JP4754712B2 - 脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法、脂環式(メタ)アリルエステル化合物、該化合物の製造方法、該化合物を含有するプラスチックレンズ用組成物、該組成物を硬化してなるプラスチックレンズ及びその製造方法 - Google Patents
脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法、脂環式(メタ)アリルエステル化合物、該化合物の製造方法、該化合物を含有するプラスチックレンズ用組成物、該組成物を硬化してなるプラスチックレンズ及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂環式構造を持つ多塩基酸のアルキルエステルと(メタ)アリルアルコールとのエステル交換反応により、分子内に対応する脂環式構造を含有する(メタ)アリルエステルモノマー(以下、「脂環式(メタ)アリルエステルモノマー」と略。)を製造する方法、この方法によって製造された脂環式(メタ)アリルエステルモノマーと多価アルコールを原料に用いて脂環式(メタ)アリルエステル化合物を製造する方法及びこの方法によって製造される脂環式(メタ)アリルエステル化合物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、該脂環式(メタ)アリルエステル化合物を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用組成物及び該組成物を硬化してなるプラスチックレンズ並びに該プラスチックレンズの製造方法に関する。
【0003】
またさらに、染色むらの発生を抑制し、かつ型の損傷を抑制することができるプラスチックレンズが製造可能な脂環式(メタ)アリルエステル化合物を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用組成物及び該組成物を硬化して得られるプラスチックレンズ並びに該プラスチックレンズの製造方法に関する。
【0004】
なお、本明細書に記載の「(メタ)アリルアルコール」とは、アリルアルコール、メタリルアルコール及び/または両者の混合物のいずれかを意味する。また、本明細書に記載の「(メタ)アリルエステルモノマー」とは、アリルエステルモノマー、メタリルエステルモノマー及び/または両者の混合物のいずれかを意味する。さらに、本明細書に記載の「(メタ)アリルエステル化合物」とは、アリルエステル化合物、メタリルエステル化合物及び/または両者の混合物のいずれかを意味する。
【0005】
【従来の技術】
脂環式構造を持つ多塩基酸のアルキルエステルをアリルアルコールまたはメタリルアルコールと反応させることによって製造される脂環式(メタ)アリルエステルモノマーは、反応性の高いモノマーである。各種架橋剤や反応性希釈剤として用いられるほか、そのもの自身の重合物も、電気特性、寸法安定性、耐熱性、耐候性、耐薬品性、機械的特性に優れ各種成形品、積層板、化粧板等に広く使用できる。また近年、優れた光学特性を持つこともわかり、光学材料としても使用されつつある。
【0006】
従来、ポリエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂は、重合反応がアクリル系樹脂に比較すると遅いので、重合反応をコントロールしやすい。故に、均一な重合反応が可能であり、ポリエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂由来のプラスチックレンズは、光学ひずみが少ない長所を有する。
【0007】
また、ポリジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂由来のプラスチックレンズの染色性についても、注型成形法で得られたプラスチックレンズを高温下で染色液につける一般的な手法により染色する場合、染色濃度については他樹脂由来のプラスチックレンズに対して優れていることが知られている。
【0008】
しかし、それでもポリジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂由来のプラスチックレンズを染色する場合に染色ムラを生ずるという欠点を有していた。
【0009】
上記欠点の解決方法として、国際出願公開特許WO99/17137号公報あるいは同WO99/38899号公報では、脂環式構造を有するポリカルボキシレート構造を含有するアリルエステル化合物の使用が開示されている。これらには、プラスチックレンズの染色性に要求される均一な染色が可能であること、すなわち染色むらの低減に関して改善効果はあることが開示されている。
【0010】
しかし、上記アリルエステル化合物は、その原料であるアリルエステルモノマーの製造方法によっては、レンズに代表される光学材料用途組成物に要求される長期保存安定性を満たすことができないことがある。
【0011】
一般的なこの種のアリルエステルモノマー及びメタリルエステルモノマーの製造方法としては、
1)カルボン酸クロライドとアルコールを原料とする合成法
2)カルボン酸のアルカリ塩とアルキルハライドを原料とする合成法
3)カルボン酸とアルコールを原料とする合成法
等が知られている。
【0012】
しかし、これらの方法を本発明に関係する化合物の製造に用いようとした場合には、1)の方法は原料の酸クロライドが高価であるという欠点がある。
【0013】
2)の方法を適用した場合には、アルキルハライドが加水分解されて(メタ)アリルアルコールになる副反応がかなりの割合で起こり、原料と副生物との分離回収等の操作が複雑になる上に、コストもかかるといった欠点がある。
【0014】
3)の方法では、一般に強酸触媒を使用するが、通常用いられる酸触媒に対して(メタ)アリルアルコールが安定でなく、ジ(メタ)アリルエーテルを副生するという欠点がある。また、(メタ)アリルアルコールの収率の低さ以外にも、触媒として硫酸やp−トルエンスルホン酸を用いた場合には、これらの触媒から対応するアリルエステルが副生してしまい、これらのスルホン酸アリルエステルと目的物である脂環式(メタ)アリルエステルモノマーとの分離が困難であり、ひいては生成物の長期の保存安定性が比較的良くなく、生成物の長期の保存安定性が必要な光学材料用途組成物等の用途には対応できない場合があることがわかった。
【0015】
なお、本明細書記載の「ジ(メタ)アリルエーテル」とは、ジアリルエーテル、ジメタリルエーテル、アリルメタリルエーテル及び/又はこれらの混合物のいずれかを意味する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では上記のような従来技術の欠点を考慮し、脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの原料として、従来用いられたことの無かった脂環式構造を持つ多塩基酸のアルキルエステルと(メタ)アリルアルコールとをエステル交換触媒の存在下に反応させる脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法の提供、該脂環式(メタ)アリルエステルモノマーを用いる末端に(メタ)アリルエステル基を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物の製造方法及び該脂環式(メタ)アリルエステル化合物を提供することを目的とする。
【0017】
さらには、該脂環式(メタ)アリルエステル化合物を含有する、光学材料、特にプラスチックレンズの製造に好適なプラスチックレンズ用組成物の提供、該プラスチックレンズ用組成物を硬化してなるプラスチックレンズ及びその製造方法の提供を目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題を解決すべく研究を重ねた結果、対応する脂環式構造を持つ多塩基酸の低級脂肪族アルキルエステルと、(メタ)アリルアルコールをエステル交換反応により、低級脂肪族アルコールを留去しながら反応させることにより、目的とする脂環式(メタ)アリルエステルモノマーを製造できること、さらにこの脂環式(メタ)アリルエステルモノマーを用い多価アルコールとエステル交換反応により生成する分子末端に(メタ)アリルエステル基を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物を製造し、その脂環式(メタ)アリルエステル化合物が光学用途に好適に使用できることを見いだし本発明を完成させた。
【0019】
即ち、本発明(I)は、脂環式構造を持つ多塩基酸のアルキルエステルとアリルアルコール及び/又はメタリルアルコールとをエステル交換触媒の存在下に反応させることを特徴とする脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法である。
【0020】
また、本発明(II)は、本発明(I)によって製造された脂環式(メタ)アリルエステルモノマーと多価アルコールとを、触媒の存在下、エステル交換反応して製造することを特徴とする一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物の製造方法、及び該製造方法によって製造することを特徴とする、一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し構造を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物である。
一般式(1)
【0021】
【化5】
一般式(2)
【0022】
【化6】
【0023】
(一般式(1)及び一般式(2)中、R1はそれぞれ独立にアリルまたはメタリル基のいずれかを表し、Xはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表す。Yはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコ−ルから誘導された有機残基を表す。ただし、Xはエステル結合によって、さらに上記一般式(1)を末端基とし、上記一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造あるいはR1を有することができ、Yはエステル結合によって、さらに上記一般式(1)を末端基とし、上記一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造を有することができる。)
【0024】
また、本発明(III)は、本発明(II)の脂環式(メタ)アリルエステル化合物を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用組成物である。
【0025】
また、本発明(IV)は、本発明(III)のプラスチックレンズ用組成物中に含まれる全硬化性成分100質量部に対して、少なくとも1種以上のラジカル重合開始剤0.1質量部〜10質量部を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用組成物である。
【0026】
さらに、本発明(V)は、本発明(III)又は本発明(IV)に記載のプラスチックレンズ用組成物を硬化して得られるプラスチックレンズである。
【0027】
さらに、本発明(VI)は、本発明(V)に記載のプラスチックレンズの製造方法である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
まず、本発明(I)の脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法について説明する。
【0029】
本発明(I)に用いられる脂環式構造を持つ多塩基酸エステルとしては、好ましくは他の置換基を有していてもよい5員環〜7員環のシクロアルカンのジカルボン酸エステル、トリカルボン酸エステル、テトラカルボン酸エステル等が挙げられる。例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸のジエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸のトリエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸のテトラエステル、アルキル置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のジエステル、及びハロゲン置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のジエステル等が挙げられる。
【0030】
ここでいう「アルキル」とは炭素数1〜炭素数10の分岐を有してもよいアルキル基を指し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。また、「ハロゲン」の具体例としては塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0031】
反応性を考慮すると、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸のジエステル、5−アルキル置換のシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のジエステルあるいは5−ハロゲン置換のシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のジエステルが好ましく、さらに好ましくは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のジエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸のジエステルである。
【0032】
また、本発明(I)に用いられる脂環式構造を持つ多塩基酸エステルのエステル成分としては、エステル交換反応が可能な基であれば特に制限はない。具体的には例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基等を挙げることができる。中でも、(メタ)アリルアルコールとのエステル交換の際に生成するアルコールは、(メタ)アリルアルコールよりも沸点の低いものが望ましいことから、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基が望ましい。
【0033】
本発明でいう「脂環式(メタ)アリルエステルモノマー」とは、前記のとおり、分子内に脂環式構造を有し且つその脂環式構造に直接結合したカルボン酸基が(メタ)アリルアルコール由来の構造に基づくエステル構造を有するものである。
【0034】
具体的には、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルエステル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメタリルエステル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アリルメタリルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジメタリルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸アリルメタリルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリアリルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリメタリルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸アリルジメタリルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸ジアリルメタリルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラアリルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸トリアリルメタリルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジアリルジメタリルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸アリルトリメタリルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメタリルエステル、5−アルキル置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジアリルエステル、5−アルキル置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸アリルメタリルエステル、5−アルキル置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジメタリルエステル、5−ハロゲン置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジアリルエステル、5−ハロゲン置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸アリルメタリルエステル、5−ハロゲン置換シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ジメタリルエステル等を挙げることができる。
【0035】
本発明(I)で用いるエステル交換触媒としては、エステル基を活性化させアルコールとの反応を起こさせるものなら、基本的にはどのような触媒でも用いることが出来る。例えば
・アルカリ金属元素そのものと該元素の酸化物、弱酸塩、アルコラート、及び水酸化物、
・アルカリ土類金属元素そのものと該元素の酸化物、弱酸塩、アルコラート、及び水酸化物、
・Hf、Mn、U、Zn、Cd、Zr、Pb、Ti、Co、Snの各元素そのものと該元素の酸化物、水酸化物、無機酸塩、アルコキシド、有機酸塩及び有機金属錯体、
・ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、及びジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物、又はテトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、及びテトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート等の有機チタン化合物等の有機金属化合物、
・ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等の3級アミン、
等を挙げることができる。
【0036】
中でも、
・有機酸及び/または無機酸のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属の水酸化物及び/または酸化物の組み合わせ、
・ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物、
・テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネート、
・炭酸カリウムや炭酸カルシウム等の炭酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類塩、
・カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルキルアルコキシド、
・ジメチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等の3級アミン、
・アセチルアセトンハフニウム等のハフニウムの有機金属錯体、
等を用いることが好ましい。これらは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0037】
中でも有機酸及び/または無機酸のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属の水酸化物及び/または酸化物の組み合わせは、反応終了後に触媒成分が析出し、濾過のみによって生成物と触媒を分離できる。この特性は、工業的な製造を考慮した場合には特に好ましいといえる。
【0038】
触媒として用いるアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物としては具体的には、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムであるが、特に水酸化カルシウム、酸化カルシウムが性能的にみて好ましい。
【0039】
また、共存させる無機酸または有機酸のアルカリ金属塩としては具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ルビジウム、燐酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウムなどであるが、特に酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウムが性能的にみて好ましい。
【0040】
有機酸及び/または無機酸のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属の水酸化物及び/または酸化物の組み合わせにおいて好ましいものとしては、水酸化カルシウムと酢酸セシウムの組み合わせ、酸化カルシウムと酢酸セシウムの組み合わせ、水酸化カルシウムと酢酸ルビジウムの組み合わせ、水酸化カルシウムと酢酸カリウムの組み合わせ、酸化カルシウムと酢酸カリウムの組み合わせ、水酸化カルシウムと酢酸ナトリウムの組み合わせ、酸化カルシウムと酢酸ナトリウムの組み合わせであり、特に好ましい組み合わせとしては、水酸化カルシウムと酢酸セシウムの組み合わせ、水酸化カルシウムと酢酸カリウムの組み合わせ、水酸化カルシウムと酢酸ルビジウムの組み合わせ、酸化カルシウムと酢酸カリウムの組み合わせである。
【0041】
これらの使用比率としては、アルカリ土類金属の水酸化物及び/または酸化物1質量部に対し、有機酸及び/または無機酸のアルカリ金属塩を0.001質量部〜1質量部の範囲であることが好ましく、特に好ましくは0.01質量部〜0.5質量部の範囲である。
【0042】
アルカリ土類金属の水酸化物及び/または酸化物に対する有機酸及び/または無機酸のアルカリ金属塩の比率がこの範囲よりも小さい場合には反応時間が長くなるし、この範囲よりも大きい場合には、反応液の着色がひどくなる恐れがあり好ましくない。
【0043】
反応の形態としては脂環式構造を持つ多塩基酸エステルと(メタ)アリルアルコールを触媒の存在下に加熱するという方法をとる。反応温度は30℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃の範囲から選ばれ、常圧または加圧下、または必要に応じて減圧下で、不活性ガス雰囲気中で行われることが望ましい。さらに、反応を効率的に行うためには、生成するアルコールを反応系外に速やかに留出させたほうがよい。
【0044】
(メタ)アリルアルコールの使用量としては、原料エステルに対して理論量は最低限必要であり、反応速度、平衡等を考慮すれば、更に過剰モル使用したほうがよい。しかし、(メタ)アリルアルコールをあまりに大過剰用いても、その過剰量に見合う効果が出ないので経済的に好ましくない。よって通常(メタ)アリルアルコールは原料エステルの理論量に対して1.2倍モル〜10倍モルの範囲、より好ましくは1.5倍モル〜4倍モルの範囲である。その際の仕込方法としては反応の最初に仕込んでもよいし、反応途中に順次加えて入ってもよい。
【0045】
触媒の使用量としては、原料エステルに対して0.01質量%〜2質量%、好ましくは0.1質量%〜1質量%程度である。この場合も、少なすぎる場合には反応速度が遅くなるし、多い場合にはその量に見合う効果が得られないばかりか、着色がひどくなり、また副反応のためにかえって収率が低下してしまう場合すらある。また、過剰の使用は触媒との分離に多大な時間や労力を要するという問題がある。
【0046】
本反応系で生成した脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの単離法としては、前述の混合触媒を用いた場合には、(メタ)アリルアルコールを留去後、ロ過等の適当な手段で触媒を分離し、次いで酸洗浄、アルカリ洗浄をするだけで、製品として使用できる精製品を得ることが出来るという大きな特徴を有する。
【0047】
また他の触媒でも、蒸留等の適当な手段で精製すれば、高品質な製品が得ることが出来る。
【0048】
次に、本発明(II)について説明する。本発明(II)は、本発明(I)によって製造された脂環式(メタ)アリルエステルモノマーと多価アルコールとを、触媒の存在下、エステル交換反応して製造することを特徴とする一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物の製造方法、及び該製造方法によって製造することを特徴とする、一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し構造を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物である。
一般式(1)
【0049】
【化7】
一般式(2)
【0050】
【化8】
【0051】
(一般式(1)及び一般式(2)中、R1はそれぞれ独立にアリルまたはメタリル基のいずれかを表し、Xはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表す。Yはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコ−ルから誘導された有機残基を表す。ただし、Xはエステル結合によって、さらに上記一般式(1)を末端基とし、上記一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造あるいはR1を有することができ、Yはエステル結合によって、さらに上記一般式(1)を末端基とし、上記一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造を有することができる。)
【0052】
本発明の一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物は、本発明(I)で方法よって製造された(メタ)アリルエステルと多価アルコールを触媒存在下、エステル交換反応を行うことで製造することができる。
【0053】
一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物の製造工程で用いられる触媒としては、一般にエステル交換反応に用いることが可能な触媒であれば特に制限はない。有機金属化合物が特に好ましく、具体的にはテトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、アセチルアセトンハフニウム、アセチルアセトンジルコニウム等を挙げることができるがこれに限定されるわけではない。中でも、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドが好ましい。
【0054】
この製造工程における反応温度には特に制限はないが、好ましくは100℃〜230℃の範囲、より好ましくは120℃〜200℃の範囲である。特に溶媒を用いた場合は、その沸点により制限を受けることがある。
【0055】
また、この製造工程では、通常溶媒を用いることはないが、必要に応じて溶媒を用いることもできる。エステル交換反応を阻害することがなければ、用いることが可能な溶媒としては特に制限はない。具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等を挙げることができるがこれに限定されるわけではない。中でもベンゼン、トルエンが好ましい。しかし、前述のように溶媒を用いることなく実施することも可能である。
【0056】
次に、この製造方法によって製造される一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し構造を有する脂環式アリルエステル化合物について説明する。
一般式(1)
【0057】
【化9】
一般式(2)
【0058】
【化10】
【0059】
(式中、R1はそれぞれ独立にアリルまたはメタリル基のいずれかを表し、Xはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表す。Yはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコ−ルから誘導された有機残基を表す。ただし、Xはエステル結合によって、さらに上記一般式(1)を末端基とし、上記一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造あるいはR1を有することができ、Yはエステル結合によって、さらに上記一般式(1)を末端基とし、上記一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造を有することができる。)
【0060】
一般式(1)において、R1はそれぞれ独立にアリルまたはメタリル基のいずれかを表す。また、一般式(1)あるいは一般式(2)において、Xはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表す。
【0061】
ここで言う「R1はそれぞれ独立に」は、一般式(1)で表される末端基の全てがアリル基であっても、全てがメタリル基であっても、一部がアリル基で一部がメタリル基であってもいいことを意味する。
【0062】
また、ここで言う「Xはそれぞれ独立に」は、一般式(1)あるいは一般式(2)で表される繰り返し単位の一例である下記構造式(1)においては、その繰り返し構造中に含まれるq+1個のXのそれぞれが独立であることを意味する。
【0063】
例えば、Yの一例として、エチレングルコールから誘導される有機残基を例にとった場合の構造式(1)を例にとると、
構造式(1)
【0064】
【化11】
【0065】
(構造式(1)において、Xはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表し、qは0又は1以上の整数を表す。)
【0066】
構造式(1)におけるq+1個のXはすべて異なった脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基(即ち、q+1種類の脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基が一つずつ)であっても、すべてが同一の脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基(即ち、1種類の脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基がq+1個)であっても、あるいはq+1個の内、いくらかは同一の脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基であり、他のいくらかは別の種類の脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基であるといった混合構造であってもいっこうに差し支えない。さらには、その混合構造も、全部が完全にランダムであっても一部は繰り返してもかまわない。
【0067】
さらに、Xの一部または全部が3個以上のカルボキシル基を有する、脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基である場合、そのXの一部又は全部はエステル結合によって、さらに一般式(1)を末端基とし、一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造あるいはR1を有することができる。すなわち、例えば、Xに3価以上の脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基の一例であるシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸から誘導された有機残基が存在した場合、本発明(II)の一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物は、下記構造式(2)で表される部分構造を有することができる。
構造式(2)
【0068】
【化12】
【0069】
(構造式(2)において、Yはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコ−ルから誘導された有機残基を表す。)
【0070】
もちろん、Xの一部又は全部が3個以上のカルボキシル基を有する、脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基である場合であっても、分岐構造が一切無くてもかまわない。
【0071】
また、カルボキシル基はそのままの状態で残存していてもかまわない。特に、Xの一部又は全部が3個以上のカルボキシル基を有する脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基である場合で分岐構造がない部分は、カルボキシル基がそのままの状態で残ることが考えられるが、本発明(II)の脂環式(メタ)アリルエステル化合物としてはいっこうに差し支えない。
【0072】
一般式(1)あるいは一般式(2)におけるXはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表す。
【0073】
ここで言う「脂環式構造を有する多価カルボン酸」の具体例としては、以下のようなものがある。1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等が挙げられる。もちろんこれらに限定されるわけではなく、さらにこれらの単体であっても2種以上の混合物であってもかまわない。
【0074】
本発明(II)の、一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物の流動性及びエステル交換反応性の点から、これらの脂環式構造を有する多価カルボン酸中で、好ましく使用されるものとしては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。より好ましくは、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びその混合物である。
【0075】
一般式(2)において、Yはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコ−ルから誘導された有機残基を表す。
【0076】
ここで言う「Yはそれぞれ独立に」とは、一般式(2)で表される繰り返し単位の一例である下記構造式(3)においては、その繰り返し構造中に含まれるm個のYそれぞれが独立であることを意味する。
【0077】
例えば、Xの一例として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導される有機残基を例にとった場合の構造式(3)を例にとると、
構造式(3)
【0078】
【化13】
【0079】
(構造式(3)において、Yはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコールから誘導される有機残基を表し、mは0又は1以上の整数を表す。)
【0080】
構造式(3)におけるm個のYは、すべて異なった多価アルコールから誘導される有機残基(即ち、m種類の多価アルコールから誘導される有機残基が1つずつ)であっても、すべて同一の多価アルコールから誘導される有機残基(即ち、1種類の多価アルコールから誘導される有機残基がm個)あっても、あるいはm個のYの内、いくらかは同一の多価アルコールから誘導される有機残基であり、他のいくらかは別の種類の多価アルコールから誘導される有機残基であるといった混合構造であってもいっこうに差し支えない。さらには、その構造も、全部が完全にランダムであっても一部は繰り返してもかまわない。
【0081】
さらに、Yの一部又は全部が3個以上の水酸基を有する多価アルコールから誘導される有機残基である場合、そのYの一部又は全部はエステル結合によって、さらに一般式(1)を末端基とし、一般式(2)を繰り返し単位とする分岐構造を有することができる。すなわち、例えばYに3価のアルコールの一例であるトリメチロールプロパンから誘導される有機残基が存在した場合、本発明(II)の、一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物は、下記構造式(4)で表される部分構造を有することができる。
構造式(4)
【0082】
【化14】
【0083】
(構造式(4)において、Xはそれぞれ独立に脂環式構造を有する多価カルボン酸から誘導される有機残基を表す。)
【0084】
もちろん、Yの一部又は全部が3個以上の水酸基を有する多価アルコールから誘導される有機残基である場合であっても、分岐構造が一切無くてもかまわない。
【0085】
また、水酸基はそのままの状態で残存していてもかまわない。特に、Yの一部又は全部が3個以上の水酸基を有する多価アルコールから誘導される有機残基である場合で分岐構造がない部分は、水酸基がそのままの状態で残ることが考えられるが、本発明(II)の脂環式(メタ)アリルエステル化合物としてはいっこうに差し支えない。
【0086】
一般式(2)におけるYはそれぞれ独立に2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコールから誘導された一種以上の有機残基を表す。ここで言う「2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価アルコール」としては、以下のようなものがある。
【0087】
まず、2価のアルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0088】
また、3価以上の多価アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタリスリトール、ソルビドール等が挙げられる。更に、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の主鎖にエーテル基を含んだ2価のアルコール等も含まれる。もちろんこれらの多価アルコールの2種以上の混合物であってもかまわない。いうまでもなく、これらの具体例に限定されるものではない。
【0089】
一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物の流動性の点から、これらの多価アルコールの中で好ましく使用されるものしては、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールが挙げられる。より好ましくは、プロピレングリコール,1,4−ブタンジオールである。
【0090】
一般式(2)で表される基の繰り返し回数に特に制限はない。様々な繰り返し回数を有する材料を混合してもかまわない。また、繰り返し回数が0である材料と繰り返し回数が1以上の整数である材料を併用してもいっこうに問題ない。ただし、繰り返し回数が0である化合物のみを用いることは本発明の目的を達成するためには好ましいことではない。
【0091】
本発明(II)の脂環式アリルエステル化合物の繰り返し単位である一般式(2)で表される基の繰り返し回数は、通常1〜50の整数であることが好ましい。繰り返し回数が50を越えた化合物のみからなる脂環式アリルエステル化合物をプラスチックレンズ用組成物に用いた場合、アリル基の濃度が低くなるために、硬化時に硬化遅延を起こしたり化合物の一部が未硬化で残存して硬化物の機械特性などの物性低下に影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。好ましくは、脂環式アリルエステル化合物中のすべての化合物の繰り返し回数が1〜50の範囲の整数であり、より好ましくは1〜30の範囲の整数であり、さらに好ましくは1〜10の範囲の整数である。
【0092】
本発明(II)の、一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物には、その製造条件によっては原料の脂環式(メタ)アリルエステルモノマーが残存することもあるが、そのままプラスチック材料に使用しても何ら差し支えない。しかし、本発明(II)の脂環式アリルエステル化合物の全量に対して原料の脂環式(メタ)アリルエステルモノマーが70質量%以上存在することは後述のプラスチックレンズ用組成物として、一般式(3)の化合物と配合する場合に、染色むらや硬化物とガラスの型を剥離する時に生じる型の損傷の点から好ましいとは言えない。
【0093】
次に、本発明(III)及び本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物について説明する。本発明(III)は、本発明(II)の脂環式(メタ)アリルエステル化合物を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用組成物である。
【0094】
また、本発明(IV)は、本発明(III)のプラスチックレンズ用組成物中に含まれる全硬化性成分100質量部に対して、少なくとも1種以上のラジカル重合開始剤0.1質量部〜10質量部を含有することを特徴とするプラスチックレンズ用組成物である。
【0095】
本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物に含有される、一般式(3)で表される化合物は、公知の方法で合成できる。例えば、ジ(メタ)アリルカーボネートと多価アルコールとを触媒の存在下、エステル交換反応による方法(特公平3−66327号公報)、(メタ)アリルアルコールとホスゲン、多価アルコールを脱塩酸しながら反応させる方法(米国特許2370565号公報、米国特許2592058号公報)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
なお、本明細書記載の「ジ(メタ)アリルカーボネート」とは、ジアリルカーボネート、ジメタリルカーボネート、アリルメタリルカーボネート及びこれらの混合物の中から選ばれる少なくとも1種の化合物を意味する。
一般式(3)
【0097】
【化15】
【0098】
(式中、Zはn個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価飽和アルコールから誘導された一種以上の有機残基を表し、nは2〜6の整数であり、R2は、アリル基またはメタリル基のいずれかを表す。ただし、それぞれのR2は、それぞれ独立である。また、sは0〜n−1の整数のいずれかであり、tは1〜nの整数のいずれかであり、且つs+t=nである。)
【0099】
一般式(3)中、Zは、2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価飽和アルコールから誘導された1種以上の有機残基を表す。ここでいう「2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価飽和アルコール」としては、以下のようなものがある。
【0100】
まず、2価の飽和アルコールの具体例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0101】
また、3価以上の多価飽和アルコールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジペンタリスリトール、ソルビドール等が挙げられる。更に、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の主鎖にエーテル基を含んだ2価の飽和アルコール等も含まれる。さらにこれらのアルコールの2種以上の混合物であってもかまわない。いうまでもなく、これらの具体例に限定されるものではない。
【0102】
これらの多価飽和アルコールの中で好ましく使用されるものしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。より好ましくは、ジエチレングリコールである。多価飽和アルコールにジエチレングリコールを用いた場合、得られるポリ(アリルカーボネート)はジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)であり、具体的にはPPG社の商品名CR−39,Akzo Nobel社の商品名Nouryset200等が挙げられる。
【0103】
一般式(3)中、R2はアリル基またはメタリル基のいずれかの基を表す。ただし、それぞれのR2はそれぞれ独立である。例えば、n=3のとき、一般式(3)は、下記構造式(5)〜構造式(7)で表される化合物の混合物として表される。
構造式(5)
【0104】
【化16】
構造式(6)
【0105】
【化17】
構造式(7)
【0106】
【化18】
【0107】
このとき、例えば構造式(5)における3個のR2は、3個ともアリル基であっても、3個ともメタリル基であっても、また、2個がアリル基で1個がメタリル基であっても、1個がアリル基で2個がメタリル基であってもいっこうに差し支えない。もちろん、構造式(6)における2個のR2も、構造式(7)におけるR2も同様である。
【0108】
一般式(3)中、Zは2個〜6個の水酸基を有する炭素数2〜炭素数20の多価飽和アルコールから誘導される一種以上の有機残基である。Zの水酸基が6を越えた整数である多価飽和アルコールから誘導された有機残基を有する化合物をプラスチックレンズ用組成物に用いた場合、硬化して得たプラスチックレンズの耐衝撃性が劣る恐れがあり、好ましくない。また、Zの水酸基が2未満の整数(即ち1)である飽和アルコールから誘導される有機残基を有する化合物をプラスチックレンズ用組成物に用いた場合、硬化して得たプラスチックレンズの耐熱性た耐溶剤性が極端に低下してしまい好ましくない。
【0109】
Zの水酸基の数をnとした場合に、sは0〜n−1の整数のいずれかであり、tは1〜nの整数のいずれかであり、且つs+t=nである。一般式(3)においてtは少なくとも1以上の整数であればよいが、最終的なプラスチックレンズの物性から、出きるだけ多くの水酸基がカーボネート基に置換されている方がよい。tがn未満である各化合物の割合にもよるが、一般式(3)で表される化合物において好ましくはt=nである化合物が80質量%以上である範囲であり、より好ましくは90質量%以上の範囲である。
【0110】
本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物中に含まれる全硬化性成分に対する、本発明(II)の脂環式アリルエステル化合物の配合量は0.1質量%〜20質量%であり、好ましくは1質量%〜15質量%である。さらに好ましくは、2〜10質量%である。0.1質量%未満では、染色むらの低減効果が発現できなくなったなる恐れがある。また、配合量が20質量%を越えることは、経済上好ましいことではない。
【0111】
なお、本明細書記載の「全硬化性成分」とは、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、及び一般式(1)で表される化合物または一般式(2)で表される化合物と共重合可能なモノマーを合わせた総量を意味する。
【0112】
一方、一般式(3)で表される化合物は60質量%〜99.9質量%であり、好ましくは75質量%〜99質量%であり、さらに好ましくは、80質量%〜98質量%である。60質量%未満では、該組成物を硬化して得たプラスチックレンズの機械特性、光学特性が低下する恐れがある。また、99.9質量%より多いと、染色不良を生じ、好ましくない。
【0113】
一方、本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物には、主に組成物の粘度調製を目的として、一般式(3)で表されるポリ(アリルカーボネート)あるいは一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物と共重合可能なモノマーを、本発明のプラスチックレンズ用組成物中に含まれる全硬化性成分に対して20質量%を越えない範囲において、1種以上加えることができる。
【0114】
該モノマーとしては、アクリル基、ビニル基、アリル基有するモノマー等が挙げられる。具体例としては、アクリル基を有するモノマーとしてはメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が、ビニル基を有するモノマーとしてはビニルアセテート、ビニルベンゾエート等が、更にアリル基を有するモノマーとしては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。もちろん、これらの具体例に限定されるものではなく、硬化して得られるプラスチックレンズの物性を損なわない範囲でジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、アリルベンゾエート等の使用も可能である。
【0115】
本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物の粘度は、注型の作業性を考慮した場合、25℃で10mPa・s〜10000mPa・sの範囲にあることが一般的であり、好ましくは、10mPa・s〜5000mPa・sの範囲にあり、さらに好ましくは、10mPa・s〜500mPa・sである。
【0116】
ここでいう「粘度」とは、回転粘度計により測定されるもので、回転粘度計の詳細については岩波理化学辞典 第3版 1977年6月1日 第3版第8刷発行に記載がある。
【0117】
該モノマーの添加量は、本発明のプラスチックレンズ用樹脂組成物中に含まれる全硬化性成分に対して、20質量%以下であり、好ましくは、10質量%以下であり、さらに好ましくは、5質量%以下である。20質量%を越えて添加すると、該組成物を硬化して得られるプラスチックレンズに求められる光学特性などの物性値が低下する恐れがあり好ましくない。更に、プラスチックレンズ用組成物に含まれるポリ(アリルカーボネート)及びアリルエステルオリゴマーの種類と配合比、硬化して得られるプラスチックレンズに求められる光学特性などの物性値によって、最適なモノマーが選択される。
【0118】
本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物には、硬化剤としてラジカル重合開始剤を添加することが可能でありかつ好ましい。
【0119】
本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物に添加可能なラジカル重合開始剤には、特に制限はない。硬化して得られるプラスチックレンズの光学特性などの物性値に悪影響を及ぼすものでなければ、公知のもので構わない。
【0120】
しかし、本発明で使用されるラジカル重合開始剤は、硬化されるべき組成物中に存在する他の成分に可溶であり、かつ30℃〜120℃でフリーラジカルを発生するものが望ましい。添加可能なラジカル重合開始剤の具体例としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化性の点から、好ましくはジイソプロピルパーオキシジカーボネートである。
【0121】
ラジカル重合開始剤の添加量は、本発明のプラスチックレンズ用組成物中に含まれる全硬化性成分に対して0.1質量部〜10質量部の範囲、好ましくは1質量部〜5質量部の範囲である。0.1質量部未満では、該組成物の硬化が不十分になる恐れがある。また、10質量部を越えて添加することは、経済上好ましくない。
【0122】
本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物には、プラスチックレンズの性能向上に使用される一般的な染料、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤や、離型剤、酸化防止剤などの添加剤を添加しても構わない。
【0123】
着色剤としては、例えば、アントラキノン系、アゾ系、カルボニウム系、キノリン系、キノンイミン系、インジゴイド系、フタロシアニン系などの有機顔料、アゾイック染料、硫化染料などの有機染料、チタンイエロー、黄色酸化鉄、亜鉛黄、クロムオレンジ、モリブデンレッド、コバルト紫、コバルトブルー、コバルトグリーン、酸化クロム、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラックなどの無機顔料などが挙げられる。
【0124】
離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アミド、フッ素系化合物類、シリコン化合物類などが挙げられる。
【0125】
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、4−tert−ブチルフェニルサリシラート等のサリシラート類、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバシートなどのヒンダートアミン類が挙げられる。
【0126】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン等のフェノール類、ジラウリル−3、3’−チオジプロオナート等の硫黄類、トリスノニルフェニルホスファイト等のリン系の酸化防止剤が挙げられる。
【0127】
染料、顔料等の着色剤、紫外線吸収剤や、離型剤、酸化防止剤などの添加剤の添加総量は、本発明のプラスチックレンズ用樹脂組成物中に含まれる全硬化性成分に対して1質量%以下であることが望ましい。
【0128】
次に、本発明(V)のプラスチックレンズについて説明する。本発明(V)は、本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物を硬化して得られるプラスチックレンズである。
【0129】
本発明のプラスチックレンズは、25℃での屈折率が1.497〜1.505の範囲にあることが好ましい。一般式(3)で表される化合物を原料とするプラスチックレンズ(屈折率1.498(25℃))を製造する際に使用される型は、同等の屈折率を有するプラスチックを製造する際にのみ適しているものである。同一の型を使用した場合、屈折率の変更はレンズの能力の変更を意味する。
【0130】
高屈折率レンズとなる組成物は、同等の能力を有するプラスチックレンズを得るためには異なる型を必要とする。従って、一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物、一般式(3)で表される化合物、及び一般式(1)の末端構造と一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式アリルエステル化合物または一般式(3)で表される化合物と共重合可能なモノマーの導入によるレンズの特性改良は、型を変更する必要がないようにするために、得られるレンズの屈折率を限定すること無しには達成できない。好ましくは、本発明のプラスチックレンズの屈折率は、25℃で1.498〜1.505であり、さらに好ましくは、1.498〜1.503である。
【0131】
最後に、本発明(VI)について説明する。本発明(VI)は、本発明(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物を硬化してなる本発明(V)のプラスチックレンズの製造方法である。
【0132】
本発明におけるプラスチックレンズ用組成物の成形加工方法には、注型成形が適している。具体的には、組成物中にラジカル重合開始剤を添加して、エラストマーガスケットやスペーサーで固定化している型へ、ラインを通して注入して、オーブン中で、熱により硬化する方法などで成形する方法などが挙げられる。
【0133】
このとき、型として使用される材質としては、金属やガラスである。一般に、プラスチックレンズの型は、注型成形の後洗浄されなければならず、そのような洗浄は通常、強アルカリ液または強酸を用いて行われる。ガラスは、金属とは異なり、洗浄によって変質しづらく、また、容易に研磨され、そして非常に表面の粗さを少なくできるという理由から、好ましく用いられている。
【0134】
本発明の(III)又は本発明(IV)のプラスチックレンズ用組成物は脂環式構造を有するので、プラスチックレンズで多く使用されているポリエチレングリコールビス(アリルカーボネート)を原料とするプラスチックレンズの屈折率1.498に容易に近づけることができる。従って、成形に用いるモールド等を変更をせずに、従来から使用している物をそのまま使用ができるという利点もある。
【0135】
成形の際の硬化温度は約30℃〜120℃、好ましくは40℃〜100℃である。また、硬化温度の操作については、硬化時の収縮やひずみを考慮すると、昇温しながら徐々に硬化する方法が好ましく、一般的には0.5時間〜100時間、好ましくは3時間〜50時間、さらに好ましくは10時間〜30時間かけて硬化するのが良い。
【0136】
本発明のプラスチックレンズの染色方法に、特に制限はない。公知のプラスチックレンズの染色法であれば、いずれの方法でも構わない。中でも、従来から一般的な方法として知られる浸漬染色法が好ましい。ここで言う「浸漬染色法」とは、分散染料を界面活性剤と共に水中に分散させて染色液を調製し、加熱下において、この染色液にプラスチックレンズを浸漬して染色する方法である。
【0137】
プラスチックレンズの染色方法は、浸漬染色法に限定されるわけではなく、他の公知の方法、例えば有機顔料を昇華させプラスチックレンズを染色する方法(特公昭35−1384号公報)、昇華性染料を昇華させてプラスチックレンズを染色する方法(特公昭56−159376号公報、特公平1−277814号公報)を用いることもできる。操作が簡便な点から、浸漬染色法がもっとも好ましい。
【0138】
以下に本発明を実施例により、詳細な説明行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0139】
【実施例】
後述のガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略す。)及び液体クロマトグラフィー(以下、「LC」と略す。)の測定条件を以下に示す。
【0140】
(GC条件)
機器;GC−14B(島津製作所(株)製)
検出器;水素炎イオン化検出器
測定方法;内部標準法(内部標準物質:酢酸n−ブチル)
インジェクション温度;220℃、
昇温条件;40℃で10分間保持し、その後5℃/分で昇温し、220℃で10分間保持する。
使用カラム;DB−WAX(J&W社製)、内径0.25mm、長さ3m
【0141】
(LC条件)
溶離液;0.1wt%燐酸水溶液:アセトニトリル=60:40(v/v)
流速;1ml/min
検出器;RI検出器
測定方法;内部標準法(内部標準物質:酢酸エチル)
使用カラム;Shodex ODSpak F−511を2本直列(昭和電工社製)
オーブン温度;40℃
【0142】
また、諸物性の測定については以下のとおりに実施した。
1.屈折率(n D )及びアッベ数(ν D )
9mm×16mm×4mmの試験片を作成し、アダコ社製「アッベ屈折率計1T」を用いて、室温における屈折率(nD)及びアッベ数(νD)を測定した。接触液はα−ブロモナフタリンを使用した。
2.粘度
東京計器株式会社製B型粘度計(B8U型)を用いて25℃で測定した。
3.ハーゼン色数の測定方法
JIS K−0071−1に記載されている方法により測定した。
4.バーコール硬度
934−1型を用い、JIS K−6911に従い測定した。
【0143】
5.染色方法及び染色むらの評価
1リットルのビーカーに0.8gのスミカロンブルーE−FBL(住友化学工業(株)製)と0.5リットルの水を加えて攪拌して溶かした。これを80℃に水浴中で加熱して、この分散染料溶液中に硬化したプラスチックレンズサンプルを重ならないようにホルダーに取り付けて、さらに80℃で10分浸漬した後、取り出した。水洗を十分行った後、30℃のオーブン中で熱風乾燥した。
得られた染色済プラスチックレンズサンプルを目視して、外観上均一に染色されずに染色むらが確認されたものを不良とした。硬化サンプルは、全個数を30個として、不良個数を数えた。
【0144】
実施例1
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(以下、「CHDM」と略す。)100g、アリルアルコール120g、水酸化カルシウム0.25g、酢酸カリウム0.05gを温度計、精留塔のついた300mlの三ツ口フラスコに仕込み、120℃に調節した油浴により加熱し反応を行った。反応の進行とともに、生成してくるメタノールを精留塔から留出させて10時間反応を行った。反応終了後、GC分析によりCHDMに対し、98.8%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルが生成していることを確認した。また、この後、系内に残っているアリルアルコールを減圧下に留去し、ろ過により触媒を除いた。ろ液はほぼ無色透明な液体であり、ハーゼン色数は5であった。
【0145】
このろ液を直接減圧蒸留して、沸点140℃〜142℃/26.6Paの無色透明な1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル121g(収率95%)を得た。上記方法で得た1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルを「サンプルA」とする。
【0146】
実施例2
水酸化カルシウム0.25gを酸化カルシウム0.25gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表1に示す。
【0147】
実施例3
水酸化カルシウム0.25gを水酸化マグネシウム0.25gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表1に示す。
【0148】
実施例4
水酸化カルシウム0.25gを水酸化バリウム0.25gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
実施例5
酢酸カリウム0.05gを酢酸ナトリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0151】
実施例6
酢酸カリウム0.05gを燐酸三カリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0152】
実施例7
酢酸カリウム0.05gを炭酸水素ナトリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0153】
実施例8
酢酸カリウム0.05gを硫酸カリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0154】
実施例9
酢酸カリウム0.05gを塩化カリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0155】
実施例10
酢酸カリウム0.05gを炭酸カリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0156】
実施例11
酢酸カリウム0.05gを炭酸リチウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0157】
実施例12
酢酸カリウム0.05gを炭酸ナトリウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0158】
実施例13
酢酸カリウム0.05gを炭酸ルビジウム0.05gに変えた他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
実施例14
CHDM100g、メタリルアルコール149g、水酸化カルシウム0.25g、酢酸カリウム0.05gを温度計、精留塔のついた300mlの三ツ口フラスコに仕込み、120℃に調節した油浴により加熱し反応を行った。反応の進行とともに、生成してくるメタノールを精留塔から留出させて15時間反応を行った。反応終了後、GC分析によりCHDMに対し、94.0%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメタリルが生成していることを確認した。
【0161】
実施例15
CHDM100gの代わりに1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル100gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表3に示す。
【0162】
実施例16
CHDM100gの代わりに1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル100gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表3に示す。
【0163】
実施例17
CHDM100gの代わりに1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリメチル129gを使用し、かつアリルアルコールの使用量を120gから180gに変更した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、LCでの収率を表3に示す。
【0164】
実施例18
CHDM100gの代わりに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラメチル158gを使用し、かつアリルアルコールの使用量を120gから240gに変更した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、LCでの収率を表3に示す。
【0165】
実施例19
CHDM100gの代わりに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル114gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、LCでの収率を表3に示す。
【0166】
実施例20
CHDM100gの代わりに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソプロピル128gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、LCでの収率を表3に示す。
【0167】
【表3】
【0168】
実施例21
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代え水酸化カルシウム2.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0169】
実施例22
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代え炭酸カリウム1.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0170】
実施例23
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代えテトライソプロピルチタネート2.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0171】
実施例24
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代えナトリウムメトキシド2.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0172】
実施例25
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代え、ジブチル錫オキシド2.0gを使用し、圧力を常圧から0.6MPa(ゲージ圧)に変更し、油浴温度を120℃から170℃に変更した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0173】
実施例26
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代え、アセチルアセトン亜鉛2.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0174】
実施例27
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代え、アセチルアセトンハフニウム2.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0175】
実施例28
水酸化カルシウム0.25g−酢酸カリウム0.05gに代え、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン2.0gを使用した他は実施例1と同様の条件で反応を開始した。反応時間、GCでの収率を表4に示す。
【0176】
【表4】
【0177】
比較例1
1,4−シクロヘキサンカルボン酸100g、アリルアルコール120g、ベンゼン100g、硫酸1gを実施例1と同じ反応装置に仕込み、120℃に調節した油浴で加熱して反応を行った。23gの水が析出したところで反応を終了し、GC分析を行ったところ、ジアリルエーテル5%(対1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル)を含有することが確認された。液を1lの分液ロートに移し、1%水酸化ナトリウム水溶液50gを投入し、分液操作を行い、水相を除去した。同様の操作をもう一度繰り返した後、油相中のベンゼン及びアリルアルコールをエバポレーターで減圧留去した。その後、エバポレーターで留去されなった成分を直接減圧蒸留して、沸点140℃〜142℃/26.6Paで微黄色透明液体の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル177.7g(収率94%)を得た。この液の硫黄分の分析を塩素硫黄分析装置TSX−10型(三菱化学社製)を行ったところ、30質量ppm含有することが確認された。この方法によって得られた1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリルを「サンプルB」とする。
【0178】
サンプルA及びサンプルBの保存安定性の評価
製造直後のサンプルA及びサンプルB及び製造後25℃で1年間保存したサンプルA及びサンプルBのハーゼン色数を測定した。その結果を表5に示す。
【0179】
【表5】
【0180】
実施例29(脂環式アリルエステル化合物の製造)
蒸留装置のついた1リットル三ツ口フラスコにサンプルA120.0g、プロピレングリコール24.1g、ジブチル錫オキサイド0.12gを仕込んで窒素気流下、180℃に加熱して生成してくるアリルアルコールを留去した。アリルアルコールが27.7g程度留出したところで、反応系内を1.33kPaまで減圧にし、アリルアルコールを留出速度を速めた。理論量のアリルアルコールが留出した後、更に1時間加熱して、180℃−0.13kPaで1時間保持した後、反応器を冷却して、アリルエステル化合物(以下「サンプルC」とする。)を107.5g得た。
【0181】
ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、GC−14B、水素炎イオン化検出器 使用カラムOV−17 0.5m 温度条件160℃一定)で分析したところ、サンプルCは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル13質量%を含んでいた。
図1にサンプルCの400MHz1H−NMRスペクトルを記す。
【0182】
比較例2(脂環式アリルエステル化合物の製造)
蒸留装置のついた1リットル三ツ口フラスコにサンプルB120.0g、プロピレングリコール24.1g、ジブチル錫オキサイド0.12gを仕込んで窒素気流下、180℃に加熱して生成してくるアリルアルコールを留去した。アリルアルコールが27.7g程度留出したところで、反応系内を1.33kPaまで減圧にし、アリルアルコールを留出速度を速めた。理論量のアリルアルコールが留出した後、更に1時間加熱して、180℃−0.13kPaで1時間保持した後、反応器を冷却して、アリルエステル化合物(以下「サンプルD」とする。)を107.5g得た。
【0183】
ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、GC−14B、水素炎イオン化検出器 使用カラムOV−17 0.5m 温度条件160℃一定)で分析したところ、サンプルDは、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル12質量%を含んでいた。
図2にサンプルDの400MHz1H−NMRスペクトルを記す。
【0184】
実施例30(レンズの屈折率、アッベ数、バーコール硬度の測定及び染色むらの評価)
表6に記したように、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(PPG社製 商品名CR−39)95.0質量部、サンプルC5質量部、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)を3質量部を配合して、混合攪拌して完全に均一にした溶液組成物とし、そのときの粘度を測定した。その後、減圧可能なデシケーターに、この溶液が入った容器を入れ、約15分ほど真空ポンプで減圧することにより、溶液中の気体を脱気した。この溶液組成物を、眼鏡プラスチックレンズ用のガラス製の型と樹脂性のガスケットによって組み立てられた型に気体が混入しないように慎重に注射器にて注入した後、オーブン中で、40℃で7時間、40℃〜60℃まで10時間、60℃〜80℃まで3時間、80℃で1時間、85℃で2時間のプログラム昇温加熱により硬化させた。
【0185】
また、得られたレンズの屈折率、アッベ数、バーコール硬度の測定結果、及び染色むらの評価結果を表6に示す。
【0186】
【表6】
【0187】
比較例3〜比較例4
表6に示した配合で、組成物を調整して、実施例1と同様な方法で、粘度測定を行い、その後硬化し、レンズの屈折率、アッベ数、バーコール硬度の測定及び染色むらの評価を行った。結果を表6に示す。
【0188】
【発明の効果】
本発明では、脂環式構造を持つ多塩基酸の(メタ)アリルエステル原料として、従来用いられたことの無かった脂環式構造を持つ多塩基酸のアルキルエステルと(メタ)アリルアルコールを用いて、エステル交換触媒の存在下に反応させて、対応する脂環式(メタ)アリルエステルモノマーを製造することにより、ジアリルエーテル等の副生成物を生じることのない安価な工業的製造方法を提供することが可能になり、優れた長期保存安定性を有する(表5参照)。また、この方法によって得られた脂環式(メタ)アリルエステルモノマーと多価アルコールから製造される本発明の脂環式(メタ)アリルエステル化合物は、ポリアリルカーボネート樹脂と併用することによって、染色性の良好なプラスチックレンズになることは明らかである(表6参照)。
【0189】
【図面の簡単な説明】
以下に示す図は実施例に記載した脂環式アリルエステル化合物の400MHz1H−NMRスペクトルチャートである。
【図1】図1は実施例29で得た脂環式アリルエステル化合物の400MHz1H−NMRスペクトルチャートである。
【図2】図2は比較例1で得た脂環式アリルエステル化合物の400MHz1H−NMRスペクトルチャートである。
Claims (3)
- 脂環式構造を持つ多塩基酸のアルキルエステルとアリルアルコール及び/又はメタリルアルコールとをエステル交換触媒の存在下に反応させることを特徴とする脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法。
- エステル交換触媒が、有機酸及び/または無機酸のアルカリ金属塩とアルカリ土類金属の水酸化物及び/または酸化物の組み合わせ、有機金属錯体、有機金属化合物、3級アミン、炭酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩、並びに、アルカリ金属のアルキルアルコキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載の脂環式(メタ)アリルエステルモノマーの製造方法。
- 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の方法によって製造された脂環式(メタ)アリルエステルモノマーと多価アルコールとを、触媒の存在下、エステル交換反応して製造することを特徴とする下記一般式(1)の末端構造と下記一般式(2)の繰り返し単位を有する脂環式(メタ)アリルエステル化合物の製造方法。
一般式(1)
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