JP4752219B2 - 低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムおよびその製造方法並びに低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムよりなる容器 - Google Patents

低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムおよびその製造方法並びに低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムよりなる容器 Download PDF

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Description

本発明は、低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムおよびその製造方法ならびに低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムよりなる容器に関する。より詳しくは、臭気が少なく、フィッシュアイ等の異物が少なく外観が良好で、耐ピンホール性、耐ブロッキング性、耐破袋性等に優れている上に、製膜や製袋の各工程における加工適性がよい低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムおよびその製造方法並びに低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムよりなる内容物に対する臭気の移行性の少ない容器、さらに上記特徴に加え、フィッシュアイ等の異物が少なく外観が良好で、耐ピンホール性、耐ブロッキング性、耐破袋性等に優れる容器に関するものである。
線状低密度ポリエチレン系フィルム等のポリエチレン系樹脂フィルムは低温ヒートシール性、引裂強度、耐衝撃性、透明性等に優れており、食品や医療材料などの包装材や容器として広い分野において使用されている。
近年、液体の包装体として、利便性、省資源、衛生性、環境に対する負荷低減等よりバッグインボックスやスタンディングパウチ等の包装形態が広い分野で使用されてきている。
例えば、液体包装容器の一つであるバッグインボックスは、注出口を有した薄肉成形容器やフィルム袋の内装と、段ボール箱等の外装とから構成される複合形態の液体容器であり、軽量、強くて丈夫、持ち運びに便利、廃棄処理が容易、流通コストが安価、化学的に安定、無菌包装などの優れた衛生性、容器回収が不要、商品性があるなど、多くの特長から広く利用されている。
従来、バッグインボックスの内装袋は、柔軟で耐ピンホール性に優れ、あるいはヒートシールし易いことから、エチレンー酢酸ビニル共重合体フィルムあるいはポリエチレンとエチレンー酢酸ビニル共重合体とを共押出し成型して得られる積層フィルムからなる袋が使用されてきた(例えば、特許文献1等参照)。ところが、このような樹脂フィルムからなる袋は、ヒートシール性やヒートシール強度の点で十分に満足できるものでなく、またエチレンー酢酸ビニル共重合体フィルムは酢酸臭があり、これらの改善が要望されていた。
特開昭59−64357号公報
上記課題解決方法として、低密度ポリエチレンやエチレン−αオレフィン共重合体からなるフィルムに移行してきている。特に、臭気の点よりシングルサイト触媒で重合されたエチレン−αオレフィン共重合体からなるフィルムによる改善技術が多数開示されている(例えば、特許文献2〜6参照)。
特開平9−132270号公報 特開平9−286458号公報 特開平10−17682号公報 特開平10−14370号公報 特開平10−168244号公報
上記の課題は改善され、水、ジュース、コーヒー、ウーロン茶、だしつゆ、醤油、ミルクシェイク、クリーム、食用油、シロップなどの食品用途やシャンプー、リンス、現像液などの食品以外の用途の主として業務用として広く利用されてきている。しかしながら、臭気に関しては、製造のロットにより変動したりする課題が残されており、市場要求を満たしていない。特に内容物がミネラルウォーター、ジュース、コーヒー、ウーロン茶、だしつゆなどの場合には大きな問題となる。さらに、最近は臭気に関して市場の要求が高度化してきており、臭気の低いバッグインボックス用内装袋用フィルムが安定して製造できる製造技術の確立が強く嘱望されている。例えば、上記の特許文献においては、これらの高度な市場要求に答える技術に関しては何ら言及がされていない。
低温ヒートシール性線状低密度ポリエチレン系フィルムはバッグインボックス用内装袋用フィルム以外にも、食品や医療材料などの包装材や容器として広い分野において使用されている。近年、社会の成熟に伴い、上記の分野において、臭気に対する市場要求が極めて高度化してきており、該特性を改良した、いわゆる低臭気素材が強く嘱望されている。線状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂はポリエステル樹脂等に比べ熱安定性等の安定性が劣り、これらを改善する目的で酸化防止剤等の各種安定剤が配合されている。該安定剤は目的とした効果を発現する点では有用であるが、該安定剤自体あるいはその劣化物が臭気や包装対象物の汚染原因になっているとされ、これらの安定剤を配合しない樹脂を原料とした成型体が求められてきた。
上記市場要求に答えるものとして、例えば、牛乳、乳製品等の包装材料である紙容器や包装資材には、乳等省令告示52号等に適合する包装資材として、高圧法低密度ポリエチレンなどが用いられている。しかしながら、高圧法低密度ポリエチレンは、引裂強度、耐衝撃性、腰の強さ等が劣っているという問題を有している。また、低温シール性も不十分であり、これらの特性を満足することのできる線状低密度ポリエチレンによるクリーンな成型体の開発が嘱望されていた。ところが、線状低密度ポリエチレンは前記高圧法低密度ポリエチレンに比して成型温度が高いために、樹脂の劣化を防止するための酸化防止剤を添加する必要があり、また、触媒残渣として塩素等のハロゲン元素が存在するために、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト等のハロゲン吸収剤(酸中和剤)等を添加する必要があるので、臭気や汚染物等の移行性において問題があった。
添加剤が配合されてなく、かつ前記ハロゲン化物量が低減され該添加剤が実質に被接触物に移行しない、密度、メルトフローレート、分子量分布および溶出分別特性等が最適化された線状低密度ポリエチレン樹脂を原料とした低臭気でかつ移行性の少ない成型体が開示されてきている(例えば、特許文献7〜10参照)
特開2001−342306号公報 特開2002−52669号公報 特開2003−64191号公報 特開2003−341249号公報
また、近年、上記低臭気のヒートシール性ポリエチレン系フィルムについても、該フィルムを用いて各種包装用の包装袋や包装容器に加工する折の加工の操業性や該製品のシール特性の変動や外観等に対する品質要求も高度化が進んできている。しかしながら、上記の方法はインフレーション法や押出しラミ法で製膜されておりフィルムの厚み斑が大きく、フィルムをロール状にして保存した場合に起こる巻き締まり現象により発生する張力が厚み斑によりフィルムの幅方向に変動が発生しフィルムの部分たるみ等の変形が発生する。そのため、厚み斑の大きなフィルムの場合は、例えば、ラミネート素材として使用した場合はラミネート加工時にたるみ等の変形により皺の発生や空気の巻き込みが起こり加工操業性が低下し、かつ得られる製品の皺、透明斑等の外観不良やラミネート強度変動等に繋がるという課題を有している。また、従来技術ではフィッシュアイが多く、これらの点でも市場の要求を満たしていない。例えば、ポリマー編集委員会著、ポリマー辞典、大成社、平成12年、増刷6版、P337等に、フィッシュアイについての定義が書かれている。フィッシュアイとは、フィルムまたはシート状の製品中に生じる小さな球状の塊をいう。魚の眼のような透明性をもつものが多いことからこのような名前が付けられた。成形材料の混練不足から来る未溶融の塊り、原料の一部がゲル化したための塊り、成形中の材料の部分的劣化による塊り、異物を核としたものなどいろいろなものがある。ここでいうフィッシュアイとは、異物を核にしたものは除外する。異物とは、例えば、セルロース、塵、金属片、樹脂の炭化物、種類の異なるプラスチック、糸屑、紙切れ等がある。
フィルムに該フィッシュアイが混入するとフィッシュアイが肉眼で見えるので包装体の商品イメージを低下させるので好ましくない。内容物の色や形態によりフィッシュアイが異物として目立つことがある。バッグインボックス用内装袋用フィルム等の容器用のフィルムに関しても、これらの市場要求により厳しい管理が必要となってきており市場要求が満たせなくなってきている。
インフレーション法ではバルーン形成の安定化のために高い押出し粘度が必要であり一般に低温で押出し成型がなされるので低臭気の成型体を得る点では有利であるがフィルムの厚み斑が大きくなるという課題を有している。一方、Tダイ法では低温で高い溶融粘度で押出しをすると流動斑が出やすくなり厚み斑が大きくなることに繋がるので上記のインフレーション法での製膜温度である160〜200℃に対して210〜270℃で押出す必要がある。高温押出し成型をすると原料樹脂の劣化が増大し臭気が悪化しフィッシュアイが増大するといわれている。そのために、酸化防止剤の添加がTダイ法では必須とされてきた。
このような背景において、特定密度およびメルトインデックスを有するエチレン系重合体または該エチレン系重合体を含有する樹脂組成物を210℃以下の温度で溶融押出し製膜する低臭気性のTダイキャストフィルムの製造法が開示されている(特許文献11参照)。しかしながら、該特許文献においては、Tダイキャストにおける低温押出しによるフィルムの厚み斑の増大およびその対策に関しては何ら言及がなされていないばかりか、フィルムの臭気等については定量的評価の記載はなく、酸化防止剤の影響についても詳細な記載はない。
特開平10−329195号公報
また、前記の特許文献で開示されている技術では臭気の測定は官能評価により実施されている。官能評価は検定者間で判定が異なったり、同一判定者でも体調等によりその判定が変化する等その判定の正確さに課題を有しておりその改善が強く嘱望されていた。
ポリプロピレン樹脂中に含まれる炭素数9〜21までの炭化水素成分の総量が30重量ppm以下である臭気の改良されたポリプロピレン樹脂が開示されている(特許文献12参照)。しかしながら、該特許文献においては、ポリプロピレン樹脂に限定されており、ポリエチレン系樹脂に関しては全く言及されていない。また、該フィルムやシートの製造方法の具体的内容や特性に関しても何ら言及されていない。さらに、上記炭化水素含有量を上記範囲にする方法としては、ペレット化工程において、押出し機に脱気設備を設け、溶融押出しする時に減圧脱気する方法およびホッパードライヤーなどによりペレットを熱風下で乾燥する方法が開示されているが、樹脂を固体状態において減圧下で加熱処理する方法は言及されていない。
特開平5−194648号公報
一方、例えばバッグインボックス用内装袋用フィルム等の容器の内層用フィルムは、上記の臭気や外観以外にも低温シール性等のシール特性、耐ピンポール性、腰の強さ、耐衝撃性、耐折曲げ性等の力学特性および耐熱ブロッキング性等のブロッキング特性も具備する必要がある。
例えば、特許文献13において、ポリエチレン樹脂の密度、メルトフローレートおよび示差走査型熱量計により測定される最大吸熱ヒ゜ークの温度を特定化することにより、ピンホールの発生および折り曲げによる破断を抑えると共に、融着部に剥離が生じないバッグインボックス用ポリエチレン樹脂内装容器が、特許文献14において、特定の密度、メルトフローおよび融解挙動を有するポリエチレン樹脂2種類を特定割合で配合することにより低温ヒートシール性を有し、フィルムの腰の強さと衝撃強度とのバランスが取れたバッグインボックス用等に好適に用いられるシーラントフィルムが、特許文献15において、少なくとも3層以上の樹脂層からなる積層体において、その中の隣接する3層は面材層、中間層、面材層のサンドイッチ構造を有し、中間層を挟む面材層に使用される樹脂の弾性率を中間層に使用されている樹脂の弾性率より大きくすることにより、腰強度と耐衝撃性に優れたバッグインボックス用内装袋用フィルムが、特許文献16において、少なくとも1層の中間層の両面に形成された2層の外層を有する3層以上の積層体からなるフィルムで、それぞれの層の樹脂の組成、密度、メルトフロー、分子量分布および組成分布パラメーター等を特定化することにより、耐熱性、耐熱ブロッキング性、耐ピンホール性および機械的強度のバランスを確保したバッグインボックス用内袋が、特許文献17において、少なくとも3層よりなる積層体で接液層および中間層の密度と厚み構成を特定化することにより蒸気滅菌時の耐熱ブロッキング性と耐ピンホール性を両立させたバッグインボックス用内袋が、特許文献18において、共重合ポリエチレン樹脂の組成、密度、分子量分布、組成分布係数およびフィルムの45°グロスを特定化することにより、耐衝撃性、耐ピンホール性、耐屈曲性、低温ヒートシール性、低臭気性、耐熱性を維持しつつ、滑り性および抗ブロッキング性に優れたバッグインボックス用内装袋等に適したフィルムが開示されている。しかしながら、これらの特許文献においては臭気の低減方法に関しては何ら言及されていない。例えば、特許文献18においては、低臭気が強調されているにもかかわらず具体的方策や得られたフィルムの臭気特性が記載されていない。
特開平9−169359号公報 特開平10−259280号公報 特開2000−108254号公報 特開2000−326463号公報 特開2001−88844号公報 特開2002−114821号公報
本発明は従来技術の課題を背景としてなされたものであり、低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムおよびその製造方法ならびに低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムよりなる容器に関する。より詳しくは、臭気が少なく、フィッシュアイ等の異物が少なく外観が良好で、耐ピンホール性、耐ブロッキング性、耐破袋性等に優れている上に、厚み斑が少ないため、製膜や製袋の各工程における加工適性がよい低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムおよびその製造方法並びに該低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムより内容物への臭気の移行性が少ない容器を提供すること、さらに、上記特徴に加え、フィッシュアイ等の異物が少なく外観が良好で、耐ピンホール性、耐ブロッキング性、耐破袋性等に優れている容器を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、少なくとも3層よりなるポリエチレン系樹脂積層フィルムにおいて、フィルムの幅方向の厚み斑が10%未満で、かつ明細書中で記載した方法により定量される揮発性の炭素数12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量としてフィルム質量に対してn−テトラデカン換算量で2000ppm以下であることを特徴とする低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムである。
この場合において、耐ピンホール性が8個以下、静摩擦係数が0.4以下、耐ブロッキング性が300mN以下であることが、好適である。
さらに、この場合において、フィルム中の最大直径が0.1mm以上のフィッシュアイが10個/0.1m2以下であることが好適である。
さらに、この場合において、中間層とその両面に面材層が積層されてなる積層体で、中間層を構成するポリエチレン系樹脂の密度(A)が880〜930kg/m3で、面材層を構成するポリエチレン系樹脂の密度(B)が900〜960kg/m3であり、かつ(B)>(A)であることが好適である。
さらに、この場合において、中間層の厚みが積層体の総厚みに対して40〜90%であることが好適である。
さらに、この場合において、面材層を構成するポリエチレン系樹脂が有機滑剤100〜1000ppmおよび平均粒子径5〜20μmの球状粒子4000〜15000ppmが含んでなることが好適である。
さらに、この場合において、上記構成の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造工程で発生する回収樹脂を中間層に配合してなることが好適である。
また、明細書中に記載したガスクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppm以下であるポリエチレン系樹脂を主成分とする組成物を少なくとも3層よりなるTスロット型多層押出しダイを用いてダイス出口の樹脂温度が150〜200℃で製膜することを特徴とする低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法である。
この場合において、ダイスより押し出されたフィルムを冷却ロールに密着させるに際して、エアーノズル法、エアーチャンバー法あるいはエアーナイフ法および真空チャンバー法を同時に作用してなることが好適である。
さらに、この場合において、溶融押し出し工程で溶融された樹脂組成物を濾過精度が100μm以下であるフィルターで濾過することが好適である。
さらに、この場合において、濾過を2段で行うことが好適である。
さらに、この場合において、上記回収樹脂中の明細書中に記載したガスクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppm以下であること
が好適である。
さらに、この場合において、ポリエチレン系樹脂組成物および回収樹脂が減圧下、50℃以上で、軟化点未満の温度で加熱処理したものであることが好適である。
さらに、上記の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを内層フィルムとした容器である。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、臭気が少なく、フィッシュアイ等の異物が少なく外観が良好で、耐ピンホール性、耐ブロッキング性、耐破袋性等に優れている上に、厚み斑が低減されており製膜や製袋の各工程における加工適性がよいという特徴を有しており、バッグインボックス用内装袋用フィルム等の内容物に対する臭気の移行が嫌われ、かつ耐ピンホール性等の耐久性が要求される容器の内層用フィルムとして好適に使用することができる。また、本発明の製造方法により、上記の高品質な低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを安定して、かつ経済的に製造することができるという利点がある。また、本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを内層フィルムとして用いた容器は、充填された内容物に対して臭気の移行が少ないという利点を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは少なくとも3層よりなるポリエチレン系樹脂積層フィルムにおいて、フィルムの幅方向の厚み斑が10%未満で、かつ明細書中で記載した方法により定量される揮発性の炭素数12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量としてフィルム質量に対してn−テトラデカン換算量で2000ppm以下であることが必要である。
本発明に用いられるポリエチレン系樹脂は、線状低密度ポリエチレン系樹脂が好ましく、エチレンと炭素数が3〜12のα―オレフィンの共重合体から成っており、炭素数は、好ましくは4〜8の範囲で選択されることが望ましい。これらの共重合成分の具体例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1等が挙げられるが、本発明は上記化合物に限定されるものではない。これらの中でもブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1が好ましい。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは中間層の両面に面材層を有した少なくとも3層よりなる構成が好ましい。そして、この中間層と面材層とはそれぞれを構成するポリエチレン系樹脂の密度を替えることが好ましい。中間層を構成するポリエチレン系樹脂の密度(A)は880〜930kg/m3が好ましい。885〜925kg/m3がより好ましく、890〜920kg/m3がさらに好ましい。一方、面材層を構成するポリエチレン系樹脂の密度は、900〜950kg/m3の密度のポリエチレン系樹脂が好ましい。910〜940kg/m3がより好ましく、920〜930kg/m3がさらに好ましい。さらに、(B)>(A)を満足する必要がある。このことにより、前述したバッグインボックス用内装袋用フィルム等の容器の内層フィルムが具備すべき力学特性や耐ブロッキング特性等のバランスを取ることができる。例えば、耐ピンホール性や耐衝撃性等の力学特性をよくするには、ポリエチレン系樹脂の密度は低い方がよい。しかしながら、ポリエチレン系樹脂の密度が低くなると、耐ブロッキング性や滑り性が悪化するので好ましくない。この二律背反事象を解決するために耐ブロッキング性や滑り性に対する影響の小さい中間層の密度を低くして耐ピンホール性や耐衝撃性等の力学特性を確保し、逆に、耐ブロッキング性や滑り性に対する影響の大きい外層のポリエチレン系樹脂の密度を高くしこれらの特性を確保し、全体としての特性のバランスを取るというコンセプトに基づいて開発したものである。
中間層を構成するポリエチレン系樹脂の密度が930kg/m3を超えた場合は耐ピンホール性や耐衝撃性が低下するので好ましくない。逆に、880kg/m3未満ではフィルムの腰が弱くなるので好ましくない。
一方、外層の場合は、950kg/m3を超えると低温ヒートシール性が悪化するので好ましくない。逆に、910kg/m3未満では腰の強さ、耐熱性、耐ブロッキング性および滑り性等が悪化するので好ましくない。
上記のポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレート(以下、MFRと記す)は、中間層、面材層共に1〜100g/10分(190℃)の範囲内のものを用いるのが好ましい。2〜80g/10分(190℃)の範囲のものがより好ましく、さらに好ましくは、2〜50g/10分(190℃)の範囲内である。MFRが1g/10分未満では、フィルム成型において、溶融粘度が高くなり、押出し機のモーターにかかる負荷が大きくなると共に、フィルムの厚み精度が低下するので好ましくない。逆に、100g/10分を超えと溶融粘度が低くなり過ぎ製膜が困難になる上、得られたフィルムの力学特性が悪化するので好ましくない。
上記の中間層は単層でなく2層以上の複層であっても構わない。また、面材層は両面同一であっても異種であっても構わない。
上記の中間層と面材層の厚み構成割合は少なくとも中間層が層全体の厚みに対して40〜90%であることが好ましい。45〜85%がより好ましく、50〜80%がさらに好ましい。90%を超えた場合は、フィルムの腰が弱くなるので好ましくない。逆に、40%未満では、耐ピンホール性や耐衝撃性等の力学特性が悪化するので好ましくない。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの総厚みは、他素材との複合等の最終の容器の仕様や構成等により異なるが、通常20〜300μmである。好ましくは30〜200μmである。
上記のエチレンとα―オレフィンの共重合体よりなる線状低密度ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に制限されるものでなく、例えば、チグラー・ナッタ系触媒やシクロペンタジエニル金属化合物等のいわゆるメタロセン系触媒や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法などの方法で製造されたものが挙げられる。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、上記組成および構成よりなり、かつフィルムの幅方向の厚み斑が10%以内であり、下記のガスクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量としてフィルム質量に対してn−テトラデカン換算量2000ppm以下であることが必要である。
[フィルム中の揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析法]
(1)試料のセット
フィルム試料2〜3mgを精秤し、サーマル ディソープション コールドトラップ インジェクター(TCT)用サンプルチューブ(Chrompack社製、内径3mm)に入れ、TCT(GLサイエンス社製:CP−4020)のディソープションオーブンにセットする。
(2)試料の加熱と揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析計への導入
上記方法でサンプルチューブがセットされたディソープションオーブンを80℃で10分加熱しフィルム中の揮発成分を揮発させる。発生した揮発性成分をキャリアーガス(He:流量14cc/分)によりー100℃に冷却されたコールドトラップに導入する。10分後にコールドトラップを一気に250℃に加熱し凝縮された揮発性成分をガスクロマトグラフィー質量分析計へ導入する。
(3)ガスクロマトグラフィー質量分析
[1]ガスクロ装置:HP−6890(Agilent社製)
[2]質量分析装置:HP−5973(Agilent社製)
[3]ガスクロカラム:キャヒ゜ラリーカラムHP−1MS(直径0.25mm、長さ
30m、ヂメチルポリシロキサン膜厚1.0μm)
[4]導入口温度:120℃
[5]ガスクロ条件:キャリアーガス流量0.5cc/分、カラム温度 は50℃で2
分間保持し、250℃まで15℃/分で昇温、280℃で10分間保持
[6]ガスクロヒ゜ークの同定:質量分析により行う
(4)揮発性成分の定量
下記方法でn−テトラデカンの検量線を作成し、n−テトラカン換算量で表示する。該定量は全イオン検出モードで行う。
n−テトラデカン38.6mgをn−へキサン1000ccに溶解した溶液を標準溶液とする。該標準溶液10マイクロリッターをTenax吸着管[上記サンプルチューブにTenaxTA(20/35メッシュ:GLサイエンス社製)を0.1g充填したもの、充填の折にはTenaxTAの上下にガラスウールを充填した]にマイクロシリンジを用いて注入しTenaxに吸着させる。該Tenax吸着管を上記のディソープションオーブンにセットし、上記と同じ方法でガスクロマトグラフィー質量分析を行い検量線を作成する。
本発明者らは、従来より実施されてきている臭気の官能試験に替わる精度の良い評価法に関して鋭意検討し、上記方法で定量されるフィルム中に含まれる揮発性成分である炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量で評価できることを見出して本発明を完成した。すなわち、フィルム中に含まれる揮発性成分である炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量がフィルム質量に対してn−テトラデカン量換算値(以下、フィルム中の揮発性成分量と称する)で2000ppm以下であることが好ましい。1800ppm以下がより好ましく、1500ppm以下がさらに好ましく、1000ppm以下が特に好ましい。2000ppmを超えた場合は、フィルムの臭気が強くなり、該フィルムを容器の内層用に用いた場合は、容器に充填された内容物に該臭気が移行し、内容物の商品価値を低下させるので好ましくない。
なお、臭気との関連性が見出された揮発性成分である炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンはフィルムの主構成物質であるポリエチレン系樹脂の劣化により生じたものと推察される。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、上記臭気に関連した特性と共に、フィルムの幅方向の厚み斑が10%以内であることを同時に満足する必要がある。8%以内がより好ましく、6%以内がさらに好ましい。10%を超えた場合は、フィルムをロール状にして保存した場合に起こる巻き締まり現象により発生する張力が厚み斑によりフィルムの幅方向で変動しフィルムの部分たるみ等の変形が発生する。そのため、厚み斑の大きなフィルムの場合は、例えば、バッグインボックス用内装袋等の容器構成材料に加工する場合のラミネート加工や成型加工時にたるみ等の変形により皺の発生や空気の巻き込みが起こり加工操業性が低下し、かつ得られる製品の皺、透明斑等の外観不良やラミネート強度変動等に繋がるという課題の発生に繋がる。尚、本発明における上記厚み斑は、フィルム幅400mm以上でフィルム長1000m以上のロールにおいて満たされるのが好ましい。厚み斑や取り扱い性の点より、幅は3000mm、長さは6000m以下が好ましい。
また、本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、最大直径が0.1mm以上のフィッシュアイが10個/0.1m2以下であることが好ましい。8個/0.1m2以下かがより好ましく、6個/0.1m2以下がさらに好ましい。該フィッシュアイが10個/0.1m2を超えた場合は、前述の課題に繋がり市場の高度な要求に答えることができない。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、耐ピンホール性が8個以下、静摩擦係数が0.4以下、耐ブロッキング性が300mN以下であることが好ましい。
耐ピンホール性は6以下がより好ましく、4個以下がさらに好ましい。耐ピンホール性が8個を超えた場合は、フィルムが極度に折り曲げられた時とか、容器に内容物を充填して輸送をする場合等の、繰り返し疲労等により内層袋にピンホールや亀裂等の破壊が発生し内容物の漏れ発生や空気の内容物への移行が増大し内容物の変質や腐敗が促進されるので好ましくない。
静摩擦係数は0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。静摩擦係数が0.4を超えた場合は、低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを製造する工程やバッグインボックス用内装袋等の容器やその構成材料の製造工程でのラミネート加工や製袋加工時のフィルムの滑り性が悪化しフィルムの取り扱い性が低下するので好ましくない。
耐ブロッキング性は200mN以下がより好ましく、100mN以下がさらに好ましい。耐ブロッキング性が300mNを超えた場合は、袋の開閉性が悪化したり内容物を加温充填した場合に、袋が熱融着することがある等の好ましくない現象の発生に繋がる。
上記特性を付与する方法は限定されないが、面材層を構成するポリエチレン系樹脂に有機滑剤100〜1000ppmおよび平均粒子径5〜20μmの球状粒子400〜15000ppmを配合することが好ましい。
従来、低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの滑り性を付与する方法としては、包装される内容物の臭気や味覚の悪化を抑制するために、滑剤やアンチブロッキング剤を添加せず、製膜工程でエンボスロールによりエンボス加工をしてフィルム表面に凹凸を形成する方法や2種の樹脂を配合して製膜時の冷却条件の最適化でフィルム表面に凹凸を形成する方法が推奨されてきた。例えば、前者は特許文献2および3において、後者は特許文献18においてその方法が開示されている。しかしながら、前者の方法は、例えばエンボスロールの経時による汚染等によりフィルムの表面凹凸が変化し、滑り性等の特性が安定しないという課題が残されている。一方、後者の場合は製膜条件、特に樹脂の品質、配合割合冷却条件等を厳密に制御しないと滑り性等の特性が安定しないという課題が残されている。本発明者等は、これらの課題解決法について検討を進め、従来より汎用的に実施されている滑剤とアンチブロッキング剤を併用する方法でも、これらの種類や配合量を特定化することにより、臭気を悪化させることなく上記特性を付与することができることを見出し、本発明を完成した。
有機滑剤は、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルが挙げられる。高級脂肪酸アミドが好ましい。オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸およびベヘニン酸等の高級脂肪酸のモノアマイドおよびビスアマイドが挙げられる。ビスアマイドとしてはエチレンビスアマイドが好ましい。ポリエチレン系樹脂に対する配合量は200〜950ppmがより好ましく、300〜900ppmがさらに好ましい。100ppm以下では滑り性や耐ブロッキング性が悪化するので好ましくない、逆に、1000ppmを超えた場合は該滑剤やその劣化物の包装される内容物への移行量が増大し内容物の臭気や味覚に悪影響を及ぼすので好ましくない。
アンチブロッキング剤である球状粒子は、外接円面積が90%以上である球状粒子であればその材質等は限定されない。例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトおよびシリコーン樹脂等の無機粒子、アクリル系樹脂等の有機粒子およびこれらを複合したハイブリッド粒子等が挙げられる。無孔タイプ、有孔タイプのいずれでも構わない。特に、真球状の球状シリカで、見掛け比重が1.10g/cm3以上であるものが好ましい。また、粒度分布の狭い物が好ましい。平均粒径は7〜18μmがより好ましく、8〜16μmがさらに好ましい。また、配合量は5000〜14000ppmがより好ましく、6000〜13000ppmがさらに好ましい。平均粒径や配合量が下限未満では、滑り性や耐ブロッキング性が悪化するので好ましくない、逆に、上限を超えた場合は、滑り性や耐ブロッキング性の向上効果が飽和し、透明性が低下するので好ましくない。該アンチブロッキング剤は2種以上を併用するマルチモーダル系であっても構わない。マルチモーダル系の場合は非球状粒子を併用してもよい。
本発明においては、上記方法が好ましいが、前記した滑剤やアンチブロッキング剤を添加せず、製膜工程でエンボスロールによりエンボス加工をしてフィルム表面に凹凸を形成する方法や2種の樹脂を配合して製膜時の冷却条件の最適化でフィルム表面に凹凸を形成する方法を採用しても構わない。
近年、食料品や医療用器具の容器や包装体は、放射線照射により滅菌処理が行われるようになってきている。従って、これらの容器や包装体に用いられるフィルムについても、放射線照射滅菌処理に伴う着色や臭気の発生を低水準に抑制することが求められている。
本発明における低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、下記条件でγ線照射した時の黄色度変化である△YI値が10以下であることが好ましい。5.0以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。
△YI値はフィルムのγ線照射前後における色変化を色差計で評価するものである。γ線はコバルト60を線源とし、フィルムへ25キログレイ(KGr)を照射した。YI値(黄色度)は、(日本電色工業(株)社製のZ−300A)を用いて測定し、下記式で求めた△YI値で表示した。
△YI値=YI(γ線照射あり)−YI(γ線照射なし)
本特性を付与する方法は限定されないが、酸化防止剤として一分子中にフェノール骨格とホスファイト骨格の両方を有したものを用いるのが好ましい。例えば、住友化学工業社製のスミライザーGPが挙げられる。
フィルムの製造工程においては、製造の立ち上げ時やトラブル発生時に規格外製品が発生する。また、端部に厚みの規格外部が生ずる。また、広幅で製膜して、市場要求に従って、規格幅の製品にスリットされて出荷されるが、該スリット工程で、規格外品や製膜幅と製品幅との関係で製品にならない部分の発生等がある。これらの製品にならない部分は回収工程で回収樹脂として回収され再利用される。
本発明においては、上記構成の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造工程で発生する回収樹脂を中間層に配合し自己循環して再利用することが好ましい。回収樹脂を面材層に戻して使用すると、前記した滑剤やアンチブロッキング剤の配合量の変動に繋がり、フィルムの滑り性や耐ブロッキング性等の特性変動が発生する。勿論、回収樹脂の使用量に合わせて滑剤やアンチブロッキング剤の配合量を調整すればこの課題は改善されるが、工程管理が複雑になる上に、滑剤に関しては製膜時の飛散損失があり特定範囲に制御しきれない場合も生ずる。これに対して、中間層に配合して使用すれば上記課題の発生が阻止できる。ただし、中間層に配合する方法においても配合量が変動すると、フィルムの透明性が変動する。従って、配合量は特定範囲で制御するのが好ましい。この制御範囲は、回収樹脂の発生割合や製品の品質規格等で適宜設定すればよい。一般には40質量%以下の配合が好ましい。本方法により、フィルムの品質変動を抑制するのに複雑な工程管理の必要がなくなるので、品質の安定化や経済性に対する効果が大きい。
上記特性を有する低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法は限定されないが、下記のガスクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppm以下であるポリエチレン系樹脂を主成分とする組成物を少なくとも3層よりなるTスロット型多層押出しダイを用いてダイス出口の樹脂温度が150〜200℃で製膜することが好ましい実施態様である。
[樹脂組成物中の揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析法]
(1)サンプル樹脂の粉砕
樹脂組成物1gを冷凍粉砕機(SPEC 6700 Freezer/Mill)を用いて液体窒素で冷却し冷凍粉砕を行う。粉砕は強度MAXで10分間行う。
(2)試料のセット
上記粉砕試料約10mgを精秤し、サーマル ディソープション コールドトラップ インジェクター(TCT)用サンプルチューブ(Chrompack社製、内径3mm)に入れ、TCT(GLサイエンス社製:CP−4020)のディソープションオーブンにセットする。サンプルチューブへの試料の充填の折には試料の上下にガラスウールを充填した。
(3)試料の加熱と揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析計への導入、ガスクロマトグラフィー質量分析および揮発性成分の定量
フィルム中の揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析法と同様の方法で行う。
従来公知の技術、例えば、前記の特許文献で開示されている技術では、ポリエチレン系フィルムの臭気は、酸化防止剤等の安定剤等の低分子量の有機性の添加剤の寄与が大きいと捉えられており、これらの種類や添加量により臭気の改善が試みられている。例えば、低臭フィルム用樹脂としてこれらの添加剤が含まれていない無添加銘柄の樹脂が市販されている。本発明者等は、前記特性を有した低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムに関して検討した結果、無添加銘柄の樹脂を用いても必ずしも目的の特性のフィルムが得られないことを見出した。そこで、目的とした特性のフィルムが安定して得られる製造方法の確立に関して鋭意検討した結果、フィルムの臭気に関しては、製膜工程における原料樹脂の押出し温度を低くし原料樹脂の劣化を抑えることに加えて、製膜直前の原料樹脂中の特定の揮発性成分量の寄与が大きいことが重要であることを見出した。原料樹脂中の揮発性成分量は前記のフィルム中の揮発性成分量の定量方法に準じ、上記測定方法を確立した。
樹脂組成物中の揮発性成分量は2900ppm以下がより好ましく、2800ppm以下がさらに好ましい。3000ppmを超えた場合は、原料樹脂組成物の押出し温度を低くし原料樹脂の劣化を抑えても本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムが具備すべき特性であるフィルム中の揮発性成分量を2000ppm以下にすることが困難となる。この原料樹脂組成物の特性は中間層および面材層を構成する全ての組成物に適用することが好ましい。
このフィルムの臭気特性と原料樹脂組成物の品質との関係は、従来公知の官能評価に替わる精度の高い上記の定量方法を確立することにより初めて成し得たことである。
本発明において、ポリエチレン系樹脂組成物中に含まれる揮発性成分量を前記範囲にする方法は限定されない。例えば、前述の特許文献12で開示されているペレット化工程において、押出し機に脱気設備を設け、溶融押出し時に減圧脱気する方法およびホッパードライヤーなどによりペレットを熱風下で乾燥する方法を利用することが開示されているが、本発明者等が鋭意検討した結果、樹脂の軟化点以下の温度、すなわち樹脂を固相状態で、かつ減圧下で加熱処理することにより樹脂中の揮発性成分量を効率良く低減することができ、本発明に適合する樹脂が安定して生産できることを見出した。すなわち、線状低密度ポリエチレン樹脂を50℃以上で、樹脂の軟化点未満の温度で加熱処理することが好ましい実施態様である。60℃以上で、樹脂の軟化点未満がより好ましく、80℃以上で、樹脂の軟化点未満がさらに好ましい。樹脂の軟化点より5℃以下で実施するのが融着防止の点より好ましい。50℃未満では揮発性成分量の低減効果が激減するので好ましくない。逆に、軟化点を超えた温度、特に樹脂が溶融された状態になると樹脂分子の運動が活発になり、樹脂の分子鎖の劣化が促進され加熱処理による揮発性成分の生成が増大し、結果として樹脂中の揮発性成分の低減が少なくなり効率的な低減ができなくなるので好ましくない。特許文献12の方法では200℃以上の高温処理で、かつ減圧度もマイルドな条件で実施されている。すなわち、本発明の方法の確立は、樹脂中の揮発性成分量の定量方法改善および加熱、減圧の工夫、製膜の工夫により初めて成し得たものであるといえる。
上記の加熱処理における減圧度は13hPa以下が好ましい。10hPa以下がより好ましく、8hPa以下がさらに好ましい。13hPaを超えた場合は、樹脂中の揮発性成分の低減効果が減少するので好ましくない。下限は0hPaが最も好ましいが、装置のシール性等を配慮すると1hPa以上が好ましい。特許文献12において開示されている溶融押出し時に減圧脱気する方法では、溶融樹脂に含まれる添加剤や劣化物による発泡が起こるので、押出しの安定性を確保するために限定された減圧度で行う必要があるのに対して、本方法は樹脂を固相状態で処理するため、加熱処理装置のシール度の限界に近い減圧度でも実施ができるので、低温処理であり樹脂の劣化が抑制される効果との相乗効果により揮発性成分を極めて効率的に低減することができる。
上記の加熱処理時間は、処理前の揮発性成分量、目標の揮発性成分量および処理条件により適宜選択し設定すればよいが、例えば、2〜60時間が好ましい。
本発明においては、加熱処理前のポリエチレン系樹脂組成物として上記方法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppmを超えるものを用いるのが好ましい実施態様である。このことにより、汎用の樹脂組成物を原料とすることができるので経済的に有利となり、本発明の効果をより増大することができるので好ましい。勿論、3000ppm以下の樹脂組成物を用いてより含有量の低い樹脂組成物として使用することも排除されない。
本発明においては、ポリエチレン系樹脂組成物として前記方法で品質管理した樹脂組成物を原料として用いるので臭気の抑制された本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを安定して生産することができ、不良製品の発生が抑制されるので経済性の点でも有利である。
本発明においては、線状低密度ポリエチレン系樹脂は、上記特性を有しておれば必ずしも有機系の添加剤が含まれない無添加銘柄である必要はない。例えば、酸化防止剤はむしろ少量であれば添加した方が好ましい場合もある。この場合は樹脂に対して1000ppm以下が好ましい。800ppm以下が好ましい。酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネートで代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等で代表されるホスファイト系安定剤等があげられる。フェノール系とホスファイト系の併用系あるいは一分子中にフェノール骨格とホスファイト骨格の両方を有したものの使用が好ましい。2種以上併用する場合は、全合計量で上記範囲であるのが好ましい。
有機性の添加剤は臭気の原因となりえるだけでなく、移行性を有するものもあり被接触物に移行し包装された内容物を汚染し味覚等に悪影響を及ぼすこともあるので無添加銘柄の使用は排除されるものでなく、好ましい実施態様の一つである。滑剤、中和剤、帯電防止剤、加工性改良剤、紫外線吸収剤、防曇剤等の比較的低分子量の有機物よりなる移行性の添加剤を配合されていないもの、もしくは、該添加剤が配合されたとしても、該配合された添加剤が実質的に内容物等の被接触物に移行し臭気や味覚に対して悪影響を及ぼさない量であることが好ましい。例えば、滑剤としては、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルが挙げられる。触媒残渣の中和剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩及びハイドロタルサイト、帯電防止剤としては、炭素数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等に代表される。加工性改良剤として、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等に代表される。紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、サリシレート系、シアノアクリレート系に代表される。防曇剤としては、グリセリン脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル系、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系に代表される。従って、外部に溶出してしまうような添加剤、例えば、内容物が液体の場合は、該液体に溶出されてしまうような添加剤あるいは時間とともにフィルム表面に偏在するような添加剤が樹脂中に含まれていないことにより、例えば食品の包装材や容器として用いた場合は、味覚の変化が少なく衛生的であり、また、医療や電子材料の包装材や容器として使用した場合は内容物を汚染しないクリーンフィルムが得られる。
以上、上記の線状低密度ポリエチレン樹脂は無添加グレードとして市販されている樹脂および樹脂組成物を用いても良いし、本発明の効果をより大きく発現できるように特別に設計したものを用いても構わない。
従来Tダイ法の製膜は210℃以上の温度で押出し成型されてきた。しかし、本発明ではフィルム中の揮発性成分やフィッシュアイの生成を抑制する必要があり、ダイス出口の樹脂温度150〜200℃で押出し成型することが重要である。155〜195℃がより好ましく、160〜190℃がさらに好ましい。150℃未満では原料樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ流動特性が悪化し得られるフィルムの厚み斑が増加するので好ましくない。逆に、200℃を超えた場合は樹脂の熱劣化が増大するので、原料の線状低密度ポリエチレン樹脂中の揮発性成分量を本発明の範囲内にしても、この押出し成型工程で臭気に悪影響をおよぼす前記の揮発性成分が発生し本発明の範囲内のフィルムが得られなくなる。また、ゲルの生成も増大するので好ましくない。なお、本発明におけるダイス出口の樹脂温度は精度が±5℃以内の赤外線式温度計を用いて測定したものである。該赤外線式温度計としてはチノー社製ポリエチレンフィルム用IR−CAM型が例示される。
上記の押出し温度で成型するための達成手段として原料のポリエチレン系樹脂のMFRを高くする方法が挙げられるが、得られるフィルムの機械特性が満足されなくなるので好ましくない。従って、MFRは、1〜100g/10min、好ましくは2〜80g/10min、さらに好ましくは2〜50g/10minのものを用いることが必要となる。該MFRのポリエチレン系樹脂を用いて、上記、150〜200℃押出し温度で成型すれば、フィッシュアイの生成は低減出来るが、フィルムの厚み斑を幅1000mmにおいて10%以内にすることが困難となる。従って、得られるフィルムの特性を本発明の範囲にするためには、上記の押出し温度で押出しても厚み斑が大きくならないための改善が必須となる。そのためには製膜機、特にダイスの構造や製膜条件の最適化が必要である。該方策について言及する。
原料樹脂の劣化が抑制される低温での押出し製膜においても目的とした厚み斑のフィルムを得るには、Tスロットダイを用いることが重要であることを見出した。すなわち、臭気が少なく、かつ厚み斑の抑制された低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを安定して得るためには、原料樹脂中の揮発性成分量を前記範囲にし、かつTスロット型ダイを用い、ダイス出口の樹脂温度が150〜200℃で製膜することが重要であることを見出し本発明を完成した。
まず上記達成手段の一つにダイスの形状最適化がある。一般に今日のプラスチック工業で広く使用されているコートハンガーダイはクラムシェルの問題を抱えていた。このクラムシェル現象はダイ本体の中央部に力が多く掛かりダイ端部より大きく変形するというダイの変形のことである。この不均一な変形は粘度の変動や吐出量の変動から絶え間なく樹脂圧が変化する点から厚み斑が発生し易い。
一方、近年、上記のコートハンガーダイの課題を克服するための方策としてTスロット型ダイが注目されている。該Tスロット型ダイは、例えば、Gary D.Oliver、「最新の共押出技術と市場同行」、コンバーテック、1996年12月、第24巻、第12号、P14〜19や小山、「機能性多層フィルムの押出技術」、プラスチックエージ、2003年、6月、第49巻、第595号、P93〜97等にその構造が記載されている。
本発明において、以下の特徴を有している。特徴1として、Tスリット型ダイのアスペクト比を大きくした直線状のマニホールドになっており、それにより、厚みの均一性を向上させることが出来きる。さらに樹脂が流れる面に力が均一にかかるのでクラムシェルが発生しない。特徴2として、プレランドを2段階にしてその段差部分の形状を曲線状に作ることにより、ダイス全体でバランスの取れた均一の流れになるような設計がなされており、溶融樹脂の各種粘度に対応できるように改良されている。すなわち、図1に例示するごとく、Tスロットダイでは幅方向に直線状のマニホールド、2段の傾斜ランドとリップよりなる3段のスリット流路を有する構造となっている。コートハンガーダイとは異なりプレランドが傾斜タイプの2段方式になっており、かつ樹脂流が供給される中央部の第一段目のプレランド部はコートハンガーダイとは逆に、中央部の方がランド長が短くなっており上記課題が改善されている。さらに、スリット流路幅が3段分割されており整流効果も向上しており、Tダイ全体の圧力斑や歪が低減できるように改善されており、厚み斑の低減に繋がる。
一方、コートハンガーダイは、図2に例示するごとく、Tダイの幅方向にハンガー状に傾斜するマニホールドと引き続く2段のスリット流路(プレランドとリップ)とよりなる。従って、マニホールドに溶融樹脂が流入すると、プレランド部に樹脂流が衝突し圧力が調整されるが、樹脂流が供給される最も圧力が高くなる中央部のプレランド長が分流により樹脂流が供給される端部のプレランド長より長くなっているため、このプレランド長さによる圧力上昇が加味されることにより、中央部と端部の圧力差がより増長され、Tダイ全体の圧力斑や歪の増大が起こり、このことが吐出時の厚み斑の増大に繋がる。さらに、スリット流路幅の分割が2段であるため、整流効果が充分でない。その結果、一般にWパターンと呼ばれダイ出口で早く流れる部分と遅くなる部分が発生し、均一な流れにならない問題に繋がる。それが厚み斑や熱履歴の違いによるフィッシュアイの原因になっていたこと考えられる。
Tストット型ダイ周りの空気の流れ方向がフィルムの厚み斑に影響を与えるので最適化することが好ましい実施態様である。該Tスロット型ダイから出てくる溶融樹脂シートに対して垂直な空気の流れである風を無くすことが重要である。これは溶融状態で垂直な風を受けると、溶融樹脂シートが振れて、その振れた部分の厚み変化や部分的な冷却斑が発生し厚み斑に繋がる。該対策の一つとしてダイス回りをシート、板、などで囲いを作り、囲いで囲みダイス出口に上記の好ましくない風が当たらないようすることが挙げられる。さらに、積極的にダイス出口の溶融樹脂シートの流れが乱れないような風の流れを作ることも好ましい実施態様である。
Tスロット型ダイ周りの温度斑も厚み斑に影響を及ぼすので、できるだけ温度斑を小さくすることも重要である。例えば、前記のダイス周りに囲いをすることは、当該現象の改善にも繋がるので、好ましい実施態様として推奨される。また、湿度を高めた状態でしかも加温した状態にすることは、温度斑が小さくなるので好ましい実施態様である。
Tスロット型ダイより押し出された溶融樹脂シートの冷却ロールへの密着方法の改善もフィルム厚み精度向上の重要な要因である。例えば、エアーで冷却ロールに密着させる方法として、エアーノズル法、エアーチャンバー法あるいはエアーナイフ法および真空チャンバー法が広く普及しているが、上記3方法を同時に作用させることが好ましい実施態様である。すなわち、溶融樹脂シートの冷却ロールへの密着に際して、エアーノズル法で両端を固定し、エアーチャンバー法あるいはエアーナイフ法により溶融樹脂シートの全幅の冷却ロールへの押さえつけを行い、同時に真空チャンバー法を作用させ溶融樹脂シートと冷却ロールの間への空気の巻き込みを防止することにより厚み斑が低減される。該方法においてもエアーナイフやエアーチャンバーの風を溶融樹脂シートに対して均一に、かつ流れの乱れが発生しないように当てる事および真空チャンバーの吸引力が幅および流れ方向において均一になるように装置構造、取り付け位置、エアーナイフやエアーチャンバーの空気の風量や方向、真空チャンバーの吸引度や吸引方向等を最適化することも大切である。このことにより、溶融樹脂シートの振れを小さくする事ができ、厚み精度向上に繋げられるので有効な手段の一として推奨される。
上記密着方法におけるエアーチャンバー法とエアーナイフ法の選択は該装置を設置する場所の空間容積や真空チャンバーの性能との関係で適宜選択すれば良い。
このような高精度のTスロット型ダイを使う事により、フィードブロックの簡略化が可能となる。従来技術、例えばコートハンガー型ダイでは、ダイスでの厚み調整、品質均一化が不十分だったので、フィードブロックで厚み調整、品質均一化の補助を行う必要があり複雑な形状になっていたが、上記のTスロット型ダイの場合はダイス内の溶融樹脂の流れが均一化されているので、フィードブロックが簡略化出来る。該簡略化によりデッドスペースが減少できるので、熱劣化のさらなる低減の効果がある。
また、ダイス内での樹脂流の均一化によりフィッシュアイの生成も抑制されるという新たな効果もあることがわかった。
上記のTスロット型ダイの使用はフィルムの厚み斑やフィッシュアイの低減対策として有効であるが、本発明においては、押出し温度が低いためダイスリップにおける溶融樹脂のせん断粘度が高くなるので、線状低密度ポリエチレン樹脂に添加された、例えば無機フィラー等の樹脂に溶解しない添加物がダイスリップで流動体の外にはじきだされリップ口の周辺に析出して通常「目やに」と称する汚れを形成しフィルムの厚み斑や異物混入に悪影響を及ぼす。従って、該課題解決のためにダイスのリップ開度を大きくすることが好ましい実施態様となる。
上記の押出し温度の温度範囲での製膜により、フィッシュアイの生成も抑制することはできるが、本発明においては、臭気や移行性成分を抑制するために原料樹脂中の酸化防止剤の配合量を極力低下させることが好ましいので上記の押出し温度の最適化に加え、原料樹脂の溶融押し出し工程で生成するフィッシュアイをフィルターで濾過して除去あるいは微小化する方法を加えることが好ましい実施態様として推奨される。
該溶融樹脂の濾過においては、用いるフィルターの選択が重要である。本発明においては、溶融押出し工程で溶融された樹脂を濾過精度が100μm以下であるフィルターで濾過することが好ましい実施態様である。ここで、濾過精度とは、JIS B8356:1976年で定義された方法に準じて評価された性能である。濾過精度は80μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。濾過精度が100μmを超えた場合はフィッシュアイを形成するゲル状異物の除去及び微小化が悪化するので好ましくない。濾過精度の下限はゲル状異物の除去及び微小化の点より小さければ小さい程好ましいが、小さくなるに比例して濾過圧力損失が大きくなるので濾過面積を大きくする必要が生ずる。従って、下限は30μmが好ましい。フィルターは金網フィルターが一般的に多く用いられており、平織り、綾織、平畳織、綾畳織など織りかたの形状の変化、それに使用する線の太さと積層構成により濾過能力や微小化効率が変ってくる。それらの金網フィルターと別に金属焼結フィルターというタイプがあり、粉末焼結したもの、不織布のように金属を織ることなく固めたものの大きく2種類がある。特に不織布のように金属を織ることなく固めたものは、ミクロンオーダーのステンレス鋼繊維を均一に積層焼結したもので、繊維相互の無数の接点が金属同士接合一体化しており、目開き抜け落ち少なく高い濾過精度を有する上、他の金属濾過材より空隙率が大きい影響で、圧力損失が小さく、金網、金属粉末焼結フィルターに比べて、異物保持能力が高いので最近特に多く使われ始めているが、金網フィルターでも織り方、積層法を改良するとそれに同等以上の性能が出るものも有り、排除はしない。選定時ポイントは、特にオレフィンは溶融粘度が高いので圧力損失が低く、濾過能力の高いものを選ぶことが好ましい。該方策の採用はフィッシュアイ低減だけでなく厚み斑低減の効果をも併せて発現できる。厚み斑は、圧力損失が大きい場合に発生し易い。それはフィルターにより押出し機で溶融樹脂を押出した圧力がカットされ、Tダイ内の圧力が不足し、Tダイ内の溶融樹脂の流れが不安定になり、結果として厚み斑になることがある。先に述べたように圧力損失が低いフィルターを用いる事によりそれを抑制することが可能となる。
上記の濾過は、フィルター2個以上を直列に繋いだ多段濾過法で行うのがより好ましい実施態様である。該多段濾過法により、濾過や微小化効率が向上し、かつ前記の圧力損失の課題も改善される。該多段濾過法の場合は、同じ濾過精度のフィルターを用いても良いが、溶融樹脂の流れ方向に従って濾過精度の値を低くしていくのがさらに好ましい実施態様である。
本発明で使用する原料の線状低密度ポリエチレン樹脂ペレットは、乾燥するときに不活性ガス置換をして、乾燥したものを使用するのが好ましい。不活性ガス置換により脱酸素され押出し機に入り溶融する時の酸化分解が押さえられ、前記の揮発成分の発生抑制やフィッシュアイ低減に繋がる。また、製膜の為の押出し機のホッパーや原料を入れるサイロにも酸素が入らないように不活性ガスで置換し、原料が酸化しない状態にしておくのも好ましい実施態様である。該方法は原料樹脂と共に押出し機への酸素の混入が抑えられる効果もありゲル生成の抑制に繋がる。該方策の採用はゲル生成抑制だけでなく臭気や味覚に影響する分解物の生成を抑制効果をも併せて発現できる。使用する不活性ガスとして、希ガス類元素例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンの6元素が挙げられるが、高価であるので実際的ではない。安価で入手が容易な窒素ガスが好ましい。
近年は原料配合物の混練効果を向上する目的で2軸押出し機が用いられることが多くなってきているが、本発明では低温押出しが必要であり2軸押出し機では局部発熱による樹脂の劣化が起こることがあるので、単軸スクリューを用いた押出し機を用いることが好ましい実施態様として推奨される。単軸スクリューの欠点は、スクリュー回転の高速化に伴って、混合・混練不良が発生する上、樹脂温度の過度な上昇のため適正な操業に限界があることである。この問題を解決するために鋭意検討した結果、例えば、坂上、「ミキシングスクリュの実験的研究[2]I.単軸スクリュの実験研究(2)」、プラスチックエージ、2003年4月、第49巻、第593号、P146〜157において記載されている3ステージスクリュー構造の単軸押出し機を用いることが有効であることを見出した。すなわち、スクリューの中間部にミキシングエレメントを設け、その手前を第1ステージ、ミキシングエレメント部を第2ステージ、その後を第3ステージとする3ステージスクリュー構造をとるのが好ましい。中間部のミキシングエレメントにより混合・混練性能を高めると共に、先端の溝深さを深くして過度の発熱を抑制し、冷却能力を補強し、併せて押出し量をアップを図ることがより好ましい実施態様である。2軸タイプでもスクリュー設計を適切に調整することにより可能であり排除はされない。該対策はフィッシュアイの低減のみでなく前述のフィルム中の揮発性成分の生成抑制効果にも繋がるので重要である。
回収樹脂の再利用方法に関しては前述したが、この回収方法は限定されない。製品、切開屑などを溶融して樹脂ペレットにする方法。圧力により、それら製品、切開屑などを圧力により、ペレット状、板状にする方法。半溶融状態でペレット状にする方法が知られている。溶融し、ペレットにする方法は、熱により溶融しペレットにするので、樹脂内部で架橋反応が起こり、結果として、フィッシュアイが発生し易くなる。圧力によりペレットにする方法は、柔らかいフィルムには不向きで、ペレットにしても元のフィルムの形に戻ろうとする力が強く、時間の経過と共に形が変化していく場合があり、管理が難しい。半溶融状態でペレットにする方法は、そのような時間の経過と共に変化することなく均一であり、フィッシュアイが発生しにくいので好ましい。
回収する製品、切開屑についてくる塵、異物、細かなゴミなどの管理も重要あり、これらに塵、異物、細かなゴミなどが付着したまま回収原料にするとそれらが核となり、フィッシュアイが発生する。回収室内の空調管理が重要であるのはもちろんのこと、塵、異物、細かなゴミが付着したものを回収のラインに入れないように工夫する事が重要である。その方法としては、クリーンルーム内での回収作業が好ましい。また、フィルムに付いた塵、異物、細かなゴミを除去するために回収装置入口に静電気除去装置の取り付けを行なうことが好ましい。
本発明においては、上記回収樹脂中のガスクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppm以下であるものを使用するのが好ましい実施態様である。この揮発性成分量の定量方法は前記の樹脂組成物中の定量方法に準じて行ったものである。
上記特性を満たす方法は限定されないが、回収樹脂を減圧下、50℃以上で、軟化点未満の温度で加熱処理する方法が好ましい。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、前述のごとくバッグインボックス用内装袋用フイルム等の容器の内層フィルムが具備しなければならない特性有しており、袋状に成型して、例えば液体状の物品用容器の内層袋として成型し用いるのが好ましい。特に、低臭気性であり容器に充填される内容物に対する臭気の移行性が抑制されるうえに、耐ピンホール性等の耐久性に優れているので、内容物がミネラルウォーター、ジュース、コーヒー、ウーロン茶、だしつゆ等の容器よりの臭気の移行が嫌われる液状食料品用容器や医療用輸液容器等の医療用薬液容器等の構成材料として好適である。その他、臭気の移行や耐久性が要求される容器の構成材料として広く用いることができる。
例えば、本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムをヒートシール層とし、これに気体遮断性材料からなる層をさらに積層することにより耐熱性、ヒートシール強度、耐ピンホール性、耐溶剤性、耐ガスバリヤー性、耐衝撃性にすぐれたものとしてバッグインボックス用内装袋等として用いてもよい。
気体遮断性材料は酸素等の気体を遮断して内容物の劣化を防ぐ材料であり、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物等の樹脂フィルムまたはアルミニウム箔等の金属箔等が挙げられる。とくに気体透過性が小さく加工性の良好なエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が好ましい。さらにはエチレン含有量20〜50モル%、酢酸ビニル部分のケン化度90モル%以上の組成を有するものがより好ましい。
上記の気体遮断性材料は一般的にポリオレフィン樹脂との接着性が悪く、これらを積層する場合は接着剤や接着性樹脂を介在させるのが好ましい。接着性樹脂としてはアイオノマー樹脂すなわちエチレンとアクリル酸等との共重合体を金属カチオンにより架橋したポリマー、あるいは各種のポリオレフィンまたはゴムに不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させた変性ポリオレフィンまたは変性ゴム等が挙げられ、中でも変性ポリオレフィンを含む重合物が好ましい。上記の変性ポリオレフィン樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等のポリオレフィンに無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸あるいはその誘導体を有機過酸化物の存在下で加熱して反応変性させたもの等が用いられる。
次に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
1、フィルム中の揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析法
(1)試料のセット
フィルム試料2〜3mgを精秤し、サーマル ディソープション コールドトラップ インジェクター(TCT)用サンプルチューブ(Chrompack社製、内径3mm)に入れ、TCT(GLサイエンス社製:CP−4020)のディソープションオーブンにセットした。
(2)試料の加熱と揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析計への導入
上記方法でサンプルチューブがセットされたディソープションオーブンを80℃で10分加熱しフィルム中の揮発性成分を揮発させる。発生した揮発性成分をキャリアーガス(He:流量14cc/分)により−100℃に冷却されたコールドトラップに導入した。10分後にコールドトラップを一気に250℃に加熱し凝縮された揮発性成分をガスクロマトグラフィー質量分析計へ導入した。
(3)ガスクロマトグラフィー質量分析
[1]ガスクロ装置:HP−6890(Agilent社製)
[2]質量分析装置:HP−5973(Agilent社製)
[3]ガスクロカラム:キャヒ゜ラリーカラムHP−1MS(直径0.25mm、
長さ30m、ヂメチルポリシロキサン膜厚1.0μm)
[4]導入口温度:120℃
[5]ガスクロ条件:キャリアーガス流量0.5cc/分、カラム温度は50℃で2分
間保持し、250℃まで15℃/分で昇温、280℃で10分間保持
[6]ガスクロヒ゜ークの同定:質量分析により行った
(4)揮発性成分の定量
下記方法でn−テトラデカンの検量線を作成し、n−テトラデカン換算量で表示した。該定量は全イオン検出モードで行った。
n−テトラデカン38.6mgをn−へキサン1000ccに溶解した溶液を標準溶液とした。該標準溶液10マイクロリッターをTenax吸着管[上記サンプルチューブにTenaxTA(20/35メッシュ:GLサイエンス社製)を0.1g充填したもの、充填の折にはTenaxTAの上下にガラスウールを充填した]にマイクロシリンジを用いて注入しTenaxに吸着させた。該Tenax吸着管を上記のディソープションオーブンにセットし、上記と同じ方法でガスクロマトグラフィー質量分析を行い検量線を作成した。
2、フィルムの臭気評価方法
フィルムを10cm4方の正方形に切り取り、これを100枚重ね、これを内容量1リットルの蓋つきガラス瓶に入れた。このガラス瓶を70℃に保った加熱オーブン中に2時間(放置し、これを取り出し直ちにパネラーにより官能評価を行った。
判定は以下の基準で行った。
良いもの:◎
やや良いもの:〇
やや悪いもの:△
悪いもの:×
3、フィルム中のフィッシュアイの測定方法
成型されたフィルムを流れ方向(以下、MD方向と記する)に33.3cm×流れ方向に対して横方向(以下、TD方向と記する)30cm、両端20cm外して、4ヶ所サンプルとして切り取る。フィルムの下から蛍光灯を照射した板の上に置き、透過光で目視により観察し、0.1mm以上のフィッシュアイを計測する。計測は切り取ったサンプル3枚の平均値でフィッシュアイ個数を求め、0.1m2当たりの個数に換算する。該サンプルが1枚でも0.1mm以上のフィッシュアイ個数が8個以上であれば、予備の1枚も計測し、フィルムサンプル4枚の平均値を求め、0.1m2当たりの個数に換算する。次に、カウントしたフィッシュアイを液体窒素中に浸して、硬くした状態で、剃刀で半分に切り、そのフィッシュアイの断面を光学顕微鏡で、50〜300倍の倍率で観察することにより、核となる物質が無ければ、例えば、セルロースなどを代表とする異物が無ければ、それは未溶融の塊り、原料の一部がゲル化したための塊り、成形中の材料の部分的劣化による塊り等のゲル起因のフィッシュアイと判定する。核がある場合は、異物起因のフィッシュアイと判定しカウントから除外する。
4、フィルムの厚み斑評価
JIS K7130:1999年に準じて評価する。一部方法が異なる部分は以下に詳細を説明する。測定する環境は、23℃×50%RH室内で行う。測定は、フィルムの両端5cmづつをカットし、該両端がカットされたサンプルを幅方向に40等分し測定位置
に印を付ける。該印の位置で印の部分を外した場所についてダイヤルゲージにて行う。計測はフィルムロールMD方向に15cm、TD方向に全巾、表層部からしわのない部分から2巻き剥いだ部分と巻き芯部からしわの無い部分から2巻きほど剥いだ部分の2ヶ所で、それぞれ3サンプルを取り、その6サンプルの平均値を求める。使用する計測器は、最小読み取り値が0.001mmとする。精度は、JIS B7503:1997年に規定してあるダイヤルゲージと同等以上のものとする。
厚み斑は下式で求める。
厚み斑(%)=(最大厚みー最小厚み)÷6サンプルの平均値×100
5、樹脂組成物および回収樹脂中の揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析法
(1)サンプル樹脂の粉砕
樹脂1gを冷凍粉砕機(SPEC 6700 Freezer/Mill)を用いて
液体窒素で冷却し冷凍粉砕を行う。粉砕は強度MAXで10分間行う。
(2)試料のセット
上記粉砕試料約10mgを精秤し、サーマル ディソープション コールドトラップ インジェクター(TCT)用サンプルチューブ(Chrompack社製、内径3mm)に入れ、TCT(GLサイエンス社製:CP−4020)のディソープションオーブンにセットする。サンプルチューブへの試料の充填の折には試料の上下にガラスウールを充填した。
(3)試料の加熱と揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析計への導入、ガスクロマトグラフィー質量分析および揮発性成分の定量
フィルム中の揮発性成分のガスクロマトグラフィー質量分析法と同様の方法で行った。
6、濾過精度
JIS B8356:1976年に準じて計測する。フィルターメディアを透過した最大グラスビーズ粒径を濾過精度(μm)とする。
7、ダイス出口の樹脂温度
本発明におけるダイス出口の樹脂温度は精度が±5℃以内の赤外線式温度計を用いて測定した。Tダイの幅方向等分した5箇所をn=3で計測し、その平均値を求める。チノー社製ポリエチレンフィルム用IR−CAM型を使用し、溶融樹脂から10〜15cmの位置で計測した。
8、MFR
JIS K 7210:1999年に準じて、評価条件は、2.16kg、190℃で原料樹脂の粘度を評価した。
9、樹脂密度
JIS K 7112:1999年に準じて、密度を評価した。
10、耐ピンホール性
フィルムを縦300mm×横200mmに裁断し、ゲルボフレックス測定器(テスター産業社製 形式:恒温槽付きゲルボフレックステスター)を用いてASTM F329に準拠して、5℃にて3000回のひねり(捩じり速度:40rpm、捩じり角400°)を与えた時に発生したピンホール値(ゲルボフレックス値)を測定した。同一サンプルにつき3回の測定をして平均値で表示した。
11耐ブロッキング性
測定面同士を重ね合わせたサンプルを、ヒートプレス(テスター産業社製 形式:SA−303)において、大きさ7cm×7cm、温度50℃、圧力1400Pa、時間15分の加圧処理を行う。この加圧処理でブロッキングしたサンプルとバー(径6mm 材質:アルミ)をオートグラフ(島津製作所社製 形式:UA−3122)へ装着し、バーが速度(200mm/分)でブロッキング部を剥離する時の力を測定した。この場合、バーと剥離面は水平であることが前提である。
同一サンプルにつき4回の測定をして平均値で表示した。
12、静摩擦係数
傾斜面と錘からなるフリクションアングルテスター(東洋精機社製 形番:A−211402803)において測定するフィルム面が接触する様に、錘(重さ1kg)と傾斜面へセットする。
傾斜面の角度を除々上げていき(速度2.7°/秒)、錘が傾斜面を滑り始める角度を測定する。その角度θのtanθを静摩擦係数とした。同一サンプルにつき3回の測定をして平均値で表示した。
13、アンチブロッキング剤の平均粒径
JIS K 1150に記載のレーザー回折式粒度分布測定法に準拠し測定した。
Leeds&Northrup社製 形式:Microtrac HRA model 9320−X100を用いて測定した。
実施例1
A層およびC層用のポリエチレン系樹脂組成物
樹脂密度925kg/m3およびMFR6g/10minの市販の線状低密度ポリエチレン樹脂にエルカ酸アミド800ppm、平均粒径10μmの燃焼法で製造された見掛け比重が1.15g/cm3の球状シリカ10000ppmおよび分子中にフェノール骨格とホスファイト骨格を有した酸化防止剤700ppmを配合した揮発性成分量が5500ppmである樹脂組成物を減圧装置の付いた回転式の乾燥機に仕込み、13hPaの減圧下、105℃で48時間加熱処理して得た揮発性成分量が250ppmに低減された線状低密度ポリエチレン樹脂組成物
B層用のポリエチレン系樹脂組成物混合物
樹脂密度900kg/m3およびMFR6g/10minの市販の線状低密度ポリエチレン樹脂に分子中にフェノール骨格とリン骨格を有した酸化防止剤700ppmが配合された、揮発性成分量が5200ppmの樹脂組成物を減圧装置の付いた回転式の乾燥機に仕込み、13hPaの減圧下、105℃で48時間加熱処理して得た揮発性成分量が240ppmに低減された線状低密度ポリエチレン樹脂組成物および本実施例と同じ方法で製造された低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを溶融法で回収し、上記線状低密度ポリエチレン樹脂と同様の条件で減圧下、加熱処理された揮発性成分量が200ppmである回収樹脂をそれぞれ75:25(質量比)を混合した混合物
B層用ポリエチレン系樹脂組成物混合物をスクリュー直径250mmの3ステージ型単軸押出し機で、A層用およびC層用のポリエチレン系樹脂組成物をそれぞれ2台のスクリュー直径150mmの3ステージ型単軸押出し機を使用し、幅3000mmで、プレランドを2段階にし、かつ溶融樹脂の流れが均一になるように段差部分の形状を曲線状としてダイス内の流れが均一になるように設計した3層タイプのTスロット型ダイにA層/B層/C層の層構成になるように導入し、ダイス出口の樹脂温度180℃で押出した。リップギャップは1.6mmとした。フィルターは、濾過精度100μmおよび50μmのフィルターを直列に連結した2段濾過法で濾過しダイスに供給した。該フィルターはA〜C層の全てのラインに設置した。ダイスからでてきた溶融樹脂シートを30℃の冷却ロールで冷却し、A層/B層/C層の構成で層厚みが12/36/12(μm)[総厚みに対する中間層厚みの割合:60%]よりなる線状低密度ポリエチレン系積層フィルムを得た。原料樹脂組成物の乾燥は窒素ガス置換して行った。また、上記押出し機への供給用サイロやホッパーも窒素ガス置換をした。冷却ロールでの冷却に際しては、エアーノズルで冷却ロール上のフィルムの両端を固定し、エアーナイフで溶融樹脂シートの全幅の冷却ロールへの押さえつけを行い、同時に真空チャンバーを作用させ溶融樹脂シートと冷却ロールの間への空気の巻き込みを防止した。エアーノズルは、両端ともに2基ずつをフィルム進行方向に直列に設置した。また、エアーナイフの風向きは押出されたシートの進行方向に対して45度とした。また、真空チャンバーの吸引口の方向を押出されたシートの進行方向に合わせた。さらに、ダイス周りはシートで囲い、溶融樹脂シートに風が当たらないようした。製膜は100m/分の速度で実施した。得られた結果を表1に示す。
Figure 0004752219
実施例2〜4
実施例1の方法において、それぞれ原料樹脂組成物の減圧下での加熱時間を24、12および6時間に短縮して得た揮発成分量が表1に示した量である樹脂組成物を原料とするように変更する以外は、実施例1と同様にして実施例2〜4の積層フィルムを得た。得られた結果を表1に示す。
実施例5〜7
実施例1〜3の方法において、ダイス出口の樹脂温度を180℃に変更する以外は、実施例1〜3と同様にしてそれぞれ実施例5〜7のフィルムを得た。得られた結果を表1に示す。
実施例8
実施例1の方法において、得られる積層フィルムの層構成がA層/B層/C層=16/48/16(μm)になるように変更する以外は、実施例1と同様にして実施例8のフィルムを得た。得られた結果を表1に示す。
比較例1
実施例1の方法において、原料樹脂組成物の減圧下での加熱をすることなく、樹脂組成物中の揮発成分量が表2に示した値である市販樹脂組成物および回収樹脂を原料として用いるように変更する以外は、実施例1と同様にして比較例1のフィルムを得た。得られた結果を表2に示す。
Figure 0004752219
比較例2
実施例1の方法において、原料樹脂組成物の減圧下での加熱処理を常圧下で行うように変更した。樹脂組成物中の揮発性成分量を表2に示す。該樹脂組成物を原料として用いるように変更する以外は、実施例1と同様にして比較例2のフィルムを得た。得られた結果を表2に示す。
比較例3
実施例1で用いた減圧下での加熱処理をする前の市販の線状低密度ポリエチレン樹脂組成物および回収樹脂を、ギア−ポンプ式2軸押出機を用い以下の条件で溶融押出した。スクリュー径69mm、スクリュー全長L/D=14、ベント位置はホッパー側からL/D=11、スクリュー回転数400rpm、ギアーポンプ部樹脂温度235℃、押出し量340kg/hr、ベントの吸引圧120hPaで運転し、溶融物は水中カット法によりペレットとした。得られた樹脂中の揮発性成分量を表2に示す。該樹脂組成物を原料として用いるように変更する以外は、実施例6と同様にして比較例3のフィルムを得た。得られた結果を表2に示す。
比較例4
比較例1の方法において、ダイス出口の樹脂温度を180℃に変更する以外は、比較例1と同様の方法で比較例4のフィルムを得た。得られた結果を表2に示す。
比較例5〜8
実施例1〜3および比較例2の方法において、ダイス出口の樹脂温度を230℃に変更する以外は、実施例1〜3および比較例2と同様の方法で比較例5〜8のフィルムを得た。得られた結果を表2に示す。
比較例9〜11
実施例1、3および比較例2の方法において、ダイス出口の樹脂温度を250℃に変更する以外は、実施例1、3および比較例2と同様の方法で比較例9〜11のフィルムを得た。得られた結果を表3に示す。
Figure 0004752219
比較例12
実施例3の方法において、ダイス出口の樹脂温度を140℃に変更する以外は、実施例3と同様の方法で比較例12のフィルムを得た。得られた結果を表3に示す。
比較例13〜15
実施例7、比較例7および10の方法において、押出し機をシングルステージ型に、フィルター濾過精度を200μm1段濾過に、ダイスをコートハンガー型に、冷却ロールとの密着をエアーナイフのみに、ダイス周りの囲いを無くすように変更する以外は、実施例7および比較例7および10と同様にして比較例13〜15のフィルムを得た。得られた結果を表3に示す。
比較例16
空冷インフレーション方式、プラコー製押出し機(スクリュー直径55mm)、ダイス出口の樹脂温度160℃、フィルム幅300mm、ブロー比2.7で単層押出しし、フィルム成型した。使用樹脂は、MFRを2g/10minに変更する以外は、実施例2と同じ組成および特性ものを用いた。得られた結果を表3に示す。
比較例17
比較例1の方法において、A層およびC層用樹脂組成物のエルカ酸アミドおよび球状シリカの配合量をそれぞれ50および3000ppmに変更する以外は、比較例1と同様にして比較例17のフィルムを得た。得られた結果を表4に示す。
Figure 0004752219
比較例18
比較例1の方法において、A層およびC層用樹脂組成物のエルカ酸アミドの配合量を50ppmに、球状シリカの平均粒径を3μmに変更する以外は、比較例1と同様にして比較例18のフィルムを得た。得られた結果を表4に示す。
比較例19
比較例1の方法において、B層用のポリエチレン系樹脂組成物の線状低密度ポリエチレン樹脂密度を930kg/m3に変更する以外は、比較例1と同様にして比較例19のフィルムを得た。得られた結果を表4に示す。
比較例20
比較例1の方法において、A層およびC層用のポリエチレン系樹脂組成物の線状低密度ポリエチレン樹脂密度を880kg/m3に変更する以外は、比較例1と同様にして比較例20のフィルムを得た。得られた結果を表4に示す。
実施例1〜8で得られたフィルムは、フィルム中の揮発成分量が低く低臭気である上に、厚み斑およびフィッシュアイが良好である。特に、実施例1〜3、5および6で得られたフィルムは臭気が著しく低かった。
一方、比較例1〜11および14〜20で得られたフィルムは、フィルム中の揮発性成分量が多く、臭気が強かった。また、比較例6〜11、14および15で得られたフィルムはフィルム中の揮発性成分量が多く、臭気が強い上にフィッシュアイが多かった。また、比較例12、13および16で得られたフィルムはフィルムの厚み斑が大きかった。また、比較例17、18および20で得られたフィルムはフィルム中の揮発性成分量が多く、臭気が強い上に耐ブロッキング性や滑り性が劣っていた。また、比較例19で得られたフィルムはフィルム中の揮発性成分量が多く、臭気が強い上に耐ピンホール性が劣っていた。
図3に、実施例および比較例のデータを用いて樹脂組成物中の揮発性成分量とフィルム中の揮発成分との関係を、図4にダイス出口の樹脂組成物温度とフィルムの厚み斑との関係を示す。なお、図3の樹脂組成物中の揮発性成分量は各層に用いた全樹脂中の揮発性成分量の加重平均値を用いた。また、図4に関しては、原料樹脂中の揮発性成分量が本発明の範囲外である比較例1〜4、17〜20の結果は図にプロットしなかった。これらの図より、本発明の限定範囲が臨界的な範囲であることが理解できる。
実施例9
実施例1〜8において得られた積層ポリエチレン系フィルムと厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルムとをポリウレタン樹脂を接着剤として押出しラミネートした。得られたラミネート体を積層ポリエチレン系フィルムが内側になるような構成で製袋してバッグインボックス用内層袋を作製した。飲料水を充填し臭気の移行および輸送テストを実施した。いずれの実施例で得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いた場合も、臭気の移行は少なく、輸送時の液漏れはなかった。また、積層ポリエチレン系フィルムの厚み斑が小さいのでラミネート工程や製袋工程の操業性に優れていた。
比較例21
比較例1〜20において得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いて、実施例9と同様の評価を行った。比較例1〜11および14〜20で得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いたものは、臭気の移行が多かった。また、比較例6〜11、14および15で得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いたものは、臭気の移行が多いうえにフィッシュアイが多いので外観が劣っていた。比較例12、13および16で得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いたものは、厚み斑が大きいためにラミネート工程や製袋工程の操業性がよくなかった。また、比較例17,18および20で得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いたものは、臭気の移行が多いうえに、耐ブロッキング性や滑り性が劣るために、ラミネート工程や製袋工程の操業性がよくなかった。また、比較例19で得られた積層ポリエチレン系フィルムを用いたものは、耐ピンホール性が劣るので輸送テストにおいて液漏れが発生した。
本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムは、臭気が少なく、フィッシュアイ等の異物が少なく外観が良好で、耐ピンホール性、耐ブロッキング性、耐破袋性等に優れている上に、厚み斑が低減されており製膜や製袋の各工程における加工適性がよいという特徴を有しており、バッグインボックス用内装袋用フィルム等の内容物に対する臭気の移行が嫌われ、かつ耐ピンホール性等の耐久性が要求される容器の内層用フィルムとして好適に使用することができる。また、本発明の製造方法により、上記の高品質な低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを安定して、かつ経済的に製造することができるという利点がある。また、本発明の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを内層フィルムとして用いた容器は、充填された内容物に対して臭気の移行が少ないという利点を有するので産業界に寄与する事が大である。
コートハンガーダイの構造図である。 Tスロットダイの構造図である。 樹脂組成物中の揮発成分量とフィルム中の揮発成分との関係を示す模式図である。 ダイス出口の樹脂組成物温度とフィルムの厚み斑との関係を示す模式図である。

Claims (14)

  1. 中間層とその両面に面材層が積層されてなる少なくとも3層よりなるポリエチレン系樹脂積層フィルムにおいて、
    中間層を構成するポリエチレン系樹脂の密度(A)が880〜930kg/m 3 で、面材層を構成するポリエチレン系樹脂の密度(B)が900〜960kg/m 3 であり、かつ(B)>(A)であり、
    フィルムの幅方向の厚み斑が10%未満であり
    フィルム中の最大直径が0.1mm以上のフィッシュアイが10個/0.1m 2 以下であり、
    ガスクロマトグラフィー質量分析法により定量される揮発性の炭素数12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量としてフィルム質量に対してn−テトラデカン換算量で2000ppm以下であることを特徴とする低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  2. 耐ピンホール性が8個以下、静摩擦係数が0.4以下、耐ブロッキング性が300mN以下であることを特徴とする請求項1に記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  3. 中間層および面材層を構成するポリエチレン系樹脂が、エチレンと炭素数が3〜12のα−オレフィンの共重合体よりなる線状低密度ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  4. 中間層の厚みが積層体の総厚みに対して40〜90%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  5. 面材層を構成するポリエチレン系樹脂が有機滑剤100〜1000ppmおよび平均粒子径5〜20μmの球状粒子4000〜15000ppmが含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  6. 上記構成の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造工程で発生する回収樹脂を中間層に配合してなることを特徴とする請求項のいずれかに記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  7. スクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppm以下であるポリエチレン系樹脂を主成分とする組成物を溶融し、中間層用とその両面の面材層用の少なくとも3層よりなるTスロット型多層押出しダイを用いてダイス出口の樹脂温度が150〜200℃で製膜するポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法であって、
    上記中間層用のポリエチレン系樹脂の密度(A)が880〜930kg/m 3 であり、上記面材層用のポリエチレン系樹脂の密度(B)が900〜960kg/m 3 であり、かつ(B)>(A)であり、
    上記ポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)が、1〜100g/10minの範囲にあり、
    上記樹脂組成物が、減圧下、50℃以上で、軟化点未満の温度で加熱処理したものであることを特徴とする低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法。
  8. ダイスより押し出されたフィルムを冷却ロールに密着させるに際して、エアーノズル法、エアーチャンバー法あるいはエアーナイフ法および真空チャンバー法を同時に作用してなることを特徴とする請求項に記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法。
  9. 融された樹脂組成物を濾過精度が100μm以下であるフィルターで濾過し、ダイスより押し出すことを特徴とする請求項またはに記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法。
  10. 濾過を2段で行うことを特徴とする請求項に記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法。
  11. 上記構成の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造工程で発生する回収樹脂を中間層用のポリエチレン系樹脂に配合することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法。
  12. 上記回収樹脂中のガスクロマトグラフィー質量分析法で定量される揮発性の炭素数が12から16のパラフィンおよびオレフィンの総量が樹脂質量に対してn−テトラデカン量換算値で3000ppm以下であることを特徴とする請求項11に記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムの製造方法。
  13. 請求項7〜12のいずれかに記載の製造方法により得られる低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルム。
  14. 請求項1〜6,13のいずれかに記載の低臭気性ポリエチレン系樹脂積層フィルムを内層フィルムとした容器。
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