JP3914029B2 - 安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルピロリドンやビニルピロリドン共重合体などのビニルピロリドン系重合体は、生体適合性、安全性、親水性等の長所、利点があることから、従来から、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の種々の分野で広く用いられている。
これらビニルピロリドン系重合体は、一般に、溶液重合により製造されることが多く、通常、溶液状態で得られる。そして、得られたビニルピロリドン系重合体溶液は、例えば、必要に応じて精製、濃縮工程を経て、容器へ充填、密閉して溶液状態で保存されたり、あるいは、乾燥、粉砕、分級等の工程を経て、粉体状態で容器へ充填、密閉されたりする。
【0003】
しかし、ビニルピロリドン系重合体は、粉体であっても溶液であっても、その形態にかかわらず、一般に貯蔵安定性に問題があることが知られている。例えば、長期保存時や高温保存時には、分子量(K値)やハーゼン色数等の物性が経時的に変化する傾向があった。また、製品形態を粉体とする場合にも、例えば、ビニルピロリドン系重合体が高温に曝される乾燥工程や、装置内で空気中に強く拡散される粉砕工程等において、分子量(K値)やハーゼン色数等の物性が変化してしまうことが多くあった。さらに、ビニルピロリドン系重合体の製品を、溶解したり希釈したりして使用する場合、特に高温時には、分子量(K値)やハーゼン色数等の物性が変化しやすかった。このように、ビニルピロリドン系重合体は、これを取扱うあらゆる場面において、分子量(K値)やハーゼン色数等の物性が変化しやすいという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者は、ビニルピロリドン系重合体の物性変化を抑制する方法として、ビニルピロリドン系重合体と接触する気相中の酸素濃度を50000ppm以下とする方法を見出し、特願2000−273624号において提案した。しかしながら、前記方法によれば、比較的K値が高いビニルピロリドン系重合体に対しては優れた安定性を付与して物性変化を抑制しうるものの、K値が低いビニルピロリドン系重合体に対しては、例えばハーゼン色数が変化して着色を生じるなど、物性変化の抑制が不充分である場合があり、この点で未だ改善の余地があるものであった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ビニルピロリドン系重合体のK値が低い場合にも着色を抑制しうるように安定化された、ビニルピロリドン系重合体組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、グアニジン類および/またはビグアナイド類がビニルピロリドン系重合体を安定化するのに有効であり、着色抑制効果に優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明における第一の安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物は、ビニルピロリドン系重合体に、該ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.5〜100重量部のグアニジン類および/またはビグアナイド類が配合されてなる。
【0007】
本発明における第二の安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物は、ビニルピロリドン系重合体にグアニジン類および/またはビグアナイド類が配合されてなり、かつ、気相中の酸素濃度が50000ppm以下である空間に存在する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の一形態について詳しく説明する。
本発明におけるビニルピロリドン系重合体とは、具体的には、ビニルピロリドンの単独重合体、および/または、ビニルピロリドンとその他の任意の重合性単量体との共重合体であり、例えば溶液重合等の従来公知の製造方法によって得られるものである。
ビニルピロリドンと共重合することができる任意の重合性単量体としては、特に限定されることはなく、具体的には、例えば、1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;2)(メタ)アクリルアミド、および、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;3)(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体およびその塩または第4級化物;4)ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類;5)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体およびその塩;6)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類;7)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;8)ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体;9)スチレンおよびその誘導体;10)(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチルおよびその誘導体;11)ビニルスルホン酸およびその誘導体;12)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;13)エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類;等が挙げられる。これらのうち、ビニルピロリドンとの共重合性等の点からは、1)〜8)が特に好適である。これらは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合してビニルピロリドンと共重合させてもよい。
【0009】
前記ビニルピロリドン共重合体におけるビニルピロリドンの割合は、特に限定されないが、全単量体成分に対して0.1モル%以上が好ましく、5モル%以上がさらに好ましく、20モル%以上が最も好ましい。共重合体中のビニルピロリドンの割合が0.1モル%未満の場合には、本発明が解決しようとする着色の問題が殆ど認められなくなる。
本発明において安定化される前記ビニルピロリドン系重合体のK値は、特に制限されないが、好ましくは70以下、さらに好ましくは45以下であるのがよい。本発明においては、ビニルピロリドン系重合体のK値に関わらず充分に安定化して着色を抑制しうるのであるが、とりわけ、接触する気相の酸素濃度を規定するのみの安定化方法では着色を抑制しにくかったK値が低いビニルピロリドン系重合体に対しても、優れた着色抑制効果を発揮することができるからである。中でも特に、本発明は、過酸化水素を開始剤として得られるビニルピロリドン系重合体に対して有効である。
【0010】
なお、前記K値とは、25℃において毛細管粘度計によって測定された粘度を用いて、次のフィケンチャー式から計算される値である。
(logηrel)/C=〔(75Ko2)/(1+1.5Ko C)〕+Ko
K=1000Ko
ここで、Cは、溶液100ml中のg数を示し、ηrelは、溶媒に対する溶液の粘度を示す。
本発明の第一および第二のビニルピロリドン系重合体組成物には、いずれも、グアニジン類および/またはビグアナイド類が配合されてなる。これにより、ビニルピロリドン系重合体を安定化し、着色を抑制することができるのである。
【0011】
本発明において、グアニジン類とは、下記一般式(1)で表わされる構造を有するものであり、ビグアナイド類とは、下記一般式(2)で表わされる構造を有するものである。
【0012】
【化1】
Figure 0003914029
【0013】
(式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、またはアミノ基を表す。)
【0014】
【化2】
Figure 0003914029
【0015】
(式(2)中、R5〜R8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、またはアミノ基を表す。)
前記グアニジン類の具体例としては、例えば、グアニジン、または塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等のグアニジン塩;アミノグアニジン、または塩酸アミノグアニジン、重炭酸アミノグアニジン等のアミノグアニジン塩;等が、前記ビグアナイド類の具体例としては、例えば、ビグアナイドまたはその塩;フェニルビグアナイドまたはその塩;ポリヘキサメチレンビグアニジンまたはその塩;クロルヘキシジン、またはクロルヘキシジングルコン酸塩等のクロルヘキシジン塩;等が、それぞれ挙げられる。これらの中でも特に、ポリヘキサメチレンビグアニジン・塩酸塩が好ましい。
【0016】
本発明における第一のビニルピロリドン系重合体組成物においては、前記グアニジン類および/またはビグアナイド類の配合量が、前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.5〜100重量部であることが重要である。より好ましくは、前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して1〜30重量部であるのがよい。前記グアニジン類および/またはビグアナイド類の配合量が、前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.5重量部未満であると、充分な着色抑制効果が得られなくなり、一方、100重量部を越えると、増加した配合量に見合うだけの着色抑制効果が現れず、経済的に不利となると同時に、成膜性や耐熱性等の重合体本来の特性が損なわれるという問題が生じることがある。
【0017】
他方、本発明における第二のビニルピロリドン系重合体組成物においては、前記グアニジン類および/またはビグアナイド類の配合量は、特に限定されない。すなわち、後述するように気相中の酸素濃度が50000ppm以下である空間に存在することを必須とする第二のビニルピロリドン系重合体組成物では、前記グアニジン類および/またはビグアナイド類の配合量が前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.5重量部未満であっても、充分に着色を抑制することができる。但し、前記グアニジン類および/またはビグアナイド類の配合量が前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して100重量部を超えても、増加した配合量に見合うだけの着色抑制効果が現れず、経済的に不利となり、しかも成膜性や耐熱性等の重合体本来の特性が損なわれる恐れがあるので、好ましくは、前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して100重量部以下とするのがよい。本発明の第二のビニルピロリドン系重合体組成物における前記グアニジン類および/またはビグアナイド類の配合量の好ましい範囲は、前記ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.0001〜100重量部である。
【0018】
本発明における第二のビニルピロリドン系重合体組成物は、気相中の酸素濃度が50000ppm以下である空間に存在するものである。該酸素濃度は、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とするのがよく、酸素濃度が低ければ低いほど、より効果的にビニルピロリドン系重合体の安定性を向上させ、物性変化による着色を抑制することができる。前記酸素濃度が50000ppmを越えると、ビニルピロリドン系重合体の安定性を向上させる効果が期待できないこととなる。なお、ここで、気相とは、ビニルピロリドン系重合体組成物が存在する空間において該組成物が占める固相部および/または液相部以外の部分であり、気相中の酸素濃度とは、単位容積の気相中にしめる酸素の絶対量を意味する。例えば、ビニルピロリドン系重合体組成物を密閉容器に収容した場合、気相中の酸素濃度は、容器内の気相部の酸素が常圧において占める体積の気相部容積に対する比率である。なお、該酸素濃度は、例えば、ガルバニ電池拡散式やジルコニアセンサー式等の市販の酸素濃度計で簡単に測定することができる。
【0019】
なお、ビニルピロリドン系重合体組成物が気相中の酸素濃度が50000ppm以下である空間に存在することは、本発明における第一のビニルピロリドン系重合体組成物においても好ましい要件であり、該要件を満足する第一のビニルピロリドン系重合体組成物が、本発明における最も好ましい形態と言える。
ビニルピロリドン系重合体組成物が気相中の酸素濃度が50000ppm以下である空間に存在するようにするには、以下に述べる(1)〜(3)の方法のうちの1方法、好ましくは複数の方法を併用することによって、ビニルピロリドン系重合体組成物が存在する空間の気相中の酸素濃度を低減させればよい。
【0020】
(1)ビニルピロリドン系重合体組成物が存在する空間を密閉し、密閉された空間内を真空状態にしておく。例えば、保存時であれば、前記ビニルピロリドン系重合体組成物を密閉容器内に収容し、該容器内を真空状態にしておけばよいし、溶液状のビニルピロリドン系重合体組成物を乾燥する際には真空乾燥を行い、粉砕する際には真空にした密閉空間内に装置を置き、粉砕するようにすればよい。真空にする具体的な方法については、特に制限されるものではなく、通常の手法で密閉空間内を減圧すればよい。また、真空度についても、特に制限はないが、真空にすることによって容器等の破損が生じないように行うのがよい。
【0021】
(2)ビニルピロリドン系重合体組成物が存在する空間の気相を、不活性ガスおよび/または炭酸ガスで置換しておく。このとき、例えば、空間を密閉しない状態で前記ガスを常に流通させておくようにしてもよいが、好ましくは、ビニルピロリドン系重合体組成物の存在する空間を密閉し、密閉された空間内を不活性ガスおよび/または炭酸ガスで完全に置換するようにしておくのがよく、具体的には、例えば、密閉空間内の容量の少なくとも5倍以上の容積のガスを導入することが好ましい。また、密閉空間内を一旦真空減圧にして空気を追い出した後にガスを封入すると、より効率よくガスによる置換が行えることから好ましい。さらに、ビニルピロリドン系重合体が溶液である場合には、溶液中に溶解した酸素をも除去するために、ガス導入管等で液中にバブリングすることが好ましい。特に、ビニルピロリドン系重合体組成物を保存する際には、置換するガスとして、炭酸ガスを用いると、ビニルピロリドン系重合体の物性変化を抑制するとともに、ビニルピロリドン系重合体中に残存する未反応のビニルピロリドンを保存中に加水分解させて低減することができることから、より好ましい。なお、不活性ガスとしては、反応性に乏しいガスであれば特に制限はなく、具体的には、例えば、周期律表0族のヘリウム、ネオン、アルゴン等のガス;窒素ガス;等が挙げられ、これらの中でも、安価に入手しやすいことから、窒素ガスが好ましい。
【0022】
(3)ビニルピロリドン系重合体組成物の存在する空間を密閉し、密閉された空間内に脱酸素剤を同封しておく。脱酸素剤としては、酸素を化学反応によって除去しうるものであれば特に制限されるものではないが、安全性や使いやすさの点から、例えば、鉄粉、酸化鉄、水酸化鉄、またはこれらの混合物をガス透過性フィルムで封入したものが好ましい。具体的には、三菱ガス化学(株)製「エージレス」、東亜合成化学工業(株)製「バイタロン」、日本化薬(株)製「モデュラン」等の市販されている脱酸素剤を用いればよい。
なお、酸素濃度を低減させる前記(1)〜(3)の方法において、ビニルピロリドン系重合体の存在する空間を密閉する方法としては、特に制限されないが、例えば、保存の際には、密閉可能な容器にビニルピロリドン系重合体を収容すればよい。密閉可能な容器としては、その材質や形状に特に制限はないが、好ましくは、ガスの吸収・流出が起こりにくいように気密性の高い容器がよい。具体的には、その材質としては、例えば、ガラス、金属、各種プラスティック等が挙げられ、その形状としては、例えば、ボトル、缶、袋等が挙げられる。
【0023】
本発明の第一および第二のビニルピロリドン系重合体組成物においては、さらに、無機還元剤および/またはキレート剤を配合しておくことが好ましい。これにより、着色抑制効果をさらに向上させることができる。なお、これら無機還元剤やキレート剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機還元剤としては、特に制限はないが、具体的には、例えば、亜硫酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム等の硫酸系還元剤;亜リン酸およびその塩、次亜リン酸およびその塩等のリン酸系還元剤;等が挙げられる。これらの中でも特に、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウムが好ましい。
【0024】
前記キレート剤としては、特に制限はないが、具体的には、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸およびその塩、ピロリン酸およびその塩、メタリン酸およびその塩、ポリリン酸およびその塩等が挙げられる。
これら無機還元剤および/またはキレート剤をも配合する場合、その配合量は、それぞれ、ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.000001〜5重量部とすることが好ましい。
本発明の第一および第二のビニルピロリドン系重合体組成物には、例えば、過酸化水素を開始剤として製造したビニルピロリドン系重合体を用いる場合など、微量の過酸化物が含まれることがあるが、ビニルピロリドン系重合体組成物における過酸化物の量は、過酸化水素換算でビニルピロリドン系重合体に対して1000ppm以下であることが好ましく、400ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることがさらに好ましい。過酸化物の量が、過酸化水素換算でビニルピロリドン系重合体に対して1000ppmを超えると、着色防止効果が損なわれる傾向がある。
【0025】
本発明の第一および第二のビニルピロリドン系重合体組成物には、例えば、ビニルピロリドン系重合体製造時の重合用触媒もしくは不純物に由来して、鉄や銅などの重金属イオンが含まれることがあるが、ビニルピロリドン系重合体組成物における重金属イオンの量は、ビニルピロリドン系重合体に対して100ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましく、0.2ppm以下であることがさらに好ましい。重金属イオンの量が、ビニルピロリドン系重合体に対して100ppmを超えると、着色防止効果が損なわれる傾向がある。
【0026】
本発明におけるビニルピロリドン系重合体組成物の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、塊状、繊維状、粉体状、溶液状、フィルム状等任意の形態であってよい。
本発明のビニルピロリドン系重合体組成物が水溶液の形態である場合には、pHが4〜12であることが好ましく、pHが5〜9であることがより好ましい。pHが4未満の酸性やpHが12を超えるアルカリ性であると、着色しやすくなる傾向がある。
通常、製造されたビニルピロリドン系重合体は、例えば、溶液状の製品形態とする場合には、精製、濃縮、包装等の工程を経て製品化され、保存もしくは移送される。また、粉体状の製品形態とする場合には、乾燥、粉砕(粗砕、解砕を含む)、分級、包装等の工程を経て製品化され、保存もしくは移送される。本発明のビニルピロリドン系重合体組成物は、このような製造後、製品化されて保存もしくは移送されるまでのあらゆる段階、例えば、製造直後の反応装置、粉体化装置、乾燥装置、貯蔵タンク、移送ライン、その他にも該組成物が取り扱われるあらゆる作業環境において、安定化されうるものである。また、本発明のビニルピロリドン系重合体組成物は、製品化された重合体を使用する際、例えば、粉体状の製品を溶媒に溶解したり、溶液状の製品を希釈したり、粉体状の製品を溶媒に溶かして得られる溶液や溶液状の製品を成膜乾燥したりする場合や、その後、得られた溶液や乾燥物等を保存しておく場合においても、安定化されうるものである。
【0027】
本発明の安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物は、物性変化により生じる着色が起こりにくいものである。具体的には、本発明のビニルピロリドン系重合体組成物は、溶液状態において50℃で720時間保持する促進試験後の5重量%濃度でのハーゼン色数が60以下である。なお、ハーゼン色数は、JIS−K−0071−1に準じて測定されるものである。
本発明における安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物は、例えば、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の種々の分野で用いられるビニルピロリドン系重合体配合組成物として好適に用いることができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明にかかる実施例および比較例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
なお、製造例で得られたポリビニルピロリドンのK値は、1%水溶液を用いて25℃で毛細管粘度計により相対粘度を測定する方法で測定した粘度を、前述のフィケンチャーの式に当てはめて計算した。
また、製造例および実施例、比較例におけるハーゼン色数については、JIS−K−0071−1に準じて測定した。すなわち、ハーゼン標準比色液を調整し、これらとの目視による比較によって測定した。なお、測定は全て5重量%濃度で行った。
【0029】
(製造例−ポリビニルピロリドンの製造)
攪拌機、モノマー供給槽、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた500mlフラスコに、水270gを入れ、窒素ガスを導入して攪拌しながら、フラスコ内の温度が100℃になるように加熱した。このフラスコ内に、2%アンモニア水3g、N−ビニルピロリドン21g、および4%過酸化水素3.5gを、それぞれ5分毎に6回供給し、重合させた。さらに、100℃で2時間攪拌して重合を完結させ、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドンのK値は29であり、ハーゼン色数は20であった。
【0030】
(実施例1)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、炭酸グアニジン48mgを添加して、安定化した溶液状の組成物を得た。この組成物を密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は40であった。
(実施例2)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、炭酸グアニジン900mgを添加して、安定化した溶液状の組成物を得た。この組成物を密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は30であった。
【0031】
(実施例3)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、ポリヘキサメチレンビグアニジン・塩酸塩の20%水溶液200mgを添加して、安定化した溶液状の組成物を得た。この組成物を密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は40であった。
(実施例4)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、ポリヘキサメチレンビグアニジン・塩酸塩の20%水溶液4000mgを添加して、安定化した溶液状の組成物を得た。この組成物を密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は20であった。
【0032】
(実施例5)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、炭酸グアニジン2.4mgを添加して、溶液状の組成物を得た。該組成物を、容器内の酸素濃度が50000ppm以下となるように容器内の気相を充分に窒素置換をした密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は30であった。
(実施例6)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、ポリヘキサメチレンビグアニジン・塩酸塩の20%水溶液10mgを添加して、溶液状の組成物を得た。該組成物を、容器内の酸素濃度が50000ppm以下となるように容器内の気相を充分に窒素置換をした密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は30であった。
【0033】
(比較例1)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gを密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は100であった。
(比較例2)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gを、容器内の酸素濃度が50000ppm以下となるように容器内の気相を充分に窒素置換をした密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は70であった。
【0034】
(比較例3)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、炭酸グアニジン6mgを添加して、溶液状の組成物を得た。この組成物を密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は80であった。
(比較例4)
製造例で得られたポリビニルピロリドンの30%水溶液10gに、ポリヘキサメチレンビグアニジン・塩酸塩の20%水溶液45mgを添加して、溶液状の組成物を得た。この組成物を密閉容器に入れ、容器を密閉した後、50℃で720時間保持する促進試験を行ったところ、試験後のハーゼン色数は70であった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のビニルピロリドン系重合体組成物は、ビニルピロリドン系重合体のK値が低い場合にも着色を抑制しうるように安定化されたものである。

Claims (4)

  1. ビニルピロリドン系重合体に、該ビニルピロリドン系重合体100重量部に対して0.5〜100重量部のグアニジン類および/またはビグアナイド類が配合されてなる、安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物。
  2. ビニルピロリドン系重合体にグアニジン類および/またはビグアナイド類が配合されてなり、かつ、気相中の酸素濃度が50000ppm以下である空間に存在する、安定化されたビニルピロリドン系重合体組成物。
  3. 前記ビニルピロリドン系重合体のK値が70以下である、請求項1または2に記載のビニルピロリドン系重合体組成物。
  4. 溶液状態において50℃で720時間保持する促進試験後の5重量%濃度でのハーゼン色数が60以下である、請求項1から3までのいずれかに記載のビニルピロリドン系重合体組成物。
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