JP4314532B2 - 近赤外線吸収フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、近赤外線を吸収する光学フィルムに関するものであり、詳しくは高温時の色調変化が少なく、耐久性に優れる近赤外線吸収フィルムに関するものである。
近赤外線の吸収能を有する光学フィルムは、近赤外線を遮断し、可視光を通過させる性質を有しており、各種の用途に使用されている。
近年、薄型大画面ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されているが、プラズマディスプレイから放出される近赤外線により、近赤外線リモコンを使用する電子機器が誤動作を起こす問題があり、プラズマディスプレイの前面に上記の近赤外線吸収能を有するフィルムが使用されている。
近赤外線の吸収能を有するフィルムとしては、(1)燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有、(2)屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルター、(3)共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルム、(4)樹脂に色素を分散又は溶解した層を積層したフィルム、が提案されている。
これらの中で(4)のフィルムは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きく、各種の方法が提案されている(特許文献1〜9参照)。
特開2002− 82219号公報 特開2002−138203号公報 特開2002−214427号公報 特開2002−264278号公報 特開2002−303720号公報 特開2002−333517号公報 特開2003− 82302号公報 特開2003− 96040号公報 特開2003−114323号公報
これらの方法の中には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線を十分に遮断する能力を有し、かつ、長時間の使用でも経時変化の少ないものがある。
一方、ディスプレイの軽量化や高画質化の為に、ガラスを使用せずに近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルターをプラズマディスプレイのパネルに貼り合せる方式が提案されている。この方式では近赤外線吸収フィルムにディスプレイの熱が伝わり易く、かつ、ガラスが無くなることで、近赤外線吸収フィルムが変形しやすくなる問題があり、耐熱性に優れ、かつ、柔軟性に優れる近赤外線吸収フィルムが要望されている。
本発明の目的は、前記の従来技術の課題を解決するためになされたものであり、近赤外領域を大きく、かつ幅広く吸収する近赤外線吸収フィルムであって、耐久性、特に耐熱性に高度に優れ、かつ、柔軟性に優れる近赤外線吸収フィルムを提供することにある。
前記の課題を解決することができた本発明の近赤外線吸収フィルムは、以下の構成からなる。
第1の発明は、透明基材上に、近赤外線吸収色素、樹脂から主に構成される組成物からなる近赤外線吸収層を設けた近赤外線吸収フィルムであって、前記の組成物中にイオン性液体を0.1質量%以上10.0質量%以下含有することを特徴とする近赤外線吸収フィルムである。
第2の発明は、近赤外線吸収色素がジインモニウム塩化合物を含むことを特徴とする第1の発明に記載の近赤外線吸収フィルムである。
第3の発明は、ジインモニウム塩化合物がビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとするジインモニウム塩化合物であることを特徴とする第2の発明に記載の近赤外線吸収フィルムである。
の発明は、イオン性液体がビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を陰イオンとして含むことを特徴とする第1〜の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルムである。
の発明は、近赤外線吸収層を構成する樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする第1〜の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルムである。
本発明の近赤外線吸収フィルムを近赤外線吸収フィルターとしてプラズマディプレイの前面に設置した場合、従来の近赤外線吸収フィルターと同様に、ディスプレイから放出される不要な近赤外線を吸収し、精密機器の誤動作を防ぐことができるだけでなく、熱による色調の変化を大幅に低減することができるため、プラズマディスプレイの高画質化に寄与することができるとともに、光学フィルターの設計の自由度が上がるという利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
(透明基材)
本発明において、透明基材は特に限定されるものではないが、全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが5%以下であることが好ましい。基材が透明性に劣る場合には、ディスプレイの輝度を低下させるだけでなく、画像のシャープさが不良となる。
このような透明基材としては、例えばポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネ−ト、フェノ−ル系、ウレタン系等のプラスチックフィルム又はシート、ガラス及びこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステル系フィルムであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
本発明で用いる透明基材として好適なポリエステル系フィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記のフィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸する。さらに、二軸延伸後に220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
フィルムには、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
本発明において、近赤外線吸収層を積層する面の反対面に反射防止層を設ける場合、外部から入射する紫外線による近赤外線吸収色素が劣化しやすくなる為、透明基材内に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤に大別されるが、透
明性の確保の観点からは有機系紫外線吸収剤(低分子タイプ、高分子タイプ)の使用が望
ましい。有機系紫外線吸収剤(低分子タイプ)としては特に限定されないが、例えばベン
ゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系など、およびこれらの組み
合わせが挙げられる。これらの中で、耐久性の観点からはベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系が好ましく、更に基材製造時の温度に耐えるために分解温度が290℃以上の紫外線吸収剤を使用することが望ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、近赤外線吸収層の光劣化を抑制できる様に、380nm以下の波長における透過率が10%以下となるように調整することが好ましい。具体的には、紫外線吸収剤の含有量は、透明基材中に0.1〜4質量%であることが好ましく、0.3〜2質量%であることがより好ましい。紫外線吸収剤量が少なすぎると紫外線吸収能が小さくなり、多すぎるとフィルムが黄変する場合や、フィルムの製膜性が低下する場合があるので好ましくない。
本発明で用いる透明基材は、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。また、紫外線吸収能を付与する場合、中心層のみに紫外線吸収剤を含有させることで、フィルム製造時や経時での紫外線吸収剤のフィルム表面への析出を低減することができるため、近赤外線吸収層への耐熱性の劣化等の悪影響を抑制できる。前記の複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が特に好ましい。
透明基材の厚みは素材により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、下限は35μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上である。一方、厚みの上限は260μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、近赤外線吸収層の残留溶媒を少なくなるように乾燥時に加熱した場合に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
(中間層)
本発明の近赤外線吸収フィルターは、透明基材上に近赤外線吸収層を積層した構成からなるが、透明基材と近赤外線吸収層の密着性の向上や透明基材の透明性向上を目的に中間層を設けることが好ましい。なお、フィルム中に粒子を含有させない場合、粒子を含有する中間層をフィルム製造時に同時に設けることにより、ハンドリング性を維持しながら高度な透明性を得ることができる。
前記中間層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、基材および近赤外線吸収層との密着性が良好である様に選択することが重要であり、具体的には、基材及び近赤外線吸収層を構成する樹脂がアクリル系であれば、アクリル系、共重合ポリエステル系、ポリエステルウレタン系を選定することが好ましい。
前記中間層には、密着性の向上、耐水性の向上を目的に架橋剤を含有させて架橋構造を形成させても構わない。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系が挙げられる。特に、樹脂が高温・高湿度下での白化や強度が低下する場合には、架橋剤による効果が顕著である。なお、架橋剤を用いずに、樹脂として自己架橋性を有するグラフト共重合樹脂を用いてもよい。
中間層には、表面に凹凸を形成させて滑り性を改善する目的で、各種の粒子を含有させてもよい。中間層中に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。なお、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。
さらに、中間層に各種機能を付与するために、界面活性剤、帯電防止剤、色素、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
中間層は目的とする機能を有する場合は単層でも構わないが、必要に応じて2層以上に積層しても構わない。
中間層の厚みは、目的とする機能を有すれば特に限定されるものではないが、0.01μm以上5μm以下が好ましい。厚みが薄い場合には中間層としても機能が発現し難くなり、逆に、厚い場合には透明性が不良となりやすくなる。
中間層を設ける方法としては、塗布法が好ましい。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法を用いて、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。これらの方式のうち、インラインコート方式がコスト面で優れるだけでなく、塗布層に粒子を含有させることで、透明基材に粒子を含有させる必要がなくなるため、透明性を高度に改善することができるため好ましい。
(近赤外線吸収層)
本発明の近赤外線吸収フィルターは、透明基材上に直接あるいは中間層を介して近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有する組成物からなる近赤外線吸収層を設けられている。上記の「近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有」とは、前記組成物中に近赤外線吸収色素と樹脂を80質量%以上含有することを意味する。
近赤外線吸収色素とは、波長800〜1200nmの近赤外線領域に極大吸収を有する色素であって、ジインモニウム系、フタロシアニン系、ジチオ−ル金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、ポリメチン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドオコリン系、トリフェニルメタン系、シアニン系、アゾ系、アミニウム系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して使用されるが、近赤外線領域の吸収が大きく、かつ吸収域も広く、さらに可視光領域の透過率も高い下記の式(1)で示されるジインモニウム塩化合物を含むことが好ましい。
Figure 0004314532
前記の式(1)中のR1〜R8の具体例としては、(a)メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、ter−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルキル基、(b)フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル、ナフチル基などのアリール基、(c)ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、(d)ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基などのアラルキル基、が挙げられる。
また、R9〜12としては、水素、フッ素、塩素、臭素、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
また、X- は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンなどが挙げられる。これらの中で、イオン性液体を含有させることによる耐熱性向上の効果の点から、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンを対イオンとするジインモニウム塩化合物が好ましい。このジインモニウム塩化合物は市販品として入手可能であり、例えば、日本化薬社製Kayasorb IRG−022、IRG−023、IRG−024、IRG−068、日本カーリット社製 CIR−1080、CIR−1081、CIR−1083、CIR−1085、CIR−1085F、CIR−RLなどを好適である。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、前記の式(1)で示されるジイモニウム塩系化合物以外に、近赤外線領域の吸収域の拡大、色目の調整を目的として、他の近赤外線吸収色素を加えることもできる。
前記のジインモニウム塩系化合物と併用し得る他の近赤外線吸収色素としては、フタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、スクアリリウム塩系化合物、ピリリウム塩系化合物、チオペリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、インドアニリンキレート系色素、インドナフトールキレート系色素、アゾ系色素、アゾキレート系色素、アミニウム塩系色素、キノン系色素、アントラキノン系色素、ポリメチン系色素、トリフェニルメタン系色素などが挙げられる。これらの中で、色素自体の高温高湿度下の劣化の少ないフタロシアニン系化合物、ジチオール系金属錯体系化合物が好ましい。劣化しやすい色素を用いた場合には、近赤外領域の透過率の経時安定性が不良となるだけでなく、ジインモニウム塩系化合物がクエンチャーとして作用して劣化し、近赤外線吸収フィルムが黄色く変色する。
これらの一部は市販品として入手可能であり、例えば、日本触媒製のフタロシアニン系色素(IR−1、R−2、IR−3、IR−4、IR−10、IR−10A、IR−12、IR−14)、旭電化製のシアニン系色素(TZ−111、114、119、121、123)、みどり化学製のニッケル錯体系色素(MIR−101、MIR−111、MIR−121、MIR−102、MIR−1011、MIR−1021)、山田化学製のシアニン系色素(IR−301)、山本化成製のシアニン系色素(YKR−2900)、フタロシアニン系色素(YKR−3070、YKR−3081)が挙げられる。
本発明において、目的とする近赤外線領域の吸収、可視光領域での透過率を制御するために、近赤外線吸収色素の量を、近赤外線吸収層の厚み方向における任意の面で0.01g/m2 以上1.0g/m2 以下と存在するように調整することが好ましい。近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、近赤外線領域での吸収能が不足し、逆に、多い場合には可視光領域での透明性が不足してディスプレイの輝度が低下する問題がある。
本発明明において、近赤外線吸収層を透明基材に積層する方法としては、近赤外線吸収色素と樹脂を加熱により溶融させて透明基材上に設ける方法、近赤外線吸収色素と樹脂を有機溶剤に溶解し透明基材上に塗布、乾燥して積層する塗布法が挙げられる。近赤外線吸収層の幅方向及び流れ方向の均一性が得られ易い塗布法が好ましい。
本発明において、近赤外線吸収層に用いる樹脂としては、近赤外線吸収色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。中でも耐熱性に優れるアクリル系樹脂が好ましい。さらに、樹脂のガラス転移温度が、利用する機器の使用保証温度以上であることが好ましい。しかしながら、ガラス転移温度が高いアクリル系樹脂は、柔軟性に乏しく、近赤外線吸収層が衝撃や曲げによりひび割れが発生しやすい問題がある。後述するようにイオン性液体を近赤外線吸収層中に含有することで柔軟性を付与でき改善することが可能となる。
ガラス転移温度が機器使用温度以下であると、樹脂中に分散された色素同士が反応し、あるいは樹脂が外気中の水分等を吸収して、色素やバインダ−樹脂の劣化が大きくなる。また、本発明において、樹脂のガラス転移温度は、機器使用温度以上であれば特に限定されないが、特に好ましくは85℃以上160℃以下が好ましい。
なお、ガラス転移温度はJIS K7121に準拠し、示差走査熱量法(DSC)を用いて行い、ガラス転移温度は補外ガラス転移開始温度を用いる。測定の手順は、以下のようにした。
試料約5mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(MACサイエンスDSC3100S))に装着し、窒素雰囲気下、10℃/分の速度で30℃から200℃まで昇温させ、200℃に到達後試料を取出し、直ちに急冷する。このパンを再度示差熱量計に装着し、30℃から10℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度 (Tg:℃)を測定する。
近赤外線吸収層に用いる樹脂のガラス転移温度が85℃未満の場合、色素と樹脂との相互作用、色素間の相互作用等が起こり、色素の変性が発生しやすくなる。また、ガラス転移温度が160℃を超える場合、該樹脂を溶媒に溶解し、透明基材上に塗布する時に十分な乾燥をしようとすれば高温にしなければならず、基材の熱シワによる平面性不良、更には、色素の劣化が発生する。また、低温で乾燥した場合、乾燥時間が長く生産性が悪くなり、生産性が不良となる。また、十分な乾燥ができない可能性もあり、溶媒が塗膜中に残留し、前述のように樹脂の見かけのガラス転移温度が低下し、同様に、色素の変性が発生しやすくなる。
近赤外線吸収層における近赤外線吸収色素の量は、樹脂に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。樹脂中の近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、目的とする近赤外線吸収能を達成するために近赤外線吸収層の塗工量を増やす必要があり、十分な乾燥をしようとすれば高温及び/又は長時間にする必要があり、色素の劣化や基材の平面性不良などが起こりやすくなる。逆に、樹脂中の近赤外線吸収色素の量が多い場合には、色素間の相互作用が強くなり、近赤外線吸収層中の残留溶媒量を少なくしたとしても色素の経時的な変性が起こりやすくなる。
本発明において、近赤外線吸収層は、近赤外線吸収色素、樹脂、および有機溶媒を含む塗布液を、透明基材上に塗布、乾燥させて形成される。この際に、前記塗布液中に界面活性剤を含有させることが重要である。界面活性剤を含有させることにより、近赤外線吸収層の塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキが改善される。更には、界面活性剤は塗布乾燥により表面にブリードして局在化することにより、HLBの低い界面活性剤を添加すると耐久性が向上するだけでなく、滑り性が付与され、近赤外線吸収層あるいは/及び反対面に表面凹凸を形成しなくともハンドリング性が良好となり、ロール状に巻取ることが容易になる。
界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できるが、近赤外線吸収色素との劣化等の問題から極性基を有していないノニオン系が好ましく、更には、界面活性能に優れるシリコン系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
シリコン系界面活性剤としては、ジメチルシリコン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジシルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ビトロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、近赤外線吸収層を構成する樹脂に対して0.01質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の含有量が少ない場合には、塗工外観の向上や滑り性付与の効果が不足し、逆に、多い場合には近赤外線吸収層が水分を吸収しやすくなり、色素の劣化が促進される場合がある。
本発明において、界面活性剤のHLBは2以上12以下であることが好ましい。HLBの下限値は好ましくは3であり、特に好ましくは4である。一方、HLBの上限値は好ましくは11であり、特に好ましくは10である。HLBが低い場合には、表面が撥水化して耐湿熱による色素の劣化を抑えることができ、かつ、易滑性を付与しやすいが、低すぎる場合には、界面活性能の不足によりレベリング性が不十分となる傾向がある。逆に、HLBが高い場合には、滑り性が不足するだけでなく、近赤外線吸収層が水分を吸収しやすくなり、色素の経時安定性が不良となりやすい。
なお、HLBとはアメリカのAtlas Powder社のW.C.GriffinがHydorophil Lyophile Balanceと名付けて界面活性剤の分子中に含まれる親水基と親油基のバランスを特性値として指標化した値でこの値が低いほど親油性が、逆に高いほど親水性が高くなる。
近赤外線吸収層の表面への界面活性剤の局在化は、樹脂の種類や溶剤による異なるが、HLBの値が7付近で最も起こりやすく、かつ、初期の乾燥が緩やかである方が起こりやすい。局在化の度合いは、ESCAを用いて測定した近赤外線吸収層の表面近傍の界面活性剤の量と、化学分析法にて測定した近赤外線吸収層中の界面活性剤の量を対比することにより評価することができる。
本発明において、近赤外線吸収層中にイオン性液体を含有させることが重要である。イオン性液体を含有させることで、近赤外線吸収層の柔軟性が向上するだけでなく、近赤外線吸収色素、特に、ジインモニウム塩化合物の熱による劣化を低減することが可能となる。イオンを多量に近赤外線吸収層に含有させることで、可塑剤として作用して柔軟性を付与でき、更に、ジインモニウム塩化合物の対イオンとイオン交換し安定化する。ジインモニウム塩化合物の対イオンとイオン性液体が同一の場合には、他の色素や樹脂に含有される低分子量の対イオンがジインモニウム塩化合物の対イオンとイオン交換を妨げて、耐熱性が向上する。
本発明において、イオン性液体とは、アニオン、カチオンのイオンのみから構成される液体状の塩である。
イオン性液体を構成するアニオン種として特に限定されるものではないが、例えばCl-、Br-、I-、AlCl4 -、Al2Cl7 -、BF4 -、PF6 -、ClO4 -、NO3 -、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-、(CF3SO23-、AsF6 -、SbF6 -、NbF6 -、TaF6 -、F(HF)n-、(CN)2-、C49SO3 -、(C25SO22-、C37COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-などが挙がられる。これらの中で含有フッ素原子を含むアニオン成分は、低融点のイオン性化合物が得やすく、近赤外線吸収層の柔軟性を付与し易くなる。さらに、ジインモニウム塩化合物の対イオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸の場合には、同じ対イオンを用いることで耐熱性の向上効果が得られる。
カチオン種としては、イミダゾリウム、ピリジニウムが具体的に挙げられる。含窒素オニウム、含硫黄オニウム、含リンオニウムからなるものを用いることで、近赤外線吸収層に帯電防止効果を付与することが可能となり、好ましい。
前記のようなイオン性液体は、市販のものを使用してもよいが、下記のようにして合成することも可能である。イオン性液体の合成方法としては、目的とするイオン性液体が得られれば特に限定されないが、一般的には、文献“イオン性液体−開発の最前線と未来−”[(株)シーエムシー出版発行]に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが用いられる。
イオン性化合物の含有量は、近赤外線吸収層中に0.1質量%以上10.0質量%以下含有させる0.1質量%未満ではイオン性液体含有による耐熱性の向上や柔軟性付与の効果が発現しにくくなる。逆に、10質量%を超える場合には、近赤外線吸収層の表面に析出して粘着剤との密着性が低下しやすくなる。
本発明において、近赤外線吸収層は、樹脂、近赤外線吸収色素、界面活性剤を含む塗布液を透明基材上に塗布・乾燥することにより積層することが好ましい。該塗布液は、塗工性より有機溶媒により希釈することが必要である。
該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
好ましくは、色素の溶解性に優れるケトン類を、塗布液に使用する全有機溶媒に対し、30質量%以上80質量%以下含有させる。その他の有機溶媒は、レベリング性、乾燥性を考慮して選定することが好ましい。また、有機溶媒の沸点は、60℃以上180℃以下が好ましい。沸点が低い場合には、塗工中に塗布液の固形分濃度が変化し、塗工厚みが安定化しにくい。逆に、沸点が高い場合には、塗膜中に残存する有機溶媒量が増え、経時安定性が不良となる。
近赤外線吸収色素および樹脂を有機溶媒中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下での攪拌、分散及び粉砕の方法が挙げられる。加温することにより色素及び樹脂の溶解性を向上することができ、未溶解物等による塗工外観への不良が妨げられる。また、分散及び粉砕して樹脂及び色素を0.3μm以下の微粒子状態で塗布液中に分散することにより、透明性に優れる層を形成することが可能となる。分散機及び粉砕機としては、公知のものを用いることができ、具体的には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
塗布液中にコンタミや1μm以上の未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になるため、塗布する前に、フィルター等で除去する必要がある。フィルターとして、各種のものが好適に使用できるが、1μmの大きさのものを99%以上除去するものを用いることが好ましい。1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗布液を塗布し乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、100〜1000μmサイズの欠点になる場合がある。
塗布液中に含まれる樹脂及び色素等の固形分濃度は、10質量%以上30質量%が好ましい。固形分濃度が低い場合には、塗布後の乾燥に時間が掛かり、生産性が劣るばかりか、塗膜中に残存する溶媒量が増加し、経時安定性が不良となる。逆に、固形分濃度が高い場合には、塗布液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となる。塗布液の粘度は、10cps以上300cps以下が塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように固形分濃度、有機溶媒等を調整することが好ましい。
本発明で、近赤外線吸収層を塗布法により透明基材上に積層する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増える。
近赤外線吸収層の乾燥後の塗布量は特に限定されないが、下限は1g/m2 が好ましい、より好ましくは3g/m2 であり、上限は50g/m2 が好ましく、より好ましくは30g/m2 である。乾燥後の塗布量が少ない場合には、近赤外線の吸収力が不足しやすくなる。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を増やすと、色素間の距離が短くなるため、色素間の相互作用が強くなる。その結果、色素の劣化等が起こりやすくなり、経時安定性が不良となる。逆に、乾燥後の塗布量が多い場合には、近赤外線の吸収能は十分であるが、可視光領域での透明性が低下し、ディスプレイの輝度が低下する。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を低減すると、光学特性は調節できるが、乾燥が不十分になりやすくなる。その結果、塗膜中の残留溶媒により色素の経時安定性が不良となる。一方、乾燥を十分にした場合には基材の平面性が不良となる。
塗布液を透明基材上に塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、界面活性剤の表面への局在化が起こりにくく耐久性向上や滑り性付与の効果がでにくいだけでなく、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、外観は良好になるが乾燥時間が掛かりコスト面で問題があるばかりか、ブラッシング等の問題が発生する。塗布液に界面活性剤を添加しない場合には、上記の微小な欠点が発生しやすく、初期乾燥をかなり弱くする必要がある。
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温し、塗膜中の溶媒を減少させる必要があり、好ましい温度は、120℃以上180℃以下である。特に好ましくは、下限値が140℃であり、上限値は170℃である。温度が低い場合には、塗膜中の溶媒が減少しにくくなり、残留溶媒となって色素の経時的な安定性が不十分となる。逆に、高温の場合には、熱シワにより基材の平面性が不良となるだけでなく、近赤外線吸収色素が熱により劣化する。また、通過時間としては、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には塗膜中の残留する溶媒が多くなり経時安定性が不良となり、逆に時間が長い場合には、生産性が不良となるだけでなく、基材に熱シワが発生して平面性が不良となる。通過時間の上限は、生産性と平面性の点から、30秒とすることが特に好ましい。
乾燥の最終では、熱風温度を樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で基材の実温を樹脂のガラス転移温度以下にすることが好ましい。高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗工面がロール表面に接触した際に滑りが不良となり、キズ等が発生するだけでなく、カール等が発生する場合がある。
(近赤外線吸収フィルム)
本発明において近赤外線吸収フィルムとは、800〜1200nmの近赤外領域の透過率が低く、400nm〜800nmの可視光領域の透過率が高いフィルムのことである。近赤外領域の透過率は低いほど好ましく、具体的には40%以下、より好ましくは30%以下である。透過率が高い場合には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線の吸収が不足し、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができない。
透過率の調整としては、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量により変更することができる。
近赤外線吸収フィルムの色調としては、Lab表色系で表現すると、a値は−10.0〜+10.0、b値は−10.0〜+10.0であることが好ましい。この範囲であれば、プラズマディスプレイの前面に設置した場合でもナチュラル色となり好ましい。
色調を調整する方法としては、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量、更には、他の色素の混合により達成できる。なお、後述の近赤外線吸収フィルムの前面または裏面に着色された粘着層を用いて電磁波防止フィルム、反射防止フィルム、ガラス等の他の部材と貼り合せる場合には、光学フィルターとして、ナチュラル色になるように色調を調整することが好ましい。
近赤外線吸収層の塗工外観としては、直径300μm以上、より好ましくは100μmのサイズの欠点を存在しないようにしなければならない。300μm以上の欠点は、プラズマディスプレイの前面に設置すると輝点の様になり、欠点が顕著化される。100μm以上300μm未満の欠点も粘着加工等の貼り合わせにより、レンズ効果等で強調される場合があり、できるだけ存在しないようにしなかればならない。また、塗工層の薄いスジ、ムラ等もディスプレイ前面では顕著化されて問題となる。
近赤外線吸収フィルムは、高温、高湿度下に長期間放置されても、近赤外線の透過率、可視光の透過率が変化しないことが好ましい。高温、高湿度下の経時安定性が不良の場合には、ディスプレイの映像の色調が変化するばかりか、近赤外線リモコンを用いた電子機器の誤動作を防止する本発明の効果がなくなる場合がある。
経時安定性を良好にするには、色素や樹脂の種類、添加剤により変化するが、塗布液で使用する有機溶媒の種類、塗布層の厚み、乾燥条件等を制御することで近赤外線吸収層中の残留溶媒量を低減すること、あるいは樹脂中の色素の含有量を調整することにより良好化することができる。なお、近赤外線吸収層の残留溶媒の量は、少なければ少ないほどよいが、3質量%以下にすることが好ましい。3質量%以下になれば、実質的に経時安定性に差がなくなる。しかしながら、さらに残留溶媒量を低下させるために、例えば、乾燥を過酷な条件とすると、フィルターの平面性が不良になる等の弊害が発生し、減圧乾燥のような方法では生産性が低下する。
本発明において、近赤外線吸収層を設けていない面に、他の機能を付与しても構わない。具体的には、帯電防止層、易接着層、易滑層、反射防止層、電磁波防止層が挙げられる。反射防止層、電磁波防止層を設けることで、光学フィルターの部材を減らすことができ、安価にできるだけでなく、光の干渉する面が減少してプラズマディスプレイの画質が向上することができる。帯電防止層は、近赤外線吸収層の形成時、後工程でのゴミの付着を低減することができ、微小欠点の低減や製造時の歩留まり向上することが可能となる。易接着層は粘着剤で他の部材と貼り合せた際の密着力の向上、易滑層はハンドリング性を向上することが可能となる。
帯電防止層に用いる帯電防止剤としては、公知のものを用いることができるが、近赤外線吸収フィルムの製造時にロール上で巻き取った際に、近赤外線吸収層に帯電防止層が接触し、近赤外線吸収色素、特にジインモニウム塩化合物が劣化することがある為、アニオン系やカチオン系の界面活性剤タイプや、4級アンモニウム塩のカチオン系樹脂の使用することは好ましくなく、π共役系導電性高分子を含有することが必要である。π共役系導電性高分子は、近赤外線吸収色素、特に、ジインモニウム塩の劣化を促進することがなく、逆に、経時安定性が良好となる場合がある。π共役系導電性高分子としては、アニリン及び/又はその誘導体、ピロール及び/又はその誘導体、イソチアナフテン及び/又はその誘導体、アセチレン及び/又はその誘導体、チオフェン及び/又はその誘導体等が挙げられる。その中でも着色が少ないチオフェン及び/又はその誘導体が好ましい。
本発明において、ディスプレイから放出される有害電磁波を遮断する目的で、赤外線吸収層と同一面、ないしは、反対面に導電層を直接或いは粘着剤を介して設けてもよい。該導電層は金属メッシュと導電薄膜の何れを用いても良く、金属メッシュを用いた場合、開口率が50%以上の金属メッシュ導電層を有している必要がある。金属メッシュの開口率が低ければ電磁波シ−ルド性は良好となるが光線透過率が低下する問題が有る、この為、良好な光線透過率を得る為には開口率が50%以上は必要となる。本発明に用いられる金属メッシュとしては、電気電導性の高い金属箔にエッチング処理を施して、メッシュ状にしたものや、金属繊維を使った織物状のメッシュや、高分子繊維の表面に金属をメッキ等の手法を用いて付着させた繊維を用いてもよい。該電磁波吸収層に使われる金属は、電気電導性が高く、安定性が良ければいかなる金属でも良く特に限定されるものではないが、加工性、コストなどの観点より、好ましくは、銅、ニッケル、タングステンなどがよい。
また、導電薄膜を用いた場合、透明導電層はいかなる導電膜でもよいが、好ましくは、金属酸化物であることが好ましい。これによって、より高い可視光線透過率を得ることが出来る。また、本発明において透明導電層の導電率を向上させたい場合は、金属酸化物/金属/金属酸化物の3層以上の繰り返し構造であることが好ましい。金属を多層化することで、高い可視光線透過率を維持しながら、電導性を得ることができる。本発明に用いられる。金属酸化物は、電導性と可視光線透過性が有していれば如何なる金属酸化物でもよい。一例として、酸化錫、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ビスマスなどがある。以上は一例であり、特に限定されるものではない。また、本発明に用いられる金属層は、導電性の観点より、金、銀及びそれらを含む化合物が好ましい。
更に、導電層を多層化した場合、例えばくり返し層数が3層の場合、銀層の厚さは50〜200Åが好ましく、より好ましくは50〜100Åである。これよりも膜厚が厚い場合は、光線透過率が低下し、薄い場合は抵抗値が上がってしまう。また、金属酸化物層の厚さとしては、好ましくは、100〜1000Å、より好ましくは、100〜500Åである。この厚さより厚い場合には着色して色調が変ってしまい、薄い場合には抵抗値が上がってしまう。さらに、3層以上多層化する場合、例えば、金属酸化物/銀/金属酸化物/銀/金属酸化物のように5層とした場合、中心の金属酸化物の厚さは、それ以外の金属酸化物層の厚さよりも厚いことが好ましい。この様にすることで、多層膜全体の光線透過率が向上する。
反射防止層とは、表面反射を防ぎ、蛍光灯等の映り込みを防止する機能を有する。該反射防止機能を付与する方法は限定させず任意に選択できるが、例えば、基材の表面に屈折率の異なる層を積層し、該層の界面における反射光の干渉を利用して低減する方法、表面に凹凸を付与する方法が挙げられる。該方法の反射防止膜を形成する方法として、大きくは下記の2方法が挙げられる。その一つの方法は、基材の表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止膜を形成する方法であり、他の一つの方法は、基材の表面に、反射防止用塗布液を塗布し乾燥させることにより反射防止膜を形成する方法である。一般論としては、反射防止特性では前者が、経済性では後者が優れていると言われているが、本発明においては、どちらの方法を用いても構わない。
(光学フィルター)
本発明において光学フィルターとは、プラズマディスプレイの前面に設置されるもので、ディプレイから発生する近赤外線、電磁波をカットすると共に、ディスプレイの視認性向上の為の反射防止、色再現性の向上等の機能を有し、更には、ディスプレイの保護の機能を有する。
光学フィルターは、反射防止フィルム、ガラス、電磁波防止フィルム、近赤外線吸収フィルムを粘着剤で貼り合せた構成が一例として挙げられ、粘着剤に紫外線吸収能、色補正機能、色再現性の向上機能を付与することが好ましい。また、フィルムの同一面あるいは反対面に別々の機能を付与した複合フィルムを用いることで、部材数の低減、計量化等で好ましい。更には、軽量化、高画質化の為に、ガラスを用いず、直接プラズマディスプレイのパネルに貼り合わせる直貼りフィルターも好ましい。
本発明において、ガラスを用いずに直接プラズマディプレイのパネルに光学フィルターを貼り合せる場合に、本発明の近赤外線吸収フィルムを好適に使用できる。光学フィルターを直接貼り合せることで、画質の向上を図ることができるが、パネルの熱が伝わり易く、高度な耐熱性が要求される。また、ガラスを使用しないことで計量化が図れるが、外部の衝撃により、ひび割れ等の問題が発生しやすくなり、柔軟性が高度に要求される。
次に本発明の実施例及び比較例を示す。また、本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
<塗布液粘度>
塗布液を20℃に調節し、B型粘度計(東京計器製、BL)を用いて、ローター回転数60rpmにて測定した。
<透過率>
分光光度計(日立U−3500型)を用い、波長1100〜200nmの範囲で、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、室内の空気を透過率の参照として測定した。
<色調>
色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用い、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、D65光源、10度の視野角で測定した。
<耐湿熱性>
温度60℃、湿度95%雰囲気中で500時間放置した後の色調を測定し、処理前後の色調の変化量Δx、Δyを求めた。
<耐熱性>
温度90℃の雰囲気中で500時間放置した後の色調を測定し、処理前後の色調の変化量Δx、Δyを求めた。
<柔軟性>
フィルムを幅10mmにカットし、近赤外線吸収層を外側にして金属棒に巻きつけて、近赤外線吸収層のひび割れの有無を確認した。金属棒は直径が1〜20mmで1mm間隔の20本を用い、ひび割れが発生しない最小の直径を柔軟性の評価値とした。
実施例1
1.透明基材の製造
(1)紫外線吸収剤含有マスターバッチの調整
乾燥させた紫外線吸収剤(サイテック社製、CYASORB UV−3638;2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン))10質量部、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂(東洋紡績製、ME553)90質量部を混合し、混練押出機を用い、マスターバッチを作製した。この時の押し出し温度は285℃であり、押し出し時間は7分であった。
(2)易接着層形成用の塗布液の調整
易接着層形成用の塗布液を以下の方法に従って調製した。ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部および三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6.0質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の30質量%水分散液を6.7質量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20質量%水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)を40質量部、エラストロン用触媒(Cat64)を0.5質量部、水を47.8質量部およびイソプロピルアルコールを5質量部、それぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤を塗布液に対し1質量%、コロイダルシリカ粒子(日産化学工業社製、スノーテックスOL)を塗布液の固形分に対し5質量%添加し塗布液とした。
(3)基材フィルムの製膜
固有粘度が0.62dl/gで、粒子を含有しないPET樹脂のペレット(東洋紡績社製、ME553)90質量部と前記の紫外線吸収剤含有マスターバッチ10質量部とを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給した。押出機熔融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃、その後のポリマー管では275℃とし、口金よりシート状にして押し出した。これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が275℃になるようにした。押し出した樹脂を、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラム(ロール径400φ、Ra0.1μm以下)に巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時の吐出量は48kg/hrであり、得られた未延伸シートは幅300mm、厚さ1400μmであった。次に、上記キャストフィルムを加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。該フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。その後、易接着層形成用の塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で両面に塗布、乾燥した。塗布後、引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に4.0倍に延伸し230℃にて5秒間熱処理し、この熱処理工程中で幅方向に3%の弛緩処理し、基材フィルム(B)を得た。該フィルム厚さ100μmであり、この時の易接着層のコート量は0.01g/m2 であった。得られたフィルムの波長380nmの透過率は4%で優れた紫外線吸収性を有していた。また、全光線透過率が91%、ヘイズが0.6%で透明性に優れていた。
2.近赤外線吸収層の積層
下記の塗布液A(粘度が23cps)を上記の中間塗布層上に乾燥後に950nmの透過率が4.3%になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルターを作成した。
(近赤外線吸収層用の塗布液A)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Aを調整した。
・トルエン 22.193質量%
・メチルエチルケトン 23.083質量%
・アクリル系樹脂 52.762質量%
(総研化学製、GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:115℃)
・ジインモニウム塩化合物(色素A) 0.937質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・シアニン系色素 0.076質量%
(旭電化工業製、TZ−123)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB:6.7)
・イオン性液体C 0.890質量%
(n−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
実施例2
下記の塗布液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液B)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Bを調整した。
・トルエン 22.998質量%
・メチルエチルケトン 23.083質量%
・アクリル系樹脂 52.762質量%
(総研化学製、GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:115℃)
・ジインモニウム塩化合物(色素A) 0.937質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・シアニン系色素 0.076質量%
(旭電化工業製、TZ−123)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB:6.7)
・イオン性液体C 0.085質量%
(n−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
実施例3
下記の塗布液Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液C)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Cを調整した。
・トルエン 21.411質量%
・メチルエチルケトン 23.083質量%
・アクリル系樹脂 52.762質量%
(総研化学製、GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:115℃)
・ジインモニウム塩化合物(色素A) 0.937質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・シアニン系色素 0.076質量%
(旭電化工業製、TZ−123)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB:6.7)
・イオン性液体C 1.671質量%
(n−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
比較例1
下記の塗布液Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液D)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Dを調整した。
・トルエン 23.083質量%
・メチルエチルケトン 23.083質量%
・アクリル系樹脂 52.762質量%
(総研化学製、GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:115℃)
・ジインモニウム塩化合物(色素A) 0.937質量%
(日本カーリット製、CIR1085、対イオン:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸)
・シアニン系色素 0.076質量%
(旭電化工業製、TZ−123)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB:6.7)
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強いフィルムを得られた。可視光領域での透過率は、イオン性液体を添加した実施例1〜3よりも少し低いがフィルムが得られた。耐熱性、柔軟性は不良となった。
実施例4
実施例1において、イオン性液体の種類を下記のイオン性液体Dに変更したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
イオン性液体D:n−ブチル−3−メチルピリジニウム テトラフルオロボレート
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表1に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
実施例5
実施例1において、イオン性液体の種類を下記のイオン性液体Eに変更したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
イオン性液体E:N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強いフィルムを得られた。耐熱性は実施例1よりも劣るが、比較例1よりも良好であった。また、柔軟性は良好であった。
実施例6
下記の塗布液Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液E)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Eを調整した。
・トルエン 22.193質量%
・メチルエチルケトン 23.083質量%
・アクリル系樹脂 52.762質量%
(総研化学製、GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:115℃)
・ジインモニウム塩化合物(色素B) 0.937質量%
(日本カーリット製、CIR1081、対イオン:六フッ化アンチモン)
・シアニン系色素 0.076質量%
(旭電化工業製、TZ−123)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB:6.7)
・イオン性液体C 0.890質量%
(n−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
比較例2
下記の塗布液Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
(近赤外線吸収層用の塗布液F)
塗布液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液Eを調整した。
・トルエン 23.083質量%
・メチルエチルケトン 23.083質量%
・アクリル系樹脂 52.762質量%
(総研化学製、GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:115℃)
・ジインモニウム系色素 0.937質量%
(日本カーリット製、CIR1081、対イオン:六フッ化アンチモン)
・シアニン系色素 0.076質量%
(旭電化工業製、TZ−123)
・シリコーン系界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57、HLB:6.7)
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
実施例7
透明基材として、反射フィルム(日本油脂製、リアルック7700S)を用い、反射防止層とは反対面に近赤外線吸収層を積層したこと以外は、実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収色素(ジインモニウム塩化合物)の種類、イオン性液体の種類と含有量を表1に示す。また、得られた近赤外線吸収フィルムの物性を表2に示す。近赤外領域の吸収が強く、可視光領域での透過率が高いフィルムが得られた。また、耐熱性、柔軟性も良好であった。
Figure 0004314532
Figure 0004314532
本発明の近赤外線吸収フィルムを近赤外線吸収フィルターとしてプラズマディプレイの前面に設置した場合、従来の近赤外線吸収フィルターと同様に、ディスプレイから放出される不要な近赤外線を吸収し、精密機器の誤動作を防ぐことができるだけでなく、熱による色調の変化を大幅に低減することができるため、プラズマディスプレイの高画質化に寄与することができるとともに、光学フィルターの設計の自由度が上がるという利点があり、産業界に寄与することが大である。

Claims (5)

  1. 透明基材上に、近赤外線吸収色素、樹脂から主に構成される組成物からなる近赤外線吸収層を設けた近赤外線吸収フィルムであって、前記の組成物中にイオン性液体を0.1質量%以上10.0質量%以下含有することを特徴とする近赤外線吸収フィルム。
  2. 前記の近赤外線吸収色素がジインモニウム塩化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収フィルム。
  3. 前記の近赤外線吸収色素がビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を対イオンとするジインモニウム塩化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルム。
  4. 前記のイオン性液体がビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸を陰イオンとして含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルム。
  5. 近赤外線吸収層を構成する樹脂がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルム。
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