JP4756123B2 - 樹脂改質剤、これを含有してなる改質樹脂組成物及びカチオン電着塗料 - Google Patents

樹脂改質剤、これを含有してなる改質樹脂組成物及びカチオン電着塗料 Download PDF

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Description

本発明は樹脂改質剤、これを含有してなる改質樹脂組成物及びカチオン電着塗料に関する。
カチオン電着塗装後の塗膜に親水性を付与し、塗膜上に水滴が残るのを防止するための塗料添加剤として、ヒドロキシアルキルイミダゾリン化合物(特許文献1)及びアルキルアミンやアルキルアミドのエチレンオキシド付加体(特許文献2)等が知られている。
特開平4−370165号公報 特開2002−226778号公報
特許文献1及び2に記載の塗料添加剤では、カチオン電着塗装後の工程で塗料浴中から塗膜を引き上げる際に塗料添加剤が塗膜上から流れ落ちたり、また水洗時に塗料添加剤が洗い流されたりし易く、塗膜に残存しにくいという問題がある。一方、残存量を増やすために使用量を増加すると、塗膜の耐水性(防錆性)に悪影響を与える等の問題がある。すなわち、本発明の目的は、塗膜の耐水性(防錆性)を損なうことなく塗膜に親水性(耐乾きムラ性)を付与できる樹脂改質剤を提供することである。
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に達した。すなわち本発明の樹脂改質剤の特徴は、一般式(1)で表されるエポキシ化合物を必須成分としてなる点を要旨とする。
Figure 0004756123

ただし、一般式(1)において、Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、Lは炭素数1〜3の有機基、OA及びAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rはグリシジル基、メチル基、エチル基、プロピル基、プロペニル基又は水素原子を表し、少なくとも1個のRはグリシジル基であり、nは1〜30の整数、mは2〜4の整数、OA及びAOの総数は50〜300、tは0〜4の整数を表し、R、OA、AO、(OA)n、(AO)n、Q、L、n、mは、それぞれ同じでも異なってもよい。
また、本発明の樹脂改質剤の特徴は、非還元性の二又は三糖類(a1)、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)、炭素数1〜3のジハロゲン化炭化水素(a4)、エピハロヒドリン(a5)及び必要により炭素数1〜3のモノハロゲン化炭化水素(a3)の化学反応により製造され得る構造を有するエポキシ化合物を必須成分としてなる点を要旨とする。
本発明の樹脂改質剤は、塗膜の耐水性(防錆性)を損なうことなく塗膜に親水性(耐乾きムラ性)を付与できる。すなわち、本発明の樹脂改質剤を含んでなる塗料は、形成される塗膜の耐水性及び親水性に著しく優れるので、たとえばカチオン電着塗料に適用すると、塗膜の耐水性を低下させることなく水滴痕が残存しにくくなり、水跡の欠損(水滴の存在していた部分が、水滴の存在しなかった部分に比べて少し窪む現象)を効果的に防止できる。
一般式(1)において、非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類としては、蔗糖(サッカロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオース等が含まれる。エポキシ化合物内のQは、すべて同じでもよく、また一部が異なってもよい。これらのうち、親水性の観点等から、蔗糖、トレハロース、ゲンチアノース、ラフィノース及びプランテオースが好ましく、さらに好ましくは蔗糖及びラフィノースであり、供給性及びコスト等の観点から特に好ましくは蔗糖である。
炭素数1〜3の有機基(L)としては、アルキレン基及びアルケニレン基等が含まれる。
アルキレンとしては、メチレン、エチレン、プロピレン及びiso−プロピレン等が挙げられ、これらの基の水素原子の一部が水酸基等に置き換わった置換アルキレン{ヒドロキシプロピレン(−CH2−CH(OH)−CH2−)等}も使用できる。
アルケニレンとしては、エテニレン及びプロペニレン等が挙げられる。
これらのうち、アルキレンが好ましく、さらに好ましくはメチレン、エチレン及びヒドロキシプロピレン、特に好ましくはメチレン及びヒドロキシプロピレン、最も好ましくはメチレンである。
複数個のLは全て同じでもよく、一部又は全部が異なっていてもよい。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA又はAO)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合等が挙げられる。これらのうち、親水性及び耐水性の観点等から、オキシエチレン、オキシプロピレン及びこれらの混合が好ましく、親水性(耐乾きムラ性)の観点等から、オキシエチレン及びオキシプロピレンの混合がさらに好ましい。また、複数個の(OA)n及び(AO)nは、同じでも異なってもよい。
(-OA)n又は(AO-)n内に複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、これらのオキシアルキレン基の結合順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び含有割合には制限はないが、ブロック状又はブロック状とランダム状との組合せを含むことが好ましい。またこの場合、親水性をより改善するためにオキシエチレンを含むことが好ましい。この場合、オキシエチレンを含むとき、その含有割合(モル%)は、オキシアルキレン基の全モル数に基づいて、2〜20が好ましく、さらに好ましくは3〜18、特に好ましくは4〜17、最も好ましくは5〜15である。
また、(-OA)n又は(AO-)nにオキシエチレン基と、オキシプロピレン基又は/及びオキシブチレン基とを含む場合、反応残基(Q)から離れた端部にオキシプロピレン又は/及びオキシブチレンが位置することが好ましい。
すなわち、(-OA)n又は(AO-)nにオキシエチレン基を含む場合、反応残基(Q)にオキシエチレン基が直接的に結合し得ていることが好ましい。また、(-OA)n又は(AO-)nに複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、ブロック状を含むことが好ましい。
Rは、グリシジル基、メチル基、エチル基、プロピル{n−プロピル基、iso−プロピル基}、プロペニル{2−プロペニル(アリル)基、1−プロペニル基}又は水素原子を表す。
これらのうち、グリシジル基、メチル基、2−プロペニル基及び水素原子が好ましく、さらに好ましくはグリシジル基及びメチル基である。但し、少なくとも1個のRはグリシジル基である。
Rのうち少なくとも1個はグリシジル基であるが、好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個がグリシジル基である。
nは、1〜30の整数が好ましく、さらに好ましくは2〜27の整数、特に好ましくは4〜26の整数、最も好ましくは5〜25の整数である。この範囲であると塗膜の親水性(耐乾きムラ性)及び耐水性(防錆性)がさらに良好となる。
mは、2〜4の整数であり、好ましくは3〜4、さらに好ましくは3である。この範囲であると塗膜の耐水性(防錆性)及び親水性(耐乾きムラ性)がさらに良好となる。そして、mは二又は三糖類の1級水酸基の個数に対応しており、たとえば、蔗糖では3、トレハロースでは2、メレチトースでは4である。
OA及びAOの総数は、50〜300が好ましく、さらに好ましくは65〜285、特に好ましくは80〜270、最も好ましくは100〜250である。この範囲であると、塗膜の耐水性(防錆性)及び親水性(耐乾きムラ性)がさらに良好となる。
tは、0〜4の整数が好ましく、さらに好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2である。この範囲であると塗膜の耐水性がさらに良好となる。
R、Q、L、n、mは、それぞれ同じでも、一部又は全部が異なってもよい。
一般式(1)で表されるエポキシ化合物としては、以下の化学式で示される化合物等が挙げられる。なお、Pはオキシプロピレン基を、Eはオキシエチレン基を、Bはオキシブチレン基を、gyはグリシジル基を表し、Q1は蔗糖の3個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基を、Q2はトレハロースの2個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基を、Q3はメレチトースの4個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基を、Q4はラフィノースの3個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基を表す。
Figure 0004756123
これらのうちでは、式(2)、(4)、(6)、(8)又は(10)で表されるエポキシ化合物が好ましく、さらに好ましくは式(2)又は(8)で表されるエポキシ化合物である。
一般式(1)で表されるエポキシ化合物としては、非還元性の二又は三糖類(a1)、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(a2)、炭素数1〜3のジハロゲン化炭化水素(a4)、エピハロヒドリン(a5)及び必要により炭素数1〜3のモノハロゲン化炭化水素(a3)等の化学反応により製造され得る構造を有するエポキシ化合物等が含まれる。すなわち、これらの化学反応により製造され得る構造を有するエポキシ化合物は、オキシアルキレン基やtの数等に分布を生じる場合があり、この場合、厳密には複数種類のエポキシ化合物の混合物となり、この混合物の中に、一般式(1)で表されるエポキシ化合物が含まれるものである。なお、この場合でも製造方法を限定するものではない。
そして、アルキレンオキシド(a2)の使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部に対して、10〜80が好ましく、さらに好ましくは13〜77、特に好ましくは16〜73、最も好ましくは20〜70である。この範囲であると、塗膜の親水性(耐乾きムラ性)及び耐水性(防錆性)がさらに良好となる。
炭素数1〜3のモノハロゲン化炭化水素(a3)を使用する場合、この使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部に対して、0.1〜2が好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.8、特に好ましくは0.4〜1.6、最も好ましくは0.6〜1.4である。この範囲であると、塗膜の耐水性がさらに良好となる。
炭素数1〜3のジハロゲン化炭化水素(a4)の使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部に対して、0.5〜0.9が好ましく、さらに好ましくは0.53〜0.87、特に好ましくは0.57〜0.83、最も好ましくは0.6〜0.8である。この範囲であると、塗膜の耐乾きムラ性がさらに良好となる。
エピハロヒドリン(a5)の使用量(モル部)としては、非還元性の二又は三糖類(a1)1モル部に対して、0.3〜2が好ましく、さらに好ましくは0.33〜1.9、特に好ましくは0.37〜1.8、最も好ましくは0.4〜1.7である。この範囲であると、塗膜の親水性(耐乾きムラ性)及び耐水性(防錆性)がさらに良好となる。
非還元性の二又は三糖類(a1)としては、一般式(1)における反応残基(Q)を構成することができる二又は三糖類と同じものが使用でき、好ましい範囲も同じである。
アルキレンオキシド(a2)としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシド等が使用でき、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、塗膜の耐乾きムラ性等の観点から、EO、EOを含有する混合物及びPOが好ましく、さらに好ましくはEOを含有する混合物である。
また、複数種類のアルキレンオキシドを用いる場合、反応させる順序(ブロック状、ランダム状及びこれらの組合せ)及び使用割合には制限ないが、ブロック状又はブロック状とランダム状の組合せを含むことが好ましくい。
また、EOを含有する場合、EOの使用割合(モル%)は、アルキレンオキシドの全モル数に基づいて、2〜20が好ましく、さらに好ましくは3〜18、特に好ましくは4〜17、最も好ましくは5〜15である。
EOと、PO又は/及びBOとを含む場合、(a1)へのEOの反応後にPO及び/又はBOを反応させることが好ましい。
モノハロゲン化炭化水素(a3)としては、炭素数1〜3のモノハロゲン化アルカン及び炭素数3のモノハロゲン化アルケンが使用できる。モノハロゲン化アルカンとしては、モノクロロメタン、モノブロモメタン、モノクロロエタン、モノブロモエタン、2−ブロモプロパン、1−クロロプロパン及び2−クロロプロパン等が挙げられる。モノハロゲン化アルケンとしては1−クロロプロペン、1−ブロモプロペン、2−ブロモプロペン及び2−クロロプロペン等が挙げられる。
これらのうち、モノクロロメタン、モノブロモメタン、2−ブロモプロペン、1−クロロプロペン及び2−クロロプロペンが好ましく、さらに好ましくはモノクロロメタン、2−ブロモプロペン、特に好ましくはモノクロロメタンである。これらは単独で、または混合して使用してもよい。
ジハロゲン化炭化水素(a4)としては、脂肪族ジハロゲン化炭化水素等が使用でき、炭素数1〜3のジハロゲン化アルカン及び炭素数2〜3のジハロゲンル化アルケン等が用いられる。
ジハロゲン化アルカンとしては、ジクロロメタン、ジブロモメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジブロモエタン、1,1−ジクロロプロパン及び1,1−ジブロモプロパン等が挙げられる。
ジハロゲン化アルケンとしては、1,2−ジクロロエチレン、1,2−ジブロモエチレン、1,3−ジクロロプロペン、2,3−ジクロロ−1−プロペン、1,3−ジブロモプロペン及び2,3−ジブロモ−1−プロペン等が挙げられる。
これらのうち、塗膜への耐水性等の観点から、ジハロゲン化アルカンが好ましく、さらに好ましくはジクロロメタン、ジブロモメタン及び1,2−ジクロロエタン、特に好ましくはジクロロメタン及びジブロモメタンである。これらは単独で、または混合して使用してもよい。
エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン及びエピブロモヒドリン等が挙げられる。このうち好ましいのはエピクロルヒドリンである。
エポキシ化合物は、たとえば、非還元性の二又は三糖類(a1)とアルキレンオキシド(a2)を反応させて得られるアルキレンオキシド化合物(a12)を用いて次のように製造され得る。
(1)アルキレンオキシド化合物(a12)とジハロゲン化炭化水素(a4)とを反応させ、反応生成物(a124)を得る。次いでエピハロヒドリン(a5)を反応させて最終反応生成物であるエポキシ化合物(a1245)を得る。
(2)アルキレンオキシド化合物(a12)と、モノハロゲン化炭化水素(a3)及びジハロゲン化炭化水素(a4)とを反応させ、反応生成物(a1234)を得る。次いでエピハロヒドリン(a5)を反応させて最終反応生成物であるエポキシ化合物(a12345)を得る。
(3)アルキレンオキシド化合物(a12)とエピハロヒドリン(a5)とを反応させ、最終反応生成物であるエポキシ化合物(a125)を得る。
非還元性の二又は三糖類(a1)とアルキレンオキシド(a2)との付加反応には、公知の方法(特開2004−224945号公報等)等が適用でき、アニオン重合、カチオン重合又は配位アニオン重合等のいずれの形式で実施してもよい。また、これらの重合形式は単独でも、重合度等に応じて組み合わせて用いてもよい。
アルキレンオキシド(a2)の付加反応には公知の反応触媒(特開2004−224945号公報等)等が使用できる。なお、反応溶媒として以下に説明するアミドを用いる場合には反応触媒を用いる必要がない。
反応触媒を使用する場合、その使用量(重量%)は、非還元性の二又は三糖類(a1)とアルキレンオキシド(a2)との合計重量に基づいて、0.01〜1が好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.8、特に好ましくは0.05〜0.6である。この範囲であると、経済性(製造の所要時間及び触媒コスト等)及び生成物の純度(単分散性等)等がさらに良好となる。
反応触媒を使用する場合、反応触媒は反応生成物から除去することが好ましく、除去方法としては、合成アルミノシリケートなどのアルカリ吸着剤{例えば、商品名:キョーワード700、協和化学工業(株)製}を用いる方法(特開昭53−123499号公報等)、キシレン又はトルエンなどの溶媒に溶かして水洗する方法(特公昭49−14359号公報等)、イオン交換樹脂を用いる方法(特開昭51−23211号公報等)及びアルカリ性触媒を炭酸ガスで中和して生じる炭酸塩を濾過する方法(特公昭52−33000号公報)等が挙げられる。
反応触媒の除去の終点としては、JIS K1557−1970に記載のCPR(Controlled Polymerization Rate)値が20以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下である。
反応には公知の反応容器(特開2004−224945号公報等)等が使用できる。反応雰囲気としては、アルキレンオキシド(a2)を反応系に導入する前に反応装置内を真空または乾燥した不活性気体(アルゴン、窒素及び二酸化炭素等)の雰囲気下とすることが好ましい。また、反応温度(℃)としては80〜150が好ましく、さらに好ましくは90〜130である。反応圧力(ゲージ圧:MPa、以下同じ)は0.8以下が好ましく、さらに好ましくは0.5以下である。
反応終点の確認は、次の方法等により行うことができる。すなわち、反応温度を15分間一定に保ったとき、反応圧力の低下が0.001MPa以下となれば反応終点とする。所要反応時間は通常4〜12時間である。
アルキレンオキシド(a2)の付加反応の工程には、反応溶媒を用いることができる。反応溶媒としては、活性水素を持たないものが好ましく、さらに好ましくは非還元性の二又は三糖類(a1)、アルキレンオキシド(a2)及び(a2)との反応により生成する生成物(a12)を溶解するものが好ましい。
このような反応溶媒としては、炭素数3〜8のアルキルアミド及び炭素数5〜7の複素環式アミド等が使用できる。
アルキルアミドとしては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−N−プロピルアセトアミド及び2−ジメチルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール等が挙げられる。
複素環式アミドとしては、N−メチルピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム及びN,N−ジメチルピロールカルボン酸アミド等が挙げられる。
これらのうち、アルキルアミド及びN−メチルピロリドンが好ましく、さらに好ましくはDMF、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン、特に好ましくはDMF及びN−メチルピロリドン、最も好ましくはDMFである。
反応溶媒を用いる場合、その使用量(重量%)は、アルキレンオキシド化合物(a12)の重量に基づいて、20〜200が好ましく、さらに好ましくは40〜180、特に好ましくは60〜150である。
反応溶媒を用いた場合、反応後に反応溶媒を除去することが好ましい。反応溶媒の残存量(重量%)は、アルキレンオキシド化合物(a12)の重量に基づいて、0.1以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.01以下である。なお、反応溶媒の残存量は、内部標準物質を用いるガスクロマトグラフィー法にて求めることができる。
反応溶媒の除去方法としては、特開2005−132916号公報に記載の方法などが挙げられる。
アルキレンオキシド化合物(a12)とモノハロゲン化飽和炭化水素(a3)及び/又はジハロゲン化炭化水素(a4){以下、ハロゲン化炭化水素と略する場合がある}との反応は、塩基性物質による脱ハロゲン化水素反応(Williamson合成反応:反応中に逐次生成するハロゲン化水素を塩基性物質により中和することにより反応を駆動する)等が利用できる。
反応条件としては、例えば窒素雰囲気下、攪拌しつつ反応温度を50〜150℃とすることが挙げられる。
この反応に用いることのできる塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等)、アルカリ金属のアルコラート(炭素数1〜2:ナトリウムメチラート及びカリウムエチラート等)、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸バリウム等)等が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、さらに好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
この場合、塩基性物質の使用量は、塩基性物質の塩基当量(eq.)/ハロゲン化炭化水素のハロゲンの当量(eq.)比が、1〜1.5となる量が好ましく、さらに好ましくは1.05〜1.4となる量、特に好ましくは1.1〜1.3となる量である。
反応終了後は生成した中和塩及び残存する塩基性物質を除去することが好ましく、その方法としては、(1)まず生成した中和塩等を濾過により取り除き、次いで残存する塩基性物質等を吸着剤等を用いて除去する方法、(2)有機溶剤による抽出する方法等が適用できる。
(1)の方法のうち、吸着剤等を用いて除去する方法は、アルキレンオキシド(a2)の付加反応の反応触媒の除去と同様にして除去できる。
(2)の抽出する方法とは、反応生成物に水と有機溶剤(ヘキサン、トルエン、キシレン等の水に対する溶解性の極めて低いもの)とを加え、振とうすることにより反応生成物を有機溶剤層に抽出し、中和塩及び塩基性物質を水層に分離する方法である。なお、有機溶剤層は、さらに脱イオン水等で洗浄することが好ましい。反応生成物:水:有機溶剤の体積比はほぼ1:1:1が適当である。このとき、水に対して1〜5重量%の食塩を加えると水相と有機相の分離性が改善されることがある。
(2)の場合、最終的には(1)の方法を併用して中和塩及び塩基性物質を完全に除去することが好ましい。
塩基性物質の除去の終点としては、JIS K1557−1970に記載のCPR(Controlled Polymerization Rate)値が20以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下である。
さらに水分を除去することが好ましい。この場合、減圧{ゲージ圧(以下同じ)−0.05〜−0.098MPa}下100〜130℃にて1〜2時間脱水する。生成物中の水分は0.1重量%以下、さらには0.05重量%以下とすることが好ましい。
なお、水分は、公知の方法で測定することができ、例えばKarl Fischer法(JIS K0113−1997、電量滴定方法)や、熱乾燥による重量減(例えば試料0.5gを130℃で1時間乾燥し、その前後の重量変化)により求めることができる。
反応容器としては、加熱、冷却及び撹拌及び滴下(圧入)が可能な耐圧性反応容器を用いることが好ましい。反応雰囲気としては、(a4)を反応系に導入する前に反応装置内を真空または乾燥した不活性気体(アルゴン、窒素及び二酸化炭素等)の雰囲気とすることが好ましい。また、反応温度(℃)としては60〜160が好ましく、さらに好ましくは80〜130である。反応圧力(ゲージ圧:MPa)は0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.3以下である。
反応終点の確認は、次の方法等により行うことができる。すなわち、反応温度を15分間一定に保ったとき、反応圧力の低下が0.001MPa以下となれば反応終点とする。所要反応時間は通常1〜6時間である。
アルキレンオキシド化合物(a12)、反応生成物(a124)又は反応生成物(a1234)と、エピハロヒドリン(a5)との反応には、(1)アルキレンオキシド化合物(a12)、反応生成物(a124)又は反応生成物(a1234)の水酸基と(a5)のエポキシ基とをエポキシ開環反応させ、次いで(2)脱ハロゲン化水素によるエポキシ環再生反応させる方法等が適用できる。
エポキシ開環反応には、反応触媒を用いることができ、このような触媒としては、アルキレンオキシド(a2)の付加反応に用いられるものと同一であり、公知の触媒(特開2004−224945号公報等)等が適用できる。
反応の終点は、エポキシ基の消滅により行うことができる。エポキシ基の定量としては、過塩素酸と第四級アンモニュウム塩(CTAB)とからハロゲン化水素(HB)を発生させてこれとエポキシ基とを反応させるセチルトリメチルアンモニュウムブロマイド(CTAB)法(JIS K7236:ISO3001:1999に準拠)が適用できる。
脱ハロゲン化水素によるエポキシ環再生反応には、生成するハロゲン化水素を中和する塩基性物質、例えばアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等)などの塩基性物質が触媒として用いられる。これらのうち、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、さらに好ましくは水酸化ナトリウムである。
これらの反応触媒は1〜20重量%程度の水溶液として用いることが好ましい。反応温度は40〜80℃程度が好ましい。
アルキレンオキシド化合物(a12)、反応生成物(a124)又は反応生成物(a1234)と、エピハロヒドリン(a5)との反応には、加熱、冷却、攪拌及び還流管付き容器を用いることができる。
反応温度(℃)は、40〜150が好ましく、さらに好ましくは60〜100である。エポキシ開環反応の雰囲気としては、乾燥した不活性気体雰囲気下が好ましい。
一方エポキシ環再生反応は、水を10〜60重量%含有する懸濁状態にて強攪拌下で、反応温度40〜90℃で行うことが好ましい。
本発明の樹脂改質剤のエポキシ当量(g/eq.)は、1000〜10000が好ましく、さらに好ましくは1300〜9000、特に好ましくは1700〜8000、最も好ましくは2000〜7000である。この範囲であると、塗膜の親水性(耐乾きムラ性)及び耐水性(防錆性)がさらに良好となる。
本発明の樹脂改質剤は、水性樹脂及び非水性樹脂のいずれにも適用することができる。これらのうち、水性樹脂に好適であり、さらに水性エポキシ樹脂に好適であり、特にカチオン電着塗料に適している。
本発明の樹脂改質剤は水性樹脂又は非水性樹脂に含まれればよいが、樹脂を合成する段階で、反応成分の一つとして用いることが好ましい。
本発明の樹脂改質剤の使用量(重量%)としては、樹脂の重量(樹脂の合成段階で用いる場合、樹脂を構成する単量体の重量)に基づいて、1〜50が好ましく、さらに好ましくは2〜48、特に好ましくは3〜45、より特に好ましくは4〜43、最も好ましくは5〜40である。この範囲であると本発明の樹脂改質剤を含んでなる樹脂を用いて製造される塗料の耐乾きムラ性がさらに良好となり、さらに塗膜の耐水性等(樹脂の持つ本来の耐水性)に悪影響を与えにくい。
本発明の樹脂改質剤を用いた塗料は、通常の方法により被塗装体に塗装することができ、電着塗装、ハケ塗り、ローラー塗装、エアスプレー塗装、エアレス塗装、ロールコーター塗装及びフローコーター塗装等の塗装方法等が適用できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、部及び%はそれぞれ重量部、重量%を表す。
以下のように、樹脂エマルション、顔料ペースト、及び脱イオン水からなるカチオン電着塗料(1)〜(8)及びカチオン電着塗料(ブランク)を調製した後、親水性(耐乾きムラ性)及び耐水性(防錆性)を評価した。
(1)樹脂エマルション
エピコート1004{シェル化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:950)}850部、評価試料{樹脂改質剤(1)〜(6)}200部、メチルイソブチルケトン(MIBK)240部及びN−メチルエタノールアミン55部にジエチレントリアミンのMIBKジケチミン化物を75%含有するMIBK溶液80部を、80℃にて6時間攪拌混合して、エポキシ樹脂溶液(1)〜(6)を得た。
また、「エピコート1004の850部」及び「評価試料200部」を「エピコート1004の950部」に変更した以外、上記と同様にしてエポキシ樹脂用液(ブランク)を得た。
一方、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI){武田薬品工業(株)製、商品名:タケネート700}850部、MIBK600部、ジブチル錫ジラウレート{和光純薬(株)製}1部及びトリメチロールプロパン225部を60〜70℃にて6時間反応させた後、この反応生成物にメチルエチルケトオキシム430部を同温度にて加え、さらにn−ブタノール35部を加え、同温度で3時間攪拌して、完全ブロック化ポリイソシアネート樹脂溶液を得た。
エポキシ樹脂溶液{(1)〜(6)又は(ブランク)}1320部と完全ブロック化ポリイソシアネート樹脂溶液570部とを20〜30℃にて混合した後、これにエチレングリコールモノブチルエーテル100部及び6%酢酸水溶液550部を加えて中和し、さらに脱イオン水{和光純薬工業(株)製、試薬特級}2200部を加えて均一混合して乳化混合液を得た。この後、減圧下(−0.05〜−0.098MPa、以下同じ)で、50〜60℃にてこの混合液から低沸点物を留去させて、約35%の樹脂エマルション{(1)〜(6)、(ブランク)}を得た。
(2)顔料ペースト
約35%の樹脂エマルション20部、二酸化チタン{石原産業(株)品、商品名:タイペーク R−930}30部、カオリン{土屋カオリン(株)品、商品名:ウルトラホワイト 90}15部、リンモリブデン酸アルミニウム{和光純薬(株)製試薬特級}3.5部、カーボンブラック{和光純薬(株)製試薬特級}1部、サンノニックSS−70{三洋化成工業(株)製、ノニオン性界面活性剤}0.5部及び脱イオン水30部をインペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器会社製、モデルED)にて最大粒度10μm以下(JIS K5600−2−5:1999に準拠して測定した。)まで分散(3000rpm×30分間 )させ、顔料ペーストを得た。
樹脂エマルション{(1)〜(6)、(ブランク)}400部と脱イオン水500部とを約25℃で均一混合し、これに顔料ペースト100部を加えて、約25℃で均一混合して、カチオン電着塗料{(1)〜(6)、(ブランク)}を得た。
また、カチオン電着塗料(ブランク)1000部と比較用添加剤(F1)10部とを均一混合してカチオン電着塗料(7)を得た。さらに、カチオン電着塗料(ブランク)1000部と比較用添加剤(F2)とを均一混合してカチオン電着塗料(8)を得た。
<実施例1>
攪拌、加熱、冷却、滴下、窒素による加圧及び真空ポンプによる減圧の可能な耐圧反応容器に、精製グラニュー糖{台糖(株)製、以下同じ}を342部(1モル部)、DMF{三菱ガス化学(株)製、以下同じ}1000部を投入した後、窒素ガスを用いて、ゲージ圧で0.4MPaになるまで加圧し0.02MPaになるまで排出する操作を3回繰り返した(以下、窒素置換と称す)。その後攪拌しつつ100℃まで昇温した後、この温度にてPO1740部(30モル部)を8時間かけて滴下し、さらに同温度にて3時間攪拌を続けて残存するPOを反応させた。次いで120℃にて減圧下にてDMFを除去し、蔗糖/PO30モル付加物(S1)を得た。DMF含有量(内部標準物質を用いるガスクロマトグラフィー法;以下同じ)は0.06%であった。
上記と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO30モル付加物(S1)624.6部(0.3モル部)、水酸化ナトリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製、水分を除いた純分換算量、以下同じ}16.8部(0.42モル部)を仕込み、減圧下120℃にて2時間脱水した。次いで同減圧のまま密閉下、100℃にてジクロロメタン{試薬特級、シグマアルドリッチジャパン社(株)(以下シグマ社と略記)製、以下同じ}17部(0.2モル部)を3時間かけて滴下し、さらに1時間100℃にて攪拌を続け完全に反応系の圧力が平衡に達したことを確認した。
1日静置後、生成した沈殿物を室温(約25℃)にてNo.2濾紙{東洋濾紙(株)製、以下同じ}を用いて濾別して粗反応液状物を得た。祖反応液状物のうち500部にイオン交換水10部を添加し、90℃になるまで加熱・攪拌した後、キョーワード700{協和化学工業(株)製、以下同じ}30部を加え、同温度にて1時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙を用いてキョーワード700を取り除いた。次いで減圧下120℃にて1時間脱水(以下、これらの触媒の除去及び脱水をキョーワード処理と略称する)して、(S1)3モル/ジクロルメタン2モルからなるポリエーテル(S2)を得た。
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、ポリエーテル(S2)627部(0.1モル部)、エピクロルヒドリン{試薬特級、和光純薬工業(株)製}9.3部(0.10モル部)及び塩化第二錫{試薬特級、和光純薬工業(株)製}0.05部を仕込み、80℃にて3時間攪拌した。エポキシ基の消失を確認後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液60部を仕込んで60℃にて6時間激しく攪拌した。静置、冷却後上澄み液をデカンテーション法にて除去した。次いで水道水100部を仕込み、激しく攪拌しては静置し、上澄み液を除去する水洗を3回繰り返し(以下、水洗処理と略称する)、上澄み液のpHが7になるのを確認した。その後、減圧下80℃にて1時間脱水して(S2)1モル/エピクロルヒドリン1モルからなる本発明の樹脂改質剤(1)を得た。樹脂改質剤(1)のエポキシ当量(g/eq.)は6400であった。
<実施例2>
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、蔗糖/PO30モル付加物(S1)832.8部(0.4モル部)、10重量%水酸化ナトリウム水溶液280部を仕込んで60℃にて激しく攪拌しつつ、エピクロルヒドリン46.3部(0.50モル部)を6時間かけて滴下した。同温度にてさらに2時間激しく攪拌した後水洗処理を実施し、80℃にて減圧下脱水して(S1)4モル/エピクロルヒドリン5モルからなる樹脂改質剤(2)を得た。樹脂改質剤(2)のエポキシ当量は4400であった。
<実施例3>
実施例1と同様な耐圧反応容器に、ラフィノース{試薬特級、和光純薬工業(株)製}504部、DMF2000部を加えて窒素置換を実施した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にてEO88部(2モル部)を2時間かけて滴下した後、同温度にて30分間攪拌を続けて残存するEOを反応させた。次いで110℃に昇温した後、この温度にてPO2610部(45モル部)を9時間かけて滴下し、さらに同温度にて3時間攪拌を続けて残存するPOを反応させた。次いで120℃にて減圧下DMFを除去し、ラフィノース/EO2モル/PO45モル付加物(S3)を得た。DMF含有量は0.02%であった。
実施例1と同様な耐圧反応容器に、(S3)640.4部(0.2モル部)、水酸化ナトリウム12.8部(0.32モル部)を仕込み、減圧下120℃にて1時間脱水した。次いで同減圧密閉下、90℃にてジクロルエタン(試薬特級、シグマ社製、以下同じ)8.5部(0.1モル部)とメチルクロライド(試薬特級、シグマ社製、以下同じ)5.1部(0.1モル部)の混合液を3時間かけて滴下した。次いで1時間100℃にて攪拌を続け完全に反応系の圧力が平衡に達したことを確認後、1日静置した。生成した沈殿物を室温(約25℃)にてNo.2濾紙を用いて濾別し、粗反応液状物を得た。さらに実施例1と同様にキョーワード処理して、(S3)2モル/ジクロルエタン1モル/メチルクロライド1モルからなるポリエーテル(S4)を得た。
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、ポリエーテル(S4)643部(0.1モル部)、エピクロルヒドリン13.9部(0.15モル部)及び塩化第二錫0.07部を仕込み、80℃にて3時間攪拌した。エポキシ基の消失を確認後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液80部を仕込んで60℃にて6時間激しく攪拌した。水洗処理の後減圧下80℃にて1時間脱水して、(S4)1モル/エピクロルヒドリン1.5モルからなる本発明の樹脂改質剤(3)を得た。樹脂改質剤(3)のエポキシ当量は4350であった。
<実施例4>
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、ポリエーテル(S3)960.6部(0.3モル部)、10重量%水酸化ナトリウム水溶液200部を仕込んで60℃にて激しく攪拌しつつ、エピクロルヒドリン37部(0.4モル部)を6時間かけて滴下した。同温度にてさらに2時間激しく攪拌した後水洗処理を実施し、80℃にて減圧下脱水して、(S3)3モル/エピクロルヒドリン4モルからなる本発明の樹脂改質剤(4)を得た。樹脂改質剤(4)のエポキシ当量は5000であった。
<実施例5>
実施例1と同様な耐圧反応容器に、精製グラニュー糖を342部(1モル部)、DMF1000部を投入した後、窒素置換を実施した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温した後、この温度にてPO870部(15モル部)を4時間かけて、続いてBO360部(5モル部)を2時間かけて滴下した。さらに同温度にて3時間攪拌を続けて残存するPO、BOを反応させた。次いで120℃にて減圧下DMFを除去し、蔗糖/PO15モル/BO5モル付加物(S5)を得た。DMF含有量(内部標準物質を用いるガスクロマトグラフィー法;以下同じ)は0.03%であった。
実施例1と同様な耐圧反応容器に、蔗糖/PO15モル/BO5モル付加物(S5)471.6部(0.3モル部)、水酸化ナトリウム26部(0.65モル部)を仕込み、減圧下120℃にて2時間脱水した。次いで同減圧のまま密閉下、100℃にて1,2−ジクロルエタン{試薬特級、シグマ社製}19.8部(0.2モル部)及び1−クロルプロパン{試薬特級、シグマ社製}15.7部(0.2モル部)の混合液を6時間かけて滴下し、さらに2時間100℃にて攪拌を続け完全に反応系の圧力が平衡に達したことを確認した。
1日静置後生成した沈殿物を室温(約25℃)にてNo.2濾紙を用いて濾別して粗反応液状物を得た。この粗反応液状物をキョーワード処理して、(S5)3モル/1,2−ジクロルエタン2モル/1−クロルプロパン2モルからなるポリエーテル(S6)を得た。
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、ポリエーテル(S6)482.8部(0.1モル部)、エピクロルヒドリン18.5部(0.2モル部)及び塩化第二錫0.1部を仕込み、80℃にて3時間攪拌した。エポキシ基の消失を確認後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液100部を仕込んで60℃にて6時間激しく攪拌した。水洗処理の後減圧下80℃にて1時間脱水して、(S6)1モル/エピクロルヒドリン2モルからなる本発明の樹脂改質剤(5)を得た。樹脂改質剤(5)のエポキシ当量は2500であった。
<実施例6>
加熱、冷却、及び攪拌可能な還流管付き反応容器に、蔗糖/PO15モル/BO5モル付加物(S5)628.8部(0.4モル部)、10重量%水酸化ナトリウム水溶液220部を仕込んで60℃にて激しく攪拌しつつ、エピクロルヒドリン46.3部(0.5モル部)を6時間かけて滴下した。同温度にてさらに2時間激しく攪拌した後水洗処理を実施し、80℃にて減圧下脱水して、(S5)4モル/エピクロルヒドリン5モルからなる本発明の樹脂改質剤(6)を得た。樹脂改質剤(6)のエポキシ当量は3350であった。
<比較例1>
実施例1と同じ耐圧反応容器に、オレイルアミン{ナイミーン O−205、日本油脂(株)製}267部(1モル部)及び水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業(株)製}0.5部を仕込み窒素置換を実施した。その後攪拌しつつ100℃まで昇温し、同温度にてEO440部(10モル部)を4時間かけて滴下した後、同温度にて1時間攪拌を続けて残存するEOを反応させた。次いでキョーワード処理を実施してオレイルアミン/EO10モル付加物からなる比較用添加剤(F1)を得た。
<比較例2>
ワンダミンAI100{ライオン(株)製、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−アルキル−2−イミダゾリンの20%水溶液}を比較用添加剤(F2)とした。
<耐乾きムラ性>
耐乾きムラ性は、特開平4−370165号公報に記載されている方法に準拠して次のようにして評価した。
カチオン電着塗料1000部をステンレスビーカーに投入し、リン酸亜鉛処理鉄板(被塗装板)を陰極に、ステンレスビーカーを陽極とし、塗料浴温度を28℃として電圧を230Vに印加して、約5分間かけて、リン酸亜鉛処理鉄板にウェット膜厚が28μmとなるようにカチオン電着塗装した。
次いで塗装したリン酸亜鉛処理鉄板を塗料浴から引き上げ、水道水約1Lにてシャワー水洗した後、25℃、50%相対湿度の条件下に、水平面に対して65度の角度で立てかけ30分間静置した。次いで温度170℃にて20分間焼付けて塗装板を得た。この塗装板の塗装面の乾きムラ痕の数を数え、これを表1に記載した。
<耐水性試験法>
耐水性試験は特開平4−370165号公報に記載されている方法に準拠して次のようにして評価した。
耐乾きムラ性試験で得た塗装板をJIS Z2371に従って500時間の塩水噴霧試験を行い、発生した錆の数を数え、これを表1に記載した。
Figure 0004756123
本発明の樹脂改質剤を用いたカチオン電着塗料(実施例1〜6)は、比較例1、2に比べて著しく防錆性(耐水性)が良好であった。また、本発明の樹脂改質剤は、標準塗料本来の防錆性を低下させることなく、耐乾きムラ性(親水性)を著しく改善できた。
本発明の樹脂改質剤は、水性塗料及び非水性塗料のいずれにも適用することができるが、これらのうち水性塗料に好適であり、特にカチオン電着塗料に極めて有用である。

Claims (7)

  1. 一般式(1)で表されるエポキシ化合物を必須成分としてなることを特徴とする樹脂改質剤。
    Figure 0004756123

    ただし、一般式(1)において、Qは非還元性の二又は三糖類のm個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基、Lは炭素数1〜3の有機基、OA及びAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、Rはグリシジル基、メチル基、エチル基、プロピル基、プロペニル基又は水素原子を表し、少なくとも1個のRはグリシジル基であり、nは1〜30の整数、mは2〜4の整数、OA及びAOの総数は50〜300、tは0〜4の整数を表し、R、OA、AO、(OA)n、(AO)n、Q、L、n、mは、それぞれ同じでも異なってもよい。
  2. Qが蔗糖の3個の1級水酸基から水素原子を除いた反応残基である請求項1に記載の樹脂改質剤。
  3. エポキシ当量が1,000〜10,000g/eq.である請求項1又は2に記載の樹脂改質剤。
  4. 樹脂及び請求項1〜のいずれかに記載の樹脂改質剤からなり、この樹脂改質剤を樹脂の重量に基づいて5〜50重量%含有してなる改質樹脂組成物。
  5. 請求項に記載の改質樹脂組成物を含有してなる塗料。
  6. 請求項に記載の改質樹脂組成物を含有してなるカチオン電着塗料。
  7. 塗料及び請求項1〜のいずれかに記載の樹脂改質剤とからなり、この樹脂改質剤を塗料の重量に基づいて0.1〜5重量%含有してなる塗料組成物。
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