JP4741054B2 - ゴム粉末ならびに微粉状充填剤含有ゴムおよび加硫性ゴム混合物の製造法 - Google Patents
ゴム粉末ならびに微粉状充填剤含有ゴムおよび加硫性ゴム混合物の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ケイ素化合物で変性されたシリケート充填剤および/またはカーボンブラックを多量に含有するゴム粉末の製造法、こうして製造されたゴム粉末およびその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
少量の充填剤を含有する粉末ゴム(ゴム粉末)の製造は原則的には既に公知である(ドイツ連邦共和国特許第3723213号明細書、なおまだ公開されていないドイツ連邦共和国特許出願第19843301.8号)。これらの生成物は、一般に、充填剤(とりわけ沈降ケイ酸)およびゴム−ラテックスを含有する水性エマルションから段階的な沈殿を経て取得される。
【0003】
これらの生成物中に、ゴムは、充填剤(例えばケイ酸および/またはカーボンブラック)と比較して主要な割合または少なくとも実質的な割合になるべきである。充填剤の量は、好ましくは、通常のゴム混合物中の濃度に相応するように選択される。
【0004】
この種類のこれらの粉末状生成物への関心は、ゴム工業における加工技術からもたらされる。そこで、ゴム混合物は、多大な所要時間、エネルギー消費および人件費を伴い製造される。このための主な理由は、原料ゴムが球状の形で存在し、架橋性混合物の別の成分がローラーまたは密閉式混合機で、複数の処理段階で混合されなければならないことにある。
【0005】
90年代の最初から、タイヤトレッド混合物中で高活性沈降ケイ酸を二官能性オルガノシランと組合せて使用することにより、転がり抵抗(ガソリン節約)および濡れ滑り挙動が改善されてきている[ドイツ連邦共和国特許出願公開第4334201.9号明細書および同第4427137.9号明細書]。
【0006】
その際、ビス−(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(TESPT)は、これらの用途の最も重要な代表例である。
【0007】
TESPTは、混合物製造中に、そのトリエトキシシリル基を介してケイ酸のシラノール基と反応する。
【0008】
このいわゆるシラン処理(Silanisierung)反応または変性反応の際に、エタノールが化学量論的な量で遊離し、このことは、この反応がゴム混合物の製造の際にはじめて進行する場合に、作業場所での多大な安全面の予防措置を必要としうる。
【0009】
従って、ゴム工業は、近い将来のうちに是正しようと努力している。1つの可能性は、吸引装置および後焼却装置の設置またはバイオフィルターの取付けにある。これは、それぞれの混練機管路(Kneterlinie)に行わなければならないので、費用は相応して高くなる。2番目の可能性は、原料供給業者が、シラン処理反応、すなわちケイ酸とシランとの間の反応を実施し、遊離したアルコールを捕集し、かつ廃棄物処理するかまたは再利用に供給することにある。
【0010】
シリケート充填剤、とりわけ高活性沈降ケイ酸の変性方法は、文献において公知である。しかしながら、これらの生成物は、経済的、しかしとりわけ技術的理由から市場には浸透していない。
【0011】
欧州特許第04421433号明細書は、乾燥ケイ酸にシランを塗布し、引続き高められた温度で、エタノールを除去しながら反応させる方法に関する。出発材料としてすでに乾燥したケイ酸を使用するという経済的な欠点に加えて、こうして製造された生成物の不十分な貯蔵安定性およびそれに付随するゴム工業的な値の劣悪化という付加的な欠点が存在する。
【0012】
予め変性されたケイ酸を製造するという別の可能性は、湿式シラン処理である。欧州特許第0177674号明細書は、特別な乳化剤を用いて、ケイ酸およびシランを均質化し、引続き高められた温度で生成物の乾燥と同時に反応を実施する方法に関する。米国特許第3567680号明細書には、反応に適したものとして特別な水溶性メルカプトシランが記載されている。
【0013】
しかしながら、また、実地に示されているように、これらの方法により製造された生成物は、さほど貯蔵安定ではない。試験により、TESPTは双方の方法において、殊に高い使用量の場合に、ケイ酸表面のOH基とやっと完全に反応しうるにすぎないことが示されている。これらの未反応のシラン部分は、貯蔵過程で塊重合する傾向があり、ケイ酸の望ましい変性にもはや利用されない。その結果、ゴム工業的な指標(Wertebild)が低下する。欧州特許第0177674号明細書による水中でのシラン処理の場合には、ケイ酸粒子は水中で強く凝集し、従って、特に高い分散密度の場合にシラン処理に適した粒径で存在しない。そのように予め変性された生成物を混合導入する場合には、粒子が機械的に崩壊し、かつ変性されないかまたは不十分にのみ変性されたケイ酸粒子が露出する。この結果は、ゴム工業的な指標における性質の明らかな低下である。
【0014】
未反応のシラン含分が、シラン処理、特にTESPTでシラン処理したケイ酸であるという事実は、予め変性された生成物の製造のための別の新しい取り組み方であると理解される。ドイツ連邦共和国特許第19609619.7号明細書では、シラン、とりわけTESPTの反応度を明らかに高めること、すなわちできるだけ多くのエトキシ基を反応させる試みがなされている。このことは、2〜5の範囲にpH値を低下させることにより可能である。これらのpH値の場合に、迅速かつ広範囲でシランとケイ酸との反応が行われる。
【0015】
しかしながら、実地に示されているように、シランは低いpH値で塊重合する傾向にある。このことは、ケイ酸が望ましい方法で変性されず、従ってゴム工業的な指標が不十分であることをまねく。
【0016】
要約すると、殊に、全体として回避すべきかまたは解決すべき次のような問題が存在する。
【0017】
−シラン処理の際のケイ酸の凝集挙動の低減
−シランの塊重合の回避
−シランとシリケート表面との完全な反応
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、充填剤、殊に沈降ケイ酸および/またはカーボンブラックを、極めて高い充填度で含有するゴム粉末の製造法、該粉末および該粉末の使用を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の対象は、
a)まず最初に、シリケート化合物および/またはカーボンブラックおよび水から、固体に対して0.5〜10%、殊に5〜7%の懸濁液密度を有する充填剤懸濁液を撹拌しながら製造し、場合により固体粒子を予め適した粉砕装置を用いて粉砕し(解凝集させ)、場合により付加的に水素橋を形成する化合物、例えばポリアルコールまたは多価アミンを、充填剤100部に対して0.5〜10部の量で、懸濁液に添加し、場合により懸濁液を25〜95℃の範囲の温度に昇温させ、
b)引続き、懸濁液がシリケート充填剤を含有する場合には、少なくとも1つのアルコキシ基を有する式(I)〜(III)による1つまたはそれ以上の有機ケイ素化合物を、水中に溶解させるか、または場合により表面活性物質の存在下に水中に乳化させ、充填剤または該充填剤とカーボンブラックとの混合物の上記水性懸濁液で、10〜60℃の温度で、好ましくは室温で、撹拌しながら混合し、
c)こうして製造された該懸濁液をポリマーラテックス、ポリマーエマルションまたはポリマー溶液と混合し、この混合物のpH値を酸または上記の塩の1つの水溶液、殊にルイス酸で、pH値を7〜4、好ましくは6.5〜4.5に低下させ、混合物中にあるゴムを場合により上記の有機ケイ素化合物で変性した充填剤と一緒に沈殿させ、
d)沈殿した固体を公知の処置で分離し、かつ
e)充填剤含有ゴムを乾燥させる
ことにより特徴付けられる、元素の周期表の第IIa、IIb、IIIaおよびVIII族から選択される金属の水溶性塩の添加により、酸化物充填剤、殊にシリケート充填剤および/またはカーボンブラックを懸濁液、ゴム(ポリマー)の水性エマルジョンまたはゴム溶液の形で含有する水含有混合物から沈殿させることによって微粒状ゴム(ゴム粉末)を製造する方法である。
【0020】
また、上記の有機ケイ素化合物で、既に予め変性したシリケート充填剤を使用することも可能である。
【0021】
ポリオールとして、好ましくはヘキサントリオール、グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはポリワックス(Polywax)4000(長鎖の炭化水素)が使用される。多価アミンとして、例えばo−トリル−ビグアニジン、ヘキサ(Hexa)K、DOTG(ジ−o−トリルグアニジン)、DPG(ジフェニルグアニジン)またはTEA(トリエタノールアミン)が適している。
【0022】
好ましい実施態様において、こうして製造され、水性媒体中にある粉末ゴムに、分離および乾燥前に、付加的に、ポリスチレン、異なる組成のポリスチレンブタジエンコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは異なる化学組成のポリビニルアセテートを含有する水性プラスチックエマルジョンが0.5〜10phr、殊に1〜4phrの量で添加される。これらは乾燥の際に、水吸収を妨害する被覆を形成する。
【0023】
懸濁液中の量比は、250phrを上回り、好ましくは400phr以上の充填剤含量を有する粉末ゴムが沈殿するように調節される。
【0024】
乾燥は、有利に、乾燥器中で130〜170℃のガス入口温度および50〜70℃のガス出口温度で行われる。生成物の温度は、40〜80℃を超えるべきではない。pH値および充填剤含量に依存した期間および沈殿過程の程度は、一連の測定の中で簡単に確認することができる。
【0025】
生成物は、粘着を回避するための別の付加的な処置を用いずに、易流動性粉末として生じる。熱エーテルでの粉末ゴムの抽出前または抽出後に、式(I)によるシラン中に含有される硫黄原子の定量測定により、例えば、変性のために使用されたシランは、実際には完全にケイ酸に化学結合して存在していることが示されている。
【0026】
別の充填剤として、場合により、ゴム工業から公知の、好ましくは微粒状形の(ふわふわした(Fluffy))カーボンブラックが使用されてよく、該カーボンブラックは、懸濁される前に、一般に機械的処理しないで平均粒径1〜9μm、有利に1〜8μmを有する。
【0027】
沈降ケイ酸は、有利に塩不含で洗浄されたフィルターケーキの形で使用されてよい。
【0028】
金属塩として、元素の周期表の第IIa、IIb、IIIaおよびVIII族の元素に由来するものが当てはまる。これらの族の分類は、旧IUPAC推奨に相応する(Periodisches System der Elemente, Verlag Chemie, Weinheim, 1985参照)。典型的な代表例は、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸コバルトおよび硫酸ニッケルであり、その際、アルミニウムの塩が好ましい。特に好ましくは、硫酸アルミニウムおよび別のルイス酸である。塩は、ゴム100質量部あたり0.1〜6.5質量部の量で使用される。
【0029】
所望のpH値に調節するためには、場合により付加的に鉱酸、例えば硫酸、リン酸および塩酸が使用され、その際、硫酸が特に好ましい。しかしながら、また、使用されるのは、カルボン酸、例えばギ酸および酢酸が使用されてもよい。
【0030】
酸の量は、水溶性金属塩、充填剤、使用されるオルガノシラン、ゴムおよび場合により存在するアルカリ金属シリケートの種類および量に向けられている。これらは、幾つかの方針を定める実験により簡単に算出されうる。使用されるラテックスの固体含量は、一般に20〜25質量%に達する。ゴム溶液の固体含量は一般に3〜20質量%であり、ゴムエマルジョンの固体含量は一般に5〜60質量%である。
【0031】
本発明による方法は、不連続的だけではなくて、連続的に実施されてよい。沈殿したゴム粉末は、有利に、まず最初に大部分の水から分離される。これは例えば遠心分離、フィルタープレスまたはデカンターにより行われてよい。引続き生成物は、残留湿分含量1%未満まで乾燥される。このことは、有利に、短時間の乾燥法、例えば流動層乾燥器を用いて行われる。しかしながら、沈殿したゴム粉末を事前に水分離せずに、直接に乾燥器、例えば噴霧乾燥器に供給し、かつ場合により粒状化することも可能である。
【0032】
同様に本発明の対象である本発明によるゴム粉末は、一般に、シリケート充填剤または酸化物充填剤、殊に沈降ケイ酸が使用される場合には、一般式
[R1 n(RO)3-nSi−(Alk)m−(Ar)p]q[B] (I)
R1 n(RO)3-nSi−(アルキル) (II)
または
R1 n(RO)3-nSi−(アルケニル) (III)
で示される1つまたはそれ以上の有機ケイ素化合物の使用下で製造され、
上記式中、
Bは−SCN、−SH、−Cl、NH2(q=1の場合)または−Sx−(q=2の場合)を表し、
RおよびR1は炭素原子1〜4個を有する分枝鎖状または非分枝鎖状のアルキル基、フェニル基を表し、その際、全ての基RおよびR1はそれぞれ同一または異なる意味を有していてよく、好ましくはアルキル基であり、
Rは、分枝鎖状または非分枝鎖状のC1〜C4−アルキル、−C1〜C4−アルコキシ基を表し、
nは0;1または2を表し、
Alkは炭素原子1〜6個を有する2価の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基を表し、
mは0または1であり、
Arは炭素原子6〜12個を有するアリーレン基を表し、
pは0または1であり、ただしp、mまたはnは同時に0を表さない、
xは2〜8の数であり、
アルキルは炭素原子1〜20個、好ましくは炭素原子2〜8個を有する1価の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を表し、
アルケニルは炭素原子2〜20個、好ましくは炭素原子2〜8個を有する1価の直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素基を表す。
【0033】
これらの化合物は、該化合物が水溶性である場合には、一般に溶液の形またはエマルジョンの形で使用され、その際、溶液またはエマルジョンは、シリケート充填剤またはシリケート充填剤とカーボンブラックとの混合物の懸濁液の存在下に形成されてもよい。
【0034】
エマルジョンまたは溶液は好ましくは室温で製造される。しかしながら、10〜60℃の温度も適している。使用される溶液または懸濁液中の有機ケイ素化合物の濃度は、使用されるシリケート充填剤の全量に対して0.5〜20質量%、好ましくは5〜12質量%に達する。
【0035】
エマルジョンまたは溶液のpH値は、充填剤懸濁液のpH値と同じように、弱酸性または弱アルカリ性の範囲内のエマルジョンの混合後に存在するが、しかし好ましくは約7のpH値で存在する。
【0036】
使用された概念「水に不溶性の」は以下のように理解すべきである:
有機ケイ素化合物(表面活性物質を有しない)と充填剤懸濁液との混合後に、充填剤粒子の周囲に、所望のpH範囲および濃度範囲内で澄明な溶液を形成しない。むしろ、水、固体および有機ケイ素化合物からなる分離した層のままである。上記の一般式Iによるオリゴスルフィド性オルガノシランは公知であり、かつ公知方法により製造されてよい。有利に使用されるオルガノシランの例は、例えば米国特許第3842111号明細書により製造可能な、ビス(トリアルコキシシリル−アルキル)オリゴスルフィド、例えばビス(トリメトキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィド、ビス(トリエトキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィド、ビス(トリメトキシ−エトキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィド、ビス(トリプロポキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィド、ビス(トリブトキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィド、ビス(トリイソプロポキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィドおよびビス(トリイソブトキシ−シリル−メチル)−オリゴスルフィド、その中でも特にそのジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド等、更にビス−(2−トリ−メトキシ−エチル)−オリゴスルフィド、ビス−(2−トリエトキシ−エチル)−オリゴスルフィド、ビス−(2−トリメトキシエトキシ−エチル)−オリゴスルフィド、ビス−(2−トリプロポキシ−エチル)−オリゴスルフィド、およびビス−(2−トリ−n−ブトキシ−エチル)−オリゴスルフィドおよびビス−(2−トリイソブトキシ−エチル)−オリゴスルフィド、その中でも特にそのジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド等、更にビス−(3−トリメトキシ−シリル−プロピル)−オリゴスルフィド、ビス−(3−トリエトキシ−シリル−プロピル)−オリゴスルフィド、ビス−(3−トリメトキシエトキシ−シリル−プロピル)−オリゴスルフィド、ビス−(3−トリプロポキシ−シリル−プロピル)−オリゴスルフィド、ビス−(3−トリ−n−ブトキシ−シリル−プロピル)−オリゴスルフィドおよびビス−(3−トリイソブトキシシリル−プロピル)−オリゴスルフィド、その中でも特に再びジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド等からオクタスルフィドまで、更に相応するビス−(3−トリアルコキシシリルイソブチル)−オリゴスルフィド、相応するビス−(4−トリアルコキシシリルブチル)−オリゴスルフィドである。この中から選択され、相対的に簡単に合成される一般式Iのオルガノシランは、再び好ましくはビス−(3−トリメトキシ−シリルプロピル)オリゴスルフィド、ビス−(3−トリエトキシ−シリルプロピル)オリゴスルフィドおよびビス−(3−トリプロポキシシリルプロピル)オリゴスルフィド、その中でも特にそのジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィドおよびペンタスルフィド、殊に2、3または4個の硫黄原子を有するトリエトキシ化合物およびその混合物である。Alkは、一般式I中で、炭素原子1〜6個を有する直鎖状または分枝鎖状の2価の炭化水素基を表し、有利に炭素原子1〜4個を有する直鎖状の炭素鎖を有する飽和アルキル基を表す。
【0037】
また、特に適しているのは、ドイツ連邦共和国特許出願公告第2558191号明細書に従って製造可能な、以下の構造式
【0038】
【化1】
【0039】
を有するシランおよびそのメトキシ類似物である。これらの化合物は水溶性ではない。
【0040】
表面活性な物質として、一般的かつこの場合に、好ましくは非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤が使用される。エマルジョン中の該界面活性剤の濃度は、オルガノシラン化合物の量に対して1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%である。
【0041】
このような界面活性剤の例は、
アルキルフェノールポリグリコールエーテル、
アルキルポリグリコールエーテル、ポリグリコール、
アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、
アルキルベンジルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素アルキル、硫酸アルキルである。
【0042】
変性すべき天然のもしくは沈降した酸化物充填剤またはシリケート充填剤は、また2つまたはそれ以上のこの充填剤の混合物としても、ゴム工業に公知の充填剤である。実質的にこれらの適性の前提条件は、有機ケイ素化合物のアルコキシ基と反応することができる充填剤粒子表面のOH基の存在である。ゴムと相溶性であり、この使用のために必要であり、かつ公知の微粒度を有する酸化物充填剤およびシリケート充填剤があてはまる。
【0043】
天然シリケートとして、特にカオリンまたは粘土が適している。しかしながら、キーゼルグール(Kieselgur)または珪藻土(Diatomeenerde)も使用されてよい。
【0044】
酸化物充填剤として、例示的に、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウム三水和物および二酸化チタンを挙げることができる。
【0045】
「変性された充填剤」は、これに関連して、オルガノシラン化合物が、化学的反応(OH基)によるかまたは表面への吸着により結合されていることを意味する。
【0046】
吸着により結合された基は、遅くとも乾燥段階により化学結合に変換される。
【0047】
エマルジョンまたは溶液は、有機ケイ素化合物の濃度が充填剤量に対して0.5〜20質量%、好ましくは5〜12質量%であるような量で、充填剤懸濁液と混合される。変性された充填剤は、乾燥した充填剤に対して有機ケイ素化合物0.5〜20質量%、好ましくは0.5〜12質量%を含有する。
【0048】
上記の変性された充填剤は、架橋可能で成形可能なゴム混合物の使用に特に適している。
【0049】
本発明による方法には、有利に、ケイ酸沈殿からなり、酸不含で洗浄されたフィルターケーキが使用される。
【0050】
また、適しているのは、例えば天然充填剤、例えば粘土の後処理の際に得られるような懸濁液である。
【0051】
従って、技術水準に比べて、エネルギーを消費する乾燥段階が節約される。
【0052】
使用されるケイ酸は、ゴム分野から公知である。
【0053】
該ケイ酸は、一般に、公知のBET法により測定されたN2表面積35〜700m2/g、CTAB表面積30〜500m2/g、DBP数150〜400ml/100gを有する。
【0054】
本発明による生成物は、ゴム100部に対して、このケイ酸を250部を上回り5000部まで、殊に400〜1000部の量で含有する。
【0055】
白色の天然充填剤、例えば、2〜35m2/gのN2表面積を有する粘土またはケイ酸質白亜(Kieselkreide)が当てはまり、これらは好ましくはゴム100部に対して400〜1250部の量で使用される。
【0056】
また、製造可能なのは、シリケート充填剤、殊にケイ酸および混合物でのカーボンブラックまたはカーボンブラックのみを含有する充填剤含有ゴム粉末である。この際、充填剤の全量は、250phrを上回り5000phr、殊に2000phrまでで存在していてよい。ケイ酸の含分は、これが存在する場合には、一般に250phrを上回り1250phrまでに達する。
【0057】
1000phrを上回る充填度のためには、殊にカーボンブラックは充填剤として選択され、カーボンブラックは一般に250phrを上回り1000phrまでで使用される。
【0058】
特に適しているのは、例えば一般にゴム加工において使用されるようなカーボンブラックである。
【0059】
これには、5〜1000m2/gのヨウ素吸着数、15〜600m2/gのCTAB数、30〜400ml/100gのDBP吸着量および50〜370ml/100gの24M4 DBP数を有するファーネスブラック、ガスブラックおよびランプブラックが属する。
【0060】
次の種類のものは、単独でまたは相互に混合物で、ゴムの種類として使用可能なことおよび水性エマルジョンとして挙げることができることが証明されている:
天然ゴム、10〜50%のスチレン含分を有するエマルジョン−SBR、ブチル−アクリロニトリル−ゴム。
【0061】
ブチルゴム、エチレン、プロピレン(EPM)および非共役ジエン(EPDM)からなるターポリマー、ブタジエンゴム、溶液重合法により製造され、スチレン含量10〜25%ならびに1,2−ビニル成分含量20〜55%を有するSBR、およびイソプレンゴム、殊に3,4−ポリイソプレン。
【0062】
特に適しているのはエマルジョン−SBRおよび溶液−SBRである。
【0063】
溶剤法により製造されるポリマーの場合に、加工の際に、溶剤含量のために特別な予防措置を講じるべきである。
【0064】
上記のゴムに加えて、単独でまたは混合物の次のエラストマーが当てはまる:カルボキシルゴム、エポキシドゴム、トランス−ポリペンテナマー(Polypentenamer)、ハロゲン化ブチルゴム、2−クロロブタジエンからなるゴム、エチレン−ビニルアセテート−コポリマー、エピクロロヒドリン、場合により化学的に変性された天然ゴム、例えばエポキシ化された種類。本発明によるゴム粉末は、一般に25μm〜3000μm、殊に500〜1000μmを有し、かつすでに挙げられた充填剤に加えて、場合によりゴム加工工業において公知の加工助剤または加硫助剤、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ポリアルコール、ポリアミン、可塑剤、熱、光または酸素およびオゾンに対する老化防止剤、強化用樹脂、難燃剤、例えばAl(OH)3およびMg(OH)2、顔料、多様な架橋性薬品、および場合によりゴム工業で通常の濃度での硫黄を含有していてよい。これらは、ゴム粉末の沈殿前に、もちろんそのpH安定性を考慮に入れて、好ましくは充填剤を含有する懸濁液に添加される。
【0065】
本発明によれば、微粉状で、有機ケイ素化合物で変性されたシリケート充填剤および/またはカーボンブラックを含有するゴム粉末を製造することに成功し、該ゴム粉末は、これらの形で、強化充填剤として全ての常用のゴムの種類と組み合わせて使用することも可能である。殊に、シラン処理されたケイ酸を含有するゴム粉末は、高い貯蔵安定性により特徴付けられ、アルコールのたいした分解なしに簡単に加工可能であり、かつこれらの使用下で製造された加硫物の卓越したゴム工業的な指標をもたらす。
【0066】
本発明を用いて、ゴム加工工業においてポリマー結合し、場合により変性された充填剤の提供を含む新規の開発にきっかけを与える。
【0067】
古典的な混合プロセスとは対照的に、粉末ゴム技術のみを用いて、充填度が250phrを上回り、殊に400〜1250phrの高活性ケイ酸充填剤で成功する。このことは、それぞれ充填剤粒子の沈殿後に、高い充填度にもかかわらず、依然として希釈したゴム層に取り囲まれていることを意味している。これらの場合に、ポリマーによる充填剤の被覆が挙げられてよい。このような方法で、場合により撥水性被覆を備えており、通常の充填剤のように古典的な混合プロセスおよびそれぞれ任意のゴム中で加工されてよい粉末状ではない充填剤が得られる。
【0068】
以下の例において、本発明がそこに記載されている処置に制限されることなく、本発明の実施可能性および利点が説明される。
【0069】
【実施例】
製造の際に使用された原料
E−SBR スチレン含量23.5%を有するエマルジョン−スチレンブタジエンラテックス(BSL)
Si69 ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(Degussa-Huels AG)
Si75 ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(Degussa-Huels AG)
ウルトラシル(Ultrasil)7000 乾燥した、またはフィルターケーキとしての、175m2/gのN2表面積(BET)および改善された分散性を有する沈降ケイ酸(Degussa-Huels)、
マルリパル(Marlipal)1618/25 乳化剤:脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル
例I
E−SBR、ウルトラシル(Ultrasil)7000およびSi69の使用下での粉末ゴム(EPB I)の製造
撹拌しながら、水272l中の7000フィルターケーキ 22.5kg、Si69 1.8kgおよびマルリパル(Marlipal)1618/25 0.225kgからなる安定な懸濁液を製造する。
【0070】
引続き、この懸濁液を、21%のE−SBRラテックスエマルジョンE−SBR−1500 13.62kgと激しく撹拌しながら混合し、その後10%のAl2(SO4)3溶液の添加によりpH値を5.0に低下させる。
【0071】
沈殿過程後に、大部分の水の機械的分離を行い、残留水分1%未満への乾燥工程が続く。粉末状で、易流動性の生成物は、ケイ酸100部に対して、E−SBR100部、ケイ酸750部およびSi69 8部を含有する。反応は、シランがケイ酸に完全に結合して存在するように行われた。
【0072】
例II
E−SBR、ウルトラシル(Ultrasil)7000フィルターケーキおよびSi75の使用下での粉末ゴムの製造
撹拌しながら、水272l中の7000フィルターケーキ103kg、Si75 1.8kgおよびマルリパル(Marlipal)1618/25 0.225kgからなる安定な懸濁液を製造する。
【0073】
引続き、懸濁液を21%のE−SBRラテックスエマルジョン13.71kgと激しく撹拌しながら混合し、その後10%Al2(SO4)3溶液を添加することにより最終pH値を5.0に低下させる。沈殿過程後に、水の機械的分離が行われ、残留水分1%未満への乾燥段階が続く。
【0074】
粉末状生成物は、ケイ酸100部に対してE−SBR 100部、ケイ酸750部、Si75 8部を含有する。反応は、シランが完全にケイ酸に結合して存在するように行われる。
【0075】
ゴム工業的な使用において、次の生成物が使用された:
薬品
E−SBR 1500 スチレン含量23.5%を有するスチレン−ブタジエンゴム
ナフトレン(Naftolen)ZD 芳香族性鉱油可塑剤
EPB I KS(ケイ酸)100部に対して、E−SBR1500 100部、ウルトラシル(Ultrasil)7000 750部からなり、Si69 8部と反応させた粉末ゴム
6PPD N−(1,3−ジメチルブチル)N−フェニル−p−フェニレンジアミン
CBS ベンゾチアジル−2−シクロヘキシルスルフェンアミド
DPG ジフェニルグアニジン
TBZTD テトラベンジルチウラムジスルフィド
ブナ(Buna)VSL 5025−1 1,2−ビニル含分50%および25スチレンを有し、油で希釈した溶液−SBR(Bayer AG)
ブナ(Buna)CB24 ブタジエンゴム(シス>96%)(Bayer AG)
次のゴム工業的試験法を使用した:
ムーニー粘度 DIN 53523/3
引張試験 DIN 53504
モジュラス300%、モジュラス300/100% DIN 53504
ショア硬さ DIN 53505
分散度(Philips)ISO/DIN 11345
破断伸び DIN 53504
バルカメータ曲線(Vukameterkurve) DIN 53529
ボール反発弾性 ASTM D 5308
粘弾性 DIN 53513
例A
標準混合物に対する本発明による生成物(製造例1)のゴム工業的な指標の比較
【0076】
【表1】
【0077】
混合法
段階
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
ゴム工業的データ
加硫:165℃、15分間
【0081】
【表4】
【0082】
本発明による生成物の使用下に製造された加硫物では、ゴム工業的試験において、標準に対してより高い強度の値および破断伸び値および卓越した力学的データが見い出される。標準実験に対して、粉末ゴムの使用の際に、エタノール発生は殆ど起こらない。
Claims (16)
- 1つまたはそれ以上のシリケート充填剤を、充填剤の種類が合成充填剤である場合には250phrを上回り5000phrまでの量で、または天然充填剤である場合には350phrを上回り5000phrまでの量で含有しており、
その際、該充填剤表面は、一般式
[R1 n(RO)3-nSi−(Alk) m ] q[B] (I)
[上記式中、
Bは−Sx−(q=2)を表し、
RおよびR1は炭素原子1〜4個を有する分枝鎖状または非分枝鎖状のアルキル基、フェニル基を表し、その際、全ての基RおよびR1はそれぞれ同じかまたは異なる意味を有していてよく、
Rは分枝鎖状または非分枝鎖状のC1〜C4−アルキル、分枝鎖状または非分枝鎖状のC1〜C4−アルコキシ基を表し、
nは0;1または2であり、
Alkは炭素原子1〜6個を有する2価の直鎖状または分枝鎖状の炭化水素基を表し、
mは0または1であり、
但しmおよびnは同時に0を意味しない、
xは2〜8の数である]で示される1つまたはそれ以上の有機ケイ素化合物で変性されていることを特徴とする、ゴム粉末。 - さらにカーボンブラックを250phrを上回り5000phrまでの量で含有しており、その際、充填剤の全量は5000phrを上回らない、請求項1記載のゴム粉末。
- ポリスチレン、ポリスチレンブタジエンコポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる層で被覆されている、請求項1または2記載のゴム粉末。
- 1つまたはそれ以上の加工助剤もしくは加硫助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ポリアルコール、ポリアミン、可塑剤、熱、光に対する老化防止剤、強化用樹脂、難燃剤(Al(OH)3、Mg(OH)2)、場合によりゴム工業において常用の濃度の硫黄を含有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のゴム粉末。
- 25〜3000μmの粒度範囲で存在する、請求項1から4までのいずれか1項記載のゴム粉末。
- 2〜10mmの粒状化した形で存在する、請求項1から5までのいずれか1項記載のゴム粉末。
- 周期表の第IIa、IIb、IIIaおよびVIII族から選択される金属の水溶性塩を添加することにより、ゴム(ポリマー)の懸濁液、ゴムの水性エマルジョンまたはゴム溶液の形で充填剤を含有する水含有混合物から沈殿させることによって請求項1記載の微粒状の充填剤を含有するゴム(ゴム粉末)を製造する方法において、
a)まず最初に、シリケート化合物および水から、固体に対して懸濁液密度0.5〜10%を有する充填剤懸濁液を撹拌しながら製造し、場合により固体粒子を予め適した粉砕装置を用いて粉砕し(解凝集させ)、場合により付加的に水素橋を形成する化合物を充填剤100部に対して0.5〜10部の量で懸濁液に添加し、場合により懸濁液を25〜95℃の範囲の温度に昇温させ、
b)引続き、少なくとも1つのアルコキシ基を有する一般式(I)の1つまたはそれ以上の有機ケイ素化合物を水中に溶解させるか、または直接にもしくは場合により表面活性物質の存在下に水中に乳化させ、該充填剤の上記水性懸濁液と、10〜60℃の温度で、撹拌しながら混合し、
c)こうして製造された該懸濁液をポリマーラテックス、ポリマーエマルジョンまたはポリマー溶液と混合し、この混合物のpH値を酸または上記の1つの塩の水溶液で、7〜4のpH値に低下させ、かつ混合物中に存在するゴムを上記の有機ケイ素化合物で変性した充填剤と一緒に沈殿させ、
d)沈殿した充填剤含有ゴム粉末を公知の処置を用いて分離し、場合により酸不含で洗浄し、
e)こうして得られた充填剤を乾燥させ、場合により粒状化させることを特徴とする、請求項1記載の微粒状充填剤を含有するゴム(ゴム粉末)の製造法。 - 請求項7、a)の点に記載の懸濁液の製造のために、さらにカーボンブラックを使用する、請求項7記載の方法。
- 工程c)に引き続き、反応混合物に、ポリスチレン、異なる組成のポリスチレンブタジエンコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは異なる化学組成のポリビニルアセテートを含有する水性プラスチックエマルジョンを0.5〜10phrの量で添加する、請求項7または8記載の方法。
- 反応混合物中の充填剤濃度を:
a)合成ケイ酸またはその製造の際に生じるフィルターケーキを使用する場合には、250phrを上回り、
b)天然シリケート充填剤を使用する場合には、後処理の際に生じるスラリーの形で350phrを上回り、または
c)単独で、または上記の充填剤との混合物でのカーボンブラック250phrを上回り5000phrまで
に調節する、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。 - 表面活性物質として非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤を使用する、請求項7から10までのいずれか1項記載の方法。
- 沈殿工程前に、懸濁液にアルカリ金属シリケート溶液、好ましくは2:1〜1:4の比のNa2O:SiO2を有する水ガラスをゴム100部に対して5質量部までで添加する、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
- 沈降ケイ酸を、その製造の際に取得されたフィルターケーキの形で使用する、請求項7から12までのいずれか1項記載の方法。
- 請求項7、a)の点に記載の懸濁液の製造のために、式(I)による1つまたはそれ以上の有機ケイ素化合物で予め変性したシリケート充填剤を使用する、請求項7から13までのいずれか1項記載の方法。
- 充填剤の懸濁液、なお場合により該充填剤とポリマー(ゴム)との混合物に、しかし沈殿工程(cの点)の前に、1つまたはそれ以上の加工助剤もしくは加硫助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ポリアルコール、ポリアミン、可塑剤、熱、光に対する老化防止剤、強化用樹脂、難燃剤(Al(OH)3、Mg(OH)2)、場合によりゴム工業において常用の濃度の硫黄を添加する、請求項7記載の方法。
- 加硫性ゴム混合物を製造する方法において、
請求項1から6までのいずれか1項記載のゴム粉末を、充填剤として充填剤に常用の量で、場合により別の必要な公知の加工助剤および加硫助剤を添加しながら、相応するゴムに加工することを特徴とする、加硫性ゴム混合物の製造法。
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