JP2007256759A - 近赤外線吸収フィルムの製造方法 - Google Patents

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利武 鈴木
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Abstract

【課題】近赤外線領域に大きくて、かつ、幅広い吸収を有し、可視光領域の光線透過率が高く、光学特性の経時変化が少なく、かつ、近年のディスプレイの高輝度化、フルハイビジョン化、大画面化に対応しうる、塗膜外観に高度に優れて経時での外観劣化も少ない近赤外線吸収フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材フィルムの少なくとも片面に、近赤外線吸収層を積層してなる近赤外線吸収フィルムの製造方法であって、近赤外線吸収層は、バインダー樹脂、ジイモニウム塩系化合物を含む近赤外線吸収色素、アルコール系有機溶剤を含む有機溶剤からなる塗布液を20℃〜30℃の範囲に温調しながら透明基材フィルムに塗布し、初期乾燥を20℃〜30℃で10秒〜20秒間、風速2m/秒未満の湿度50%以下のドライエアーで行って積層されることを特徴とする近赤外線吸収フィルムの製造方法。

Description

本発明は、近赤外線を吸収する光学フィルター、特にディスプレイ用フィルターとして好適な近赤外線吸収フィルムの製造方法に関するものであり、詳しくは可視光線領域の透過率が高く、経時変化が少なく、近年のディスプレイの高輝度化、フルハイビジョン化、大画面化に対応しうる、塗膜外観に高度に優れ、経時での外観劣化も少ない近赤外線吸収フィルムの製造方法に関するものである。
近赤外線の吸収能を有する光学フィルターは、近赤外線を遮断し、可視光を通過させる性質を有しており、各種の用途に使用されている。
近年、薄型大画面ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されているが、プラズマディスプレイから放出される近赤外線により、近赤外線リモコンを使用する電子機器が誤動作を起こす問題があり、プラズマディスプレイの前面に上記の近赤外線吸収フィルムを使用されている。
近赤外線の吸収能を有するフィルターとしては、(1)燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有したフィルター、(2)屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルター、(3)共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルター、(4)樹脂に色素を分散又は溶解した層を積層したフィルター、が提案されている。
これらの中で(4)のフィルターは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きく、各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1〜10を参照)。
特開2002− 82219号公報 特開2002−138203号公報 特開2002−214427号公報 特開2002−264278号公報 特開2002−303720号公報 特開2002−333517号公報 特開2003− 82302号公報 特開2003− 96040号公報 特開2003−114323号公報 特開2003−403851号公報
しかしながら、これらの方法の中には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線を十分に遮断する能力を有し、かつ、長時間の使用でも経時変化のないものがあるが、近年のプラズマディスプレイの高輝度化、ハイビジョン放送による高精細化や高画質化に対して近赤外線吸収層の外観が十分に満足できるものではなかった。
また、近赤外線吸収層の外観向上のために、界面活性剤を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献11を参照)。
特開2004−234636号公報
しかしながら、界面活性剤はコート層の表面にブリードしているので、その上に別の層を積層したときに、密着性に劣りやすいという欠点を有する。特に、近赤外線吸収層の上に粘着剤層を積層する場合には経時による環境変化等により密着力の低下が起こり、肉眼では見えなかった欠点周辺の部分剥離による微小欠点の顕在化が起こることがあり、このため外観不良の発生が生じる場合がある。ところが、近赤外線吸収層と粘着層との密着耐久性について記載した特許はない。
本発明の目的は、前記の従来技術の課題を解決するためになされたものであり、近赤外線領域に大きくて、かつ、幅広い吸収を有し、可視光領域の光線透過率が高く、光学特性の経時変化が少なく、かつ、近年のディスプレイの高輝度化、フルハイビジョン化、大画面化に対応しうる、塗膜外観に高度に優れて経時での外観劣化も少ない近赤外線吸収フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明は、上記の背景技術に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた近赤外線吸収フィルムの製造方法とは、以下の通りである。
なお、本発明でいう「フィルム」は、所謂「シート」も含む概念である。この他、上記本発明の近赤外線吸収フィルムを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルターも、本発明に包含される。
第1の発明は、透明基材フィルムの少なくとも片面に、近赤外線吸収層を積層してなる近赤外線吸収フィルムの製造方法であって、近赤外線吸収層は、バインダー樹脂、ジイモニウム塩系化合物を含む近赤外線吸収色素、アルコール系有機溶剤を含む有機溶剤からなる塗布液を20℃〜30℃の範囲に温調しながら透明基材フィルムに塗布し、初期乾燥を20℃〜30℃で10秒〜20秒間、風速2m/秒未満の湿度50%以下のドライエアーで行って積層されることを特徴とする近赤外線吸収フィルムの製造方法である。
第2の発明は、近赤外線吸収層を形成する塗布液は、界面活性剤を含有しないか、あるいは界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量が得られた近赤外線吸収層に対し0.01質量%より少ないことを特徴とする第1の発明に記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法である。
第3の発明は、バインダー樹脂がアクリル系樹脂を含むことを特徴とする第1または2に記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法である。
本発明による近赤外線吸収フィルムを近赤外線吸収フィルターとしてプラズマディプレイの前面に設置した場合、従来の近赤外線吸収フィルターと同様に、ディスプレイから放出される不要な近赤外線を吸収し、精密機器の誤動作を防ぐことができるだけでなく、塗膜外観が経時においても良好を維持し、プラズマディスレイの高輝度化、ハイビジョン放送による高精細化や高画質化、大画面化に大きく寄与できるという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
(透明基材フィルム)
本発明において、透明基材フィルムは特に限定されるものではないが、全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが5%以下であることが好ましい。基材フィルムが透明性に劣る場合には、ディスプレイの輝度を低下させるだけでなく、画像のシャープさが不良となる。
このような透明基材フィルムとしては、例えばポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート、フェノール系、ウレタン系等のプラスチックフィルム、またはこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステル系フィルムであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
本発明で用いる透明基材フィルムとして好適なポリエステル系フィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸する。さらに、二軸延伸後に220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
フィルムには、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
本発明で用いる透明基材フィルムは、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。前記複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が特に好ましい。
透明基材フィルムの厚みは素材により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、下限は35μmが好ましく、より好ましくは50μmである。一方、厚みの上限は260μmが好ましく、より好ましくは200μmである。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、近赤外線吸収層の残留溶剤を少なくなるように乾燥時に加熱した場合に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
(中間層)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルム上に近赤外線吸収層を積層した構成になっているが、透明基材フィルムと近赤外線吸収層の密着性の向上や透明基材フィルムの透明性向上を目的に中間層を設けることが好ましい。なお、フィルム中に粒子を含有させない場合、粒子を含有する中間層をフィルム製造時に同時に設けることにより、ハンドリング性を維持しながら高度な透明性を得ることができる。
前記中間層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、基材および近赤外線吸収層との密着性が良好となる樹脂を1種以上選択することが重要であり、具体的には、基材及び近赤外線吸収層を構成する樹脂がエステル系であれば、類似した構造を有するポリエステル系、ポリエステルウレタン系を選定することが好ましい。
前記中間層には、密着性の向上、耐水性の向上を目的に架橋剤を含有させて架橋構造を形成させても構わない。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系が挙げられる。特に、樹脂が高温・高湿度下での白化や強度が低下する場合には、架橋剤による効果が顕著である。なお、架橋剤を用いずに、樹脂として自己架橋性を有するグラフト共重合樹脂を用いてもよい。
中間層には、表面に凹凸を形成させて滑り性を改善する目的で、各種の粒子を含有させてもよい。中間層中に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。なお、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。
さらに、中間層に各種機能を付与するために、界面活性剤、帯電防止剤、色素、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
中間層は目的とする機能を有する場合は単層でも構わないが、必要に応じて2層以上に積層しても構わない。
中間層の厚みは、目的とする機能を有すれば特に限定されるものではないが、0.01μm以上5μm以下が好ましい。厚みが薄い場合には中間層としても機能が発現し難くなり、逆に、厚い場合には透明性が不良となりやすくなる。
中間層を設ける方法としては、塗布法が好ましい。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法を用いて、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。これらの方式のうち、インラインコート方式がコスト面で優れるだけでなく、塗布層に粒子を含有させることで、透明基材フィルムに粒子を含有させる必要がなくなるため、透明性を高度に改善することができるため好ましい。
(近赤外線吸収層)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルム上に直接あるいは中間層を介して近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有する組成物からなる近赤外線吸収層を設けられている。上記の「近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有」とは、前記組成物中に近赤外線吸収色素と樹脂を80質量%以上含有することを意味する。前記組成物中の近赤外線吸収色素と樹脂の含有量の総和は、85質量%以上が好ましく、特に好ましくは90質量%以上である。
近赤外線吸収色素とは、波長800〜1200nmの近赤外線領域に極大吸収を有する色素であって、ジインモニウム系、フタロシアニン系、ジチオ−ル金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、ポリメチン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドオコリン系、トリフェニルメタン系、シアニン系、アゾ系、アミニウム系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して使用されるが、近赤外線領域の吸収が大きく、吸収域も広く、可視光領域の透過率も高い下記一般式(1)で示されるジイモニウム塩系化合物を含むことが好ましい
Figure 2007256759
(式中、R1〜R8は、夫々同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基を表す。R9〜R12は、それぞれ同一でも、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシル基を表す。R1〜R12で、置換基を結合できるものは置換基を有してもよい。X-は陰イオンを表す。)
上記一般式(1)のR1〜R8が、(a)アルキル基、(b)アリール基、(c)アルケニル基、(d)アラルキル基の場合、それぞれ以下の基が例示できる。
(a)アルキル基:メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基など。
(b)アリール基:フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル基、ナフチル基など。
(c)アルケニル基:ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基など。
(d)アラルキル基:ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基など。
また、上記一般式(1)のR9〜R12の(e)ハロゲン原子、(f)アミノ基、(g)アルキル基、(h)アルコキシル基としては、それぞれ、以下の基が例示できる。
(e)ハロゲン原子:フッ素、塩素、臭素など。
(f)アミノ基:ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基など。
(g)アルキル基:メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基など。
(h)アルコキシル基:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など。
また、上記一般式(1)におけるX−としては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンなどの陰イオンが挙げられる。
上記一般式(1)で示されるジインモニウム塩系化合物は、市販品を用いることができる。例えば、Kayasorb IRG−022、IRG−023、IRG−024、IRG−068(以上、日本化薬社製)、CIR−1080、CIR−1081、CIR−1083、CIR−1085、CIR−RL(以上、日本カーリット社製)などが好適である。特に高温、高湿下での劣化を防ぐ意味では上記の中でもR1〜R8をiso−ブチル基、対イオンをビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンとするジイモニウム塩化合物(日本カーリット製;CIR−RL)、(日本化薬社製;IRG−068)等を用いることが好ましい。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、前記の一般式(1)で示されるジイモニウム塩系化合物以外に、近赤外線領域の吸収域の拡大、色目の調整を目的として、他の近赤外線吸収色素、例えば、ネオンカット色素、キセノンカット色素等を併用することが好ましい。
前記のジインモニウム塩系化合物と併用し得る他の近赤外線吸収色素としては、フタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、スクアリリウム塩系化合物、ピリリウム塩系化合物、チオペリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、インドアニリンキレート系色素、インドナフトールキレート系色素、アゾ系色素、アゾキレート系色素、アミニウム塩系色素、キノン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、トリフェニルメタン系色素などが挙げられる。
例えば、上記フタロシアニン系化合物は、市販品を用いることができる。具体的には、Excolor IR−1、IR−2、IR−3、IR−4、IR−10、IR−10A、IR−12、IR−14、TXEX−805K、TXEX−809K、TXEX−810K、TXEX−811K、TXEX−812K、TXEX−813K、TXEX−814K(以上、日本触媒社製)、MIR−369、MIR−389(以上、三井化学社製)などが好適なものとして挙げられる。
また、上記ジチオール金属錯体系化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表され
る化合物が好適である。
Figure 2007256759
(式中、R13〜R16は、夫々同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基を表す。Mは、ニッケル、銅、コバルト、パラジウム、白金を表す。)
上記一般式(2)のR13〜R16の具体例としては、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシル基;フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基などのアラルキル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基などのアミノ基;が挙げられる。上記一般式(2)のジチオール金属錯体系化合物としては、例えば、三井化学製:SIR−128、SIR−130、SIR−132、SIR−159などの市販品も好適に用い得る。
また、シアニン系化合物としては、旭電化製のTZ−103、TZ−104、TZ−105、TZ−109、TZ−111、TZ−114、日本化薬製のCY−9、CY−10、CY−20、CY−30、山田化学製のIR−301などが好適である。
本発明において、目的とする近赤外線領域の吸収、可視光領域での透過率を制御するために、近赤外線吸収色素の量を、近赤外線吸収層の厚み方向における任意の面で0.01g/m2以上1.0g/m2以下の範囲で存在するように調整することが好ましい。単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、近赤外線領域での吸収能が不足しやすくなる。一方、単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量が多い場合には、可視光領域での透明性が不足して、ディスプレイの輝度が低下するという問題がある。
本発明において、近赤外線吸収色素は樹脂中に分散あるいは溶解した組成物として、塗布法により、透明基材フィルム上に積層される。樹脂としては、近赤外線吸収色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。中でも、柔軟性と基材との密着性、透明性及び経時安定性に優れる点から、アクリル系樹脂が好ましい。樹脂が硬い場合には、後加工の工程で塗膜に微小なひび割れが発生する場合がある。さらに、樹脂のガラス転移温度が、利用する機器の使用保証温度以上であることが好ましい。
前記近赤外線吸収層を形成する樹脂のガラス転移温度が機器使用温度以下であると、樹脂中に分散された色素同士が反応したり、樹脂が外気中の水分等を吸収したりして、色素やバインダ−樹脂の劣化が大きくなる。また、本発明において、前記樹脂のガラス転移温度は、機器使用温度以上であれば特に限定されないが、特に好ましくは85℃以上160℃以下が好ましい。なお、前記のガラス転移温度は、JIS−K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、25〜300℃の温度範囲にわたって10℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度を意味する。
前記樹脂のガラス転移温度が85℃未満の場合、高温高湿下において、近赤外線吸収色素が運動し易くなるため、該色素同士あるいは色素と樹脂との相互作用が生じ易く、該色素の変性が顕著となる傾向にある。そのためフィルムの分光特性や色調の変化が生じ易くなる傾向にある。
一方、前記樹脂のガラス転移温度が160℃を超える場合、該樹脂を溶剤に溶解し、透明基材フィルム上に塗布する時に、十分な乾燥をしようとすれば高温にしなければならない。その結果、熱シワによる基材の平面性不良、更には、色素の劣化が発生する。また、低温で乾燥した場合、乾燥時間が長く生産性が悪くなり、生産性が不良となる。また、十分な乾燥ができない可能性もあり、溶剤が塗膜中に残留し、前述のように樹脂の見かけのガラス転移温度が低下し、やはり、色素の変性を引き起こしやすくなる。
近赤外線吸収層における近赤外線吸収色素の含有量は、樹脂に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。近赤外線吸収色素の含有量の上限は、樹脂に対し8質量%がさらに好ましく、特に好ましくは6質量%である。また、近赤外線吸収色素の含有量の下限は、樹脂に対し2質量%がさらに好ましく、特に好ましくは3質量%である。
樹脂中の近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、目的とする近赤外線吸収能を達成するために、近赤外線吸収層の塗工量を増やす必要がある。この場合、塗膜を十分に乾燥しようとすれば、高温及び/又は長時間にする必要があり、色素の劣化や基材の平面性不良などが起こりやすくなる。特に、近赤外線吸収色素として、ジインモニウム塩系化合物を用いた場合、ジインモニウム塩系化合物が高温下や高湿下で変性し易く、近赤外線領域の吸収が小さくなったり、可視光線領域の一部の透過率が低下したりして、色調が変化し易い傾向がある。一方、樹脂中の近赤外線吸収色素の量が多い場合には、樹脂中の色素間の距離がより短くなる。そのため、色素間の相互作用が強くなり、残留溶剤を少なくしたとしても色素の経時的な変性が起こりやすくなる。
本発明において、近赤外線吸収層は、近赤外線吸収色素、樹脂、および有機溶剤を含む塗布液を、透明基材フィルム上に塗布、乾燥させて形成される。この際に、前記塗布液中にアルコール系有機溶剤を含有させることが重要である。アルコール系有機溶剤を含有させることにより、近赤外線吸収層の塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのハジキが改善される。
更には、液温を20〜30℃に保ち、初期乾燥を20〜30℃で10〜20秒間、風速2m/秒未満で行うことにより塗布液の消泡効果やレベリング性が向上し外観特性が良くなる。この場合、溶剤の揮発によるコート液の固形分濃度の変動を抑えるためにコート液の循環系にカバーを設置する等の工夫が望まれる。
また、上記乾燥時におけるブラッシングを防止するためには、湿度50%以下のドライエアーでの乾燥が好ましい。
アルコール系有機溶剤の添加量については他の溶剤との混合による色素の溶解性への支障がない範囲で任意であるが、上記効果を考慮するとコート液中で0.1質量%以上が好ましい。
また、揮発性の高いものを使用するときは、コート液の乾燥が速くなるために上記固形分濃度の変動や塗工斑の発生を生じ易くなるため、必要以上に添加しないことが好ましい。
以上を考慮すると、アルコール系機溶剤の添加量としてはコート液中で0.1質量%〜20.0質量%が好ましく、特に好ましくは1.0質量%〜10.0質量%である。
さらに、界面活性剤を添加することでも上記と同様の効果が生じるが界面活性剤が近赤外線吸収層の表面にブリードして局在化するためにこの上に積層する粘着層等との密着力が劣る傾向がある。この傾向は環境変化等の経時によって強調される。このため添加する量は0.01質量%より少なくする必要がある。
上記方法により安定した品質の近赤外線吸収フィルムを連続生産することが可能となる。
本発明において、近赤外線吸収層は、樹脂、近赤外線吸収色素、を含む塗布液を透明基材フィルム上に塗布・乾燥することにより積層されるが、該塗布液は、塗工性より有機溶剤により希釈することが必要である。
該有機溶剤としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。この際、外観向上のためにアルコール系有機溶剤を含むことが必須である。
近赤外線吸収色素および樹脂を有機溶剤中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下での攪拌、分散、または粉砕の方法が挙げられる。加温することにより色素及び樹脂の溶解性を向上することができ、未溶解物等による塗工外観の悪化を抑制することができる。また、樹脂及び色素を分散または粉砕して、大きさが0.3μm以下の微粒子状態で塗布液中に分散することにより、透明性に優れる塗布層を形成することが可能となる。分散機または粉砕機としては、公知のものを用いることができる。例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
塗布液中にコンタミや大きさが1μm以上の未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になるため、塗布する前に、フィルター等で除去する必要がある。フィルターとして、各種のものが好適に使用できるが、大きさが1μmの異物を99%以上除去できる濾過性能を有するフィルターを用いることが好ましい。大きさ1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗布液を塗布し乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、大きさが100〜1000μmの欠点になる場合がある。
塗布液中に含まれる樹脂及び色素等の固形分濃度は、10質量%以上30質量%が好ましい。固形分濃度が低い場合には、塗布後の乾燥に時間が掛かり、生産性が劣るばかりか、塗膜中に残存する溶剤量が増加し、経時安定性が不良となる。逆に、固形分濃度が高い場合には、塗布液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となる。塗布液の粘度は、10cps以上300cps以下が塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように有機溶剤で固形分濃度を調整することが好ましい。
本発明で、近赤外線吸収層を透明基材フィルム上に塗布する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増える。
近赤外線吸収層の乾燥後の塗布量は特に限定されないが、下限は1g/m2が好ましく、より好ましくは3g/m2であり、上限は50g/m2が好ましく、より好ましくは30g/m2である。乾燥後の塗布量が少ない場合には、近赤外線の吸収力が不足しやすくなる。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を増やすと、色素間の距離が短くなるため、色素間の相互作用が強くなる。その結果、色素の劣化等が起こりやすくなり、経時安定性が不良となる。逆に、乾燥後の塗布量が多い場合には、近赤外線の吸収能は十分であるが、可視光領域での透明性が低下し、ディスプレイの輝度が低下する。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を低減すると、光学特性は調節できるが、乾燥が不十分になりやすなる。その結果、塗膜中の残留溶剤により色素の経時安定性が不良となる。一方、乾燥を十分にした場合には基材の平面性が不良となる。
塗布液を透明基材フィルム上に塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
特に、外観向上を目的として、塗布液を20〜30℃の範囲に温調しながら塗布し、初期乾燥を20〜30℃で10〜20秒間、風速2m/秒未満で行うことが好ましい。この場合、塗布液の調温と低温、弱風の比較的長時間の乾燥工程を設けることにより液の消泡効果とレベリング性が向上する。初期乾燥が30℃以上だと液の蒸発が進行し易く特にレベリング性の向上が劣る。乾燥時間が20秒をこえると生産性が劣る。風速が2m/秒以上では液の蒸発が早くなりレベリング効果が不足しがちとなる。また、上記乾燥時におけるブラッシングを防止するためには、湿度50%以下のドライエアーでの乾燥が好ましい。
上記初期乾燥後の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上20m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。乾燥温度の下限は30℃がさらに好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点も発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、塗工外観は良好になる。しかしながら、乾燥に時間を要し生産性(コスト)の点で問題があるばかりか、ブラッシング等の問題が発生する場合がある。
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温とし、塗膜中の溶剤を減少させる必要があり、好ましい温度は、120℃以上180℃以下である。特に好ましくは、下限値が140℃であり、上限値は170℃である。温度が低い場合には、塗膜中の溶剤が減少しにくくなり、残留溶剤となって色素の経時的な安定性が不十分となる。逆に、高温の場合には、熱シワにより基材の平面性が不良となるだけでなく、近赤外線吸収色素が熱により劣化する。また、通過時間としては、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には塗膜中の残留溶剤量が多くなり経時安定性が不良となり、逆に時間が長い場合には、生産性が不良となるだけでなく、基材に熱シワが発生して平面性が不良となる。通過時間の上限は、生産性と平面性の点から、30秒とすることが特に好ましい。
乾燥の最終では、熱風温度を樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で基材の実温を樹脂のガラス転移温度以下に冷却することが好ましい。高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗工面がロール表面に接触した際に滑りが不良となり、キズ等が発生するだけでなく、カール等が発生する場合がある。
(近赤外線吸収フィルター)
本発明において近赤外線吸収フィルターとは、波長800〜1200nmの近赤外線領域の透過率が低く、波長400nm〜800nmの可視光領域の透過率が高いフィルターのことである。近赤外領域の透過率は低いほど好ましく、具体的には40%以下、より好ましくは30%以下である。前記の近赤外線領域の透過率が高い場合には、本発明の近赤外線吸収フィルムをプラズマディスプレイの前面フィルターの構成部材として使用した場合に、プラズマディスプレイから放出される近赤外線の吸収が不足し、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができない。また、ディスプレイ用フィルターとして使用する場合、前記の可視光領域の透過率は高ければ高いほどよく、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。可視光領域の透過率が低い場合には、ディスプレイの発色を妨げ、輝度の低い映像となる。
前記の透過率の調整は、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸
収色素の存在量により制御することができる。
近赤外線吸収フィルターの色調としては、Lab表色系で表現すると、a値は−10.0〜+10.0、b値は−10.0〜+10.0であることが好ましい。この範囲であれば、プラズマディスプレイの前面に設置した場合でもナチュラル色となり好ましい。
近赤外線吸収フィルターの色調の調整は、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量、更には、他の色補正色素を混合することにより制御できる。なお、後述の近赤外線吸収フィルターの前面または裏面に着色された粘着層や他の機能層(反射防止層、電磁波吸収層、紫外線吸収層など)を積層する場合には、それも含めてナチュラル色に近赤外線吸収フィルターの色調を調整することが好ましい。
本発明の近赤外線吸収層は、直径300μm以上、より好ましくは100μmのサイズの欠点が存在しないような塗膜外観にしなければならない。直径300μm以上の欠点は、プラズマディスプレイの前面に設置し、画像を表示した際に輝点として検出され、欠点が顕著化される。直径が100μm以上300μm未満の欠点も、粘着加工等の貼り合せにより、レンズ効果により強調される場合があり、できるだけ近赤外線吸収層に存在しないように制御しなければならない。また、塗工層の薄いスジ、ムラ等もディスプレイ前面
では顕著化されて問題となる。
近赤外線吸収フィルターは、高温、高湿度下に長期間放置されても、近赤外線の透過率、可視光の透過率が変化しないことが好ましい。高温、高湿度下の経時安定性が不良の場合には、ディスプレイの映像の色調が変化するばかりか、近赤外線リモコンを用いた電子機器の誤動作を防止する本発明の効果がなくなる場合がある。
経時安定性を良好にするには、近赤外線吸収層形成用の塗布液で使用する有機溶剤の種類、塗布層の厚み、乾燥条件等を制御することで、近赤外線吸収層中の残留溶剤量を低減することができる。また、近赤外線吸収層を構成する樹脂中の色素の含有量を調整することによっても近赤外線吸収層中の残留溶剤量を低減することができる。
(粘着剤層)
粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ポリビニルエーテル系、シリコーン系等が挙げられる。また、粘着剤層中には近赤外吸収層で用いた種々の色素を添加してもかまわない。上記粘着剤の中でも、高温高湿下での色素の吸収能の低下を防ぐ目的では特にアクリル系の粘着剤が好ましい。このアクリル系粘着剤層に含有するアクリル系樹脂については以下の状態が好ましい。
すなわち、−40℃〜80℃程度で粘着性を示し、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体および好ましくは共重合体である。前記アクリル系樹脂の単量体として用いられるアクリル酸エステルとしては、炭素数1〜12のアルキル基を有するものがあげられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルの他に、他の不飽和二重結合を有する単量体、例えば、オレフィン系、ビニル系(アクリル系を除く)等の単量体、例えば、エチレン、酢酸ビニル、スチレン等を共重合成分として含有させることもできる。これら他の不飽和二重結合を有する単量体は、20質量%以下の範囲で含有させることができる。
また、(メタ)アクリル系樹脂には前記(メタ)アクリル酸エステルと共に官能基を有する単量体を共存させることが好ましい。これにより上記(メタ)アクリル酸エステルと官能基を有する単量体が共重合し、官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂を得ることができる。(メタ)アクリル系樹脂に官能基を有する単量体を含有させることによって、該官能基と後述する架橋剤が反応して(メタ)アクリル系樹脂を架橋させることが可能になる。この架橋により粘着剤層と近赤外線吸収層との剥離が防止され、粘着剤層の機械的強度が向上する。
上記官能基を有する単量体としては(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシル基を有する脂肪族不飽和カルボン酸が挙げられる。該脂肪族不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル系樹脂中に5質量%以下、好ましくは3.5質量%以下の範囲で含有させることが好ましい。5質量%より多い場合では、粘着剤層に含有させた色素が退色し易く、剥離した後に糊残りが生じ易い。
その他の官能基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルエステル、2−ヒドロキシビニルエーテル等のヒドロキシル基を有するもの、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するもの、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を有するもの、その他、アクリロニトリルおよびアクリルアミド等があげられ、これらは単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
官能基を有する単量体の全含有量は、(メタ)アクリル系樹脂中に0.1〜20質量%の範囲が好ましい。この中でも特にアクリルアミド等のアマイド基を有する単量体を用いることが粘着剤の剥がれや発泡を防止できるので好ましい。
上記官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂を粘着剤層の構成成分として含有させる場合には、粘着剤層に架橋剤を含有させることが好ましい。架橋剤としては、多官能イソシアネート系架橋剤であるトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなど、多官能エポキシであるエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテルなど、多官能アジリジン系架橋剤であるN,N−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等、金属キレート系架橋剤であるアルミニウムのアセチルアセトン錯体、過酸化物であるベンゾイルパーオキサイド、メラミン系架橋剤等が挙げられる。これらは単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。その含有量は、0.01〜5質量%の範囲が好ましい。
本発明において、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は20万〜200万のものが好ましく、より好ましくは50万〜200万、さらに好ましくは70万〜150万のものである。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて測定した結果である。
また、前記粘着剤層には、可塑剤、シランカップリング剤等の粘着特性改質剤、顔料等の着色剤、シリカ、二酸化チタン、アルミナ、金属粉、金属酸化物粉等の無機フィラー、樹脂微粒子等が含有されていてもよく、それぞれ目的に応じて適宜の量で使用される。
本発明の近赤外線吸収フィルターは上記粘着剤を剥離処理が施された剥離性フィルムの上に塗布した後形成される粘着剤層の上に近赤外線吸収層が設けられた基材を近赤外線吸収層が粘着剤層と重なるように貼り合せることによって製造することができる。形成される粘着剤層の膜厚は、一般に5〜50μmの範囲に設定される。
本発明において、ディスプレイから放出される有害電磁波を遮断する目的で、赤外線吸収層と同一面、ないしは、反対面に導電層を直接或いは粘着剤を介して設けてもよい。該導電層は金属メッシュと導電薄膜の何れを用いても良く、金属メッシュを用いた場合、開口率が50%以上の金属メッシュ導電層を有している必要がある。金属メッシュの開口率が低ければ電磁波シ−ルド性は良好となるが光線透過率が低下する問題が有る、この為、良好な光線透過率を得る為には開口率が50%以上は必要となる。
本発明に用いられる金属メッシュとしては、電気電導性の高い金属箔にエッチング処理を施して、メッシュ状にしたものや、金属繊維を使った織物状のメッシュや、高分子繊維の表面に金属をメッキ等の手法を用いて付着させた繊維を用いてもよい。該電磁波吸収層に使われる金属は、電気電導性が高く、安定性が良ければいかなる金属でも良く特に限定されるものではないが、加工性、コストなどの観点より、好ましくは、銅、ニッケル、タングステンなどがよい。
また、導電薄膜を用いた場合、透明導電層はいかなる導電膜でもよいが、好ましくは、金属酸化物であることが好ましい。これによって、より高い可視光線透過率を得ることが出来る。また、本発明において透明導電層の導電率を向上させたい場合は、金属酸化物/金属/金属酸化物の3層以上の繰り返し構造であることが好ましい。金属を多層化することで、高い可視光線透過率を維持しながら、電導性を得ることができる。本発明に用いられる。金属酸化物は、電導性と可視光線透過性が有していれば如何なる金属酸化物でもよい。一例として、酸化錫、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ビスマスなどがある。以上は一例であり、特に限定されるものではない。また、本発明に用いられる金属層は、導電性の観点より、金、銀及びそれらを含む化合物が好ましい。
更に、導電層を多層化した場合、例えばくり返し層数が3層の場合、銀層の厚さは50〜200Åが好ましく、より好ましくは50〜100Åである。これよりも膜厚が厚い場合は、光線透過率が低下し、薄い場合は抵抗値が上がってしまう。また、金属酸化物層の厚さとしては、好ましくは、100〜1000Å、より好ましくは、100〜500Åである。この厚さより厚い場合には着色して色調が変ってしまい、薄い場合には抵抗値が上がってしまう。さらに、3層以上多層化する場合、例えば、金属酸化物/銀/金属酸化物/銀/金属酸化物のように5層とした場合、中心の金属酸化物の厚さは、それ以外の金属酸化物層の厚さよりも厚いことが好ましい。この様にすることで、多層膜全体の光線透過率が向上する。
本発明では、近赤外線吸収フィルムの赤外線吸収層と同一面、ないしは、反対面に反射防止層、きらつき防止層を直接或いは粘着剤を介して設けてもよい。
前記の近赤外線吸収フィルターでは、耐光性を向上させる目的で、紫外線吸収能を有する層を設けてもよい。紫外線吸収能を付与するためには、近赤外線吸収層、透明基材フィルム、粘着剤、反射防止層、ぎらつき防止層のいずれかに紫外線吸収剤を添加すればよい。この紫外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルターは、紫外線吸収層が近赤外線吸収層よりも表面側(ディスプレイ側とは反対側)になるように、ディスプレイの前面に配設することが特に好ましい。反対面紫外線吸収剤は、有機系紫外線防止剤、無機系紫外線防止剤等の公知のものが使用可能である。
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。また、本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
<塗布液粘度>
20℃に塗布液を調節し、東京計器製のB型粘度計(BL)を用いて、ローター回転数60rpmにて測定した。
<全光線透過率、ヘイズ>
ヘイズメータ(日本電色工業製、NDH2000)を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。
<透過率>
分光光度計(日立U−3500型)を用い、波長200〜1100nmの範囲で、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、室内の空気を透過率の参照として測定した。近赤外領域での透過率は、波長900〜1100nmの透過率の平均値より求めた。また、可視光領域での透過率は、波長450〜700nmの透過率の平均値より求めた。
<色調>
色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用い、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、Lab表色系のa値、b値を、標準光としてD65光源、10度視野角で測定した。
<経時安定性>
温度60℃、湿度95%雰囲気中で500時間放置した後、上記の分光特性、色調を測定した。
(透過率の経時変化)
まず、近赤外線領域の透過率、可視光領域の透過率の平均値を経時処理前後で求め、それらの透過率の変化量を下記式より求め、以下の判断基準でランク付けを行った。
透過率の変化量(%)
=(|処理前の透過率−処理後の透過率|/処理前の透過率)×100
◎:透過率の変化が5%未満
○:透過率の変化が5%以上10%未満
△:透過率の変化が10%以上20%未満
×:透過率の変化が20%以上
(色調の経時変化)
次に、経時処理前後での色調の変化量を下記式より求め、以下の判断基準でランク付けを行った。
色調の変化量=√((処理前a値―処理後a値)2+(処理前b値―処理後b値)2
◎:色調の変化が1未満
○:色調の変化が1以上2未満
△:色調の変化が2以上4未満
×:色調の変化が4以上
<塗膜外観>
(1)試料の作成
(1−1)ラミネート
PETフィルム製セパレータフィルム(U426:商品名、東レ(株)製、厚み80μm)/粘着剤層(CS−9611:商品名、日東電工(株)製)/PETフィルム製セパレータフィルム(U426:商品名、東レ(株)製、厚み80μm)からなる粘着シートを用意し、該粘着シートの片側のセパレータを剥がしつつ近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層とロール温度23℃、線圧0.035kg/cmでラミネートして貼り合せた。これを用いてサイクル試験前後の外観を観察した。
(1−2)サイクル試験
JISC8938温湿度サイクル試験A−2に準拠して、−20℃から85℃の間で6時間サイクルを連続で10サイクル行った。
(2)微小欠点
上記ラミネート後の近赤外線吸収フィルムを白色フィルム(東洋紡製、クリスパーK1212;100μm)上に置き、3波長の蛍光灯下で観察して、微小欠点の評価を行った。なお、微小欠点は、100m2あたりの300μm以上の大きさの欠点の個数を計測し、以下の判断基準でランク付けを行った。なお、欠点の個数の計測は以下のようにして行った。
まず、目視で欠点と観察されるものをすべてマーキングし(欠点の個数が多い場合は途中で中止する)、次いで光学顕微鏡にて前記欠点の大きさを確認し、300μm以上の大きさの欠点の個数をサイクル試験前後で計測する。
◎:微小欠点が1個未満
○:微小欠点が1個以上5個未満
△:微小欠点が5個以上10個未満
×:微小欠点が10個以上
(2)塗工不良
近赤外線吸収フィルムを白色フィルム(東洋紡製、クリスパーK1212;100μm)上に置き、3波長の蛍光灯下で観察して、100m2あたりの塗膜外観(塗工ムラ、スジ等の塗工不良)の評価を行い、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察しても、塗工不良な箇所が観察されない
○:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると、塗工不良な箇所が若干観察される
△:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると、塗工不良な箇所が観察される
×:静止状態でも塗工不良な箇所が観察される
実施例1
(基材)
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を2軸スクリュー押出機に投入し、T−ダイスから290℃で溶融押出しし、冷却回転金属ロール上で静電印加を付与しながら密着固化させ、未延伸シートを得た。
次いで、該未延伸シートをロール延伸機で90℃に加熱して、3.5倍で縦延伸を行った後、縦延伸フィルム上に下記塗布液Aを乾燥後の塗布量が0.5g/m2となる様に両面に塗布し、風速10m/秒、120℃の熱風下で20秒通過させて、中間塗布層を形成させた。さらに、テンターで140℃に加熱して3.7倍横延伸したあと、235℃で幅(横)方向に5%緩和させながら熱処理してフィルムを得た。得られた中間塗布層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが厚み100μm、全光線透過率が90.2%で、ヘイズが0.5%であった。
(中間塗布層用塗布液Aの組成)
・イオン交換水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 28.9質量%

・アクリルーメラミン樹脂 10.0質量%
(日本カーバイト製、A−08、固形分濃度:46質量%)
・ポリエステル系樹脂 10.0質量%
(東洋紡績製、MD−1250、固形分濃度:30質量%)
・有機粒子 1.0質量%
(日本触媒製、エポスターMA1001)
・界面活性剤 0.1質量%
(ダウコーニング株式会社製、ペインタッド32)
(近赤外線吸収層用の塗布液の調整)
トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、樹脂を下記の質量比で混合し、溶剤の揮発を防ぐために容器をカバーした状態で、加温下で攪拌しつつ樹脂を溶解した後、色素を添加して30分以上攪拌した、これ以降、液温は25℃に保温した。次いで、公称濾過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Bを調製した。
・トルエン 34.07質量%
・メチルエチルケトン 34.07質量%
・イソプロピルアルコール 10.00質量%
・アクリル系樹脂 6.23質量%
(三菱レイヨン製、BR−80、Tg=105℃)
・アクリル系樹脂 14.54質量%
(三菱レイヨン製、BR−83、Tg=105℃)
・ジインモニウム塩系化合物 0.70質量%
(日本カーリット製、CIR−RL)
・フタロシアニン系化合物 0.39質量%
(日本触媒製、IR−10A)
(近赤外線吸収フィルムの作製)
前記の塗布液B(固形分濃度:21質量%、粘度:25cps)を前記の中間塗布層の一方に、乾燥後の塗布量で9.3g/m2になるように直系60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、初期乾燥として25℃で1m/秒の風で15秒間の乾燥を行った。このときのエアーは湿度40%とした。次に40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを得た。
得られた近赤外線吸収フィルムは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、経時安定性も良好で、塗工外観も経時に渡って良好であった。
実施例2
実施例1で近赤外線吸収層用の塗布液の調整とフィルムの作成を以下とした以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液の調整)
トルエン、メチルエチルケトン、メタノール、樹脂を下記の質量比で混合し、溶剤の揮発を防ぐために容器をカバーした状態で、加温下で攪拌しつつ樹脂を溶解した後、色素を添加して30分以上攪拌した、これ以降、液温は25℃に保温した。次いで、公称濾過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Cを調製した。
・トルエン 36.57質量%
・メチルエチルケトン 36.57質量%
・メタノール 5.00質量%

・アクリル系樹脂 6.23質量%
(三菱レイヨン製、BR−80、Tg=105℃)
・アクリル系樹脂 14.54質量%
(三菱レイヨン製、BR−83、Tg=105℃)
・ジインモニウム塩系化合物 0.700質量%
(日本カーリット製、CIR−RL)
・フタロシアニン系化合物 0.389質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・シリコーン系界面活性剤 0.001質量%
(日本ユニカー製、FZ−2130)
(近赤外線吸収フィルムの作製)
前記の塗布液C(固形分濃度:21質量%、粘度:27cps)を前記の中間塗布層の一方に、乾燥後の塗布量で9.3g/m2になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、初期乾燥として25℃で1m/秒の風で15秒間の乾燥を行った。このときのエアーは湿度30%とした。次に40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを得た。
得られた近赤外線吸収フィルムは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、経時安定性も良好で、塗工外観も経時に渡って良好であった。
比較例1
実施例1で近赤外線吸収フィルムの作成を以下とした以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収フィルムの作製)
前記の塗布液B(固形分濃度:21質量%、粘度:25cps)を前記の中間塗布層の一方に、乾燥後の塗布量で9.3g/m2になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを得た。
得られた近赤外線吸収フィルムは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、経時安定性も良好であったが、塗工直後から塗膜外観で微小欠点が目立った。この様子はサイクル試験後も同様である。
比較例2
実施例1で近赤外線吸収層用の塗布液の調整を以下とした以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液の調整)
トルエン、メチルエチルケトン、樹脂を下記の質量比で混合し、加温下で攪拌して樹脂を溶解した後、色素を添加して溶剤の揮発を防ぐために容器をカバーした状態で30分以上攪拌した、これ以降液温は25℃に保温した。次いで、公称濾過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Dを調製した。
・トルエン 39.07質量%
・メチルエチルケトン 39.07質量%
・アクリル系樹脂 6.23質量%
(三菱レイヨン製、BR−80、Tg=105℃)

・アクリル系樹脂 14.54質量%
(三菱レイヨン製、BR−83、Tg=105℃)
・ジインモニウム塩系化合物 0.70質量%
(日本カーリット製、CIR−RL)
・フタロシアニン系化合物 0.39質量%
(日本触媒製、IR−10A)
比較例3
実施例1で塗布液の液温を揮発防止のために15℃で塗工した以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
得られた近赤外線吸収フィルムは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、経時安定性も良好であったが、塗工直後の外観が劣った。外観の状況はサイクル試験後も同様であった。
比較例4
実施例1で近赤外線吸収フィルムの作成を下記とした以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収フィルムの作製)
前記の塗布液B(固形分濃度:21質量%、粘度:25cps)を前記の中間塗布層の一方に、乾燥後の塗布量で9.3g/m2になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、初期乾燥として25℃で1m/秒の風で15秒間の乾燥を行った。このときのエアーは湿度60%とした。次に40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを得た。
得られた近赤外線吸収フィルムは、ブラッシングの傾向が見られ評価に値しないものであった。
Figure 2007256759
本発明の近赤外線吸収フィルムは、可視光線領域の透過率が高く、近赤外領域の透過率が低く、かつ、塗膜外観が経時的にも良好であり、プラズマディスプレイの前面に設置することにより良好な映像を表現でき、かつ、近赤外線リモコンを用いて精密機器の誤動作を防止することができ、産業界に寄与することが大きい。

Claims (3)

  1. 透明基材フィルムの少なくとも片面に、近赤外線吸収層を積層してなる近赤外線吸収フィルムの製造方法であって、近赤外線吸収層は、バインダー樹脂、ジイモニウム塩系化合物を含む近赤外線吸収色素、アルコール系有機溶剤を含む有機溶剤からなる塗布液を20℃〜30℃の範囲に温調しながら透明基材フィルムに塗布し、初期乾燥を20℃〜30℃で10秒〜20秒間、風速2m/秒未満の湿度50%以下のドライエアーで行って積層されることを特徴とする近赤外線吸収フィルムの製造方法。
  2. 近赤外線吸収層を形成する塗布液は、界面活性剤を含有しないか、あるいは界面活性剤を含み、界面活性剤の含有量が得られた近赤外線吸収層に対し0.01質量%より少ないことを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法。
  3. バインダー樹脂がアクリル系樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006313303A (ja) * 2004-11-24 2006-11-16 Dainippon Printing Co Ltd 光学フィルタおよびこれを用いたディスプレイ

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