JP4729742B2 - イソチアゾロピリジン化合物の製造方法 - Google Patents

イソチアゾロピリジン化合物の製造方法 Download PDF

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本発明は、イソチアゾロピリジン化合物の新規な製造方法に関するものである。
イソチアゾロピリジン化合物の誘導体には種々の生理活性があることが報告されている。例えば、窒素に結合している置換基を有する化合物の誘導体は、抗菌作用(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)、血小板凝集阻害作用(特許文献2)、抗座瘡作用(特許文献3、特許文献4、特許文献5)等を有していることが知られている。これらの化合物の出発原料となるイソチアゾロピリジン化合物の必要性が注目されており、そのための製造方法の研究が期待されている。
従来から知られているイソチアゾロピリジン化合物を製造する方法には、塩化2−クロロチオニコチニル化合物とアミン類を反応させる方法(非特許文献3)、2−メルカプトニコチンアミド化合物をヨウ素やフェロシアン化カリウムにより酸化する方法(非特許文献2、非特許文献4)、N,N−ジメチル−2−メルカプトニコチンアミド化合物とオキサジリジン化合物を反応させる方法(非特許文献5)、2−メルカプトニコチノニトリルと硫酸を反応させる方法(非特許文献6),2−メルカプトニコチン酸とアジド化合物を反応させる方法(非特許文献7)等が一般的に知られている。
これらのうち塩化2−クロロチオニコチニル化合物を用いる方法では、原料の塩化2−クロロチオニコチニル化合物を合成する際に塩素ガスを用いなければならず、その製造工程では塩素ガスは使用するために、取り扱いに困難さを有しており、できれば使用したしたくない反応とされる。又、酸化反応を利用する反応の場合には、硫黄原子など部位が酸化される可能性がある。又、オキサジリジン化合物を用いる反応においては、原料化合物であるオキサジリジンを製造することができないので、工業的な方法として確立することはできない。2−メルカプトニコチノニトリルと硫酸を反応させる方法では、濃硫酸中で100℃に加熱するという過酷な反応条件を克服する必要がある。2−メルカプトニコチン酸とアゾ化合物を反応させる方法では、アジド化合物は爆発性を有するため、反応に際して危険を伴うことが指摘されている。
このようなことから、安全で、確実な方法によるイソチアゾロピリジン化合物を製造する方法が望まれている。

アメリカ国特許3965107号。 ドイツ国特許2718707号。 ドイツ国特許3313778号。 ドイツ国特許3342538号。 フランス国特許2555450号。 W. Malinka等,Farmaco, 53, 504-512 (1998). M. Pregnolato等, Pharmaco,55, 669-679 (2000). V. Martinez-Merino等, Heterocycles,38, 333 (1994). W. Schaper, Synthesis, 1985, 861-867. S. Andreae, J. Prakt. Chem., 339, 152-158 (1997). T. Zawisza andW. Malinka, Farmaco Ed. Sc., 40, 124-132 (1985). T. Chiyoda等, Synlett,2000, 1427-1428.
本発明の課題は、イソチアゾロピリジン化合物の新規な製造方法を提供することである。
本発明者らは、イソチアゾロピリジン化合物の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、2−スルフェナモイルニコチン酸エステル化合物を塩基の存在下に処理すると、S原子に結合しているアミノ基によるアミド結合が形成されて環化反応が進行し、イソチアゾロピリジン化合物を製造することができることを見いだして、本発明を完成させたものである。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)下記一般式(A)で表されるイソチアゾロピリジン化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される2−スルフェナモイルニコチン酸エステル化合物を塩基の存在下に処理することを特徴とするイソチアゾロピリジン化合物の製造方法。
Figure 0004729742
(式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルキル基、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルコキシル基、炭素数2〜12の鎖状又は炭素数4から9の環状アルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0又は1〜3の整数である。)
Figure 0004729742
(式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルキル基、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルコキシル基、炭素数2〜12の鎖状又は炭素数4から9の環状アルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0又は1〜3の整数である。Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
(2)前記塩基が水酸化カリウムであることを特徴とするイソチアゾロピリジン化合物の製造方法。
本発明の方法によれば、2−スルフェナモイルニコチン酸エステル化合物を塩基存在下に処理することにより、イソチアゾロピリジン化合物を得ることができる。従来法である塩素ガスを用いる塩化スルフェニル化合物を経由する製造方法に比べ、塩素を直接使用しないので製造工程には、塩素を使用することに伴う危険性はない。又、他の製造方法に比較して目的物質の選択性もよく、製造方法として良好なものである。
本発明の方法は、下記一般式(B)で表されるスルフェンアミド化合物を塩基の存在下に処理して下記一般式(A)で表されるイソチアゾロピリジン化合物を製造する方法である。
Figure 0004729742
Figure 0004729742
(上記二つの式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルキル基、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルコキシル基、炭素数2〜12の鎖状又は炭素数4から9の環状アルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0又は1〜3の整数である。Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
前記式中のRの鎖状アルキル基は炭素数1から8であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、t−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル基等が挙げられる。
同じく、Rの環状のアルキル基は炭素数3〜8であり、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基を挙げることができる。
前記式中、Rの鎖状アルコキシ基は炭素数1〜8であり、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチロキシ基を挙げることができる。
同じく、Rの環状アルコキシ基は炭素数3〜8であり、シクロプロピロキシ、シクロブトキシ、シクロペンチロキシ、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基を挙げることができる。
前記式中、Rの鎖状アルコキシカルボニル基は炭素数2〜12であり、具体的には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチロキシカルボニル、ヘキシロキシカルボニル基を挙げることができる。
同じく、Rの環状アルキロキシカルボニル基は炭素数4〜9であり、具体的には、シクロプロポキシカルボニル、シクロブチロキシカルボニル、シクロペンチロキシカルボニル、シクロヘキシロキシカリボニル、メチルシクロヘキシロキシカルボニル、シクロヘプチロキシ、シクロオクチロキシ基を挙げることができる。
前記式中、Rの鎖状アルキル基は炭素数1〜6であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、t−ヘキシル基を挙げることができる。
上記処理に際して用いられる原料物質である一般式(B)で表される2−スルフェナモイルニコチン酸エステル化合物は公知物質である。
(B)の製法の一例を挙げれば、2−メルカプトニコチン酸エステル化合物のヒドロキシルアミン−O−スルホン酸によるS−アミノ化反応による製造方法を挙げることができる。
前記処理に際して用いられる反応条件は以下のとおりである。
反応温度は、0℃〜150℃の範囲の温度で行うことができる。この温度範囲以下の低温の場合には反応時間が遅くなり、この範囲を超えて高すぎる場合には、異常な分解反応や副反応が多い結果となる。このようなことから、前記温度範囲は、10℃〜100℃の範囲であることが好ましい。
この反応は、反応溶媒中行われる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒が挙げられ、これらの混合溶媒の形で使用してもかまわない。
反応時間は、採用される反応温度、及び存在させる前記溶媒の種類により左右され、一概に定めることはできないが、通常は5〜20時間である。
この反応に用いる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム t−ブトキシド、カリウム、t−ブトキシドから選ばれる塩基物質である。
本発明の方法では、溶媒を減圧下留去させ反応混合物に水を加え生成物を塩化メチレンなどの有機溶媒で抽出することにより分離され、生成物として得ることができる。反応生成物は原料物質に対して高収率で得られる。
本発明で得られる一般式Aで表されるイソチアゾロピリジン化合物は、除草剤、殺菌剤の原料として用いられる。
イソチアゾロピリジン化合物の具体例について例示すると以下の化学式(1)〜(2)で示される化合物である。しかしながら、これらの化合物に限定されるものではない。
Figure 0004729742
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
以下に述べる実施例は本発明の理解を容易にするために代表的な化合物の一例をあげたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。また、製造された化合物(1)〜(2)は、前記で示した化合物(1)〜(2)に対応するものである。
内容積200mlのガラス製容器中に2−スルフェナモイルニコチン酸メチル(100mg,0.54mmol)をエタノール(10ml)に溶解させ、水酸化カリウム(100mg)を加えて、室温で45分間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去させ反応混合物に水を加え生成物を塩化メチレンで抽出し生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒塩化メチレン:アセトン:メタノール=100:10:2)で精製した後、目的生成物である化合物(1)のイソチアゾロピリジンを得た(収率:82%)。さらにメタノールを溶媒として再結晶でさらに精製することができた。融点222.0−223.5℃(文献値:222−224℃)。
内容積200mlのガラス製容器中に2−スルフェナモイルニコチン酸エチル(100mg,0.50mmol)をエタノール(10ml)に溶解させ、水酸化カリウム(100mg)を加えて、室温で45分間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去させ反応混合物に水を加え生成物を塩化メチレンで抽出し生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒塩化メチレン:アセトン:メタノール=100:10:2)で精製した後、目的生成物である化合物(1)のイソチアゾロピリジンを得た(収率:92%)。
内容積200mlのガラス製容器中に6−メチル−2−スルフェナモイルニコチン酸エチル(100mg,0.47mmol)をエタノール(10ml)に溶解させ、水酸化カリウム(100mg)を加えて、室温で45分間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧下留去させ反応混合物に水を加え生成物を塩化メチレンで抽出し生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒塩化メチレン:アセトン:メタノール=100:10:2)で精製した後、目的生成物である化合物(2)のイソチアゾロピリジンを得た(収率:69%)。

Claims (2)

  1. 下記一般式(A)で表されるイソチアゾロピリジン化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表されるスルフェンアミド化合物を塩基存在下に処理することを特徴とするイソチアゾロピリジン化合物の製造方法。
    Figure 0004729742
    (式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルキル基、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルコキシル基、炭素数2〜12の鎖状又は炭素数4から9の環状アルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0又は1〜3の整数である。)
    Figure 0004729742
    (式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルキル基、炭素数1〜8の鎖状又は炭素数3〜8の環状アルコキシル基、炭素数2〜12の鎖状又は炭素数4から9の環状アルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。nは、0又は1〜3の整数である。Rは、エチル基を示す。)
  2. 前記塩基が水酸化カリウムであることを特徴とするイソチアゾロピリジン化合物の製造方法。
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