JP4721662B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の成形体の製造方法及び成形体 - Google Patents
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Description
近年、芳香族ポリカーボネートからなる成形体に関して、特に自動車部品に関しては外部応力による変形や、内部部品による変形が起こりやすいために、芳香族ポリカーボネートに対して高い剛性と寸法精度が要求される。更に自動車の内外装部品の場合には、塗装の有無にかかわらず優れた外観特性が求められる。
芳香族ポリカーボネートの剛性や寸法精度を改良するために、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト等の無機化合物を、強化材及び/または充填材としてポリカーボネートに配合する方法が試みられている。
しかしながら、これらの無機化合物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、成形加工時において、無機化合物により芳香族ポリカーボネートの分解劣化が促進されるという問題がある。特に、タルクやマイカなどの塩基性の無機化合物を使用した場合において、芳香族ポリカーボネートの溶融安定性が著しく低下し、材料の物性が大きく損なわれるという問題があった。
一方、OA機器や電気・電子機器用として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、高い剛性と寸法精度だけでなく、高度な難燃性も求められており、最近では、環境に対する配慮から、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用しない難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物による成形体が求められている。
特許文献5の特開2003−82218号公報、特開2003−268226号公報では、芳香族ポリカーボネートに対して有機酸金属塩、アルコキシシラン化合物、含フッ素ポリマー、無機充填剤、場合により更に、有機シロキサン化合物を配合した樹脂組成物が開示されている。同組成物は、有機シロキサン化合物を配合した場合において0.8mm厚みの試験片においてUL94規格でV−0が達成されているが、有機シロキサン化合物の熱安定性が不十分であるために、高い溶融樹脂温度では容易に変色する、揮発成分の発生量が多くなる等の欠点がある。
すなわち、従来技術では、無機化合物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用することなく、薄肉の成形体での高度難燃性(例えば、製品厚み0.7mm未満で、UL94規格でV−0を達成できるような高度な難燃性)を有し、且つ、成形材料としての溶融安定性や機械的強度に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物による薄肉成形体は、未だ得られておらず、その開発が望まれていた。
また、特許文献7の特開平3−21664号公報では、芳香族ポリカーボネートに対してタルクと有機酸を配合した樹脂組成物を開示してあるが、実際の成形温度に耐えて外観不良の課題を実質的に解決するような有機酸の規定が不十分であると同時に、十分な外観改良を達成できる成形方法についても記載がされていない。
また、難燃剤として臭素系化合物或いはリン系化合物を使用することなく高度な難燃性を有する外観に優れた成形体を得るための成形方法を提供することにある。特に、本発明により、薄肉の成形体であっても、極めて高度な難燃性を有するのみならず、優れた溶融安定性、耐熱エージング性、耐湿熱性、剛性及び耐衝撃性を有する芳香族ポリカーボネート成形体を提供することにある。
即ち、本発明は、下記1−12の発明である。
1.芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)(但し、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)において、芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂の使用量は、該樹脂(A)の総量100質量部に対して0.1〜15質量部である)100質量部、金属酸化物成分とSiO 2 成分とからなる珪酸塩化合物(B)0.1〜200質量部、有機スルホン酸及び/または有機スルホン酸エステル(C)0.001〜3質量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形する際に、その成形に用いる射出成形機のノズルが開閉弁を備えており、溶融樹脂の第一の射出工程後に溶融樹脂を計量し、該計量部の容積増加率10%以下にて第二の射出工程に移行することを特徴とする射出成形体の製造方法。
2.該開閉弁は、射出工程に移行するために上記開閉弁を開放するにあたり開閉弁の開放直前の射出シリンダ内の計量された溶融樹脂の圧力が1kgf/cm2以上で操作されることを特徴とする前記1.に記載の射出成形体の製造方法。
3.該射出成形は、その射出成形に用いる金型がホットランナーを有することを特徴とする前記1.又は2.に記載の射出成形体の製造方法。
4.ホットランナーが、バルブゲートを有することを特徴とする前記3.に記載の射出成形体の製造方法。
5.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、有機酸アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩0.001〜1質量部を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする前記1.〜4.のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
6.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、フルオロポリマー0.01〜1質量部を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする前記1.〜5.のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
7.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、着色剤を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする前記1.〜6.のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
8.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、紫外線吸収剤を含む芳香族樹脂組成物を用
いることを特徴とする前記1.〜7.のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
9.芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、導電性充填材を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする前記1.〜8.のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
10.上記1.〜9.のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法により得られた成形体の表面にシルバーストリークスやフローマークの外観不良が無いことを特徴とする射出成形体。
11.射出成形体が、ハウジング用成形体であることを特徴とする前記10.の射出成形体。
12.射出成形体が、自動車または自動車部品用成形体であることを特徴とする前記10.の射出成形体。
本発明において成分(A)は、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂である。本発明において、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂とは、該樹脂の総量を100質量部とした場合に該樹脂中の芳香族ポリカーボネートの量が50質量部を超えるものを意味する。成分(A)は芳香族ポリカーボネート単独でもよく、また、成分(A)は芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
本発明の成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導される芳香族ポリカーボネートであり、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルオキシド、4、4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロキシアリールスルホキシド類、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3、3’−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類などを挙げることができる。
上記芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、通常、5,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは13,000から50,000、更に好ましくは15,000〜30,000、特に好ましくは17,000〜25,000であり、最も好ましくは17,000〜20,000である。
MPC=0.3591MPS1.0388
(MPCは芳香族ポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
また、本発明の(A)として、分子量が異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用しても良い。例えば、Mwが通常14,000〜16,000の範囲にある光学ディスク用材料の芳香族ポリカーボネートと、Mwが通常20,000〜50,000の範囲にある射出成形用あるいは押出成形用の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用することができる。
本発明において成分(B)は、固体無機化合物である。
本発明において、成分(B)の使用により、樹脂組成物の高度な難燃性を獲得できると共に、組成物の剛性や強度の向上(強化材としての機能)や、寸法精度の向上(充填材としての機能)を図ることもできる。
板状の成分(B)としては、例えば、タルク、マイカ、パールマイカ、ガラスフレーク、カオリンなどを挙げることができる。
球状(もしくは擬球状)の成分(B)としては、例えば、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、ガラスパウダー、シリカ(天然シリカ及び合成シリカ)等を挙げることができる。
本発明では、成分(B)として、炭素繊維、またはタルク、マイカ、パールマイカ、ワラステナイト、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク等の珪酸塩化合物が好ましい。
本発明の成分(B)としてより好ましく使用することができる上記珪酸塩化合物の中でも特に好ましい珪酸塩化合物は、金属酸化物成分とSiO2成分とからなる珪酸塩化合物である。成分(B)として使用することができる珪酸塩化合物中に存在する珪酸イオンの形態としては、オルトシリケート、ジシリケート、環状シリケート、鎖状シリケート、層状シリケート等のいずれの形態であっても良い。
また、上記珪酸塩化合物は水和物であっても良い。水和物における結晶水の形態は、Si−OHの形で水素珪酸イオンとして含まれるもの、金属陽イオンに対して水酸イオン(OH−)として含まれるもの、構造の隙間に水分子として含まれるものなどいずれであってもよい。
本発明の成分(B)として特に好ましく使用される珪酸塩化合物は、好ましくはその組成が実質的に下記式(1)で示されるものである。
xMO・ySiO2・zH2O (1)
(ここでx及びyは自然数を表し、zは0以上の整数を表し、MOは金属酸化物成分を表し、複数の異なる金属酸化物成分であっても良い。)
上記金属酸化物MOにおける金属Mの例としては、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンなどを上げることができる。
本発明の成分(B)として好ましく使用される珪酸塩化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラステナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト等を挙げることができる。
また、上記したように珪酸塩化合物は、任意の形状(板状、針状、球状、繊維状等)のものが使用できるが、板状、針状及び繊維状のものが好ましく、中でも特に、板状の粒子であるものが本発明の成分(B)として最も好ましく使用できる。ここで板状の粒子とは、下記の方法で求めた、板状の成分(B)のメディアン径として求められる平均粒子径を(a)とし、厚みを(c)とした場合に、(a)/(c)の比が5〜500、好ましくは10〜300、更に好ましくは20〜200である形状のものである。
尚、上記の平均粒子径は、成分(B)の粒子径のおよその分布範囲により、以下2つの方法のいずれかを用いて測定する。
成分(B)の粒子径がおよそ0.001〜0.1μmの範囲に分布する場合は、透過型電子顕微鏡の観察写真を撮影し、得られた顕微鏡写真から、樹脂組成物中における100個以上の個々の無機化合物粒子に対して、写真上での各粒子の面積をそれぞれ計測し、S(上記写真上での面積を顕微鏡の倍率で除した値)を用いて(4S/π)0.5を各粒子の粒子径として求め、数平均粒子径を平均粒子径(a)とする。
本発明において、板状の成分(B)の厚み(c)は、0.01〜100μmが好ましく、0.03〜10μmがより好ましく、0.05〜5μmが更に好ましく、0.1〜3μmが特に好ましい。
成分(B)として用いる板状粒子の厚み(c)は、例えば透過型電子顕微鏡の観察写真を撮影し、得られた顕微鏡写真から、樹脂組成物中における10個以上の個々の粒子に対して、写真上での各粒子の厚みをそれぞれ計測し、上記写真上での厚みを顕微鏡の倍率で除した値を各粒子の厚みとして求め、その平均値を厚み(c)とする。
本発明の成分(B)として、特に好ましく使用できるタルクとは、層状構造を持つ含水珪酸マグネシウムであり、化学式4SiO2・3MgO・H2Oで表され、通常、SiO2約63質量%、MgO約32質量%、H2O約5質量%、その他Fe2O3、CaO、Al2O3などを含有しており、比重は約2.7である。
また、本発明の成分(B)として、焼成タルクや、塩酸や硫酸等の酸で洗浄して不純物を除いたタルクなども好ましく使用することができる。さらに、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理を行ったタルクも使用することができる。
本発明において成分(B)の使用量は、成分(A)100質量部に対して0.1〜200質量部であり、0.3〜100質量部が好ましく、0.5〜50質量部がより好ましく、0.8〜30質量部が更に好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。成分(B)が200質量部を超える場合、溶融安定性の低下が顕著となり、樹脂組成物の機械的物性の低下が大きい。また、成分(B)が0.1質量部未満の場合、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向にあり、本発明の目的の一つである高い難燃性が達成できない。
本発明で用いられる成分(C)は、有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩、有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。成分(C)は、好ましくは、140℃における蒸気圧が380mmHg以下である化合物が望ましい。
本発明では成分(C)を成分(B)と組み合わせて使用し、成分(C)の使用量を、成分(B)と成分(C)との混合物のpH値が4〜8の範囲となるように調整することにより、樹脂組成物の難燃性や溶融安定性を飛躍的に向上させることができ、特に好ましい。
また、本発明の成分(C)として用いられる有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩とは、上記有機酸の誘導体である。上記有機酸誘導体は、樹脂組成物を成形する際に分解し、酸として機能すると考えられる。従って例えば成分(B)として、塩基性を示す無機化合物を用いた場合、成分(C)はこれを中和する機能を発揮するものと考えられる。即ち本発明の組成物において、成分(C)はpH調節機能を発揮するものである。
中でも、成分(C)として有機スルホン酸及び/または有機スルホン酸エステルを使用する場合には、樹脂組成物の溶融安定性が特に優れており、揮発成分の発生も低レベルに抑えることができるために、広い温度範囲で成形加工が行えると共に、成形品の外観にも極めて優れている。
さらに本発明において、成分(C)として好ましく使用される有機スルホン酸は、分子構造中に−SO3H基の他に、−OH基、−NH2基、−COOH基、ハロゲン基などを含む有機スルホン酸化合物であっても良く、たとえばナフトールスルホン酸、スルファミン酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルホ安息香酸、クロル基により全置換もしくは部分置換された有機スルホン酸(クロル基含有有機スルホン酸)、フルオロ基により全置換もしくは部分置換された有機スルホン酸(フルオロ基含有有機スルホン酸)等を挙げることができる。
本発明において、成分(B)と成分(C)との混合物のpH値が、4〜8の範囲となる量が好ましいが、本発明においてpH値は、JIS K5101に基づいて測定することができる。
JIS K5101のpH値の測定法では、操作法として煮沸法と常温法があるが、本発明では煮沸法を用いる。
また、本発明における成分(B)と成分(C)の混合物のpH値の測定では、成分(C)の水に対する溶解度が低い場合は、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類を懸濁液の分散剤として使用する。
本発明における成分(C)の使用量は、成分(B)の種類や形状や量、或いは成分(C)の種類に応じて変化する。
成分(C)の使用量は、成分(B)と成分(C)の混合物のpHが4.2〜7.8の範囲となる量であることがより好ましく、4.5〜7.2の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明における溶融樹脂の計量とは、射出成形において溶融樹脂の金型への充填後に次いで充填するために射出成形機内のシリンダー内のスクリュウを後退させ、シリンダー前部に所望量の溶融樹脂を計量する事を示す。
本発明における、溶融樹脂を計量後の、該計量部の容積増加率とは、樹脂計量直後の計量部の容積をV1とし、その後溶融樹脂を供給せずにスクリューを後退させた時の計量部の容積をV2としたときの容積増加率(V2−V1)/V1を示す。
本発明では該計量部の容積増加率は、10%以下であり、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは実質容積増加率0%である。
二つ目の方法としては、計量時或いは計量後にノズル先端から樹脂が排出しないようにノズル先端に開閉弁を設けて溶融樹脂の排出を防止する方法である。開閉弁を備えたノズルの一例としては、「シャットオフノズル」が一般に使用される。シャットオフノズルの開閉弁は、空圧、油圧等の動力を用いるもの、バネのような機械的弾性力を利用したものなどが使用できる。シャットオフノズルを使用したときには、一般にサックバックを行わず樹脂計量後直ちにノズル先端の開閉弁を閉じるため、本発明における計量部の容積増加率は0%である。
本発明における開閉弁を開放するにあたり開閉弁の開放直前の射出シリンダー内の計量された溶融樹脂の圧力が1kgf/cm2以上とは、溶融樹脂にかけられた背圧を完全に開放しないことを示し、好ましくは10kgf/cm2以上、更に好ましくは、50kgf/cm2以上である。
本発明において、使用される金型内に設置されるホットランナーとは、金型内にヒーターを備えたランナー部を有する一般的にホットランナーと称されるものであれば好ましく良く、より好ましくはバルブブゲートを備えたものが望ましい。バルブゲートとは、ホットランナー先端のゲート部に開閉弁を設けたものであり、ノズルのシャットオフ弁と同様な働きを行い、樹脂をキャビティ内に充填するときに開放し、樹脂充填後次の射出時まで閉鎖される。これにより溶融樹脂のゲート部からの不要な漏洩が防止されるため、サックバック等の操作が不要となり、計量部の容積増加率を抑えることができる。
本発明の有機酸金属塩は、有機スルホン酸の金属塩および/または硫酸エステルの金属塩であり、これらは単独の使用だけでなく2種類以上を混合して使用することも可能である。
本発明の有機酸金属塩含まれるアルカリ土類金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。本発明において、特に好ましいアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムであり、最も好ましいのはナトリウム、カリウムである。
脂肪族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、炭素数1〜8のアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ/アルカリ土類金属塩、またはかかるアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換されたスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩、さらには炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩を好ましく使用することができ、特に好ましい具体例として、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を挙げることができる。
本発明において有機酸金属塩の使用量は、成分(A)100質量部に対して0.001〜1質量部であり、0.01〜0.9質量部が好ましく、0.1〜0.8質量部が更に好ましく、0.4〜0.7が最も好ましい。有機金属塩が1質量部を超える場合、溶融安定性の低下が顕著であり、樹脂組成物の機械的物性の低下が大きい。また0.001質量部未満の場合、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向にあり、本発明の目的の一つとする高い難燃性を達成し難い。
フルオロポリマーは、ファインパウダー状のフルオロポリマー、フルオロポリマーの水性ディスパージョン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等の第2の樹脂との紛体状混合物等、様様な形態のフルオロポリマーを使用することができる。
また、本発明では、ASやPMMA等の第2の樹脂との紛体状混合物としたフルオロポリマーも好適に使用することができるが、これらの第2の樹脂との紛体状混合物としたフルオロポリマーに関する技術は、特開平9−95583号公報、特開平11−49912号公報、特開2000−143966号公報、特開2000−297189号公報等に開示されている。本発明において好ましく使用できる、これら第2の樹脂との紛体状混合物としたフルオロポリマーとして、米国GEスペシャリティケミカルズ製「Blendex 499(登録商標)」、三菱レーヨン(株)製「メタブレンA−3800(登録商標)」を例示することができる。
本発明では、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂成分(A)100質量部、固体無機化合物(B)0.1〜200質量部、140℃における蒸気圧が、380mmHg以下である有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分(C)をより好ましく特定した化合物(C’)0.001〜3質量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物も提供する。樹脂成分(A)、(B)は、前記記載のものと同様な化合物ものが使用できる。
本発明の組成物に用いられる有機金属塩、フルオロポリマーは、前述の化合物より選択したものを用いることができる。
本発明で用いることが出来る着色剤とは、樹脂の着色に使用される顔料や染料であり、例えば、チタンホワイト(酸化チタン)、チタンイエロー、ベンガラ、群青、スピネルグリーン等の無機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、アンスラキノン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料等の有機顔料、カーボンブラック、ペリレン系染料、ペリノン系染料、アンスラキノン系染料、複素環系染料の染料をあげることができる。
本発明で用いることが出来る紫外線吸収剤とは、ポリカーボネート樹脂に一般に使用されるものであれば特に制限は無く、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、などがあげられる。また、耐候性を更に改良するためにヒンダードアミン系の光安定剤や各種酸化防止剤を含んでも良い。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1’, 3,3’−テトラメチルブチル)フェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’, 5’−ジフェニル−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’, 5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物などが挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、必要に応じて、更に、滑剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤などを添加することもできる。
次に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は上記の各成分(A)〜(C’)又は(C)、必要に応じてその他の成分を上記の組成割合で配合し、押出機等の溶融混練することにより得ることが出来る。このときの各構成成分の配合、および溶融混練は一般に使用されている装置、たとえばタンブラー、リボンブレンダー等の予備混合装置、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することが出来る。また、溶融混練装置への原材料の供給は、予め各成分を混合した後に供給することも可能である。それぞれの成分を独立して溶融混練装置に供給することも可能である。
本発明の樹脂組成物を製造するにあたり、成分(B)は、予めその表面及び内部を、成分(C’)又は(C)によって、共有結合、イオン結合、分子間力、水素結合等を介して、化学的または物理的に表面処理した後に、溶融混練装置に供給されることが好ましい。
本発明成形体の例としては、デスクトップパソコンやノート型パソコンなどのコ
ンピューター部品、携帯電話部品、電気・電子機器、携帯情報端末、家電製品部品などに用いられる。特に薄肉成形シートとしては、絶縁フィルム、絶縁シートなどが挙げられる。更に近年薄肉成形体の要望が高まっているバッテリーケース、プラスチックフレームなども好適な用途として挙げることができる。
また、自動車、車両部品としてドア周りパネル、ドア、フェンダーなどの外装部品やインパネ等の内部部材の用途としても上げることができる。
1.成分(A):芳香族ポリカーボネート
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造されたビスフェノールA系ポリカーボネートであり、ヒンダ−ドフェノール系酸化防止剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを300ppm含むもの。
質量平均分子量(Mw)=21,800
フェノール性末端基比率(フェノール性末端基が全末端基数に占める割合)=35モル%
フェノール性末端基比率は核基磁気共鳴法(NMR法)で測定した。
以下の特性を有するタルク。
平均粒子径=5μm
白色度=96%
嵩比容積=2.3ml/g
比表面積=8.5m2/g
水分=0.2%
吸油量=51ml/100g
pH=9.3
平均粒子径測定方法は、島津製作所社製SALD−2000分析装置を使用し、レーザー回折法により各粒子に対する粒子径を測定し、タルクの平均粒子径はメディアン径とした。
白色度は、JIS P8123に準拠した測定方法で実施し、東洋精機製作所社製デジタルハンターSTにより測定した。
比表面積は気相吸着法によるBET法で測定し、島津製作所製フローソープ2300を用いて測定した。
水分はJISK 5101に準拠した測定方法で実施し、島津製作所社製STAC−5100を使用して測定した。
吸油量、及び嵩比容積はJIS K5101に準拠した測定方法で実施した。
pHは、JIS K5101規格に準拠したpH測定法(煮沸法)で実施した。
140℃における蒸気圧が20mmHgのp−トルエンスルホン酸(特級試薬、和光純薬工業株式会社製)
(有機金属塩)
有機酸アルカリ金属塩及び有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ工業(株)製、商品名「メガファックスF114」)
(滴下防止剤)
フルオロポリマー
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)の50/50(質量比)紛体状混合物(米国GEスペシャリティケミカルズ社製、「Blendex 449」(登録商標))
(紫外線吸収剤)
ベンゾトリアゾール系の2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1’,3,3’−テトラメチルブチル)フェノンを用いた。(永光化学社製「Eversorb72」)
(カーボン繊維)
直径7μm、繊維長6mmのカーボン繊維
(離型剤)
ペンタエリスリトールテトラステアレート(日本国日本油脂(株)製、「ユニスターH476」(登録商標))
(着色剤)
黒系着色剤として三菱化学株式会社製 カーボンブラック「三菱カーボン#50」
白系着色剤としてハンツマン製 酸化チタン「Tioxide TR28」
成分(A)、(B)、(C)及び、その他の成分を表1に示す量(単位は質量部)で二軸押出機を用いて溶融混練してポリカーボネート難燃樹脂組成物を得た。具体的な製造方法及び製造条件は以下の通りである。
表1に表す組成比の成分(B)と成分(C)との混合物のpH値をJIS K5101に準拠して測定した結果、表1に記載する値となった。溶融混練装置は2軸押出機(ZSK−25、L/D=37、ドイツ国Werner&Pfleiderer社製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数250rpm、混練樹脂の吐出速度15kg/hrの条件で溶融混練を行なった。
溶融混練中に、押出機ダイ部で熱電対により測定した溶融樹脂の温度は260〜270℃であった。また、押出機の後段部分にベント口を設けて減圧脱揮(0.005MPa)を行なった。2軸押出機への原材料の投入は、成分(B)と成分(C)は、溶融混練を行なう前に、表1に示す配合比率で、ジャケット温度200℃に設定した10リットルのヘンシェルミキサーに投入し、スクリュー回転数1,450rpmで10分間攪拌処理の予備混合処理を行なったものを使用した。尚、該予備混合処理のpH値をJIS K5101に準拠して測定したところ、表1、表2に示す結果となった。得られた樹脂組成物のペレットを120℃4時間乾燥し、射出成形機で成形し、以下の各試験を実施した。
燃焼試験用の短冊状薄肉成形体(厚さ0.75mm)を試験片として作成した。ゲートは、成形品長手方向の中心部に位置する幅20mmのファンゲートより成形品先端に配向がかかるように樹脂を充填した。
射出成形機は、ソディック製TR50S2Aを使用し、シリンダー設定温度320℃、金型温度110℃、射出速度400mm/secの条件で成形した。成形品は、温度23℃、湿度50%の環境下に2日間保持した後、UL94規格に準じて50W(20mm)垂直燃焼試験を行ない、V−0、V−1、V−2、NC(NCは、non−classification(分類不能))に分類した。
難燃焼性の程度(左を良好とする):V−0>V−1>V−2>NCである。
実施例1では、表1に記載の組成物をシャットオフノズルのついた成形機を用いて成形した。その結果、成形品表面にシルバーストリクス、フローマーク等の外観不良のない外観良好な成形品が得られた。また、剛性も4250MPaと非強化ポリカーボネートに比べて剛性が優れたものが作成できた。また、このサンプルの耐候性試験を行った結果、比較例3の成形品に比べて耐候性に優れていることがわかった。ブラックパネル温度63℃、照射及び噴霧の方法が120分間サイクル(雨有り)のサンシャインウェザーメーター暴露試験(JIS B 7753−1993)の2000時間暴露試験の結果、比較例3の組成物による成形品の表面には細かなクラックが認められたのに対して、実施例1〜2、参考例1の組成物による成形品の表面にはクラックは発生しなかった。
実施例2では、実施例1で用いた組成物に加え難燃性を向上させるために表1に記載の組成物のものを用いた。その結果、外観が良好で更に難燃性(0.75mmでV−0)を有する成形品が作成できた。
参考例2では、オープンノズルを用いて成形したが、計量部容積増加率を1%とした場合には外観良好な成形品が得られた。
実施例3では、難燃材に加え電磁はシールド特性を付与するためにカーボンフィラーを30部添加した材料で2mmの試験片を作成し、難燃性と導電性、電磁波シールド特性を測定した。その結果、難燃性はV−0、導電性は、表面低効率で0.4Ω、電磁波シールド特性は、150mm×150mm、肉厚2mmの試験片をMIL−STD−285にもとずいたアドバンテスト法にて、周波数範囲1〜1000MHzにて測定した。その結果、周波数300MHzにおいて、電磁波シールド特性は、53dBと良好な結果が得られた。
実施例4(表1に記載せず)として、実施例2の成分から紫外線吸収剤の代わりに着色時を添加した組成物のものを成形した。着色剤としては、「三菱カーボン#50」0.001部と「Tioxide TR28」2部を用いた。シャットオフノズルを用いて成形した結果、グレー色の外観良好な成形品が得られた。得られた成形品の難燃性は、0.75mmでV−0であった。
比較例2は、通常のポリカーボネートを用いた成形例である。
比較例3は、参考例2と同じ組成の材料を成形した結果であるが、サックバックを6mmとして、計量部の容積増加率を16%とした場合、成形品表面にはシルバーストリークスが発生して外観上満足できる成形品が得られなかった。
本発明の薄肉成形体は、機械的特性、溶融安定性並びに外観に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂成形体であった。
Claims (12)
- 芳香族ポリカーボネートまたは芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)(但し、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)において、芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂の使用量は、該樹脂(A)の総量100質量部に対して0.1〜15質量部である)100質量部、金属酸化物成分とSiO 2 成分とからなる珪酸塩化合物(B)0.1〜200質量部、有機スルホン酸及び/または有機スルホン酸エステル(C)0.001〜3質量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形する際に、その成形に用いる射出成形機のノズルが開閉弁を備えており、溶融樹脂の第一の射出工程後に溶融樹脂を計量し、該計量部の容積増加率10%以下にて第二の射出工程に移行することを特徴とする射出成形体の製造方法。
- 該開閉弁は、射出工程に移行するために上記開閉弁を開放するにあたり開閉弁の開放直前の射出シリンダ内の計量された溶融樹脂の圧力が1kgf/cm2以上で操作されることを特徴とする請求項1に記載の射出成形体の製造方法。
- 該射出成形は、その射出成形に用いる金型がホットランナーを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形体の製造方法。
- ホットランナーが、バルブゲートを有することを特徴とする請求項3に記載の射出成形体の製造方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、有機酸アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩0.001〜1質量部を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、フルオロポリマー0.01〜1質量部を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、着色剤を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、紫外線吸収剤を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、導電性充填材を含む芳香族樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
- 上記請求項1〜9のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法により得られた成形体の表面にシルバーストリークスやフローマークの外観不良が無いことを特徴とする射出成形体。
- 射出成形体が、ハウジング用成形体であることを特徴とする請求項10の射出成形体。
- 射出成形体が、自動車または自動車部品用成形体であることを特徴とする請求項10の射出成形体。
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