JP4740909B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の色調安定化方法及びポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明で使用するPAS樹脂とは、構造式[−Ar−S−](ただし、−Ar−は、アリーレン基である。)で表されるアリーレンスルフィドの繰り返し単位を主たる構成要素とする芳香族ポリマーである。[−Ar−S−]を1モル(基本モル)と定義すると、本発明で使用するPAS樹脂は、この繰り返し単位を通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含有するポリマーである。
本発明で使用するPAS樹脂組成物は、アセトン/水(容量比=1:2)混合溶媒中で測定したpHが5.5〜8.8の範囲内にあるものである。pHが5.5未満のPAS樹脂組成物を使用すると、280〜350℃の加工温度で溶融成形した場合、熱履歴の影響を強く受けて、成形品の色調が青白色から乳白色へと大きく変化し、商品価値が低下する。pHが8.8を超えるPAS樹脂組成物を使用すると、溶融成形により、褐色の色斑が発生しやすくなり、均一な色調の成形品を得ることが困難になる。したがって、pHが小さすぎても、大きすぎても、ロットごとに成形品の色調のバラツキが発生しやすくなる。さらに、pHを前記限定された範囲内に調整することにより、PAS樹脂組成物の溶融流動性及び機械的物性を良好なものとすることができる。
本発明では、必要に応じて、充填剤、他の合成樹脂、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、核剤、難燃剤、樹脂改良剤、カップリング剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤などを適宜添加することができる。これらの他の成分を含有するPAS樹脂組成物は、そのpHが5.5〜8.8の範囲内にあることが、色調安定性の観点から必要である。
PAS樹脂組成物は、一般に合成樹脂組成物の調製に用いられる設備と方法により調製することができる。例えば、各原料成分をヘンシェルミキサーやタンブラー等により予備混合し、必要があればガラス繊維等の充填剤を加えてさらに混合した後、1軸または2軸の押出機を使用して混練し、押し出して成型用ペレットとすることができる。必要成分の一部をマスターバッチとしてから残りの成分と混合する方法、また、各成分の分散性を高めるために、使用する原料の一部を粉砕し、粒径をそろえて混合し溶融押出することも可能である。
本発明のPAS樹脂成形品は、pHが5.5〜8.8の範囲内にあるPAS樹脂組成物を用いて、射出成形や押出成形などの一般的溶融成形加工法により、各種形状の成形品、シート、フィルム、チューブなどの成形品に成形加工することができる。
溶融粘度は、各サンプルについて、キャピログラフ1C(東洋精機社製)を用い、温度310℃、剪断速度1200sec−1の条件で測定した。
溶融結晶化温度(Tc2)は、各サンプルについて、パーキンエルマー製の示差走査熱量計(DSC7)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の速度で340℃まで昇温後、引き続き10℃/分の速度で50℃まで降温し、この降温時に現れる結晶化の発熱ピーク温度をチャートから読み取った。
各サンプルの引張強度は、ASTM D638に準拠し、測定温度23℃、標点間距離50mm、クロスヘッド速度5mm/分で測定した。
PAS樹脂20gに対し、アセトン50mlを添加して良く混合し、さらにイオン交換水100mlを加え、振盪機にて30分間振盪した後、上澄液60mlを分取し、そのpHを測定し、PAS樹脂のpHとした。PAS樹脂組成物については、各成分をヘンシェルミキサーで予備混合したもの20gを用いて、上記と同様の手順でそのpHを測定した。
PAS樹脂またはPAS樹脂組成物を射出成形して得られた成形品を目視にて観察し、その表面の色調安定性を評価した。
含水硫化ナトリウム(純度46.03重量%)373kgとN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記)880kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約203℃まで昇温しながら、水135kgを含むNMP溶液を溜出させた。次に、p−ジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略記)297kgを仕込み、220℃で4.5時間重合を行った。さらに、水47.5kgを圧入した後、255℃に昇温して4時間重合を行った。反応終了後、冷却し、反応液を目開き0.1mmのスクリーンで篩別して、粒状ポリマーを分離した。粒状ポリマーをメタノール洗浄3回(固液比1/5)及び水洗(固液比1/5)5回行って、ポリマースラリーを得た。次に、2%の塩化アンモニウム水溶液中に浸漬して、40℃で30分間処理(固液比1/5)した後、水洗(固液比1/5)3回行い、乾燥してポリマー(PPS−1)を得た。得られたPPS−1の溶融粘度は55Pa・sで、そのpHは4.5、溶融結晶化温度は255℃であった。
含水硫化ナトリウム(純度46.4重量%)370kg及びNMP1100kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約203℃まで昇温しながら、水分を含むNMP溶液を溜出させた。次に、p−DCB311kgを仕込み、220℃で5時間重合を行った。さらに、水4.4kgを圧入した後、255℃に昇温して5時間重合を行った。反応終了後、冷却し、反応液を目開き0.1mmのスクリーンで篩別して粒状ポリマーを分離した。粒状ポリマーをメタノール洗浄3回(固液比1/5)及び水洗(固液比1/5)5回行ってポリマースラリーを得た。次に、1%の塩酸水溶液中に浸漬して、40℃で60分間処理(固液比1/5)した後、水洗(固液比1/5)3回行い、乾燥してポリマー(PPS−2)を得た。得られたPPS−2の溶融粘度は200Pa・sで、そのpHは4.7、溶融結晶化温度は240℃であった。
含水硫化ナトリウム(純度46.2重量%)370kg及びNMP880kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温して、水127kgを含むNMP溶液を溜出させた。次に、p−DCB283kgを加えて、210℃で9時間重合させた。次いで、水50kgを重合系に添加した後、窒素雰囲気下で昇温して、260℃で5時間重合した。反応終了後、冷却し、内容物を濾過し、脱イオン水洗浄(固液比1/5)を5回実施した後、100℃で3時間乾燥して、ポリマー(PPS−3)を得た。得られたPPS−3の溶融粘度は145Pa・sで、そのpHは7.2、溶融結晶化温度は206℃であった。
含水硫化ナトリウム(純度46.03重量%)373kg及びNMP800kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約203℃まで昇温しながら、水142kgを含むNMP溶液を溜出させた。次に、p−DCB325kg、1,2,4−トリクロルベンゼン0.372kgとNMP255kgとの混合溶液を供給して、220℃で5時間重合を行った。次いで、水97kgを圧入した後、255℃に昇温して5時間重合し、しかる後、245℃に降温して5.5時間重合を継続した。反応終了後、冷却し、内容物を濾過し、脱イオン水洗浄(固液比1/5)を3回実施した後、乾燥し、ポリマー(PPS−4)を得た。得られたPPS−4の溶融粘度は450Pa・sで、そのpHは9.1、溶融結晶化温度は179℃であった。
合成例1〜4で得られた各PPS樹脂とガラスファイバー(市販のガラス繊維;径13μm、長さ3mm)を使用し、表2に示す配合処方によりPAS樹脂またはPAS樹脂組成物を準備した。PAS樹脂組成物は、所定量の各成分をヘンシェルミキサーにて5分間予備混合した。なお、ガラスファイバーを配合する場合には、ガラスファイバーを加えた後、2分間混合した。PAS樹脂及びPAS樹脂予備混合物を、シリンダー温度310℃の押出機に供給して、ペレットを作成した。各ペレットを射出成形機に供給して、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で射出成形して試験片を得た。各物性の測定結果を表2に示す。
Claims (3)
- ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形してなるポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の色調安定化方法であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として、それぞれアセトン/水(容量比=1:2)混合溶媒中でpH測定を行ったとき、pHが5.0以下のポリアリーレンスルフィド樹脂(a)5〜95重量%と、pHが7.1以上のポリアリーレンスルフィド樹脂(ただし、310℃における溶融粘度の剪断速度依存性値が2.2〜3.0であって、かつ、結晶化温度が175〜210℃の実質的に線状構造を有するものを除く)(b)95〜5重量%とからなる樹脂成分であって、かつ、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(b)100重量部に対して、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)20〜400重量部の割合で含有する樹脂成分を含有し、かつ、pHが5.5〜8.8の範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を用いることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の色調安定化方法。
- それぞれアセトン/水(容量比=1:2)混合溶媒中でpH測定を行ったとき、pHが5.0以下のポリアリーレンスルフィド樹脂(a)5〜95重量%と、pHが7.1以上のポリアリーレンスルフィド樹脂(ただし、310℃における溶融粘度の剪断速度依存性値が2.2〜3.0であって、かつ、結晶化温度が175〜210℃の実質的に線状構造を有するものを除く)(b)95〜5重量%とをブレンドし、その際、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(b)100重量部に対して、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)20〜400重量部の割合となるようにブレンドして、これら両樹脂からなる樹脂成分を含有し、かつ、pHが5.5〜8.8の範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を調製することを特徴とする色調安定性ポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の溶融成形に用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
- 該ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)とポリアリーレンスルフィド樹脂(b)とをブレンドするに際し、充填剤をさらにブレンドして、これら両樹脂からなる樹脂成分と充填剤とを含有し、かつ、pHが5.5〜8.8の範囲内にあるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を調製する請求項2記載の製造方法。
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