JP4983046B2 - 近赤外線吸収フィルムロール及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、透明基材フィルムの片面に近赤外線吸収層を、他面に帯電防止層を積層してなる近赤外線吸収フィルムに関するものであり、詳しくは近赤外領域に幅広く大きな吸収を有し、かつ、近年のプラズマディスプレイの高精細化に対応できる微小欠点の少ない近赤外線吸収フィルムに関するものである。
近赤外線を吸収する機能を有する光学フィルターは、近赤外線を遮断し、可視光を通過させる性質を有しており、各種の用途に使用されている。
近年、薄型大画面ディスプレイとして、プラズマディスプレイが液晶ディスプレイとともにテレビ向けの普及が拡大している。プラズマディスプレイは、内部から放出される近赤外線により、近赤外線を利用するリモコンを使用する際に、他の電子機器が誤動作を起こす問題がある。そのため、プラズマディスプレイの前面に近赤外線吸収フィルターが設けられている。
近赤外線吸収フィルターとしては、(1)燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有したフィルター、(2)屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルター、(3)共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルター、(4)樹脂に赤外線吸収色素を分散又は溶解させた塗布液を透明基材フィルム上に塗工、乾燥させて近赤外線吸収層を形成させた近赤外線吸収フィルター、が提案されている。
これらの中で(4)のフィルターは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きく、各種の方法が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
特開2002− 82219号公報 特開2002−214427号公報 特開2002−303720号公報 特開2002−333517号公報 特開2003− 82302号公報 特開2003− 96040号公報
一方、プラズマディスプレイは、省電力化、発光輝度をさらに向上させるとともに、地上波デジタル方式の目玉の一つである、1920×1080ピクセルの高精細なフルハイビジョン放送に対応するために、開発が進められている。
フルハイビジョン化にともない、発光する各セルのサイズが小さくなるため、前面に設置されるフィルターにおいて、従来問題とならなかった微小な欠点が外観欠点として指摘されるようになってきた。つまり、従来の近赤外線吸収フィルターでも、ディスプレイから放出される近赤外線を十分に遮断する能力を有するものがあるが、地上波デジタル放送のフルハイビジョンによる高精細、高画質化に対して、近赤外線吸収層の外観が十分に満足できる近赤外線吸収フィルターは得られていなかった。
プラズマディスプレイの高画質化、高精細化に対応するために、本発明者らは近赤外線吸収層を形成させるために用いる塗液中に特定のHLBを有する界面活性剤を添加し、塗工および乾燥時のレベリング性を向上させて微小欠点を低減させる方法を提案した(例えば、特許文献7、8を参照)。しかし、地上デジタル放送のフルハイビジョンによる高精細、高画質化が要求されるプラズマディスプレイ用の光学フィルターにおいては、さらに近赤外線吸収層の外観を向上させることが要望されていた。
特開2005−92195号公報 特開2005−92196号公報
また、プラズマディスプレイの販売量の増加及びコスト低減のために、近赤外線吸収フィルムを他の部材(例えば、反射防止フィルムや電磁波吸収フィルムなど)と貼り合わせる加工が、日本国内だけでなく海外でも実施されるようになり、輸送時のロール体での保存安定性が一層重要になりつつある。
本発明の目的は、前記の従来技術における問題を解決するためになされたものであり、近赤外領域の波長を有する光線を大きくかつ幅広く吸収し、近年のディスプレイの高輝度化やフルハイビジョン放送による高精細化や高画質化に対応し得る、近赤外線吸収層の塗膜外観に高度に優れる近赤外線吸収フィルムを提供することにある。
前記の課題を解決することができた、本発明の近赤外線吸収フィルムの構成は、以下の通りである。
第1の発明は、透明基材フィルムの片面に近赤外線吸収層を、他面に表面抵抗が1×10〜1×1012Ω/□である帯電防止層を積層してなる長さ50m以上5000m以下の近赤外線吸収フィルムを巻き取ってなる近赤外線吸収フィルムロールであって、該近赤外線吸収フィルムロールは近赤外線吸収層と帯電防止層を接触させながら円筒状コアにロール状に連続的に巻き取ってなるものであり、近赤外線吸収層は樹脂および近赤外線吸収色素を構成成分とし、かつ近赤外線吸収色素がジインモニウム塩化合物を含み、帯電防止層は金属酸化物微粒子及び樹脂を含有することを特徴とする近赤外線吸収フィルムロールである。
帯電防止性を付与することにより、外観欠点となる埃や異物を除去する方法は公知である。帯電防止剤としては、(1)第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜3級アミノ基等のカチオン基を有するカチオン性帯電防止剤、(2)スルホン酸塩基、硝酸エステル塩基、リン酸エステル塩基等のアニオン基を有するアニオン性帯電防止剤、(3)アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、(4)アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性帯電防止剤、などの界面活性剤型の帯電防止剤、(5)さらには前記の帯電防止剤の高分子タイプのものが一般的に知られている。
一方、ジインモニウム塩化合物は、近赤外線吸収色素として、近赤外領域の波長を有する光線を大きくかつ幅広く吸収することができる、という長所を有するため、ディスプレイ用近赤外線吸収フィルターに広く用いられている。
本願の第1の発明において、近赤外線吸収層/透明基材フィルム/帯電防止層の層構成を有する長尺の近赤外線吸収フィルムを、円筒状コアにロール状に連続的に巻き取る際に、近赤外線吸収フィルムの近赤外線吸収層と帯電防止層とは互いに接触して巻き取られる。
しかしながら、近赤外線吸収フィルムをロール状に巻き取り、保存する際に、帯電防止層を構成する帯電防止剤の種類によって、帯電防止層と接触する近赤外線吸収層に含まれるジインモニウム塩化合物が劣化し、経時安定性が大幅に悪化することに本発明者らは注目した。
さらに、帯電防止剤の種類を変えて検討を進めた結果、帯電防止剤として、カチオン性やアニオン性の極性基を有する化合物を用いる場合、これらの化合物が帯電防止層中の極性基を有する化合物が近赤外線吸収層中のジインモニウム塩化合物を劣化させ、近赤外線吸収領域における光線透過率の経時安定性が大幅に悪化させる原因であることを突き止めた。
具体的には、多数の帯電防止剤の中から、金属酸化物微粒子を選択し、これを帯電防止層に含有させることにより、近赤外線吸収層中のジインモニウム塩化合物の劣化を防止し、良好な経時安定性が得られる、という選択的効果を見出したのである。また、本発明の近赤外線吸収フィルムに、粘着剤を介して、反射防止フィルムや電磁波吸収フィルムを貼り合せる際にも帯電防止効果が持続しているため、埃やゴミなどがフィルムに付着することを低減させる作用効果も有する。
第2の発明は、金属酸化物微粒子が、ATO、ITO、ZnO、SnO2から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする第1の発明に記載の近赤外線吸収フィルムロールである。
第3の発明は、透明基材フィルムの片面に近赤外線吸収層を、他面に帯電防止層を積層してなる近赤外線吸収フィルムロールの製造方法であって、透明基材フィルムの該他面に金属酸化物微粒子及び樹脂を含有する帯電防止層を設けた後、透明基材フィルムの該片面に樹脂およびジインモニウム塩化合物を含む塗布液を塗布、乾燥し、近赤外線吸収層と帯電防止層とを接触させながら円筒状コアにロール状に連続的に巻き取る工程を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルムロールの製造方法である。
本発明の近赤外線吸収フィルターをプラズマディプレイの前面に設置した場合、従来の近赤外線吸収フィルターと同ように、ディスプレイから放出される不要な近赤外線を吸収し、他の電子機器の誤動作を防ぐことができるだけでなく、塗工外観が高度に優れ、プラズマディスレイのフルハイビジョンによる高画質化に大きく寄与することができるという利点がある。
本発明の近赤外線吸収フィルムを構成する各層の材料、好適な実施形態、近赤外線吸収フィルムの製造方法などについて、詳細に説明する。
(透明基材フィルム)
本発明において、透明基材フィルムは特に限定されるものではないが、全光線透過率が80%以上で、かつヘイズが5%以下であることが好ましい。基材フィルムが透明性に劣る場合には、ディスプレイの輝度を低下させるだけでなく、画像のシャープさが不良となる。
このような透明基材フィルムとしては、例えばポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート、フェノール系、ウレタン系等のプラスチックフィルム又はシート、及びこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステル系フィルムであり、より好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。
透明基材フィルムとして好適なポリエステル系フィルムとは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどをエステル化反応又はエステル交換反応を行い、次いで重縮合反応させて得たポリエステルチップを乾燥後、押出機で溶融し、Tダイからシート状に押し出して得た未延伸シートを少なくとも1軸方向に延伸し、次いで熱固定処理、緩和処理を行うことにより製造されるフィルムである。
前記フィルムは、強度等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸フィルムは、例えば、長手方向にポリエステルのガラス転移温度(Tg)〜(Tg+30℃)で、2.0〜5.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後120〜150℃で1.2〜5.0倍に幅方向に延伸する。さらに、二軸延伸後に220℃以上(融点−10℃)以下の温度で熱固定処理を行い、次いで幅方向に3〜8%緩和させることによって製造することができる。また、フィルムの長手方向の寸法安定性をさらに改善するために、縦弛緩処理を併用してもよい。
フィルムには、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
本発明において、近赤外線吸収層を積層する面の反対面(帯電防止層側の表面)に反射防止層を設ける場合、外部から入射する紫外線により、近赤外線吸収色素が劣化しやすくなるため、透明基材フィルム中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤に大別されるが、透明性の確保の観点からは有機系紫外線吸収剤(低分子タイプ、高分子タイプ)の使用が望ましい。有機系紫外線吸収剤(低分子タイプ)としては特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系など、およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中で、耐久性の観点からはベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。さらに好ましくは、基材フィルムの未延伸シートを製造する際の溶融押し出し温度に耐えうる、分解温度が290℃以上の耐熱性に優れる紫外線吸収剤の使用が望ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、近赤外線吸収層の光劣化を抑制できるように、380nm以下の波長における透過率が10%以下になるように適宜調整する。具体的には、紫外線吸収剤は、透明基材フィルム中に0.1〜4質量%の範囲で含有させることが好ましく、0.3〜2質量%がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が少なすぎると紫外線吸収能が小さくなり、多すぎるとフィルムが黄変する場合や、フィルムの製膜性が低下する場合がある。
本発明で用いる透明基材フィルムは、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合基材フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。
また、紫外線吸収能を付与する場合、中心層のみに紫外線吸収剤を含有させることで、フィルム製造時や、フィルムの表面への経時的な紫外線吸収剤の析出を低減することができ、近赤外線吸収層への耐熱性の劣化等の悪影響を抑制できる。前記の複合基材フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が特に好ましい。
透明基材フィルムの厚みは素材により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、下限は35μmが好ましく、より好ましくは50μmである。一方、厚みの上限は260μmが好ましく、より好ましくは200μmである。基材フィルムの厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、近赤外線吸収層の残留溶媒を少なくなるように乾燥時に加熱した場合に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、基材フィルムの厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
(中間層)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルム上に近赤外線吸収層を積層した構成になっているが、透明基材フィルムと近赤外線吸収層の密着性の向上や透明基材フィルムの透明性向上を目的に中間層を設けることが好ましい。なお、基材フィルム中に粒子を含有させない場合、粒子を含有する中間層を基材フィルムの製造時に同時に設けることにより、ハンドリング性を維持しながら高度な透明性を得ることができる。
前記中間層を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、基材フィルムおよび近赤外線吸収層との密着性が良好となるように樹脂を選択することが重要である。具体的には、基材フィルム及び近赤外線吸収層を構成する樹脂がエステル系であれば、類似した構造を有するポリエステル系、ポリエステルウレタン系を選定することが好ましい。
前記中間層には、密着性の向上、耐水性の向上を目的に架橋剤を含有させて、樹脂に架橋構造を形成させても構わない。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系が挙げられる。特に、樹脂が高温・高湿度下での白化や強度が低下する場合には、架橋剤による効果が顕著である。なお、架橋剤を用いずに、樹脂として自己架橋性を有するグラフト共重合樹脂を用いてもよい。
中間層には、表面に凹凸を形成させて滑り性を改善する目的で、各種の粒子を含有させてもよい。中間層中に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。なお、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。
さらに、中間層に各種機能を付与するために、界面活性剤、帯電防止剤、色素、紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
中間層は目的とする機能を有する場合は単層でも構わないが、必要に応じて2層以上に積層しても構わない。
中間層の厚みは、目的とする機能を有すれば特に限定されるものではないが、0.01μm以上5μm以下が好ましい。厚みが薄い場合には中間層としての機能が発現しにくくなり、逆に、厚い場合には透明性が不良となりやすい。
中間層を設ける方法としては、塗布法が好ましい。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法を用いて、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。これらの方式のうち、インラインコート方式がコスト面で優れるだけでなく、塗布層に粒子を含有させることで、透明基材フィルムに粒子を含有させる必要がなくなるため、透明性を高度に改善することができるため好ましい。
(帯電防止層)
本発明において、透明基材フィルムの近赤外線吸収層の反対面側には、帯電防止層を設ける。帯電防止層は、基材フィルム上に直接設けてもよいし、密着性が悪い場合には、透明基材フィルムと帯電防止層の間に密着性を向上させる中間層を介して設けても良い。
本発明において、帯電防止層の表面抵抗は、1×105〜1×1012Ω/□であることが好ましい。1×1012Ω/□より表面抵抗が低い場合には、ロール・ツウ・ロール方式を用いて近赤外線吸収層を設ける際に、ロールからフィルムを巻出す際の帯電(巻き出し帯電)、フィルムと金属ロールやゴムロールとの摩擦による帯電(摩擦帯電)を大幅に低減することができる。そのため、近赤外線吸収層を形成する塗液を塗布する前に、異物等の付着が大幅に低減することが可能となるだけでなく、有機溶剤系の塗布液、特にトルエンを含有する塗液を塗布する際の帯電によるハジキを低減することが可能となる。帯電防止層の表面抵抗は低いほど、異物の付着量を低減できるとともに、微小な異物の付着も防止することができる。しかしながら、1×105Ω/□より表面抵抗を下げるには、コスト的な問題だけでなく、フィルムの透明性が悪化するという問題もある。
更に、帯電防止層を積層することにより、透明基材フィルムの表面が平滑化するとともに、透明性が向上する。特に、ヘイズの低下が可能となる。
本発明において、帯電防止層は、金属酸化物粒子を含有する。金属酸化物粒子は、近赤外線吸収色素、特に、ジインモニウム塩化合物の劣化を促進することがなく、経時安定性が良好となる。また、近赤外線吸収層を積層した後でも帯電防止性が維持でき、後加工工程での貼り合せ時のゴミ付着等の低減も可能となる。
金属酸化物微粒子としては、例えば、ATO、ITO、Zn0、SnO2、In23等が挙げられる。これらは、有機溶剤に分散させたオルガノゾル、あるいは、帯電防止塗料として入手することが可能である。また、粉末の金属酸化物微粒子を樹脂中に分散させて使用することも可能である。
上記の金属酸化物微粒子の中で、ATO、ITO、Zn0、SnO2が好適である。特に好ましい金属酸化物微粒子は、透明性、ヘイズ値、及び耐環境性の点から、SnO2系微粒子である。なお、ここでいう耐環境性とは、高温、高湿度下における抵抗値変化、及び外観変化の度合を意味する。
帯電防止層は、樹脂中に金属酸化物微粒子を含有させた組成物から形成される。帯電防止層に使用する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、基材フィルムおよび近赤外線吸収層との密着性が良好となる樹脂を選択することが重要である。具体的には、基材フィルム及び近赤外線吸収層を構成する樹脂に類似した構造を有する樹脂である、アクリル系、エステル系が好ましい。
帯電防止層には、外観向上のための界面活性剤、紫外線吸収剤、色調調整用の色素や顔料、滑り性付与のために各種のフィラーを含有させても良い。
帯電防止層の厚みとしては、目的とする帯電防止性を達成すれば特に限定されないが、0.01μm以上10μm以下が好ましい。帯電防止層の厚みが0.01μm未満の場合には、帯電防止性が不足となるとともに、表面の平滑性が不足する。一方、帯電防止層の厚みが10μmより厚い場合には、透明性が不良となりやすい。
帯電防止層を設ける方法としては、塗布法が好ましい。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式などの公知の塗布方法を用いて、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。帯電防止層が中間層を兼ねる場合には、インラインコート方式がコスト面で優れるだけでなく、塗布層に粒子を含有させることで、透明基材フィルムに粒子を含有させる必要がなくなるため、透明性を高度に改善することができる。
帯電防止層の積層は、透明基材フィルムに近赤外線吸収層を積層する前でも後でもかまわない。帯電防止層を設けてから近赤外線吸収層を設ける場合、近赤外線吸収層への埃やごみの付着をさらに低減できる。また、近赤外線吸収層を設けてから帯電防止層を設ける場合、近赤外線吸収層を積層する際の埃等の付着による外観不良を改善する効果は減少するが、反射防止フィルムや電磁波吸収フィルムなどの機能性フィルムを貼り合わせる後加工工程において、埃などの異物の付着による外観不良を低減することが可能となる。
(近赤外線吸収層)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルムの片面に帯電防止層を、他面には直接あるいは他の層を介して、近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収層を積層した構成からなる。
近赤外線吸収色素とは、波長800〜1200nmの近赤外線領域に極大吸収を有する色素であって、ジインモニウム塩系、フタロシアニン系、ジチオ−ル金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、ポリメチン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドオコリン系、トリフェニルメタン系、シアニン系、アゾ系、アミニウム系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して使用される。
本発明において、近赤外線吸収層には、近赤外線領域の吸収が大きく、かつ吸収域も広く、さらに可視光領域の透過率も高いジインモニウム塩化合物を近赤外線吸収色素として使用する。ジインモニウム塩化合物としては、下記一般式(1)で示されるものが好適である。
Figure 0004983046
前記の一般式(1)中のR1〜R8の具体例としては、(a)メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、ter−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基などのアルキル基、(b)フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル、ナフチル基などのアリール基、(c)ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、(d)ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基などのアラルキル基、が挙げられる。これらの中で、炭素数が多く、かつ、分岐状のiso−ブチル基、ter−ブチル基、更にはベンゼン環を有するフェニルアルキル基が色素自体の耐久性が向上して好ましいが、有機溶剤への溶解性を考慮して選択する必要がある。
また、R1〜R8は、全て同一でも構わないし、異なっていても構わない。
また、R9〜12としては、水素、フッ素、塩素、臭素、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
-は、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミド酸イオン、などが挙げられるが、耐久性、色素の溶解性の観点から、イミド酸イオン系を用いることが好ましい。ただし、本発明では、上記例示のものに限定される訳ではない。これらの一部は市販品として入手可能であり、例えば、日本化薬社製Kayasorb IRG−022、IRG−023、IRG−024、IRG−068、日本カーリット社製 CIR−1080、CIR−1081、CIR−1083、CIR−1085、CIR−1085F、CIR−RLなどを好適に用いることができる。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、近赤外線吸収層中にジインモニウム塩化合物以外に、近赤外線領域の吸収域の拡大および調整を目的として、他の近赤外線吸収色素を加えることもできる。ジインモニウム塩化合物と併用することができる近赤外線吸収色素としては、800〜1100nmの波長域に吸収ピークを有し、かつジインモニウム塩化合物の劣化を促進させない点から、フタロシアニン、シアニン色素、ジチオ−ル金属錯体が好適である。
本発明において、目的とする近赤外線領域の吸収、可視光領域での透過率を制御するために、単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量を、近赤外線吸収層の厚み方向における任意の面で0.01g/m2 以上1.0g/m2 以下で存在するように調整することが好ましい。単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、近赤外線領域での吸収能が不足しやすくなる。一方、単位面積当たりの近赤外線吸収色素の量が多い場合には、可視光領域での透明性が不足してディスプレイの輝度が低下する問題がある。
本発明の近赤外線吸収層において、近赤外線吸収色素は樹脂中に分散あるいは溶解した組成物として、塗布法を用いて、透明基材フィルムの片面に積層される。
近赤外線吸収層を構成する樹脂としては、近赤外線吸収色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系樹脂が好適である。これらの樹脂の中でも、色素混合時の透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
近赤外線吸収層を構成する樹脂のガラス転移温度は、利用する機器の使用保証温度以上であることが好ましい。樹脂のガラス転移温度が機器使用温度以下であると、樹脂中に分散された色素同士が反応しやすくなるとともに、樹脂が外気中の水分等を吸収し色素やバインダ−樹脂の劣化が大きくなる。
また、近赤外線吸収層を構成する樹脂のガラス転移温度は、機器使用温度以上であれば特に限定されないが、85℃以上160℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が85℃未満の場合、色素と樹脂との相互作用、色素間の相互作用等が起こり、色素の変性が発生しやすくなる。
一方、ガラス転移温度が160℃を超える場合、該樹脂を溶媒に溶解し、透明基材フィルム上に塗布する際に十分な乾燥を行うためには、乾燥温度を高温にすることが必要になる。その結果、基材フィルムが熱によりシワが発生し、平面性が不良となりやすく、色素の劣化も発生しやすくなる。また、低温で乾燥した場合、乾燥時間が長く生産性が悪くなり、生産性が不良となる。また、十分な乾燥ができない場合もあり、溶媒が塗膜中に残留し、樹脂の見かけのガラス転移温度が低下し、やはり、色素の変性を引き起こす場合がある。
近赤外線吸収層における近赤外線吸収色素の含有量は、樹脂に対し1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。樹脂中の近赤外線吸収色素の量が少ない場合には、目的とする近赤外線吸収能を達成するためには、近赤外線吸収層の塗工量を増やす必要がある。そのため、十分な乾燥をしようとすれば、高温又は長時間の乾燥が必要になり、色素の劣化や基材フィルムの平面性不良などが起こりやすくなる。一方、樹脂中の近赤外線吸収色素の含有量が多い場合には、色素間の距離が短くなり、色素間の相互作用が強くなる。そのため、近赤外線吸収層中の残留溶媒を少なくしたとしても、色素の経時的な変性が起こりやすくなる。
本発明において、近赤外線吸収層は、近赤外線吸収色素、樹脂、および有機溶媒を含む塗布液を、透明基材フィルムの片面に塗布、乾燥させて形成させることが好ましい。この際に、前記塗布液中に界面活性剤を含有させることがさらに好ましい。近赤外線吸収層の形成させる塗布液に界面活性剤を含有させることにより、近赤外線吸収層の塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキが低減される。更には、界面活性剤は塗布乾燥により表面にブリードすることにより、滑り性が付与され、近赤外線吸収層あるいは/及び反対面に表面凹凸を形成しなくともハンドリング性が良好となり、ロール状に巻取ることが容易になる。
界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できるが、近赤外線吸収色素との劣化等の問題から極性基を有していないノニオン系が好ましく、更には、界面活性能に優れるシリコン系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。
シリコン系界面活性剤としては、ジメチルシリコン、アミノシラン、アクリルシラン、ビニルベンジルシラン、ビニルベンジシルアミノシラン、グリシドシラン、メルカプトシラン、ジメチルシラン、ポリジメチルシロキサン、ポリアルコキシシロキサン、ハイドロジエン変性シロキサン、ビニル変性シロキサン、ビトロキシ変性シロキサン、アミノ変性シロキサン、カルボキシル変性シロキサン、ハロゲン化変性シロキサン、エポキシ変性シロキサン、メタクリロキシ変性シロキサン、メルカプト変性シロキサン、フッ素変性シロキサン、アルキル基変性シロキサン、フェニル変性シロキサン、アルキレンオキシド変性シロキサンなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、4フッ化エチレン、パーフルオロアルキルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルスルホン酸ナトリウム、パーフルオロアルキルカリウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルキル化合物、パーフルオロアルキルアルキルベタイン、パーフルオロアルキルハロゲン化物などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、近赤外線吸収層を構成する樹脂に対して0.01質量%以上2.00質量%以下であることが好ましい。界面活性剤の含有量が少ない場合には、塗工外観の向上や滑り性付与の効果が不足しやすくなる。一方、界面活性剤の含有量が多い場合には、近赤外線吸収層が水分を吸収しやすくなり、色素の劣化が促進されやすくなる。
界面活性剤のHLBは、2以上12以下であることがさらに好ましい。HLBの下限値は好ましくは3であり、特に好ましくは4である。一方、HLBの下限値は好ましくは11であり、特に好ましくは10である。HLBが低い場合には界面活性能の不足によりレベリング性が不足しやすくなる。一方、HLBが高い場合には、滑り性が不足するだけでなく、近赤外線吸収層が水分を吸収しやすくなり、色素の経時安定性が不良となる傾向がある。
なお、HLBとは、アメリカのAtlas Powder社のW.C.GriffinがHydorophil Lyophile Balanceと名付けて界面活性剤の分子中に含まれる親水基と親油基のバランスを特性値として指標化した値であり、この値が低いほど親油性が、逆に高いほど親水性が高いことを意味する。
本発明において、近赤外線吸収層は、樹脂、近赤外線吸収色素、必要に応じて界面活性剤を含む塗布液を透明基材フィルム上に塗布・乾燥することにより積層されるが、該塗布液は、塗工性より有機溶媒により希釈することが好ましい。
有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
好ましくは、色素の溶解性に優れるケトン類を、塗布液に使用する全有機溶媒に対し、30質量%以上80質量%以下含有させ、その他の有機溶媒は、レベリング性、乾燥性を考慮して選定することが好ましい。また、有機溶媒の沸点は、60℃以上180℃以下が好ましい。有機溶媒の沸点が低い場合には、塗工中に塗布液の固形分濃度が変化し、塗工厚みが安定化しにくい。一方、有機溶媒の沸点が高い場合には、塗膜中に残存する有機溶媒量が増え、経時安定性が不良となりやすい。
近赤外線吸収色素および樹脂を有機溶媒中に溶解あるいは分散する方法としては、加温下での攪拌、分散及び粉砕する方法が挙げられる。加温することにより色素及び樹脂の溶解性を向上することができ、未溶解物等による塗工外観への不良が妨げられる。また、分散及び粉砕して、樹脂及び色素を0.3μm以下の微粒子状態で塗布液中に分散することにより、透明性に優れる近赤外線吸収層を形成することが可能となる。分散機及び粉砕機としては、公知のものを用いることができる。分散機及び粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
塗布液中にコンタミや1μm以上の未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になるため、塗布する前に、フィルター等でそれらを除去する。1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗布液を塗布し乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、100〜1000μmサイズの欠点になる場合がある。フィルターとして、各種のものが好適に使用できるが、1μm以上の大きさのコンタミや未溶解物を99%以上除去することができるフィルターを用いることが好ましい。
塗布液中に含まれる樹脂及び色素等の固形分濃度は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。固形分濃度が低い場合には、塗布後の乾燥に時間が掛かり、生産性が劣るばかりか、塗膜中に残存する溶媒量が増加し、経時安定性が不良となりやすい。逆に、固形分濃度が高い場合には、塗布液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となりやすい。塗布液の粘度は、10cps以上300cps以下とすることが塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように固形分濃度、有機溶媒等を調整する。
本発明で、近赤外線吸収層を透明基材フィルム上に塗布する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増える。
近赤外線吸収層の乾燥後の塗布量は特に限定されないが、下限は1g/m2 が好ましく、より好ましくは3g/m2 である。一方、塗布量の上限は50g/m2 が好ましく、より好ましくは30g/m2 である。乾燥後の塗布量が少ない場合には、近赤外線の吸収能が不足しやすくなる。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を増やすと、近赤外線吸収層と基材フィルム間に中間層を設けた場合、近赤外線吸収層の表面や近赤外線吸収層と中間層の界面に存在する色素量が多くなり、外気や中間層の樹脂の影響を受けやすくなる。その結果、色素の劣化等が起こりやすくなり、経時安定性が不良となる場合がある。逆に、乾燥後の塗布量が多い場合には、近赤外線の吸収能は十分であるが、可視光領域での透明性が低下し、ディスプレイの輝度が低下する。そのため、樹脂中の近赤外線吸収色素の存在量を低減すると、光学特性は調節できるが、乾燥が不十分になりやすくなる。その結果、塗膜中の残留溶媒により色素の経時安定性が不良となる場合がある。一方、乾燥を十分にした場合には基材フィルムの平面性が不良となる場合がある。
塗布液を透明基材フィルムの片面に塗布し、乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーター等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が高い、熱風の風量が大きい)場合には、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなる。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が低い、熱風の風量が小さい)場合には、外観は良好になるが乾燥時間が掛かりコスト面で問題がある。塗布液に界面活性剤を添加しない場合には、上記の微小な欠点が発生しやすく、初期乾燥をかなり弱くする必要がある。
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温し、塗膜中の溶媒を減少させる必要があり、好ましい温度は、120℃以上180℃以下である。特に好ましくは、下限値が140℃であり、上限値は170℃である。乾燥温度が低い場合には、塗膜中の溶媒が減少しにくくなり、残留溶媒となって色素の経時的な安定性が不十分となりやすい。逆に、高温の場合には、熱シワにより基材フィルムの平面性が不良となるだけでなく、近赤外線吸収色素が熱により劣化する場合がある。また、乾燥炉を通過するフィルムの時間は、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が短い場合には塗膜中の残留する溶媒が多くなり経時安定性が不良となりやすい。一方、時間が長い場合には、生産性が不良となるだけでなく、基材フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となる場合がある。乾燥炉を通過するフィルムの時間の上限は、生産性と平面性の点から、30秒とすることが特に好ましい。
乾燥の最終段階では、熱風温度を樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で基材フィルムの実温を樹脂のガラス転移温度以下にすることが好ましい。高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗工面がロール表面に接触した際に滑りが不良となり、キズ等が発生するだけでなく、カール等が発生する場合がある。
また、近赤外線吸収層を積層する側とは反対面(帯電防止層側の表面)に反射防止層を積層してなる複合フィルムの場合、容易に剥離が可能な保護フィルムを帯電防止層側の表面に積層し、その状態で近赤外線吸収層を塗布・乾燥することが好ましい。この方法を用いることにより、近赤外線吸収層を積層する際に、ロールとの摩擦によるキズの発生を無くすことができるだけでなく、フィルム全体の強度が向上する。そのため、乾燥時の基材フィルムの熱シワを低減することができるとともに、乾燥時に基材フィルム中のオリゴマーの析出によるヘイズの悪化も防止することができる。
(近赤外線吸収フィルム)
本発明において近赤外線吸収フィルムとは、800〜1200nmの近赤外領域の透過率が低く、400nm〜800nmの可視光領域の透過率が高いフィルムのことである。近赤外領域の透過率は低いほど好ましく、具体的には40%以下、より好ましくは30%以下である。透過率が高い場合には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線の吸収が不足し、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができない。
透過率の調整としては、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量により変更することができる。
近赤外線吸収フィルムの色調としては、Lab表色系で表現すると、a値は−10.0〜+10.0、b値は−10.0〜+10.0であることが好ましい。この範囲であれば、プラズマディスプレイの前面に設置した場合でもナチュラル色となり好ましい。
色調を調整する方法としては、上述の近赤外線吸収色素の種類、単位面積あたりの近赤外線吸収色素の存在量、更には、他の色素の混合により達成できる。なお、後述の近赤外線吸収フィルムの前面または裏面に着色された粘着層を用いて電磁波防止フィルム、反射防止フィルム、ガラス等の他の部材と貼り合せる場合には、光学フィルターとして、ナチュラル色になるように色調を調整することが好ましい。
近赤外線吸収層の塗工外観としては、直径300μm以上、より好ましくは100μmのサイズの欠点を存在しないようにしなければならない。300μm以上の欠点は、プラズマディスプレイの前面に設置すると輝点のようになり、欠点が顕著化される。100μm以上300μm未満の欠点も粘着加工等の貼り合わせにより、レンズ効果等で強調される場合があり、できるだけ存在しないようにしなかればならない。また、塗工層の薄いスジ、ムラ等もディスプレイ前面では顕著化されて問題となる。
近赤外線吸収フィルムは、高温、高湿度下に長期間放置されても、近赤外線の透過率、可視光の透過率が変化しないことが好ましい。高温、高湿度下の経時安定性が不良の場合には、ディスプレイの映像の色調が変化するばかりか、近赤外線リモコンを用いた電子機器の誤動作を防止するという、本発明の効果が発現できない場合がある。
経時安定性を良好にするには、色素や樹脂の種類、添加剤によりその適正範囲は変化するが、塗布液で使用する有機溶媒の種類、塗布層の厚み、乾燥条件等を制御することで近赤外線吸収層中の残留溶媒量を低減すること、あるいは樹脂中の色素の含有量を調整することが好適である。なお、近赤外線吸収層の残留溶媒の量は少ないほどよく、3質量%以下にすることが好ましい。3質量%以下になれば、実質的に経時安定性に差がなくなる。しかしながら、さらに残留溶媒量を低下させるために、例えば、乾燥を過酷な条件とすると、フィルターの平面性が不良になる等の弊害が発生し、減圧乾燥のような方法では生産性が低下するので注意が必要である。
本発明の近赤外線吸収フィルムは、片面に近赤外線吸収層を、他面に帯電防止層を設けた構成からなるが、帯電防止層上に、易接着層、易滑層、反射防止層、電磁波防止層を積層しても構わない。反射防止層、電磁波防止層を設けることで、光学フィルターの部材を減らし、安価にできるだけでなく、光が干渉する界面(屈折率の異なる層間の界面)が減少するため、プラズマディスプレイの画質が向上する。
帯電防止層は、近赤外線吸収層の形成時や後工程でのゴミの付着を低減することができるため、微小欠点の低減や製造時の歩留まりを向上させることが可能となる。易接着層は粘着剤で他の部材と貼り合せる際の密着力を向上させる機能を、易滑層はハンドリング性を向上させる機能を有する。
本願発明では、帯電防止層に用いる帯電防止剤として、π電子共役系導電性高分子を含有する。なぜなら、透明基材フィルムに近赤外線吸収層を塗工する前に帯電防止層を形成させる場合、帯電防止剤としてアニオン系やカチオン系の界面活性剤や、4級アンモニウム塩のカチオン系樹脂を使用すると、ロール状態での裏移りにより帯電防止剤が近赤外線吸収層を塗工する面に付着し、近赤外線吸収層の劣化が促進されるためである。
(近赤外線吸収フィルムロール)
本発明の近赤外線吸収フィルムは、長尺の近赤外線吸収フィルムを近赤外線吸収層と帯電防止層を接触させながら円筒状コアにロール状に連続的に巻き取る工程を経て得られる。長尺の近赤外線吸収フィルムを円筒状コアにロール状に連続的に巻き取られた近赤外線吸収フィルムロールは、50m以上5000m以下の長尺の近赤外線吸収フィルムを巻き付けた形態である。巻長が短い場合には、後工程での粘着加工時のフィルムロールの切り替え頻度が高くなり作業性が悪化する。逆に、巻長が長い場合には、外部の環境温度により近赤外線吸収フィルムが膨張及び収縮し、巻き締まりが発生して、巻芯部の外観が不良となる。
近赤外線吸収フィルムを巻きつける円筒状コアは、プラスチック製コアが好ましい。一般的に使用される紙製のコアを用いた場合には、紙粉等が発生して近赤外線吸収層に付着して不良となりやすい。プラスチック製コアとしては、公知のものが好適に使用できるが、ポリプロピレン製コアやFRP製コアが強度の点で好ましい。円筒状コアのサイズは、直径が3インチ以上6インチ以下が好ましい。直径の小さいコアを用いた場合には、巻芯部で巻き癖が付き、後工程での取り扱い性が不良となる。一方、直径が大きい場合には、ロール径が大きくなり、ハンドリング性が不良となる。
コアに近赤外線吸収フィルムを巻きつけるためには、コアに両面テープを介して近赤外線吸収フィルムを固定してから巻き始めることが好ましい。両面テープを用いない場合には、巻き途中や運搬時に巻ズレが発生しやすくなる。両面テープとしては公知のものが使用できるが、プラスチックフィルムの両面に粘着層を有するものが、紙粉の発生や強度の点で好ましい。両面テープの厚みは、5μm以上50μm以下が好ましい。薄い場合には強度が低下して作業性が悪くなるとともに、フィルムの固定力が低下する。逆に、厚い場合には、テープによる段差で、巻芯部の近赤外線吸収フィルムの平面性が不良となる。
本発明において、近赤外線吸収フィルムの巾方向の両端に凹凸(エンボス)を付与することが好ましい。凹凸を付与することで、巻芯部の両面テープによる跡が付きにくくなるとともに、近赤外線吸収層と帯電防止層との接触する箇所が低下して、ロール形態での保存安定性が良好となる。凹凸の高さの下限は、10μmが好ましく、さらに好ましくは15μmである。一方、凹凸の高さの上限は、40μmが好ましく、さらに好ましくは35μmである。凹凸の高さが低すぎると、凹凸によるロール形態での保存安定性の改善効果が小さくなる。一方、凹凸の高さが高すぎると、運送時に巻ズレ等が発生しやすくなる。凹凸を付与する方法としては、公知の方法を使用できる。具体的には、表面に突起のある金属ロールを押し付けて凹凸を付与する方法が挙げられる。なお、凹凸加工は透明基材フィルム上に近赤外線吸収層を形成する前に、予め透明基材フィルムに付与しておくことが好ましい。
(光学フィルター)
本発明において光学フィルターとは、プラズマディスプレイの前面に設置されるもので、ディプレイから発生する近赤外線、電磁波をカットするとともに、ディスプレイの視認性向上のための反射防止、色再現性の向上等の機能を有し、更には、ディスプレイの保護の機能を有する。
光学フィルターは、反射防止フィルム、ガラス、電磁波防止フィルム、近赤外線吸収フィルムを粘着剤で貼り合せた構成が一例として挙げられ、粘着剤に紫外線吸収能、色補正機能、色再現性の向上機能を付与することが好ましい。また、フィルムの同一面あるいは反対面に別々の機能を付与した複合フィルムを用いることで、部材数の低減、計量化等で好ましい。更には、軽量化、高画質化のために、ガラスを用いず、直接プラズマディスプレイのパネルに張り合わせる直貼りフィルターも好ましい。
本発明において、ディスプレイから放出される有害電磁波を遮断する目的で、赤外線吸収層と同一面、ないしは、反対面に導電層を直接或いは粘着剤を介して設けてもよい。該導電層は金属メッシュと導電薄膜の何れを用いても良い。金属メッシュを用いた場合、開口率が50%以上の金属メッシュ導電層を有している必要がある。なぜなら、金属メッシュの開口率が低ければ電磁波シ−ルド性は良好となるが、光線透過率が低下するためである。このため、良好な光線透過率を得るためには、50%以上の開口率が必要となる。金属メッシュとしては、電気電導性の高い金属箔にエッチング処理を施して、メッシュ状にしたものや、金属繊維を使った織物状のメッシュや、高分子繊維の表面に金属をメッキ等の手法を用いて付着させた繊維を用いてもよい。電磁波吸収層に使われる金属は、電気電導性が高く、安定性が良ければいかなる金属でも良く特に限定されないが、加工性、コストなどの観点より銅、ニッケル、タングステンなどが好ましい。
また、導電性薄膜を用いる場合、透明導電層はいかなる導電膜でもよいが、金属酸化物が好ましい。これによって、より高い可視光線透過率を得ることができる。また、透明導電層の導電率をさらに向上させたい場合は、金属酸化物/金属/金属酸化物の3層以上の繰り返し構造とすることが好ましい。金属を多層化することで、高い可視光線透過率を維持しながら、導電性を得ることができる。金属酸化物は、導電性と可視光線透過性を有するものであれば、いかなる金属酸化物でもよい。例えば、酸化錫、酸化インジウム、インジウム・錫複合酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ビスマスなどが挙げられる。以上の金属酸化物は代表例であり、特に限定されるものではない。また、金属層は、導電性の点より、金、銀及びそれらを含む化合物が好ましい。
更に、導電層を多層化した場合、例えば繰り返し層数が3層の場合、銀層の厚さは50〜200Åが好ましく、より好ましくは50〜100Åである。これよりも膜厚が厚い場合は、光線透過率が低下し、薄い場合は抵抗値が上昇する。また、金属酸化物層の厚さは、100〜1000Åが好ましく、より好ましくは100〜500Åである。この厚さより厚い場合には着色して色調が変化し、薄い場合には抵抗値が上昇する。さらに、3層以上に多層化する場合、例えば、金属酸化物/銀/金属酸化物/銀/金属酸化物のように5層とした場合、中心の金属酸化物の厚さは、それ以外の金属酸化物層の厚さよりも厚いことが好ましい。このようにすることで、多層膜全体の光線透過率が向上する。
反射防止層とは、表面反射を防ぎ、蛍光灯等の映り込みを防止する機能を有する。該反射防止機能を付与する方法は限定させず任意に選択できるが、例えば、基材フィルムの表面に屈折率の異なる層を積層し、該層の界面における反射光の干渉を利用して低減する方法、表面に凹凸を付与する方法が挙げられる。該方法の反射防止膜を形成する方法として、下記の2つの方法に大別できる。
第1の方法は、基材フィルムの表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止膜を形成させる方法である。第2の方法は、基材フィルムの表面に、反射防止用塗布液を塗布し乾燥させることにより反射防止膜を形成させる方法である。一般論としては、反射防止特性では前者が、経済性では後者が優れていると言われているが、本発明においては、どちらの方法を用いても構わない。
次に、本発明を実施例及び比較例を用いて説明する。また、本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
<表面抵抗>
三菱油化製表面抵抗計を用いて、印加電圧500V、20℃、55%RHの条件下で測定した。
<塗布液の粘度>
20℃に塗布液を調節し、東京計器製のB型粘度計(BL)を用いて、ローター回転数60rpmにて測定した。
<全光線透過率、ヘイズ>
ヘイズメータ(日本電色工業製、NDH2000)を用いて、全光線透過率およびヘイズを測定した。
<透過率>
分光光度計(島津製作所製UV−3150型)を用い、波長300〜1200nmの範囲で、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、室内の空気を透過率の参照として測定した。
<色調>
色差計(日本電色工業製、ZE−2000)を用い、近赤外線吸収層側に光が照射するようにして、Lab表色系のa値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測定した。
<経時安定性>
温度80℃、湿度95%雰囲気中で48時間放置した後、上記の色調を測定した。色調の変化量として、下式(2)よりΔEを求めた。尚、ΔEは値が小さい程、色調の変化が少ないことを示す。
ΔE=√((処理前a値―処理後a値)2+(処理前b値―処理後b値)2
・・・(2)
<保存安定性>
ロール形態のまま50℃で30日間放置し、上記の透過率、色調を測定した。色調の変化量として、式(2)よりΔEを求めた。尚、ΔEは値が小さい程、色調の変化が少ないことを示す。
<塗膜外観>
近赤外線吸収フィルムを白色フィルム(東洋紡製、クリスパーK1212;100μm)上に置き、3波長の蛍光灯下で微小欠点の観察を行った。
まず、目視で欠点と観察されるものをすべてマーキングする。なお、欠点の個数が多い場合は途中で中止する。次いで、光学顕微鏡にて欠点の大きさを確認し、100m2あたりの直径が100μm以上の大きさの微小欠点について、100μm以上200μm未満、200μm以上300μm未満、300μm以上、の大きさの範囲に分類して、欠点の個数を計測する。
実施例1
(基材フィルム)
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト樹脂を2軸スクリュ−押出機に投入し、T−ダイスから290℃で溶融押出しし、冷却回転金属ロ−ル上で静電印加を付与しながら密着固化させ、未延伸シ−トを得た。
次いで、該未延伸シートをロール延伸機で90℃に加熱して、3.5倍で縦延伸を行った後、縦延伸フィルム上に下記塗布液Aを乾燥後の塗布量が0.5g/m2 となるように両面に塗布し、風速10m/秒、120℃の熱風下で20秒通過させて、中間塗布層を形成させた。さらに、テンタ−で140℃に加熱して3.7倍横延伸したあと、235℃で幅(横)方向に5%緩和させながら熱処理してフィルムを得た。更に、得られたフィルムの端部をスリットするとともに、両端部の15mm幅で20μの突起をエンボス加工し、1.3m巾で2100m巻のロールを得た。得られた中間塗布層を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、厚みが100μm、全光線透過率が90.2%で、ヘイズが0.5%であった。
(中間塗布層用塗布液Aの組成)
・イオン交換水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 28.9質量%
・アクリルーメラミン樹脂 10.0質量%
(日本カーバイト製、A−08、固形分濃度:46質量%)
・ポリエステル系樹脂 10.0質量%
(東洋紡績製、MD−1250、固形分濃度:30質量%)
・有機粒子 1.0質量%
(日本触媒製、エポスターMA1001)
・界面活性剤 0.1質量%
(ダウコーニング株式会社製、ペインタッド32)
(帯電防止層の積層)
下記の塗布液B(固形分濃度:1質量%)を上記の透明基材フィルム上に乾燥後の塗布量が0.1g/m2 になるようにマイクログラビア方式で塗布し、100℃で10m/秒の熱風下を10秒間通過させて、帯電防止層を積層した。表面抵抗は、1.3×108Ω/□であった。
(帯電防止層用の塗布液B)
・水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 50.0質量%
・SnO2微粒子含有樹脂
(新中村化学工業社製、WS3000) 25.0質量%
(近赤外線吸収層の積層)
下記の塗布液C(固形分濃度:16質量%、粘度:28cps)を帯電防止層とは反対側に、乾燥後の波長950nmにおける透過率が4.3%(塗工量:8.0g/m2)になるように直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥して近赤外線吸収フィルムを作成し、更に、ポリプロピレン製の直径6インチの円筒状コアに近赤外線吸収フィルムを巻き付け、幅が1.3m、長さ2000mの近赤外線吸収フィルムロールを作成した。
(近赤外線吸収層用の塗布液C)
下記の質量比で混合し、30分以上攪拌して色素を溶解させた。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗布液を作成した。
・トルエン 23.054質量%
・メチルエチルケトン 23.054質量%
・アクリル系樹脂 52.695質量%
(綜研化学製GS−1030、固形分濃度:30質量%、Tg:110℃)
・ジインモニウム塩化合物 0.731質量%
(日本カーリット製、CIR−RL)
・フタロシアニン系色素 0.407質量%
(日本触媒製、IR−10A)
・界面活性剤 0.059質量%
(ダウコーニング製ペインタッド57、HLB:6.7)
得られた近赤外線吸収フィルムは、近赤外領域の吸収が強く、可視光領域の透過率に優れていた。さらに、経時安定性と耐環境性に優れ、微小欠点も少なく良好であった。また、ロール形態での保存安定性も良好であった。近赤外線吸収フィルム及びロールの物性を表1、表2に示す。
実施例2
帯電防止層の乾燥後の塗布量が0.02g/m2 になるように調整したこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。なお、帯電防止層を積層した後の表面抵抗は、4.3×1010Ω/□であった。
得られた近赤外線吸収フィルムは、実施例1と同様に、経時安定性と耐環境性に優れ、微小欠点も少なかった。
実施例3
実施例1において、コアを紙製の円筒状コアを用いたこと以外は、実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムロールを作成した。
得られた近赤外線吸収フィルムは、実施例1と比べ、巻芯部での微小欠点が増えていた。
実施例4
実施例1において、フィルムの製造時に両端部に凹凸処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムロールを得た。
得られた近赤外線吸収フィルムは、実施例1と比べ、保存安定性が若干悪化していた。
実施例5
実施例1において、帯電防止剤としてITO微粒子含有樹脂(触媒化成製、ELCOM P−120)を使用すること以外は実施例1と同様にして近赤外吸収フィルムを得た。
得られた近赤外吸収フィルムは、実施例1と比べ、導電性に優れたものであったが透明性が若干悪化していた。
実施例6
実施例1において、帯電防止剤としてATO微粒子(触媒化成製、TL20)を含有した樹脂を使用すること以外は実施例1と同様にして近赤外吸収フィルムを得た。
得られた近赤外吸収フィルムは、実施例1と比べ、導電性に優れたものであったが透明性が若干悪化していた。
実施例7
実施例1において、帯電防止剤として酸化亜鉛粒子(ハクスイテック製、パゼットGK)を含有した樹脂を使用すること以外は実施例1と同様にして近赤外吸収フィルムを得た。
得られた近赤外吸収フィルムは、実施例1と比べ、導電性、及び透明性に若干劣るものであった。
比較例1
実施例1において、帯電防止層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。なお、近赤外線吸収層を積層する前の透明基材フィルムの表面抵抗は、1014Ω/□以上であり、帯電防止性に劣っていた。
そのため、ロール状に巻き取った近赤外線吸収フィルムを巻き出した際に、7kVの帯電が発生した。その結果、巻き出し後の近赤外線吸収フィルムは、空気中の異物を静電気で表面に吸着し、微小欠点の個数が増加した。
比較例2
実施例1において、帯電防止層の形成用塗布液として、下記の塗布液Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収フィルムを得た。帯電防止層形成後の表面抵抗は、4.2×108Ω/□であった。
(帯電防止層用の塗布液D)
・水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 45.0質量%
・カチオン性高分子帯電防止剤 5.0質量%
(三洋化成製、ケミスタット6300H)
得られた近赤外線吸収フィルムは、帯電防止剤としてカチオン性帯電防止剤を用いたため、ロール形態で近赤外線吸収層中のジインモニウム塩化合物が劣化し、保存安定性が不良となった。また、高温高湿下で帯電防止層の表面の白化が観察された。
比較例3
実施例1において、帯電防止層の形成用塗布液として、下記の塗布液Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして近赤外線吸収層を得た。帯電防止層形成後の表面抵抗は、4.1×1013Ω/□であった。
(帯電防止層用の塗布液E)
・水 50.0質量%
・イソプロピルアルコール 45.0質量%
・アニオン性高分子帯電防止剤 5.0質量%
(三洋化成製、ケミスタットSA−9)
得られた近赤外線吸収フィルムは帯電防止性に劣っていたため、ロール状に巻き取った近赤外線吸収フィルムを巻き出した際に、5kVの帯電が発生した。その結果、巻き出し後の近赤外線吸収フィルムは、空気中の異物を静電気で表面に吸着し、微小欠点の個数が増加した。さらに、帯電防止剤としてアニオン性帯電防止剤を用いたため、近赤外線吸収層中のジインモニウム塩化合物が劣化し、ロール形態での保存安定性が不良となった。
Figure 0004983046
Figure 0004983046
本発明の近赤外線吸収フィルムは、近赤外領域の透過率が低く、可視光領域の透過率が高く、かつ、塗工外観が良好であるため、近年の高画質、高精細化されたプラズマディスプレイの前面に設置しても欠点の無い良好が映像を表現でき、かつ、近赤外線リモコンを用いる電子機器の誤動作を防止することができ、産業界に寄与することが大である。

Claims (3)

  1. 透明基材フィルムの片面に近赤外線吸収層を、他面に表面抵抗が1×10〜1×1012Ω/□である帯電防止層を積層してなる長さ50m以上5000m以下の近赤外線吸収フィルムを巻き取ってなる近赤外線吸収フィルムロールであって、
    該近赤外線吸収フィルムロールは近赤外線吸収層と帯電防止層を接触させながら円筒状コアにロール状に連続的に巻き取ってなるものであり、
    近赤外線吸収層は樹脂および近赤外線吸収色素を構成成分とし、かつ近赤外線吸収色素がジインモニウム塩化合物を含み、
    帯電防止層は金属酸化物微粒子及び樹脂を含有することを特徴とする近赤外線吸収フィルムロール。
  2. 金属酸化物微粒子が、ATO、ITO、ZnO、SnO2から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収フィルムロール。
  3. 透明基材フィルムの片面に近赤外線吸収層を、他面に帯電防止層を積層してなる近赤外線吸収フィルムロールの製造方法であって、
    透明基材フィルムの該他面に金属酸化物微粒子及び樹脂を含有する帯電防止層を設けた後、透明基材フィルムの該片面に樹脂およびジインモニウム塩化合物を含む塗布液を塗布、乾燥し、
    近赤外線吸収層と帯電防止層とを接触させながら円筒状コアにロール状に連続的に巻き取る工程を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルムロールの製造方法。
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