JP4727851B2 - 耐光性に優れたスチレン系微粒子集合体、該集合体を用いた光拡散剤および該集合体の製造方法 - Google Patents

耐光性に優れたスチレン系微粒子集合体、該集合体を用いた光拡散剤および該集合体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐光性を有するスチレン系の架橋微粒子集合体およびこのような微粒子集合体の製造方法に関し、さらには、液晶表示素子、照明器具等に有用な光を拡散させる機能を有する光拡散剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
架橋ポリマーの微粒子を光拡散剤として用いることが行われている。例えば、特開平5−302006号には、ジビニルベンゼンとスチレンからなる実質的に球状の架橋微粒子を光拡散剤として用いたメタクリル系樹脂板が開示されている。しかし、スチレンやジビニルベンゼンといった芳香族系モノマーから得られる架橋微粒子は、耐光性に劣る芳香環の存在によって、徐々に黄変し、光拡散性や外観のみならず光透過性が次第に低下してしまうことが問題視されている。
【0003】
上記観点から、特開平8−109272号では、紫外線吸収剤を架橋微粒子に含ませることにより、メタクリル系樹脂板の耐光性を改善している。しかし、低分子の紫外線吸収剤では、板表面に次第に表面にブリードアウトしてきて、板表面から剥離・脱落してしまう。また、板表面の外観が経時的に低下しまうという不都合がある。
【0004】
さらに、上記架橋微粒子は、いずれも実質的に球状の一次微粒子であって、エマルション重合の後に、粒径を揃えるための分級等を行う必要がある上、光拡散性には限界があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明では、微粒子の光拡散性をさらに改善すると共に、経時低下のない優れた耐光性を付与することを課題として掲げた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し得た本発明の耐光性に優れたスチレン系微粒子集合体は、スチレン系モノマー1種以上と、下記一般式(1)または(2)で表される紫外線安定性モノマー1種以上と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマー1種以上とを必須的に含むモノマー成分の重合により得られるスチレン系微粒子が、複数個連結して平均粒径2〜200μmの集合体となっているところに要旨を有する。
【0007】
【化3】
Figure 0004727851
【0008】
(式中、R1は水素原子またはシアノ基を表し、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子または炭化水素基を表し、R4'はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0009】
【化4】
Figure 0004727851
【0010】
(式中、R1は水素原子またはシアノ基を表し、R2、R3、R2'、R3'はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4'はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは酸素原子またはイミノ基を表す。)上記紫外線安定性モノマーの共重合によって、架橋微粒子の骨格中に紫外線安定性基を導入したため、良好な耐光性を発揮する。また、微粒子自体よりも、複数の微粒子が強固に連結された二次粒子、すなわち微粒子集合体の方が、優れた光拡散性を示す。
【0011】
このとき、微粒子の平均粒径が0.01〜1μmであり、微粒子集合体の平均粒径が2〜200μmであると、非常に優れた光拡散性を示す。また、微粒子同士の連結が、ポリマーバインダーによってなされているものであると、微粒子の連結が一層強固になり、耐熱性や耐溶剤性も向上するため好ましい。なお、本発明には上記スチレン系微粒子集合体を含有する光拡散剤が含まれる。
【0012】
上記スチレン系微粒子集合体を製造するための製造方法としては、請求項1に記載のモノマー成分をエマルション重合することによりスチレン系微粒子を含むエマルション液を得た後、該エマルション液を噴霧乾燥することによってスチレン系微粒子同士を連結させる方法が簡便である。
【0013】
また、ポリマーバインダーを用いて微粒子同士を連結させる場合には、請求項1に記載のモノマー成分をエマルション重合することにより架橋微粒子を含むエマルション液を得た後、該エマルション液とポリマーバインダーを含むエマルション液との混合物を噴霧乾燥することによってスチレン系微粒子同士をポリマーバインダーにより連結させる方法を採用することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のスチレン系微粒子集合体は、スチレン系モノマー1種以上と、一般式(1)または(2)で表される紫外線安定性モノマー1種以上と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマー1種以上とを必須的に含むモノマー成分をラジカル重合して得られるスチレン系微粒子の集合体である。
【0015】
微粒子を得るに当たり、スチレン系モノマーを必須成分とするのは、光に対し、高屈折率を示すため、良好な光拡散性能が得られることによる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上で用いることができるが、安価でハロゲンを含まない点でスチレンが最も好ましい。
【0016】
紫外線安定性モノマーは、上記(1)式または(2)式で表されるピペリジン化合物であり、紫外線を吸収する能力はないが、紫外線吸収剤とは異なる作用で優れた紫外線安定性を発揮する。この紫外線安定化作用については未だ充分に解明されてはいないが、ピペリジン骨格のN−置換基が酸化されて生成するN−オキシルラジカルが、紫外線によって生じたラジカルを捕捉するためであると考えられる。本発明では、紫外線安定性モノマーを用いてスチレン系微粒子を構成するポリマー骨格の中に紫外線安定性基を導入するため、ブリードアウトしやすい低分子の紫外線安定剤や紫外線吸収剤を混合した場合に比べ、耐光性の経時低下は可及的に抑制される。また、低分子の紫外線安定剤等を多量に用いた場合、本発明で目的とする微粒子集合体を製造した後に、紫外線安定剤等がブリードアウトして微粒子の連結力が弱まることがあるが、上記モノマーを使用すればこのような不都合も起こり得ない。
【0017】
前記一般式(1)または(2)のうち、R4で示される置換基は、水素原子か、炭化水素基であるが、この炭化水素基としては、炭素数1〜18のものが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基、フェニル基、フェネチル基等の芳香族炭化水素基等、いずれであってもよい。また、R4'はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0018】
前記一般式(1)で表される紫外線安定性モノマーの具体的化合物としては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0019】
前記一般式(2)で表される紫外線安定性モノマーとしては、例えば1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0020】
紫外線安定性モノマーとしては、上記一般式(1)または(2)で示される化合物のうち、いずれか1種のみを用いてもよく、また2種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0021】
スチレン系モノマー、紫外線安定性モノマーと共に、スチレン系微粒子の合成のために必須的に用いられるのは、ラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマー(上記紫外線安定性モノマー(2)を除く)である。このラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマー(以下、多官能モノマーという)は、スチレン系微粒子を構成するポリマーを重合時に架橋して、3次元網目構造骨格を形成する。この結果、耐熱性、耐溶剤性、強度等の特性が微粒子に付与される。
【0022】
多官能モノマーの具体例としては、ジビニルベンゼンおよびその誘導体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやモノ(ジ、トリまたはポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価以上の多価アルコールと2分子以上の(メタ)アクリル酸とのエステル類等を挙げることができる。
【0023】
スチレン系微粒子を得るためのモノマー成分中の各種モノマーの比率としてはモノマー成分の総量を100質量%としたときに、スチレン系モノマー:30〜97.5質量%、紫外線安定性モノマー:0.5〜50質量%、多官能モノマー:2〜20質量%とすることが好ましい。紫外線安定性モノマーが0.5質量%より少ないと、耐黄変性の向上効果が不充分となることがあり、多官能モノマーが2質量%よりも少ないと、スチレン系微粒子が高温環境下で可塑化したり、溶剤存在下で溶融してしまうので、微粒子状を維持することが難しい。一方、スチレン系モノマーが97.5質量%よりも多いと、結果的に、紫外線安定性モノマーや多官能モノマーが少なくなって、上記不都合が起こり得る。また、紫外線安定性モノマーや多官能モノマーが多すぎると、結果的にスチレン系モノマーが少なくなるので、屈折率の点で好ましくない。
【0024】
スチレン系微粒子を得るには、上述したモノマー成分以外の公知のラジカル重合可能なモノマーを、光拡散性を損なわないものであれば、特に限定されることなく使用できる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類;酢酸ビニル、プロピオンビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニルシアン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー;ブタジエン等の共役ジエン類等が挙げられる。これらのモノマー類は、スチレン系モノマーの一部と置き換えて使用することとし、すなわち、これらのモノマーの使用量分、前記したスチレン系モノマーの使用量を削減すればよい。ただしこれらのモノマーは、全体のモノマー成分100質量%中、10質量%以下の範囲で用いることが高屈折率維持の点で好ましい。
【0025】
上記モノマーの中で、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基含有(メタ)アクリレートは、紫外線安定性モノマーや、後述する紫外線吸収性モノマーの使用により低下する恐れのある各種樹脂中への分散性を高める作用効果を発揮すると共に、耐光性の向上にも役立つため、本発明の光拡散剤を樹脂板中へ分散させて使用する分野に適用する場合等に、好ましく使用できる。
【0026】
また、後述する微粒子連結用ポリマーバインダーが官能基を有するものである場合には、スチレン系微粒子を構成するポリマー中に、ポリマーバインダーの有する官能基と反応し得る官能基を導入しておいてもよい。具体的にはそのような官能基を有するモノマーを共重合すればよく、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有不飽和モノマー;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー等の使用が可能である。これらの官能基含有モノマー類も、スチレン系モノマーの一部と置き換えて使用することとし、全体のモノマー成分100質量%中、10質量%以下の範囲で用いることが高屈折率維持の点で好ましい。
【0027】
さらに、紫外線安定性モノマーの一部に置き換えて、紫外線吸収性モノマーを用いることもできる。紫外線吸収性モノマーとは、紫外線を吸収してそのエネルギーを主として無害な熱エネルギーとして再輻射することができ、かつラジカル重合性を有するモノマーのことを指す。これらのモノマーを共重合成分として使用することにより、得られるスチレン系微粒子に紫外線吸収能が付与される。
【0028】
紫外線吸収性モノマーとしては、下記一般式(3)で表されるベンゾトリアゾール系モノマーが挙げられる。
【0029】
【化5】
Figure 0004727851
【0030】
(式中、R5は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R6は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R7は炭素数1〜12の直鎖状もしくは枝分れ鎖状のアルキレン基または−O−R9−(R9は炭素数2または3の直鎖状もしくは枝分れ鎖状のアルキレン基を表す)を表し、R8は水素原子またはメチル基を表す)が使用可能である。
【0031】
また、下記一般式(4)で表されるベンゾフェノン系モノマーも使用可能である。
【0032】
【化6】
Figure 0004727851
【0033】
(式中、R5、R8は上記と同じ意味を表し、R10は炭素数1〜12の直鎖状もしくは枝分れ鎖状のアルキレン基を表し、R11は水素原子または水酸基を表し、R12は水素原子または炭素数1〜6のアルコキシ基を表す)。
【0034】
さらに、下記一般式(5)で表されるトリアジン系モノマーを用いてもよい。
【0035】
【化7】
Figure 0004727851
【0036】
(式中、R8は上記と同じ意味を表し、R13は直接結合、−(CH2CH2O)n−または−CH2CH(OH)−CH2O−を表し、nは1〜5の整数を表す。R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20,R21は各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニル基、アルキル基を表す)。
【0037】
前記一般式(3)で表されるベンゾトリアゾール系モノマーの好ましい具体例としては、例えば2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0038】
また前記一般式(4)で示されるベンゾフェノン系モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0039】
また前記一般式(5)で示されるトリアジン系モノマーの具体例としては、例えば2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−s−トリアジン等を挙げることができる。
【0040】
上記紫外線吸収性モノマーは、各々特有の紫外線吸収特性を有しているため、各種組み合わせて用いてもよい。この紫外線吸収性モノマーは、紫外線安定性モノマーと併用することが好ましく、両者の合計が、モノマー成分100質量%中、5〜20質量%となるように用いることが好ましい。
【0041】
スチレン系微粒子を得るには、上述したモノマー類からなるモノマー成分を公知のラジカル重合方法で重合することにより得ることができる。重合方法は、特に限定されないが、微粒子が簡単に得られるという点で、エマルション重合が好ましい。エマルション重合は、無機過酸化物やレドックス系開始剤を用いて、最終固形分濃度が5〜60質量%となるようにモノマー成分と水の量を調整し、20〜100℃等の通常の条件で行えばよい。
【0042】
乳化剤としては特に限定されず、公知の汎用乳化剤(例えば、「ハイテノールN−08」(第一工業製薬社製)等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩)等を、モノマー成分100質量部に対し、0.5〜10質量部の範囲で使用して、0.01〜1μmのエマルション粒子が得られるようにする。また、ポリカルボン酸型高分子乳化剤等のカルボキシル基含有乳化剤を使用して、後述する官能基含有ポリマーバインダーとの反応点としてもよい。
【0043】
スチレン系微粒子をエマルション重合によって得た後は、集合体を製造する。集合体製造方法としては特に限定されないが、最も簡便な集合体製造方法は、噴霧式乾燥法である。噴霧式乾燥法は、スプレードライヤーや気流乾燥機を用いて、ガス気流中に水分散体等をノズルから噴霧して、乾燥粒子を得るものである。この方法によれば、気流温度やエマルションの固形分濃度等の調整によって、集合体の粒径や形状の制御が簡単に行える。
【0044】
スチレン系微粒子(一次粒子)は、平均粒径0.01〜1μmとする。一次粒子が0.01μmより小さいと、集合体(二次粒子)を形成しても集合体が1個の粒子の場合と同程度の光拡散性しか示さないため好ましくない。また、1μmを超えると、二次粒子を構成する一次粒子の個数が少なくなるので、やはり1個の粒子と同程度の光拡散性しか示さない。また、集合体(二次粒子)は2〜200μmとする。この範囲が、良好な光拡散性を示すためである。集合体が2μmより小さいと充分な光拡散性が得られず、200μmを超えると、集合体を光拡散用部材として利用するときに部材表面が粗くなるため好ましくない。平均粒径の測定方法は、特に限定されないが、一次粒子の平均粒径は非常に小さいので、光散乱式粒度分布計で測定することが好ましい。二次粒子は、顕微鏡観察や、コールターカウンターを用いる方法等、適宜公知の方法で平均粒径を求めることができる。
【0045】
平均粒径2〜200μmのスチレン系微粒子集合体を得るための具体的な噴霧式乾燥条件としては、エマルションの固形分濃度を5〜60質量%、噴霧入口温度を100〜200℃とし、粉体出口温度を30〜100℃とすることが好ましい。他の条件、例えば供給速度、噴霧圧、風量等は、噴霧乾燥機の能力に応じて適宜設定される。
【0046】
スチレン系微粒子集合体は、単に噴霧式乾燥を行うだけで得ることができる。これは、噴霧乾燥時の加熱によって、一次粒子表面が可塑化して、粒子同士が融着して連結するためである。より強固に連結させるためには、バインダーを用いることが好ましい。バインダーとしては、塗料等に塗膜形成成分として用いられる公知のポリマーが特に限定されず使用可能である。ポリマーバインダーを固形分濃度を5〜60質量%のエマルション状態とし、スチレン系微粒子エマルションと混合した後、上記条件で噴霧式乾燥を行えば、ポリマーバインダーによってスチレン系微粒子が固着・連結した微粒子集合体を得ることができる。スチレン系微粒子エマルションの固形分に対し、ポリマーバインダー(固形分)を2〜30質量%の範囲で用いると、良好な連結力を得ることができる。より好ましいポリマーバインダー量は、5〜20質量%である。
【0047】
より一層強固に連結させるために、反応性バインダーを用い、ポリマーバインダーを架橋する手段を採用することもできる。ポリマーバインダーを架橋させるには、▲1▼ポリマーバインダーに官能基を導入しておき、スチレン系微粒子にもその官能基と反応し得る官能基を結合もしくは吸着させておく方法、▲2▼ポリマーバインダーに自己架橋可能な官能基を導入する方法、▲3▼ポリマーバインダーに官能基を導入し、この官能基と反応し得る架橋剤を添加する方法、等が挙げられる。これらの方法を採用すれば、噴霧乾燥時の加熱時に、官能基反応が起こり、ポリマーバインダーが架橋する。この結果得られるスチレン系微粒子集合体は、溶剤中に入れて撹拌しても再分散することのない極めて強固な連結状態を示す。
【0048】
スチレン系微粒子に官能基を導入するには、前記した官能基含有モノマーを共重合成分として利用すればよい。また、特に官能基含有モノマーを共重合させなくても、エマルション重合に用いた乳化剤がスチレン系微粒子表面に吸着しているので、この乳化剤がカルボキシル基等の官能基を有している場合は、この官能基を反応点として利用することもできる。
【0049】
ポリマーバインダーに導入する官能基としては、オキサゾリン基、エポキシ基、アジリジニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられる。ポリマーバインダーに導入する官能基は、1分子に2個以上あることが好ましい。具体的には、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等を構成単位として含むオキサゾリン基含有ポリマー(例えば、日本触媒社製「エポクロス」シリーズ)、各種エポキシ樹脂、アジリジニル基やカルボキシル基を持つモノマーを構成単位として含むポリマー、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマーを構成単位として含むポリマー、糖類等が挙げられる。
【0050】
上記▲2▼の方法を採用するには、オキサゾリン基含有ポリマーをポリマーバインダーとして用いることが特に好ましい。オキサゾリン基は、スチレン系微粒子に特に官能基がなくても、噴霧乾燥時の加熱によって自己架橋を行うためである。従って、この場合も、溶剤に入れて撹拌しても再分散することのない極めて強固な連結状態を示すスチレン系微粒子集合体が得られる。
【0051】
スチレン系微粒子集合体を製造する際に、スチレン系微粒子のエマルション液および/またはポリマーバインダーのエマルション液中に、所望の添加剤を添加してもよい。例えば、公知の架橋剤、湿潤剤、粘性調節剤、増粘剤、消泡剤、改質剤、顔料、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の添加剤を、本発明の目的を阻害しない程度の量、添加することができる。
【0052】
以上のようにしてスチレン系微粒子集合体が得られる。本発明のスチレン系微粒子集合体は、複数のスチレン系微粒子が球状を維持したまま連結した形状を示す。このため、集合体の表面には、各微粒子の球面が作り出す凹凸が形成されている。この凹凸が光拡散性を一層増大させるため、スチレン系微粒子の有する高屈折率と相まって、良好な光拡散性を示すものと考えられる。
【0053】
従って、本発明のスチレン系微粒子集合体は光拡散剤として好適に用いることができ、本発明の光拡散剤を、光拡散用部材形成用樹脂(例えばポリメチルメタクリレート等)に混合して、公知の方法で部材を形成すればよい。あるいは、コーティング剤に添加して、光拡散用部材表面に光拡散性皮膜を形成する手段を採用してもよい。光拡散用部材としては、液晶表示素子の光拡散層、照明器具の外装部材等が挙げられるが、その他、マット剤やインク受容層として利用することも可能である。
【0054】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお特に断りのない限り、実施例および比較例に記載された「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示すものとする。
【0055】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入口を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、純水433gと、乳化剤(「ハイテノールN−08」;(第一工業製薬社製;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩)を0.9gを仕込み、窒素置換を行いながら、撹拌下に70℃まで昇温した。70℃になった段階でスチレン57gを添加し、5分後に過硫酸カリウムの2%水溶液を70g添加した。別途、スチレン548g、ジビニルベンゼン35g、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(「アデカスタブLA−82」;旭電化社製)60gおよび純水752gに、ハイテノールN−08を34g加えて撹拌し、プレエマルションを調製した。
【0056】
上記過硫酸カリウムの添加から20分経過後、70℃に維持したまま、上記プレエマルションを等速度で4時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃へ昇温し、2時間熟成した。熟成終了後、40℃に冷却し、スチレン系微粒子のエマルションを得た。このエマルションの平均粒径を光散乱式粒度分布計(Particle Sizing System 社製「NICOMP 370」で測定したところ、0.2μmであった。また、固形分濃度は37%であった。
【0057】
上記スチレン系微粒子のエマルション200gに対し、オキサゾリン基含有ポリマーエマルション(「エポクロスK−2020E」;日本触媒社製;固形分濃度46%)を16g加え、よく混合した。
【0058】
この混合物を、スプレードライヤー(ヤマト化学社製)で、供給速度:14ミリリットル/分、噴霧圧:2.3kg/cm2、風量:0.3m3/分、入口温度150℃、出口温度60℃の条件で、噴霧乾燥し、スチレン系微粒子集合体を製造した。
【0059】
この集合体を水に分散させてその平均粒径をコールターカウンター(「マルチサイザーII型」コールター社製)で測定したところ、14μmであった。また、走査型電子顕微鏡で集合体を観察すると、図1に示すように、スチレン系微粒子が球状を維持したまま相互に連結された集合体であることが確認できた。
【0060】
実施例2
実施例1において、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(「アデカスタブLA−82」;旭電化社製)を60g使用したものを30gとし、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(「RUVA−93」;大塚化学社製;紫外線吸収性モノマー)30gと併用した以外は、実施例1と同様にしてスチレン系微粒子集合体を製造した。
【0061】
比較例1
実施例1で使用した紫外線安定性モノマーに代えて、重合性モノマーでない添加型紫外線安定剤(「アデカスタブLA−77」;旭電化社製)を60g使用した以外は実施例1と同様にして、スチレン系微粒子集合体を製造した。
【0062】
比較例2
実施例1で使用した紫外線安定性モノマーを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、スチレン系微粒子集合体を製造した。
【0063】
実施例および比較例1で製造したスチレン系微粒子集合体を用いて、耐光性テストを行った。ポリエチレン99質量%に対し、スチレン系微粒子集合体1質量%添加し、射出成形機で混練し成形して、3.5cmφ×5mm厚のテストピースを作成した。このテストピースを、超耐光性試験機(「アイスーパーUVテスター」;岩崎電気社製)に設置し、100mW/cm2の強度の紫外線を照射しながら、1時間、10時間、および20時間経過後の黄変度を変化なしを○、やや黄変を△、黄変したものを×として評価した。結果を表1に示した。本発明のスチレン系微粒子集合体は全く黄変せず、優れた耐光性を示した。
【0064】
【表1】
Figure 0004727851
【0065】
【発明の効果】
本発明のスチレン系微粒子集合体は、特定構造を有する紫外線安定性モノマーを含むモノマー成分をラジカル重合して得られるスチレン系微粒子を複数個強固に連結した集合体であり、光拡散性に優れると共に、耐光性にも優れている。また、本発明の製造方法によれば、強固な連結力を有する微粒子集合体を容易に製造することができる。従って、本発明のスチレン系微粒子集合体は、光拡散剤として極めて高性能である。また、マット剤として、あるいはインク用受容層として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られたスチレン系微粒子集合体の走査型電子顕微鏡による図面代用写真である。

Claims (3)

  1. スチレン系モノマー1種以上と、下記一般式(1)または(2)で表される紫外線安定性モノマー1種以上と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有するモノマー1種以上とを必須的に含むモノマー成分の重合により得られる平均粒径0.01〜1μmのスチレン系微粒子が、ポリマーバインダーによって複数個連結して平均粒径2〜200μmの集合体となっていることを特徴とする耐光性に優れたスチレン系微粒子集合体。
    Figure 0004727851
    (式中、R1は水素原子またはシアノ基を表し、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4は水素原子または炭化水素基を表し、R4'はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは酸素原子またはイミノ基を表す。)
    Figure 0004727851
    (式中、R1は水素原子またはシアノ基を表し、R2、R3、R2'、R3'はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R4'はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは酸素原子またはイミノ基を表す。)
  2. 請求項1に記載されたスチレン系微粒子集合体を含有することを特徴とする光拡散剤。
  3. 請求項に記載されたスチレン系微粒子集合体の製造方法であって、上記モノマー成分をエマルション重合することにより架橋微粒子を含むエマルション液を得た後、該エマルション液とポリマーバインダーを含むエマルション液との混合物を噴霧乾燥することによってスチレン系微粒子同士をポリマーバインダーにより連結させることを特徴とする耐光性に優れたスチレン系微粒子集合体の製造方法。
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