JP4734608B2 - 生理的条件下でのウイルス粒子様構造体及びその形成方法 - Google Patents
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Description
またこのウイルス様粒子を細胞より精製し、それから粒子構成単位(例えばSV40ウイルスではVP1五量体)に一旦解離させ、試験管内で再びウイルス様粒子を再構成させる方法もある。
従来の再構成方法は高塩濃度の非生理的な条件で行われるが、粒子内部に取り込ませる生理活性物質が失活したりあるいは溶媒に難溶であったりするなどの問題があり、この条件は生理活性物質を粒子内に取り込ませるには適切ではない。またこの方法を用いても均一なサイズのウイルス様粒子を効率よく再構成させることが困難であった。
本発明はまた、宿主細胞内でウイルス粒子様構造体を形成する方法を提供する。
本発明は試験管内において生理的条件下で効率的にサイズが均一なウイルス様粒子形成を行うために、天然のウイルス粒子中に見られるタンパク質を再構成環境に加えることで、目的を達成した。
従って、本発明は、ウイルスタンパク質と粒子形成促進因子とから構成される、均一なサイズのウイルス粒子様構造体を提供する。本発明はまた、ウイルスタンパク質と粒子形成促進因子とから構成され、被封入物質を収容した、均一なサイズのウイルス粒子様構造体を提供する。
本発明はまた、ウイルスタンパク質を、pH5〜pH10.0及び室温にて、130mM〜500mM一価の陽イオン及び2μM〜50mMの二価陽イオンの存在下で、且つ粒子形成促進因子の存在下でインキュベートすることを特徴とする、ウイルスタンパク質と粒子形成促進因子から構成される均一なサイズのウイルス粒子集団の形成方法;並びにウイルスタンパク質及び被封入物質を、pH5〜pH10及び室温にて、130mM〜500mMの一価の陽イオン及び2μM〜50mMの二価の陽イオンの存在下で、且つ粒子型性促進因子の存在下でインキュベートすることを特徴とする、被封入物質とそれをとり巻くウイルスタンパク質及び粒子形成促進因子から構成される均一なサイズのウイルス粒子様構造体の形成方法を提供する。
本発明は更に、ウイルス蛋白質と、当該ウイルス蛋白質についての結合領域を含んでなり且つ生理活性物質が連結されたキャプシド蛋白質VP2又はその部分とを、宿主細胞中で共発現させることを特徴とする、ウイルス蛋白質とキャプシド蛋白質VP2又はその部分とから構成されるウイルス様粒子に生理活性物質を導入する方法を提供する。
本発明はまた、表面が負に帯電した高分子を封入したウイルス蛋白質とから構成されるウイルス粒子集団の製造方法において、ウイルス蛋白質と、当該ウイルスキャプシド蛋白質360部に対して0.01〜100部(重量比)の高分子とを混合し、一価の金属塩および2価の金属塩を含む水溶液に対して透析する、ことを特徴とする方法を提供する。
上記負に帯電した高分子は、好ましくは、DNA、各種RNA、合成核酸様構造体である。上記ウイルス粒子集団の製造方法において、ウイルス蛋白質と、当該ウイルスキャプシド蛋白質360部に対して加える負に帯電した高分子の重量比は好ましくは0.2以上である。
ウイルス粒子様構造体を構成する前記ウイルス蛋白質は、好ましくは、SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのVP1キャプシド蛋白質である。
前記SV40ウイルスの蛋白質として、VP1キャプシド蛋白質又はその変異体が挙げられる。前記VP1キャプシド蛋白質の変異体は、例えば、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するVP1キャプシド蛋白質において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換を有する蛋白質が例示される。具体的な置換としては、配列番号:2に記載のアミノ酸配列における、49位のGlu、51位のGlu、160位のGlu、163位のGlu、216位のSer、217位のLys、219位のGlu、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspの内の少なくとも1個のアミノ酸の置換が例示される。
ウイルス粒子様構造体を構成する前記粒子形成促進因子は、好ましくは、ウイルス粒子カプシド蛋白質、当該蛋白質の粒子形成促進活性を有するN−末端領域、又は当該蛋白質において1〜複数のアミノ酸が付加、欠失及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されており、且つ粒子形成促進活性を維持している蛋白質である。前記ウイルス粒子キャプシド蛋白質は、好ましくは、SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのキャプシド蛋白質VP2である。より具体的な例では、前記ウイルス粒子キャプシド蛋白質は、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するSV40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2である。
本発明のウイルス様構造体を生体外、たとえば試験管内で形成させる場合、好ましくは、前記ウイルス粒子キャプシド蛋白質は、配列番号:1に示すアミノ酸配列中の、少なくとも1位〜272位のアミノ酸配列を含んで成るか、あるいは少なくとも1位〜58位、59位〜118位、119位〜152位、又は153位〜272位のアミノ酸配列を含んでなる、SV40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2の部分である。
本発明のウイルス用構造体を、宿主細胞内で形成させる場合、好ましくは、前記ウイルス粒子キャプシド蛋白質は、配列番号:1に示すアミノ酸配列中の、少なくとも273位〜307位のVP1結合領域のアミノ酸配列を含んでなる、SV40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2の部分であり、これには好ましくは所望の導入されるべき生理活性物質、非生理活性物質またはそれらの混合物が連結されている。
前記非生理活性物質は、例えば低分子物質あるいは高分子物質あるいはそれら混合物である。
前記被封入因子は、典型的には、生理活性物質であり、例えば、核酸、蛋白質、又は低分子物質である。
本発明のウイルス粒子様構造体を形成する前記一価の陽イオンは、好ましくは、ナトリウムイオンであり、塩化ナトリウムとして使用される。また、本発明のウイルス粒子様構造体を形成する前記二価の陽イオンは、好ましくは、カルシウムイオンであり、塩化カルシウムとして使用される。前記一価の陽イオンの濃度は、例えば150mMであり、そして前記二価陽イオンの濃度は、例えば2mMである。
本発明はまた、生理活性分子を含んで成る前記のウイルス構造体を有効成分とする、生理活性物質を細胞に導入するための組成物に関する。
図2は、粒子形成促進因子の非存在下で、ウイルス蛋白質を生理的条件下で処理した場合の、電子顕微鏡写真を示す。
図3は、ウイルス蛋白質VP1と粒子形成促進因子VP2との比率を変えた場合の、ウイルス粒子様構造体の形成の状態を示す、電子顕微鏡写真を示す。
図4は、C−末端側を欠失させた粒子形成促進因子VP2を用いて生成させたウイルス粒子様構造体の電子顕微鏡写真を示す。
図5は、C−末端側に点変異を導入した粒子形成促進因子VP2を用いて生成させたウイルス粒子様構造体の電子顕微鏡写真を示す。
図6は、pH8〜10の非生理的条件下でインキュベーションを行なった場合、粒子形成促進因子の非存在下でも、均一な球形のウイルス粒子様構造体が形成されることを示す、電子顕微鏡写真を示す。
図7は、実施例2において調製したウイルス粒子を蔗糖密度遠心分離により分画し、サザンブロッティングにより検出した結果を示す図である。
図8は、実施例3において、pEGの存在下でVP1−VP2タンパク質から構成されたウイルス様粒子をショ糖密度勾配遠沈で分画した後のpEG DNAの分布、及び抗VP1抗体で検出されたタンパク質の分布を示す。
図9は、実施例3において、ウイルス様粒子を介してCOS−1細胞に導入されたpEGが当該細胞で発現され蛍光タンパク質が産生されたことを示す。
図10は、実施例4の結果を示し、粒子形成促進因子としてのVP2タンパク質の部分と粒子形成との関係を示す。
図11は、実施例5の結果を示し、VP1からのウイルス様構造体への取り込みのために必要なVP2の部分を示す。
図12は、実施例6の結果を示し、所定の条件下でVP1から形成されるウイルス様構造体にDNAが取り込まれることを示す。
図13は、実施例6において得られた生成物の電子顕微鏡観察の結果を示す。
図14は、実施例7において、予めRnase処理を施したtotal RNA、Rnase処理を施さないtotal RNAと精製したVP1タンパク質を混合し、この混合液をpH5、150mM NaCl、2mM CaCl2溶液に室温で16時間透析をすることで再構成を行った。再構成を行った後、電子顕微鏡を用いて置換した溶媒中のVP1五量体の集合化様式を観察した。図はRNase処理を施したものをRNase+、RNase処理を施さないものをRNase−として表している。この図から球状ウイルス様粒子の形成はRNAの存在によって起きていることが示唆された。
SV40のVP1としては、生来のVP1でもよく、またその変異体であってもよい。変異体としては、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するVP1キャプシド蛋白質において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換を有する蛋白質が例示され、具体的な置換の例として、配列番号:2に記載のアミノ酸配列における、49位のGlu、51位のGlu、160位のGlu、163位のGlu、216位のSer、217位のLys、219位のGlu、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspの内の少なくとも1個のアミノ酸の置換が例示できる。
1つの態様において、本発明は160位のGluが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べて硬い(rigid)又は安定なウイルス様タンパク質粒子を形成することができるタンパク質(変異体A;mtA)を提供する。好ましくは、上記のGluは、Glnにより置換される。
他の態様において、本発明は163位のGluが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べて硬い(rigid)又は安定なウイルス様タンパク質粒子を形成するタンパク質(変異体B;mtB)を提供する。好ましくは、上記GluはGlnにより置換される。
他の態様において、本発明は、348位のAspが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べて硬い又は安定なウイルス様タンパク質粒子を形成するタンパク質(変異体C;mtC)を提供する。上記Aspは好ましくはAsnにより置換される。
他の態様において、本発明は、160位のGlu及び163位のGluが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べて硬い(rigid)ウイルス様タンパク質粒子を形成するタンパク質(変異体D;mtD)を提供する。上記のGluは好ましくはGlnにより置換される。
他の態様において、本発明は、160位のGlu、163位のGlu及び348位のAspが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べて硬い(rigid)又は安定なウイルス様タンパク質粒子を形成するタンパク質(変異体E;mtE)を提供する。上記のGluは好ましくはGlnにより置換され、そしてAspは好ましくはAsnにより置換される。
他の態様において、本発明は、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspが他のアミノ酸により置換されており、棒状のウイルス様タンパク質粒子を高頻度に形成することができるタンパク質(変異体F;mtF)を提供する。上記のGluは好ましくはGlnにより置換され、そしてAspは好ましくはAsnにより置換される。
他の態様において、本発明は、49位のGlu及び51位のGluが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べて硬い(rigid)又は安定なウイルス様タンパク質粒子を形成するタンパク質(変異体G;mtG)を提供する。上記Gluは好ましくはGlnにより置換される。
他の態様において、本発明は、49位のGlu、51位のGlu、160位のGlu、163位のGlu、216位のSer、217位のLys、219位のGlu、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspが他のアミノ酸により置換されており、野性型に比べてウイルス様タンパク質粒子を形成しにくくなっているタンパク質(変異体H;mtH)を提供する。上記のGluは好ましくはGlnにより置換され、Aspは好ましくはAsnにより置換され、Serは好ましくはAlaにより置換され、そしてLysは好ましくはAlaにより置換される。
なお、上記の変異体の調製方法は特開2002−360266に詳細に記載されている。
本発明においては、pH5〜10の条件下で、粒子形成促進因子を使用することが必要である。粒子形成促進因子としては、例えば、ウイルス粒子内タンパク質が好ましい。例えば、ウイルス粒子内タンパク質として、SV40ウイルス、JCウイルス、BKウイルス、などのキャプシドタンパク質VP2又はそのN−末端側部分、あるいはヒストンタンパク質などがあげられる。特に好ましいウイルス粒子内タンパク質はSV40のVP2又はそのN−末端側部分である。SV40のVP2のアミノ酸配列を配列番号:1に示す。本発明の粒子形成促進因子としてSV40のVP2又はその部分を用いて生体外でウイルス様構造体を形成させる場合、配列番号:1に記載のアミノ酸配列中、少なくとも、第1位のアミノ酸から第58位のアミノ酸までのアミノ酸配列、第59位のアミノ酸から第118位までのアミノ酸配列、及び119位から152位のアミノ酸配列、及び第153位から272位のアミノ酸配列を含めばよい。
Sv40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2を用いて、ウイルス様構造体を細胞内で形成させる場合、このキャプシド蛋白質は、配列番号:1に示すアミノ酸配列中の、少なくとも273位〜307位のVP1結合領域のアミノ酸配列を含んでいればよい。
本発明のウイルス粒子内蛋白質はまた、例えば配列番号:1に示すアミノ酸配列又はそのN−末端配列において、1〜数個のアミノ酸残基が付加、欠失、及び/又は他のアミノ酸による置換によって修飾されており、且つ粒子形成促進因子活性を維持しているものであってもよい。修飾されるアミノ酸残基の数はたとえば1〜20個、例えば1〜15個、あるいは1〜数個である。
本願発明の方法によりウイルス粒子を形成する際の、粒子の外殻を構成するウイルスタンパク質の濃度は、50ng/μL〜500ng/μL、好ましくは70ng〜200ngであり、粒子形成促進因子としてのタンパク質の濃度は、1ng/μL〜1μg/μL、好ましくは10ng/μL〜100ng/μLである。また、ウイルス粒子に被封入物質を封入する場合の被封入物質の濃度は、その物質の種類により異なるが、0.1ng/μL〜10μg/μL、好ましくは10ng/μL〜1μg/μLである。
本発明によれば、上記のウイルスタンパク質を、(1)pH5〜pH10のpH範囲、及び(2)室温にて、(3)130mM〜500mM 一価の陽イオン、(4)2μM〜50mMの二価陽イオン、及び(5)粒子形成促進因子の存在下でインキュベートすることにより、球状の均一なサイズの粒子を形成することができる。一価の陽イオンとしてはナトリウムイオン、例えば塩化ナトリウムが好ましく、ナトリウムイオンの濃度は、好ましくは140mM〜160mMであり、特に150mMが好ましい。
二価陽イオンとしては、カルシウムイオン、カドミウムイオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンなどが使用できるがカルシウムイオンが特に好ましく、例えば塩化カルシウムとして使用される。カルシウムイオンの濃度は、好ましくは1.75mM〜2.25mMであり、とくに2mMが好ましい。
なお、pH8〜pH10の範囲で、室温にて、130〜170mMの塩化ナトリウム、1.5mM〜2.5mMの二価陽イオンの存在下でインキュベートする場合、粒子形成促進因子を添加しなくても、球状の均一なサイズのウイルス粒子様構造体を形成せしめることが出来る。
本発明の、被封入物質を封入したウイルス粒子の形成方法においては、上記のウイルス粒子形成方法において、インキュベーションの際に被封入物質を共存させればよい。被封入物質としては特に限定されないが、例えば核酸、即ちDNA又はRNA、特にDNA、タンパク質又はペプチド、各種の低分子物質、例えば医薬活性物質、などが挙げられる。
このようにして作製した、生理活性分子を含んで成る前記のウイルス構造体は、その生理活性物質を細胞に導入するために使用することが出来る。これにより、ドラッグデリバリー、遺伝子治療などのための、生理活性物質の生細胞への導入、例えば、遺伝子導入、遺伝子治療、特定遺伝子発現及び機能抑制を用いた再生医療などへの応用、標識物質などを含むウィルス様粒子を用いた組織及び臓器特異的又は病巣特異的な標識方法などに応用できる。
実施例1. ウイルス粒子の調製
(1)ウイルスタンパク質(VP1)五量体の調製
10cm径の組織培養用ディッシュ50枚にSf9細胞を1×107個づつ蒔き、SV40のウイルスタンパク質(VP1)を発現する組換えパキュロウイルスを、m.o.i.(Multiplicity of Infection;重複感染度)5〜10で感染させた。
感染72時間後に、細胞を、スクレイパーを用いて培地ごと回収した後、冷却したリン酸緩衝液(PBS)により2回洗浄した。回収した細胞に、氷冷したソニケーション用緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.9),1%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム(DOC),2mM PMSF)を10mL加え、TAITEC社のVP−15S(ソニケーター)を用いて、DUTYCYCLE 50%、出力5の条件で、氷冷しながら10分間超音波破砕した。次に、細胞破砕液を14,000g,4℃にて20分間遠心し、その上清を回収した。
SW41Ti用Open Top Ultraclear Tube(Beckman)に4種類の密度の異なる塩化セシウム溶液(50%、40%、30%、20%(w/v))を密度の高いほうから順番に1.5mlづつ静かに重層し、その上に、上記の細胞破砕液5mLを重層し、SW41Tiローター(BECKMAN)で30,000rpm、4℃にて2.5時間遠心した。遠心後、密度勾配の中程に白く形成されるSV40ウイルスのウイルス様粒子(Virus−like particlc;VLP)の層を回収した。回収した溶液を、SW55Ti用Open Top Ultralear Tube(BECKMAN)に移し、37%(w/v)塩化セシウム溶液を、容量チューブの先端から約5mmに達するまで添加し、これをSW55Tiローター(BECKMAN)で50,000rpm、4℃にて20時間遠心し、再度形成されたVLP層を回収した。
得られた精製ウイルス様タンパク質の溶液に、1/100量の10%(v/v)界面活性剤NP−40を添加し(最終濃度0.1%)、20Mm Tris−HCl(pH7.9),0.1%NP−40の透析溶液中で4℃にて24時間透析を行い、塩化セシウムを除去した。透析後、15,000g,4℃にて10分間遠心し、その上清を回収した。
次に、0.25Mエチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)と1Mジチオスレイトール(DTT)とを、各々の終濃度が25mM EGTA及び30mM DTTとなるようにウイルス様粒子溶液に添加し、37℃にて1時間インキュベートすることにより、ウイルス様粒子をVP1の五量体へと解離させた。インキュベートの後、15,000g,4℃にて10分間遠心し、得られた上清をゲル濾過クロマトグラフィーにかけて、VP1の五量体の精製を行った。このクロマトグラフィーは、HiLoad 16/60 Superdex 200 pgカラム(Phaemacia)を用い、20mM Tris−HCl(pH7.9),150mM NaCl,5mM EGTA,5mM DTT,4℃の条件下で行った。
得られたフラクションのそれぞれの1部分を取ってSDSポリアク
リルアミドゲル電気泳動にかけ、分子量約20OkDaに検出されたVP1五量体とし、このタンパク質を含むフラクションを、VP1五量体の含有フラクションして、液体窒素により凍結した後−80℃で保存した。
(2)SV40−VP2タンパク質の調製
アミノ末端にヒスチジン配列およびFLAG配列を挿入したSV40−VP2遺伝子をpET−14bベクターに組込み大腸菌BL21株に形質転換した。形質転換した大腸菌を250mlのLB培地に接種し、37℃でしんとう培養した。培養液が、対数増殖期(濁度;O.D.値0.3(波長660nm))で1mM IPTGでタンパク質の誘導発現を行った。誘導発現4時間後に、大腸菌を遠心して回収した後、冷却したリン酸緩衝液(PBS)により2回洗浄した。回収した大腸菌に、氷冷した結合緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.9),10%グリセロール,500mM KCl,0.2mM EDTA,0.1% NP−40,0.5mM DTT,10mMイミダゾール)を40ml加え、TAITEC社のVP−15S(ソニケーター)を用いて、DUTY CYCLE 50%、出力5の条件で、氷冷しながら10分間超音波破砕した。次に、細胞破砕液を14,000g、4℃にて20分間遠心し、その上清を回収した。
回収した上清を、予め結合緩衝液で平衡化しておいた500μLのHisレジン(Qiagen社)と混ぜ4℃、1時間ローターでゆっくりと回転させることで攪拌した。攪拌した溶液を遠心し、レジンをペレットにし上清を除いた。このレジンにウォッシュ緩衝液(20mM Tris−HCl(pH7.9),10%グリセロール,500mM KCl,0.2mM EDTA,0.1% NP−40,0.5mM DTT,20mMイミダゾール)を10mL加え、攪拌した。攪拌した溶液を再び遠心し、上清を注意深く除いた。この洗浄操作を3回繰り返した。最後にこのレジンに、エリューション緩衝液((20mM Tris−HCl(pH7.9),10%グリセロール,500mM KCl,0.2mM EDTA,0.1% NP−40,0.5mM DTT,1Mイミダゾール)を500μL加え、攪拌した。攪拌した溶液を遠心し、上清を注意深く回収した。この操作を二回繰り返すことで、計1mlのSV40−VP2タンパク質を得た。
(3)生理的条件下でのウイルス粒子の試験管内再構成
調製したSV40−VP1タンパク質五量体とSV40−VP2タンパク質を用いて生理的条件下でのウイルス粒子の試験管内再構成を行った。即ち、pH5〜7の場合、例えば、VP1五量体タンパク質82.5ng/μL,150μLに、VP2タンパク質800ng/μL,3.4μlを加えて、4℃で30分間インキュベーションし、150mM NaCl,2mM CaCl2の溶液で透析法を用いて透析することで再構成を行った。即ち、VP1タンパク質とVP2タンパク質のmol比が360:84になるように加えた。ウイルス様粒子の検出は、電子顕微鏡観察を用いて行った。結果を図1に示す。
(4)生理的条件下でのVP1五量体の集合化様式の検討
精製したVP1五量体タンパク質を含む溶液を、透析により生理的条件の溶媒に置換し、その集合化様式を調べた。粒子形成が観察された(3)の結果とは異なり、生理的条件下でのpH5.0〜7.0の場合、VP1五量体のみではウイルス粒子様構造体の形成は殆ど見られなかった。VP1、例えば270ng/μL濃度のVP1五量体150μLを、室温で、150mM NaCl、2mM CaCl2でpHが4、または5、または6、または7の溶液で透析した。透析開始16時間後にこの溶液を回収し、電子顕微鏡下で観察して、各条件下で見られるVP1五量体の集合化様式を観察した。結果を図2に示す。
(5)生理的条件下においてVP1五量体にVP2タンパク質を比率を変えて加えた場合の集合化様式
精製したVP1五量体タンパク質に分子量比でVP1タンパク質:VP2タンパク質=360:10.5、360:21、360:42、360:84となるようにタンパク質溶液を混合した。その溶液をpH5.0の生理的条件の溶媒に透析法を用いて室温で置換した。置換した溶媒を電子顕微鏡観察することでVP2タンパク質の濃度が変化した時に見られる集合化の様式を観察した。
例えば、270ng/μL濃度のVP1五量体150μLと1.1μg/μL濃度のVP2タンパク質を1.1μL、2.2μL、4.4μL、8.8μLとなるようにそれぞれタンパク質溶液を混合した。その溶液を4℃、30minインキュベーションして、pH5、150mM NaCl、2mM CaCl2の溶液で16時間、室温で透析した。この溶液を回収し、電子顕微鏡下での観察に供し、VP2タンパク質の濃度変化に伴うVP1五量体の集合化の様式を観察した。結果を図3に示す。幾つかの実験区ではこのpH条件下で特徴的な桿状構造体が見られるがそれと同時に球状のウイルス様粒子が形成されているのがわかる。
(6)カルボキシル末端を欠失したΔC13 VP2タンパク質、ΔC40 VP2タンパク質、ΔC80 VP2タンパク質を加えた場合のVP1五量体の集合化様式
精製したVP1五量体タンパク質と精製したΔC40 VP2タンパク質(分子量約34KDa)、ΔC80 VP2タンパク質(分子量約30KDa)を分子量比でVP1:カルボキシル末端欠失VP2=360:84の比で混ぜ、4℃で30minインキュベーションした。この混合液をpH5.0、150mM NaCl、2mM CaCl2の溶液で室温にて透析した。
例えば、75.7ng/μL濃度のVP1、150μLに763ng/μL濃度のΔC40 VP2を2.6μL、又は758ng/μL濃度のΔC80VP2を2.3μLを加ええ、30min、4℃でインキュベーションした。この混合液を上記の溶
液を用いて室温で16時間透析したのち、この混合液を回収、電子顕微鏡下での観察に供して、カルボキシル末端を欠失したVP2タンパク質を加えた場合のVP1五量体の集合化の様式を観察した。結果を図4に示す。共にVP2アミノ酸配列を一部欠損しているのにも関わらず、ウイルス様粒子形成を誘起することができることがわかる。
(7)点変異を導入したVP2タンパク質を加えた場合のVP1五量体集合化の観察
VP1五量体タンパク質と各種の点変異を導入したVP2タンパク質、283位から285位のPro,Gly,GlyがArg,Glu,Argに変異したもの(以下PGP→RER)、276位のPheと277位のIleがGluに変異したもの(以下FI→EE)、あるいはAlaに変異したもの(以下FI→AA)、296位のLeuと300位のLeuがAlaに変異したもの(以下LPLLL→APLLA)等の各種VP2タンパク質を分子量比で、VP1:点変異体VP2=360:84の比で混合し、4℃で30min静置し、その後、室温でpH5.0、150mM NaCl、2mM CaCl2の溶液に透析した。
例えば82.5ng/μL濃度のVP1 150μLに984ng/μL濃度のPGP→RER VP2を2.7μL、又は1.18μg/μL濃度のFI→EE VP2を2.3μL、又は779ng/μL濃度のLRLLL→ARLLA VP2を3.5μL、又は1.13μg/μL濃度のFI→AA VP2を2.4μLを加え、30min、4℃で静置し、この混合液を上記の条件で透析した。透析開始16時間後にこの混合液を回収し、電子顕微鏡下での観察に供して、点変異を導入したVP2タンパク質を加えた場合のVP1五量体集合化の様式を確認した。結果を図5に示す。いずれの場合もVP2の点変異導入によってウイルス様粒子の形成効果が阻害されることはなかった。
(8)pH8.0〜pH10.0のpH条件下でのVP1五量体集合化の観察
精製したVP1五量体タンパク質を含む溶液を、pH8.0〜pH10.0の条件で透析し、その集合化様式を調べた。粒子形成促進因子が必要なpH5.0〜pH7.0の条件とは異なり、生理的条件下でのpH8.0〜10.0の場合、VP1五量体のみでもウイルス様粒子形成が観察された。例えば270ng/μL濃度のVP1五量体150μLを、室温で、150mM NaCl、2mM CaCl2でpHが8、または9、または10の溶液で透析した。透析開始16時間後にこの溶液を回収し、電子顕微鏡下で観察して、各条件下で見られるVP1五量体の集合化様式を観察した。結果を図7に示す。
実施例2.DNAを取り込んだウイルス様粒子の形成
実施例1を反復した。ただし、生理的条件下でのウイルス様粒子の試験管内再構成の工程(3)において、3000bpのプラスミドを共存させる事により、ウイルス様粒子へのDNA取り込みを行った、形成されたウイルス様粒子をショ糖密度勾配遠心分離にかけて分画、サザンブロッティング法により、DNAの検出を行った。図7に示すとおり、ウイルス様粒子中にDNAが取り込まれた。
調製したSV40−VP1タンパク質五量体とSV40−VP2タンパク質を用いて生理的条件下でのウイルス様粒子の試験管内再構成を行った。その際に、DNAを加えた。即ち、pH5.0〜7.0の場合、例えば、VP1五量体タンパク質75.7ng/μL、150μLに、VP2タンパク質800ng/μL、2.8μLを加え、さらに3000塩基対の環状二本鎖プラスミドDNA(pG5vector)5.7ng/μl、21μLを加えた。その混合溶液を4℃で30分間インキュベーションし、150mMNaCl、2mMCaCl2の溶液で透析法を用いて透析することで再構成を行った。
再構成をしたウイルス様粒子の画分に加えたDNAが検出されることを確認するために、ショ糖密度勾配遠心を行った。遠心したサンプルを分画し、その画分をプロテアーゼ処理することでVP1タンパク質を分解した。そのサンプルをアガロース電気泳動で分離し、サザンブロッティング法を行うことで、DNAがウイルス様粒子の画分に検出できることを確認した。通常は8、9及び10番の画分がウイルス様粒子を含むが、図7で示す通り、DNAが8,9,10番に検出できたことでウイルス様粒子の中にDNAが包含できていることを確認した。
実施例3. DNAを取り込んだウイルス様粒子を用いての細胞への遺伝子導入
実施例2を反復した。但し、プラスミドとして、哺乳類真核細胞内で蛍光タンパク質(GFP)を発現できるpEGを用いた。pEGプラスミドDNAを含むウイルス様粒子の形成はショ糖密度勾配遠沈により行い、ウイルス様粒子を含む画分にDNAが含まれることを確認した。即ち、150mM塩化ナトリウム、2mM塩化カルシウム、20mM Tris HCl(pH7.2)の溶媒中、pEGプラスミドの存在下で、VP1 VP2タンパク質を用いてウイルス様粒子を再構成し、ショ糖密度勾配遠沈でプラスミドDNAを含むウイルス様粒子を分画した。
ウイルス様粒子は抗VP1抗体(α−VP1)を用いたWesternブロット法で、pEGはSouthernプロット法で検出した。結果を図8に示す。図上の数字はフラクションの番号を示し、最初が密度勾配のトップ(Top)最後がボトム(Bottom)であり、Pは遠沈した際にチューブ底にペレットとして沈澱したものを示す。このDNAは、DNA分解酵素Dnase Iによる処理に耐性であるため、VP1−VP2タンパク質の殻に含まれていることが示唆された。
上記ウイルス様粒子を用いて、pEG DNAをCOS−1細胞に導入した。即ち、COS−1細胞を、直径6cmのディッシュに6.65×104細胞の量でまき、一晩培養した。細胞が剥がれないように培養液を除き、上記のプラスミドDNAを含むウイルス様粒子約100μLを細胞に加えた。37℃にて2時間インキュベーションした後、その際細胞が乾かないように15分間おきに培養液に細胞をなじませた。培養後、培養液1.5mLを細胞に加え、37℃にて48時間培養した。この後、細胞のGFPタンパク質の発現を蛍光顕微鏡で確認し、細胞へのプラスミドDNAの導入を確認した。結果を図9に示す。pEGによりコードされる蛍光タンパク質の発現が多くの細胞に見られ、(図9において、白く不定形に見えるものが蛍光タンパク質を発現した細胞)DNAを含むウイルス粒子により高効率の遺伝子導入が確認された。
実施例4. 細胞外でのVP1蛋白質のウイルス様構造体の形成に関与する粒子形成促進因子としてのVP2の部分の特定
SV40のVP1蛋白質からのウイルス様構造体の形成に必要な、粒子形成促進因子としてのSV40のキャプシド蛋白質VP2の領域を特定するため、図10に示す、VP2蛋白質(全長アミノ酸配列は、配列番号:1に示す通り)の種々の領域0.44μMとSV40のVP1蛋白質2.2μMとを、150mM NaCl及び2mM CaCl2を含む溶液(pH5.0)中でインキュベートし、生成物を電子顕微鏡で観察した。結果を図10に示す。図中、「V」は5量体の均一なウイルス様構造体が形成されたことを示し、「Ti」は微小形粒子を示し、「(−)」は粒子が形成されなかったことを示し、「Tu」は、チューブ状の構造体が形成されたことを示す。
図10の結果から明らかな通り、SV40のキャプシド蛋白質VP2が粒子形成促進因子として機能するためには、配列番号:1のアミノ酸配列中の、少なくとも1位〜58位のアミノ酸配列及び119位〜272位のアミノ酸配列が必要である。
実施例5. 細胞内で、ウイルス様構造体にVP2を取り込む場合に必要なVP2の領域の決定
SV40のVP2またはVP3タンパク質(VP3はVP2のC末端と共通な配列である)を昆虫細胞内でVP1と共発現させると、形成されるVLPの内部にVP2、VP3が包含されることが報告されている。これをこの現象を利用して、VP1から構成されるウイルス様構造体に生理活性物質を封入する可能性を確かめるため、VP2もしくはVP3又はその種々の断片にGFPを融合させ、この融合タンパク質とVP1とを共発現させることにより、当該融合タンパク質がウイルス様構造体に包含されるか検討した。
実験方法
融合タンパク質としては、VP2タンパク質、VP3タンパク質(VP2タンパク質の部分)、及びVP1結合領域(VP2の273位−307位)を含むVP2タンパク質(VP3タンパク質)の4種類のC末端断片(合計6種類のタンパク質)につき、夫々のN−末端又はC−末端にGFCを融合させたもの(合計12種類の融合タンパク質)を用いた。これら12種類の融合タンパク質の構造の概略を図11に示す。これらの融合タンパク質を発現させるバキュロウイルスを作製し、当該融合タンパク質を発現させる場居路ウイルスと、VP1を発現させるバキュロウイルスとを昆虫細胞に共感染させた。
84時間後に細胞をスクレイパーで回収した後、氷冷したPBS(−)で細胞を洗浄した。細胞の破砕は超音波破砕により行った。10cm径のディッシュ一枚当たり500μlのソニケーションバッファー(20mM Tris−HCL(pH7.9)、1% sodium deoxycholate(DOC)、2mM phenyl methyl sulfonyl fluoride(PMSF)、1μg/ml chymostatin、aprotinin、leupeptin、antipain、pepstatin)を加え、超音波破砕装置を用いて氷冷しながら溶液が透明になるまで行った。超音波破砕後15,000xg、4℃で10分間遠心し、その上清を細胞溶解液とした。細胞溶解液の一部を、SDS−PAGEで分離後、抗VP1ポリクローナル抗体と抗GFPモノクローナル抗体(Roche製)でウエスタンブロッティングを行いVP1タンパク質及びGFP融合タンパク質の発現を確認した。
調製した細胞溶解液を20mM Tris−HCL(pH7.9)とあわせて20μlとし、5×41mm open top tube(Bekman社製)内にあらかじめ形成させておいた20mM Tris−HCL(pH7.9)に溶解させた20%−40%(w/v)ショ糖密度勾配溶液0.6ml上に静かに重層した。専用のアダプターを用いてチューブをSW55Tiローター内に固定し、50,000rpm、4℃で1時間遠心を行った。遠心後、チューブの上端より55μlずつ溶液を分画し、12フラクション目は残ったサンプルに20mM Tris−HCL(pH7.9)を加え55μlとしチューブの底を洗うようにして回収した。各々の画分の10μlをSDS−PAGEで分離した後、抗VP1ポリクローナル抗体と抗GFPモノクローナル抗体(Roche製)でウエスタンブロッティングを行った。昆虫細胞内でVLPが形成されれば、7−10番目のフラクションにVP1タンパク質のピークが検出される。GFP融合タンパク質のピークがVLPのピークと同様に7−10番目のフラクションに検出されたものは、形成されたVLP中に包含されていることが示唆される。これによって融合タンパク質のウイルス様構造体への包含を検討した。
結果を図11に示す。
この結果から明らかな通り、少なくともVP1結合領域を含むVP2タンパク質の断片のC−末端側にGFPを融合させた場合、VP1から形成されるウイルス様構造体は融合タンパク質を取り込むことができた。
この結果は、GFPに代えて目的とする生理活性物質をVL2またはVsonoP1結合領域を含む断片に連結すれば、その生理活性物質をウイルス様構造体中に取り込むことができることを示唆している。
実施例6. 生体外での、ウイルス様構造体へのDNAの取り込み
SV40のVP1タンパク質とDNAとを、VP1:DNA=600:0〜1の重量比で混合し、30分間、氷上で冷却した後、150mM NaCl及び2mM CaCl2を含む溶液(pH5)に対して、室温にて16時間透析した。この透析物の一部は、電子顕微鏡観察のため、及びタンパク質の定量(inputタンパク質)のために使用し、他の一部はシュークロースクッションを用いる遠心分離にかけ、粒状物及びDNAを回収した。この回収物を用いて、(1)タンパク質の定量(粒子を形成したタンパク質の量)、(2)プロナーゼKによりタンパク質を分解下後のDNAの量(inputDNAの量)、及び(3)DNaseによる封入されていないDNAの分解除去及びプロナーゼKによるタンパク質分解の後に残ったDNA(粒子中に封入されていたDAN)の量を測定した。
結果を図12及び図13に示す。図12から明らかな通り、VP1タンパク質600重量部に対してDNAの量が0.2重量部以上である場合にDNAがVP1ウイルス様構造体に取り込まれた。
実施例7. RNAを取り込んだウイルス様粒子の形成
精製したVP1五量体タンパク質にRNAを混合した。この混合液を生理的条件の溶媒に透析法を用いて室温で置換した。電子顕微鏡を用いて置換した溶媒中のVP1五量体の集合化様式を観察した。
例えば、500ng/μl濃度のVP1五量体20μlと938.7ng/μl濃度のtotal RNA0.79μlを混合し、20mM Tris−HCl(pH7.9)、150mM NaCl、5mM EGTA、5mM DTT溶液で、メスアップすることで体積を100μlとした。その溶液を4℃、30minインキュベーションして、pH5、150mM NaCl、2mM CaCl2の溶液に16時間、室温で透析することで置換した。この溶液を回収し、電子顕微鏡を用いて、置換した溶媒中のVP1五量体の集合化様式を観察した。結果を図14に示す。Total RNAの添加によって球状のウイルス様粒子が形成されているのが分かる。
Claims (29)
- SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのVP1キャプシド蛋白質であるウイルスタンパク質と、SV40ウイルス、JCウイルス若しくはBKウイルスのVP2キャプシド蛋白質又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分である粒子形成促進因子とから構成される、均一なサイズのウイルス粒子様構造体。
- SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのVP1キャプシド蛋白質であるウイルスタンパク質と、SV40ウイルス、JCウイルス若しくはBKウイルスのVP2キャプシド蛋白質又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分である粒子形成促進因子とから構成され、被封入物質を収容した、均一なサイズのウイルス粒子様構造体。
- 前記SV40ウイルスのVP1キャプシド蛋白質が、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するか、或いは配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換を有する蛋白質である、請求項1又は2に記載のウイルス素粒子様構造体。
- 前記置換が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列における、49位のGlu、51位のGlu、160位のGlu、163位のGlu、216位のSer、217位のLys、219位のGlu、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspの内の少なくとも1個のアミノ酸の置換である、請求項3に記載のウイルス様粒子構造体。
- 前記SV40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2が、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するか、或いは配列番号:1に示すアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換により修飾されており、且つ粒子形成促進活性を維持している蛋白質である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウイルス素粒子様構造体。
- 前記SV40ウイルスのVP2キャプシド蛋白質、又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分が、配列番号:1の示すアミノ酸配列、又はその少なくとも1−272位のアミノ酸を含N−末端側部分である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウイルス素粒子様構造体。
- 前記SV40ウイルスのVP2キャプシド蛋白質の粒子形成促進活性を有するN−末端側部分が、配列番号:1に示すアミノ酸配列中の、少なくとも273位〜307位のVP1結合領域のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウイルス素粒子様構造体。
- 前記被封入因子が生理活性物質または非生理活性物質またはそれらの混合物である、請求項2〜7のいずれか1項に記載のウイルス粒子構造体。
- 前記非生理活性物質が低分子物質あるいは高分子物質あるいはそれら混合物である、請求項8に記載のウイルス粒子構造体。
- 前記生理活性物質が、核酸、蛋白質、又は低分子物質である、請求項9に記載のウイルス様粒子構造体。
- SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのVP1キャプシド蛋白質であるウイルスタンパク質を、pH5〜pH10及び室温にて、130mM〜500mM 一価の陽イオン及び2μM〜50mMの二価陽イオンの存在下で、且つSV40ウイルス、JCウイルス若しくはBKウイルスのVP2キャプシド蛋白質又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分である粒子形成促進因子の存在下でインキュベートすることを特徴とする、ウイルスタンパク質と粒子形成促進因子から構成される均一なサイズのウイルス粒子集団の形成方法。
- SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのVP1キャプシド蛋白質であるウイルスタンパク質及び被封入物質を、pH5〜pH10及び室温にて、130mM〜500mMの一価の陽イオン及び2μM〜50mMの二価の陽イオンの存在下で、且つSV40ウイルス、JCウイルス若しくはBKウイルスのキャプシド蛋白質VP2又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分である粒子型性促進因子の存在下でインキュベートすることを特徴とする、被封入物質とそれをとり巻くウイルスタンパク質及び粒子形成促進因子から構成される均一なサイズのウイルス粒子様構造体の形成方法。
- 前記一価の陽イオンがナトリウムイオンである、請求項11又は12に記載の方法。
- 前記二価の陽イオンがカルシウムイオンである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記一価の陽イオンの濃度が150mMであり、そして前記二価陽イオンの濃度が2mMである、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
- 前記SV40ウイルスのVP1キャプシド蛋白質が、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するか、或いは配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換を有する蛋白質である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記置換が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列における、49位のGlu、51位のGlu、160位のGlu、163位のGlu、216位のSer、217位のLys、219位のGlu、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspの内の少なくとも1個のアミノ酸の置換である、請求項16に記載の方法。
- 前記SV40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2が、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するか、或いは配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換により修飾されており、且つ粒子形成促進活性を維持している蛋白質である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記SV40ウイルスのVP2キャプシド蛋白質、又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分が、配列番号:1の示すアミノ酸配列、又はその少なくとも1−272位のアミノ酸を含N−末端側部分である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 前記SV40ウイルスのVP2キャプシド蛋白質の粒子形成促進活性を有するN−末端側部分が、配列番号:1に示すアミノ酸配列中の、少なくとも273位〜307位のVP1結合領域のアミノ酸配列を含んでなる、請求項11〜17のいずれか1項に記載のウイルス素粒子様構造体。
- 前記被封入因子が生理活性物質または非生理活性物質またはそれらの混合物である、請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。
- 前記非生理活性物質が低分子物質あるいは高分子物質あるいはそれら混合物である、請求項21に記載の方法。
- 前記生理活性物質が、核酸、蛋白質、又は低分子物質である、請求項21に記載の方法。
- SV40ウイルス、JCウイルス又はBKウイルスのVP1キャプシド蛋白質であるウイルス蛋白質と、当該ウイルス蛋白質についての結合領域を含んでなり且つ生理活性物質が連結された、SV40ウイルス、JCウイルス若しくはBKウイルスのキャプシドVP2蛋白質又は粒子形成促進活性を有するそのN−末端側部分とを、宿主細胞中で共発現させることを特徴とする、ウイルス蛋白質から構成されるウイルス様粒子に生理活性物質を導入する方法。
- 前記SV40ウイルスのVP1キャプシド蛋白質が、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するか、或いは配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換を有する蛋白質である、請求項24に記載の方法。
- 前記置換が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列における、49位のGlu、51位のGlu、160位のGlu、163位のGlu、216位のSer、217位のLys、219位のGlu、332位のGlu、333位のGlu及び348位のAspの内の少なくとも1個のアミノ酸の置換である、請求項25に記載の方法。
- 前記SV40ウイルスのキャプシド蛋白質VP2が、配列番号:1に示すアミノ酸配列を有するか、或いは配列番号:2に示すアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸の欠失、付加又は他のアミノ酸による置換により修飾されており、且つ粒子形成促進活性を維持している蛋白質である、請求項24又は25に記載の方法。
- 前記SV40ウイルスのVP2キャプシド蛋白質の粒子形成促進活性を有するN−末端側部分が、配列番号:1に示すアミノ酸配列中の、少なくとも273位〜307位のVP1結合領域のアミノ酸配列を含んでなる、請求項24〜26のいずれか1項に記載のウイルス素粒子様構造体。
- 請求項8又は10に記載のウイルス粒子構造体を有効成分とする、生理活性物質を細胞に導入するための組成物。
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