JP4744892B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
請求項1の発明にかかるプラズマディスプレイパネルについて、そのプラズマディスプレイパネルに複数の積層体の一部として含まれる近赤外線吸収フィルター(1)は、近赤外線吸収剤としてのジイモニウム塩化合物を含有するポリエステルを250℃以下で溶融押し出しした後、二軸配向させたフィルム(2,3,7)であって、このポリエステルの融点が200〜225℃に設定され、この二軸配向させたフィルムの820〜1100nmの近赤外線平均透過率は、9.5%以下である。このポリエステルの融点については次のように考察した。耐熱性が改良されたジイモニウム塩化合物でも260℃以上で分解が加速し、耐熱性が特に優れない近赤外線吸収剤は240℃以上で分解が加速する。押出成形機による溶融押出しは、通常、ポリエステルの融点に余裕温度(約30℃)を加えたメルトライン温度で行われる。従って、耐熱性が改良されたジイモニウム塩化合物においてポリエステルの融点は230℃が上限となる。一方、融点の下限はフィルターの使用時の最大温度よりも高いことが必要であり、一般に融点以下50℃程度までが連続使用温度と考えられる。PDPは最高で120℃程度と言われているので、融点の下限は170℃程度と言える。使用時の安定使用を考えると、さらに融点は高い方が好ましく、実際には200℃以上が好ましい。以上の考察から、このポリエステルの融点については、230℃以下の範囲中、170℃以上230℃以下、好ましくは200℃以上225℃以下、さらに好ましくは210℃以上220℃以下に設定することができる。請求項1の発明では、近赤外線吸収剤の分解温度よりも低い温度で加工することが可能となるため、近赤外線吸収剤の劣化(分解や変質)を抑制して近赤外線吸収能を維持することができる。
<図1に示す各種の近赤外線吸収フィルター1についての概要>
図1(a)で概略的に示す近赤外線吸収フィルター1は、押出成形された単層のフィルム2であって、近赤外線吸収剤と所定粒子とを均一に混合含有するポリエステルを二軸配向させたものである。この近赤外線吸収剤としては、ジイモニウム塩化合物を採用することができるが、その他の既存のもの(800〜1100nmに吸収極大波長を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、インドアニリン化合物、ベンゾピラン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物、スクアリリウム化合物、ニッケル錯体化合物、銅化合物、タングステン化合物、酸化インジウム錫、酸化アンチモン錫、リン酸イッテルビウム、及びこれらの混合物)を採用してもよい。この所定粒子としては、数μmの直径を持つシリカ粒子を採用することができるが、その他の既存のもの(例えば、炭酸カルシウム粒子など)を採用してもよい。この所定粒子をポリエステルフィルムの両面のうち少なくとも一方の面に露出させることにより、ポリエステルフィルムを巻いた状態での密着性を軽減して滑り易くすることができる。特に、このポリエステルにおいて押出成形時の融点は230℃以下に設定されている。ちなみに、以降に記載する「近赤外線吸収剤」や「所定粒子」や「ポリエステル」については、上記のものを指す。
図2(a)で概略的に示すプラズマディスプレイ用光学フィルター8は、近赤外線吸収剤を均一に混合含有するポリエステルからなる近赤外線カット層4と、画質補正剤と所定粒子とを均一に混合含有するポリエステルからなる画質補正層10とが、共押出法により一体成形されて積層された二層の二軸配向フィルム9である。この画質補正剤としては、560〜600nmに吸収極大波長を有する可視光線を吸収する化合物であるテトラアザポルフィリン化合物を採用しているが、その他既存のもの(560〜600nmに吸収極大波長を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、アゾ化合物、フタロシアニン化合物)を採用してもよい。ちなみに、以降に記載する「画質補正剤」については、上記のものを指す。なお、この光学フィルター8を後記プラズマディスプレイパネル12に利用する場合には、プラズマディスプレイパネル(以降、PDPと略記することもある。)側に近赤外線カット層4が配設される。
図2(c)で概略的に示すプラズマディスプレイ用光学フィルター8は、近赤外線吸収剤と所定粒子とを均一に混合含有するポリエステルからなる近赤外線カット層4と、画質補正剤を均一に混合含有するポリエステルからなる画質補正層10とが、共押出法により一体成形されて積層された二層の二軸配向フィルム9である。なお、前述した場合と同様にPDP側に近赤外線カット層4が配設される。
図3(a)で概略的に示すプラズマディスプレイ用光学フィルター8は、画質補正剤を均一に混合含有するポリエステルからなる画質補正層10と、所定粒子を均一に混合含有するポリエステルからなる粒子含有層5と、この画質補正層10と粒子含有層5との間で近赤外線吸収剤を均一に混合含有するポリエステルからなる近赤外線カット層4とが、共押出法により一体成形されて積層された三層の二軸配向フィルム11である。なお、前述した場合と同様にPDP側に画質補正層10が配設される。
図3(c)で概略的に示すプラズマディスプレイ用光学フィルター8は、画質補正剤と所定粒子とを均一に混合含有するポリエステルからなる画質補正層10と、所定粒子を含有しないポリエステルからなる粒子非含有層6と、この画質補正層10と粒子非含有層6との間で近赤外線吸収剤を均一に混合含有するポリエステルからなる近赤外線カット層4とが、共押出法により一体成形されて積層された三層の二軸配向フィルム11である。なお、前述した場合と同様にPDP側に画質補正層10が配設される。
図3(e)で概略的に示すプラズマディスプレイ用光学フィルター8は、画質補正剤と所定粒子とを均一に混合含有するポリエステルからなる画質補正層10と、所定粒子を均一に混合含有するポリエステルからなる粒子含有層5と、この画質補正層10と粒子含有層5との間で近赤外線吸収剤を均一に混合含有するポリエステルからなる近赤外線カット層4とが、共押出法により一体成形されて積層された三層の二軸配向フィルム11である。なお、前述した場合と同様にPDP側に画質補正層10が配設される。
<図4に示す各種のプラズマディスプレイパネル12についての概要>
図4(a)で概略的に示すプラズマディスプレイパネル12は、複数の積層体として、反射防止層である単層のフィルム13と、紫外線吸収粘着剤層である単層のフィルム14と、ガラス基板15と、粘着剤層である単層のフィルム16と、電磁波カット層である単層のフィルム17と、粘着剤層である単層のフィルム18と、画質補正剤を均一に混合含有するポリエステルを二軸配向させた単層のフィルム19とを含むとともに、図1(b)で概略的に示す近赤外線吸収フィルター1におけるフィルム3を含む。前記フィルム19とフィルム3とフィルム18とフィルム17とフィルム16とガラス基板15とフィルム14とフィルム13とがPDP側から順次並べられて積層されている。このフィルム19はこのフィルム3の近赤外線カット層4に対し付着されている。ここに「付着」とは、広義に解釈し、液体を塗布して乾燥する場合や、接着剤により貼り合せる場合や、工程紙などに塗布してあるものを貼り合わせて転写することにより工程紙を剥がし取る場合などを含む概念であって、その付着状態のものすべてを広い意味でフィルムと称する。ちなみに、以降に記載する「付着」については、上記のものを指す。
まず、以下の諸例で使用したポリエステル材料について説明する。
A:エチレングリコールとイソフタル酸とテレフタル酸とから重縮合され、平均粒径2.2ミクロンのシリカ粒子600ppmを含むペレット状にしたポリエステル材料。
* 実施例1
ポリエステルAと日本化薬社製KAYASORB IRG−022とを300:1でドライブレンドした材料を押出成形機に投入した。この押出成形機では、メルトライン温度を230℃に設定して溶融押出しを行い、溶融樹脂をTダイからシート状に押し出した。そのシート状溶融樹脂を20℃の冷却ドラム上にキャスティングした。このキャスティングの際、静電印加密着法を適用した。このようにして製造した未延伸シートを縦延伸工程に導いた。この縦延伸工程では、ロール延伸法を採用し、複数本のセラミックロールにより70℃に予熱するとともにIRヒーターも併用して3.0倍の延伸倍率で長手方向に延伸した。次いで、この一軸延伸フィルムをテンターに導き、90℃で予熱した後、延伸倍率4.0倍で幅方向に延伸した。その後、同じテンター内で緊張下180℃の温度で熱固定した後、150℃の温度で3%幅方向に弛緩処理を行い、厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
前記実施例1において、ポリエステルAを、ポリエステルB(融点220℃)に変更するとともにメルトライン温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様に製膜を行って、厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
ポリエステルCを第1の押出成形機21に投入し、ポリエステルAと日本化薬社製KAYASORB IRG−022とを270:1でドライブレンドした材料を第2の押出成形機22に投入した。これらの押出成形機21,22では、メルトライン温度を230℃に設定して溶融押出しを行い、その溶融押出しの直前に、ポリエステルA層をポリエステルC層がサンドイッチするC/A/Cの順番で厚み比が1/8/1となるように、各押出成形機21,22の流路を合わせて、溶融樹脂をTダイ23からシート状に共押出した。そのシート状溶融樹脂を20℃の冷却ドラム24上にキャスティングした。このキャスティングの際、静電印加密着法を適用した。このようにして製造した未延伸シートを縦延伸機25に導いた。この縦延伸機25では、ロール延伸法を採用し、複数本のセラミックロールにより70℃に予熱するとともにIRヒーターも併用して3.0倍の延伸倍率で長手方向に延伸した。次いで、この一軸延伸フィルムをテンターに導いて90℃で予熱した後、横延伸機26に導いて4.0倍の延伸倍率で幅方向に延伸した。その後、同じテンター内で緊張下180℃の温度で熱固定した後、150℃の温度で3%幅方向に弛緩処理を行い、厚さ25μmの二軸配向配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
前記実施例3において、ポリエステルA(融点=206℃)を、ポリエステルB(融点220℃)に変更するとともにメルトライン温度を250℃に変更した以外は、実施例3と同様に製膜を行って厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
ポリエステルB(融点220℃)と近赤外線吸収剤(日本化薬社製KAYASORB IRG−022)を270:1でドライブレンドした材料を第1の押出成形機21に投入し、ポリエステルBと560〜600nmに吸収極大波長を有する可視光線を吸収する画質補正剤(山田化学工業社製 TAP−2 テトラアザポルフィリン化合物)とを12000:1でドライブレンドしたポリエステル材料を第2の押出成形機22に投入した。これらの押出成形機29,22では、メルトライン温度を250℃に設定して溶融押出しを行い、その溶融押出しの直前にそれらの流路の厚み比が1/1となるように合わせて溶融樹脂をTダイ23からシート状に共押出した。そのシート状溶融樹脂を20℃の冷却ドラム24上にキャスティングした。このキャスティングの際、静電印加密着法を適用した。このようにして製造した未延伸シートを縦延伸機23に導いた。この縦延伸機23では、ロール延伸法を採用し、複数本のセラミックロールにより70℃に予熱するとともにIRヒーターも併用して3.0倍の延伸倍率で長手方向に延伸した。次いで、この一軸延伸フィルムをテンターに導いて90℃で予熱した後、横延伸機26に導いて4.0倍の延伸倍率で幅方向に延伸した。その後、同じテンター内で緊張下180℃の温度で熱固定した後、150℃の温度で3%幅方向に弛緩処理を行い、厚さ50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
前記実施例1において、ポリエステルA(融点=206℃)をポリエステルD(融点253℃)に変更するとともにメルトライン温度を290℃に変更する以外は、実施例1と同様に製膜を行って厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
前記実施例3において、ポリエステルA(融点=206℃)をポリエステルD(融点253℃)に変更するとともにメルトライン温度を290℃に変更する以外は、実施例3と同様に製膜を行って厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルム特性を下記表1に示す。
*1;島津製作所社製 分光光度計UV3100により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを1nmとして測定。
上記表1から、融点が230℃以下のポリエステルを用いた場合には、近赤外線吸収剤の劣化が抑えられるため、820nm−1100nmの近赤外線平均透過率が低く維持され、また劣化した近赤外線吸収剤による可視光の吸収が抑えられるため380nm−780nmの可視光線平均透過率も高く維持され、さらには、フィルターの外観も黄色や緑色となることがないことが分かる。
Claims (2)
- 近赤外線吸収剤としてのジイモニウム塩化合物を含有するポリエステルを250℃以下で溶融押し出しした後、二軸配向させたフィルムであって、このポリエステルの融点が200〜225℃であり、
前記二軸配向させたフィルムの820〜1100nmの近赤外線平均透過率は、9.5%以下である近赤外線吸収フィルターを、
複数の積層体の一部として含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。 - 近赤外線吸収剤としてのジイモニウム塩化合物を含有するポリエステルからなる近赤外線カット層と、560〜600nmに吸収極大波長を有する可視光線を吸収する化合物を含有するポリエステルからなる画質補正層とを備え、それらの層は押出成形機から250℃以下で共に溶融押出しされる共押出法により一体成形されて積層された二軸配向フィルムであって、これらのポリエステルの融点が200〜225℃であり、
前記二軸配向させたフィルムの820〜1100nmの近赤外線平均透過率は、9%以下であるプラズマディスプレイ用光学フィルターを、
複数の積層体の一部として含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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