以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る液圧システム150の全体構成図である。液圧システム150は主にアクチュエータ80とアクチュエータ80以外のマスタシリンダ14などを備える。
ブレーキペダル12にはその踏み込みストロークを検出するストロークセンサ46が設けられている。マスタシリンダ14は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作に応じ、媒体液であるブレーキオイルを圧送する。ブレーキペダル12とマスタシリンダ14との間にはドライストロークシミュレータ13が設けられている。
マスタシリンダ14には右前輪用ブレーキ液圧制御導管16及び左前輪用ブレーキ液圧制御導管18の一端が接続され、これらのブレーキ液圧制御導管はそれぞれ、右前輪及び左前輪の制動力を発揮する右前輪用ホイールシリンダ20FR及び左前輪用ホイールシリンダ20FLに接続されている。右前輪用ブレーキ液圧制御導管16及び左前輪用ブレーキ液圧制御導管18の途中にはそれぞれ右マスタ遮断弁22FR及び左マスタ遮断弁22FL(以下、必要に応じてこれらを総称して「マスタ遮断弁22」という)が間挿され、また、それぞれ右前輪側及び左前輪側のマスタシリンダ液圧を計測する右マスタ圧センサ48FR、および左マスタ圧センサ48FL(以下、必要に応じてこれらを総称して「マスタ圧センサ48」という)が設けられている。運転者によってブレーキペダル12が踏まれたとき、ストロークセンサ46によりその踏み込みが検出されるが、ストロークセンサ46の故障を想定し、マスタ圧センサ48によるマスタシリンダ液圧の計測によってもブレーキペダル12の踏み込みが検出される。マスタシリンダ液圧をふたつの圧力センサで監視するのは、フェイルセーフの観点による。
マスタ遮断弁22は、通常は開状態(以下これを「常開型」という)の電磁弁である。W/C(ホイールシリンダ)圧が後述する増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42の制御により制御される場合には閉状態とされ、後述するホイールシリンダ20がマスタシリンダ14から遮断される。これらマスタ遮断弁22が開状態とされた場合、マスタシリンダ14と後述するホイールシリンダ20とが連通させられ、マスタシリンダ14の液圧により後述するブレーキ70が作動させられる。
マスタシリンダ14にはリザーバタンク26が接続され、また、開閉弁23を介してウェットストロークシミュレータ24が接続され、リザーバタンク26には液圧給排導管28の一端が接続される。液圧給排導管28にはモータ32により駆動されるプランジャポンプ400が設けられている。プランジャポンプ400の吐出側は高圧導管30になっており、アキュムレータ49とリリーフバルブ53が設けられている。アキュムレータ49はプランジャポンプ400によって制御範囲の高圧にされた媒体液を蓄積する。リリーフバルブ53は、アキュムレータ圧が異常に高くなったとき開き、液圧給排導管28へ高圧の媒体液を逃がす。
高圧導管30にはアキュムレータ圧を計測するアキュムレータ圧センサ51が設けられる。後述の電子制御ユニット200(以下「ECU200」という)はアキュムレータ圧センサ51の出力であるアキュムレータ圧を入力し、このアキュムレータ圧が制御範囲に収まるようモータ32を制御してプランジャポンプ400の駆動を制御する。このように、ECU200、プランジャポンプ400、およびモータ32は、アキュムレータ圧を制御する液圧制御装置を構成する。
高圧導管30は、それぞれ通常は閉じた状態(これを「常閉型」という)にあり、必要なときにホイールシリンダの増圧用に利用される右前輪増圧用リニアバルブ40FR、左前輪増圧用リニアバルブ40FL、右後輪増圧用リニアバルブ40RR、左後輪増圧用リニアバルブ40RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「増圧用リニアバルブ40」という)を介し、右前輪用ホイールシリンダ20FR、左前輪用ホイールシリンダ20FL、右後輪用ホイールシリンダ20RR、左後輪用ホイールシリンダ20RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「ホイールシリンダ20」という)に接続されている。
図示しない車両の車輪の各々には、ドラムブレーキである右前輪用ブレーキ70FR、左前輪用ブレーキ70FL、右後輪用ブレーキ70RR、左後輪用ブレーキ70RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「ブレーキ70」という)が設けられており、それぞれホイールシリンダ20の駆動によりブレーキシューをドラムに押し付けることで制動力を発揮するようになっている。
右前輪用ホイールシリンダ20FRと左前輪用ホイールシリンダ20FLは、必要なときに減圧用に利用される電磁流量制御弁、すなわちリニア弁である常閉型の右前輪減圧用リニアバルブ42FR、左前輪減圧用リニアバルブ42FLを介して液圧給排導管28へ接続されている。また、右後輪用ホイールシリンダ20RR、左後輪用ホイールシリンダ20RLは、それぞれ常開型の右後輪減圧用リニアバルブ42RR、左後輪減圧用リニアバルブ42RLを介して液圧給排導管28へ接続されている。以下、必要に応じて減圧用リニアバルブ42FL、42FR、42RL、42RRを総称して「減圧用リニアバルブ42」という。
各々のホイールシリンダ20の付近には、それぞれホイールシリンダ内の液圧を計測する右前輪用W/C圧センサ44FR、左前輪用W/C圧センサ44FL、右後輪用W/C圧センサ44RR、左後輪用W/C圧センサ44RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「W/C圧センサ44」という)が設けられている。
図2は、第1の実施形態に係るECU200の機能ブロック図である。ECU200は、マイクロコンピュータによる演算ユニット202、ROM204、RAM206、I/Oポートなどを含む主制御部210を有しており、主制御部210のI/Oポートには、前述のストロークセンサ46、アキュムレータ圧センサ51、マスタ圧センサ48、W/C圧センサ44が接続されている。また、ECU200は、増圧用リニアバルブ40、減圧用リニアバルブ42を制御するリニアバルブ制御部100、モータ32を制御するモータ制御部130、マスタ遮断弁22を制御するマスタ遮断弁制御部140などを有しており、リニアバルブ制御部100は増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42に、モータ制御部130はモータ32に、マスタ遮断弁制御部140はマスタ遮断弁22にぞれぞれ接続されている。
演算ユニット202には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12の踏み込みストロークを示すストローク信号、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示すアキュムレータ圧信号、マスタ圧センサ48からマスタ圧を示すマスタ圧信号、W/C圧センサ44からW/C圧を示すW/C圧信号が入力される。
ROM204には、増圧用リニアバルブ制御プログラム等の複数のプログラムや、アキュムレータ圧の設定範囲決定テーブル等の複数のテーブルが格納されている。RAM206はデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用される。例えば、演算ユニット202は、ROM204に格納されたプログラムを利用して、ストローク信号、マスタ圧信号、W/C圧信号などに基づき、各車輪の目標W/C圧を演算する。
演算ユニット202は、演算された目標W/C圧から、増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42に供給する制御電流であるPSB(Pressure Servo Brake)指令電流を算出する。算出されたPSB指令電流は、リニアバルブ制御部100に出力される。PSB指令電流の入力を受けたリニアバルブ制御部100は、入力されたPSB指令電流を増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42のリニアソレノイドを駆動する駆動信号に変換し、増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42に出力する。駆動された増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42の動作により得られた媒体液圧は演算ユニット202にフィードバックされる。以上により、演算ユニット202は、各車輪のW/C圧が目標W/C圧になるよう制御する。
また、ECU200は、アキュムレータ圧センサ51から入力されたアキュムレータ圧信号から、アキュムレータ圧が所定の圧力より大きいか否かを判断し、所定の圧力より小さい場合は、ECU200のモータ制御部130は、モータ32に駆動信号を出力する。モータ32は駆動信号の入力を受けて作動し、プランジャポンプ400を駆動することによりアキュムレータ49に液圧を与える。
図3は、第1の実施形態に係るプランジャポンプ400の全体構成図である。プランジャポンプ400は、ポンプハウジング310、ポンプハウジング310内に配置される第1ポンプ320および第2ポンプ360、偏心カムユニット420、および駆動軸ユニット440などにより構成される。このうち、第1ポンプ320、第2ポンプ360、および偏心カムユニット420などにより液圧発生機構が構成される。
駆動軸ユニット440はモータの駆動軸442、係合部444などを有しており、駆動軸442は、第1ベアリング446によって回転可能に支持されている。係合部444は、駆動軸442に固定されており、本図における左面に位置決め孔を有している。
偏心カムユニット420は、回転軸422、偏心カム426、第2ベアリング424、および第3ベアリング428などを有している。回転軸422の軸方向中央近傍に、回転中心に対して外周の中心が偏心する偏心カム426が構成されている。この偏心カム426の両側において、第2ベアリング424および第3ベアリング428のそれぞれの内輪が回転軸422に圧入されている。回転軸422の駆動軸ユニット440側には、回転軸422の径方向に延在した爪部430が形成されている。この爪部430が係合部444の位置決め孔に挿入されることにより、駆動軸442の回転と偏心カム426の回転が連結される。
偏心カム426は、リング353、ニードルベアリング350、および回転軸422のインナーレース部422aにより構成される。ニードルベアリング350は、ころ軸受の一種であり、保持器351とそれに保持された複数のころとしてのニードル352とにより構成される。リング353は、回転軸422のインナーレース部422aにニードルベアリング350を介して取り付けられる。
2つのバランサ438は、偏心カム426の両側に配置され、偏心カム426と第2ベアリング424、および偏心カム426と第3ベアリング428とによりそれぞれ挟持される。バランサ438は、偏心カム426とともに回転することができるように、回転軸422に固定され、また第2ベアリング424および第3ベアリング428の内輪により挟持されそれぞれの外輪と接しないようにされている。バランサ438は、偏心カム426の重心の偏りを相殺するように取り付けられており、これにより、偏心カム426の円滑な回転を実現している。
ポンプハウジング310には、本図における右方向に開口部を有する略円筒形状の有底孔が設けられており、この有底孔に偏心カムユニット420が挿入される。偏心カムユニット420は、第2ベアリング424および第3ベアリング428が有底孔に圧入されることにより、ポンプハウジング310に対して偏心カム426が回転軸422と共に回転可能に固定される。有底孔に偏心カムユニット420を挿入後、スペーサ434およびオイルシール436が有底孔の開口部に取り付けられる。
また、ポンプハウジング310には、前述の有底孔に開口部を有し、本図における上下方向に延びて形成された円筒形状のポンプ孔322が前記有底孔に対向して2箇所設けられている。この2つのポンプ孔322にそれぞれ第1ポンプ320および第2ポンプ360が挿入されることにより、第1ポンプ320および第2ポンプ360が偏心カム426に対して対向して配置される。
第1ポンプ320は、第1プランジャ326、シリンダ324、第1吸入チェックバルブ335、第1吐出チェックバルブ345などにより構成される。第1プランジャ326は、円筒形状に形成され、偏心カム426の外周に摺動可能に接触している。第1プランジャ326は、シリンダ324に設けられた円筒形のシリンダ側部324aに挿通される。シリンダ324は、ポンプ孔322に挿入され、シリンダ側部324aの開口側とは反対側である後端がプラグ341により支持されることにより固定されている。これにより、第1プランジャ326は、シリンダ側部324aの内部を上下方向に摺動可能となっている。
第1プランジャ326は、シリンダ324のシリンダ底部324bに端部が係止されたプランジャバネ334により、偏心カム426の方向に付勢されている。これにより、第1プランジャ326は、先端部が偏心カム426の外周に接しながら往復運動をすることができるようになっている。
第1プランジャ326の偏心カム426近傍には、吸入口328が設けられている。吸入口328は、偏心カム426が回転することによって第1プランジャ326が上下方向に往復運動を行っても、シリンダ324により吸入口328が塞がれない位置に配置されている。第1プランジャ326の内部には、吸入口328から第1吸入チェックバルブ335につながる吸入路329が形成されている。吸入路329は、吸入口328を含む第1プランジャ326の径方向に貫通する径方向吸入路329aと、径方向吸入路329aと連通する吸入路であって、第1プランジャ326の中心軸を含む軸方向に延び、偏心カム426と接する側とは反対側である後端に開口部を有する軸方向吸入路329bにより構成される。
第1ポンプ320は、第1吸入チェックバルブ335および第1吐出チェックバルブ345を有している。第1吸入チェックバルブ335は、第1プランジャ326の上部に設けられる。第1吸入チェックバルブ335は、第1吸入弁ボール330、吸入弁ブラケット332、吸入路329により構成される。
吸入弁ブラケット332は、断面が略コの字形状をしており、略コの字形状の開口部を下向きにして第1プランジャ326の上面に固定されている。吸入弁ブラケット332は、略コの字形状の開口部に軸方向吸入路329bが位置するように配置される。吸入弁ブラケット332と第1プランジャ326で囲われる部分に、弁子としての第1吸入弁ボール330が配置される。吸入弁ブラケット332には媒体液通過口が設けられている。第1吸入弁ボール330は、弁座としての吸入路329に着座することができるよう、吸入弁ブラケット332内で可動となっている。
シリンダ側部324a、シリンダ底部324b、および第1プランジャ326により、低圧液室である第1吸入室336が形成される。吸入口328、径方向吸入路329a、軸方向吸入路329bを通って吸入された媒体液は一旦この第1吸入室336に蓄えられる。
シリンダ324の上部には、シリンダ324の上面およびプラグ341により、高圧液室である第1吐出室346が形成されている。第1吐出室346と第1吸入室336は、吐出路325により連通している。吐出路325は、シリンダ324の第1吸入室336の上部に、第1プランジャ326の軸方向に形成されている。
第1吐出チェックバルブ345は、シリンダ324の後端に設けられる。第1吐出チェックバルブ345は、吐出弁ブラケット344、第1吐出弁ボール340、吐出弁バネ342、吐出路325によって構成される。吐出弁ブラケット344も、断面が略コの字形状をしており、略コの字形状の開口部を下向きにしてシリンダ324の上面に固定されている。吐出弁ブラケット344は、略コの字形状の開口部に吐出路325が位置するように配置される。
吐出弁ブラケット344とシリンダ324で囲われる部分に、弁子である第1吐出弁ボール340が配置される。吐出弁バネ342は、一端が第1吐出弁ボール340に固定され、他端が吐出弁ブラケット344のシリンダ324に対向する面に固定されており、第1吐出弁ボール340を吐出路325の方向に付勢している。このため、第1吐出弁ボール340は、媒体液の流れがない状態では、弁座としての吐出路325に着座した状態となっている。一方、吐出弁バネ342は、第1ポンプ320が媒体液吐出時に、吐出路325からの媒体液の流れによって吐出路325から離間され、第1吐出室346と吐出路325が連通する程度の付勢力で第1吐出弁ボール340を付勢している。
第1吐出室346は、吐出された媒体液の脈動を抑制するアキュムレータ49を介して、増圧用リニアバルブ40や減圧用リニアバルブ42などの電磁式液圧弁に連通している。更に電磁式液圧弁は各車輪に設けられたホイールシリンダ20に連通している。
以上より、モータが作動し、駆動軸442が回転すると、係合部444、および係合部444の位置決め孔に係合する爪部430を介して、回転軸422および回転軸422に固定された偏心カム426が回転する。これにより、モータの駆動軸442と爪部430、偏心カム426が共に回転する。
偏心カム426が回転することにより、先端が偏心カム426に押しつけられた第1プランジャ326が上下方向に往復運動を行う。まず、第1プランジャ326が下方向に移動し始めると、第1吸入室336内の圧力が減少することから、吐出路325内の圧力も減少し、第1吐出弁ボール340は吐出路325の開口部に着座したままの状態となる。これにより、第1プランジャ326が下方向に移動している間、第1吐出チェックバルブ345が閉弁し、第1吐出室346から第1吸入室336への媒体液の流れが遮断される。
同じく、第1プランジャ326が下方向に移動し始めると、第1吸入室336内の圧力が減少することから、吸入口328および吸入路329を通って液室312から第1吸入室336に媒体液が流れる。この媒体液の流れによって第1吸入弁ボール330が吸入路329の開口部から離間する。こうして、第1プランジャ326が下方向に移動している間、第1吸入チェックバルブ335が開弁し、液室312と第1吸入室336とが連通する。
偏心カム426がさらに回転し、第1プランジャ326が上方向に移動し始めると、第1吸入室336内の圧力が増加することから、第1吸入室336から吸入路329に媒体液が流れ始める。この媒体液の流れによって、第1吸入弁ボール330が吸入路329の開口部に着座する。これにより、第1プランジャ326が上方向に移動している間、第1吸入チェックバルブ335が閉弁し、第1吸入室336から液室312への媒体液の流れが遮断される。
同じく、第1プランジャ326が上方向に移動し始めると、第1吸入室336内の圧力が増加することから、吐出路325を通って第1吸入室336から第1吐出室346に媒体液が流れる。この媒体液の流れによって、第1吐出弁ボール340が上方向に移動し、吐出路325の開口部から離間する。こうして、第1プランジャ326が上方向に移動している間、第1吐出チェックバルブ345が開弁し、第1吸入室336と第1吐出室346とが連通する。
偏心カム426が回転し、第1プランジャ326が上下方向に往復運動をすることにより、以上の動作を繰り返し、液室312内の媒体液が第1吐出室346に流される。その結果、第1ポンプ320によりアキュムレータ49および増圧用リニアバルブ40を介してホイールシリンダ20に媒体液が供給される。
第2ポンプ360も、第1ポンプ320と同様の構成を有しており、第2ポンプ360により排出された媒体液はホイールシリンダに供給される。第2ポンプの第2プランジャ362は、第1プランジャ326と偏心カム426を挟んで対向して配置される。これにより、第1ポンプ320が媒体液の吸入動作を行っているときに、第2ポンプ360が媒体液の吐出動作を行うことができ、継続的にホイールシリンダに媒体液を供給することができる。
第2ポンプは、第2吸入チェックバルブ365および第2吸入室366を有している。この第2吸入チェックバルブ365は第2吸入弁ボール364を有している。また、第2ポンプは、第2吐出チェックバルブ375および第2吐出室370を有している。この第2吐出チェックバルブ375は、第2吐出弁ボール368を有している。
なお、第2ポンプ360は、第1ポンプ320の構成部材と同一形状の構成部材によって構成される。これにより、第1ポンプ320と第2ポンプ360で交互に略同量の媒体液を第1吐出室346および第2吐出室370から吐出することができることから、継続して一定の媒体液を吐出することができる。
以上のようなプランジャポンプ400においては、液室312において、媒体液中に配置された第1ポンプ320、第2ポンプ360、および偏心カムユニット420などの液圧発生機構は、駆動手段としてのモータ32により駆動されることにより、媒体液の流れ、および液圧発生機構を構成する各部品の回転に伴う遠心力により、回転軸422周辺に負圧が発生する。この負圧があるレベルに達すると、媒体液中に溶解したエアが微小な気泡となる。さらにモータ32により液圧発生機構が駆動されることにより、この微小な気泡が相互に結合してさらに大きな気泡へと成長する。この気泡を放置しておくと、気泡の収縮によりプランジャポンプ400の応答性を悪化させるおそれがある。
特に、液室312中に配置される第2ベアリング424および第3ベアリング428は、内部にこれらを構成する微細な部品を有している。このため回転軸422が駆動されることにより外輪に対して内輪が回転させられることにより、内輪と外輪の間に配置されたこれら内部の部品周辺に気泡が発生する場合がある。また、偏心カム426およびバランサ438はともに回転軸422に対して偏心していることから、液室312内において媒体液を攪拌して遠心力を与え、負圧を発生させることから、これらの周辺にも気泡が発生し得る。また、ニードルベアリング350も、保持器351やニードル352などの微細な部品を有することから、第2ベアリング424および第3ベアリング428と同様に、ニードルベアリング350の内部もしくは周辺において気泡が発生する場合がある。なお、回転軸422も液室312内において媒体液に遠心力を与え、負圧を発生させることから、回転軸422周辺においても気泡が発生し得る。
ECU200のモータ制御部130は、アキュムレータ圧センサ51の検出結果の入力を受け、アキュムレータ圧が所定値以上になったと判断した場合は、プランジャポンプ400による液圧の発生を停止させるために、モータ32を停止させる。このとき、本実施形態においては、ECU200のモータ制御部130は、モータ32に電流を供給するデューティを徐々に減少させるPWM制御により、モータ32の回転速度を徐々に低下させてモータ32の回転を停止させる。これにより、モータを急激に停止させることによる液圧発生機構内に発生する微小な気泡の発生および成長を抑制することが可能となり、気泡が再び媒体液に溶け込むことを促進することができる。
図4は、第1の実施形態に係る液圧制御装置の停止制御の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、モータ32が作動を開始したときに開始する。
ECU200は、モータ32が作動している際に、アキュムレータ圧センサ51の検出結果の入力を受け、アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上か否かを判断する(S11)。アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0未満と判断された場合には(S11のN)、ECU200は、所定時間ごとにアキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上か否かを判断するS11のステップを繰り返す。
アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上になったと判断された場合には(S11のY)、ECU200は、モータ32を停止させるため、まずnを1に設定し(S12)、モータ32に印加するモータ電圧Vpを、初期電圧V0−a*nとする(S13)。ここで、aはモータ電圧Vpを徐々に低下させるための勾配である。モータ電圧Vpは初期電圧V0からa*nを減じたものとなり、モータ32の回転数も低下する。
次に、ECU200は、nをn+1に設定し(S14)、アキュムレータ圧Paccが所定圧力P1以下か否かを判断する(S15)。アキュムレータ圧Paccが所定圧力P1以下と判断された場合には(S15のY)、再びアキュムレータ圧Paccを増加させなければならないため、ECU200は、プランジャポンプ400の停止制御である本フローチャートにおける処理を終了する。
アキュムレータ圧Paccが所定圧力P1より大きいと判断された場合には(S15のN)、ECU200は、nが所定数b以上か否かを判断する(S16)。ここで、bは、初期電圧V0からa*bを減じることにより、モータ電圧Vpがほぼゼロになるような値が設定される。nが所定数b以上であると判断された場合には(S16のY)、ECU200は、モータ電圧Vpがほぼゼロとなりモータ32が停止されたと判断して本フローチャートにおける処理を終了する。nが所定数b未満であると判断された場合には(S16のN)、ECU200は、さらにモータ電圧Vpを減じるために、再びS13に移行する。
ECU200は、モータ32を停止するときに、S13からS16に示されるように、モータ電圧Vpを徐々に低下させることによりモータ32の回転数を徐々に低下させる。
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る液圧制御装置の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、所定時間ごとに繰り返される。なお、第1の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
ECU200は、アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上か否かを判断する(S21)。アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0未満であると判断された場合には(S21のN)、ECU200は、アキュムレータ圧Paccを増加させるためにモータ32を作動させる必要があると判断し、本フローチャートにおける処理を終了する。アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上であると判断された場合には(S21のY)、ECU200は、モータ電圧Vpが所定電圧V1以下か否かを判断する(S22)。モータ電圧Vpが所定電圧V1より大きいと判断された場合には(S22のN)、ECU200は、モータ32が停止されていないと判断し、本フローチャートにおける処理を終了する。
モータ電圧Vpが所定電圧V1以下であると判断された場合には(S22のY)、ECU200は、アキュムレータ圧Paccが充分に高くなり、モータ32が停止されたと判断し、プランジャポンプ400が配置される液路と異なる液路に配置され、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させまたは遮断する切換弁を開弁し、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させる(S23)。
前述のように、モータ32が作動すると、液圧発生機構の回転軸422などの周辺の媒体液に気泡が発生する場合がある。このため、本実施形態においては、モータ32が停止され、プランジャポンプ400の作動が停止されたときに、プランジャポンプ400が配置される液路と異なる液路において、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させる。プランジャポンプ400はリザーバタンク26から媒体液を吸入することから、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させることにより、アキュムレータ圧がプランジャポンプ400の液室312に伝えられ、液室312に発生した負圧を打ち消すことができる。また、液室312の媒体液中に発生した微小な気泡をリザーバタンク26に押し流し、液室312に気泡を滞在させないことにより、液室312内における気泡の量を抑制することが可能となる。これにより、気泡によるポンプの応答性の悪化を抑制することができる。
ここで、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させまたは遮断する切換弁とは、増圧用リニアバルブ40、および減圧用リニアバルブ42をいう。この増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42を開弁することにより、アキュムレータ49から増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42を介してリザーバタンク26まで連通させることができ、アキュムレータ圧をプランジャポンプ400の液室312に伝えることができる。
フロント側においては、右前輪増圧用リニアバルブ40FR、左前輪増圧用リニアバルブ40FL、右前輪減圧用リニアバルブ42FR、および左前輪減圧用リニアバルブ42FLは常閉型のリニアバルブである。このため、ECU200は、これらのリニアバルブを開弁する。このとき、運転者によりブレーキが操作される場合があることを考慮し、右マスタ遮断弁22FRおよび左マスタ遮断弁22FLを開弁しておく。これにより、運転者によってブレーキが操作された場合に、マスタシリンダ14からホイールシリンダ20に直接液圧を伝えることが可能となる。
リア側においては、左後輪増圧用リニアバルブ40RLおよび右後輪増圧用リニアバルブ40RRは常閉型のリニアバルブであるが、左後輪減圧用リニアバルブ42RLおよび右後輪減圧用リニアバルブ42RRは常開型のリニアバルブである。このため、ECU200は、左後輪増圧用リニアバルブ40RLおよび右後輪増圧用リニアバルブ40RRのみを開弁する。
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る液圧制御装置の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、所定時間ごとに繰り返される。なお、前述の実施形態と同様の箇所については説明を省略する。
ECU200は、アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上か否かを判断する(S31)。アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0以上であると判断された場合には(S31のY)、ECU200は、モータ電圧Vpが所定電圧V1以下か否かを判断する(S32)。アキュムレータ圧Paccが所定圧力P0未満であると判断された場合(S31のN)、およびモータ電圧Vpが所定電圧V1より大きいと判断された場合(S32のN)には、本フローチャートにおける処理を終了する。
モータ電圧Vpが所定電圧V1以下であると判断された場合には(S32のY)、ECU200は、アキュムレータ圧Paccが充分に高くなり、モータ32が停止されたと判断し、次にECU200は、ブレーキペダル12がオフの状態か否かを判断する(S33)。ブレーキペダル12がオンの状態であると判断された場合には(S33のN)、ECU200は、モータ32を作動させる必要が生じる可能性があると判断し、本フローチャートにおける処理を終了する。
ブレーキペダル12がオフの状態であると判断された場合には(S33のY)、ECU200は、図示しない車速センサの検出結果に基づいて、車両の速度Vcが所定速度V2以上か否かを判断する(S34)。車両の速度Vcが所定速度V2未満と判断された場合には(S34のN)、車両の暗騒音が低い状態であると判断し、本フローチャートにおける処理を終了する。車両の速度Vcが所定速度V2以上と判断された場合には(S34のY)、ECU200は、車両の暗騒音が高い状態となったと判断し、プランジャポンプ400が配置される液路と異なる液路に配置され、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させまたは遮断する切換弁を開弁し、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させる(S35)。なお、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させる方法については、図5におけるS23と同様であることから、説明を省略する。
これにより、プランジャポンプ400が作動し、その後停止した後に、アキュムレータ圧Paccをプランジャポンプ400の液室312に伝えることにより、発生した微小な気泡をリザーバタンク26に押し流すことができる。
なお、暗騒音とは、対象とする騒音を除いた場合のその環境における騒音をいい、本実施形態の場合は、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させるために所定のリニアバルブを開弁する騒音を除いた場合の車両の騒音をいう。一般に車両の速度が大きくなるほどこの暗騒音は高くなる。このため、この車両の速度に所定の閾値であるV2を設け、車両の速度Vcがこの所定の速度V2より高くなったときに、所定のリニアバルブを開弁することにより、リニアバルブを開弁するときの騒音を目立たないものとすることができる。
(第4の実施形態)
図7は、第4の実施形態に係る液圧制御装置の処理を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、所定時間ごとに繰り返される。S41からS43は、図6におけるS31からS33と同様であるため、説明を省略する。このほか前述の実施形態と同様の箇所についても説明を省略する。
ブレーキペダル12がオフの状態であると判断された場合には(S43のY)、ECU200は、図示しないエンジン回転センサの検出結果に基づいて、車両のエンジンの回転数REが所定回転数R1以上か否かを判断する(S44)。車両のエンジンの回転数REが所定回転数R1未満と判断された場合には(S44のN)、車両の暗騒音が低い状態であると判断し、本フローチャートにおける処理を終了する。車両のエンジンの回転数REが所定回転数R1以上と判断された場合には(S44のY)、ECU200は、車両の暗騒音が高い状態となったと判断し、プランジャポンプ400が配置される液路と異なる液路に配置され、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させまたは遮断する切換弁を開弁し、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させる(S45)。なお、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させる方法については、図5におけるS23と同様であることから、説明を省略する。これにより、第3の実施形態と同様に、発生した微小な気泡をリザーバタンク26に押し流すことができる。
一般に車両のエンジンの回転数が大きくなるほど暗騒音は高くなる。このため、この車両の回転数に所定の閾値であるR1を設け、車両のエンジンの回転数REがこの所定の回転数R1より高くなったときに、所定のリニアバルブを開弁することにより、第3の実施形態と同様に、リニアバルブを開弁するときの騒音を目立たないものとすることができる。
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
プランジャポンプ400が配置される液路と異なる液路に配置され、アキュムレータ49とリザーバタンク26との間を連通させまたは遮断する切換弁は、増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42ではなく、これらと別の液路に設けられた切換弁でもよい。これにより、増圧用リニアバルブ40および減圧用リニアバルブ42によるホイールシリンダ20への液圧の制御を有効としたまま、プランジャポンプ400内の気泡の発生を低減させることができる。
第3の実施形態および第4の実施形態において、車両の暗騒音が高くなったことを判断するために、車両に設けられた騒音計などの騒音検出手段を用いてもよい。これにより、より正確に暗騒音を検出することができ、運転をより快適なものとすることができる。
12 ブレーキペダル、 14 マスタシリンダ、 20 ホイールシリンダ、 22 マスタ遮断弁、 26 リザーバタンク、 32 モータ、 40 増圧用リニアバルブ、 42 減圧用リニアバルブ、 49 アキュムレータ、 51 アキュムレータ圧センサ、 200 電子制御ユニット、 312 液室、 400 プランジャポンプ。