JP4721876B2 - 積層フィルムからなる断熱材用防湿材 - Google Patents
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Description
しかし、アルミクラフト紙は柔軟性が不足しているために施工時の作業性が悪く、クラックが発生し易いために水蒸気バリア性の極端な悪化を引き起こす場合があった。また、「紙」を使うが故に難燃性の観点からも問題があり、更に焼却後も残渣が残るために廃棄処理が容易でないという欠点があった。
一方、積層後の塩化ビニリデン−アクリル酸メチル共重合樹脂とポリ塩化ビニル系樹脂をロール状に巻き取る際にテンションコントロール等の細かな条件を設定しなければ、ポリ塩化ビニリデン系樹脂面とポリ塩化ビニル系樹脂面の過剰密着が原因で繰り出し不能、もしくは繰り出した際にしわが入り見栄えが悪くなる等の問題があった。
(1)水蒸気バリア層と柔軟性付与層が接着層を介して積層された少なくとも3層からなる積層フィルムであって、水蒸気バリア層が、塩化ビニリデン成分97〜93重量%と、アクリル酸メチル成分3〜7重量%を含むポリ塩化ビニリデン系樹脂からなり、ポリ塩化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、無機粉末を0.01〜0.1重量部含有し、柔軟性付与層が、ポリ塩化ビニル樹脂からなり、且つ、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を10〜30重量部および難燃剤を5〜20重量部含有する積層フィルムからなる断熱材用防湿材。
(2) 積層フィルムの難燃性が炎拡散指数(FSI)≦25且つ、煙発生指数(SDI)≦50であることを特徴とする(1)に記載の積層フィルムからなる断熱材用防湿材。
(3)積層フィルムの収縮率が、流れ方向(MD)≦3%、巾方向(TD)≦3%(66℃、24hr条件下)であることを特徴とする(1)または(2)に記載の積層フィルムからなる断熱材用防湿材。
(4)塩化ビニリデン成分97〜93重量%と、アクリル酸メチル成分3〜7重量%を含むポリ塩化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、無機粉末を0.01〜0.1重量部含有させ、加熱混練して押出し、得られた筒状パリソンを延伸後、加熱ローラーにより70〜100℃に加熱した後、1枚のフィルムにして水蒸気バリア層とする工程と、
ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を10〜30重量部および難燃剤を5〜20重量部を混練し、押し出して柔軟性付与層とする工程と、
該水蒸気バリア層と柔軟性付与層を、接着層を介して積層し、ロール状に巻き取る工程を有する断熱材用防湿材の製造方法。
<水蒸気バリア層;図1中の(1)>
水蒸気バリア層(1)はポリ塩化ビニリデン系樹脂からなる。
ポリ塩化ビニリデン系樹脂の組成は、塩化ビニリデンが97〜93重量%、アクリル酸メチル成分が3〜7重量%である。アクリル酸メチルを3〜7重量%共重合させることによって、柔軟性や水蒸気バリア性が向上する。ポリ塩化ビニリデン系樹脂中のアクリル酸メチル成分が3重量%以上であれば柔軟性が付与され、フィルムの取り扱い性、耐クラック性が良好になり、7重量%以下であれば、本発明の高い水蒸気バリア性を達成することができる。
必要に応じて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂に、各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、可塑剤、無機粉末、熱安定剤、光安定剤、滑剤、着色剤等が挙げられる。
可塑剤を添加する場合、ポリ塩化ビニリデン系樹脂100重量部に対して可塑剤は3重量部以下が好ましい。可塑剤を3重量部以下で添加することにより、高い水蒸気バリアレベルを保ちながら、より柔軟性が向上し、フィルムの取り扱い性、耐クラック特性が良好になる。
可塑剤としては、塩化ビニル樹脂用の可塑剤として使用されるものが挙げられる。例えば、脂肪族二塩基酸エステル系、クエン酸エステル系、脂肪酸エステル系、ポリエステル系等の液体可塑剤等が挙げられる。好ましくは脂肪族二塩基酸エステル系であり、中でも、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、クエン酸エステル系のアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
無機粉末としては、平均粒子径が0.05μm〜100μmが好ましく、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の公知の無機粉末が挙げられる。
熱安定剤としては市販のものが使用できるが、特にエポキシ系化合物が好ましい。
水蒸気バリア層(1)の製法としては特に限定はなく、押出製膜法、溶液キャスト法、ラテックスコーティング法等が挙げられる。また押出製膜法では延伸系、無延伸系のどちらでもよい。
水蒸気バリア層(1)の厚みは、水蒸気バリア性、積層フィルムの取り扱い性の観点から、10〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μm、更に好ましくは15〜25μmである。厚みが10μm以上であれば、より高い水蒸気バリア性が得られ、100μm以下であれば、積層フィルム全体の弾性が適度で取り扱い性が良好である。
柔軟性付与層(2)は、積層フィルム全体の柔軟性を増し、施工(配管に本発明の積層フィルムからなる防湿材を有する断熱材を巻く)時のクラック発生を防止する役割を担うと共に、難燃性の観点からポリ塩化ビニル樹脂を用いる。
本発明の柔軟性付与層は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤を10〜30重量部および難燃剤を5〜20重量部含有する。必要に応じて各種熱安定剤、各種光安定剤、各種滑剤、各種着色剤等を添加してもよい。
可塑剤添加量が30重量部以下であれば難燃性が良好であり、10重量部以上で積層フィルム全体としての十分な柔軟性が得られ、取り扱い時にクラックが発生しにくくなる。難燃剤を5重量部以上用いると、難燃性が良好であり、20重量部以下であれば樹脂中への分散が良好である。
本発明で使用するポリ塩化ビニル樹脂中の可塑剤としては、フタル酸ジオクチル(DOP)やフタル酸ジブチル(DBP) 等の可塑剤が挙げられる。
本発明で使用する難燃剤は、例えば、無機物系のホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、有機物系の非ハロゲンリン酸エステル系、含ハロゲンリン酸エステル系、臭素系化合物等が挙げられ、それらを単独あるいは複合で使用してもよい。
柔軟性付与層(2)の製法としては特に限定はなく、押出製膜法、溶液キャスト法、ラテックスコーティング法等が挙げられる。
柔軟性付与層(2)は厚みが30〜300μmが好ましく、より好ましくは50〜300μm、更に好ましくは50〜200μmである。厚みが30μm以上であれば、断熱材の保護材としてのより十分な強度が発現し、300μm以下であれば、積層フィルム全体の弾性が適度であり、取り扱い性がより良好になる。
接着層(3)としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イソシアネート系接着剤等が挙げられる。イソシアネート系接着剤としては、例えば、ポリエステルポリウレタン系接着剤、ポリエーテルポリウレタン系接着剤等を主剤とし、このような主剤にトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの硬化剤を添加させる二液硬化タイプの接着剤等が挙げられる。
接着層(3)の形成方法としては、他の層との共押出し法、ドライラミネート法等が挙げられ、イソシアネート系接着剤でドライラミネートする方法が好ましい。
接着層(3)の塗布量は通常、固形分で2〜10g/m2が好ましく、より好ましくは2〜5g/m2である。
積層フィルムの特性としては、水蒸気透過度は、1.5g/m2・day以下(38℃ 90%相対湿度下)が好ましく、より好ましくは1.0/m2・day以下(38℃、90%相対湿度下)である。ここでいう水蒸気透過度とは、ASTM-F372(モコン法)により測定された、単位面積(1m2)、単位時間(1day)あたりの透過量(g)を指す。これは水蒸気バリア層を、塩化ビニリデン成分97〜93重量%、アクリル酸メチル成分3〜7重量%にすることで達成できる。水蒸気透過度が1.5g/m2・day(38℃ 90%相対湿度下)以下であれば吸湿が原因で起る断熱材の断熱効果の低下を抑制することができる。
寸法安定性の指標である収縮率は、流れ方向(MD)≦3%、巾方向(TD)≦3%(66℃、24hr条件下)が好ましく、より好ましくはMD≦2.5%、TD≦2.5%(66℃、24hr条件下)である。収縮率がMD≦3%、TD≦3%(66℃、24hr条件下)であれば使用が想定される室温(40℃以下)での寸法変更は微少であり、長年の使用にも耐えることができる。ここでいう収縮率の測定方法はASTM-D1204(湿度調整型オーブンにより測定)に準拠する。
本発明に用いられる評価方法は以下のとおりである。
1)水蒸気バリア性(WVTR)
ASTM-F372 準拠 〔単位 g/m2・day at 38℃ 90%相対湿度〕
評価記号 評価尺度
◎; WVTR≦1.0g/m2・day
○; 1.0g/m2・day<WVTR≦1.5g/m2・day
△; 1.5g/m2・day<WVTR≦10g/m2・day
×; 10g/m2・day<WVTR
装置:ゲルボフレックステスター(Japan SERVO製) MIL-B-131準拠
条件: 室温20℃ 屈曲回数10回 サンプルサイズ28cm×20cm
屈曲後のサンプルでASTM-F372準拠〔単位 g/m2・day at 38℃ 90%相対湿度〕
評価記号 評価尺度
◎; WVTR≦1.0g/m2・day
○; 1.0g/m2・day<WVTR≦1.5g/m2・day
△; 1.5g/m2・day<WVTR≦10g/m2・day
×; 10g/m2・day<WVTR
ASTM-E-84 準拠
評価記号 評価尺度
◎; 炎拡散指数(FSI)≦25 且つ 煙発生指数(SDI)≦50
×; FSI>25 又は SDI>50
4)寸法安定性(収縮率)
ASTM-D-1204 準拠 [条件:66℃ 24hr]
評価記号 評価尺度
◎; MD≦3% 且つ TD≦3%
△; 3%<MD≦10% 又は 3%<TD≦10%
×; 10%<MD 又は 10%<TD
5)ロール状態での過剰密着
評価記号 評価尺度
◎; スムーズに繰り出し可能
△; 一部、密着あり
×; 密着により、繰り出し不能
塩化ビニリデン(VDC)成分が95重量%、アクリル酸メチル(MA)成分が5重量%からなる基材樹脂100重量部に対して、熱安定剤として、エポキシ化亜麻仁油を2.0重量部、無機粉末として、シリカを0.02重量部を添加混合して得られたポリ塩化ビニリデン系樹脂を図2のインフレーション法にて製膜し、得られたフィルムを加熱ローラー部で80℃に加熱し、厚みが15μmのポリ塩化ビニリデン系フィルムを得た。
重合度が1000のポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂100重量部に対して、可塑剤として、フタル酸ジオクチル(DOP)を27重量部、難燃剤として、ホウ酸亜鉛を20重量部、熱安定剤として、エポキシ化大豆油を1.5重量部含有したポリ塩化ビニル系樹脂を図3のカレンダー法にて製膜して140μm厚みのポリ塩化ビニル系フィルムを得た。
上記、ポリ塩化ビニリデン系フィルムとポリ塩化ビニル系フィルムを2液反応型ウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株) A515/A50)を用いて積層フィルムを製造した。
各フィルムの構成を表1に示す。
VDC成分が94重量%、MA成分が6重量%からなる基材樹脂100重量部に対して、可塑剤(アジピン酸ジイソブチル70重量%とアセチルクエン酸トリブチル30重量%の混合物)を1.0重量部に、無機粉末(シリカ)を0.04重量部に、PVC樹脂100重量部に対して、可塑剤(DOP)を20重量部に、難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
VDC成分が96重量%、MA成分が4重量%からなる基材樹脂100重量部に対して、可塑剤(アジピン酸ジイソブチル70重量%とアセチルクエン酸トリブチル30重量%の混合物)を2.0重量部に、無機粉末(シリカ)を0.06重量部にPVC樹脂100重量部に対して、可塑剤(DOP)を15重量部に難燃剤(ホウ酸亜鉛)を10重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
VDC成分が97重量%、MA成分が3重量%からなる基材樹脂100重量部に対して、可塑剤(アジピン酸ジイソブチル70重量%とアセチルクエン酸トリブチル30重量%の混合物)を3.0重量部に、無機粉末(シリカ)を0.08重量部にPVC樹脂の可塑剤(DOP)を10重量部に難燃剤(ホウ酸亜鉛)を5重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVDC樹脂の無機粉末(シリカ)を0.008重量部にPVC樹脂の難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様して積層フィルムを製造した。
PVDC樹脂の無機粉末(シリカ)を0重量部にPVC樹脂の難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVDC樹脂のフィルム加熱温度を40℃にPVC樹脂の難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVDC樹脂のフィルム加熱温度を25℃にPVC樹脂の難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
VDC成分が98重量%、MA成分が2重量%からなる基材樹脂100重量部に対して、可塑剤(アジピン酸ジイソブチル70重量%とアセチルクエン酸トリブチル30重量%の混合物)を3.0重量部に、無機粉末(シリカ)を0.10重量部にPVC樹脂の可塑剤(DOP)を10重量部に難燃剤(ホウ酸亜鉛)を5重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVDC樹脂のVDC成分を92重量%、MA成分が8重量%に、PVC樹脂の難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVC樹脂の難燃剤(ホウ酸亜鉛)を3重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVC樹脂の可塑剤(DOP)を35重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
PVC樹脂の可塑剤(DOP)を5重量部に難燃剤(ホウ酸亜鉛)を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを製造した。
これらのフィルムに対し特性評価を行った。表2にその結果を示す。
水蒸気バリア層として本発明フィルムのかわりにアルミ箔9μmを有するアルミクラフト紙を使用して同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
表1、2、3より本発明の積層フィルムの方がアルミクラフト紙より耐クラック性に優れていることが明らかである。これは、断熱材に取り付けられる際に施工性が従来に比べて向上するのと共にその際にクラック等の損傷が入らないという利点を表している。
難燃性についても、本発明フィルムは両面共に優れているがアルミクラフト紙の紙面については著しく悪い。通常、断熱材としてのアルミクラフト紙はアルミ面を外側としているために正常な状態であれば外部からの炎に対する難燃性が良いが、その継ぎ目部分やクラック部分から一端、紙面に着火すると急激に燃え広がる。
(2); 柔軟性付与層
(3); 接着層
(4); 積層フィルム
101; 押出機
102; ホッパー部
103; スクリュー
104; 環状ダイ
105; 筒状パリソン
106; 冷却槽
107; 温水槽
108; 加熱ローラー
109; 巻き取りローラー
A,A’、B,B’、C,C’; ピンチローラー
201; 自動配合混合装置
202; カレンダー部
203; クーリングローラー
204; 巻き取りローラー
Claims (4)
- 水蒸気バリア層と柔軟性付与層が接着層を介して積層された少なくとも3層からなる積層フィルムであって、水蒸気バリア層が、塩化ビニリデン成分97〜93重量%と、アクリル酸メチル成分3〜7重量%を含むポリ塩化ビニリデン系樹脂からなり、ポリ塩化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、無機粉末を0.01〜0.1重量部含有し、柔軟性付与層が、ポリ塩化ビニル樹脂からなり、且つ、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を10〜30重量部および難燃剤を5〜20重量部含有する積層フィルムからなる断熱材用防湿材。
- 積層フィルムの難燃性が炎拡散指数(FSI)≦25且つ、煙発生指数(SDI)≦50であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムからなる断熱材用防湿材。
- 積層フィルムの収縮率が、流れ方向(MD)≦3%、巾方向(TD)≦3%(66℃、24hr条件下)であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルムからなる断熱材用防湿材。
- 塩化ビニリデン成分97〜93重量%と、アクリル酸メチル成分3〜7重量%を含むポリ塩化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、無機粉末を0.01〜0.1重量部含有させ、加熱混練して押出し、得られた筒状パリソンを延伸後、加熱ローラーにより70〜100℃に加熱した後、1枚のフィルムにして水蒸気バリア層とする工程と、
ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して可塑剤を10〜30重量部および難燃剤を5〜20重量部を混練し、押し出して柔軟性付与層とする工程と、
該水蒸気バリア層と柔軟性付与層を、接着層を介して積層し、ロール状に巻き取る工程を有する断熱材用防湿材の製造方法。
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