JP4719984B2 - セルロースエステルフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は薄型の液晶表示装置に有用な薄膜のセルロースエステルフィルム及びその製造方法に関し、更に、それを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、低電圧、低消費電力で、IC回路への直結が可能であり、そして、特に、薄型化が可能であることから、携帯電話、カーナビゲーター、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ等の表示装置として広く採用されている。この液晶表示装置は、基本的な構成は、例えば、液晶セルの両面に偏光板を設けたものである。偏光板として、偏光子とそれを保護するためにセルロースエステルフィルム等のプラスティックからなる偏光板用保護フィルムとを貼り合わせたものが広く用いられている。近年、更に液晶表示装置は様々な分野で活用されているが、より薄型化且つ軽量化が求められている。しかしながら、薄手のセルロースエステルフィルムを製膜すると、また製膜速度を速めると面配向の小さいものになり易く、レターデーション値が小さくなり易い。このため、市場では、薄手セルロースエステルフィルムに合わせて液晶セルの設計変更を余儀なくされるような問題が起こっていた。そこで、薄手であるにも係わらず、従来と同等程度の光学的性質を有するセルロースエステルフィルムの開発が要望されていた。しかし従来の製造方法では、この要望に応えにくいところがある。また薄手化による透湿性が低下するという欠点もあり、これらについてより一層の改良が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、薄型化及び軽量化された液晶表示装置に有用な薄膜でありながら面配向性が高く、透湿性の小さなセルロースエステルフィルムを製造する方法、及びその方法により製造された薄膜のセルロースエステルフィルムを提供することにあり、第2の目的は、それにより作製した薄膜でありながら耐久性に優れた偏光板、及び視野角が広くコントラストに優れた液晶表示装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこでこれらの問題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、溶液流延法によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、金属支持体上のウェブを特定の乾燥条件で乾燥させることによってセルロースエステルフィルムを薄手化しても透湿性や視野角が改善されることを見い出した。
【0006】
本発明の構成を次に示す。
(1) 溶液流延製膜方法を用いて、ドープを金属支持体上に流延した後、金属支持体上のウェブを高温乾燥ゾーンで加熱後続いて低温乾燥ゾーンで加熱した後、剥離することにより乾燥膜厚が10〜60μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンの加熱温度をウェブの表面に与える温度としてそれぞれをTh(℃)及びTl(℃)とし、ドープ中の主たる有機溶媒の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンにおいては、BP<Th≦(BP+60℃)、及び低温乾燥ゾーンにおいては、10℃≦Tl≦BPとし、且つ高温乾燥ゾーンと低温乾燥ゾーンの加熱温度の差を5℃以上とし、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に該ウェブの両端をクリップで把持して幅保持による乾燥収縮抑制及び/または幅手方向に延伸を行い、下記式で表されるセルロースエステルフィルムの面配向度(S)を0.0008〜0.0020とすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0007】
S={(Nx+Ny)/2}−Nz
ここで、式中、Nxはフィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率、NyはNxに対して面内で直角な方向の屈折率、Nzはフィルムの膜厚方向の屈折率を表す。
【0008】
(2) 溶液流延製膜方法を用いて、ドープを金属支持体上に流延した後、金属支持体上のウェブを高温乾燥ゾーンで加熱後続いて低温乾燥ゾーンで加熱した後、剥離することにより乾燥膜厚が10〜60μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンの加熱温度をウェブの表面に与える温度としてそれぞれをTh(℃)及びTl(℃)とし、ドープ中の主たる有機溶媒の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンにおいては、BP<Th≦(BP+60℃)、及び低温乾燥ゾーンにおいては、10℃≦Tl≦BPとし、且つ高温乾燥ゾーンと低温乾燥ゾーンの加熱温度の差を5℃以上とし、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に該ウェブの両端をクリップで把持して幅保持による乾燥収縮抑制及び/または幅手方向に延伸を行い、以下に定義されるセルロースエステルフィルムの漏光率を0.005%以下とすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0009】
漏光率(%)=sin2(2θR)×sin2(πR0/λ)×100
ここで、
θ:遅相軸角度(単位、°)、遅相軸方向と製膜方向とのなす狭い方の角度
(°)で、θは−90°≦θ≦90°
θR:遅相軸角(単位、ラジアン)、θR=θ×(2π/360°)
R0:面内レタデーション値(nm)、R0=(Nx−Ny)×d
λ:Nx、Ny、Nzを求める際の光の波長(590nm)
π:円周率
Nx:フィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率
Ny:Nxに対して面内で直角な方向の屈折率
d:セルロースエステルフィルムの膜厚(nm)
である。
【0010】
(3) 溶液流延製膜方法を用いて、ドープを金属支持体上に流延した後、金属支持体上のウェブを高温乾燥ゾーンで加熱後続いて低温乾燥ゾーンで加熱した後、剥離することにより乾燥膜厚が10〜60μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンの加熱温度をウェブの表面に与える温度としてそれぞれをTh(℃)及びTl(℃)とし、ドープ中の主たる有機溶媒の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンにおいては、BP<Th≦(BP+60℃)、及び低温乾燥ゾーンにおいては、10℃≦Tl≦BPとし、且つ高温乾燥ゾーンと低温乾燥ゾーンの加熱温度の差を5℃以上とし、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に該ウェブの両端をクリップで把持して幅保持による乾燥収縮抑制及び/または幅手方向に延伸を行い、上記で定義されるセルロースエステルフィルムの漏光率を0.005%以下、且つ上記面配向度(S)を0.0008〜0.0020とすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0011】
(4) 流延から剥離までの時間が30〜90秒であることを特徴とする(1)乃至(3)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0012】
(5) 剥離後のウェブを幅手方向及び/または長手方向に延伸することを特徴とする(1)乃至(4)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0013】
(6) ドープ中に炭素原子数2〜4のアシル基の平均置換度が2.50〜2.97のセルロースエステルを含有することを特徴とする(1)乃至(5)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0014】
(7) ドープの固形分濃度を18〜35質量%とすることを特徴とする(1)乃至(6)の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0015】
また、次の態様も好ましい態様である。
(A) (1)乃至(7)の何れか1項に記載の方法で製造されたセルロースエステルフィルム。
【0016】
(B) 乾燥膜厚が10〜60μmであり、且つ下式で表される面配向度(S)が0.0008〜0.0020であることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0017】
S={(Nx+Ny)/2}−Nz
ここで、式中、Nxはフィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率、NyはNxに対して面内で直角な方向の屈折率、Nzはフィルムの膜厚方向の屈折率を表す。
【0018】
(C) (A)または(B)に記載のセルロースエステルフィルムを用いて形成されたことを特徴とする偏光板。
【0019】
(D) (C)に記載の偏光板を用いて形成されたことを特徴とする液晶表示装置。
【0020】
本発明を詳述する。
先ず、本発明に係る溶液流延製膜方法及び装置について説明する。
【0021】
本発明のセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルとしては、セルロースの水酸基を炭素原子数が2〜4の低級アシル基で置換しエステル化したものが好ましく、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレート等が好ましい。本発明に係わるセルロースエステルの該アシル基の置換度は、2.50〜2.97であることが好ましい。
【0022】
アシル基の置換度の測定方法は下記のごとくASTM D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0023】
《セルロースエステルの置換度の測定》
ASTM D817−96に規定の方法に準じて行った。
【0024】
《セルロースエステルの数平均分子量の測定》
高速液体クロマトグラフィにより下記条件で測定する。
【0025】
溶媒:アセトン
カラム:MPW×1(東ソー(株)製)
試料濃度:0.2質量/v%
流量:1.0ml/分
試料注入量:300μl
標準試料:ポリメタクリル酸メチル(Mw=188,200)
温度:23℃
セルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、機械的強度に優れ、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0026】
セルロースエステルの原料として綿花リンターまたは木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独あるいは混合して用いることが出来る。セルロースエステルドープ(以降、単にドープとすることがある)を金属支持体上に流延してから金属支持体である程度乾燥してからウェブを剥離する際、剥離性が良い綿花リンターからのセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く好ましく、60質量%以上含有させるのが良く、より好ましくは85質量%以上、更には、単独で使用することが最も好ましい。
【0027】
本発明のセルロースエステルドープを形成する溶媒としては、セルロースエステルを速やかに溶解出来、且つ、取り扱い上または経済的に適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来る。これらの有機溶媒を良溶媒(セルロースエステルに対して)という。本発明において、上記の有機溶媒のうち、メチレンクロライド、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンが金属支持体上で蒸発し易く低沸点であることから好ましく使用出来る。因みにこれらの有機溶媒の沸点は、メチレンクロライド:40.4℃、酢酸メチル:56.32℃、アセトン:56.3℃、酢酸エチル:76.82℃等である。
【0028】
本発明に係わるセルロースエステルドープには、良溶媒の他に、セルロースエステルに対して貧溶媒(セルロースエステルをほとんど溶解しないか、あるいは全く溶解しない有機溶媒)を全溶媒に対して0.1〜30質量%含有させてもよい。貧溶媒としては、炭素原子数1〜4のアルコール、シクロヘキサノール、シクロヘキサン等を挙げることが出来るが、炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましく、全有機溶媒に対して5〜30質量%含有させるのが好ましい。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
【0029】
これらのアルコールは、ドープを金属支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めウェブ(または流延膜)中のアルコールの比率が多くなるとウェブがゲル化し、ウェブを丈夫にし金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0030】
本発明に係わるドープにおいて、好ましい有機溶媒組成は、70〜95質量%のメチレンクロライドと5〜30質量%のエタノールが好ましい。環境上の制約でハロゲンを含む溶媒を避けるような場合には、メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることが好ましい。酢酸メチルは、上記のセルロースエステル全てに対して優れた溶解能を有しまた、沸点も低く、好ましい有機溶媒であり、酢酸メチル/エタノールも本発明のドープ組成として好ましい。
【0031】
本発明に係わるドープ中の固形分濃度は18〜35質量%が好ましく、特に21〜30質量%が好ましい。
【0032】
本発明に係わるドープ組成物はセルロースエステル及び有機溶媒の他に、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等を含有することによって、フィルムとして形成された後、耐水性、紫外線カット、劣化防止、滑り性等の好ましい性質が付与されるので、好ましく添加されている。
【0033】
可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系として、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系として、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来る。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下が、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方がさらに好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。可塑剤のセルロースエステルに対する添加量としては、0.5〜30質量%が好ましく、特に2〜15質量%が好ましい。
【0034】
また、本発明において、セルロースエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、特開平8−337574号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0035】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を好ましく使用出来る。
【0036】
具体的にベンゾフェノン系化合物を示すと、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0037】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0038】
本発明に係る紫外線吸収剤添加液の添加方法としては、アルコール、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してから直接ドープ組成中に添加する方法、アルコール、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の有機溶剤に紫外線吸収剤と少量のセルロースエステルを溶解してからインラインミキサーでドープに添加する方法を挙げることが出来、後者が好ましく用いられる。本発明において、紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対し0.5〜20質量%の範囲で添加することが出来、0.6〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0質量%である。
【0039】
更に、本発明のセルロースエステルフィルム中には、酸化防止剤を含有させることが好ましく、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0040】
また本発明において、セルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有するのが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜5.0μmの範囲であることが好ましい。セルロースエステルに対する二酸化ケイ素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物に起因した欠陥も少ない点が優れている。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としては日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL) 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル 200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えばアエロジル 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
【0041】
本発明に係わるドープを形成する工程について述べる。
フレーク状のセルロースエステルと、上記記載の良溶媒を主とする有機溶媒に耐圧溶解装置中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。
【0042】
本発明では、ドープ中の固形分濃度は18質量%以上として調製することが好ましく、特に平面性、膜厚の均一性等から、20〜35質量%が好ましい。ドープ中の固形分濃度が高すぎるとドープの粘度が高くなりすぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合がある。なお、本発明でいうドープ中の固形分とは、本発明のセルロースエステルフィルムを製造する際、乾燥工程で除かれる低沸点溶媒成分を除くドープ中の成分を言うので、ドープ中の固形分濃度とは、これら乾燥工程後もフィルム中に残存する成分のドープ溶液全体に対する質量%をさす。
【0043】
ドープ粘度は5〜100Pa・sの範囲にあることが好ましく、10〜50Pa・sの範囲に調製することが好ましい。
【0044】
溶解には、常圧で行う方法、上述のような好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)の沸点以下で行う方法、上述の良溶媒の沸点以上で加圧して行う高温溶解方法、その他、冷却溶解法、高圧溶解方法等種々の溶解方法等がある。高温溶解法では、有機溶媒の種類によるが、40.4(℃)以上(最高で120℃)で0.11〜1.50MPaに加圧して溶解し、発泡を抑え、且つ、短時間に行うことが出来る。
【0045】
冷却溶解方法としては、例えば特開平9−95538号、同9−95544号、同9−95557号に記載の方法を使用することが出来る。また、特開平11−21379号に記載の高圧溶解方法も好ましく使用出来る。
【0046】
マット剤は、ドープ中に直接混合してもよいが、そのままでは分散性がよくなく、前もって強力な分散機を使用してマット剤微粒子分散液としてから混合した方がよい。分散機は通常の分散機が使用出来るが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0047】
上述のようなドープを用いて溶液流延製膜方法により本発明のセルロースエステルフィルムを製造する方法について述べる。
【0048】
本発明の溶液流延製膜によるセルロースエステルフィルムの製造方法に用いる製膜装置は、流延工程、有機溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻き取り工程から主に構成されている。以下に各々の工程を図1を用いて説明する。
【0049】
図1は溶液流延製膜装置の概略図である。
図1において、ドープを定量ギヤポンプ(図示してない)を通してダイ2に送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属支持体1上にダイ2からドープを流延する流延後、金属支持体1の上のウェブ3は、高温乾燥ゾーン4と低温乾燥ゾーン5を有する有機溶媒蒸発工程で乾燥される。6は予備ゾーンで低温乾燥ゾーンであっても冷却ゾーンであってもよい。これら乾燥ゾーンは、乾燥条件を変更出来るように複数の乾燥加熱工程に分割可能であり、流延後、任意の時間でベルト上のドープ膜の乾燥条件(乾燥風の温度、金属支持体温度)を変更出来るようになっている。金属支持体1上で有機溶媒のほとんどを蒸発したウェブ3は、剥離工程の剥離ロール7を介して金属支持体1から剥離され、ロール乾燥装置8に導入され、ガイドロール9により搬送され、テンター乾燥装置10に導入される。図示していないが、ウェブの両端はクリップで把持されて搬送される。ウェブの把持を解除後、再びロール乾燥装置に導かれ乾燥が終了し、セルロースエステルフィルム11として巻き取り機12で巻き取られる。この図1は溶液流延製膜装置の一例を示した概略図で、本発明に係る溶液流延製膜装置はこれに限定されない。
【0050】
《流延工程》
ドープは、濾過され、加圧型定量ギヤポンプで送液され(マット剤を別に混合する場合、別に調製されたマット剤微粒子分散液をダイの直前で静止型管内混合機で混合されてからでもよい)、加圧型定量ギヤポンプを通して、加圧ダイに送液し、鏡面となっているステンレスベルト(金属支持体)上に加圧ダイから乾燥膜厚が10〜60μmになるように、流延する。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。また、加圧ダイが複数のスリットを有する共流延ダイを使用して、積層構造を有するセルロースエステルフィルムを製膜してもよい。
【0051】
《有機溶媒蒸発工程》
有機溶媒蒸発工程は、金属支持体上のウェブを加熱しウェブ中の含有有機溶媒を蒸発させる工程である。
【0052】
本発明において、金属支持体上の薄手のウェブを下記のごとく加熱乾燥ゾーンに分けて、初め高温乾燥ゾーンで、その後で低温乾燥ゾーンで加熱することにより、本発明の所望の透湿性、面配向度またはレターデーションを有するセルロースエステルフィルムを得ることが出来る。
【0053】
本発明において、上記加熱乾燥ゾーンの加熱温度とは、金属支持体上のウェブの表面に与える温度であり、ドープ中の主たる有機溶媒(セルロースエステルを溶解する良溶媒に相当する)の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンの乾燥温度Th(℃)は、BP<Th≦(BP+60℃)なる範囲の温度であり、また低温乾燥ゾーンの乾燥温度Tl(℃)は、10℃≦Tl≦BPであることが好ましい。そしてTh−Tl≧5℃であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。金属支持体上のウェブの表面に与える温度とは、該ウェブ表面直上の近傍の温度で、更に詳述するとウェブから1cmの高さの雰囲気での温度で、その温度を計測することによって知ることが出来る。
【0054】
上述の加熱乾燥方法は、本発明に係わる乾燥膜厚が10〜60μmになる薄手のウェブの乾燥に適しており、薄いことによって、乾燥中のウェブの厚さ方向の有機溶媒等の分布がかなり均一で上記のような優れた性質を得ることが出来る。
【0055】
本発明における加熱乾燥の加熱手段としては、所定の温度を有する風を表面に吹き付ける方法、赤外線または遠赤外線を照射する方法が好ましい。風速は、有機溶媒を含有している柔らかいウェブ表面に変形を与えない程度の風が好ましく、1〜50m/秒程度が好ましい。また加熱乾燥風をウェブに吹き付ける角度は平行風とならないようにすることが好ましい。金属支持体に接しているウェブの面は有機溶媒の蒸発潜熱を金属支持体からも奪うので、金属支持体が冷えて乾燥効率を落とさない程度に金属支持体裏面から加熱することが好ましい。裏面を加熱する方法として、加熱風を当てる方法、温水を接触させる方法(裏面液体伝熱法)、輻射熱を与える方法などがあるが、金属支持体上のウェブの温度を、ウェブ中の主たる有機溶媒の沸点(BP)以下に保つことが好ましい。金属支持体上のウェブの温度を該沸点(BP)より高く加熱すると激しく蒸発が起こることとなり、発泡を引き起こし好ましくない。一方、ウェブ自身は有機溶媒の蒸発潜熱により冷却されるため、金属支持体の裏面より主たる有機溶媒の沸点(BP)以上の温度で加熱しても、ウェブ自身及びウェブが接触する金属支持体の最表面の温度を有機溶媒の沸点(BP)以下に維持することが出来る。特に本発明の高温乾燥ゾーンでは、金属支持体の裏面より有機溶媒の沸点(BP)以上の温風で加熱することが好ましい。金属支持体の温度を沸点(BP)以下の温度に保持し、乾燥を促進し、剥離までの時間を低減するには、裏面液体伝熱法が好ましい。
【0056】
流延後のウェブは、ドープの残留溶媒量という表し方でいうと、固形分に対して400〜700質量%の有機溶媒を多量に含有している。この大容量の有機溶媒を積極的に蒸発させるのに、通常、厚手で柔らかいウェブの品質を考え、前半を穏やかな乾燥条件で行い、後半温度を上げる方法が採られていたが、本発明においては、薄手のウェブであり、乾燥効率が良いことから前半高温乾燥ゾーンで加熱乾燥を行い、逆に後半低温乾燥ゾーンで低温乾燥を行うことにより、面配向度が所望の値になり、更に透湿性が改良される。
【0057】
本発明における残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mは任意の時点で採取したウェブまたはフィルムの質量、Nはそのものを115℃で1時間加熱して有機溶媒を蒸発させたものの固形分の質量である。
【0058】
本発明において、金属支持体上のウェブが流延から30〜90秒で剥離することが好ましい。高温乾燥ゾーンは5〜45秒また低温乾燥ゾーンは15〜85秒程度が好ましい。金属支持体上でのウェブが高温乾燥ゾーンを過ぎるころ、残留溶媒量200質量%付近またはそれ以下になり、金属支持体上での乾燥を、主たる有機溶媒の沸点以下の雰囲気下で行う低温乾燥ゾーンで出来る限り時間を掛けて乾燥することが、透湿性を低減出来るため好ましく、また、面配向度及び漏光度も高くすることが出来る。
【0059】
以上のようにウェブを乾燥することによって、面配向度が0.0008〜0.0020となり、所望の面配向度を得ることが出来る。また、透湿性も向上し、偏光板や液晶表示装置に本発明の薄手のセルロースエステルフィルムを用いても高温高湿においても偏光板や液晶表示装置に使用した場合でも、耐久性に優れていることが認められた。
【0060】
《剥離工程》
金属支持体上からウェブを剥離する工程である。本発明においては、薄手のウェブを剥離するため、あまり残留溶媒量の大きい状態で剥離すると、ウェブが伸びたり、破れたりし易く、好ましくは30〜120質量%である。金属支持体上の剥離位置における温度は、10〜40℃程度が好ましく、更に好ましくは10〜30℃である。剥離時の張力(剥離張力)はツレや縦スジが発生しない程度にするのがよく、剥離張力と剥離残留溶媒量については、経済速度と品質との兼ね合いで決めるのがよい。本発明に係わる薄手ウェブの剥離張力は10〜190N/mが好ましく、10〜100N/mがより好ましい。
【0061】
《乾燥工程》
ウェブを一定間隔で上下に互い違いに配置したロールに交互に通して搬送するロール乾燥装置を用いて乾燥しながら搬送したり、クリップまたはピンでウェブの両端を把持して搬送するテンター乾燥装置を用いて巾保持、あるいは幅方向延伸しながら、ウェブを乾燥する工程で、これらの乾燥装置を組み合わせて用いてもよい。乾燥温度は80〜200℃で行われ、金属支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向ばかりでなく長手方向にも収縮しようとする。特に高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上では好ましい。
【0062】
収縮率を勘案しながらいくつかのブロックに分け、温度をその範囲で分けて乾燥するのが好ましい。乾燥方法は、乾燥風、加熱ロール、輻射熱、赤外線、マイクロ波または遠赤外線等で行うことが出来る。
【0063】
本発明においては、本発明の金属支持体上での乾燥方法を施した後、ウェブを剥離した後、残留溶媒量が10質量%以下になるまでの間に、テンター乾燥機を用いてウェブの両端をクリップで把持し幅保持するか、または若干幅方向に延伸する。その延伸倍率は、幅手方向に1.0(幅保持)〜1.5倍、より好ましくは1.01〜1.10倍である。位相差フィルムの場合には、1.2〜1.5倍の範囲で延伸することが好ましい。このような幅保持または延伸することによって、面配向度が0.0008〜0.0020及び/または漏光率が0.005%以下のセルロースエステルフィルムがより確実に得られるようになる。
【0064】
本発明に有用なテンター乾燥装置は、例えば、特開昭62−46625号に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップまたはピンでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる装置で、中でも、クリップ方式またはピン方式のものが好ましく、よりピン方式のものが好ましい。
【0065】
《巻き取り工程》
乾燥終了したセルロースエステルフィルムを巻き取る工程である。乾燥終了というのは、厳密には決めがたいが、おおむね残留溶媒量を2.0質量以下とすることにより巻き取ることが出来る。しかし、仕上がったセルロースエステルフィルムが後述のような液晶表示装置に組み込まれた時、伸縮しない程度まで乾燥させるのが望ましく、エネルギー、時間または品質のこれらの点からその程度を決めればよい。本発明においては、寸法変化があまり起こらない程度とし、残留溶媒量を0.5質量%以下にすることが好ましい。
【0066】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0067】
本発明の方法で形成した乾燥膜厚10〜60μmのセルロースエステルフィルムは、透湿度が20〜280g/m2・24時間であることが好ましく、20〜250g/m2・24時間がより好ましい。
【0068】
本発明における透湿度とは、JIS Z 0208に記載の方法で測定された値で定義する。透湿度が、280g/m2・24時間を超えると偏光板の耐久性が著しく低下し、逆に20g/m2・24時間未満では、偏光板製造時の接着剤に使われている水等の溶媒が乾燥しにくくなり、乾燥時間が長くなるため好ましくない。
【0069】
本発明において、面配向度の測定は、35mm四方にカットしたセルロースエステルフィルム試料を23℃、55%RH条件下に8時間放置した後、同条件下にて自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、波長λが590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率Nx、Ny、Nzを求め前記式により算出したものを用いる。
【0070】
本発明において、漏光率は、上記3次元屈折計で測定したNx及びNyと膜厚から求めた面内レターデーションR0及び遅相軸方向と製膜方向とのなす角度θから算出されたものを用いる。
【0071】
本発明のセルロースエステルフィルムは特に偏光板用保護フィルムとして有用であり、偏光子に貼り合わせた偏光板は、薄膜でありながら、耐久性に優れたものとなる。
【0072】
本発明のセルロースエステルフィルムには、必要に応じて防眩層、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層、バックコート層、易接着層等を設けることが出来る。
【0073】
また、本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、薄膜の偏光板用保護フィルムを用いても、面配向度が高いため、従来と同等の厚み方向へのレターデーションが得られるため、視野角等を低下させることなく使用することが出来る。
【0074】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0075】
[測定・評価方法]
〈面配向度の測定〉
自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長において、3次元屈折率測定を後述のセルロースエステルフィルムA〜Dについて行い、屈折率Nx、Ny、Nz、を測定し、前記面配向度Sを求める式に従って、面配向度Sを求めた。
【0076】
〈漏光率の評価〉
前記漏光率を求める式に従い、漏光度を求めた。なお、θはセルロースエステルフィルムの遅相軸角度(フィルム面内の遅相軸方向とフィルムの製膜方向とのなす狭い方の角度(−90°≦θ≦90°))で、上記面配向度の測定において実施した三次元屈折率測定の際に、フィルムの遅相軸方向と製膜方向とのなす角度として測定する。前記面内レターデーションR0を求める式に従い、R0求めた。
【0077】
〈透湿性の評価〉
JIS Z 0208に記載の方法により、測定し、面積1m2当たり24時間で蒸発する水分量(g)として算出し、下記のレベルで評価した。
【0078】
5:250g/m2・24時間未満
4:250g/m2・24時間以上、260g/m2・24時間未満
3:260g/m2・24時間以上、270g/m2・24時間未満
2:270g/m2・24〜280g/m2・24時間
1:280g/m2・24時間超。
【0079】
〈偏光度の測定〉
後述の偏光板A〜Dを各2枚用意し、温度90℃、80%RHの雰囲気下で5時間高温加湿処理を行った後、23℃、55%RHの雰囲気下で、それぞれの2枚の偏光板を偏光子の配向方向を同一にして重ねた場合の平行位透過率Tpと、また2枚の偏光板をそれぞれの偏光子に直交するように重ねた場合の直交位透過率Tcを測定し、下式により偏光度Pを算出し、下記ランクで評価した。
【0080】
【数1】
【0081】
5:96%以上
4:94%以上、96%未満
3:92%以上、94%未満
2:90%以上、92%未満
1:90%未満。
【0082】
〈視野角の評価〉
後述の液晶表示装置により、液晶パネルの白表示と黒表示のコントラストが10以上を示すパネル面に対する法線方向からの左または右の傾角の範囲を視野角(°)として測定し、下記のランクで評価した。
【0083】
3:50°以上
2:45°以上50°未満
1:45°未満。
【0084】
実施例1
〔ドープAの調製〕
〈マット剤微粒子分散液Aの調製〉
(酸化ケイ素分散液Aの調製)
アエロジルR972V(一次粒子の平均径16nm) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0085】
(添加液Aの調製)
セルローストリアセテート(アセチル置換度 2.65) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Aを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、マット剤微粒子分散液Aを調製した。
【0086】
《ドープAの調製》
〈ドープ原液Aの調製〉
メチレンクロライド(BP=40.4℃) 415kg
エタノール 24kg
トリアセチルセルロース(アセチル置換度2.65) 100kg
トリフェニルフォスフェート 8kg
エチルフタリルエチルグリコレート 4kg
チヌビン326 0.4kg
チヌビン109 0.9kg
チヌビン171 0.9kg
上記の有機溶媒を密閉容器に投入し、攪拌しながら残りの素材を投入し、加熱、撹拌しながら、加圧状態にして完全に溶解しドープ原液Aを調製した。
【0087】
流延温度まで、ドープ原液の温度を下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更に上記ドープ原液100kg当たりマット剤微粒子分散液を2kgの割合で添加し、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過し、ドープAを調製した。
【0088】
〔セルロースエステルフィルムAの製造〕
図1に示したような溶液流延製膜装置を用いセルロースエステルフィルムを製造した。ドープAを表1に示した温度で、ステンレスベルト上に加圧ダイから乾燥膜厚が40μmになるように均一に押出し流延した。高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンのステンレスベルト上のウェブに与える乾燥風温度、ステンレスベルト温度と加熱時間を表1に示した条件で加熱乾燥させた。その後、剥離付近のステンレスベルトの温度を10℃とし、表1に示した流延から剥離までの時間及び剥離時の残留溶媒量で剥離した。剥離したフィルムは90℃に維持されたテンター乾燥装置内でウェブの両端を把持しがら搬送し、幅手方向に1.05倍となるように延伸し、残留溶媒量10質量%にまで乾燥させた。ついで、115℃に維持されたロール乾燥装置内でロール搬送して残留溶媒量0.1質量%まで乾燥させて、乾燥膜厚40μmのセルロースエステルフィルムA−1〜A−5を作製した。
【0089】
【表1】
【0090】
〔偏光板Aの作製〕
セルロースエステルフィルムA−1〜A−5を用いて以下に述べる方法に従って、偏光板を作製した。
【0091】
〈偏光膜の作製〉
下記の方法に従って、本発明及び比較のセルロースエステルフィルムA−1〜A−5をそれぞれ偏光板用保護フィルムとして偏光板を作製した。厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。ついで、下記工程1〜5に従って、偏光膜とセルロースエステルフィルムA−1〜A−5それぞれとを貼り合わせて偏光板Aを作製した。
【0092】
〈偏光板Aの作製〉
工程1:本発明のセルロースエステルフィルムA−1〜A−5それぞれを、長手方向30cm、巾手方向18cmのサイズで2枚切り取り、2mol/lの水酸化ナトリウム溶液に50℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
【0093】
工程2:長手方向30cm、巾手方向18cmサイズの断裁した前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0094】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1で処理したセルロースエステルフィルムA−1〜A−5それぞれの上にのせて、更に同一のセルロースエステルフィルムA−1〜A−5それぞれを接着剤と接するように積層した。
【0095】
工程4:ハンドローラで工程3で積層した偏光膜とセルロースエステルフィルムA−1〜A−5それぞれとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除き貼り合わせた。ハンドロハンドローラの圧力は20〜30N/cm2、ローラスピードは約2m/分とした。
【0096】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した試料を2分間処理し、セルロースエステルフィルムA−1〜A−5それぞれを用いた偏光板A−1〜A−5を作製した。
【0097】
〔液晶表示装置Aの作製〕
偏光板A−1〜A−5を用いて次のように液晶表示装置を作製した。市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525M 型名 LA−1528HM)の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた偏光板A−1〜A−5の偏光板をそれぞれ貼り付け、液晶表示装置A−1〜A−5を作製した。
【0098】
実施例2
〔ドープBの作製〕
〈マット剤微粒子分散液Bの調製〉
(酸化ケイ素分散液Bの調製)
アエロジルR972V(一次粒子の平均径16nm) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0099】
(添加液Bの調製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度2.0、
プロピオニル基置換度0.8) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Bを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Bを調製した。
【0100】
《ドープBの調製》
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度2.0、
プロピオニル基置換度0.8) 100kg
メチレンクロライド 470kg
エタノール 38kg
トリフェニルフォスフェート 7kg
エチルフタリルエチルグリコレート 6kg
チヌビン326 0.5kg
チヌビン109 1.0kg
チヌビン171 1.0kg
上記組成を用い、実施例1のドープAの調製方法と同様にドープBを調製した。
【0101】
〔セルロースエステルフィルムBの製造〕
上記ドープBを用いた以外は実施例1のセルロースエステルフィルムAと同様に表1の条件でセルロースエステルフィルムB−1〜B−4を作製した。
【0102】
〔偏光板Bの作製〕
上記セルロースエステルフィルムB−1〜B−4を用いた以外は実施例1の偏光板Aと同様に偏光板B−1〜B−4を作製した。
【0103】
〔液晶表示装置Bの作製〕
上記偏光板B−1〜B−4を用いた以外は実施例1の液晶表示装置Aと同様に液晶表示装置B−1〜B−4を作製した。
【0104】
実施例3
〔ドープCの作製〕
〈マット剤微粒子分散液Cの調製〉
(酸化ケイ素分散液Cの調製)
アエロジルR972V(一次粒子の平均径16nm) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0105】
(添加液Cの調製)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.85) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Cを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Cを調製した。
【0106】
《ドープCの調製》
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.85) 100kg
メチレンクロライド 389kg
エタノール 22kg
トリフェニルフォスフェート 7kg
エチルフタリルエチルグリコレート 6kg
チヌビン326 0.5kg
チヌビン109 1.0kg
チヌビン171 1.0kg
上記組成を用い、実施例1のドープAの調製方法と同様にドープCを調製した。
【0107】
〔セルロースエステルフィルムCの製造〕
上記ドープCを用いた以外は実施例1のセルロースエステルフィルムAと同様に表1の条件でセルロースエステルフィルムC−1〜C−4を作製した。
【0108】
〔偏光板Cの作製〕
上記セルロースエステルフィルムC−1〜C−4を用いた以外は実施例1の偏光板Aと同様に偏光板C−1〜C−4を作製した。
【0109】
〔液晶表示装置Cの作製〕
上記偏光板C−1〜C−4を用いた以外は実施例1の液晶表示装置Aと同様に液晶表示装置C−1〜C−4を作製した。
【0110】
実施例4
〔ドープDの調製〕
〈マット剤微粒子分散液Dの調製〉
(酸化ケイ素分散液Dの調製)
アエロジルR972V(一次粒子の平均径16nm) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行った。
【0111】
(添加液Dの調製)
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度2.0、
プロピオニル基置換度0.8) 6kg
酢酸メチル 100kg
エタノール 40kg
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解、濾過した。これに10kgの上記酸化ケイ素分散液Dを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Dを調製した。
【0112】
《ドープDの調製》
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度2.0、
プロピオニル基置換度0.8) 100kg
酢酸メチル 222kg
エタノール 65kg
トリフェニルフォスフェート 8kg
エチルフタリルエチルグリコレート 5kg
チヌビン326 0.5kg
チヌビン109 1.0kg
チヌビン171 1.0kg
上記組成を用い、実施例1のドープAの調製方法と同様にドープDを調製した。
【0113】
〔セルロースエステルフィルムDの製造〕
上記ドープDを用いた以外は実施例1のセルロースエステルフィルムAと同様に表1の条件でセルロースエステルフィルムD−1〜D−5を作製した。
【0114】
〔偏光板Dの作製〕
上記セルロースエステルフィルムD−1〜D−5を用いた以外は実施例1の偏光板Aと同様に偏光板D−1〜D−5を作製した。
【0115】
〔液晶表示装置Dの作製〕
上記偏光板D−1〜D−5を用いた以外は実施例1の液晶表示装置Aと同様に液晶表示装置D−1〜D−5を作製した。
【0116】
以上実施例1〜4で作製したセルロースエステルフィルム、偏光板及び液晶表示装置についてそれぞれ下記の項目について評価した。
【0117】
セルロースエステルフィルムについては、面配向度、漏光度及び透湿性を、偏光板については、偏光度を、また、液晶表示装置については視野角を評価した。
【0118】
以上の評価の結果を下記表2に示した。
【0119】
【表2】
【0120】
表2からわかるように、本発明の製造方法で作製した薄膜のセルロースエステルフィルムは、面配向度が高く、しかも透湿性が小さいという性質を有すること、また漏光度についても小さいことも分かった。本発明のセルロースエステルフィルムで作製した偏光板は、高温高湿雰囲気においても偏光度の低下もなく、耐久性に優れた性質を有していた。更に、本発明の偏光板を使用した、液晶表示装置は目視でコントラスト評価の結果、視野角が良好であることも確認された。このように比較品に対していずれの項目についても優れていることが確認された。
【0121】
【発明の効果】
本発明のセルロースエステルフィルムは透湿性に優れ、これを用いた偏光板は高温高湿処理による偏光度の低下が少なく、また、高い面配向度を有するため薄膜でありながら、従来と同程度の膜厚方向のレターデーションを持たせることが出来る。本発明のセルロースエステルフィルム、偏光板を使用することにより、液晶セルの大幅な設計変更をしなくとも膜厚が厚いセルロースエステルフィルムを用いた従来品との置き換えが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶液流延製膜装置の概略図。
【符号の説明】
1 金属支持体
2 ダイ
3 ウェブ
4 高温乾燥ゾーン
5 低温乾燥ゾーン
7 剥離ロール
8 ロール乾燥装置
9 ガイドロール
10 テンター乾燥装置
11 セルロースエステルフィルム
Claims (7)
- 溶液流延製膜方法を用いて、ドープを金属支持体上に流延した後、金属支持体上のウェブを高温乾燥ゾーンで加熱後続いて低温乾燥ゾーンで加熱した後、剥離することにより乾燥膜厚が10〜60μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンの加熱温度をウェブの表面に与える温度としてそれぞれをTh(℃)及びTl(℃)とし、ドープ中の主たる有機溶媒の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンにおいては、BP<Th≦(BP+60℃)、及び低温乾燥ゾーンにおいては、10℃≦Tl≦BPとし、且つ高温乾燥ゾーンと低温乾燥ゾーンの加熱温度の差を5℃以上とし、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に該ウェブの両端をクリップで把持して幅保持による乾燥収縮抑制及び/または幅手方向に延伸を行い、下記式で表されるセルロースエステルフィルムの面配向度(S)を0.0008〜0.0020とすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
S={(Nx+Ny)/2}−Nz
ここで、式中、Nxはフィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率、NyはNxに対して面内で直角な方向の屈折率、Nzはフィルムの膜厚方向の屈折率を表す。 - 溶液流延製膜方法を用いて、ドープを金属支持体上に流延した後、金属支持体上のウェブを高温乾燥ゾーンで加熱後続いて低温乾燥ゾーンで加熱した後、剥離することにより乾燥膜厚が10〜60μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンの加熱温度をウェブの表面に与える温度としてそれぞれをTh(℃)及びTl(℃)とし、ドープ中の主たる有機溶媒の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンにおいては、BP<Th≦(BP+60℃)、及び低温乾燥ゾーンにおいては、10℃≦Tl≦BPとし、且つ高温乾燥ゾーンと低温乾燥ゾーンの加熱温度の差を5℃以上とし、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に該ウェブの両端をクリップで把持して幅保持による乾燥収縮抑制及び/または幅手方向に延伸を行い、以下に定義されるセルロースエステルフィルムの漏光率を0.005%以下とすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
漏光率(%)=sin2(2θ R )×sin2(πR 0 /λ)×100
ここで、
θ:遅相軸角度(単位、°)、遅相軸方向と製膜方向とのなす狭い方の角度
(°)で、θは−90°≦θ≦90°
θ R :遅相軸角(単位、ラジアン)、θ R =θ×(2π/360°)
R 0 :面内レタデーション値(nm)、R 0 =(Nx−Ny)×d
λ:Nx、Ny、Nzを求める際の光の波長(590nm)
π:円周率
Nx:フィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率
Ny:Nxに対して面内で直角な方向の屈折率
d:セルロースエステルフィルムの膜厚(nm)
である。 - 溶液流延製膜方法を用いて、ドープを金属支持体上に流延した後、金属支持体上のウェブを高温乾燥ゾーンで加熱後続いて低温乾燥ゾーンで加熱した後、剥離することにより乾燥膜厚が10〜60μmのセルロースエステルフィルムを製造する方法において、高温乾燥ゾーン及び低温乾燥ゾーンの加熱温度をウェブの表面に与える温度としてそれぞれをTh(℃)及びTl(℃)とし、ドープ中の主たる有機溶媒の沸点をBP(℃)とした時、高温乾燥ゾーンにおいては、BP<Th≦(BP+60℃)、及び低温乾燥ゾーンにおいては、10℃≦Tl≦BPとし、且つ高温乾燥ゾーンと低温乾燥ゾーンの加熱温度の差を5℃以上とし、剥離後、ウェブの残留溶媒量が10質量%になるまでの間に該ウェブの両端をクリップで把持して幅保持による乾燥収縮抑制及び/または幅手方向に延伸を行い、下記で定義されるセルロースエステルフィルムの漏光率を0.005%以下、且つ下記面配向度(S)を0.0008〜0.0020とすることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
漏光率(%)=sin2(2θ R )×sin2(πR 0 /λ)×100
ここで、
θ:遅相軸角度(単位、°)、遅相軸方向と製膜方向とのなす狭い方の角度
(°)で、θは−90°≦θ≦90°
θ R :遅相軸角(単位、ラジアン)、θ R =θ×(2π/360°)
R 0 :面内レタデーション値(nm)、R 0 =(Nx−Ny)×d
λ:Nx、Ny、Nzを求める際の光の波長(590nm)
π:円周率
Nx:フィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率
Ny:Nxに対して面内で直角な方向の屈折率
d:セルロースエステルフィルムの膜厚(nm)
S={(Nx+Ny)/2}−Nz
ここで、式中、Nxはフィルムの面内の最も屈折率が大きい方向の屈折率、NyはNxに対して面内で直角な方向の屈折率、Nzはフィルムの膜厚方向の屈折率を表す。 - 流延から剥離までの時間が30〜90秒であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 剥離後のウェブを幅手方向及び/または長手方向に延伸することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- ドープ中に炭素原子数2〜4のアシル基の平均置換度が2.50〜2.97のセルロースエステルを含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- ドープの固形分濃度が18〜35質量%であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
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