以下、本発明を詳細に説明する。
(基材)
本発明において、転写フィルムに用いる離型フィルムの基材としては、離型層および近赤外線吸収層を積層する際の生産性、更には転写時の作業性の点から、ロール状に巻取りが可能なプラスチックフィルムを用いることが好ましい。なお、本発明においては、シートもフィルムの範疇に含む。
このような基材フィルムとしては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート、フェノ−ル系、ウレタン系のフィルム、及びこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。耐熱性、柔軟性のバランスが良好な点から、ポリエステル系フィルムが好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
本発明の転写フィルムで用いる離型フィルムの基材として好適なポリエステル系フィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸する。さらに、二軸延伸後に220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
フィルムには、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、フィルム中あるいは塗布層中に粒子を含有させて、フィルム表面に突起を形成させることが好ましい。粒子としては、アモルファスシリカ、結晶性シリカ、シリカ−アルミナ複合酸化物、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム(カルサイト型、バテライト型)、ゼオライト、アルミナ、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋PMMA粒子、架橋ポリスチレン粒子、ナイロン粒子、ポリエステル粒子、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子等の耐熱性高分子粒子、シリカ・アクリル複合化合物のような有機・無機ハイブリッド微粒子が挙げられる。
転写フィルム製造時の透過での外観及び微小欠点の検査のために、フィルムは透明であることが好ましい。そのため、フィルム中あるいは塗布層中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。例えば、ポリエステルフィルムの場合、アモルファスシリカ、結晶性シリカ、シリカ−アルミナ複合酸化物が好適である。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
前記の基材フィルムは、単層フィルムであっても、表面層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表面層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。前記複合フィルムの製造方法は、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法により積層することが特に好ましい。
基材フィルムの厚みは素材により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、下限は20μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上である。一方、厚みの上限は360μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、近赤外線吸収層の残留溶媒を少なくなるように乾燥時に加熱した場合に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
離型フィルムの基材は、転写フィルムの生産時、転写工程での検査性の観点から、透明であることが好ましい。具体的には、全光線透過率で80%以上、ヘーズで10%以下であることが好ましい。
近赤外線吸収薄膜を転写する被転写体が偏光板の場合は、転写フィルムの貼付け後に基材を剥離する前に、クロスニコル法による偏光板の検査が行われる。この際の検査性の観点から、マイクロ波透過型分子配向計で測定した転写フィルムの配向主軸の最大歪みが7度以内であることが好ましい。配向主軸の歪みが大きい場合には、転写フィルムの基材の吸収が顕著になり、偏光板の検査が困難となる。配向主軸の最大歪みを7度以内にする方策としては、1軸方向にのみ強く延伸する方法や熱セット温度を低くする方法が挙げられる。また、2軸方向に延伸した幅広いフィルムの中央部分のみを用いることでも達成可能である。
(離型層)
本発明において、表面が粗面化された近赤外線吸収フィルムを製造する際に用いられる転写フィルムは、離型フィルムの離型層上に近赤外線吸収層を積層した構成からなる。離型フィルムの離型層は、近赤外線吸収層を容易に剥離可能にするために、近赤外線吸収層に隣接して積層することが重要である。離型フィルムにおいて、離型層は基材フィルム上に直接あるいは中間層を介して積層される。また、離型層は、剥離性樹脂と粒子を含む組成物から構成される。
離型層において、離型剤として用いる剥離性樹脂は、パラフィン、硬化型シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体系、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、あるいはこれらの混合物が例示される。
離型層の表面における水の接触角は、60度以上100度以下に調整することが好ましい。また、水の接触角の下限は99度がさらに好ましく、98度が特に好ましい。一方、水の接触角の下限は70度がさらに好ましく、特に好ましくは80度である。離型層の表面における水の接触角が高い場合には、近赤外線吸収層を設ける際にハジキや塗布ムラ等の塗布外観が不良となる。一方、水の接触角が低い場合は、安定的な転写が困難となる。
離型層の表面における水の接触角を上記の範囲内にするためには、剥離性樹脂の疎水基の比率、離型層中の粒子の含有量、離型層の塗布量を調整すればよい。具体的には、離型層の表面における水の接触角を高くするためには、例えば、下記の方法が好適である。
(a)剥離性樹脂の疎水基の比率を大きくする。
(b)剥離性樹脂として、アルキッド樹脂やメラミン樹脂等の硬化型樹脂を用いる。
(c)離型層中の粒子の含有量を多くする。
(d)離型層中に含有させる粒子として、耐熱性架橋有機粒子を用いる。
(e)離型層の塗布量を多くする。
なお、これらの方法による水の接触角の調整は、スクリーニングのための予備実験は必要であるが、当業者の技術常識の範囲内で、ある程度予測が可能であり、過度の試行錯誤は要しない。
水の接触角は、常温(20℃±5℃)下で、接触角計(協和界面化学製、CA−X型、FACE)を用いて測定される値である。
近赤外線吸収層を離型フィルムの離型面から剥離する際の剥離力は、転写フィルムの製造時やその後の工程でのハンドリング時に剥離等の点から、剥離力が大きい(重剥離)ことが好ましい。一方、液晶ディスプレイ内の部材に粘着層を介して貼り付けた際に、離型フィルムの離型面から近赤外線吸収層を容易に剥離するためには、剥離力が小さい(軽剥離)ことが重要である。具体的には、近赤外線吸収層の表面にテープを貼り付けて、万能引張り試験機で300mm/minの剥離速度でT型の形状で剥離力を測定する際に、5mN/25mm以上200mN/25mmであることが、転写性とハンドリング性を両立させる点から好ましい。
離型層中には、近赤外線吸収薄膜を転写する際に、近赤外線吸収層の表面に凹凸を付与する目的で、粒子を含有させる。離型層中に粒子を含有させることで、離型層の表面に凹凸が付与され、近赤外線吸収薄膜のみを転写した近赤外線吸収体の表面に離型層の表面形状が転移されて、凹凸を付与することが可能となる。
離型層中に含有させる粒子としては、例えば、アモルファスシリカ、結晶性シリカ、シリカ−アルミナ複合酸化物、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム(カルサイト型、バテライト型)、ゼオライト、アルミナ、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋PMMA粒子、架橋ポリスチレン粒子、ナイロン粒子、ポリエステル粒子、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子等の耐熱性高分子粒子、シリカ・アクリル複合化合物のような有機・無機ハイブリッド微粒子が挙げられる。
これらの中でも、離型層中の粒子の分散性、離型性の点から、表面を疎水化処理した無機粒子や、近赤外線吸収層を積層する際の塗布液中の有機溶剤で溶解しない耐熱性架橋高分子粒子が好適である。
離型層の表面凹凸を、隣接する近赤外線吸収層の表面に効率よく転写させるために、不定形ではなく球状の粒子を選択することが好ましい。球状粒子は、不定形の粒子に比べ、より高い突起を離型層表面に形成させることができる。粒子の平均粒子径は、0.5μm以上10μm以下が好ましい。平均粒子径の上限は、近赤外線吸収フィルムの転写性を安定にする点から8μmがより好ましく、特に好ましくは7μmである。一方、平均粒子径の下限は、離型層表面への凹凸の形成や、離型層の強度、離型層からの粒子の脱落を抑制する点から1μmがより好ましく、特に好ましくは2μmである。
なお、前記の平均粒子径はコールターカウンター(ベックマン・コールター製、マルチサイザーII型)を用いて、粒子を膨潤させない溶媒に分散させて測定した平均粒子径である。
離型層中に含有させる粒子は、シャープな粒子径分布を有することが好ましい。すなわち、均一な粒子径を有することが好ましい。また、粒子中に含まれる粗大粒子、特に、近赤外線吸収層の厚みよりも大きい粒子を、遠心分離、濾過、解砕などの方法を用いて除去することが好ましい。
粒子の含有量の下限は、離型層の表面への凹凸の付与の点から、離型層を構成する組成物に対し1質量%が好ましく、さらに好ましくは以上50質量%以下であることが好ましい。粒子の含有量の上限は、離型層からの粒子の脱落を抑制する点から、30質量%がさらに好ましく、下限は2質量%が以上%以下であることが好ましい。
離型層の塗布量は、0.1g/m2以上1g/m2以下が好ましい。離型層の塗布量の上限は、離型層自体の脱落を防止する点から、0.8g/m2が好ましく、特に好ましくは0.6g/m2である。一方、離型層の塗布量の下限は、離型層からの粒子の脱落を抑制する点から、0.2g/m2が好ましい。
離型層を基材フィルム上に形成するためには、有機溶媒と、離型層を形成する樹脂及び粒子を含有する塗布液を基材上に塗布し、乾燥させる方法が好適である。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法が挙げられる。
乾燥条件は、後工程の転写層(近赤外線吸収層)の外観や転写性の点から注意が必要である。具体的には、塗布後の初期の恒率乾燥の段階では、例えば、20℃以上120℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、塗膜のレベリング性が不良で、表面凹凸が不均一になりやすい。なお、乾燥温度は、使用する有機溶剤の沸点と乾燥時の環境温度により、適切な温度範囲に調整する。
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも温度を高くして、塗膜中の溶媒を減少させるとともに、剥離性樹脂の硬化反応を促進させるために、乾燥温度を120℃以上にすることが好ましい。一方、熱シワによるフィルムの平面性の悪化を抑制し、後工程の近赤外線吸収層の塗布性を良好にするために、減率乾燥時の温度を160℃以下にすることが好ましい。
また、剥離性樹脂の硬化が不足しないように、減率乾燥時の離型フィルムの通過時間を5秒以上にすることが好ましい。一方、離型フィルムの熱シワによる平面性の悪化を抑制するために、減率乾燥時の離型フィルムの通過時間を180秒以下にすることが好ましい。なお、生産性と平面性を両立させるために、減率乾燥時のフィルムの通過時間の上限を30秒にすることが特に好ましい。
本発明において、転写フィルムから近赤外線吸収層を剥離する際に、剥離後の近赤外線吸収フィルムの二次元平均表面粗さ(Ra)が、0.02μm以上0.30μmとなるように、離型面の表面粗さを調整することが重要である。離型面の二次元平均表面粗さ(Ra)を0.03μm以上0.50μm以下となるように、離型層に含有させる粒子の粒径及び含有量、あるいは離型層の厚みのいずれかを調整することが好ましい。
離型層表面の粗さを調整するためには、前記の粒子の粒子径と含有量、更には離型層の塗布量により調整することができる。
例えば、離型層の表面の二次元平均表面粗さ(Ra)を大きくするためには、(a)粒子の粒径を大きくする、(b)粒子の含有量を多くする、(c)離型層の塗布量t(g/m2)よりも粒子の粒径d(μm)を大きくする、(d)球状粒子を使用する、などの方法を少なくとも1つ用いることが有効である。
なお、(c)の方法では、d/tが大きすぎると粒子が脱落する頻度が増え、d/tが1以下であると、突起が有効に形成されないので適宜調整する。d/tの上限は30以下が好ましく、25以下がさらに好ましい。これらの調整には、過度の試行錯誤は不要であり、予備的な実験をもとに設計することは可能である。
本来、前記のtは厚みで記載すべきであるが、本発明の転写フィルムで用いる離型層は、内部に存在する粒子により表面が粗面化されているため、離型層の厚みを正確に測定することができない。そのため、離型層の厚みを塗布量で代表させている。離型層を構成する組成物の比重が1の場合、1g/m2の塗布量は1μmの厚みに換算することができる。
転写フィルムから近赤外線吸収層を剥離した後の、近赤外線吸収フィルムの二次元平均表面粗さ(Ra)は、0.02μm以上0.30μmである。近赤外線吸収フィルムのRaの上限は0.25μmがより好ましく、0.20μmが特に好ましい。一方、近赤外線吸収フィルムのRaの下限は0.03μmがより好ましい。
また、転写フィルムから近赤外線吸収層を剥離する際に、離型フィルムの離型面の二次元平均表面粗さ(Ra)は、上限が0.40μmであることがより好ましく、0.30μmが特に好ましい。一方、離型層(Ra)の下限は0.05μmがより好ましく、特に好ましくは0.07μmである。
また、近赤外線吸収層に凹凸を付与する方法としては、離型層に粒子を含有させて、近赤外線吸収層に凹凸を転写させた後、表面が粗面化された近赤外線吸収フィルムを剥離する方法が最も好ましい。他の実施形態としては、離型層にエンボスロール等を押し付けることによりエンボス加工を施す方法、サンドブラスト等で表面を粗面化処理する物理的な凹凸付与方法も適用することができる。
また、離型フィルムとして、ポリオレフィンフィルムやポリメチルペンテンフィルムのように、フィルム自体と近赤外線吸収層との密着力が弱く、剥離可能である場合には、前記のフィルム上に直接、近赤外線吸収層を設けてもよい。この場合、フィルム自体に凹凸を付与する方法として、前記と同様の方法を採用することができる。フィルムに離型層を介さずに近赤外線吸収層を積層する場合でも、フィルムと近赤外線吸収層との界面の剥離強度は、万能引張り試験機で300mm/minの剥離速度で、T型剥離して測定した値で、5mN/25mm以上200mN/25mmであることが好ましい。
これらの場合でも、近赤外線吸収層を剥離した後の、表面が粗面化された近赤外線吸収フィルムの二次元平均表面粗さ(Ra)が、0.02μm以上0.30μm以下になるように、近赤外線吸収層が接する離型フィルムの離型面のRaを調整する必要がある。離型面の表面粗さRaが0.05以上1.50μm以下になるように、粗面化の処理条件を調整することが好ましい。より好ましい範囲も前記と同様である。
本発明において、二次元平均表面粗さ(Ra)は、JIS−0601に準拠して、カットオフ値0.08mm、測定長0.4mmの条件で、二次元平均表面粗さ((Ra)、μm)を評価し、5回の測定値の平均を意味する。
基材フィルムと離型層との間には、必要に応じて、接着性改質樹脂から構成される中間層(易接着層)を設けてもよい。中間層を設けることで、基材フィルムと離型層と間の密着性が向上し、基材フィルムから離型層を脱落しにくくすることができる。接着性改質樹脂としては、共重合ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好適である。
(近赤外線吸収層)
本発明において、転写フィルムは、粒子を含有させて表面を粗面化した離型層上に、近赤外線吸収色素と樹脂を含む近赤外線吸収層が積層されている。本発明では、転写フィルムを構成する離型フィルムから近赤外線吸収層が剥離された段階で、離型フィルムの離型層に形成された凹凸が近赤外線吸収層の表面に転写され、表面が粗面化された近赤外線吸収フィルムが得られる。
近赤外線吸収色素とは、波長800〜1200nmの近赤外線領域に極大吸収を有する色素である。本発明で使用する近赤外線吸収色素としては、ジインモニウム塩系、フタロシアニン系、金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドオコリン系、トリフェニルメタン系、アミニウム系、ジインモニウム系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して使用される。これらの近赤外線吸収色素の中でも、近赤外線領域の吸収が大きく、さらに可視光領域の透過率も高い下記の一般式(1)で示されるジインモニウム塩化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、金属錯体系化合物を含むことが好ましい。
前記の一般式(1)において、R1〜R8の具体例としては、(1)メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、ter−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルキル基、(2)フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル、ナフチル基などのアリール基、(3)ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、(4)ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基などのアラルキル基、が挙げられる。これらの中で、炭素数が多く、かつ、分岐状のiso−ブチル基、ter−ブチル基、更にはベンゼン環を有するフェニルアルキル基が色素自体の耐久性が向上して好ましいが、有機溶剤への溶解性を考慮して選択する必要がある。
また、R1〜R8は、全て同一でも構わないし、異なっていても構わない。
また、R9〜12としては、水素、フッ素、塩素、臭素、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
X−は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド酸イオン、などが挙げられる。これらの対イオンの中でも、耐久性、色素の溶解性の観点から、イミド酸イオン系を用いることが好ましい。
前記の一般式(1)で示されるジインモニウム塩化合物の一部は、市販品として入手可能であり、例えば、日本化薬社製Kayasorb IRG−022、IRG−022C、IRG−023、IRG−024、IRG−068、IRG−069、日本カーリット社製 CIR−1080、CIR−1081、CIR−1083、CIR−1085、CIR−1085F、CIR−RLなどが好適である。
本発明において、近赤外線吸収層で使用する近赤外線吸収色素は、前記の一般式(1)で示されるジインモニウム塩化合物以外に、近赤外線領域の吸収域の変更、拡大および調整を目的として、他の近赤外線吸収色素を併用してもよい。ジインモニウム塩化合物と他の近赤外線吸収色素を併用する場合は、ジインモニウム塩化合物の劣化を促進させない近赤外線吸収色素がよい。このような近赤外線吸収色素としては、例えば、フタロシアニン、シアニン、金属錯体が挙げられる。
フタロシアニン系化合物としては、吸収波長の調整や溶解性の向上等のため、フタロシアニン骨格が置換されている化合物が好ましい。置換基としては、フッ素、塩素、臭素、チオアルキル、チオアリール、オキシアルキル、オキシアリール、等が好ましい。なお、前記のアルキルやアリールは、さらに様々な置換基を持ってもよい。アリールとしては、複素環式芳香族であってもよい。これらの一部は市販品として入手可能であり、例えば、日本触媒製IR−14,IR−10A,IR−12,906B,IR−1,HA−1、山本化成製YKR−3528、YKR−1031、YKR−3071、YKR−4010、YKR−3030、YKR−3070、YKR−3040、YKR−3081、YKR−3080などが挙げられる。
シアニン系化合物としては、吸収波長の面からポリメチン部分である(−CH=CH)nのnが2以上であることが好ましく、さらに好ましくは3以上である。nの上限は安定性の面から5が好ましく、さらに好ましくは4である。吸収波長の調整や安定性の向上のため、ポリメチン部分に置換基が導入されていても良く、環状構造を有していてもよい。具体的な市販品としては、旭電化製のTZ−103、TZ−104,TZ−105,TZ−109,TZ−111,TZ−114、TZ−121、TZ−123、日本化薬製のCY−9、CY−10、CY−20、CY−30、CY−40MC、CYP−4646、林原生物化学研究所製のNK−8758、NK−8759、NK−9028、NK−9048、NK−9054、NK−9191、NK−9193、山田化学製のIR−301、IR−316,IR−406,IR−402などが挙げられる。
金属錯体としては、ジチオールニッケル系錯体が好適である。具体的な市販品としては、三井化学製SIR−128,SIR−130,SIR−132,SIR−159、ミドリ化学製MIR−101などがある。
本発明において、目的とする近赤外線領域の吸収、可視光領域での透過率を制御するために、近赤外線吸収色素の量を、近赤外線吸収層の厚み方向における任意の面で0.01g/m2以上1.0g/m2以下の範囲で存在するように調整することが好ましい。近赤外線吸収色素の量を0.01g/m2以上とすることで、実用的な近赤外線吸収性を得ることができる。一方、近赤外線吸収色素の量を1.0g/m2以下とすることで、可視光領域での透明性を維持し、ディスプレイの輝度の低下を防ぐことができる。
本発明において、近赤外線吸収色素は樹脂中に分散あるいは溶解した組成物として、塗布法により、離型フィルムの離型層上に積層される。樹脂としては、近赤外線吸収色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。中でも、色素混合時の透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れるアクリル系樹脂好ましい。
樹脂のガラス転移温度は、85℃以上160℃以下が好ましい。ガラス転移温度が85℃以上の樹脂を用いることで、耐熱性が不十分な近赤外線吸収色素を用いた場合であっても、色素と樹脂との相互作用、あるいは色素間の相互作用等による、色素の変性を抑制することができる。
一方、ガラス転移温度が160℃以下の樹脂を用いることで、該樹脂を溶媒に溶解し、離型フィルムの離型層上に塗布する際に、過度の乾燥(乾燥温度を高くする、あるいは乾燥時間を長くする)が不要となる。そのため、離型フィルムの基材フィルムが乾燥時の熱シワによる平面性の悪化が抑制できる。また、近赤外線吸収色素の熱劣化も抑制できるため、近赤外線領域における吸収を維持し、リモコンの誤動作を防止することができる。また、低温で乾燥しても、乾燥時間を長くする必要がないので、生産性を維持することができる。さらに、十分な乾燥を行うことができるので、塗膜中に残留する溶媒量を低減することができる。そのため、樹脂の見かけのガラス転移温度の低下による色素の変性を抑制することができる。
近赤外線吸収層における近赤外線吸収色素の量は、樹脂に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。樹脂中の近赤外線吸収色素の量を1質量%以上とすることで、目的とする近赤外線吸収能を達成するために、近赤外線吸収層の塗布量を過度に増やす必要がない。そのため、十分な乾燥を行うことができるので、乾燥温度を高温にする、あるいは乾燥時間を長時間にする必要がない。したがって、近赤外線吸収色素の劣化や基材フィルムの平面性の不良などを抑制することができる。一方、樹脂中の近赤外線吸収色素の量を10質量%以下とすることで、色素間の相互作用の影響を低減することができる。そのため、色素の経時的な変性が起こりにくくなる。さらに、近赤外線吸収層中の残留溶剤量を少なくすると、それらの効果はより向上する。
本発明において、近赤外線吸収層は、近赤外線吸収色素、樹脂、および有機溶媒を含む塗布液を、離型層上に塗布、乾燥させて形成される。この際に、前記塗布液中に界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤を含有させることにより、撥水性の離型層上に塗布した際の近赤外線吸収層の塗布外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキやムラが低減される。
界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できるが、近赤外線吸収色素との劣化等の問題から極性基を有していないノニオン系が好ましく、更には、界面活性能に優れるシリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジシルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ビトロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。
塗布外観の向上や滑り性の点から、近赤外線吸収層を構成する樹脂に対して界面活性剤の含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。一方、水分の吸収による近赤外線吸収層中の色素の劣化を抑制するために、界面活性剤の含有量を2.00質量%以下とすることが好ましい。
また、用いる界面活性剤は、HLBが2以上12以下であることが好ましい。HLBが2以上の界面活性剤を使用することにより、界面活性能によるレベリング性を向上させることができる。界面活性剤のHLBは、3以上がさらに好ましく、特に好ましくは4以上である。一方、HLBが12以下の界面活性剤を使用することにより、滑り性や、水分の吸収による近赤外線吸収層中の色素の経時安定性の悪化を抑制することができる。
なお、HLBとは、アメリカのAtlas Powder社のW.C.GriffinがHydorophil Lyophile Balanceと名付け、界面活性剤の分子中に含まれる親水基と親油基のバランスを特性値として指標化した値である。このHLB値が低いほど親油性が、一方高いほど親水性が高くなる、ことを意味する。
本発明において、近赤外線吸収層は、有機溶媒中に、樹脂、近赤外線吸収色素、界面活性剤を含む塗布液を、離型フィルムの離型層上に塗布、乾燥させて形成させることが好ましい。
有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、が例示される。これらの有機溶媒は、単独で、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
これらの有機溶媒のなかでも、近赤外線吸収色素の溶解性に優れるケトン類を、塗布液に使用する全有機溶媒に対し、30質量%以上、80質量%以下の範囲で用いることが好ましい。この場合、その他の有機溶媒は、レベリング性、乾燥性を考慮して選定する。
また、使用する有機溶媒は、沸点が60〜180℃の範囲の溶媒を選択することが好ましい。沸点が60℃以上の有機溶媒を用いることにより、塗布時の塗布液の固形分濃度の変化を抑え、塗布厚みを安定化させることができる。一方、沸点が180℃以下の有機溶媒を用いることにより、塗膜中に残存する有機溶媒量を少なくし、色素の経時安定性を良好にすることができる。
近赤外線吸収色素および樹脂を、有機溶媒中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下で、これらを攪拌、分散、あるいは粉砕する方法が好適である。塗布液を加温することにより、近赤外線吸収色素及び樹脂の溶解性を向上させることができる。そのため、未溶解物等による塗工外観の悪化を抑えることができる。また、有機溶媒中で樹脂及び色素を分散あるいは粉砕して、大きさが0.3μm以下の微粒子の状態で塗布液中に分散させることにより、透明性に優れる層を形成することが可能となる。
分散機あるいは粉砕機は、公知のものを用いることができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
塗布液中に1μm以上のコンタミや未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になるため、塗布液を透明基材に塗布する前に、フィルター等でこれらを除去することが好ましい。フィルターとしては、例えば、大きさが1μm以上のコンタミや未溶解物を99%以上除去する性能を有するフィルターが好適である。大きさが1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗布液を塗布し乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、100〜1000μmサイズの欠点になる場合がある。
塗布液中に含まれる樹脂、近赤外線吸収色素、界面活性剤、及びポリオキシアルキレン化合物などの固形分の濃度は、10質量%以上30質量%が好ましい。塗布液の固形分の濃度を10質量%以上に調整することにより、塗布後の乾燥時間が長くなることによる生産性の低下や、塗膜中に残存する溶媒量による色素の経時安定性の悪化を抑えることができる。一方、塗布液の固形分の濃度を30質量%以下に調整することにより、塗布液の粘度の上昇によるレベリング性の悪化、及びそれにともなう塗布外観の悪化を防ぐことができる。また、塗布外観の点から、塗布液の粘度を10cps以上300cps以下の範囲になるように、塗布液の固形分濃度、あるいは有機溶媒の種類、界面活性剤の種類は配合量を調整することが好ましい。
本発明で、近赤外線吸収層を離型フィルムの離型層上に塗布する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など、一般的に用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増える。
乾燥後の近赤外線吸収層の単位面積当たりの質量は、1g/m2以上、50g/m2以下の範囲が好ましい。近赤外線吸収層の単位面積当たりの質量は、下限が3g/m2、上限が30g/m2であることがさらに好ましい。なお、粗面化された離型面に隣接して形成させた近赤外線吸収層を離型面から剥離することにより、粗面化された表面が転写された近赤外線吸収フィルムが得られる。
乾燥後の近赤外線吸収層の単位面積当たりの質量が少ない場合には、近赤外線の吸収力が不足しやすくなる。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を増やすと、表面に存在する色素量が多くなり、外気の影響を受けやすくなる。また、近赤外線吸収層の表面に粘着層を積層する場合、近赤外線吸収層と粘着層の界面に存在する色素量が多くなり、粘着層を構成する樹脂の影響を受けやすくなる。その結果、色素の劣化等が起こりやすくなり、経時安定性が不良となる。また、近赤外線吸収層の強度が下がり、転写性が不良となる場合がある。
一方、乾燥後の近赤外線吸収層の単位面積当たりの質量が多い場合には、近赤外線の吸収能は十分であるが、可視光領域での透明性が低下し、ディスプレイの輝度が低下する。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を低減すると、光学特性は調節できるが、乾燥が不十分になりやすくなる。その結果、近赤外線吸収層中の残留溶媒により色素の経時安定性が不良となる。一方、乾燥を十分にした場合には離型フィルムの基材の平面性が不良となる。
塗布液を離型フィルムの離型層上に塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。厳しい条件で初期乾燥を行う(熱風温度が高い、あるいは熱風の風量が大きい)場合には、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなる。一方、温和な条件で初期乾燥を行う(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、外観は良好になる。しかしながら、乾燥に時間を要するため、コスト面で問題がある。さらに、ブラッシングが発生しやすくなる。また、塗布液に界面活性剤を添加しない場合には、上記の微小な欠点が発生しやすくなるため、初期乾燥をかなり弱くすることが好ましい。
減率乾燥の工程では、乾燥温度を初期の恒率乾燥時よりも高くし、塗膜中の溶媒を減少させる。この減率乾燥工程では、乾燥温度を120℃以上180℃以下とすることが好ましい。特に好ましくは、下限値が140℃であり、上限値は170℃である。乾燥温度を120℃以上とすることにより、塗膜中の溶媒を減少させ、塗膜中に残留する溶媒による色素の経時的な劣化を抑制し、色素の安定性を高めることができる。一方、減率乾燥時の乾燥温度を180℃以下とすることにより、熱シワによる基材フィルムの平面性の悪化を抑制できるだけでなく、熱による近赤外線吸収色素の劣化も抑制することができる。
また、転写フィルムが乾燥炉内を通過する時間は、5秒以上180秒以下が好ましい。フィルムの通過時間を5秒以上とすることにより、塗膜中に残留する溶媒による色素の経時的な劣化を抑制することができる。一方、フィルムの通過時間を180秒以下とすることにより、生産性の低下と、熱シワによるフィルムの平面性の悪化を抑制することができる。フィルムの通過時間は、生産性と平面性の点から、30秒を上限とすることが特に好ましい。
乾燥の最終工程では、熱風温度を、近赤外線吸収色素を構成する樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で離型フィルムの基材の実温を樹脂のガラス転移温度以下にすることが好ましい。高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗布面がロール表面に接触した際に滑りが不良となり、キズ等が発生するだけでなく、カール等が発生する場合がある。
本発明において、近赤外線吸収層は単層でも複層でも構わない。複層にすることで、機能を分担してもよい。また、近赤外線吸収層と離型層の間に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の層を設けてもよい。具体的には、近赤外線吸収色素を含有しない透明な中間樹脂層を近赤外線吸収層と離型層の界面に設けて、転写性の調整や、転写される層の厚み調整を可能にすることや、紫外線吸収剤を含有する透明な中間樹脂層を近赤外線吸収層と離型層の間に設けることで耐光性を向上することが可能となる。
近赤外線吸収層上には、本発明の効果を阻害しない範囲で他の層を設けても構わない。例えば、色素を含有しない透明な樹脂層を設けて、近赤外線吸収薄膜を被転写材に転写する際に近赤外線吸収薄膜の強度を向上させることや、帯電防止層を設けて近赤外線吸収薄膜を被転写材に転写する際に、離型層と近赤外線吸収層の間の剥離面に発生する帯電を低減することが可能となる。
転写フィルムの近赤外線吸収層を積層する側とは反対面には、必要に応じて各種の層を設けてもよい。具体的には、ロール状での巻取り性を向上させるために粒子を含有する凹凸層や、搬送時の摩擦帯電や転写時の剥離帯電を防止するための帯電防止層が挙げられる。
(転写フィルム)
本発明において転写フィルムとは、離型フィルムの離型面から近赤外線吸収層を被転写材に、直接、または粘着層や接着層を介して転写させることが可能なフィルムである。
近赤外線吸収薄膜は、波長800〜1200nmの近赤外領域の透過率が低く、波長400nm〜800nmの可視光領域の透過率が高い機能を有し、離型フィルムの離型面から容易に剥離することが可能な薄膜を意味する。近赤外領域の透過率は低いほど好ましく、具体的には80%以下、より好ましくは40%以下である。近赤外領域の透過率が高い場合には、液晶ディスプレイのバックライトから放出される近赤外線の吸収が不足し、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができない。前記の透過率は、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量、厚みと関連する単位面積あたりの質量により調整することができる。
近赤外線吸収層(近赤外線吸収フィルム)の色調をLab表色系で表現する場合、a値が−10.0〜+10.0、b値が−10.0〜+10.0であることが好ましい。この範囲であれば、液晶ディスプレイ内の部材に近赤外線吸収フィルムを転写してもナチュラル色となり好ましい。
前記の色調は、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量、更には、他の色素の混合により調整することができる。
近赤外線吸収層には、直径3が00μm以上、より好ましくは100μm以上のサイズの欠点が存在しないように、欠点を除去することが好ましい。直径が300μm以上の欠点が近赤外線吸収層に存在する場合、液晶ディスプレイの部材に近赤外線吸収層を転写した際に、輝点として観察される欠点が顕在化する。また、直径が100μm以上300μm未満の欠点は、液晶ディスプレイの部材に近赤外線吸収層を転写した際に、レンズ効果によりで欠点が強調される場合があり、できるだけ存在させないように除去することが好ましい。また、近赤外線吸収層の表面に薄いスジ、ムラ等が存在する場合も、液晶ディスプレイの部材に近赤外線吸収層を転写した際に、欠点となる。
近赤外線吸収層は、高温、高湿度下に長期間放置されても、近赤外線の透過率、可視光の透過率が変化しないことが好ましい。高温、高湿度下の経時安定性が不良の場合には、ディスプレイの映像の色調が変化するばかりか、近赤外線リモコンを用いた電子機器の誤動作を防止する本発明の効果がなくなる場合がある。また、可視光領域の透過率が低下する場合には、輝度が低下する。
高温、高湿度下の近赤外線吸収層の経時安定性を良好にするためには、例えば、(a)フタロシアニンやイミド酸イオンを対イオンとするジインモニウム塩化合物などの耐熱性に優れる近赤外線吸収色素を選択する、(b)ガラス転移温度が85℃以上の樹脂を選択する、(c)ジインモニウム塩化合物やシアニン化合物のように対イオンを有する近赤外線吸収色素では、同種のイオン基を有する化合物を塗布液中に添加し、対イオンのイオン交換を抑制する、(d)近赤外線吸収層を塗布法により製造する際に、塗布液で使用する有機溶媒の種類、塗布層の厚み、乾燥条件等を制御して、近赤外線吸収層中の残留溶媒量を低減すること、あるいは樹脂中の色素の含有量を調整する、などの方法を少なくとも1つ採用することが好ましい。
なお、近赤外線吸収層中に残留する有機溶媒の量は、少なければ少ないほどよいが、3質量%以下が好ましい。残留溶媒量が3質量%以下の場合、実質的に経時安定性に差がみられなくなる。しかしながら、さらに残留溶媒量を低下させるために、例えば、乾燥を過酷な条件で行うと、離型フィルムの基材の平面性が不良になる等の弊害が発生する。一方、減圧乾燥のような方法では生産性が低下する。
本発明において、転写フィルムは、(1)ロール状に巻き取った基材フィルムを巻き出し、粒子を含有する離型層を連続的に形成して、表面がマット化された離型層を有する離型フィルムを製造する工程、(2)次いで、表面がマット化された離型層の直上に近赤外線吸収層を連続して形成し、ロール状に巻き取る工程、を経てロール・トゥ・ロール方式で連続生産することが、工業的規模で生産する観点から好ましい。
また、ロール状の転写フィルムの巻取り長は、50m以上5000m以上が好ましい。転写フィルムの巻長が短い場合には、転写フィルム内の離型フィルムと近赤外線吸収層の界面(離型面)からディスプレイの部材(被転写体)に近赤外線吸収層を転写する際に、フィルムロールの切り替え頻度が高くなり作業性が悪化する。一方、転写フィルムの巻長が長い場合には、ロール状に保管する際に、外部の環境温度により転写フィルムが膨張及び収縮し、巻き締まり等が発生する場合がある。巻き締まりがひどい場合、巻芯部の近赤外線吸収層が転写フィルムの反対面に密着して、近赤外線吸収層の一部が反対面に脱離することがある。
転写フィルムをロール状に巻きつける際に用いるコアの材質は、プラスチック製が好ましい。一般的に使用される紙製のコアを用いた場合には、紙粉等が近赤外線吸収層に付着して欠点となる場合がある。プラスチック製コアとしては、例えば、ポリプロピレン製コアやFRP製コアが強度の点で好ましい。コアの直径は、3インチ以上6インチ以下が好ましい。直径の小さいコアを用いる場合には、巻芯部で巻き癖がつきやすくなる。このような巻き癖がついた転写フィルムを用いて、近赤外線吸収薄膜を被転写材に転写する際に、ハンドリング性が不良となる頻度が増加する。一方、直径が大きいコアを用いる場合には、ロール径が大きくなり、近赤外線吸収薄膜を被転写材に転写する際に、ハンドリング性が不良となる頻度が増加する。
コアに転写フィルムを巻きつけるためには、コアの軸方向の表面に両面テープを介して転写フィルムを固定して巻き始める必要がある。両面テープを用いない場合には、巻き途中や運搬時に巻ズレが発生しやすくなる。両面テープとしては、例えば、プラスチックフィルムの両面に粘着層を有するテープが、紙粉を発生させない点や強度の点で好ましい。両面テープの厚みは、5μm以上50μm以下が好ましい。両面テープの厚みが薄すぎる場合には、強度が低下して作業性が悪くなるとともに、フィルムの固定力が低下する。一方、両面テープの厚みが厚すぎる場合には、テープによる段差で、巻芯部の転写フィルムの平面性が不良となる。
コアに転写フィルムを巻取る際の張力の制御は、近赤外線吸収層を離型面から容易に剥離させる点から重要である。巻取り開始時の初期の張力を50N/m以上200N/mにし、次いで、巻芯部から巻外に向けて張力を徐々に下げていく方法が好ましい。この方法を採用することにより、巻芯部における巻き絞まりにより、転写層(近赤外線吸収層)の脱離を抑制し、近赤外線吸収層を離型面から容易に剥離させることができる。
また、本発明において、転写フィルムをロール状に巻き取る際に、転写フィルムの幅方向の両端近傍に凹凸を形成させることが好ましい。凹凸を付与することで、コアに貼着させた両面テープによる跡が、巻芯部において付きにくくなる。さらに、転写フィルムを巻き取る際にフィルムの表面と裏面が接触する面積が少なくなるため、ロールを巻取る際に、近赤外線吸収層の一部が脱離し、反対面に付着するトラブルが起こりにくくなる。
凹凸の高さは、10μm以上40μm以下が好ましい。さらに好ましくは、凹凸の高さの上限は35μmであり、下限は15μmである。凹凸の高さが低すぎると、凹凸による前記の効果が不十分となり、一方、凹凸の高さが高すぎると運送時に巻ズレ等が発生しやすくなる。凹凸を付与する方法としては、例えば、表面に突起のある金属ロールを押し付けて凹凸を付与する方法、いわゆるエンボス加工法が挙げられる。尚、凹凸加工は離型フィルムの離型面上に近赤外線吸収層を形成する前に付与することが好ましい。
(粗面化された近赤外線吸収フィルムおよび近赤外線吸収体)
本発明では、前記の転写フィルムの離型面から近赤外線吸収層を剥離し、被転写体に転写する際に、離型面の凹凸が隣接する近赤外線吸収層に転写されて、粗面化された近赤外線吸収フィルムが得られる。
転写フィルムでは、離型フィルムが粒子を含むため光線透過率が低下する。しかしながら、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムのみを被転写材に転写させることで、粗面化された近赤外線吸収フィルムを転写させた近赤外線吸収体では光線透過率の低下を抑えることができる。その結果、前記の近赤外線吸収体においては、輝度の低下が少ない。
粗面化された近赤外線吸収フィルムの表面粗さは、二次元平均表面粗さ(Ra)で示すと、0.02μm以上0.30μm以下である。近赤外線吸収フィルムの表面のRaを0.02μm以上にすることで、干渉によるギラツキを防ぎ、液晶ディスプレイの画質を維持することができる。一方、近赤外線吸収フィルムの表面のRaを0.30μm以下とすることで、光の過剰の散乱を防ぎ、輝度を維時することができる。
本発明において、近赤外線吸収体とは、前記の粗面化された近赤外線吸収フィルムを被転写体に転写させた積層構成からなる。この粗面化された近赤外線吸収フィルムの表面の凹凸により光が散乱され、干渉によるギラツキを抑えることが可能となる。
本発明において、前記の被転写体は、液晶ディスプレイを構成する部材であり、例えば、拡散フィルム、レンズフィルム、液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)が挙げられる。
これらの中で、表面に特異な形状を形成させることで機能を発揮する、拡散フィルムの拡散層(アクリルビーズに起因する凹凸を有する)やレンズフィルムのレンズ層(プリズム状に配列された突起を有する)に、粗面化された近赤外線吸収フィルムを転写させないことが重要である。なぜなら、粗面化された近赤外線吸収フィルムを、例えば両面に粘着層を有する粘着シートを用いて拡散層やレンズ層に貼り付けると、前記の光拡散層やレンズ層の表面形態が変化して、光拡散機能やレンズ機能が低下するためである。
したがって、拡散フィルムに粗面化された近赤外線吸収フィルムを転写させる場合には、光拡散層とは反対面に近赤外線吸収フィルムを転写させることが好ましい。なお、拡散フィルムが、3層以上の積層フィルムの中心層に主として光拡散剤を有する内部拡散方式の積層フィルムの場合には、粗面化された近赤外線吸収フィルムを転写させる面はどちらでもかまわない。また、レンズフィルムに粗面化された近赤外線吸収フィルムを転写させる場合には、レンズ層とは反対面に近赤外線吸収フィルムを転写させることが好ましい。
本発明において、液晶ディスプレイを構成する部材に、表面が粗面化された近赤外線吸収フィルムを転写する方法としては、(1)液晶ディスプレイを構成する部材に、直接、転写フィルムの近赤外線吸収層面を重ねてプレスし、次いで離型フィルムを離型面から剥離する方法、(2)液晶ディスプレイを構成する部材に、粘着層を介して転写フィルムの近赤外線吸収層面を貼付け、次いで離型フィルムを離型面から剥離する方法、が挙げられる。しかしながら、(1)の方法では、近赤外線吸収層をガラス転移温度以上に加熱してプレスする必要があるので、工程が1つ増える。
したがって、操作の簡便性の面から、粗面化された近赤外線吸収フィルムを、粘着層を介して液晶ディスプレイ内の部材に貼り付ける(2)の方法が、本発明では好ましい。さらに、粘着剤を介することで、界面における反射を低減し、輝度の低下を最小限に抑えることができる。
粘着層を構成する樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするポリマーが好適である。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの両者を意味するものである。この(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするポリマーは、公知の重合法により、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合して得ることができる。この単量体混合物は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とし、架橋剤と架橋反応する官能基を有する官能基含有モノマーを必須成分とすることが好ましい。また、その他のビニル系モノマーを配合してもよい。
主成分として用いる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
また、官能基含有モノマーとしては、例えば、(1)(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸などのようなカルボキシル基を有するモノマー、(2)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびアリルアルコールなどのヒドロキシル基含有モノマー、(3)グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、(4)アミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を含有するモノマー、(5)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、(6)ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのケイ素含有モノマー、あるいは(7)アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセチル基を有するモノマー、などを挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
さらに、その他のモノマーとしては、スチレン、メチルスチレンおよびビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル等を、単独で或いは組み合わせて共重合させてもよい。
また、粘着層には、必要により酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、を挙げることができる。特に、額縁現象を抑制する効果がより高い、フェノール系化合物が好ましい。酸化防止剤の配合量は、前記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするポリマー100質量部に対して0.001〜2.5質量部が好ましい。酸化防止剤の配合量が0.001質量部未満では、高温条件下において、粘着剤(ポリマー)の劣化が著しく、変色、白化などの問題が生じやすい。また、酸化防止剤の配合量が2.5質量部を超えると、粘着剤との相溶性が低下するため、高温あるいは高温湿熱条件下において、粘着力の低下が発生しやすくなる。
さらに、粘着層には、必要により架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、例えば、(1)イソシアネート系化合物、(2)エポキシ系化合物、(3)アジリジン系化合物、(4)金属キレート系化合物および(5)アミン系化合物などを挙げることができる。特に、(1)イソシアネート系化合物、(2)エポキシ系化合物または(3)アジリジン系化合物が好ましい。これらの架橋剤は単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。
架橋剤の配合量は、前記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするポリマー100質量部に対して0.001〜7質量部が好ましい。架橋剤の配合量が0.001質量部未満では、ゲル分率が30%未満となりやすい。その結果、得られる粘着剤の凝集力が低く、高温条件下で発泡を生じやすい。一方、架橋剤の配合量が7質量部を超えると、ゲル分率が60%を超えやすくなる。その結果、得られる粘着剤が応力緩和性に劣り、高温や、高温・高湿の条件下で剥離が発生しやすくなる。
次に、本発明を実施例及び比較例を用いて説明する。また、本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
<塗布液の粘度>
20℃に塗布液を調節し、B型粘度計(東京計器製、BL)を用いて、ローター回転数60rpmにて測定した。
<透過率>
分光光度計(島津製作所製、UV−3150型)で積分球タイプの受光部を用いて測定した。
<二次元平均表面粗さ(Ra)>
JIS−B0601に準拠して、カットオフ値0.08mm、測定長0.4mmの条件で、二次元平均表面粗さ(Ra、単位:μm)を評価し、5回の測定値を平均する。なお、近赤外線吸収薄膜のRaの測定は、近赤外線吸収薄膜のみを、厚さ20μmのアクリル系粘着シートを介して液晶ディスプレイの下偏光板に転写したサンプルを用いた。
<画質>
液晶ディスプレイ(シャープ製、LC−37GX1W)の部材の一部に近赤外線吸収薄膜を転写させた近赤外線吸収体を組み込み、正面での目視で観察し、下記の判断基準でランク付けを行った。
○:ギラツキが見られない。
△:多少であるがギラツキが見られる。
×:ギラツキが見られる。
<輝度>
液晶ディスプレイ(シャープ製、LC−37GX1W)を用いて、白ベタのテストパターンを表示し、正面での輝度を、色彩式差計(ミノルタ製、CS−100)を用いて測定した。
次に、近赤外線吸収薄膜を転写させた近赤外線吸収体を、液晶ディスプレイの内部に組み込み、組み込み前後における変化量を下記(2)式より求め、ディスプレイ全面で均等に25点測定し、それらの平均値より輝度を求めた。
輝度%=((組込み前の輝度)―(組込み後の輝度))/(組込み前の輝度)
・・・(2)
<輝度ムラ>
液晶ディスプレイ(シャープ製、LC−37GX1W)の部材の一部に近赤外線吸収薄膜を転写させた近赤外線吸収体を組み込み、正面での目視で観察し、下記の判断基準でランク付けを行った。
○:液晶ディスプレイの面内の輝度ムラが判らない。
△:ベタ画像等を表示すると輝度ムラが見られる。
×:容易にディスプレイ内で輝度のムラが見られる。
実施例1
(基材フィルム)
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト樹脂を二軸スクリュ−押出機に投入し、T−ダイスから290℃で溶融押出しし、冷却回転金属ロ−ル上で静電印加を付与しながら密着固化させ、未延伸シ−トを得た。
次いで、該未延伸シートをロール延伸機で90℃に加熱して、3.5倍で縦延伸を行った後、縦延伸フィルム上に下記塗布液Aを乾燥後の塗布量が0.5g/m2となるように両面に塗布し、風速10m/秒、120℃の熱風下で20秒通過させて、中間塗布層を形成させた。さらに、テンターで140℃に加熱して3.7倍に横延伸したあと、235℃で幅(横)方向に5%緩和させながら熱処理して幅5mの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
更に、得られた幅5mのフィルムの中央部からスリットし、幅が1.3mで長さが2000mに巻きあげたロール状のフィルムを得た。得られた中間塗布層を両面に有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、厚みが100μm、全光線透過率が90.2%、ヘーズが0.5%、配向軸の最大歪みが4度であった。
(中間塗布層形成用の塗布液Aの組成)
・イオン交換水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 28.9質量%
・アクリル−メラミン樹脂 10.0質量%
(日本カーバイド製、A−08;固形分濃度:46質量%)
・共重合ポリエステル樹脂 10.0質量%
(東洋紡績製、MD−1250;固形分濃度:30質量%)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 1.0質量%
(日本触媒製、エポスターMA1002;
平均粒径:2.3μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
・シリコーン系界面活性剤 0.1質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド32)
(離型層の積層)
下記の塗布液B(固形分濃度:5質量%)を上記の基材フィルム上に、乾燥後の塗布量が0.3g/m2 になるようにマイクログラビア方式で塗布した。次いで、100℃で10m/秒の熱風下を10秒間、次いで150℃で15m/秒の熱風下で20秒間、フィルムを通過させ、基材フィルムに離型層を積層し、離型フィルムを得た。離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.14μmで、水の接触角は92度であった。
(離型層形成用の塗布液B)
・メチルエチルケトン 47.24質量%
・トルエン 42.14質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 10.00質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.12質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 0.50質量%
(日本触媒製、エポスターMA1002;
平均粒径:2.3μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
(近赤外線吸収層の積層)
下記の塗布液C(固形分濃度:16質量%、粘度:28cps)を前記の離型層上に、乾燥後の波長913nmにおける透過率が20%になるように、直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗布した。次いで、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥させて、離型フィルムの離型層上に近赤外線吸収層を形成し、転写フィルムを作成した。近赤外線吸収層の単位面積当たりの質量(塗布量)は8.0g/m2であった。
(近赤外線吸収層形成用の塗布液C)
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して色素を溶解させた。次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、塗布液Cを作成した。
・トルエン 28.37質量%
・メチルエチルケトン 28.37質量%
・アクリル系樹脂 43.00質量%
(綜研化学製、GS−1030;固形分濃度:30質量%、Tg:110℃)
・ジインモニウム塩化合物 0.20質量%
(日本化薬製、IRG−068)
・シリコーン系界面活性剤 0.06質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB:6.7)
得られた転写フィルムの近赤外線吸収層は、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域の透過率に優れていた。粘着シート(綜研化学製、SK−2057)の粘着層を液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に貼付け、次いで、転写フィルムの近赤外線吸収層面を粘着シートの他の粘着層面に貼付けた。
転写フィルムを構成する基材フィルムは、配向軸の歪みが少なく、透明性にも優れていたため、クロスニコル法による偏光板の検査性は良好であった。更に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、離型層を形成する塗布液を下記の塗布液Dに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。なお、離型フィルムの離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.21μmであり、水接触角は94度であった。
(離型層形成用の塗布液D)
・メチルエチルケトン 47.50質量%
・トルエン 43.40質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 8.00質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.10質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 1.00質量%
(日本触媒製、エポスターMA1002;
平均粒径:2.3μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、離型層を形成する塗布液を下記の塗布液Eに変更すること以外は実施例1と同様にして、近赤外線吸収転写フィルムを得た。なお、離型フィルムの離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.08μmであり、水の接触角は90度であった。
(離型層形成用の塗布液E)
・メチルエチルケトン 47.50質量%
・トルエン 42.63質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 9.50質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.12質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 0.25質量%
(日本触媒製、エポスターMA1002;
平均粒径:2.3μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、離型層を形成する塗布液を下記の塗布液Fに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。なお、離型フィルムの離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.03μmで、水の接触角は89度であった。
(離型層形成用の塗布液F)
・メチルエチルケトン 47.50質量%
・トルエン 42.48質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 9.80質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.12質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 0.10質量%
(日本触媒製、エポスターMA1002;
平均粒径:2.3μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、良好な輝度を有していたが、画質に多少のギラツキが見られた。得られた結果を表1に示す。
実施例5
実施例1において、近赤外線吸収層を形成する塗布液を下記の塗布液Gに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。
(近赤外線吸収層形成用の塗布液G)
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して色素を溶解させた。次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、塗布液Gを作成した。
・トルエン 28.37質量%
・メチルエチルケトン 28.49質量%
・アクリル系樹脂 43.00質量%
(綜研化学製、GS−1030;固形分濃度:30質量%、Tg:110℃)
・シアニン系色素 0.08質量%
(林原生物化学研究所製、NK−9028)
・シリコーン系界面活性剤 0.06質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB:6.7)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例6
実施例1において、近赤外線吸収層を形成する塗布液を下記の塗布液Hに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。
(近赤外線吸収層形成用の塗布液H)
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して色素を溶解させた。次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、塗布液Hを作成した。
・トルエン 28.37質量%
・メチルエチルケトン 28.29質量%
・アクリル系樹脂 43.00質量%
(綜研化学製、GS−1030;固形分濃度:30質量%、Tg:110℃)
・ニッケル錯体系色素 0.23質量%
(みどり化学製、MIR101)
・フタロシアニン系色素 0.05質量%
(日本触媒製、IR−12)
・シリコーン系界面活性剤 0.06質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB:6.7)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例7
実施例1において、離型層を形成する塗布液を下記の塗布液Iに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。なお、離型フィルムの離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.18μmであり、水の接触角は93度であった。
(離型層形成用の塗布液I)
・メチルエチルケトン 47.24質量%
・トルエン 42.14質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 10.00質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.12質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 0.50質量%
(日本触媒製、エポスターMA1004;
平均粒径:4.5μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例8
実施例1において、離型層を形成する塗布液を下記の塗布液Jに変更すること以外は実施例1と同様にして、近赤外線吸収転写フィルムを得た。なお、離型フィルムの離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.29μmであり、水の接触角は96度であった。
(離型層形成用の塗布液J)
・メチルエチルケトン 47.24質量%
・トルエン 42.14質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 10.00質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.12質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
・ポリメタクリル酸メチル系架橋物粒子 0.50質量%
(日本触媒製、エポスターMA1006;
平均粒径:6.7μm、屈折率:1.49、真比重:1.2)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
実施例9
実施例1において、近赤外線吸収層を形成する塗布液を下記の塗布液Kに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。
(近赤外線吸収層形成用の塗布液K)
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して色素を溶解させた。次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、塗布液Kを作成した。
・トルエン 28.37質量%
・メチルエチルケトン 28.37質量%
・共重合ポリエステル樹脂 43.00質量%
(東洋紡績製、バイロン20SS;固形分濃度:30質量%、Tg:67℃)
・ジインモニウム塩化合物 0.20質量%
(日本化薬製、IRG−068)
・シリコーン系界面活性剤 0.06質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB:6.7)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、粗面化された近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、ギラツキが無く、画質が良好であった。さらに、輝度も良好であった。得られた結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、離型層を形成する塗布液を下記の塗布液Lに変更すること以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。なお、離型フィルムの離型層の二次元平均表面粗さ(Ra)は0.01μmと平滑であり、水の接触角は85度であった。
(離型層用の塗布液L)
・メチルエチルケトン 47.50質量%
・トルエン 42.38質量%
・アルキッド樹脂(離型剤) 10.00質量%
(日立化成ポリマー製、テスファイン322)
・硬化触媒 0.12質量%
(日立化成ポリマー製、ドライヤー900)
次いで、実施例1と同様に、転写フィルムから離型フィルムを剥離して、表面が平滑な近赤外線吸収フィルムを片面に積層する偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。この液晶ディスプレイは、輝度が良好で輝度のムラは小さかったが、画質にギラツキが見られ、不良であった。得られた結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、離型層を設けず、基材の二軸延伸PETフィルムの上に近赤外線吸収層を直接形成させること以外は実施例1と同様にして、表面が平滑な近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルムを得た。次いで、液晶モジュールのディスプレイ側の偏光板(下偏光板)に、粘着シートを介して、近赤外線吸収フィルムを貼り付けた。その後、基材の二軸延伸PETフィルムから近赤外線吸収薄膜を剥離しようと試みたが、剥離することができなかった。そのため、前記の近赤外線吸収フィルムを貼り付けた偏光板を、液晶ディスプレイ内の液晶モジュールのディスプレイ側(下偏光板)に組み込んだ。
この液晶ディスプレイは、画質にギラツキが見られた。さらに、この液晶ディスプレイは、輝度が低下し、かつ輝度のムラも見られた。これは、液晶ディスプレイ内の偏光板に貼着された近赤外線吸収フィルムの基材である二軸延伸PETフィルムの配向軸の歪に起因する。得られた結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、離型層を設けず、基材フィルムの上に近赤外線吸収層を直接設けること以外は実施例1と同様にして、表面が平滑な近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルムを得た。次いで、液晶ディスプレイ内の下偏光板と拡散偏光反射シートの間に、前記の近赤外線吸収フィルムを配置して評価を行った。この液晶ディスプレイは、輝度が大幅に低下しただけでなく、輝度のムラも大きかった。