各種方法があり、特に限定されない。
【0022】
陽イオン交換膜に塗布あるいは浸漬する高分子電解質の溶液については、接触せしめる時間や温度により濃度は変わるが、0.01〜200000ppm、好ましくは、0.2〜5000ppmで、温度0〜150℃、好ましくは20〜120℃で接触せしめる。
【0023】
このようにして、酸素酸アニオンと高分子カチオンの共存下の接触により一価陽イオン選択性が付与されるが、前記処理後、さらに加熱処理する方法や高分子カチオン中の反応サイト例えば窒素原子に結合した活性水素を利用しホルマリン、エピクロロヒドリンあるいはアルキレンジハライドと反応させ不溶化するなどの後処理を行うこともできる。
【0024】
【実施例】
以下において、本発明に関し実施例に基づき更に詳しく説明するが、本発明がこれら実施例に限定されず、特許請求の範囲の記載に基づいて把握されるものであることは勿論である。
【0025】
実施例の説明に先立ち、まず一価陽イオン選択透過陽イオン交換膜の評価法を説明する。
この評価には、銀―塩化銀電極を用いた陽極側より、一価陰イオン選択透過陰イオン交換膜、本発明の実施例である陽イオン交換膜、一価陰イオン選択透過陰イオン交換膜を配置して区画した、有効通電面積が4×2.5cm2である、陽極室、希釈室、濃縮室及び陰極室からなる4室型回分式電気透析セルを形成し、それを使用した。
【0026】
その電気透析セルの陽極室、濃縮室及び陰極室には、1mol/LのNaCl溶液を、また希釈室には、塩化物イオン0.45mol/L、硫酸イオン0.025mol/L、ナトリウムイオン0.37mol/L、カリウムイオン0.01mol/L、マグネシウムイオン0.05mol/L、カルシウムイオン0.01mol/L溶液を充満し、25℃、電流密度2A/dm2で電気透析を行い、濃縮室に濃縮されるマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び塩化物イオン量から下記式に基づいて簡易純塩率を求めた。
【0027】
ここで、簡易純塩率とは、海水からNaClを選択的に濃縮する性能を表す数値で、高いほど選択性が高いことを示す。下記式において、末尾の(−2.5)は、経験的に求められた海水イオン中のKイオンの割合である。この簡易純塩率においては、Kイオンの濃度を測定せずに、上記経験値を引くことによりKイオンの含有量を補正する。
簡易純塩率(%)=100×(([Cl]−[Mg]−[Ca])/[Cl])−2.5
【0028】
そして、実施例陽イオン交換膜と旭硝子製陰イオン交換膜であるセレミオンASVを旭硝子製電気透析装置0(ゼロ)型(有効面積2.1dm2)に組み込み、希釈室には流速7cm/sec、温度25℃で実海水を通水した濃縮試験も実施した。陽イオン交換膜以外は同一の条件でユニットセル電圧を求めた。また電流密度を可変し電圧を測定し、直流抵抗値が増加する電流密度を限界電流密度として求めた。
【0029】
[実施例1]
旭硝子製陽イオン交換膜であるセレミオンCMVの片面を、分子量1万のポリアリルアミンの塩酸塩(日東紡製 PAA−HCL−3L)を100ppm含有した0.25mol/L硫酸ナトリウム溶液に60分間浸漬した後水洗し、水洗後の前記した陽イオン交換膜を、処理面が希釈室側になるように4室回分式電気透析セルに組み込み、簡易純塩率を求めた。
【0030】
次いで、選択性処理をした陽イオン交換膜の表面層の耐久性を評価するため、電気透析セルから膜を取出して、60℃の0.5mol/L−NaCl溶液に浸漬し、浸漬処理1日後及び30日後(週5回0.5mol/L−NaCl液を更新)に、再度電気透析セルに組み込み簡易純塩率を測定した。結果は表1に示した。
【0031】
[実施例2]
実施例1における分子量1万のポリアリルアミンの塩酸塩の代わりに分子量10万のポリアリルアミンの塩酸塩(日東紡製 PAA−HCL−10L)を使用し、それ以外は実施例1と全く同様にして簡易純塩率の測定を行い結果を表1に示した。
【0032】
[実施例3]
実施例1のポリアリルアミンの塩酸塩の代わりにフリー型のポリアリルアミン(分子量1万)を使用して、処理液のpHを12にし、それ以外は実施例1と全く同様にして簡易純塩率を測定した。その結果は70%であり、また該膜を0.25mol/L硫酸に16時間浸漬した後、再度簡易純塩率を測定したところ96%に上昇した。
【0033】
[比較例1、2]
比較例1は実施例2の硫酸ナトリウム溶液の代わりに純水を、比較例2は塩化ナトリウム溶液を使用し、それ以外は、実施例2と全く同様にして簡易純塩率を測定し結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
Figure 0004759781
【0035】
表1の結果より、SO4イオンの共存が一価陽イオン選択透過性の発現に有効であることがわかる。また高分子カチオンの分子量が高いほど、耐久性が良いことが分かる。
【0036】
[実施例4〜7]
実施例2の硫酸ナトリウムの代わりに、実施例4は硝酸ナトリウム溶液、実施例5は炭酸水素ナトリウム溶液、実施例6はリン酸2水素1ナトリウム溶液を、実施例7はスルホン酸基換算で0.0005mol/Lポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液を使用し、それ以外は実施例2と同様にして簡易純塩率を測定し、結果を表2に示した。
【0037】
[比較例3、4]
比較例3は実施例4の炭酸水素ナトリウムの代わりに炭酸ナトリウムを、また比較例4は実施例5のリン酸2水素1ナトリウムの代わりにリン酸ナトリウムを使用し、それぞれ対応する実施例と同様にして簡易純塩率の測定を行い、結果を表2に示した。
【0038】
【表2】
Figure 0004759781
【0039】
表2の結果より、pHが低く、高分子カチオンが解離した状態では、NO3アニオン、HCO3アニオン、H2PO4アニオン等の酸素酸アニオンあるいはポリスチレンスルホン酸アニオンの共存で選択性が発現していることが分かる。
【0040】
[実施例8〜11]
実施例2の硫酸ナトリウム濃度を変えることで、ポリアリルアミンのアミノ基に対する硫酸イオンの化学当量比の異なる複数の混合液を形成して各混合液で陽イオン交換膜を処理し、簡易純塩率を測定し結果を表3に示した。その結果から共存イオンのSO4 2-イオンとポリアリルアミンのアミノ基の当量比が0.5以上で選択性が発現していることが分かる。
【0041】
【表3】
Figure 0004759781
【0042】
[実施例12]
実施例2におけるポリアリルアミンの代わりに分子量1万のポリエチレンイミンを、また0.25mol/L−NaSO4の代わりに0.018mol/LのNa2SiO3を使用した以外実施例2同様に簡易純塩率の測定を行い結果を表4に示した。
【0043】
[比較例5]
実施例12における0.018mol/LのNa2SiO3の代わりに0.5mol/L−NaCl溶液を使用した以外実施例12同様に簡易純塩率の測定を行い、結果を実施例12と共に表4に示した。
【0044】
【表4】
Figure 0004759781
【0045】
[実施例13]
実施例2と全く同一の条件で一価陽イオン選択透過膜を作成し、有効面積2dm2で海水濃縮試験を実施し、ユニットセル電圧、限界電流密度及び30日運転後の簡易純塩率を測定し、結果を表5に示した。
【0046】
[比較例6〜8]
実施例13で作成した一価陽イオン選択透過膜の性能と比較するため、濃度の異なるポリエチレンイミンを0.5mol/L―NaCl溶液に溶解した液で処理し、一価陽イオン選択性のレベルを変えた陽イオン交換膜を作成した。その膜を使用した以外は実施例13と同様にして性能試験を実施し、限界電流密度(LCD)、ユニットセル電圧(UCV)及び30日運転後の簡易純塩率を求め、実施例13との比較を行い、その結果を表5に示した。
【0047】
【表5】
Figure 0004759781
【0048】
その結果を示す表5から、本発明の選択性付与処理による一価陽イオン選択透過膜は、純塩率が高いにもかかわらず、限界電流密度が高く、また塩溶液に長期間浸漬放置後も純塩率が低下せず耐久性が優れていることがわかる。
【0049】
[実施例14]
旭硝子製陽イオン交換膜であるセレミオンCMVの片面を、分子量10万のフリー型のポリアリルアミン(日東紡製 PAA−H)を1000ppm含有した0.1mol/L亜硫酸ナトリウム溶液に5分間浸漬後、100℃ロールプレスで加熱処理した後水洗し、水洗後の前記した陽イオン交換膜を、処理面が希釈室側になるようにし、4室回分式電気透析セルに組み込み、簡易純塩率を求めた結果、96.5%であった。
【0050】
次いで、選択性処理した陽イオン交換膜の表面層の耐久性を評価するため、電気透析セルから膜を取り出して、60℃のイオン交換水に浸漬し、3週間後に再度電気透析セルに組み込み簡易純塩率を測定した結果、95.8%とほとんど低下しなかった。
【0051】
[比較例9]
比較例9は、実施例14の分子量10万のフリー型のポリアリルアミンの亜硫酸ナトリウム溶液の代わりに分子量10万のフリー型のポリアリルアミンの1000ppmイオン交換水とし、それ以外実施例14と全く同様にして簡易純塩率を測定した。その結果は、94.1%であり、また該膜を60℃イオン交換水に3週間浸漬した後再度簡易純塩率を測定したところ89%へ低下した。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、前記したとおり陽イオン交換膜の少なくとも一表面に、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンの共存下で高分子陽イオンを接触せしめて一価陽イオン選択透過性を付与することにより、耐久性を有し、かつ限界電流密度が高く直流膜抵抗の低い、一価選択性が優れた陽イオン交換膜を提供することができる優れた効果を有する陽イオン交換膜を提供することができる。

Claims (6)

  1. pH8.3以下において、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンの共存下で高分子陽イオンと接触処理した面を、陽イオン交換膜の少なくとも一表面に有することを特徴とする一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜。
  2. 高分子陽イオンが、分子量5000以上のアリルアミンの単独重合体または共重合体から生じるものである請求項1記載の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜。
  3. 酸素酸陰イオンが、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、ピロ硫酸、炭酸、リン酸、ケイ酸またはそれらの塩から形成されるものである請求項1又は2記載の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜。
  4. 陽イオン交換膜の少なくとも一表面を、pH8.3以下において、酸素酸陰イオン又は有機スルホン酸イオンの共存下で高分子陽イオンと接触せしめることを特徴とする一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜の製造方法。
  5. 高分子陽イオンが、分子量5000以上のアリルアミンの単独重合体または共重合体から生じるものである請求項4記載の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜の製造方法。
  6. 酸素酸陰イオンが、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、ピロ硫酸、炭酸、リン酸、ケイ酸またはそれらの塩から形成されるものである請求項4又は5記載の一価陽イオン選択透過性陽イオン交換膜の製造方法。
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