JP4737799B2 - 積層型圧電アクチュエータおよび噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型圧電アクチュエータおよび噴射装置に係わり、例えば、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止用の駆動素子、自動車用エンジンの燃料噴射用の駆動素子等に使用される積層型圧電アクチュエータおよび噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、圧電体は、電圧を印加することにより伸縮する逆圧電効果を有している。しかしながら、圧電体1枚1枚の伸縮量は微量であることから、圧電体を複数枚積層して形成した積層型圧電アクチュエータを作製していた。この積層型圧電アクチュエータは、圧電体に電圧を印加して数〜数十μm伸長させ、アクチュエータの駆動力源とするものである。
【0003】
このような積層型圧電アクチュエータには、同時焼成タイプと、圧電板と電極薄板を交互に積層したスタックタイプの2種類に分類されており、厚みの薄い圧電板を多数枚積層することが比較的容易であることから低電圧高変位化、及び小型化が可能な同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータがその優位性を示しつつある。
【0004】
同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータとして、例えば、特公平4−51992号公報に記載されているように、電歪効果を示す圧電体と内部電極とが交互に積層され、一体に焼成された積層焼結体からなるアクチュエータ本体であって、各内部電極の形状が圧電体の積層方向に垂直な断面形状のうち、その外周部を含む一部分が除去された形状であり、また、各内部電極はその除去された部分が積層方向に対して、互いに隣り合う内部電極の間では重ならず、1層おきの内部電極の間では重なるように積層されており、アクチュエータ本体の側面上の前記除去された部分に対応する位置には、各内部電極を1層おきに接続する外部電極がそれぞれ形成されたアクチュエータが開示されている。
【0005】
また、特開平4−237172号公報には、アクチュエータ本体の側面に露出した内部電極の端部に1層おきにガラスからなる絶縁層を被覆し、外部電極には、絶縁層と同じピッチで、かつ絶縁層の断面よりやや大きい凹部を形成し、この凹部内に絶縁層を収容するようにして、かつ、凹部間の凸部に、絶縁層が形成されていない内部電極の端部を導電性接着剤で接着することにより、外部電極と一方の内部電極との電気的接続を確保し、他方の内部電極との絶縁性を確保した積層型圧電アクチュエータが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、積層型圧電アクチュエータは大きな変位量を確保した状態で、積層型圧電アクチュエータの特徴である高応答性を利用するため、高い電圧を高周波数で印加し駆動を行っている。このような、高電圧下で長期間連続駆動させた場合、圧電体間に形成された内部電極と正極、負極用の外部電極との間で剥離が発生し、一部の圧電体に電圧供給されなくなり、駆動中に変位特性が変化するという問題があった。
【0007】
また、特開平4−237172号公報に開示された積層型圧電アクチュエータでは、アクチュエータ本体の側面に露出した内部電極の端部には1層おきにガラスからなる絶縁層が被覆され、内部電極とその両側の圧電体が強固に接合されており、この絶縁層が外部電極の凹部内に収容されて、外部電極と内部電極との絶縁性が確保されていた。しかし、高電圧下で長期間連続駆動させた場合、ガラスからなる絶縁層に割れが生じ、この割れを介して内部電極と外部電極との間でショートし、積層体が破損するという問題があった。
【0008】
即ち、アクチュエータ本体は、圧電体と内部電極との積層方向に伸縮するため、内部電極の端部およびその近傍の圧電体に設けられた高ヤング率のガラスからなる絶縁層が、長期間連続駆動による伸縮動作に耐えきれずに破壊され、この破壊部分を介して内部電極と外部電極間でショートが発生し易いという問題があった。
【0009】
電圧印加時の内部応力による外部電極の断線防止を図った積層型圧電アクチュエータとして、特開平5−218519号公報に開示されるようなものが知られている。この積層型圧電アクチュエータでは、積層体の側面に形成された外部電極に、その外側に配置された金属板、金属線またはゴム状の導電性部材を、熱収縮チューブの収縮力により押し付けて導通されていた。
【0010】
このような積層型圧電アクチュエータでは、圧電板側面の変形を拘束しないようにすることができるので、導電性部材(外部電極)の断線を抑制することができるものの、導電性部材が金属板や金属線の場合、外部電極と導電性部材とを完全に密着することができず、外部電極と導電性部材との隙間で局所的に同極間によるスパークが発生し、圧電板を破損することにより、両極間にてショートを引き起こし、駆動できなくなるという問題があった。
【0011】
また、ゴム状の導電性部材を用いた場合には、ゴム状の導電性部材は金属板より比抵抗が非常に高いため、圧電板に電圧を印加しにくく、また、発熱しやすいため、積層型圧電アクチュエータの外部電極材として使用できないという問題があった。
【0012】
本発明は、外部電極の断線を防止できるとともに、圧電体の破損を防止できる積層型圧電アクチュエータおよび噴射装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の積層型圧電アクチュエータは、複数の圧電体と複数の内部電極とを交互に積層してなり、該内部電極が交互に第1内部電極または第2内部電極とされたアクチュエータ本体と、前記第1内部電極同士および前記第2内部電極同士をそれぞれ電気的に接続する一対の外部電極と、前記アクチュエータ本体および前記外部電極を被覆する熱収縮チューブとを具備する積層型圧電アクチュエータであって、前記外部電極を、前記アクチュエータ本体に形成され、前記第1内部電極同士および前記第2内部電極同士をそれぞれ電気的に接続する金属膜と、該金属膜に当接する、金属ウール、金属網、導電性ポリイミド樹脂の一種より構成されている導電性弾性体と、該導電性弾性体に当接する金属板とを具備して構成するとともに、前記熱収縮チューブにより、前記金属板を前記アクチュエータ本体の金属膜に押圧固定してなるものである。
【0014】
このような構成を採用することにより、内部電極の端部が露出した面に導電性の金属膜を被覆して形成し、導電性弾性体を、金属板を介して、熱収縮チューブで金属膜に押し付つけて外部電極を形成するため、金属膜と導電性弾性体を完全に密着させることができ、密着不良による同極間のスパークを防止することができる。
【0015】
また、導電性弾性体は、圧電板の高電圧、高応答下での連続駆動による変形を拘束しないため、外部電極に発生する繰り返し応力を緩和することができ、外部電極の断線を防止できる。
【0016】
本発明の積層型圧電アクチュエータは、金属板の熱収縮チューブ側の面が、熱収縮チューブ側に向けて凸となる円弧状であることが望ましい。このような金属板を用いることにより、熱収縮チューブによる押圧力が金属板の円弧状の面に均等に、かつ、金属板の中央部に向けて作用し、金属板と導電性弾性体との間に隙間が発生することを防止でき、金属板と導電性弾性体の密着不良による同極間のスパークを防止することができる。
【0017】
さらに、本発明の積層型圧電アクチュエータは、導電性弾性体として、金属網を用いることが望ましい。
【0018】
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された上記積層型圧電アクチュエータと、該積層型圧電アクチュエータの駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなるものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の積層型圧電アクチュエータの斜視図であり、図2は、熱収縮チューブの記載を省略した斜視図、図3は図1の縦断面図である。
【0020】
図1乃至図3において、符号1は四角柱状のアクチュエータ本体を示すもので、このアクチュエータ本体1は、熱収縮チューブAにより被覆されている。アクチュエータ本体1は、複数の圧電体2と複数の内部電極3a、3bとを交互に積層して構成され、このアクチュエータ本体1の対向する2つの側面には、第1内部電極3aが電気的に接続される金属膜6a、および第2内部電極3bが電気的に接続される金属膜6bが形成されている。
【0021】
金属膜6a、6bは、メッキ処理、金属コロイドの塗布、金属材料の蒸着及び導電性樹脂の塗布などにより形成されている。金属膜6a、6bの材質は導電性を有する金属であればよく、また金属膜6a、6bの厚みは1μm以上あればよい。金属膜6a、6bとしては、圧電板との接合強度を向上させるという点から、メッキ処理が望ましい。
【0022】
圧電体2は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3(以下PZTと略す)或いは、チタン酸バリウムBaTiO3を主成分とする圧電セラミック材料などが使用されるが、これらに限定されるものではなく、圧電性を有するセラミックスであれば何れでも良い。この圧電体材料としては、圧電歪み定数d33が高いものが望ましい。また、圧電体2の厚みt、つまり内部電極3aと内部電極3b間の距離は、小型化および高い電界を印加するという点から0.05〜0.2mmであることが望ましい。
【0023】
内部電極3a、3bは、アクチュエータ本体1の4つの側面全てに端部が露出しており、アクチュエータ本体1の金属膜6aが形成された側面には、内部電極3bの端部が露出する凹溝が形成され、また、アクチュエータ本体1の金属膜6bが形成された側面には、内部電極3aの端部が露出する凹溝が形成され、これらの凹溝内には絶縁体11が充填され、金属膜6aと内部電極3b、および金属膜6bと内部電極3aが絶縁されている。
【0024】
絶縁体11としては、ガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーンゴム等であり、低ヤング率の材質、例えばシリコーンゴム等が特に好ましい。
【0025】
また、アクチュエータ本体1の積層方向の両端面には、アクチュエータ本体1を機械的に保持し、発生する力を外部へ伝達するための不活性部13が積層され、接合されている。
【0026】
また、アクチュエータ本体1の側面に形成された金属膜6a、6bには、導電性弾性体15a、15bがそれぞれ当接し、これらの導電性弾性体15a、15bには金属板17a、17bがそれぞれ当接しており、金属膜6a、導電性弾性体15a、金属板17aから外部電極19aが形成され、金属膜6b、導電性弾性体15b、金属板17bから外部電極19bが形成されている。
【0027】
導電性弾性体15a、15bは、金属ウール、金属網、導電性ポリイミド樹脂の一種より構成されている。導電性弾性体15a、15bの材質は、高温による酸化を防止するために、ステンレス材、あるいは、コバール材が望ましい。
【0028】
熱収縮チューブAによる外力を導電性弾性体15a、15bに伝える金属板17a、17bは、高温による酸化を防止するために、ステンレス材、あるいは、コバール材が望ましい。また、金属板17a、17bは、熱収縮チューブAによる外力を均等に加えられるように、熱収縮チューブAと接する面を、図4(a)に示すように、熱収縮チューブA側に凸となる円弧状とすることが望ましい。金属板17a、17bには、それぞれリード線7が取り付けられている。
【0029】
さらに、図示されていないが、アクチュエータ本体1および外部電極19a、19bの外周面を、絶縁性樹脂によって被覆することにより、内部電極間の沿面放電を防止でき、これにより大きな電圧を印可することができ、高変位量を確保することが可能となる。この絶縁性樹脂は電圧印加による圧電板の変形を拘束しないような低ヤング率の材質、例えばシリコーンゴム等が好ましい。
【0030】
熱収縮チューブAは、外部電極19a、19bが形成されたアクチュエータ本体1の側面を被覆しており、加熱処理により収縮し、この収縮により金属板17a、17bがアクチュエータ本体1側に向けて押圧され、金属板17a、17bを介して、導電性弾性体15a、15bを金属膜6a、6bに密着させることができ、電気的に接続した状態となる。熱収縮チューブAは、高温、高湿の環境下においても、外部からの水蒸気の進入を防ぎ、内部電極材のエレクトロマイグレーションの発生を抑制する働きを持たせるために、水蒸気透過率が15×10-9cc・cm/sec・cm2・cmHg・ΔT以下の樹脂が望ましく、特に耐熱性の高いテフロンが望ましい。
【0031】
以上のように構成された積層型圧電アクチュエータは、以下のプロセスにより製造される。先ず、チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3などの圧電体セラミックスの仮焼粉末と、有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合したスラリーを作製し、スリップキャステイング法により、厚み50〜250μmのセラミックグリーンシートを作製する。
【0032】
このグリーンシートの片面に内部電極3となる銀−パラジウムを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法により1〜10μmの厚みに印刷する。この導電性ペーストを乾燥させた後、導電性ペーストが塗布された複数のグリーンシートを所定の枚数だけ積層し、この積層体の積層方向の両端部に、導電性ペーストが塗布されていないグリーンシートを積層する。
【0033】
次に、この積層体を50〜200℃で加熱を行いながら加圧を行い、積層体を一体化する。一体化された積層体は所定の大きさに切断された後、400〜800℃で5〜40時間、脱バイが行われ、900〜1200℃で2〜5時間で本焼成が行われ、アクチュエータ本体1となる積層焼結体を得る。このアクチュエータ本体1の側面には、内部電極3の端部が露出している。
【0034】
その後、該アクチュエータ本体1の2つの側面において、内部電極3端部を含む圧電体2の端部に該2側面において互い違いになるように、1層おきに深さ50〜500μm、積層方向の幅50〜300μmの凹溝を形成し、該凹溝内にシリコーンゴム等の絶縁体11を充填する。以上のように、内部電極3は互い違いに1層おきに絶縁される。
【0035】
この後、アクチュエータ本体1の2つの側面にメッキ処理により、Niの金属膜6a、6bを形成した後、アクチュエータの外周面にデイッピング等の方法により、金属膜6a、6b表面を除き、絶縁性樹脂を被覆し、ステンレス製の金属網からなる導電性弾性体15a、15b、ステンレス製の金属板17a、17bを順次金属膜6a、6b上に配置し、テフロン製の熱収縮チューブAで全体を取り巻き、加熱処理することで、熱収縮チューブAを収縮させ、金属板17a、17bを金属膜6a、6b側に押圧して外部電極19a、19bを形成する。
【0036】
この後、金属板17a、17bの端部にリード線7を接続した後、0.1〜3kVの分極電圧を印加し、アクチュエータ全体を分極処理することで、最終的な積層型圧電アクチュエータを得る。
【0037】
なお、本発明の積層型圧電アクチュエータは、四角柱、六角柱、円柱等、どのような柱体であっても構わないが、切断の容易性から四角柱状が望ましい。
【0038】
以上のように構成された積層型圧電アクチュエータでは、内部電極3の端部が露出した面に導電性の金属膜6a、6bを被覆して形成し、導電性弾性体15a、15bを、金属板17a、17bを介して、熱収縮チューブAで金属膜6a、6bに押し付つけて外部電極19a、19bを形成するため、金属膜6a、6bと導電性弾性体15a、15bを完全に密着させることができ、密着不良による同極間のスパークを防止することができる。
【0039】
また、導電性弾性体15a、15bは、圧電板2の高電圧、高応答下での連続駆動による変形を拘束しないため、外部電極19a、19bに発生する繰り返し応力を緩和することができ、外部電極19a、19bの断線を防止できる。
【0040】
さらに、金属板17a、17bを、熱収縮チューブAと接する面が、図4(b)に示すように、断面が矩形状の金属板を用いる場合には、熱収縮チューブAによる金属板17a、17bの押圧力は、金属板17a、17bの中央部では弱いため、金属板17a、17bと導電性弾性体15a、15b、この導電性弾性体15a、15bと金属膜6a、6bとの密着力が弱いが、図4(a)に示すように、熱収縮チューブA側に凸となる円弧状とすることにより、熱収縮チューブAによる押圧力が金属板17a、17bの円弧状の面に均等に、かつ、金属板17a、17bの中央部に向けて作用し、金属板17a、17bと導電性弾性体15a、15b、この導電性弾性体15a、15bと金属膜6a、6bとの密着力を向上でき、密着不良による同極間のスパークを防止することができる。
【0041】
図5は、本発明の噴射装置を示すもので、図において符号51は収納容器を示している。この収納容器51の一端には噴射孔53が設けられ、また収納容器51内には、噴射孔53を開閉することができるニードルバルブ55が収容されている。
【0042】
噴射孔53には燃料通路57が連通可能に設けられ、この燃料通路57は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路57に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ55が噴射孔53を開放すると、燃料通路57に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
【0043】
また、ニードルバルブ55の上端部は直径が大きくなっており、収納容器51に形成されたシリンダ59と摺動可能なピストン61となっている。そして、収納容器51内には、上記した圧電アクチュエータ63が収納されている。
【0044】
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ63が電圧を印加されて伸長すると、ピストン61が押圧され、ニードルバルブ55が噴射孔53を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ63が収縮し、皿バネ65がピストン61を押し返し、噴射孔53が燃料通路57と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
【0045】
【実施例】
チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3からなる圧電体セラミックスの仮焼粉末と、有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合したスラリーを作製し、スリップキャステイング法により、厚み150μmのセラミックグリーンシートを作製した。
【0046】
このグリーンシートの片面に内部電極3となる銀−パラジウムを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法により5μmの厚みに印刷し、導電性ペーストを乾燥させた後、導電性ペーストが塗布された複数のグリーンシートを100枚積層し、この積層体の積層方向の両端部に、導電性ペーストが塗布されていないグリーンシートを10枚積層した。
【0047】
次に、この積層体を100℃で加熱を行いながら加圧を行い、積層体を一体し、10mm×10mmの大きさに切断した後、800℃で10時間の脱バイを行い、1130℃で2時間で本焼成が行ない、アクチュエータ本体1となる積層焼結体を得た。
【0048】
その後、該アクチュエータ本体1の2つの側面において、内部電極3端部を含む圧電体2の端部に該2側面において互い違いになるように、1層おきに深さ100μm、積層方向の幅50μmの凹溝を形成し、この凹溝内に絶縁体材料を充填した。
【0049】
この後、内部電極3が交互に露出したアクチュエータ本体1の2つの側面に、Niを厚さ5μmでメッキし、金属膜6a、6bの表面を除いて、アクチュエータ本体1の外周面にデイッピング法により、シリコーンゴムを被覆した。
【0050】
この後、ステンレス製の金属網からなる厚み50μmの導電性弾性体15a、15b、ステンレス製の円弧形状に加工された金属板17a、17bを順次金属膜6a、6b上に置き、テフロン製の熱収縮チューブAで全体を取り巻き、加熱処理することで、熱収縮チューブAを収縮させ外部電極19a、19bを形成した。この後、金属板17a、17bにリード線7を接続し、1kVの分極電圧を印加し、アクチュエータ全体を分極処理して本発明の積層型圧電アクチュエータを得た。
【0051】
また、比較例として、同条件にて積層体を作製し、金属膜上に導電性弾性体のみを配置し、熱収縮チューブで締め付け固定した比較例1と、金属膜上に金属板のみを配置し、熱収縮チューブで締め付け固定した比較例2を作製した。
【0052】
得られた3種類の積層型アクチュエータの耐久性を比較するために、印加荷重300kgf下で、0Vから+200Vの直流電界を50Hzの周波数にて1×109 回印加する耐久試験を行った。その結果、本発明品は変位量30μmで1×109 回でも問題無く駆動するのを確認した。
【0053】
一方、金属膜上に導電性弾性体のみを配置し、熱収縮チューブで締め付け固定した比較例1では、1×107回にて駆動しなくなった。このアクチュエータの外周面を観察した結果、内部電極と外部電極の接続部付近が黒く焼けており、接触不良による同極間スパークにより積層体が破損していた。
【0054】
また、金属膜上に金属板のみを配置し、熱収縮チューブで締め付け固定した比較例2では、駆動前の状態で数層しか電気的に接続しておらず、駆動試験をストップした。尚、変位量の測定は、試料を防振台上に固定し、試料上面にアルミニウム箔を張り付けて、レーザー変位計により、素子の中心部及び周囲部3箇所で測定した値の平均値で評価した。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の積層型圧電アクチュエータでは、外部電極を、アクチュエータ本体に形成され、第1内部電極同士および第2内部電極同士をそれぞれ電気的に接続する金属膜と、該金属膜に当接する導電性弾性体と、該導電性弾性体に当接する金属板とを具備して構成するとともに、熱収縮チューブにより、金属板をアクチュエータ本体の金属膜に押圧固定したので、金属膜と導電性弾性体を完全に密着させることができ、密着不良による同極間のスパークを防止できるとともに、導電性弾性体は、圧電板の高電圧、高応答下での連続駆動による変形を拘束しないため、外部電極に発生する繰り返し応力を緩和することができ、外部電極の断線を防止できる。
【0056】
従って、高変位量を高応答で繰り返し発生させても、外部電極の断線の生じない、信頼の高い積層型圧電アクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層型圧電アクチュエータの斜視図である。
【図2】アクチュエータ本体に外部電極を形成した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の縦断面図である。
【図4】金属板およびその近傍を示す断面図であり、(a)は金属板の熱収縮チューブ側の面を、熱収縮チューブ側に向けて凸となる円弧状とした例の断面図、(b)は断面が矩形状の金属板を示す断面図である。
【図5】本発明の噴射装置を示す説明図である。
【符号の説明】
2・・・圧電体
3、3a、3b・・・内部電極
6a、6b・・・金属膜
15a、15b・・・導電性弾性体
17a、17b・・・金属板
19a、19b・・・外部電極
A・・・熱収縮チューブ
51・・・収納容器
53・・・噴射孔
55・・・バルブ
63・・・圧電アクチュエータ
Claims (4)
- 複数の圧電体と複数の内部電極とを交互に積層してなり、該内部電極が交互に第1内部電極または第2内部電極とされたアクチュエータ本体と、前記第1内部電極同士および前記第2内部電極同士をそれぞれ電気的に接続する一対の外部電極と、前記アクチュエータ本体および前記外部電極を被覆する熱収縮チューブとを具備する積層型圧電アクチュエータであって、前記外部電極を、前記アクチュエータ本体に形成され、前記第1内部電極同士および前記第2内部電極同士をそれぞれ電気的に接続する金属膜と、該金属膜に当接する、金属ウール、金属網、導電性ポリイミド樹脂の一種より構成されている導電性弾性体と、該導電性弾性体に当接する金属板とを具備して構成するとともに、前記熱収縮チューブにより、前記金属板を前記アクチュエータ本体の金属膜に押圧固定してなることを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。
- 前記金属板の前記熱収縮チューブ側の面が、該熱収縮チューブ側に向けて凸となる円弧状であることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電アクチュエータ。
- 前記導電性弾性体が金属網であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型圧電アクチュエータ。
- 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器内に収容された請求項1乃至3のうちいずれかに記載の積層型圧電アクチュエータと、該積層型圧電アクチュエータの駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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