JP4745496B2 - 浮遊式型枠支保工と水上構造物の構築方法 - Google Patents

浮遊式型枠支保工と水上構造物の構築方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中に打設した基礎杭群の上部に桟橋等のコンクリート製の水上構造物を構築するために使用される浮遊式型枠支保工及びそれを用いた水上構造物の構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水上から突出する杭群の頭部に海洋プラットフォームや桟橋などの水上構造物を施工するにあたっては、型枠の他に、この型枠を支承するための支保工が必要となる。
これらの構造物を施工するには、例えば特許第2815470号公報に記載されているように、フロートを使用して鋼製の支保工を杭間の所定位置へ浮上曳航し、該支保工を空中に吊上げて杭頭吊金物に固定した後に、その上に型枠を設置してコンクリートを打設し、さらに型枠の脱型及び支保工の解体を行う浮力調整式可動支保工による工法が知られている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
上記したような従来の技術にあっては、以下のような問題点がある。
<イ>型枠と支保工を水上の杭間まで曳航するためには、特別なフロートを配置し、このフロートを使用して順次運搬、移動を行う必要がある。
<ロ>型枠と支保工が別々である上、部材数が多いため、現場での組立・解体作業に時間と労力を要する。
<ハ>型枠の形状が箱型であるために、脱型の際に型枠とコンクリート粱の側面とが接触してしまいスムーズな脱型が行い難い場合がある。
<ニ>型枠組立、解体時に鋼製型枠の部材下の作業が多くなる。
【0004】
【本発明の目的】
本発明は上記したような従来の問題を解決するためになされたもので、水上構造物の施工に際して、型枠と支保工とを一体化し、迅速で安全に施工することができる浮遊式型枠支保工を提供することを目的とする。また本発明は水上構造物の施工に際して、施工性と安全性の改善を図ることができる水上構造物の構築方法を提供することを目的とする。さらに本発明は水上構造物の施工に際して、工期の短縮と工費の削減を図ることができる水上構造物の構築方法を提供することを目的とする。
本発明は、これらの目的の少なくとも一つを達成するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明は、行に配設した2本の縦材及び該縦材間に配設する複数の横材からなる、梯子状支保工と、前記支保工の上部に一体に取付けた、縦桁型枠及び横桁型枠を含んでなる板状型枠と、前記板状型枠の上部に取り付けた、截頭角錐状型枠とを備え、前記截頭角錐状型枠の底面は四角形状を呈し、前記截頭角錐状型枠の側面のうち前記縦材に沿う側面を回転可能に構成し、前記截頭角錐状型枠の内部には浮遊材を設置し、前記縦桁型枠が、前記截頭角錐状型枠の内部へスライド自在に収納されることを特徴とする、浮遊式型枠支保工である。
【0006】
また、本発明は、水中に打設した基礎杭群の上部に、場所打ちコンクリート構造物を構築する水上構造物の構築方法において、請求項1に記載の浮遊式型枠支保工を、浮遊状態で所定の杭間まで曳航した後に、杭頭上に据付けた設置架台によって空中に吊上げる工程と、杭間の空間を板状型枠によって閉塞する工程と、板状型枠と截頭角錐状型枠上に鉄筋を組立て、コンクリートを打設する工程と、所定養生期間後、截頭角錐状型枠の側面のうち前記縦材に沿う側面を内側に回転しながら、セットした前記型枠を脱型する工程と、浮遊式型枠支保工を水上に吊り下ろして浮かべ、次の施工区間へ移動する工程と、を備えたことを特徴とする、水上構造物の構築方法である。ここで、縦桁型枠をスライドすることによって、杭間の閉塞と型枠の脱型を行うことが可能である。
【0007】
【本発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明に係る浮遊式型枠支保工の実施の形態について説明する。
【0008】
<イ>基本構成
本発明においては、型枠と支保工とを一体化した浮遊式型枠支保工Aを使用する。前記浮遊式型枠支保工Aの一例を図1に示す。
浮遊式型枠支保工Aは、支保工1と、板状型枠2と截頭角錐状型枠3とからなり、前記截頭角錐状型枠3の内部に浮遊材4を取り付け、陸上等で一体に製作しておく。以下、各部について詳述する。
【0009】
<ロ>支保工
支保工1は、水中に設置した基礎杭群間に架設して型枠を支持する鋼製の支持枠体である。
前記支保工1は、縦方向に平行に配設した鋼管等からなる縦材1aの間に複数の横材1bを溶接等で固着して梯子状に形成する。
【0010】
<ハ>型枠
型枠は、上記支保工1の上に設置して成形面を形成し、その成形面上にコンクリート等の硬化材を打設して構造物の形状を形成するものである。
本発明の型枠は大きく分けると、板状型枠2と截頭角錐状型枠3とからなり、全て工場等で予め製作したものである。
【0011】
<ニ>截頭角錐状型枠
截頭角錐状型枠3は、水上構造物のスラブ部を形成するための型枠であり、少なくとも側面部3a、3bと天井部3cとからなり、かつ天井部3cの寸法を底部の寸法より狭くした截頭角錐状に形成する。
截頭角錐状型枠3は、前記支保工1の上に固着し、その内部には、発泡スチロール等の浮遊材4を設置して浮力を確保しておく。これによって、截頭角錐状型枠3、或いは浮遊式型枠支保工Aは、水中においてほぼ垂直の状態で浮かぶから、その移動や吊上げが容易となる。
また、截頭角錐状型枠3の側面3bは、スムーズな脱型を行うために、型枠頂部をヒンジ構造とし、回転可能に構成する。
そして、截頭角錐状型枠3の側面3bを内側に回転させ、強制的にコンクリートとの付着力を切ることにより、確実な脱型が可能となる。
【0012】
<ホ>板状型枠
板状型枠2は、水上構造物の梁又は桁部を形成するための鋼製の板体である。
詳しくは、横桁型枠2aと、縦桁型枠2b及び補助型枠2c、2dの三種類がある。
【0013】
<ホ−1>横桁型枠
横桁型枠2aは、前記截頭角錐状型枠3の側面3aと一体化すると共に、支保工1の上に固定する。この横桁型枠2aは、杭間に構築する横桁の床面を成形するために設けるものである。
【0014】
<ホ−2>縦桁型枠
縦桁型枠2bは、前記支保工1と、例えば、ローラ構造等の公知のスライド機構によって連結してスライド可能に構成する。
この縦桁型枠2bは、杭体間に構築する縦桁の床面を成形するために設ける成形面であり、杭間移動時には、前記截頭角錐状型枠3の底部に収納できるようなっている。
【0015】
<ホ−3>補助型枠
支保工1の側端には、杭廻りの空間を閉塞するために、一対の分割した補助型枠2c、2dを取り付ける。補助型枠2cは杭断面を外装し得る寸法のU字形の板体であり、補助型枠2dは略長方形の板体である。
前記補助型枠2c、2dは、図2に示すように、それぞれ隣り合う支保工1の縦材1aの側端にヒンジを介して回転自在に取り付けておき、所定の位置で水平に引き起こすことによって、杭6廻りの空間を閉塞する。
【0016】
<ヘ>設置架台
設置架台5は、図2に示すように、杭6頭部上に架設した結構材7上に設置する。前記設置架台5は、チェーンブロック9等の吊材を介して前記浮遊式型枠支保工Aを吊下げて仮支持するための架台である。
前記設置架台5は、例えばH型鋼等の鋼材からなる鉛直方向の支持材51と水平方向の受け材52、53とを剛結して門型状に形成する。
そして、前記型枠支保工Aを前記設置架台5によって吊下げた状態で支持することにより、その位置及びレベルの調整を容易に行うことが可能となる。
【0017】
次に上記浮遊式型枠支保工を使用した水上構造物の構築方法を施工順序に従って説明する。
【0018】
<イ>曳航
実際の施工を行うに際し、事前に複数本の杭6を水上から水底にむけて打設し、各杭6の頭部に結構材7、設置架台5及び浮遊式型枠支保工Aを支持するための吊り固定用金物などを設けておく。
一方、浮遊式型枠支保工Aは、現場付近のドックにおいて製造し、水上又は海上に浮べる。そして、小型船舶等により杭6群に向けて曳航する。
この際、前記型枠支保工Aには、浮力確保用の発泡スチロール等の浮遊材4が内蔵されているため、気象等の状況に応じて、所定の喫水面を設定することができ、安全且つ容易な曳航をすることが可能となる。
なお、所定の施工区間において、複数の浮遊式型枠支保工Aを各杭6間に順次並列する。
【0019】
<ロ>吊上げ・固定
浮遊状態で所定の杭6間まで曳航したら、クレーン等によって前記浮遊式型枠支保工Aを所定の高さまで吊上げる。その後、支保工1の縦材1aと連結した鋼棒、鋼線等の吊材8を利用して杭6の頭部から吊下げる(図2、3)。
この際、前記型枠支保工Aを前記結構材7上に設置した前記設置架台5に盛り替え、チェーンブロック9を使用し、その位置及びレベルの調整を行う。これによって、クレーンを使用する必要がなく、取り扱いが簡単になり、施工性と安全性が向上する(図2、3)。
ここで、截頭角錐状型枠3のセットが完了する。
【0020】
<ハ>杭間の閉塞
次に、スラブ型枠3(截頭角錐状型枠3)の底部に収納された桁型枠2bを図4に示すように、横方向にスライドさせながら引き出し、先行して設置した隣接する支保工1の縦材1a上に載置する。その後、ボルド、Uクリップ等を使って、前記縦桁型枠2bの両端部を隣り合う縦材1a、1a上に固定する(図4)。一方、隣り合う支保工1の縦材1aの側端部には、それぞれ補助型枠2c、2dがヒンジによって回転自在に取付けてあるから、前記型枠支保工Aを吊上げると、補助型枠2c、2dは垂れ下がることになる。そこで、これらの補助型枠2c、2dを順次水平に引き起し、それらの自由端をピン類で軸止めすることにより、上記縦桁型枠2bと共に、杭6間の空間を閉塞する(図5)。なお、補助型枠2c、2dと杭体6との間に形成された空隙は、必要に応じて別途の枠材を使用して閉塞する。また、複数の浮遊型枠支保工A群からなる型枠の最外郭部は、必要に応じて、公知の型枠で包囲する。ここで、横桁型枠2aと縦桁型枠2b及び補助型枠2c、2dからなる板状型枠2のセットが完了する。
【0021】
<ニ>コンクリート打設
支保工1で支持した板状型枠2とスラブ型枠3の上に鉄筋の組立を行い、完了後、コンクリートを打設してスラブ部10aと梁部10bとからなる水上構造物10を構築する。水上構造物10の重量は、吊材8を介して杭体6によって支持される。
【0022】
<ホ>脱型
所定の養生期間経過後、セットした前記型枠2、3を脱型する。脱型作業は、前記型枠2、3と支保工1と一体に取付けたまま、その自重を利用して脱型するが、詳しくは次の順序で行う。
(a)スラブ型枠3の側面と打設したコンクリートの付着力が大きく、自重のみによる脱型が困難な場合は、図6のように、スラブ型枠3の両側面3b、3bを内側に回転して引寄せることにより、強制的にコンクリートと型枠側面を縁切りして脱型する。
(b)板状型枠2の縦桁型枠2bは、支保工1の縦材1aとの接合ボルトなどを外し、スラブ型枠3の底部にスライド収納を行って脱型する。
(c)板状型枠2の補助型枠2c、2dは、それらの自由端に軸止めするピン類を抜き取り、下方へ回転させて脱型する。
【0023】
<ヘ>吊り下ろし・移動
吊材8を切断して脱型した前記型枠支保工Aを図7のように、クレーンを用いて水中に静かに吊り下ろす。
この際、吊材8切断時には、事前にスラブ部10aに貫通して設置した仮吊り鋼棒の先端部にストッパーをつけ、水中に一気に落下しないようにする。そして、コンクリートと型枠面の付着が完全に切れたことを確認後、仮吊り鋼棒に玉掛けしクレーンで吊った状態で、ストッパーを解除し、緩やかに水上へ下ろし、自力浮上させる。
次に、玉掛け取り外し後、小型船舶等により前記型枠支保工Aを杭列間より曳航しながら引き出し、次の施工区間へ移動する。
以上の工程を繰り返し行って、所定の施工区間単位毎に水上構造物10を順次構築していく。
【0024】
【本発明の効果】
本発明は以上説明したようになるから、次のような効果を得ることができる。
<イ>支保工と板状及びスラブ型枠とが一体化となり、かつ浮力の調整が自由であるため、作業が迅速で経済的である。
<ロ>一体化した浮遊式型枠支保工の吊り上げと吊り下ろし、移動の作業だけで連続して施工することができるため、大幅な工期短縮を図ることができる。
<ハ>現場での型枠組立・解体作業が殆んどないため、狭い作業空間に作業員が立ち入る必要がなくなり、安全に施工することが可能となる。
<ニ>スラブ型枠の形状が箱型ではなく截頭角錐状に形成し、かつ、その側面の一部を回転自在に構成する。そのために、脱型に際して型枠とコンクリートの側面とが接触することがなくスムーズな脱型作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の浮遊式型枠支保工の概略斜視図
【図2】浮遊式型枠支保工の設置状況を示す概略斜視図
【図3】水上構造物の構築方法における浮遊式型枠支保工の吊上げ状況を示す図
【図4】水上構造物の構築方法における縦桁型枠のセット状況を示す図
【図5】水上構造物の構築方法における補助型枠のセット状況を示す図
【図6】水上構造物の構築方法における縦桁及びスラブ型枠の脱型状況を示す図
【図7】水上構造物の構築方法における浮遊式型枠支保工の吊下し状況を示す図
【符号の説明】
A・・・浮遊式型枠支保工
1・・・支保工
1a・・縦材
1b・・横材
2・・・板状型枠
2a・・横桁型枠
2b・・縦桁型枠
2c・・補助型枠
2d・・補助型枠
3・・・截頭角錐状型枠(スラブ型枠)
3a・・側面部
3b・・側面部(可動)
3c・・天井部
4・・・浮遊材
5・・・設置架台
51・・支持材
52・・受け材
53・・受け材
6・・・杭
7・・・結構材
8・・・吊材
9・・・チェーンブロック
10・・水上構造物
10a・スラブ部
10b・梁又は桁部

Claims (2)

  1. 行に配設した2本の縦材及び該縦材間に配設する複数の横材からなる、梯子状支保工と、
    前記支保工の上部に一体に取付けた、縦桁型枠及び横桁型枠を含んでなる板状型枠と、
    前記板状型枠の上部に取り付けた、截頭角錐状型枠とを備え、
    前記截頭角錐状型枠の底面は四角形状を呈し、
    前記截頭角錐状型枠の側面のうち前記縦材に沿う側面を回転可能に構成し、
    前記截頭角錐状型枠の内部には浮遊材を設置し、
    前記縦桁型枠が、前記截頭角錐状型枠の内部へスライド自在に収納されることを特徴とする、
    浮遊式型枠支保工。
  2. 水中に打設した基礎杭群の上部に、場所打ちコンクリート構造物を構築する水上構造物の構築方法において、
    請求項1に記載の浮遊式型枠支保工を、浮遊状態で所定の杭間まで曳航した後に、杭頭上に据付けた設置架台によって空中に吊上げる工程と、
    杭間の空間を板状型枠によって閉塞する工程と、
    板状型枠と截頭角錐状型枠上に鉄筋を組立て、コンクリートを打設する工程と、
    所定養生期間後、截頭角錐状型枠の側面のうち前記縦材に沿う側面を内側に回転しながら、セットした前記型枠を脱型する工程と、
    浮遊式型枠支保工を水上に吊り下ろして浮かべ、次の施工区間へ移動する工程と、を備えたことを特徴とする、水上構造物の構築方法。
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