JP3736566B2 - 近赤外線吸収フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
近年、薄型大画面ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されているが、プラズマディスプレイから放出される近赤外線により、近赤外線リモコンを使用する電子機器が誤動作を起こす問題があり、プラズマディスプレイの前面に上記の近赤外線吸収フィルムを使用されている。
これらの中で(4)のフィルターは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きく、各種の方法が提案されている(特許文献1〜9参照)。
第4の発明は、第1〜3の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルムを備えることを特徴とする近赤外線吸収フィルターである。
(透明基材フィルム)
本発明において、透明基材フィルムは特に限定されるものではないが、全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが5%以下であることが好ましい。基材フィルムが透明性に劣る場合には、ディスプレイの輝度を低下させるだけでなく、画像のシャープさが不良となる。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルム上に近赤外線吸収層を積層した構成になっているが、透明基材フィルムと近赤外線吸収層の密着性の向上や透明基材フィルムの透明性向上を目的に中間層を設けることが好ましい。なお、フィルム中に粒子を含有させない場合、粒子を含有する中間層をフィルム製造時に同時に設けることにより、ハンドリング性を維持しながら高度な透明性を得ることができる。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルム上に直接あるいは中間層を介して近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有する組成物からなる近赤外線吸収層を設けられている。上記の「近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有」とは、前記組成物中に近赤外線吸収色素と樹脂を80質量%以上含有することを意味する。前記組成物中の近赤外線吸収色素と樹脂の含有量の総和は、85質量%以上が好ましく、特に好ましくは90質量%以上である。
(a)アルキル基:メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基など。
(b)アリール基:フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル基、ナフチル基など。
(c)アルケニル基:ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基など。
(d)アラルキル基:ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基など。
(e)ハロゲン原子:フッ素、塩素、臭素など。
(f)アミノ基:ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基など。
(g)アルキル基:メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基など。
(h)アルコキシル基:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など。
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。乾燥温度の下限は30℃がさらに好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、界面活性剤の表面への局在化が起こりにくくなる。その結果、近赤外線吸収層に耐久性向上や滑り性付与の効果がでにくいだけでなく、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点も発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、塗工外観は良好になる。しかしながら、乾燥に時間を要し生産性(コスト)の点で問題があるばかりか、ブラッシング等の問題も発生する。近赤外線吸収層形成用塗布液に界面活性剤を添加しない場合には、上記の微小な欠点が発生しやすく、初期乾燥をかなり弱くする必要がある。
本発明において近赤外線吸収フィルターとは、波長800〜1200nmの近赤外線領域の透過率が低く、波長400nm〜800nmの可視光領域の透過率が高いフィルターのことである。近赤外領域の透過率は低いほど好ましく、具体的には40%以下、より好ましくは30%以下である。前記の近赤外線領域の透過率が高い場合には、本発明の近赤外線吸収フィルムをプラズマディスプレイの前面フィルターの構成部材として使用した場合に、プラズマディスプレイから放出される近赤外線の吸収が不足し、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができない。また、ディスプレイ用フィルターとして使用する場合、前記の可視光領域の透過率は高ければ高いほどよく、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。可視光領域の透過率が低い場合には、ディスプレイの発色を妨げ、輝度の低い映像となる。
前記の透過率の調整は、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量により制御することができる。
20℃に塗布液を調節し、東京計器製のB型粘度計(BL)を用いて、ローター回転数60rpmにて測定した。
ヘイズメータ(日本電色工業製、NDH2000)を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。
分光光度計(日立U−3500型)を用い、波長200〜1100nmの範囲で、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、室内の空気を透過率の参照として測定した。近赤外領域での透過率は、波長900〜1100nmの透過率の平均値より求めた。また、可視光領域での透過率は、波長450〜700nmの透過率の平均値より求めた。
色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用い、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、Lab表色系のa値、b値を、標準光としてD65光源、10度視野角で測定した。
温度60℃、湿度95%雰囲気中で500時間放置した後、上記の分光特性、色調を測定した。
まず、近赤外線領域の透過率、可視光領域の透過率の平均値を経時処理前後で求め、それらの変化量を下記式(1)より求め、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:透過率の変化が5%未満
○:透過率の変化が5%以上10%未満
△:透過率の変化が10%以上20%未満
×:透過率の変化が20%以上
・・・(1)
◎:色調の変化が1未満
○:色調の変化が1以上2未満
△:色調の変化が2以上4未満
×:色調の変化が4以上
・・・(2)
(1)微小欠点
近赤外線吸収フィルムを白色フィルム(東洋紡製、クリスパーK1212;100μm)上に置き、3波長の蛍光灯下で観察して、微小欠点の評価を行った。なお、微小欠点は、100m2 あたりの300μm以上の大きさの欠点の個数を計測し、以下の判断基準でランク付けを行った。なお、欠点の個数の計測は以下のようにして行った。
まず、目視で欠点と観察されるものをすべてマーキングし(欠点の個数が多い場合は途中で中止する)、次いで光学顕微鏡にて前記欠点の大きさを確認し、300μm以上の大きさの欠点の個数を計測する。
◎:微小欠点が1個未満
○:微小欠点が1個以上5個未満
△:微小欠点が5個以上10個未満
×:微小欠点が10個以上
近赤外線吸収フィルムを白色フィルム(東洋紡製、クリスパーK1212;100μm)上に置き、3波長の蛍光灯下で観察して、100m2 あたりの塗膜外観(塗工ムラ、スジ等の塗工不良)の評価を行い、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察しても、塗工不良な箇所が観察されな
い
○:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると、塗工不良な箇所が若干観察さ
れる
△:近赤外線吸収フィルムを動かしながら観察すると、塗工不良な箇所が観察される
×:静止状態でも塗工不良な箇所が観察される
巻き張力を200N/mで20m/minの速度で、6インチ紙管にフィルムをロール状に1000m巻き付けた後の、ロール端面の巻きズレの量より、以下の判断基準でランク付けを行った。
◎:巻きズレが1mm未満
○:巻きズレが1mm以上2mm未満
△:巻きズレが2mm以上4mm未満
×:巻きズレが4mm以上、または、巻取り不能
(基材)
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を2軸スクリュー押出機に投入し、T−ダイスから290℃で溶融押出しし、冷却回転金属ロール上で静電印加を付与しながら密着固化させ、未延伸シートを得た。
次いで、該未延伸シートをロール延伸機で90℃に加熱して、3.5倍で縦延伸を行った後、縦延伸フィルム上に下記塗布液Aを乾燥後の塗布量が0.5g/m2 となる様に両面に塗布し、風速10m/秒、120℃の熱風下で20秒通過させて、中間塗布層を形成させた。さらに、テンターで140℃に加熱して3.7倍横延伸したあと、235℃で幅(横)方向に5%緩和させながら熱処理してフィルムを得た。得られた中間塗布層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが厚み100μm、全光線透過率が90.2%で、ヘイズが0.5%であった。
・イオン交換水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 28.9質量%
・アクリルーメラミン樹脂 10.0質量%
(日本カーバイト製、A−08、固形分濃度:46質量%)
・ポリエステル系樹脂 10.0質量%
(東洋紡績製、MD−1250、固形分濃度:30質量%)
・有機粒子 1.0質量%
(日本触媒製、エポスターMA1001)
・界面活性剤 0.1質量%
(ダウコーニング株式会社製、ペインタッド32)
下記の塗布液B(固形分濃度:17質量%、粘度:40cps)を上記の中間塗布層上に乾燥後の塗布量が8.5g/m2になるように直径60mmの斜線グラビアを用いてリバース方式で塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを作成した。
下記の質量比で混合し、加温下(40℃)で色素および樹脂を溶解し、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液を作成した。
・シクロペンタノン 41.50質量%
・トルエン 41.50質量%
・フルオレン環を有する共重合ポリエステル系樹脂 16.22質量%
(カネボウ製、O−PET OPN−IR)
・ジインモニウム塩系化合物 0.5353質量%
(日本化薬製、IRG−022)
・ニッケル金属錯体 0.1178質量%
(みどり化学製、MIR101)
・シアニン系化合物 0.0170質量%
(山田化学工業製、IR301)
・フタロシアニン系化合物 0.0816質量%
(日本触媒製、IR−14)
・シリコーン系界面活性剤 0.0324質量%
(ダウコーニング製、ペインタッド57;HLB=6.7)
近赤外線吸収層用の塗布液中の界面活性剤をHLBが11であるシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー製、FZ−2105)に変更したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。親水性の高い界面活性剤に変更したため、高温・高湿度下での経時安定性がやや劣った。また、近赤外線吸収層の表面に界面活性剤を局在化させることにより滑り性を付与するという効果が不足するため、若干巻きズレが発生した。いずれも、実用レベルであった。
近赤外線吸収層用の塗布液中の界面活性剤を、HLBが3であるシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー製、FZ−2136)に変更したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。疎水性の高い界面活性剤に変更したため、レベリング性が若干劣り、微小欠点が少量発生した。
近赤外線吸収層用の塗布液中に、界面活性剤を樹脂に対し0.02質量%含有させたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。界面活性剤の含有量を低減したため、レベリング性がやや劣り、微小欠点が少量発生した。
近赤外線吸収層用の塗布液中に、界面活性剤を樹脂に対し1.5質量%含有させたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。界面活性剤の含有量を増加したため、経時安定性がやや不良となった。
近赤外線吸収層用の塗布後の乾燥を100℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを作成した。初期乾燥を強くしたため、微小欠点が多少増加した。
近赤外線吸収層用の塗布後の乾燥を40℃で5m/秒の熱風で20秒間、130℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを作成した。乾燥炉内でのフィルム実温が低下したため、残留溶媒量が増加し、経時安定性が若干不良となった。
ワイヤーバーで塗工したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを作成した。ワイヤーバーによる薄い縦スジが発生した。
直径300mmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを作成した。縦方向にうね状のスジが発生した。
近赤外線吸収層用の塗布液中の界面活性剤を用いないこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。界面活性剤を添加していないため、微小欠点が多数発生した。また、滑り不良となりロール状での巻取りが困難であった。
近赤外線吸収層用の塗布液中の界面活性剤を、樹脂に対し3質量%としたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。界面活性剤の含有量が多いため、経時安定性が不良となった。
近赤外線吸収層用の塗布液中の界面活性剤を、HLBが1のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー製、FZ−2110)に変更したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。本発明の構成要件以外の界面活性剤を使用したため、レベリング性が不足し微小欠点が多く発生した。また、表面の滑り性が良すぎるために、巻きズレが発生した。
近赤外線吸収層用の塗布液中の界面活性剤を、HLBが14のシリコーン系界面活性剤(東芝シリコーン製、TSF4440)に変更したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。本発明の構成要件以外の界面活性剤を使用したため、レベリング性が不足し微小欠点が発生した。また、表面の滑り性がやや不足し巻きずれが発生した。
近赤外線吸収層を下記の方法で設けたこと以外は実施例1と同様にして、近赤外線吸収フィルムを作成した。
(近赤外線吸収層の積層)
下記の塗布液C(固形分濃度:21質量%、粘度:30cps)を上記の中間塗布層上に乾燥後の塗布量が9.3g/m2になるように直径60mmの斜線グラビアを用いてリバース方式で塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、近赤外線吸収フィルムを作成した。
下記の質量比で混合し、加温下で色素および樹脂を溶解し、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液を作成。
・メチルエチルケトン 39.073質量%
・トルエン 39.073質量%
・アクリル系樹脂 6.23質量%
(三菱レイヨン製、BR−80)
・アクリル系樹脂 14.54質量%
(三菱レイヨン製、BR−83)
・ジインモニウム塩系化合物 0.6588質量%
(日本カーリット製、CIR−1085)
・フタロシアニン系化合物 0.3668質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・シリコーン系界面活性剤 0.0654質量%
(日本ユニカー製、FZ−2130;HLB=7.0)
Claims (9)
- 透明基材フィルム上に、波長800〜1200nmに極大吸収を有する近赤外線吸収色素と樹脂を主に含有する組成物からなる近赤外線吸収層を設けた近赤外線吸収フィルムであって、前記近赤外線吸収層中にHLBが2以上12以下の界面活性剤を0.01質量%以上2.00質量%以下含有されていることを特徴とする近赤外線吸収フィルム。
- 前記の界面活性剤がシリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収フィルム。
- プラズマディスプレイの前面に設置されることを特徴とする請求項1または2記載の近赤外線吸収フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルムを備えることを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
- 透明基材フィルム上に、近赤外線吸収色素、樹脂、界面活性剤、有機溶媒を含む塗布液を、塗布、乾燥させて近赤外線吸収層を形成させる近赤外線吸収フィルムの製造方法であって、前記の界面活性剤はHLBが2以上12以下であり、塗布液の固形分に対し0.01質量%以上2.00質量%以下含有されていることを特徴とする近赤外線吸収フィルムの製造方法。
- 前記の塗布液の乾燥において、乾燥を熱風による2段階の乾燥工程で行い、初期の乾燥を20℃以上80℃以下で、かつ風量を2m/秒以上30m/秒で行うことを特徴とする請求項5記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法。
- 前記の塗布液の乾燥において、後期の乾燥をフィルムの実温が120℃以上180℃以下となる乾燥ゾーンで5秒以上180秒以下通過させて行うことを特徴とする請求項6記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法。
- 前記の塗布液を塗布する方法として、リバースグラビア方式を用いることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法。
- 前記のリバースグラビア方式において、グラビアの直径が80mm以下であることを特徴とする請求項8記載の近赤外線吸収フィルムの製造方法。
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