JP4723271B2 - ポリビニルピロリドン組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリビニルピロリドン組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリビニルピロリドン組成物およびその製造方法に関する。
ポリビニルピロリドンは、安全な機能性ポリマーとして、化粧品、医農薬中間体、食品添加物、感光性電子材料、粘着付与剤などの用途に、あるいは、種々の特殊工業用途に、幅広い分野で用いられている。ポリビニルピロリドンは、一般的には、水媒体中、金属触媒の存在下で、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合することにより製造される(例えば、特許文献1、2、3を参照)。重合時に助触媒として、第1〜3級アミンを用いると重合が遅くなり、得られたポリマー溶液が着色するが(例えば、特許文献1の第1頁右下欄を参照)、アンモニアを用いると重合が速やかに進行し、着色が抑えられる。
上記のような方法で製造すると、ポリビニルピロリドンは水溶液の形態で得られるが、用途によっては、固形物とする必要がある。ポリビニルピロリドン固形物は、水溶液を加熱乾燥して水分を充分に蒸発させることによって得られる。ところが、水溶液にアンモニアが含まれていると、加熱乾燥時にポリビニルピロリドンの架橋反応やグラフト反応などが進行し、水に不溶な高分子量のポリビニルピロリドンを生じるという問題点がある。また、得られたポリビニルピロリドン固形物を水に溶解させると、ゲル化することもある。それゆえ、着色が少なく、不溶物およびゲル化物を実質的に生じない、高品質のポリビニルピロリドンが求められている。
特開昭62−62804号公報 特開平11−71414号公報 特開2002−155108号公報
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、高品質のポリビニルピロリドンを固形物または水溶液の形態である組成物として提供すること、すなわち、固形物の形態である場合には、水媒体に溶解しても不溶物およびゲル化物を実質的に生じないので溶解性に優れ、かつ着色が少ないポリビニルピロリドン組成物を、また、水溶液の形態である場合には、加熱乾燥しても不溶物を実質的に生じないので耐熱性に優れ、かつ色相が低いポリビニルピロリドン組成物を提供すること、ならびに、このような組成物を簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討の結果、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液を加熱乾燥するにあたり、第2級アミンを共存させれば、不溶物を実質的に含有しないポリビニルピロリドン固形物が得られること、得られた固形物を水に溶解した場合にゲル化しないことを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリビニルピロリドン組成物は、固形物または水溶液の形態であり、アンモニアおよび第2級アミンを含有することを特徴とする。
固形物の形態である前記ポリビニルピロリドン組成物は、アンモニアおよび第2級アミンを含有するポリビニルピロリドン水溶液を加熱乾燥して得られる。前記ポリビニルピロリドン水溶液は、好ましくは、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアおよび第2級アミンを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られるか、あるいは、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液に第2級アミンを添加して得られる。前記ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液は、好ましくは、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られる。
水溶液の形態である前記ポリビニルピロリドン組成物は、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液に第2級アミンを添加して得られる。前記ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液は、好ましくは、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られる。
また、水溶液の形態である前記ポリビニルピロリドン組成物は、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアおよび第2級アミンを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合しても得られる。
本発明によれば、高品質のポリビニルピロリドンが固形物または水溶液の形態である組成物として簡便に得られる。組成物が固形物の形態である場合には、水媒体に溶解しても不溶物およびゲル化物を実質的に生じないので溶解性に優れ、かつ着色が少ない。また、組成物が水溶液の形態である場合には、加熱乾燥しても不溶物を実質的に生じないので耐熱性に優れ、かつ色相が低い。
<ポリビニルピロリドン組成物>
本発明のポリビニルピロリドン組成物は、ポリビニルピロリドンの固形物または水溶液がアンモニアおよび第2級アミンを含有しているものである。ここで、固形物は、好ましくは、ポリビニルピロリドン粉体であるが、粒状、顆粒状、球状、塊状、無定形などの形状であってもよい。固形物を構成する粒子などの大きさは、用途に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
ポリビニルピロリドンは、N−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマーであり、その分子量は、用途に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、フィケンチャー法によるK値で表すと、その下限が好ましくは10であり、また、その上限が好ましくは60、より好ましくは50である。ここで、フィケンチャー法によるK値は、後述する実施例で説明する方法により測定される値である。本発明のポリビニルピロリドン組成物は、本発明の効果を損なわない限り、ポリビニルピロリドン、アンモニアおよび第2級アミン以外の他の成分を含有していてもよいが、組成物が固形物の形態である場合には、好ましくは、アンモニアおよび第2級アミンを含有すること以外は実質的にポリビニルピロリドンからなる。組成物が水溶液の形態である場合、ポリビニルピロリドンの濃度は、その下限が好ましくは30質量%、より好ましくは40質量%であり、また、その上限が好ましくは60質量%、より好ましくは55質量%である。
ポリビニルピロリドンは、N−ビニル-2−ピロリドンを重合させて得られ、その方法は従来公知のいかなる方法であってもよいが、着色を抑えるという観点から、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアを助触媒として用いる方法が好ましい。このような方法を用いれば、ポリビニルピロリドンは、水溶液の形態で得られるが、必然的に、アンモニアを含有することになる。組成物が水溶液の形態である場合、アンモニアの含有量は、その下限が好ましくは50ppmであり、また、その上限が好ましくは4,000ppm、より好ましくは3,000ppm、さらに好ましくは2,000ppmである。組成物が固形物の形態である場合には、ポリビニルピロリドン水溶液を加熱乾燥して得られるので、アンモニアの含有量は、加熱乾燥の方法によって変化する。例えば、スプレードライヤー乾燥法を用いる場合には、その下限が好ましくは50ppmであり、また、その上限が好ましくは500ppm、より好ましくは300ppmである。また、ドラムドライヤー乾燥法などの加熱面密着型の乾燥法を用いる場合には、その下限が好ましくは50ppmであり、また、その上限が好ましくは3,000ppm、より好ましくは500ppm、さらに好ましくは100ppmである。
本発明において、「第2級アミン」とは、アンモニアの水素原子2個を置換もしくは無置換の炭化水素基(この炭化水素基が後述の如く統合して含窒素複素環を形成する場合を含む。)で置換した化合物を意味する。ここで、2個の炭化水素基は、同一であっても互いに異なっていてもよく、その各々が脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基から独立して選択されるか、あるいは、互いに結合して、隣接する窒素原子と共に、場合によっては、さらに窒素、酸素および硫黄から選択される他の異種原子と共に、含窒素複素環を形成していてもよい。なお、第2級アミンは、酸と作用して結晶性塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの形態で用いてもよい。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1以上、4以下のアルキル基、炭素数2または3のアルケニル基などが例示され、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数5または6のシクロアルキル基などが例示され、具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6以上、8以下のアリール基、炭素数7または8のアラルキル基などが例示され、具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
含窒素複素環としては、例えば、1個または2個の窒素原子を含む複素環が例示され、具体的には、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環などが挙げられる。
前記炭化水素基が置換基を有する場合、この置換基としては、例えば、炭化水素基(例えば、CH3−、CH3CH2−、C65−)、ハロゲン基(例えば、F−、Cl−、Br−、I−)、ヒドロキシ基(HO−)、カルボニル基(−CO−)、エーテル基(例えば、CH3O−、C25O−、C65O−)、カルボキシ基(−COOH)、エステル基(例えば、−COOCH3、−COOC25、CH3COO−、C65COO−)、アシル基(例えば、−CHO、CH3CO−、C65CO−)、スルファニル基(HS−)、スルホ基(−SO3H)、スルファモイル基(H2N−SO2−)、アミノ基(H2N−)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO2)などが挙げられる。前記炭化水素基は、これらの置換基を単独で有していても2種以上を組み合わせて有していてもよい。
第2級アミンとしては、具体的には、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルブチルアミン、N−エチルイソブチルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−メチルビニルアミン、N−メチルアリルアミンなどの脂肪族第2級アミン;N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−メチルトリメチレンジアミン、N−エチルトリメチレンジアミン、N,N’−ジメチルトリメチレンジアミン、N,N’−ジエチルトリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミンなどの脂肪族ジアミンおよびトリアミン;N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、N−メチルフェニチルアミン、N−エチルフェネチルアミンなどの芳香族アミン;N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−イソブチルエタノールアミンなどのモノアルカノールアミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミンなどのジアルカノールアミン;ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン、チオモルホリンなどの環状アミンが挙げられる。これらの第2級アミンは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの第2級アミンのうち、ジアルカノールアミンおよびジアルキルアミンが好ましく、ジアルカノールアミンがより好ましく、中でもジエタノールアミンが特に好適である。
第2級アミンは、N−ビニル−2−ピロリドンの重合時に助触媒として用いて含有させてもよいし、ポリビニルピロリドンの固形物または水溶液に別途添加してもよい。いずれの場合も、最終的に得られるポリビニルピロリドン組成物の第2級アミン含有量は、その下限が好ましくは500ppm、より好ましくは1,000ppmであり、また、その上限が好ましくは5,000ppm、より好ましくは4,000ppmである。
本発明のポリビニルピロリドン組成物は、固形物の形態である場合には、水媒体に溶解しても不溶物およびゲル化物を実質的に生じないので溶解性に優れ、かつ着色が少ない。また、水溶液の形態である場合には、加熱乾燥しても不溶物を実質的に生じないので耐熱性に優れ、かつ色相が低い。なお、組成物が固形物の形態である場合には、水媒体に溶解して濾過したとき、あるいは、組成物が水溶液の形態である場合には、加熱乾燥して固形物を得て、この固形物を水媒体に再溶解して濾過したとき、場合によっては、500ppm以下の不溶物が残存することがあるが、このような場合も不溶物を実質的に生じないものとして本発明の範囲内に含まれるものとする。
本発明のポリビニルピロリドン組成物は、例えば、化粧品、医農薬中間体、食品添加物、感光性電子材料、粘着付与剤などの用途に、あるいは、種々の特殊工業用途(例えば、中空糸膜の製造)に、そのままの形態で用いてもよいし、水溶液の形態である場合には、さらに希釈または濃縮して用いるか、あるいは、さらに加熱乾燥して固形物の形態に変化させて用いてもよい。
<ポリビニルピロリドン組成物の製造方法>
固形物の形態であるポリビニルピロリドン組成物は、アンモニアおよび第2級アミンを含有するポリビニルピロリドン水溶液を加熱乾燥して得られる。前記ポリビニルピロリドン水溶液は、好ましくは、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアおよび第2級アミンを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られるか、あるいは、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液に第2級アミンを添加して得られる。ここで、前記ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液は、好ましくは、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られる。
水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物は、例えば、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液に第2級アミンを添加して得られる。前記ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液は、好ましくは、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られる。
また、水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物は、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアおよび第2級アミンを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合しても得られる。
固形物の形態であるポリビニルピロリドン組成物を製造する場合、アンモニアおよび第2級アミンを含有するポリビニルピロリドン水溶液を加熱乾燥する方法としては、従来公知のいかなる方法を用いてもよく、特に限定されるものではないが、好ましくは、スプレードライヤー乾燥法、ドラムドライヤー乾燥法、流動床乾燥法、ベルト乾燥法などが挙げられる。これらの加熱乾燥法は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの加熱乾燥法のうち、スプレードライヤー乾燥法およびドラムドライヤー乾燥法がより好ましい。加熱乾燥の温度および時間は、その方法に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
固形物または水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物を製造する場合、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液に対する第2級アミン添加量は、最終的に得られるポリビニルピロリドン組成物の第2級アミン含有量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。ここで、第2級アミン含有量は、ポリビニルピロリドン組成物について説明した際に述べたとおりである。
固形物または水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物を製造する場合、N−ビニル−2−ピロリドンの重合は、好ましくは、水媒体中、金属触媒およびアンモニア助触媒の存在下で、過酸化水素を重合開始剤とするラジカル重合によって行う。その手順は、従来公知のいかなる手順であってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、金属触媒を含む水媒体中に、N−ビニル−2−ピロリドン、助触媒および重合開始剤を順次添加して重合することができる。あるいは、N−ビニル−2−ピロリドンを含む水媒体中に、金属触媒、助触媒および重合開始剤を順次添加して重合することもできる。重合温度は、その下限が好ましくは50℃であり、また、その上限が好ましくは100℃である。重合時間は、所望の分子量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。
金属触媒としては、N−ビニル−2−ピロリドンの重合に用いられる従来公知の金属触媒であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、酢酸銅(II)などの重金属塩などが挙げられる。金属触媒の添加量は、N−ビニル−2−ピロリドンの仕込み量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、N−ビニル−2−ピロリドンに対して、質量比で、その下限が好ましくは50ppbであり、また、その上限が好ましくは400ppbである。
助触媒として用いるアンモニアは、そのまま添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。アンモニアの添加量は、最終的に得られるポリビニルピロリドン組成物のアンモニア含有量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。ここで、アンモニア含有量は、ポリビニルピロリドン組成物について説明した際に述べたとおりである。
助触媒としてアンモニアに加えて第2級アミンを用いる場合、この第2級アミンは、そのまま添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。助触媒として用いる第2級アミンは、ポリビニルピロリドン組成物について説明した際に列挙したものを用いることができる。第2級アミンの添加量は、最終的に得られるポリビニルピロリドン組成物の第2級アミン含有量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではない。ここで、第2級アミン含有量は、ポリビニルピロリドン組成物について説明した際に述べたとおりである。
なお、助触媒として、アンモニアを用いる場合、あるいは、アンモニアおよび第2級アミンを用いる場合、さらに助触媒として、第1級アミンや第3級アミンを併用してもよい。第1〜3級アミンだけを用いて得られたポリビニルピロリドン水溶液は、加熱乾燥時に着色および不溶物を生じるので品質に影響が出るが、アンモニアを併用することで、着色を抑えることができる。第1級アミンや第3級アミンを併用する場合、その添加量は、アンモニアの添加量に応じて適宜調節すればよく、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されるものではない。
重合開始剤として用いる過酸化水素は、そのまま添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。過酸化水素の添加量は、N−ビニル−2−ピロリドンの仕込み量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、N−ビニル−2−ピロリドンに対して、質量比で、その下限が好ましくは0.1%であり、また、その上限が好ましくは6%である。
上記のような方法でN−ビニル−2−ピロリドンを重合すれば、ポリビニルピロリドンは水溶液の形態で得られる。このポリビニルピロリドン水溶液は、上記したように、助触媒としてアンモニアに加えて第2級アミンを用いた場合には、そのままで、あるいは、希釈または濃縮して、水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物とするか、あるいは、従来公知の方法で加熱乾燥して、固形物の形態であるポリビニルピロリドン組成物とすればよい。助触媒としてアンモニアだけを用いた場合には、ポリビニルピロリドンおよびアンモニアを含有する水溶液が得られるので、第2級アミンを添加し、そのままで、あるいは、希釈または濃縮して、水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物とするか、あるいは、従来公知の方法で加熱乾燥して、固形物の形態であるポリビニルピロリドン組成物とすればよい。
本発明の製造方法によれば、適当な段階で第2級アミンを用いるだけであるので、高品質のポリビニルピロリドンを固形物または水溶液の形態である組成物として簡便に製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例において、特に断らない限り、「部」は質量部を表す。
まず、実施例で得られた固形物または水溶液の形態であるポリビニルピロリドン組成物の評価方法について説明する。
<K値>
得られたポリビニルピロリドン水溶液を濃度が1質量%になるように水で希釈し、この希釈液の粘度を25℃で毛細管粘度計によって測定し、フィケンチャー式を用いて、K値を求めた。数値が小さいほど、分子量が低いことを表す。
<色相(5%APHA)>
得られたポリビニルピロリドン水溶液を濃度が5質量%になるように水で希釈し、この希釈液の色相(5%APHA;ハーゼン色数ともいう。)をJIS−K3331に従って測定した。数値が小さいほど、色相が低いことを表す。
<溶解性>
得られたポリビニルピロリドン固形物5gを、さらに150℃で2時間加熱した後、45gの水を加えて濃度10質量%のポリビニルピロリドン水溶液を調製し、その状態を目視にて観察して、以下のように評価した。
○:不溶物およびゲル化物を実質的に生じておらず、溶解性が優れている
×:不溶物またはゲル化物を生じており、溶解性が劣っている。
<着色>
溶解性試験で得られたポリビニルピロリドン水溶液を濃度が5質量%になるように水で希釈し、この希釈液の色相(5%APHA;ハーゼン色数ともいう。)をJIS−K3331に従って測定した。数値が小さいほど、着色が少ないことを表す。
実施例1
硫酸銅(II)0.00023部と水430.8部とを反応容器に仕込み、80℃まで昇温した。次いで、80℃を維持しながら、N−ビニル−2−ピロリドン450部、25%アンモニア水0.9部、ジエタノールアミン1.25部、および30%過酸化水素9部を、各々それぞれ180分間かけて滴下した。滴下終了後、30%過酸化水素2.7部を3回に均等に分けて1.5時間間隔で添加し、3回目の添加後、さらに80℃で1時間保持して、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液の物性を測定したところ、濃度が50質量%、K値が29、色相(5%APHA)が10、N−ビニル−2−ピロリドン残存量がポリビニルピロリドンに対して10ppm以下であった。得られたポリビニルピロリドン水溶液10gを150℃で1時間加熱乾燥し、5gのポリビニルピロリドン固形物を得た。得られたポリビニルピロリドン固形物について、溶解性および着色を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、PVPはポリビニルピロリドンの略である。
実施例2
硫酸銅(II)0.00023部と水430.8部とを反応容器に仕込み、80℃まで昇温した。次いで、80℃を維持しながら、N−ビニル−2−ピロリドン450部、25%アンモニア水0.9部、および30%過酸化水素9部を、各々それぞれ180分間かけて滴下した。滴下終了後、30%過酸化水素2.7部を3回に均等に分けて1.5時間間隔で添加し、3回目の添加後、さらに80℃で1時間保持したのち、ジエタノールアミン1.25部を加えて、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液の物性を測定したところ、濃度が50質量%、K値が29、色相(5%APHA)が10、N−ビニル−2−ピロリドン残存量がポリビニルピロリドンに対して10ppm以下であった。得られたポリビニルピロリドン水溶液10gを150℃で3時間加熱乾燥し、5gのポリビニルピロリドン固形物を得た。得られたポリビニルピロリドン固形物について、溶解性および着色を評価した。その結果を表1に示す。
比較例1
硫酸銅(II)0.00023部と水431.9部とを反応容器に仕込み、80℃まで昇温した。次いで、80℃を維持しながら、N−ビニル−2−ピロリドン450部、25%アンモニア水0.9部、および30%過酸化水素9部を、各々それぞれ180分間かけて滴下した。滴下終了後、30%過酸化水素2.7部を3回に均等に分けて1.5時間間隔で添加し、3回目の添加後、さらに80℃で1時間保持して、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液の物性を測定したところ、濃度が50質量%、K値が29、色相(5%APHA)が5、N−ビニル−2−ピロリドン残存量がポリビニルピロリドンに対して10ppm以下であった。得られたポリビニルピロリドン水溶液10gを150℃で3時間加熱乾燥し、5gのポリビニルピロリドン固形物を得た。得られたポリビニルピロリドン固形物について、溶解性および着色を評価した。その結果を表1に示す。
比較例2
硫酸銅(II)0.00023部と水430.2部とを反応容器に仕込み、80℃まで昇温した。次いで、80℃を維持しながら、N−ビニル−2−ピロリドン450部、ジエタノールアミン2.69部、および30%過酸化水素9部を、各々それぞれ180分間かけて滴下した。滴下終了後、30%過酸化水素2.7部を3回に均等に分けて1.5時間間隔で添加し、3回目の添加後、さらに80℃で1時間保持して、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液の物性を測定したところ、濃度が50質量%、K値が28、色相(5%APHA)が30、N−ビニル−2−ピロリドン残存量がポリビニルピロリドンに対して10ppm以下であった。得られたポリビニルピロリドン水溶液10gを150℃で3時間加熱乾燥し、5gのポリビニルピロリドン固形物を得た。得られたポリビニルピロリドン固形物について、溶解性および着色を評価した。その結果を表1に示す。
比較例3
硫酸銅(II)0.00023部と水430.1部とを反応容器に仕込み、80℃まで昇温した。次いで、80℃を維持しながら、N−ビニル−2−ピロリドン450部、25%アンモニア水0.9部、トリエタノールアミン1.92部、および30%過酸化水素9部を、各々それぞれ180分間かけて滴下した。滴下終了後、30%過酸化水素2.7部を3回に均等に分けて1.5時間間隔で添加し、3回目の添加後、さらに80℃で1時間保持して、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液の物性を測定したところ、濃度が50質量%、K値が29、色相(5%APHA)が30、N−ビニル−2−ピロリドン残存量がポリビニルピロリドンに対して10ppm以下であった。得られたポリビニルピロリドン水溶液10gを150℃で3時間加熱乾燥し、5gのポリビニルピロリドン固形物を得た。得られたポリビニルピロリドン固形物について、溶解性および着色を評価した。その結果を表1に示す。
比較例4
硫酸銅(II)0.00023部と水431.3部とを反応容器に仕込み、80℃まで昇温した。次いで、80℃を維持しながら、N−ビニル−2−ピロリドン450部、25%アンモニア水0.9部、モノエタノールアミン0.74部、および30%過酸化水素9部を、各々それぞれ180分間かけて滴下した。滴下終了後、30%過酸化水素2.7部を3回に均等に分けて1.5時間間隔で添加し、3回目の添加後、さらに80℃で1時間保持して、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液の物性を測定したところ、濃度が50質量%、K値が29、色相(5%APHA)が30、N−ビニル−2−ピロリドン残存量がポリビニルピロリドンに対して10ppm以下であった。得られたポリビニルピロリドン水溶液10gを150℃で3時間加熱乾燥し、5gのポリビニルピロリドン固形物を得た。得られたポリビニルピロリドン固形物について、溶解性および着色を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0004723271
表1に示すように、ポリビニルピロリドン製造時にアンモニアおよびジエタノールアミン(第2級アミン)を助触媒として用いた実施例1、ならびに、ポリビニルピロリドン製造時にアンモニアを助触媒として用い、製造後にジエタノールアミン(第2級アミン)を添加した実施例2は、水溶液の形態である場合には、加熱乾燥しても不溶物を実質的に生じなかったので耐熱性に優れ、かつ色相が比較的低く、固形物の形態である場合には、水媒体に溶解しても不溶物およびゲル化物を実質的に生じなかったので溶解性に優れ、かつ着色が比較的少ない。
これに対し、ポリビニルピロリドン製造時にアンモニアを助触媒として用い、その後ジエタノールアミンを添加しなかった比較例1は、水溶液の形態である場合には、色相が比較的低いものの、加熱乾燥すると不溶物またはゲル化物を生じたので耐熱性に劣り、固形物の形態である場合には、水媒体に溶解するとゲル化を起こしたので溶解性に劣る。また、ポリビニルピロリドン製造時にジエタノールアミン(第2級アミン)を助触媒として用いた比較例2は、水溶液の形態である場合には、加熱乾燥すると不溶物を生じなかったので耐熱性に優れるものの、色相が比較的高く、固形物の形態である場合には、水媒体に溶解しても不溶物およびゲル化物を実質的に生じなかったもので溶解性に優れるものの、着色が比較的多い。さらに、ポリビニルピロリドン製造時にアンモニアおよびトリエタノールアミン(第3級アミン)を助触媒として用いた比較例3、ならびに、ポリビニルピロリドン製造時にアンモニアおよびモノエタノールアミン(第1級アミン)を助触媒として用いた比較例4は、水溶液の形態である場合には、加熱乾燥すると不溶物またはゲル化物を生じたので耐熱性に劣り、かつ色相が比較的高く、固形物の形態である場合には、水媒体に溶解するとゲル化を起こしたので溶解性に劣る。
以上のことから、ポリビニルピロリドン組成物は、アンモニアと第2級アミンが併存すれば、水溶液の形態である場合には、耐熱性に優れ、かつ色相が低く、固形物の形態である場合には、溶解性に優れ、かつ着色が少ないという効果が達成されるが、アンモニアまたは第2級アミンのいずれか一方を用いた場合には、あるいは、アンモニアと第1級アミンを併用した場合やアンモニアと第3級アミンを併用した場合には、かかる効果は達成されないことがわかる。
本発明のポリビニルピロリドン組成物は、それ自体を原料または添加剤として、例えば、化粧品、医農薬中間体、食品添加物、感光性電子材料、粘着付与剤などの用途に、あるいは、種々の特殊工業用途(例えば、中空糸膜の製造)に、幅広い分野で用いることができるが、固体物の形態である場合には、溶解性に優れ、かつ着色が少ないので、あるいは、水溶液の形態である場合には、耐熱性に優れ、かつ色相が低いので、不溶物の少ないことや着色の少ないことを要求される用途に特に好適である。

Claims (3)

  1. アンモニアおよび第2級アミンを含有するポリビニルピロリドン水溶液を加熱乾燥して固形物の形態であるポリビニルピロリドン組成物を得る際に、前記ポリビニルピロリドン水溶液中におけるアンモニアの含有量を50ppm以上、4,000ppm以下の範囲内とし、かつ、前記ポリビニルピロリドン水溶液中における第2級アミンの含有量を500ppm以上、5,000ppm以下の範囲内とすることを特徴とするポリビニルピロリドン組成物の製造方法
  2. 前記ポリビニルピロリドン水溶液が、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニアおよび第2級アミンを助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られる請求項1記載の製造方法。
  3. 前記ポリビニルピロリドン水溶液が、水媒体中、金属触媒の存在下で、アンモニア助触媒として用い、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合して得られるポリビニルピロリドン水溶液に第2級アミンを添加して得られる請求項記載の製造方法。
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