JP2006309269A - 波長選択吸収フィルター - Google Patents

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憲一 森
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真治 澤崎
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Abstract

【課題】近赤外領域を大きく、かつ幅広く吸収を有し、さらにネオン光を吸収し、他の可視光領域の光線透過率が高い選択吸収光学フィルターにおいて、光学特性の経時変化が少なく耐久性に優れる波長選択吸収フィルターを提供する。
【解決手段】透明基材上に、中間層を介して、樹脂、近赤外線吸収色素A、色素Bを有する単層又は複層の波長選択吸収層を積層し、かつ波長800〜1200nmと波長550〜620nmに極大吸収を有する波長選択吸収フィルターであり、色素Aの1つがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素であり、色素Bの1つがポルフィリン系色素又はアザポルフィリン系色素であり、中間層を構成する樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂から選択される波長選択吸収フィルター。
【選択図】なし

Description

本発明は、近赤外線及びネオン光を吸収する光学フィルターに関するものであり、詳しくは近赤外領域に幅広く大きな吸収を有し、さらにネオン光を吸収し、かつ他の可視光領域の光線透過率が高く、さらに高温高湿下で保管しても光学特性の経時変化が少ない耐久性に優れる波長選択吸収フィルターに関するものである。
近赤外線の吸収能を有する光学フィルターは、近赤外線を遮断し、可視光を通過させる性質を有しており、各種の用途に使用されている。
近年、薄型大画面ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されているが、プラズマディスプレイから放出される近赤外線により、近赤外線リモコンを使用する電子機器が誤動作を起こす問題があり、プラズマディスプレイの前面に近赤外線吸収フィルターが設けられている。
近赤外線吸収フィルターとしては、(1)燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有したフィルター、(2)屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルター、(3)共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルター、(4)樹脂に赤外線吸収色素を分散又は溶解した層を積層したフィルター、が提案されている。
これらの中で(4)のフィルターは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きいため、当該フィルターを製造する各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1〜9参照)。
特開2002− 82219号公報 特開2002−214427号公報 特開2002−303720号公報 特開2002−333517号公報 特開2003− 82302号公報 特開2003− 96040号公報 特開平11−305033号公報 特開平11−326629号公報 特開平11−326631号公報 特開2000−227515号公報 特開2002−264278号公報 国際公開第97/38855号パンフレット 特開2003−114323号公報 特開2002−138203号公報
これらの方法の中には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線を十分に遮断する能力を有するものもあるが、高温高湿下で長時間使用した場合、光学特性の経時安定性は不十分であった。
高温高湿下で長時間使用した場合の光学特性の経時安定性を抑制する方法として、近赤外線吸収層を構成する樹脂のガラス転移温度を、近赤外線吸収フィルターを利用する機器の使用保障温度以上とする方法(例えば、特許文献7〜10を参照)、近赤外線吸収層の残留溶剤量を低減させる方法(例えば、特許文献10、11を参照)が提案されている。
また、近赤外線吸収色素として用いられる芳香族ジインモニウム化合物系色素は、一般的に熱に弱いことが知られている(例えば、特許文献12の第17頁を参照)。
そこで、ジインモニウム系化合物を含有する近赤外線吸収層において、熱による色素の変質を抑制する技術として、ジインモニウム系化合物を精製して、DSC測定において温度220℃以上に吸熱ピークを有する特定のジインモニウム系化合物を近赤外線吸収層に含有させる方法(例えば、特許文献13参照)、融点が190℃以上のジインモニウム系化合物を近赤外線遮蔽層に含有させる方法(例えば、特許文献14を参照)なども提案されている。
さらに、プラズマディスプレイは、ネオンオレンジ光(波長600nm付近)も発光するため、近赤外線吸収層の経時安定性を保つのみでは、当該ディスプレイの鮮やかな演色性や画像の鮮明性が損なわれるといった問題があった。
本発明の目的は、近赤外領域に大きく、幅広い吸収を有し、さらにネオン光も吸収する一方で、他の可視光領域の光線透過率が高い選択吸収光学フィルターにおいて、光学特性の経時変化が少なく、耐久性に優れる波長選択吸収フィルターを提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、以下の通りである。
第1の発明は、透明基材上に、中間層を介して、樹脂、近赤外線吸収色素(A)、及び色素(B)を含有する単層または複層の波長選択吸収層を積層してなり、かつ、波長800〜1200nm及び波長550〜620nmに極大吸収を有する波長選択吸収フィルターであって、
前記近赤外線吸収色素(A)の1つがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)であり、 前記色素(B)の1つがポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)であり、中間層を構成する樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂から選択されることを特徴とする波長選択吸収フィルターである。
第2の発明は、複層の波長選択吸収層が、樹脂及び近赤外線吸収色素(A)を含有する近赤外線吸収層と、樹脂及び色素(B)を含有するネオンカット層がこの順に透明基材上に形成させてなることを特徴とする第1の発明に記載の波長選択吸収フィルターである。
第3の発明は、波長選択吸収層が、前記芳香族ジインモニウム系色素(a)100質量部に対して、前記ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)5〜100質量部(質量比)含むことを特徴とする第1の発明に記載の波長選択吸収フィルターである。
第4の発明は、波長選択吸収層を構成する樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする第1の発明に記載の波長選択吸収フィルターである。
第5の発明は、単層の波長選択吸収層が、前記透明基材上に、中間層を介して、有機溶剤、樹脂、芳香族系ジインモニウム系色素(a)、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有する塗布液Aを、塗布、乾燥させて形成させることを特徴とするものである第1の発明に記載の波長選択吸収フィルターである。
第6の発明は、複層の波長選択吸収層が、前記透明基材上に、中間層を介して、有機溶剤、樹脂、および芳香族系ジインモニウム系色素(a)を含有する塗布液Bを、塗布、乾燥させて形成させた近赤外線吸収層と、該近赤外線吸収層の直上に、有機溶剤および樹脂と、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有する塗布液Cを、塗布、乾燥させて形成させたネオンカット層を含むことを特徴とする第1の発明に記載の波長選択吸収フィルターである。
第7の発明は、塗布液AまたはBが、さらにHLBが2〜12の界面活性剤を含有することを特徴とする第5または6の発明に記載の波長選択吸収フィルターである。
第8の発明は、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であることを特徴とする第7の発明に記載の波長選択吸収フィルター。
本発明による波長選択吸収フィルターをプラズマディプレイの前面に設置した場合、従来の波長選択吸収フィルターと同様に、ディスプレイから放出される不要な近赤外線を吸収し、精密機器の誤動作を防ぐことができるだけでなく、不要なネオン光を吸収しているため画像の鮮明度が高く、かつ、温度や湿度による変化が少なく、プラズマディスプレイの高画質の経時変化を低減することが可能になる。
本発明の波長選択吸収フィルターとは、透明基材上に、中間層を介して、樹脂、近赤外線吸収色素(A)、及び色素(B)を含有する単層または複層の波長選択吸収層を積層してなり、かつ、波長800〜1200nm及び波長550〜620nmに極大吸収を有する波長選択吸収フィルターであって、前記近赤外線吸収色素(A)の1つがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)であり、前記色素(B)の1つがポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)であり、中間層を構成する樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂から選択されるところに特徴を有するものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
(透明基材)
本発明において、透明基材は特に限定されるものではないが、全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが5%以下であることが好ましい。基材が透明性に劣る場合には、ディスプレイの輝度を低下させるだけでなく、画像のシャープさが不良となる。
このような透明基材としては、例えばポリエステル系、アクリル系、セルロース系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート、フェノール系、ウレタン系等のプラスチックフィルム又はシート、ガラス及びこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステル系フィルムであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
本発明で用いる透明基材として好適なポリエステル系フィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどを用いてエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)以上(Tg+30℃以下)の温度で、2.0倍以上5.0倍以下の倍率で長手方向にロール延伸する。引き続き、テンターで予熱後、120℃以上150℃以下の温度で1.2倍以上5.0倍以下の倍率で幅方向に延伸する。さらに、この二軸延伸フィルムに220℃以上(融点−10℃以下)の温度で、熱固定処理を行う。次いで、幅方向に3%〜8%緩和させることによって、本発明で用いる透明基材として好適なポリエステル系フィルム製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
フィルムには、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
本発明で用いる透明基材は、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。前記複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法により製造するのが特に好ましい。
透明基材の厚みは素材により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、35μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上である。一方、厚みは260μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、波長選択吸収層中の残留溶媒量を低減するための乾燥時に加熱した場合に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
(中間層)
本発明の波長選択吸収フィルターは、透明基材上に単層または複層の波長選択吸収層を積層した構成を有するものであるが、透明基材と波長選択吸収層の密着性の向上や透明基材の透明性向上を目的として中間層を設ける。なお、フィルム中に粒子を含有させない場合、フィルム製造時に、粒子を含有する中間層を同時に設けることにより、ハンドリング性を維持しながら高度な透明性を得ることができる。
前記中間層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂が挙げられるが、基材および波長選択吸収層との密着性が良好である様に選択することが重要であり、例えば、基材及び波長選択吸収層を構成する樹脂がエステル系であれば、類似した構造を有するポリエステル系、ポリエステルウレタン系を選定することが好ましい。
前記中間層には、密着性の向上、耐水性の向上を目的に架橋剤を含有させて架橋構造を形成させても構わない。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系が挙げられる。特に、樹脂が高温・高湿度下で白化や強度低下を起こす場合には、架橋剤による効果が顕著である。なお、架橋剤を用いる代わりに、樹脂として自己架橋性を有するグラフト共重合樹脂を用いてもよい。
中間層には、表面に凹凸を形成させて滑り性を改善する目的で、各種の粒子を含有させてもよい。中間層中に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。なお、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。
さらに、中間層に各種機能を付与するために、界面活性剤、帯電防止剤、色素、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
中間層は目的とする機能を有する場合は単層でも構わないが、必要に応じて2層以上に積層しても構わない。
中間層の厚みは、目的とする機能を有すれば特に限定されるものではないが、0.01μm以上5μm以下が好ましい。厚みが薄い場合には中間層としても機能が発現し難くなり、逆に、厚い場合には透明性が不良となりやすくなる。
中間層は塗布法により設けるのが好ましい。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法を用いて、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式などを採用することができる。これらの方式のうち、インラインコート方式は、コスト面で優れるだけでなく、塗布層に粒子を含有させることで、透明基材に粒子を含有させる必要がなくなるため、透明性を高度に改善することができるため好ましい。
(波長選択吸収層)
本発明の波長選択吸収フィルターは、透明基材上に中間層を介して近赤外線吸収能を有する色素を含む、単層または複層の層構成からなる波長選択吸収層を積層する。
近赤外線吸収色素とは、波長800nm以上1200nm以下の近赤外線領域に極大吸収を有する色素であって、ジインモニウム系、フタロシアニン系、ジチオール金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、ポリメチン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドロコリン系、トリフェニルメタン系、シアニン系、アゾ系、アミニウム系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して使用されるが、本発明において、近赤外線領域の吸収が大きく、かつ吸収域も広く、さらに可視光領域の透過率も高い下式(I)で示すジイモニウム塩化合物を含むことが必要である。
Figure 2006309269
前記の一般式(I)中のR〜Rの具体例としては、(1)メチル基、エチル基、n‐プロピル基、iso‐プロピル基、n‐ブチル基、iso‐ブチル基、tert‐ブチル基、n‐アミル基、n‐ヘキシル基、n‐オクチル基、2‐ヒドロキシエチル基、2‐シアノエチル基、3‐ヒドロキシプロピル基、3‐シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルキル基、(2)フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル、ナフチル基などのアリール基、(3)ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、(4)ベンジル基、p‐フルオロベンジル基、p‐クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基などのアラルキル基、が挙げられる。
また、R〜R12としては、水素、フッ素、塩素、臭素、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
式(I)中、Xは、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンなどが挙げられる。尚、本発明では、ネオンカット色素としてアザポルフィリン系色素などを用いるため(後述する)、上記Xがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンである近赤外線吸収色素を含む必要がある。この化合物は市販品として入手可能であり、例えば、日本カーリット製CIR−1085、CIR−RL、日本化薬製IRG−068が挙げられる。
本発明の波長選択吸収フィルターは、前記の式(I)で示されるジイモニウム塩系化合物以外に、近赤外線領域の吸収域の拡大および調整を目的として、他の近赤外線吸収色素を加えることもできる。好ましくは、ジインモニウム塩系色素の劣化を促進させないものがよく、具体的には、800nm以上1200nm以下に吸収ピークを有するフタロシアニン系、シアニン色素、ジチオール金属錯体系が挙げられる。
本発明において、目的とする近赤外線領域の吸収、可視光領域での透過率を制御するために、近赤外線吸収色素の量が、波長選択吸収層の厚み方向における任意の面で0.01g/m以上1.0g/m以下となるように調整することが好ましい。近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、近赤外線領域での吸収能が不足し、逆に、多い場合には可視光領域での透明性が不足してディスプレイの輝度が低下する問題がある。
本発明において、波長選択吸収層中にはネオンカット色素を含有させる必要がある。プラズマディスプレイは、600nm付近を中心とするいわゆるネオンオレンジ光を発光し、赤色にオレンジ色が混ざり鮮やかな赤色が得られない欠点がある。ネオンカット色素を含有させることにより、上記の問題が解決できる。
本発明においてネオンカット色素とは、550nm以上620nm以下の波長域に最大吸収を有する色素であり、具体的には、シアニン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系、アゾ系、フタロシアニン系、キノン系、アズレニウム系、ピリリウム系、クロコニウム系、ジチオール金属錯体系、ピロメテン系、アザポルフィリン系等が挙げられる。これらの色素は、単独または2種以上を混合して使用することができるが、本発明においては、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素を用いることが必要である。
ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素とは、下式(II)、(III)に示される色素である。式(II)及び式(III)中のR11〜R14およびR15〜R22の具体例は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルチオ基、又は、アリールチオ基が挙げられ、それぞれが、各々独立に連結基を介して、芳香族環を除く環を形成しても構わない。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価1置換金属原子、4価2置換金属原子、又はオキシ金属原子が挙げられる。
Figure 2006309269
Figure 2006309269
この化合物は、市販品として入手可能であり、例えば、山田化学工業製TAP−2、TAP−5、TAP−9、TAP−10、TAP−12、三井化学製PD−319、PD−311が挙げられる。
ネオンカット色素の含有量は、得られた波長選択吸収フィルターが550nm以上620nm以下の波長領域にシャープな吸収を有し、且つ、最大の吸収波長での透過率が30%以下になるように調整するのが好ましい。具体的には、透明基材上に、ネオンカット色素を0.001g/m以上0.1g/m以下の範囲で存在させることが好ましい。
本発明において、波長選択吸収層は単層または複層の層構成から構成される。波長選択吸収層としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)と、ポルフィリン系色素又はアザポルフィリン系色素(b)の2種類の色素を同じ塗工層中に混在させた単層構成とすることが好ましい。
本発明において、単層の波長選択吸収層に、近赤外線吸収色素としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素と、ネオンカット色素としてポルフィリン系色素又はアザポルフィリン系色素を採用することを必須としているのは、これらの2種類の色素を同じ塗工層中に混在させることにより、該波長選択吸収層の耐久性が向上する効果が得られるからである。なお、耐久性が向上する機構は明確ではないが、ジインモニウム系色素の対イオンであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸とアザポルフィリン系色素(又はポルフィリン系色素)が何らかの相互作用が働き、湿度及び温度による色素の劣化が抑えられると推測される。
また、本発明において、波長選択吸収層として、樹脂及び近赤外線吸収色素(A)を含有する近赤外線吸収層と、樹脂及び色素(B)を含有するネオンカット層がこの順に透明基材上に形成させてなる複層の構成からなる波長選択吸収層を用いることができる。波長選択吸収層としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)とポルフィリン系色素又はアザポルフィリン系色素(b)をそれぞれ単独で含有する層を積層した複層構成とすることによっても、単層の波長選択吸収層と同様に耐久性の改善効果が得られる。この理由は明確ではないが、近赤外線吸収層とネオンカット層の界面で色素(a)と色素(b)の間で相互作用が働くとともに、前記の界面で色素の移動が起こり、同一の層の中に色素(a)と色素(b)を存在させる場合と同様の効果が得られる。
アザポルフィリン系色素(又はポルフィリン系色素)は、ジインモニウム系色素に100質量部に対して、5質量部以上含有させるのが好ましく、より好ましくは10質量以上である。上限は100質量部であるのが好ましく、より好ましくは50質量部以下である。芳香族ジインモニウム系色素に対するアザポルフィリン系色素などの比率が好ましい範囲にない場合には、上述の相互作用が働かず耐久性の向上が得られ難い場合がある。
本発明において、近赤外線吸収色素またはネオンカット色素は、樹脂中に分散あるいは溶解した状態で、塗布法により、透明基材上に積層される。樹脂としては、近赤外線吸収色素またはネオンカット色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系の樹脂を好適に用いることができる。中でも、色素混合時の透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れるアクリル系樹脂が好ましく、特に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとして有するジインモニウム系色素を用いる場合には、基材との密着性や色素との親和性の観点からアクリル系樹脂を採用するのが好ましい。
また、上記の樹脂のガラス転移温度は、波長選択吸収フィルターが用いられる機器の使用保証温度以上であることが好ましい。上記の樹脂のガラス転移温度が、波長選択吸収フィルターが用いられる機器の使用温度以下であると、樹脂中に分散された色素同士が反応しやすくなると共に、樹脂が外気中の水分等を吸収し色素や樹脂の劣化が大きくなる。また、本発明において、樹脂のガラス転移温度は、波長選択吸収フィルターが用いられる機器の使用温度以上であれば特に限定されないが、特に85℃以上160℃以下であるのが好ましい。
上記の樹脂のガラス転移温度が85℃未満の場合、色素と樹脂との相互作用、色素間の相互作用等が起こり、色素の変性が発生する。また、ガラス転移温度が160℃を超える場合、該樹脂を溶媒に溶解し、透明基材上に塗布する時に十分な乾燥をしようとすれば高温にしなければならず、基材の熱シワによる平面性不良、更には、色素の劣化が発生する。また、低温で乾燥する場合は、乾燥に長時間を要するため生産性が悪くなり、生産性が不良となる。また、十分な乾燥ができない可能性もあり、溶媒が多量に塗膜中に残留する場合には、前述のガラス転移温度が、波長選択吸収フィルターが用いられる機器の使用温度以下であるときと同様に、耐久性が劣るジインモニウム塩系色素の変性を引き起こす。
複層の層構成からなる波長選択吸収層を用いる場合には、ネオンカット層に用いる樹脂は、ジインモニウム塩系色素と異なり、ポリフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)自体が耐久性に優れているため、樹脂のガラス転移温度や乾燥条件の影響が小さい。しかしながら、ネオンカット層に用いる樹脂として、アミンのような極性の強い樹脂を用いた場合、ネオンカット層と、ジインモニウム塩系色素を含有する近赤外線吸収層との界面で、ジインモニウム塩系色素の耐久性を悪化させることがある。
ジインモニウム塩系色素を含有しないネオンカット層に用いられる樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系の樹脂を好適に用いることができる。これらの樹脂のなかでも、色素混合時の透明性、耐熱性に優れるアクリル系樹脂が好ましい。また、反射防止フィルム、ガラス、電磁波防止フィルムと貼り合わせる際には、粘着剤を樹脂として用いても構わない。
粘着剤としては、公知のアクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの粘着剤のなかでも、透明性等の点からアクリル系粘着剤が好適である。
アクリル系粘着剤は、例えばアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等を主体にした樹脂からなる。また、粘着剤は、必要に応じて、硬化剤として、例えば金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系の架橋剤を1種あるいは2種以上を前記の粘着性樹脂とともに混合して用いることができる。
波長選択吸収層における近赤外線吸収色素の量は、樹脂に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。樹脂中の近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、目的とする近赤外線吸収能を達成するために波長選択吸収層の塗工量を増やす必要があり、これに伴って十分な乾燥をするには高温及び/又は長時間を要し、色素の劣化や基材の平面性不良などが起こりやすくなる。逆に、樹脂中の近赤外線吸収色素の量が多い場合には、色素間の相互作用が強くなり、残留溶媒を少なくしたとしても色素の経時的な変性が起こりやすくなる。
本発明において、単層の層構成からなる波長選択吸収層は、有機溶剤、樹脂、芳香族系ジインモニウム系色素(a)、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有する塗布液Aを、透明基材上に、中間層を介して、塗布、乾燥させて形成される。また、複層の層構成からなる波長選択吸収層が、有機溶剤、樹脂、および芳香族系ジインモニウム系色素(a)を含有する塗布液Bを、透明基材上に、中間層を介して、塗布、乾燥させて形成させた近赤外線吸収層と、該近赤外線吸収層の直上に、有機溶剤および樹脂と、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有する塗布液Cを、塗布、乾燥させて形成させたネオンカット層を含む。
この際に、前記塗布液AまたはB中に界面活性剤を含有させることが好ましい。また、塗布液Cにおいても界面活性剤を含有させることができるが、樹脂として粘着剤を用いる場合には、界面活性剤を含有させなくてもよい。
波長選択吸収層の形成に用いる塗布液に界面活性剤を含有させることにより、波長選択吸収層の塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキが改善される。更には、波長選択吸収層(塗布層)中の界面活性剤は、塗布層の乾燥時の加熱処理により表面にブリードする。その結果、塗布層の表面に滑り性を付与することができる。加えて、波長選択吸収層あるいは/及び反対面に、透明性の悪化原因となる粒子を含有させて表面凹凸を形成しなくともハンドリング性が良好となり、ロール状に巻取ることが容易になる。
本発明において、界面活性剤のHLBは2以上12以下であることが重要である。HLBの下限値は好ましくは3であり、特に好ましくは4である。一方、HLBの上限値は好ましくは11であり、特に好ましくは10である。HLBが低い場合には界面活性能の不足によりレベリング性が不足する。逆に、HLBが高い場合には、滑り性が不足するだけでなく、波長選択吸収層が水分を吸収しやすくなり、ジインモニウム系色素の経時安定性が不良となる。
なお、HLBとはアメリカのAtlas Powder社のW.C.GriffinがHydorophil Lyophile Balanceと名付けて界面活性剤の分子中に含まれる親水基と親油基のバランスを特性値として指標化した値でこの値が低いほど親油性が、逆に高いほど親水性が高くなる。
界面活性剤の含有量は、波長選択吸収層を構成する樹脂に対して0.01質量%以上2質量%以下であることが重要である。界面活性剤の含有量が少ない場合には、塗工外観の向上や滑り性付与の効果が不足し、逆に、多い場合には波長選択吸収層が水分を吸収しやすくなり、色素の劣化が促進される。
界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できるが、近赤外線吸収色素との劣化等の問題から極性基を有していないノニオン系が好ましく、更には、界面活性能に優れるシリコーン系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ヒドロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。
本発明において、波長選択吸収層は、樹脂、近赤外線吸収色素、界面活性剤を含む塗布液を透明基材上に塗布・乾燥することにより積層されるが、該塗布液は、塗工性の観点からは有機溶媒により希釈することが必要である。
該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n‐プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n‐ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2‐メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n‐ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
好ましくは、色素の溶解性に優れるケトン類を、塗布液に使用する全有機溶媒に対し、30質量%以上80質量%以下含有させ、その他の有機溶媒は、レベリング性、乾燥性を考慮して選定することが好ましい。また、有機溶媒の沸点は、60℃以上180℃以下が好ましい。沸点が低い場合には、塗工中に塗布液の固形分濃度が変化し、塗工厚みが安定化しにくい。逆に、沸点が高い場合には、塗膜中に残存する有機溶媒量が増え、経時安定性が不良となる。
近赤外線吸収色素および樹脂を有機溶媒中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下での攪拌、分散及び粉砕の方法が挙げられる。加温することにより色素及び樹脂の溶解性を向上することができ、未溶解物等による塗工外観への不良が妨げられる。また、分散及び粉砕して樹脂及び色素を0.3μm以下の微粒子状態で塗布液中に分散することにより、透明性に優れる層を形成することが可能となる。分散機及び粉砕機としては、公知のものを用いることができ、具体的には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
塗布液中にコンタミや1μm以上の未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になるため、塗布する前に、フィルター等で除去する必要がある。フィルターとして、各種のものが好適に使用できるが、1μmの大きさのものを99%以上除去するものを用いることが好ましい。1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗布液を塗布し乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、100μm以上1000μm以下のサイズの欠点になる場合がある。
塗布液中に含まれる樹脂及び色素等の固形分濃度は、10質量%以上30重量%以下とすることが好ましい。固形分濃度が低い場合には、塗布後の乾燥に時間が掛かり、生産性が劣るばかりか、塗膜中に残存する溶媒量が増加し、経時安定性が不良となる。逆に、固形分濃度が高い場合には、塗布液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となる。塗布液の粘度を10cps以上300cps以下に調整することが、塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように固形分濃度、有機溶媒等を調整することが好ましい。
本発明で、透明基材上に、中間層を介して、波長選択吸収層を塗布する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増える。
波長選択吸収層の乾燥後の塗布量は特に限定されないが、下限は1g/mが好ましい、より好ましくは3g/mであり、上限は50g/mが好ましく、より好ましくは30g/mである。乾燥後の塗布量が少ない場合には、近赤外線の吸収力が不足しやすくなる。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を増やすと、表面及びアンカー層の界面に存在する色素量が多くなり、外気やアンカー層の樹脂の影響を受けやすくなる。その結果、色素の劣化等が起こりやすくなり、経時安定性が不良となる。逆に、乾燥後の塗布量が多い場合には、近赤外線の吸収能は十分であるが、可視光領域での透明性が低下し、ディスプレイの輝度が低下する。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を低減すると、光学特性は調節できるが、乾燥が不十分になりやすくなる。その結果、塗膜中の残留溶媒により色素の経時安定性が不良となる。一方、乾燥を十分にした場合には基材の平面性が不良となる。
塗布液を透明基材上に、中間層を介して、塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒〜30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、外観は良好になるが乾燥時間が掛かりコスト面で問題がある。塗布液に界面活性剤を添加しない場合には、上記の微小な欠点が発生しやすく、初期乾燥をかなり弱くする必要がある。
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温にし、塗膜中の溶媒を減少させる必要があり、好ましい温度は、120℃以上180℃以下である。特に好ましくは、下限値が140℃であり、上限値は170℃である。温度が低い場合には、塗膜中の溶媒が減少しにくくなり、残留溶媒となって色素の経時的な安定性が不十分となる。逆に、高温の場合には、熱シワにより基材の平面性が不良となるだけでなく、近赤外線吸収色素が熱により劣化する。また、通過時間としては、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には塗膜中の残留する溶媒が多くなり経時安定性が不良となり、逆に時間が長い場合には、生産性が不良となるだけでなく、基材に熱シワが発生して平面性が不良となる。通過時間の上限は、生産性と平面性の点から、30秒とすることが特に好ましい。
乾燥の最終段階では、熱風温度を樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で基材の実温を樹脂のガラス転移温度以下にすることが好ましい。高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗工面がロール表面に接触した際に滑りが不良となり、キズ等が発生するだけでなく、カール等が発生する場合がある。
(波長選択吸収フィルター)
本発明において波長選択吸収フィルターとは、波長800〜1200nm及び波長550〜620nmに極大吸収を有する光学フィルターである。この波長選択吸収フィルターは、波長800nm以上1200nm以下の近赤外領域における透過率は低いほど好ましい。具体的には、近赤外領域の透過率は20%以下であることが好ましく、特に好ましくは10%以下である。透過率が高い場合には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線の吸収が不足し、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができない。
また、可視領域の平均透過率は近赤外領域の平均透過率よりも高く、かつ波長550nm以上620nm以下、更には、波長570nm〜600nmに、シャープな吸収を有することが好ましい。具体的には、前記の波長範囲内における最大吸収波長での透過率が40%以下であることが好ましく、特に好ましくは30%以下である。この領域での透過率が高い場合には、プラズマディスプレイから放出されるネオン光を吸収し、赤の発色を良くするという効果が得られ難くなる。また、この領域の吸収が広い場合には、可視光領域の全体の透過率が下がる為、ディスプレイの輝度が低下する傾向がある。波長550nm以上620nm以下を除く可視光領域の透過率は、高ければ高いほどよく、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。透過率が低い場合には、ディスプレイの発色を妨げ、輝度の低い映像となる。
透過率の調整は、波長選択吸収層の塗布量、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量により変更することができる。
波長選択吸収フィルターの色調としては、Lab表色系で表現すると、a値は−10.0〜+10.0、b値は−10.0〜+10.0であることが好ましい。この範囲であれば、プラズマディスプレイの前面に設置した場合でもナチュラル色となり好ましい。
色調を調整する方法としては、波長選択吸収層の塗布量、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量、更には、他の色素の混合、または乾燥条件の適正化により達成できる。なお、後述の波長選択吸収フィルターの前面または裏面に着色された粘着層や他の光学フィルターが存在する場合には、それも含めてナチュラル色に波長選択吸収フィルターの色調を調整することが好ましい。
波長選択吸収層の塗工外観としては、最大径が300μm以上、より好ましくは100μmのサイズの欠点を存在しないようにしなければならない。300μm以上の欠点は、プラズマディスプレイの前面に設置すると輝点の様になり、欠点が顕著化される。また、塗工層の薄いスジ、ムラ等もディスプレイ前面では顕著化されて問題となる。
波長選択吸収フィルターは、高温、高湿度下に長期間放置されても、近赤外線の透過率、可視光の透過率が変化しないことが好ましい。高温、高湿度下の経時安定性が不良の場合には、ディスプレイの映像の色調が変化するばかりか、近赤外線リモコンを用いた電子機器の誤動作を防止する本発明の効果がなくなる場合がある。
経時安定性は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)とポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を混在させることにより良好となるが、他にも塗布液で使用する有機溶媒の種類、塗布層の厚み、乾燥条件等を制御することで波長選択吸収層中の残留溶媒量を低減すること、あるいは樹脂中の色素の含有量を調整することにより更に良好にすることが可能となる。
また、前記のように、樹脂及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)を含有する近赤外線吸収層と、樹脂及びポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有するネオンカット層がこの順に透明基材上に、中間層を介して、形成させてなる複層の構成からなる波長選択吸収層を用いることも、経時安定性の点から好ましい実施形態である。
また、波長選択吸収層の残留溶媒の量は、少なければ少ないほどよいが、3質量%以下にすることが好ましい。3質量%以下になれば、実質的に経時安定性に差がなくなる。しかしながら、さらに残留溶媒量を低下させるために、例えば、乾燥を過酷な条件とすると、フィルターの平面性が不良になる等の弊害が発生し、減圧乾燥のような方法では生産性が低下する。
本発明において、ディスプレイから放出される有害な電磁波を遮断する目的で、赤外線吸収層と同一面、ないしは、反対面に導電層を直接或いは粘着剤を介して設けてもよい。該導電層は金属メッシュと導電薄膜の何れを用いても良く、金属メッシュを用いた場合、開口率が50%以上の金属メッシュ導電層を有している必要がある。金属メッシュの開口率が低ければ電磁波シールド性は良好となるが光線透過率が低下する問題が有る。この為、良好な光線透過率を得る為には開口率が50%以上は必要となる。本発明に用いられる金属メッシュとしては、電気電導性の高い金属箔にエッチング処理を施して、メッシュ状にしたものや、金属繊維を使った織物状のメッシュや、高分子繊維の表面に金属をメッキ等の手法を用いて付着させた繊維を用いてもよい。該電磁波吸収層に使われる金属は、電気電導性が高く、安定性が良ければいかなる金属でも良く特に限定されるものではないが、加工性、コストなどの観点より、好ましくは、銅、ニッケル、タングステンなどがよい。
また、導電薄膜を用いた場合、透明導電層はいかなる導電膜でもよいが、好ましくは、金属酸化物であることが好ましい。これによって、より高い可視光線透過率を得ることが出来る。また、本発明において透明導電層の導電率を向上させたい場合は、金属酸化物/金属/金属酸化物の3層以上の繰り返し構造であることが好ましい。金属を多層化することで、高い可視光線透過率を維持しながら、電導性を得ることができる。本発明に用いられる。金属酸化物は、電導性と可視光線透過性が有していれば如何なる金属酸化物でもよい。一例として、酸化錫、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ビスマスなどがある。以上は一例であり、特に限定されるものではない。また、本発明に用いられる金属層は、導電性の観点より、金、銀及びそれらを含む化合物が好ましい。
更に、導電層を多層化した場合、例えばくり返し層数が3層の場合、銀層の厚さは50Å〜200Åが好ましく、より好ましくは50Å〜100Åである。これよりも膜厚が厚い場合は、光線透過率が低下し、薄い場合は抵抗値が上がってしまう。また、金属酸化物層の厚さとしては、好ましくは、100Å〜1000Å、より好ましくは、100Å〜500Åである。この厚さより厚い場合には着色して色調が変ってしまい、薄い場合には抵抗値が上がってしまう。さらに、3層以上多層化する場合、例えば、金属酸化物/銀/金属酸化物/銀/金属酸化物のように5層とした場合、中心の金属酸化物の厚さは、それ以外の金属酸化物層の厚さよりも厚いことが好ましい。この様にすることで、多層膜全体の光線透過率が向上する。
本発明では、波長選択吸収フィルターの波長選択吸収層と同一面、ないしは、反対面に反射防止層、きらつき防止層を直接或いは粘着剤を介して設けてもよい。また、複数の層構成からなる波長選択吸収層において、ネオンカット層に粘着性樹脂を用い、ネオンカット層に粘着層の機能を付与して、ガラス板、樹脂シートに貼り合わせてもよいし、直接ディスプレイに貼り合わせてもよい。また、単層の波長選択吸収層の表面に粘着剤層を形成させてもよい。
本発明の波長選択吸収フィルターでは耐光性を向上させる目的で、紫外線吸収能を有する層を設けてもよい。紫外線吸収能を付与するためには、波長選択吸収層、透明基材、粘着剤層、反射防止層、ぎらつき防止層のいずれかに紫外線吸収剤を添加すればよい。紫外線吸収剤は、有機系紫外線防止剤、無機系紫外線防止剤等の公知のものが使用可能である。
次に本発明の実施例及び比較例を示す。また、本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
<塗布液の粘度>
20℃に塗布液を調節し、東京計器製のB型粘度計(BL)を用いて、ローター回転数60rpmにて測定した。
<全光線透過率、ヘイズ>
ヘイズメータ(日本電色工業製、NDH2000)を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。
<光線透過率>
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、波長1100nm〜200nmの範囲で、波長選択吸収層側に光が照射するようにして、室内の空気を透過率の参照として測定した。
<色調>
色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用い、波長選択吸収層側に光が照射するようにして、Lab表色系のa値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測定した。
<経時安定性>
温度80℃、湿度95%雰囲気中で48時間放置した後、上記の透過率、色調を測定した。色調の変化量として、下式1よりΔEを求めた。尚、ΔEは値が小さい程、色調の変化が少ないことを表す。
ΔE=√((処理前a値―処理後a値)+(処理前b値―処理後b値)
・・・(1)
次に、透過率の経時処理前後の変化量ΔTは、下式2より求めた。ΔTは値が小さいほど、変化量が少ないことを表す。
変化量(%)=(|処理後の透過率−処理前の透過率|/処理前の透過率)×100
・・・(2)
<塗膜の外観>
(1)微小欠点
波長選択吸収層形成後のフィルターを白色フィルム上に置き、3波長の蛍光灯下で目視観察し、下記の評価を行った。なお、微小欠点は、面積100mあたりの300μm以上の大きさの欠点の個数を計測し、以下の判断基準に従ってランク付けを行った。
◎:微小欠点が1個未満
○:微小欠点が1個以上5個未満
△:微小欠点が5個以上10個未満
×:微小欠点が10個以上
(2)塗工不良
塗工斑、スジなどの塗工不良の有無については、波長選択吸収フィルターを白色フィルム上に置き、3波長の蛍光灯の下で波長選択吸収層面を目視観察し、以下の判断基準に従ってランク付けを行った。
◎:波長選択吸収フィルターを動かしながら観察しても、塗工不良が見られない
○:波長選択吸収フィルターを動かしながら観察すると、塗工不良が若干分かる
△:波長選択吸収フィルターを動かしながら観察すると、塗工不良が分かる
×:波長選択吸収フィルターを静止した状態でも、塗工不良が分かる
<密着性>
JIS K 5400の8.5.1の規定に準じた試験方法で密着性を測定した。具体的には、波長選択吸収層を積層した側から100個の升目状の切りキズを、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付け、セロハン粘着テープ(ニチバン社製「405番」、24mm幅)を、升目状の切りキズ面に貼り付け、アクリル板(住友化学社製「スミペックス」)で擦って完全に付着させた後、垂直に引き剥がした時の状況を目視により観察して観察した。
○:剥離した升目なし
△:剥離した枡目が存在するが、剥離した升目が10枡目未満
×:10枡目以上が剥離
実施例1
(基材の作製)
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を2軸スクリュー押出機に投入し、T‐ダイスから290℃で溶融押出しし、冷却回転金属ロール上で静電印加を付与しながら密着固化させ、未延伸シートを得た。
次いで、該未延伸シートをロール延伸機で90℃に加熱して、3.5倍で縦延伸を行った後、縦延伸フィルム上に下記塗布液Aを乾燥後の塗布量が0.5g/mとなるように、前記縦延伸フィルムの両面に塗布し、風速10m/秒、120℃の熱風下で20秒通過させて、中間塗布層を形成させた。さらに、テンターで140℃に加熱して3.7倍横延伸したあと、235℃で幅(横)方向に5%緩和させながら熱処理して、両面に中間塗布層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られたフィルムは、厚みが100μm、全光線透過率が90.2%で、ヘイズが0.5%であった。
(中間塗布層用塗布液Aの組成)
・イオン交換水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 28.9質量%
・アクリル−メラミン樹脂 10.0質量%
(日本カーバイド工業(株)製、A−08、固形分濃度:46質量%)
・ポリエステル系樹脂 10.0質量%
(東洋紡績製、バイロナールMD−1250、固形分濃度:30質量%)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 1.0質量%
(日本触媒製、エポスターMA1001)
・シリコーン系界面活性剤 0.1質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド32)
(波長選択吸収層用の塗布液Bの調整)
下記の質量比でトルエン、メチルエチルケトン、樹脂を混合し、加温下で攪拌して樹脂を溶解した後、色素および界面活性剤を添加して30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Bを調整した。
・トルエン 39.995質量%
・メチルエチルケトン 40.000質量%
・アクリル系樹脂 18.776質量%
(三菱レイヨン製、BR−80、Tg=105℃)
・芳香族系ジインモニウム系色素 0.695質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・フタロシアニン系色素 0.357質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・アザポルフィリン系色素 0.118質量%
(山田化成製、TAP−2)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB=6.7)
(波長選択吸収フィルターの作製)
前記の塗布液B(固形分濃度:20質量%、粘度:40cps)を前記の中間塗布層の一方に、乾燥後の950nmの透過率が4.3%(乾燥後の塗布量で8.0g/m)になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、波長選択吸収フィルターを得た。なお、波長選択吸収層における、芳香族ジインモニウム系色素(a)とアザポルフィリン系色素(b)との質量比は、(a)/(b)=100/17であった。
得られた波長選択吸収フィルターは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、更に590nm付近にシャープな吸収を有していた。更に、経時安定性や塗工外観も良好であった。
波長選択吸収層に用いた色素の種類を表1に、得られた波長選択吸収フィルターの物性を表2及び表3に示す。
実施例2
下記の塗布液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして波長選択吸収フィルターを得た。なお、波長選択吸収層における、芳香族ジインモニウム系色素(a)とアザポルフィリン系色素(b)との質量比は、(a)/(b)=100/17であった。
(波長選択吸収層用の塗布液Cの調整)
下記の質量比でトルエン、シクロペンタノン、樹脂を混合し、加温下で攪拌して樹脂を溶解した後、色素および界面活性剤を添加して30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Cを調製した。
・トルエン 40.088質量%
・シクロペンタノン 40.088質量%
・フルオレン骨格を有する共重合ポリエステル樹脂 18.776質量%
(カネボウ製、O−PET、Tg=150℃)
・芳香族系ジインモニウム系色素 0.695質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・フタロシアニン系色素 0.176質量%
(日本触媒製、IR−12)
・アザポルフィリン系色素 0.118質量%
(山田化成製、TAP−2)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB=6.7)
得られた波長選択吸収フィルターは、実施例1と同様に、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、更に590nm付近にシャープな吸収を有していた。更に、経時安定性や塗工外観も良好であった。しかしながら、基材との密着性がやや不良であった。
波長選択吸収層に用いた色素の種類を表1に、得られた波長選択吸収フィルターの物性を表2及び表3に示す。
比較例1
下記の塗布液Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして波長選択吸収フィルターを得た。
(波長選択吸収層用の塗布液Dの調整)
下記の質量比でトルエン、メチルエチルケトン、樹脂を混合し、加温下で攪拌して樹脂を溶解した後、色素および界面活性剤を添加して30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Dを作成した。
・トルエン 39.998質量%
・メチルエチルケトン 39.998質量%
・アクリル系樹脂 18.825質量%
(三菱レイヨン製、BR−80)
・芳香族系ジインモニウム系色素 0.697質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・フタロシアニン系色素 0.358質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・スクアリリウム系色素 0.065質量%
(協和発酵製、SD184)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB=6.7)
得られた波長選択吸収フィルターは、実施例1と同様に、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、更に590nm付近にシャープな吸収を有していた。しかしながら、経時安定性は不良であった。
波長選択吸収層に用いた色素の種類を表1に、得られた波長選択吸収フィルターの物性を表2及び表3に示す。
比較例2
下記の塗布液Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして波長選択吸収フィルターを得た。なお、波長選択吸収層における、芳香族ジインモニウム系色素(a)とアザポルフィリン系色素(b)との質量比は、(a)/(b)=100/19であった。
(波長選択吸収層用の塗布液Eの調整)
下記の質量比でトルエン、メチルエチルケトン、樹脂を混合し、加温下で攪拌して樹脂を溶解した後、色素および界面活性剤を添加して30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Eを作成した。
・トルエン 40.002質量%
・メチルエチルケトン 40.002質量%
・アクリル系樹脂 18.839質量%
(三菱レイヨン製、BR−80)
・芳香族系ジインモニウム系色素 0.622質量%
(日本触媒製、IRG022、対イオン:ヘキサフルオロアンチモン酸)
・フタロシアニン系色素 0.358質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・アザポルフィリン系色素 0.118質量%
(山田化成製、TAP−2)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB=6.7)
得られた波長選択吸収フィルターは、実施例1と同様に、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、更に590nm付近にシャープな吸収を有していた。しかしながら、経時安定性は不良であった。
波長選択吸収層に用いた色素の種類を表1に、得られた波長選択吸収フィルターの物性を表2及び表3に示す。
実施例3
(波長選択吸収層における近赤外線吸収層用の塗布液Fの調整)
下記の質量比でトルエン、メチルエチルケトン、樹脂を混合し、加温下で攪拌して樹脂を溶解した後、色素および界面活性剤を添加して30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Fを調整した。
・トルエン 40.056質量%
・メチルエチルケトン 40.057質量%
・アクリル系樹脂 18.776質量%
(三菱レイヨン製、BR−80、Tg=105℃)
・芳香族系ジインモニウム系色素 0.695質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・フタロシアニン系色素 0.357質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB=6.7)
(波長選択吸収層におけるネオンカット層用の塗布液Gの調整)
下記の質量比で混合後、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Gを調整した。
・メチルエチルケトン 49.808質量%
・アクリル系粘着剤 49.847質量%
(総研化学製、SKダイン1435、固形分30重量%)
・アザポルフィリン系色素 0.045質量%
(山田化成製、TAP−2)
・硬化剤 0.150質量%
(総研化学製、L−45)
・硬化剤 0.150質量%
(総研化学製、TD−75)
(波長選択吸収フィルターの作製)
実施例1と同様に得た中間塗布層形成面に、前記の塗布液Fを乾燥後の950nmにおける透過率が4.3%(乾燥後の塗布量で8.0g/m)になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収層を形成させた。次いで、前記の塗布液Gを近赤外線吸収層上にリップコーターを用いて、乾燥後の塗工量が16g/mになるように塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、ネオンカット層を形成させた。すなわち、近赤外線吸収層とネオンカット層の2層の構成からなる波長選択吸収層を有する波長選択吸収フィルターを得た。なお、波長選択吸収層における、芳香族ジインモニウム系色素(a)とアザポルフィリン系色素(b)との質量比は、(a)/(b)=100/17であった。
得られた波長選択吸収フィルターは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高く、更に590nm付近にシャープな吸収を有していた。更に、経時安定性や塗工外観も良好であった。
波長選択吸収層に用いた色素の種類を表1に、得られた波長選択吸収フィルターの物性を表2及び表3に示す。
Figure 2006309269
Figure 2006309269
Figure 2006309269
本発明の波長選択吸収フィルターは、近赤外領域及びネオン光領域の透過率が低く、可視光領域の透過率が高く、かつ、光学特性の経時変化が少なく、耐久性に優れるため、プラズマディスプレイの前面に設置することにより良好が映像を安定して表現でき、かつ、近赤外線リモコンを用いて精密機器の誤動作を防止することができ、産業界に大きく寄与することができる。

Claims (8)

  1. 透明基材上に、中間層を介して、樹脂、近赤外線吸収色素(A)、及び色素(B)を含有する単層または複層の波長選択吸収層を積層してなり、かつ、波長800〜1200nm及び波長550〜620nmに極大吸収を有する波長選択吸収フィルターであって、
    前記近赤外線吸収色素(A)の1つがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとする芳香族ジインモニウム系色素(a)であり、前記色素(B)の1つがポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)であり、中間層を構成する樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂から選択されることを特徴とする波長選択吸収フィルター。
  2. 複層の波長選択吸収層が、樹脂及び近赤外線吸収色素(A)を含有する近赤外線吸収層と、樹脂及び色素(B)を含有するネオンカット層がこの順に透明基材上に形成させてなることを特徴とする請求項1に記載の波長選択吸収フィルター。
  3. 波長選択吸収層が、前記芳香族ジインモニウム系色素(a)100質量部に対して、前記ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)5〜100質量部(質量比)含むことを特徴とする請求項1に記載の波長選択吸収フィルター。
  4. 波長選択吸収層を構成する樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の波長選択吸収フィルター。
  5. 単層の波長選択吸収層が、前記透明基材上に、中間層を介して、有機溶剤、樹脂、芳香族系ジインモニウム系色素(a)、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有する塗布液Aを、塗布、乾燥させて形成させることを特徴とする請求項1に記載の波長選択吸収フィルター。
  6. 複層の波長選択吸収層が、前記透明基材上に、中間層を介して、有機溶剤、樹脂、および芳香族系ジインモニウム系色素(a)を含有する塗布液Bを、塗布、乾燥させて形成させた近赤外線吸収層と、該近赤外線吸収層の直上に、有機溶剤および樹脂と、ポルフィリン系色素またはアザポルフィリン系色素(b)を含有する塗布液Cを、塗布、乾燥させて形成させたネオンカット層を含むことを特徴とする請求項1に記載の波長選択吸収フィルター。
  7. 塗布液AまたはBが、さらにHLBが2〜12の界面活性剤を含有することを特徴とする請求項5または6に記載の波長選択吸収フィルター。
  8. 界面活性剤がシリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項7に記載の波長選択吸収フィルター。
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