JP4720327B2 - スライドドア車の下部車体構造 - Google Patents

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Description

この発明は、サイドドアをスライドドアとした車両における下部車体構造に関し、特に、フロアパネルとサイドシルとの組立性等を向上したスライドドア車の下部車体構造に関する。
従来から、例えば1BOXやミニバンのような車両では、サイドドアをスライドドアとするものが知られている。こうしたスライドドアを採用するものでは、ドアの下部を車両前後方向に延びるサイドシルに支持させている。
ドアの下部をサイドシルに支持させる場合、サイドシルアウタに車両内方側に凹設したスライドレール収容凹部を形成するのが、一般的である。
もっとも、スライドドアは、乗降口を封鎖する際に、スライドドア自体を車内側に引き込んで封鎖するため、スライドレールの前端部を、車内側に大きく屈曲形成している。これにより、スライドレール収容凹部が車内側に大きく窪み、サイドシルインナも対応する部分で車内側に大きく膨出して形成されることになる。
下記特許文献1においても、サイドシルアウタにスライドドアのスライドレール収納部を設けたものが開示され、サイドシルインナ(文献中でフロアサイドパネル29)のスライドレール屈曲部に対応する部分において、車内側に膨出する膨出部を形成したものが開示されている。
特許第2718141号公報
ところで、フロアパネルとサイドシルは、車室内のシール性を確保するために、確実に組立て接合を行う必要がある。
しかしながら、前述のようにスライドドアを備えた車両の場合には、サイドシルインナに車内側に大きく膨出する膨出部を設ける必要があるため、この膨出部に対応して、フロアパネルの外縁の一部に窪み部を形成して、組立て接合する必要がある。
こうして、フロアパネルに窪み部を形成して、サイドシルインナの膨出部に対応して接合する場合には、窪み部形状と膨出部形状が確実に一致しなければ、接合が均一、かつ充分に行えないため、シール性が悪化するという問題が生じる。
また、この問題を解消しようと、フロアパネルやサイドシルインナの形状を精密に成形するとなると、成形コストが嵩むという新たな問題が生じる。
さらに、組立て接合の作業性も、窪み部と膨出部との間を略円弧状に均等に接合するのに熟練性が必要であるという問題もある。
そこで、本発明は、サイドドアをスライドドアとしたスライドドア車の下部車体構造において、サイドシルインナに車内側に膨出する膨出部を設けた場合であっても、フロアパネルとサイドシルとの間のシール性が悪化することなく、また成形性、組み立て作業性を簡略にして向上することができるスライドドア車の下部車体構造を提供することを目的とする。
この発明のスライドドア車の下部車体構造は、車体のサイドドア開口部の下縁で車両前後方向に延びるサイドシルと、該サイドシルに接合され、車室フロアを構成するフロアパネルと、前記サイドシルがサイドシルインナとサイドシルアウタを備え、該サイドシルアウタに、スライドドアの下部を支持するロアレールを収容するレール収容凹部を形成したスライドドア車の下部車体構造であって、前記サイドシルインナに、車内側に膨出する膨出部を形成し、該膨出部内に、前記サイドシルアウタのレール収容凹部を配置し、前記フロアパネルが平面視で前記膨出部と重複するように、前記サイドシルインナの下部にフロアパネルとの接合部を設定し、前記サイドシルインナの膨出部と前記フロアパネルとの間に、膨出部を支持する支持部材を設け、該支持部材を、前記フロアパネル上で車幅方向に延びて、前記膨出部とフロアパネルに形成したトンネル部とを連結するクロスメンバの車外側部によって構成し、該クロスメンバが、前記膨出部の底面に結合される車外側部と、膨出部より車両中央側で該車外側部よりも上下方向高さを高く設定した車内側部と有し、該車内側部が側面視で前記膨出部と重複するように設定したものである。
上記構成によれば、膨出部を避けてサイドシルインナの下部にフロアパネルとの接合部を設定していることから、フロアパネルの外縁に膨出部に対応した窪み部を形成しなくても、サイドシルとフロアパネルを接合することができる。
このため、フロアパネルに膨出部の形状に対応した窪み部を形成する必要はなく、従来通りの形状(例えば、直線状)でフロアパネルを構成することができ、従来と同様の方法によって、フロアパネルとサイドシルとを組立て接合することができる。
また、フロアパネルがサイドシルインナの下部で接合されるため、フロアパネルの位置も低くすることができ、車室空間も広くすることができる。
さらに、前記サイドシルインナの膨出部と前記フロアパネルとの間に、膨出部を支持する支持部材を設けたものであり、支持部材を介して膨出部がフロアパネルに支持されるため、片持ち状態の膨出部の上下方向位置が確実に規定(拘束)されることになる。
このため、膨出部の上下方向位置が確実に規定され、レール収容凹部からスライドドアの重量等が作用しても、膨出部にガタツキが生じることはない。
よって、膨出部が片持ち状態に形成されても、膨出部の剛性を高めることができる。
また、前記支持部材を、前記フロアパネル上で車幅方向に延びて、前記膨出部とフロアパネルに形成したトンネル部とを連結するクロスメンバの車外側部によって構成したものであるから、膨出部とトンネル部を車幅方向に延びて連結するクロスメンバの車外側部を利用して、膨出部をフロアパネルに支持することになる。
このため、サイドシルの横方向剛性を高める部材であるクロスメンバを有効利用して、膨出部の上下方向位置を規定することができる。
よって、サイドシルの内折れ防止効果を得つつも、膨出部の上下方向強度を向上することができる。
さらに、車幅方向に延びるクロスメンバで、トンネル部と膨出部とを連結するため、サイドシルの横方向(車幅方向)剛性を高めることができる。
このため、サイドシルアウタにレール収容凹部を形成することで、横方向剛性が低下するサイドシルにおける側突時の内折れ変形を防止することができる。
また、サイドシルインナに片持ち状態で形成される膨出部を、クロスメンバで連結することで、膨出部の上下方向の動きをクロスメンバで拘束することができ、膨出部の補強も行なうことができる。
よって、レール収容凹部や膨出部を形成して低下したサイドシルの剛性を、クロスメンバによって向上することができ、サイドシル全体の剛性を向上することができる。
なお、クロスメンバは、フロアパネル上で車幅方向に延びて、膨出部とトンネル部を連結するものであれば、閉断面メンバ、開断面メンバ、筒状メンバ等、特に限定されるものではない。
しかも、前記クロスメンバが、前記膨出部の底面部に結合される車外側部と、膨出部より車両中央側で該車外側部よりも上下方向高さを高く設定した車内側部と有し、該車内側部が側面視で前記膨出部と重複するように設定したものであるから、クロスメンバの車内側部で、確実に膨出部の側突時の車室内方への侵入を抑えつつ、車外側部では、膨出部の上下方向の動きを抑えることができる。
よって、一つのクロスメンバで、サイドシルの側突時の内折れ変形と膨出部の上下方向の変位を、それぞれ確実に抑えて、サイドシルの全体剛性を向上することができる。
この発明の一実施態様においては、前記トンネル部の上下方向高さを、前記サイドシルの上下方向高さよりも高く設定したものである。
上記構成によれば、側突荷重を支えるトンネル部の高さをサイドシルの高さよりも高く設定したので、トンネル部が確実に側突荷重を支える剛性を発揮することになる。
よって、サイドシルの横方向剛性をさらに高めることができ、確実にサイドシルの内折れ変形を防止することができる。
この発明の一実施態様においては、前記クロスメンバの車外側部から車内側部にかけて上面部に傾斜面を形成し、該傾斜面に、車両の側面衝突時において前記膨出部に当接する当接部材を設けたものである。
上記構成によれば、当接部材を設けたことで、側突時におけるクロスメンバへの衝撃伝達が、当接部材により確実に行われることになる。
よって、クロスメンバの車内側部と車外側部とで上下方向高さを相違させて、クロスメンバの上面部に衝撃が伝達しにくい形状であっても、確実にクロスメンバに側突荷重が伝達され、サイドシルの内折れ変形を防止できる。
この発明によれば、膨出部を避けてサイドシルインナの下部にフロアパネルとの接合部を設定していることから、フロアパネルの外縁に膨出部に対応した凹部を形成しなくても、サイドシルとフロアパネルを接合することができる。
このため、フロアパネルに膨出部の形状に対応した凹部を形成する必要はなく、従来通りの形状(例えば、直線状)でフロアパネルを構成することができ、従来と同様の方法によって、フロアパネルとサイドシルとを組立て接合することができる。
よって、サイドドアをスライドドアとしたスライドドア車の下部車体構造において、サイドシルインナに車内側に膨出する膨出部を設けた場合であっても、フロアパネルとサイドシルとの間のシール性を悪化することなく、また成形性、組み立て作業性を簡略にして向上することができる。
この本発明の実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
(第一実施形態)
まず、図1〜図7を参照して本発明の前提構造となる参考例について説明する。図1は車両の全体斜視図、図2はこの車両の下部車体構造の中間部分における平面図、図3は下部車体構造の分解斜視図、図4は下部車体構造のサイドシル近傍の車外前方からの斜視図、図5はこのサイドシル近傍の車内後方からの斜視図、図6は図2のA−A線矢視断面図、図7はサイドシル内部の詳細断面図である。
車両Vは、図1に示すように、後部座席の乗降口1をスライドドア2で開閉する構造であり、車体構造のルーフサイドレール3、サイドシル4およびリアフェンダ5に、それぞれ、このスライドドア2のローラ(図示せず)をガイドするスライドドアレール6…を配設している。
また、ルーフサイドレール3とサイドシル4との間には、上下方向に延びて両者3,4を連結して、前席乗降口と後席乗降口1を区画するBピラー7を立設している。
図2に示すように、この車両Vの下部車体構造は、左右両側に車両前後方向に延びるサイドシル4,4を設置し、そのサイドシル4,4の間には、車幅方向中央部で上方に隆起した車両前後方向に延びるトンネル部8形成されたフロアパネル9を張設し、そのフロアパネル9上面には、車幅方向に延びてサイドシル4とトンネル部8をそれぞれ連結するクロスメンバ10,10、11,11を左右一対ずつ、車両前後方向に所定間隔を隔てて設置することで構成している。このうち、クロスメンバは、車両前方側に位置するものが前席(図示せず)の下方に配置されるフロントクロスメンバ10,10で、車両後方側に位置するものがBピラー7,7位置近傍に配置される連結クロスメンバ11,11である。
前述のサイドシル4は、図6に示すように、車幅方向内方側のサイドシルインナ41と車幅方向外方側のサイドシルアウタ42とからなり、上縁および下縁のフランジで両者が接合されて閉断面を構成している。
このサイドシル4には、前述のようにスライドドア2の下部を支持するスライドドアロアレール61を設置しており、このスライドドアロアレール61に対応して、サイドシルアウタ42には、図2および図3に示すように、車両内方側に凹設したスライドレール収容凹部43をBピラー7下端部近傍から車両後方側に向かって延設している。
このスライドレール収容凹部43は、図4に示すように、サイドシルアウタ42に車両前後方向に延びる長孔形状の開口43aを形成して、この開口43a周縁に、断面略コ字状のレールブラケット43bを接合することで構成している。
また、サイドシルインナ41のBピラー7下端部近傍には、図2に示すように車両内方側に膨出する膨出部44を形成している。この膨出部44もスライドドアロアレール61に対応して、具体的にはスライドドアロアレール61の引き込み部61aに対応して車両内方側に膨出するように構成している。
このスライドドアロアレール61の引き込み部61aは、スライドドア2を前端に位置させた状態で、スライドドア2を車内側に引き込んで乗降口1を封鎖するように、スライドドアロアレール61の前端部を、その後方よりも車内側に変位するよう、屈曲形成している。
なお、図4の45は、Bピラー7内部で上下方向に延びるピラーレインであり、一方、46は、サイドシル4内部で車両前後方向に延びるサイドシルレインである。
サイドシル4内部の詳細構造を、さらに、図7により説明する。
サイドシルアウタ42とサイドシルインナ41とで構成されるサイドシル4内部には、前述のように車内側に窪んで車外側を開口したレールブラケット43bを設けている。このレールブラケット43bの上面内側には、下方を開口した断面コ字状のスライドドアロアレール61(引き込み部61aに対応)を取り付けている。
また、レールブラケット43bの車外側下縁は、サイドシルアウタ42とにサイドシル4の車体前後方向に延びる閉断面を構成してサイドシル4を補強する補強部材47に接合されている。この補強部材47は、その上縁が前述したようにサイドシルアウタ42およびレールブラケット43bの車外側下縁に接合されるとに、その下縁がサイドシルインナ41およびサイドシルアウタ42それぞれの下縁フランジに挟持された状態で一体に接合されている。
レールブラケット43bの車内側下面には、ガセット48を設けている。このガセット48は、その上縁をレールブラケット43bの車内側面に接合するとに、その下縁を補強部材47に接合している。
前述のBピラー7は、図に示すように、車外側に設けたピラーアウタ72(サイドシルアウタ42と一体に形成)と車内側に設けたピラーインナ71とからなり、このピラーインナ71とピラーアウタ72との車両前後方向の端部に形成したフランジで、両者71,72を接合することで閉断面を構成している。
また、図6に示すように、ピラーアウタ72およびピラーレイン45とピラーインナ71との間には、車幅方向に延びてこれらを連結して、Bピラー7の閉断面を補強する補強板73を設けている。そして、この補強板73の下端の接合部に対して、レールブラケット43bの車外側上縁を接合している。
前述のフロアパネル9は、図6および図7に示すように、サイドシル4の下部、具体的には、サイドシルインナ41における膨出部44の下方位置の接合部49に、膨出部44とフロアパネル9が平面視で重複するように、その外側フランジ91を接合することで、車室フロアを構成している。このように、サイドシル4の下部にフロアパネル9を接合することで、車室フロアを低くして車室空間をできるだけ広く確保するようにしている。
なお、実際のフロア面をできるだけ低くするため、フロアパネル9の周縁には外側フランジ91から、さらに下側に落ち込む段部92を形成している。
フロアパネル9は、図3に示すように、サイドシル4の膨出部44の形状とは関係なく、その側端部9aを車両前後方向に直線状に形成している。このように直線状に形成することで、フロアパネル9自体を、通常のスイングドア車のフロアパネルと同様の形状で構成することができ、他の車種とフロアパネルの共通化を図ることができる。
また、この側端部9aを直線状に形成したことにより、膨出部44の形状を考慮することなく、サイドシルアウタ41の接合部49に対して、通常の組立て接合方法と同様の方法で、簡単に接合することが可能となる。
なお、図3の12は、荷室フロアを構成するリアフロアパネルであり、このリアフロアパネル12とフロアパネル9を結合することで、車内フロアを構成している。
また、フロアパネル9の中央部には、前述のように車両前後方向に延びるトンネル部8を形成している。このトンネル部8は、排気管やプロペラシャフト等の車両装備品(図示せず)をその内部に収容するために、フロアパネル9の車幅方向中央部に形成される。また、このトンネル部8を形成することで、フロアパネル9の面剛性を向上して、車体の全体剛性、特に捩れ剛性を向上している。
前述の連結クロスメンバ11は、サイドシル4の膨出部44とトンネル部8との間で、両者4,8を連結するように車幅方向に延びるように設置している。具体的には、図6に示すように、フロアパネル9上で、サイドシル4の膨出部44の内側面44aとトンネル部8の側面8aとを、架渡すように設置している。
さらに、この図6にも示すように、トンネル部8の上下方向高さH1は、サイドシル4の上下方向高さH2よりも高く設定している。このため、トンネル部8自体の剛性は、サイドシル4の剛性よりも高くなっている。
この連結クロスメンバ11は、図5に示すように、断面略ハット状のメンバ部材で形成して、その両側フランジ11aをフロアパネル9上面に接合している。そして、上方および前後に延びる外方端フランジ11bを、サイドシル4の膨出部44の内側面44aに接合し、内方端フランジ11c(図参照)を、トンネル部8の側面8aに接合している。こうして、連結クロスメンバ11を、サイドシル4の膨出部44とトンネル部8との間に、接合している。
また、連結クロスメンバ11の上面11dは、図5、図6に示すように、側面視で重複するようにレールブラケット43bの高さ位置に略一致する高さhに設定している。
次に、このように構成した、参考例の下部車体構造における、車両側突時の荷重伝達について説明する。
上記スライドドア2を備えた車両においては、スライドドア2を設けた関係上、前述のように、サイドシル4にスライドレール収容凹部43を形成する必要があり、サイドシル4の閉断面が減少して、サイドシル4の横方向剛性が極めて低下する。
このため、側突荷重が車両側方から作用した場合には、サイドシル4が車両内方側に内折れ変形しようとする。
しかしながら、上記参考例では、車幅方向に延びる連結クロスメンバ11によって、サイドシル4の膨出部44をトンネル部8に連結しているため、連結クロスメンバ11が側突荷重に対して突っ張り、トンネル部8がその側突荷重を支える。このため、サイドシル4の横方向剛性が向上し、内折れ変形が抑制される。特に、膨出部44という最も側突荷重が作用する位置で、連結クロスメンバ11を結合しているため、効果的に側突荷重を支えることができる。
また、剛性の高いトンネル部8を利用して、側突荷重を確実に支持するため、側突時のサイドシル4の変形を極力少なくすることができ、サイドシル4にスライドレール収容凹部43を形成したとしても、サイドシル4の横方向剛性の低下を最小限にすることができる。
さらに、スライドドア2をスライドドアロアレール61を介して支持するレールブラケット43bに、連結クロスメンバ11、具体的には、連結クロスメンバ11の上面11dを、側面視で両者が重複する高さhに設定しているため、スライドドア2に作用する側突荷重も、レールブラケット43bを介して、直接連結クロスメンバ11の上面11dに伝達されることになり、スライドドア2に作用する衝突荷重もトンネル部8で支えることができる。
このように、サイドシル4やスライドドア2に作用する車両側突時の側突荷重は、連結クロスメンバ11を介して、トンネル部8に伝達されるため、サイドシル4の内折れ変形を確実に防止することができ、側突時の側突荷重を、確実に支持することができる。
また、上記参考例では、前述のように、フロアパネル9の側端部9aを直線状に形成して、その上方位置に膨出部44が位置するように、設定していることから、フロアパネル9をサイドシルアウタ42に対して、確実に接合することが可能となり、車室内のシール性も向上することができる。
さらに、このようにフロアパネル9をサイドシルアウタ42に対して接合することで、片持ち状態となる膨出部44も、連結クロスメンバ11によって、上下方向位置が拘束されるため、膨出部44の上下方向位置が確実に保持されて、膨出部44のガタツキも抑えることができる。
以上のように、上記参考例の下部車体構造によると、膨出部44を避けてサイドシルインナ41の下部にフロアパネル9の外側フランジ91との接合部46を設定していることから、フロアパネル9の側端部9aに膨出部44に対応した窪み部等を形成しなくても、サイドシル4とフロアパネル9を接合することができる。
このため、従来通り、直線形状でフロアパネル9の側端部9aを構成することができ、従来と同様の方法によって、フロアパネル9とサイドシル4とを組立て接合することができる。
よって、サイドドアをスライドドア2とした車両Vの下部車体構造において、サイドシルインナ41に車内側に膨出する膨出部44を設けた場合であっても、フロアパネル9とサイドシル4との間のシール性を悪化することなく、また成形性、組み立て作業性を簡略にして向上することができる。
また、フロアパネル9も、サイドシルインナ41の下部で接合されるため、フロアパネル9の位置も低くすることができ、車室空間も広くすることができる。
また、上記参考例では、車幅方向に延びる連結クロスメンバ11で、トンネル部8と膨出部44とを連結していることから、サイドシル4の横方向(車幅方向)剛性を高めることができる。
このため、サイドシルアウタ42にスライドレール収容凹部43を形成することで、横方向剛性が低下するサイドシル4における側突時の内折れ変形を防止することができる。
また、サイドシルインナ41に片持ち状態で形成される膨出部44を、連結クロスメンバ11で連結することで、膨出部44の上下方向の動きを連結クロスメンバ11で拘束することができるため、膨出部44の補強も行なうことができる。
よって、スライドレール収容凹部43や膨出部44を形成して低下したサイドシル4の剛性を、連結クロスメンバ11によって向上することができ、サイドシル4全体の剛性を向上することができる。
なお、連結クロスメンバ11は、フロアパネル9上で車幅方向に延びてサイドシル4の膨出部44とトンネル部8を連結するものであれば、断面L字状の開断面メンバ、角筒状メンバ、丸筒状メンバであってもよい。
また、トンネル部8の上下方向高さH1を、サイドシル4の上下方向高さH2よりも高く設定しているため、トンネル部8が確実に側突荷重を支える剛性を発揮することができる。
よって、サイドシル4の横方向剛性がさらに高くなり、確実にサイドシル4の内折れ変形を防止することができる。
また、連結クロスメンバ11を、断面略ハット状のメンバ部材で構成し、この連結クロスメンバ11の両側フランジ11aを、フロアパネル9上面に接合して、この連結クロスメンバ11の上面11dを、膨出部44と側面視で重複するように設定している。
このため、最も突っ張り剛性の高い連結クロスメンバ11の上面11dが、側突荷重がも作用する膨出部44からの側突荷重を受けることができ、断面略ハット状の連結クロスメンバ11を、サイドシル4の横方向剛性を高める部材として効果的に用いることができる。
また、連結クロスメンバ11を、レールブラケット43bと側面視で重複するように設置したため、レールブラケット43bに対して作用するスライドドア2からの側突荷重が、確実に連結クロスメンバ11に伝達されることになる。
このため、スライドドア2に作用する側突荷重に対しても、連結クロスメンバ11を効率的に作用させることができる。
よって、サイドシル4のみならず、スライドドア2に作用する側突荷重に対しても、連結クロスメンバ11とトンネル部8による側突支持構造を作用させることができるため、より一層サイドシル4の内折れ防止効果を向上できる。
また、連結クロスメンバ11を、断面略ハット状のメンバ部材で構成し、この連結クロスメンバ11の両側フランジ11aを、フロアパネル9上面に接合して、連結クロスメンバ11の上面11dを、レールブラケット43bと側面視で重複するように設定したことにより、最も突っ張り剛性の高い連結クロスメンバ11の上面11dが、スライドドア2からの側突荷重が作用するレールブラケット43bからの荷重を受けることになる。
このため、断面略ハット状の連結クロスメンバ11をサイドシル4の横方向剛性を高める部材として効果的に用いることができる。
よって、サイドシル4の内折れ防止効果を効率的に向上することができる。
なお、上記参考例では、レールブラケット43bとサイドシルアウタ42を別部材で構成したが、サイドシルアウタ42自体に凹部を一体に形成してもよい。
また、レールブラケット43bの高さ位置に対して、連結クロスメンバ11の高さ位置を、低く設定するように構成してもよい。
次に、図8、図9により、他の参考例について説明する。図8は図3に対応する下部車体構造の分解斜視図、図9は図7に対応するサイドシル内部の詳細断面図である。なお、図示しない全体構造については、先の参考例と同様であり、また、図示した構造についても、上記参考例と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
この参考例は、図9に示すように、片持ち状態の膨出部44を下方のフロアパネル9で支持するように、支持ブラケット100を膨出部44とフロアパネル9との間に配設したものである。すなわち、フロアパネル9をサイドシル4の下部に接合することで、片持ち状態で宙に浮いた状態となる膨出部44を、補強する支持ブラケット100を設けたものである。
この支持ブラケット100は、具体的には、図9に示すように、ハット形状のブラケット部材で構成し、フランジ部分101をフロアパネル9に接合し、上面部102を膨出部44の底面44bに接合することで、膨出部44とフロアパネル9との間に配設している。
特に、上面部102の接合においては、膨出部44のみならずスライドレール収容凹部43のレールブラケット43bとも接合するために、三者102,44b,43bをスポット溶接で接合している。なお、図9で一点鎖線で示すのはスポット溶接用ガンGである
このように、組立て接合することで、支持ブラケット100は、膨出部44の上下方向のガタツキを完全に抑制することができ、膨出部44にスライドドア2の重量が作用しても、確実に膨出部44で支持することができる。
また、スポット溶接を行なうため、図8に示すように、フロアパネル9の膨出部44の下方位置に該当する部分には、スポット溶接用作業孔110を穿設している。これにより、支持ブラケット100、膨出部44、レールブラケット43bの三者を容易に接合することができる。
なお、支持ブラケット100を一体的にフロアパネル9に突出部として形成することで、膨出部44を支持するように構成してもい。
もっとも、こうすると、フロアパネル9をスライドドア車専用にプレス成形する必要がある。
そこで、この参考例では、スイングドア車と共通にプレス成形したフロアパネルに、後からスポット溶接用作業孔110を穿設することで、スライドドア車用のフロアパネル9として構成している。これにより、スイングドア車とスライドドア車のフロアパネルを共通化することができる。
なお、このスポット溶接用作業孔110は、支持ブラケット100を接合することで、完全に封鎖されるため、車室内のシール性を悪化させることはない。
のように、上記参考例によると、支持ブラケット100を介して膨出部44がフロアパネル9に支持されるため、片持ち状態の膨出部44の上下方向位置が確実に規定(拘束)されることになる。
このため、膨出部44の上下方向位置が確実に規定され、スライドレール収容凹部43からスライドドア2の重量等が作用しても、膨出部44にガタツキが生じることはない。
よって、膨出部44が片持ち状態に形成されても、膨出部44の剛性を高めることができる。
特に、この参考例では、フロアパネル9から上方に突出するように配置した支持ブラケット100で、膨出部44を支持するため、フロアパネル9で直接膨出部44を支持することになる。
よって、膨出部44は、確実にフロアパネル9と一体的となって、強度を向上することができる。
また、上記参考例によると、フロアパネル9にスポット溶接用作業孔110を穿設し、このスポット溶接用作業孔110を利用して、膨出部44とフロアパネル9との間に配置した支持ブラケット100を接合することになる。
このため、フロアパネル9自体には、直接上方に突出するような突出部を別途形成しなくても、膨出部44をフロアパネル9で支持することができる。
よって、同一形状のフロアパネル9を、スライドドアでない一般的なスイングドアの車両にも利用することができ、フロアパネル9をスライドドア車とスイングドア車との間で共通化を図ることができる。
その他の作用効果については、先の参考例と同様である。
次に、図10、図11により、本発明の実施例について説明する。図10はサイドシル近傍の車内後方からの斜視図、図11はサイドシル内部の詳細断面図である。なお、図示しない全体構造については、先の参考例と同様であり、また、図示した構造についても、先の参考例と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
この実施例は、図10、図11に示すように、連結クロスメンバ211を膨出部44の下方位置まで延設し、膨出部44の底面44bと、連結クロスメンバ211の上面とを接合することで、膨出部44の支持部材として連結クロスメンバ211を利用するものである。
具体的には、連結クロスメンバ211の車外側部212を車内側部213より低く形成して、この車外側部212を膨出部44の下方に潜り込ませた状態に位置させて、車外側部212の上面212aと膨出部44の底面44b、さらにスライドレール収容凹部43のレールブラケット43bを、スポット溶接することで、フロアパネル9と膨出部44とを連結するように構成したものである。
なお、この場合も、フロアパネル9には、スポット溶接用作業110を穿設して(一点鎖線は、スポット溶接用ガンG)、溶接作業を容易に行えるように構成している。
また、この実施では、側突時の車幅方向の衝撃を支えるために、スポット溶接のポイントSPを車幅方向に二箇所設定している。
このように、連結クロスメンバ211を利用して、膨出部44の上下方向位置を拘束することで、別途、支持ブラケット100を設けなくても、膨出部44を支持することができる。
また、図11に示すように、連結クロスメンバ211の車内側部213を高くして、膨出部44と側面視で重複するように設定していることから、側突時に膨出部44が車内方向へ侵入するのを防ぎ、サイドシル4の側突時の内折れ変形を防止することができる。
のように、上記実施例では、膨出部44とトンネル部8を車幅方向に延びて連結する連結クロスメンバ211を利用して、膨出部44をフロアパネル9に対して支持させている。
このため、サイドシル4の横方向剛性を高める部材である連結クロスメンバ211を有効利用して、膨出部44の上下方向位置をも拘束することができる。
よって、サイドシル4の内折れ防止効果を確保しつつも、膨出部44の上下方向強度を向上することができる。
また、上記実施例では、連結クロスメンバ211の車内側部213で、確実に膨出部44の側突時の車室内方への侵入を抑えつつ、車外側部212では、膨出部44の上下方向の動きを抑えることができる。
よって、一つの連結クロスメンバ211で、サイドシル4の側突時の内折れ変形と膨出部44の上下方向の変位を、それぞれ確実に抑えて、サイドシル4の全体剛性を向上することができる。
その他の作用効果については、先の各参考例と同様である。
次に、図12、図13により、本発明のさらに他の実施例について説明する。図12はサイドシル近傍の車内後方からの斜視図、図13はサイドシル内部の詳細断面図である。なお、図示しない全体構造については、の実施と同様であり、また、図示した構造についても、図10、図11と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
図12、図13で示すこの実施例は、図10、図11で示した構成に加えて、さらに連結クロスメンバ211に当接ブラケット300を設けたものである。この当接ブラケット300は、連結クロスメンバ211に対して、側突時のサイドシル4、具体的には、膨出部44からの衝撃を確実に受けることができるように構成したものである。
具体的には、連結クロスメンバ211に、車外側部212から車内側部213に掛けて上方に傾斜する傾斜面部214を形成し、この傾斜面部214に、略三角柱状に折り曲げ形成した当接ブラケット300を接合して、この当接ブラケット300の外方側壁面301を、膨出部44に対向するように設けたものである。
このように、当接ブラケット300を設けることにより、連結クロスメンバ211に対して、側突時の衝撃が、膨出部44から当接ブラケット300を介して確実に伝達されることになり、サイドシル4の内折れ変形が確実に抑制されることになる。
これにより、図12、図13の実施例では、当接ブラケット300を設けたことで、側突時における連結クロスメンバ211への衝撃伝達が、当接ブラケット300により確実に行われることになる。
よって、連結クロスメンバ211の車内側部213と車外側部212とで上下方向高さを相違させた場合でも、確実に連結クロスメンバ211に側突荷重が伝達され、サイドシル4の内折れ変形を防止することができる。
なお、この当接ブラケット300の形状は、この実施形態のものに限られるものではなく、例えば、正面視でくの字状に折り曲げ形成したものや、T字状に形成したものであってもよい。
なお、その他の作用効果については、前述の実施例および参考例と同様である。
この発明の構成と、前述の実施との対応において、
この発明のレール収容凹部は、実施のスライドレール収容凹部43に対応し、
以下、同様に、
クロスメンバは、連結クロスメンバ211に対応し、
ピラーは、Bピラー7に対応し、
支持部材は、車外側部212に対応し、
当接部材は、当接ブラケット300に対応し、
傾斜面は、傾斜面部214に対応するも、
この発明は、前述の実施に限定されるものではなく、あらゆるスライドドア車の下部車体構造に適用する実施形態を含むものである。
本実施形態では、車両をミニバンタイプの車両で説明したが、セダンやステーションワゴンのような車両で、本発明を実施してもよい。
また、Bピラーをなくしたピラーレスの車両で、本発明を実施してもよい。
車両の全体斜視図。 下部車体構造の中間部分における平面図。 下部車体構造の分解斜視図。 サイドシル近傍の車外前方からの斜視図。 サイドシル近傍の車内後方からの斜視図。 図2のA−A線矢視断面図。 サイドシル内部の詳細断面図。 下部車体構造の分解斜視図。 サイドシル内部の詳細断面図。 本発明のスライドドア車の下部車体構造を示すサイドシル近傍の車内後方から見た斜視図。 サイドシル内部の詳細断面図。 他の実施例を示すサイドシル近傍の車内後方から見た斜視図。 サイドシル内部の詳細断面図。
4…サイドシル
7…Bピラー(ピラー)
8…トンネル部
9…フロアパネル
211…連結クロスメンバ(クロスメンバ)
41…サイドシルインナ
42…サイドシルアウタ
43…スライドレール収容凹部(レール収容凹部)
44…膨出部
49…接合部
212…車外側部
213…車内側部
300…当接ブラケット(当接部材)

Claims (3)

  1. 車体のサイドドア開口部の下縁で車両前後方向に延びるサイドシルと、
    該サイドシルに接合され、車室フロアを構成するフロアパネルと、
    前記サイドシルがサイドシルインナとサイドシルアウタを備え、該サイドシルアウタに、スライドドアの下部を支持するロアレールを収容するレール収容凹部を形成したスライドドア車の下部車体構造であって、
    前記サイドシルインナに、車内側に膨出する膨出部を形成し、
    該膨出部内に、前記サイドシルアウタのレール収容凹部を配置し、
    前記フロアパネルが平面視で前記膨出部と重複するように、前記サイドシルインナの下部にフロアパネルとの接合部を設定し
    前記サイドシルインナの膨出部と前記フロアパネルとの間に、膨出部を支持する支持部材を設け、
    該支持部材を、前記フロアパネル上で車幅方向に延びて、前記膨出部とフロアパネルに形成したトンネル部とを連結するクロスメンバの車外側部によって構成し、
    該クロスメンバが、前記膨出部の底面に結合される車外側部と、
    膨出部より車両中央側で該車外側部よりも上下方向高さを高く設定した車内側部と有し、
    該車内側部が側面視で前記膨出部と重複するように設定した
    スライドドア車の下部車体構造。
  2. 前記トンネル部の上下方向高さを、前記サイドシルの上下方向高さよりも高く設定した
    請求項1記載のスライドドア車の下部車体構造。
  3. 前記クロスメンバの車外側部から車内側部にかけての上面部に、傾斜面を形成し、
    該傾斜面に、車両の側面衝突時において前記膨出部に当接する当接部材を設けた
    請求項記載のスライドドア車の下部車体構造。
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