JP4747803B2 - 機能性建材 - Google Patents

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本願発明は、機能性建材に関するものである。
近年、住居の高い密閉性、エアコンの普及及びカーペット類の敷設等により、ダニの生息に適した条件の環境が整えられ、ダニの繁殖を助長している。ダニは特に寝具やカーペット、ソファーに多く生息しており、喘息、皮膚炎等のアレルギー性疾患の原因となることから、ダニ発生の抑制を目的として、光触媒機能と吸放湿性を有する内装用化粧材(たとえば、特許文献1参照)や、防ダニ物質を塗料、顔料および接着剤に混入した建材(たとえば、特許文献2参照)が提案されている。
しかしながら、上記の内装用化粧材や建材はいずれも内装用化粧材および建材自体でのダニ発生の抑制に効果はあるものの、居室内で発生したダニを低減・除去するものではなく、より効果的な駆除が要望されているのが実情である。
ダニを低減・駆除させる方法としては、有機リン系化合物、カーバメイト系化合物、ピレスロイド系化合物等の殺ダニ剤を散布する方法、誘引剤でダニ自体を誘引して物理的に除去する方法、掃除機で物理的に除去する方法等が知られている。誘引剤を用いて物理的に除去する方法としては、たとえば、特許文献3では誘引剤としてフルーツエキスからなるフェロモンフレーバーを用いているが、それ以外に、炭素数14〜18の脂肪酸エステル、食品フレーバー、炭素数4〜18の直鎖脂肪酸、フェロモン等の誘引剤でダニ個体を誘引し、粘着剤等で捕集する方法が提案されている。掃除機を用いて物理的に除去する方法としては、その除去効率を上げるため室内処理用粉末状組成物や食餌性誘引物質をあらかじめ撒く方法が提案されている。また、最近では、ダニのアレルゲンを失活させる掃除機も提案されている。
特開平11−254632号公報 特開2000−160716号公報 特開2002−253103号公報
しかしながら、殺ダニ剤で駆除した場合は、畳、絨毯、布団等に残る薬物自体の安全性の問題や、ダニの死骸より生じるダニアレルゲンの問題があった。また、誘引剤を用いる方法や掃除機で除去する際に食餌性誘引物質を用いて物理的に駆除する方法では、掃除者に大きな負担を与えてしまうという問題があった。
そこで、本願発明は、以上の通りの背景から、掃除者の負担を軽減し、かつ、ダニの死骸やダニの排出物が原因となるダニアレルゲンを低減・除去することができる機能性建材を提供することを課題としている。
本願発明の機能性建材は、前記の課題を解決するものとして、第1には、建材の基材表面に、アレルゲン不活性化材とダニ誘引剤とを配したことを特徴とする。
また、第2には、上記の機能性建材において、基材表面上に、ダニ誘引剤を含む誘引層と、アレルゲン不活性化材、および、ダニの死骸もしくはダニの排出物を捕捉可能に吸着する吸着剤を含む不活性化層とが順次積層されてなることを特徴とし、第3には、この不活性化層は、アレルゲン不活性化材と吸着剤が平面的に交互に配設されてなることを特徴とする。
第4には、上記第1の発明の機能性建材において、基材表面上に、ダニ誘引剤、アレルゲン不活性化材、およびダニの死骸もしくはダニの排出物を捕捉可能に吸着する吸着剤を含む混合層が積層されてなることを特徴とする。
そして、第5には、上記第1から第4のいずれかの機能性建材において、ダニ誘引剤がマイクロカプセル内部に保持されていることを特徴とする。
第6には、上記第1から第5のいずれかの機能性建材において、アレルゲン不活性化材が光触媒であることを特徴とする。
上記第1の発明によれば、アレルゲン不活性化材を基材表面に現出させて、このアレルゲン不活性化材近傍にダニ誘引剤を配したことにより、掃除者の負担を軽減し、かつ、ダニの死骸やダニの排出物が原因となるダニアレルゲンを低減・除去することができる。
上記第2の発明によれば、基材表面上に、ダニ誘引剤を含む誘引層と、アレルゲン不活性化材および吸着剤を含む不活性化層とが順次積層されてなることにより、より一層効果的にダニアレルゲンを低減・除去することができる。
上記第3の発明によれば、アレルゲン不活性化材と吸着剤が平面的に交互に配設されてなることにより、アレルゲン不活性化材近傍でダニの死骸やダニの排出物を捕捉し、効率よく不活性化することができる。
上記第4の発明によれば、基材表面上に、ダニ誘引剤、アレルゲン不活性化材および吸着剤を含む混合層が積層されてなることにより、より簡便な機能性建材の製造が可能となる。
上記第5の発明によれば、ダニ誘引剤がマイクロカプセル内部に保持されていることにより、ダニ誘引物質の徐放を必要最小限に制御することができ、長期間のダニ誘引剤の徐放を実現することができる。
上記第6の発明によれば、アレルゲン不活性化材が光触媒であることにより、半永久的に安全にダニアレルゲンを不活性化することができる。
本願発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。
本願発明の機能性建材は、アレルゲン不活性化材を基材表面に現出させた建材であって、このアレルゲン不活性化材近傍にダニ誘引剤を配したことを特徴としている。このような機能性建材は、ダニ誘引剤によってダニを誘い出し、基材表面に現出されたアレルゲン不活性化材によってダニの死骸や排出物が原因となるダニアレルゲンを不活性化させることができるので、効果的にダニアレルゲンを低減・除去することができるのである。さらには、掃除者の負担をも軽減することができる。
本願発明の機能性建材の好ましい態様として、たとえば図1に示すように、ダニ誘引剤1を含む誘引層と、アレルゲン不活性化材2および吸着剤3を含む不活性化層とが基材A表面上に順次積層されていてもよい。
ダニ誘引剤1は、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、オレイン酸エステル、ステアリン酸エステル等の炭素数14〜18の脂肪酸エステル、チョコレートフレーバー、アーモンドフレーバー、チーズフレーバー、バターフレーバー等の食品フレーバー、フェロモン等のダニ誘引物質からなり、一般的に用いられているダニ誘引剤1であってよい。そして、これらのダニ誘引物質を単独あるいは複数を併用したダニ誘引剤1を基材A表面に担持させて、誘引層を形成させる。なお、以上のダニ誘引剤1を基材A表面に担持させる際には、このダニ誘引剤1を溶剤、乳化剤、分散剤、噴射剤、徐放化剤等の各種の液体担体や固体担体に保持させて、水溶液剤、油剤、乳剤、懸濁剤、水和剤、噴射剤、徐放剤として、基材A表面に塗布あるいは吸着させて担持させてもよい。
以上のダニ誘引剤1は、5mg/m〜10g/mの範囲で基材A表面に担持させることが好ましい。5mg/m未満では十分な誘引効果を得られない場合があり、10g/mを超えると、ダニ誘引剤1の匂いが不快に感じることや基材A表面の変色の原因となる場合があるため好ましくない。
本願発明では、ダニ誘引剤1に長期間の徐放性を付与するために、マイクロカプセル内部にダニ誘引剤1を保持するようにしてもよい。このようなマイクロカプセルとしては、無機質の中空多孔質マイクロカプセルや、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の熱可塑性樹脂製の中空マイクロカプセル、あるいは不飽和ポリエステル、ポリエポキシド等の熱硬化性樹脂製の中空マイクロカプセル等を例示することができる。好ましくは、壁材がシリカやアルミナからなる無機質のマイクロカプセルを用いる。以上のようなマイクロカプセルにダニ誘引剤1を保持することによって、ダニ誘引物質の徐放を必要最小限に制御することができ、長期間のダニ誘引剤1の徐放を実現することができるのである。さらに、後述するようにアレルゲン不活性化材3として光触媒を用いた場合には、この光触媒の作用によるダニ誘引剤1の分解を防止することができる。また、光触媒でマイクロカプセルを暫時壊していくことで、ダニ誘引剤1の効果をより長期間持続させることができるのである。
マイクロカプセルの粒径としては、特に限定されないが、ダニ誘引剤1を十分に保持し、長期間の徐放を実現するためには、3〜30μmとすることが望ましい。
本願発明の不活性化層におけるアレルゲン不活性化材2としては、フタロシアニン化合物、フェノール性OH基を有するポリビニルフェノール、光触媒等が用いられる。なかでも、光触媒は半永久的に安全に用いることができるため好ましい。このような光触媒としては、TiO、ZnO、WO、Fe、ZnS、Pt/TiO等が例示されるが、室内で使用する場合、可視光型光触媒がより好ましい。たとえば、酸化チタンの酸素サイトの一部を窒素原子で置換、あるいは酸化チタン結晶の格子間、結晶粒界に窒素原子またはNOxを配してなる、Ti、O、Nの元素で構成されている窒素ドープ型酸化チタンや、これらに助触媒として白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の白金族金属や、NiOx、RuOx、RhOx等を担持させたものが挙げられる。
本願発明の不活性化層は、上記のアレルゲン不活性化材2以外に吸着剤3を含むものであるが、このような吸着剤3としては、ダニの死骸やダニの排出物を捕捉可能に吸着できるものであれば特に限定されない。その材質としては、好ましくは無機系のもので、たとえば、活性アルミナ、ゼオライト、シリカ、アパタイト、珪藻土、多孔質ケイ酸カルシウム、粉状活性炭、ベントナイト等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましく用いられる。
ここで、アレルゲン不活性化材2と吸着材3は、誘引層上で平面的に交互に配設されていてもよい。これは、アレルゲン不活性化剤2またはその群の近傍に吸着剤3またはその群が配設され、吸着剤3またはその群の近傍にアレルゲン不活性化剤2またはその群が配設されていればよく、たとえば、アレルゲン不活性化剤2からなる群と吸着剤3からなる群が誘引層上で縞状に形成されていることが考慮される。これによって、アレルゲン不活性化材2近傍でダニの死骸やダニの排出物を捕捉し、効率よく不活性化することができるのである。なお、図1は、アレルゲン不活性化剤2からなる群と吸着剤3からなる群が誘引層上で縞状に形成されている例を示している。
以上のアレルゲン不活性化剤2と吸着剤3は、たとえばバインダー(図示なし)で保持されて不活性化層を形成している。このバインダーは、不活性化層を誘引層に固定する作用をも有している。
このようなバインダーとしては、アクリル系、ウレタン系、フッ素系、シリコン系、アクリルシリコン系等の各種の樹脂成分が用いられ、これらの樹脂成分とともにアレルゲン不活性化剤および吸着剤をアルコール等の適当な溶剤に混合・分散させ、たとえば、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング等の一般的な手法で塗布して誘引層に固定している。なかでも、アクリルシリコン系、シリコン系のバインダーは、高強度で均一な塗膜を与えることから好ましい。分散性や安定性の向上、着色等の目的に応じて、分散剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、顔料、染料等を含有してもよい。
加えて、バインダーに発泡剤を混ぜたり、あるいは通気孔を設けたり等の処理を施して、不活性化層に細孔を設けて多孔質にすることが好ましい。このような不活性化層の細孔の存在は、誘引層におけるダニ誘引剤1のダニ誘引物質を居室内に発散させて効果的にダニを誘引するだけではなく、不活性化層の表面積を大きくしてアレルゲン不活性化材2や吸着剤3の効果を向上させ、ダニの死骸や排出物の捕捉効率をさらに向上させることができる。なお、細孔の孔径としては、ダニが誘引層に到達しない程度の大きさとすることが考慮される。
また、本願発明では、不活性化層に殺ダニ剤を含んでいてもよい。殺ダニ剤は、有機リン系化合物、カーバメイト系化合物、ビレスロイド系化合物等を挙げることができる。具体的には、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル、メソミル等のカーバメイト系化合物;天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、レスメトリン、フラメトリン、フタルスリン、ペルメトリン、フェノトリン、サイパーメスリン、シフェノトリン、フェンバレレート、プラレトリン、エンペントリン、イミプロトリン、トランスフルトリン等のピレスロイド系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;フィプロニル等のピラゾール系化合物;ホウ酸、ホウ砂等のホウ素系化合物;IBTA、IBTE等のチオシアノ系化合物;サリチル酸フェニル;安息香酸ベンジル等が挙げられる。これらの殺ダニ剤は1種または2種以上を混合して用いることができる。
本願発明の機能性建材において、用いられる基材Aとしては、壁紙、天井材、床材、造作材等の内装材やその周辺部材として用いられる各種のものから選択され、特に限定されない。具体的には、木材、合板、MDF、パーティクルボード等の木質基材、樹脂成形品等のプラスチック基材、ガラス、ホーロー、セラミックス、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ロックウール板、セメント板、粘土板、陶磁器質タイル、スレート等の無機質基材、さらには、各種シート、紙、繊維質シート、不織布等が挙げられる。さらに、以上の基材に有機塗装を施したものやこれらの基材を複数積層させたものであってよい。
図2には、本願発明の機能性建材の別の実施形態を例示している。この図によれば、ダニ誘引剤1、アレルゲン不活性化材2および吸着剤3を含む混合層が基材A表面上に積層されている。
ここで、ダニ誘引剤1、アレルゲン不活性化剤2および吸着剤3は、たとえばバインダー(図示なし)で保持されて混合層を形成している。このバインダーは、混合層を基材Aに固定する作用をも有している。
この実施形態では、図1のように誘引層と不活性化層を別々に基材表面に形成させる工程が必要ないので、より簡便に機能性建材を製造することができるのである。なお、この実施形態で用いられるダニ誘引剤1、アレルゲン不活性化剤2、吸着剤3、バインダー、基材Aは、図1の機能性建材で用いたものと同じものを用いることができるので、詳細な説明は省略する。もちろん、ダニ誘引剤1は、マイクロカプセル内部に保持するようにしてもよい。
また、この実施形態の混合層は、図1の不活性化層の形成方法において、アレルゲン不活性化剤2と吸着剤3にダニ誘引剤1を追加することによって形成することができる。たとえば、アクリル系、ウレタン系、フッ素系、シリコン系、アクリルシリコン系等の各種のバインダーの樹脂成分とともにアレルゲン不活性化剤2、吸着剤3およびダニ誘引剤1をアルコール等の適当な溶剤に混合・分散させ、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディッピング等の一般的な手法で基材A表面に塗布するようにしてもよい。もちろん、分散性や安定性の向上、着色等の目的に応じて、分散剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、顔料、染料等を含有してもよいし、殺ダニ剤を加えてもよい。
以上のとおりの機能性建材は、アレルゲン不活性化材2の近傍にダニ誘引剤1と吸着剤3が配されているので、ダニ誘引剤1によって効果的にダニを誘い出し、アレルゲン不活性化材2によって不活性化するとともに吸着剤3で捕捉して、ダニアレルゲンを低減・除去することができる。
本願発明の機能性建材の実施形態を例示した断面図である。 本願発明の機能性建材の別の実施形態を例示した断面図である。
符号の説明
1 ダニ誘引剤
2 アレルゲン不活性化材
3 吸着剤
A 基材

Claims (6)

  1. 建材の基材表面に、アレルゲン不活性化材とダニ誘引剤とを配したことを特徴とする機能性建材。
  2. 基材表面上に、ダニ誘引剤を含む誘引層と、アレルゲン不活性化材、および、ダニの死骸もしくはダニの排出物を捕捉可能に吸着する吸着剤を含む不活性化層とが順次積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の機能性建材。
  3. 不活性化層は、アレルゲン不活性化材と吸着剤が平面的に交互に配設されてなることを特徴とする請求項2に記載の機能性建材。
  4. 基材表面上に、ダニ誘引剤、アレルゲン不活性化材、およびダニの死骸もしくはダニの排出物を捕捉可能に吸着する吸着剤を含む混合層が積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の機能性建材。
  5. ダニ誘引剤は、マイクロカプセル内部に保持されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の機能性建材。
  6. アレルゲン不活性化材が光触媒であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の機能性建材。
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