JP6606137B2 - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶液製膜方法に関する。
光学フィルムの製造方法として、溶液製膜方法がある。溶液製膜方法は、ポリマーが溶媒に溶解したドープを、走行する流延支持体に流延することにより流延膜を形成し、この流延膜を流延支持体から剥がしてフィルムを形成し、形成したフィルムを乾燥する方法である。流延膜は、剥ぎ取って形成したフィルムが搬送可能になるように、流延支持体上で固められる。流延膜を流延支持体上で固める手法として、流延膜に加熱した気体を吹き付けることにより乾燥する手法がある。
流延支持体は、環状に形成されており、少なくとも2つのローラに巻き掛けられた状態で長手方向に走行し、ドープの流延と流延膜の剥ぎ取りとが繰り返される。ドープの流延は、一方の第1ローラ上の流延支持体、または、第1ローラから他方の第2ローラへ向かう流延支持体になされる。形成された流延膜が通過する第2ローラは、流延膜の乾燥を促進するために周面を加熱することが多いが、第1ローラは、新たに形成される流延膜が発泡しないように、第2ローラよりも低い温度に周面が冷却される。また、第2ローラを積極的には加熱しない場合であっても、流延膜を乾燥するために吹き付けた気体により流延支持体が昇温し、この流延支持体に接触することにより第2ローラは温まるから、結果的に、冷却される第1ローラの周面の方が第2ローラの周面よりも低い温度になる。
ドープが流延される流延位置に向かう流延支持体をより確実に冷却するために、例えば特許文献1の方法は、流延支持体の流延膜が形成される流延面とは反対側の非流延面側に液体を供給し、この液体の気化による蒸発潜熱により、ドープが流延される流延位置へ向かう流延支持体を冷却している。
また、特許文献2の方法は、流延支持体と第1ローラ及び第2ローラとの各接点温度差を所定の条件にしている。この条件を満たすために、特許文献2は、流延支持体が走行する領域を4つのゾーンに分け、各ゾーンの温度を所定の温度に設定している。また、この特許文献2には、流延支持体の昇温速度と降温速度を考慮することが記載されている。
特開2012−071475号公報 特開2002−273747号公報
ところで、携帯端末の画像表示面に用いられているガラスは、例えば衝撃などによって割れやすい。そこで、ガラスの表面を覆う樹脂(ポリマー)製のフィルム、及び/またはガラスを樹脂(ポリマー)製のフィルムに置き換えることが望まれる。この点、特許文献1と特許文献2などの従来の溶液製膜方法により製造される光学フィルムは、偏光板の保護フィルムなどの用途には十分な平滑性をもつ。しかし、その平滑性は艶感のある上記ガラスには及ばず、例えば上記のような画像表示面のカバーフィルムとして用いるには平滑性においてさらなる向上が望まれる。
そこで、本発明は、平滑性がより向上した光学フィルムを製造する溶液製膜方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の溶液製膜方法は、流延膜形成工程と支持体冷却工程と剥取工程と乾燥工程とを有し、第1ローラと周面の温度が第1ローラよりも高い第2ローラとに巻き掛けられた状態で長手方向に連続走行する環状の流延支持体に、ドープを流延する。流延膜形成工程は、第1ローラ上の流延支持体または第1ローラから第2ローラへ向かう流延支持体に、ドープを流延することにより流延膜を形成する。支持体冷却工程は、第2ローラから第1ローラへ向かう流延支持体に、第1ローラの周面よりも高い温度の気体を送ることにより、第1ローラへ向かう流延支持体を5℃/分以下の冷却速度で冷却する。剥取工程は、流延膜を流延支持体から剥がすことによりフィルムを形成する。乾燥工程は、剥取工程により形成されたフィルムを乾燥する。流延支持体と第1ローラとの接触開始位置における流延支持体の温度をTSとし、ドープが流延される流延位置の流延支持体の温度をTCとするときに、|TS−TC|≦5℃とし、かつ、35℃≦TC≦38℃とする。
流延支持体の長さをLとするときに、支持体冷却工程を開始する冷却開始位置から流延支持体と第1ローラとの接触開始位置までの距離は、長くても(1/5)×Lであることが好ましい。
本発明によると、平滑性がより向上した光学フィルムを製造することができる。
溶液製膜設備の概略図である。 平滑性の評価方法の説明図である。
本発明を実施した図1に示す溶液製膜設備10は、光学フィルム(以下、単に「フィルム」と称する)11を製造するためのものである。このフィルム11は、携帯端末の画像表示面を構成するものであり、すなわち、画像表示部であるタッチパネルの最表面に配されるカバーフィルムとして用いられる。このフィルム11は、従来のガラスを置き換えて使用、すなわち代替品として使用することもできるし、ガラスの表面に貼り付けた状態で用いてもよい。製造されるフィルム11の厚みは10μm以上300μm以下の範囲内であり、100μm以上300μm以下の範囲内がより好ましく、150μm以上250μm以下の範囲内がさらに好ましい。本実施形態では200μmとしている。
溶液製膜設備10は、流延装置13と、テンタ14と、ローラ乾燥装置15と、スリッタ16と、巻取装置17とを、上流側から順に備える。なお、本明細書においては、溶媒含有率(単位;%)は乾量基準の値であり、具体的には、溶媒の質量をMS、溶媒含有率を求める対象のフィルム11または流延膜29の質量をMFとするときに、{MS/(MF−MS)}×100で求める百分率である。
流延装置13は、ドープ21からフィルム11を形成するためのものである。ドープ21は、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液である。ポリマーとして、本実施形態では、セルローストリアセテート(以下、TACと称する)を用いているが、TACと異なる他のセルロースアシレートを用いてもよい。セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基を有していても良い。アシル基が2種以上であるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
アシル基の全置換度A+Bは、2.20以上2.90以下であることがより好ましく、2.40以上2.88以下であることが特に好ましい。また、炭素原子数3〜22のアシル基の置換度Bは、0.30以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
また、ドープ21のポリマーはセルロースアシレートに限られない。例えば、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂(例えばJSR(株)製のアートン(登録商標))等でもよい。
ドープ21は、フィルム11になる固形分としてポリマー以外のものを含んでいてもよい。ポリマー以外の固形分としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、レタデーション制御剤、微粒子等があり、本実施形態では可塑剤を含ませている。微粒子は、フィルム11に滑り性及び/または耐傷性を付与したり、フィルム11を重ねた際の貼り付きを抑制するなどの目的で使用されるいわゆるマット剤である。
ドープ21における固形分の割合(以下、固形分含有率と称する)は、固形分の質量をMKとし、ドープ21の質量をMDとするときに、(MK/MD)×100で求める百分率で17%以上25%以下の範囲内とされ、本実施形態では19.5%としている。
ドープ21の溶媒としては、本実施形態においては、ジクロロメタンとメタノールとの混合物を用いている。溶媒は本実施形態の例に限られず、例えば、ブタノール、エタノール、プロパノール等が用いられ、これらは混合物として2種以上を併用してもよい。
流延装置13は、環状に形成された無端の流延支持体であるベルト23と、周方向に回転する第1ローラ26及び第2ローラ27とを備える。ベルト23は、第1ローラ26と第2ローラ27との周面に巻き掛けられる。第1ローラ26と第2ローラ27との少なくともいずれか一方が駆動手段を有する駆動ローラであればよく、本実施形態においては第1ローラ26と第2ローラ27との両方が駆動ローラとされている。駆動ローラが周方向に回転することにより、周面に接するベルト23が長手方向に連続走行し、循環する。ベルト23と第1ローラ26との接触が開始する位置を接触開始位置と称し、符号PSを付す。なお図1において符号Xを付している矢線は、ベルト23の走行方向ならびにフィルム11の搬送方向を示している。
ベルト23の上方には流延ダイ(以下、ダイと称する)28が備えられている。ダイ28は、供給されたドープ21を図1の紙面奥行方向に拡がった膜状に拡幅した後に、流出口(図示無し)から連続的に流出する。これにより、走行しているベルト23に、流延膜29が形成される。なお、ベルト23の走行路においてドープ21が流延される位置、すなわち、ドープ21がベルト23に接触を開始する位置を、以下、流延位置と称し、符号PCを付す。
本実施形態においては、ダイ28は、第1ローラ26上のベルト23の上方に設けており、流延位置PCは第1ローラ26上としている。しかし、ダイ28の位置はこれに限定されない。例えば、第1ローラ26から第2ローラ27へ向かうベルト23の上方に設け、これにより、ドープ21を第1ローラ26から第2ローラ27へ向かうベルト23に流延してもよい。この場合には、第1ローラ26から第2ローラ27へ向かうベルト23の下方にローラ31を配し、ローラ31により支持されているベルト23の上方にダイ28を配することが好ましい。
第1ローラ26と第2ローラ27とは、それぞれ周面の温度を制御する温度コントローラ32を備える。第1ローラ26の周面は温度が所定の範囲となるように冷却され、これにより、ベルト23は1周する毎に冷却される。これにより、流延膜29の発泡が抑えられる。第2ローラ27の周面は温度が所定の範囲となるように加熱され、これにより、流延膜29はより効果的に乾燥する。
第1ローラ26の周面温度は、0℃以上40℃以下の範囲にすることが好ましく、10℃以上30℃以下の範囲にすることがより好ましく、20℃以上25℃以下の範囲にすることがさらに好ましい。第2ローラ27の周面温度は、15℃以上80℃以下の範囲にすることが好ましく、20℃以上60℃以下の範囲にすることがより好ましく、25℃以上40℃以下の範囲にすることがさらに好ましい。ただし、第2ローラ27の周面温度は、第1ローラ26の周面温度よりも高くする。
ダイ28からベルト23に至るドープ21、いわゆるビードに関して、ベルト23の走行方向Xにおける上流には、減圧チャンバ(図示無し)を設けてもよい。減圧チャンバは、ビードの上流側エリアの雰囲気を吸引することによりこのエリアを減圧する。
流延膜29を、テンタ14への搬送が可能な程度にまで乾燥してから、溶媒を含む状態でベルト23から剥がし、これによりフィルム11を形成する。剥ぎ取りは、溶媒含有率が100%以下になってから行うことが好ましく、より好ましくは25%以上70%以下の範囲内で行うことがより好ましい。
剥ぎ取りの際には、フィルム11を剥ぎ取り部としてのローラ(以下、剥取ローラと称する)33で支持し、流延膜29がベルト23から剥がれる剥取位置PPを一定に保持する。剥取ローラ33は、駆動手段を備えて周方向に回転する駆動ローラであってもよい。なお、剥ぎ取りは、第1ローラ26上のベルト23で行っている。ベルト23は循環して剥取位置PPから流延位置PCに戻り、流延位置PCにおいて再び新たなドープ21が流延される。
流延装置13は、給気乾燥ユニット41とベルト冷却ユニット42とを備える。給気乾燥ユニット41は、流延膜29を、ベルト23から剥ぎ取った後の搬送ができる程度にまで乾燥させるためのものである。給気乾燥ユニット41は、ベルト23の走行方向Xにおけるダイ28よりも下流に設けられ、第1給気部45〜第3給気部47と第1排気部48,第2排気部49とを有する。これらは、ベルト23の流延膜29が形成される流延面側に配されており、ベルト23の走行方向Xに沿って、上流側から第1給気部45,第1排気部48,第2給気部46,第2排気部49,第3給気部47の順に並べられている。
この例では、第1給気部45は、第1ローラ26上のベルト23の走行路近傍に配され、第1排気部48と第2給気部46とは、第1ローラ26から第2ローラ27へ向かうベルト23の走行路近傍に配され、第2排気部49は、第2ローラ27に接触しているベルト23の走行路近傍に配され、第3給気部47は接触開始位置PS近傍のベルト23の走行路近傍に配されている。ただし、第1給気部45〜第3給気部47と第1排気部48,第2排気部49とが配される位置はこの例に限られず、流延位置PCから剥取位置PPに向かうベルト23の走行路近傍であればよい。また、給気部と排気部の数もこの例に限られず、ベルト23の長さなどに応じた数とすればよい。
第1給気部45〜第3給気部47は加熱された乾燥気体を流出し、第1排気部48と第2排気部49とは気体を吸引し、排気する。ここで、ベルト23、ダイ28、第1給気部45〜第3給気部47,第1排気部48,第2排気部49などは、外部空間と仕切るチャンバ51の内部に収容されており、第1排気部48と第2排気部49とは吸引した気体をこのチャンバ51の外部へ排気する。給気乾燥ユニット41は、チャンバ51の外部に、送風コントローラ52を備える。送風コントローラ52は、ファン(図示無し)と制御部(図示無し)とを備え、制御部がファンを介して第1給気部45〜第3給気部47のそれぞれに乾燥気体としての例えば空気を送り、その気体の温度と、湿度と、第1給気部45〜第3給気部47からの各流量と、第1排気部48と第2排気部49とのそれぞれの気体の吸引力とを独立して調節する。
本実施形態においては、第1給気部45〜第3給気部47からの乾燥気体は、送風コントローラ52により概ね90℃に加熱されてある。このように加熱された乾燥気体を温風として流延膜29上に流すことにより、流延膜29を加熱し、乾燥をすすめる。乾燥気体の温度は、40℃以上140℃以下の範囲内であることが好ましい。
第1給気部45と第2給気部46とは、乾燥気体を流出する流出口(図示無し)がベルト23の走行方向Xに向いた状態に配されており、これにより、搬送されている流延膜29に対し乾燥気体を追い風で供給する。この乾燥気体は流延膜29の膜面に対して並行な流れとなる。第3給気部47は、乾燥気体を流出する流出口(図示無し)がベルト23の走行方向Xとは反対側に向いた状態に配されており、これにより、搬送されている流延膜29に対し乾燥気体を向かい風で供給する。この乾燥気体も流延膜29の膜面に対して並行な流れとなる。第1排気部48と第2排気部49とは、気体を吸引する吸引口(図示無し)が、通過する流延膜29に向いた状態に配されている。第1排気部48は第1給気部45と第2給気部46との間で、第2排気部49は第2給気部46と第3給気部47との間で、それぞれ気体を吸引する。ただし、供給する乾燥気体の向きはこの例に限られず、流延膜29に対して垂直な向きであってもよい。なお、第1給気部45〜第3給気部47の流出口と、第1排気部48及び第2排気部49の吸引口とは、ベルト23の幅方向(図1の紙面奥行き方向)に延びたスリット状の開口としている。
本実施形態では、第1給気部45〜第3給気部47と、第1排気部48,第2排気部49とを送風コントローラ52によりそれぞれ独立して制御しているが、この態様に限られない。例えば、第1給気部45〜第3給気部47,第1排気部48,第2排気部49のそれぞれにコントローラ(図示無し)を設け、各コントローラにより第1給気部45〜第3給気部47と第1排気部48,第2排気部49とを制御してもよい。給気部と排気部との数を変えた場合も同様である。
流延膜29を乾燥する乾燥機器は、給気乾燥ユニット41に限定されず、流延膜を乾燥する公知の乾燥機器を使用してよい。例えば、流延膜29を覆うサイズの箱状に形成された給気ボックス(図示無し)と、この給気ボックスのベルト23との対向面に設けられた、乾燥気体を先端の開口から送出する複数の送出ノズル(図示無し)とを備える送風機(図示無し)であってもよい。
ベルト冷却ユニット42は、第2ローラ27から第1ローラ26へ向かうベルト23を冷却するためのものである。ベルト冷却ユニット42は、第2ローラ27から第1ローラ26へ向かうベルト23の流延面とは反対側の反流延面に対向して配される給気部56と排気部57とを備える。この例では、ベルト23の走行方向Xにおいて、給気部56を排気部57の下流側に配しているが、給気部56と排気部57との位置関係はこれと逆であってもよい。
給気部56は第1ローラ26の周面の温度よりも高い温度の気体(例えば空気)を流出し、排気部57は気体を吸引し、排気する。ベルト冷却ユニット42は、チャンバ51の外部に、コントローラ58を備え、コントローラ58は、給気部56に第1ローラ26の周面の温度よりも高い温度に調節した気体を送り、かつ、その気体の温度と排気部57の気体の吸引力とを独立して調節する。ベルト冷却ユニット42は、上記の気体により、第2ローラ27から第1ローラ26へ向かうベルト23を、5℃/分以下、すなわち0℃/分より大きく5℃以下の冷却速度で冷却する。冷却速度は、2℃/分以上6℃/分以下の範囲内であることが好ましく、2℃/分以上3℃/分以下の範囲内であることがより好ましい。冷却速度は、後述の温度TRから温度TSを減じた値を、後述の冷却開始位置PRから接触開始位置PSに至るまでのベルト23の走行時間で除することにより、求めることができる。
冷却速度は、給気部56からの気体の温度と、給気部56からの気体の流速と、排気部57による気体の吸引力とにより調節することができる。ただし、給気部56からの気体の温度は第1ローラ26の周面よりも高くするから、給気部56からの気体の温度による冷却速度の調節には制限がある。その場合には、給気部56からの気体の流速と、排気部57による気体の吸引力とにより冷却速度を調節する。例えば、冷却速度を高める場合には流速と吸引力とを上げ、冷却速度を低くする場合には流速と吸引力とを下げるとよい。
この例では、第1ローラ26の周面の温度は、第1ローラ26の周面に対向した状態に配した市販の非接触式の温度検出器(図示無し)により検出しており、この検出結果に基づき、コントローラ58は、気体の温度を調節する。
給気部56は、気体を流出する流出口(図示無し)がベルト23の走行方向Xと逆向きの状態に配されており、これにより、走行しているベルト23に対し気体を向かい風で供給する。この気体はベルト23の反流延面に対して並行な流れとなる。排気部57は、気体を吸引する吸引口(図示無し)が、ベルト23に向いた状態に配されている、排気部57はかならずしも設けなくてもよいが、排気部57が給気部56の上流側で気体を吸引することにより、給気部56からの気体は、より確実にベルト23の反流延面に沿って流れる。ただし、供給する気体の向きはこの例に限られず、ベルト23に対して垂直な向きであってもよい。なお、給気部56の流出口と、排気部57の吸引口とは、ベルト23の幅方向(図1の紙面奥行き方向)に延びたスリット状の開口としている。
本実施形態では、給気部56と排気部57とをコントローラ58によりそれぞれ独立して制御しているが、この態様に限られない。例えば、給気部56と排気部57とのそれぞれにコントローラ(図示無し)を設け、各コントローラにより給気部56と排気部57とを制御してもよい。
接触開始位置PSにおけるベルト23の温度をTSとし、流延位置PCにおけるベルト23の温度をTCとするときに、|TS−TC|≦5℃であることが好ましい。|TS−TC|≦4℃であることがさらに好ましい。前述の温度TRと温度TSと温度TCとは、ベルト23の流延面に対向した状態に配した市販の非接触式の温度検出器(図示無し)によりそれぞれ検出しており、この検出結果に基づき、温度コントローラ32は第1ローラ26の周面の温度を調節し、コントローラ58は給気部56の気体の温度と排気部57の気体の吸引力とを調節する。
第2ローラ27から第1ローラ26へ向かうベルト23は、排気部57と対向する位置から冷却を開始される。したがって排気部57と対向する位置がベルト23の冷却を開始する冷却開始位置PRであり、前述の温度TRはこの冷却開始位置PRにおけるベルト23の温度である。冷却開始位置PRから接触開始位置PSまでの距離LRは、ベルト23の長さをLとするときに、長くても(1/5)×L、すなわち0より長く(1/5)×L以下の範囲内であることが好ましく、(1/10)×L以上(1/5)×L以下の範囲内であることがより好ましい。
ベルト23からの剥ぎ取りにより形成されたフィルム11は、テンタ14に案内される。流延装置13とテンタ14との間の搬送路には、送風装置(図示無し)を配してもよい。この送風装置からの送風により、フィルム11の乾燥がすすめられる。
テンタ14は、フィルム11を搬送しながら乾燥をすすめる第1のフィルム乾燥装置である。本実施形態のテンタ14は、フィルム11の各側部を保持部材としてのクリップ14aにより保持し、フィルム11を長手方向に搬送しながら幅方向での張力を付与することにより、フィルム11を幅方向に延伸する延伸処理も行う。
テンタ14はダクト14bを有し、ダクト14bはフィルム11の搬送路の図1における上方に設けられる。ダクト14bは、乾燥気体(例えば乾燥した空気)を送り出すスリット(図示無し)を複数有し、乾燥気体は送風機(図示無し)から供給される。送風機は、所定の温度及び/または湿度に調整した乾燥気体をダクト14bに送る。スリットがフィルム11の搬送路と対向するようにダクト14bは配される。各スリットはフィルム11の幅方向に長く伸びた形状であり、複数のスリットは搬送方向Xにおいて互いに所定の間隔をもって形成されている。なお、同様の構造を有するダクトを、フィルム11の搬送路の図1における下方に設けてもよいし、フィルム11の搬送路の図1における上方と下方との両方に設けてもよい。
ローラ乾燥装置15は、フィルム11をさらに乾燥させるための第2の乾燥装置である。ローラ乾燥装置15の内部の雰囲気は、温度及び/または湿度などが空調機(図示無し)により調節されている。ローラ乾燥装置15では、多数のローラ15aにフィルム11が巻き掛けられて搬送される。
スリッタ16は、フィルム11の両側部を切除してフィルム11を目的とする幅にするためのものである。この切除では、クリップ14aによる保持跡を含むようにフィルム11の両側部を切除する。スリッタ16はテンタ14とローラ乾燥装置15との間に設けてもよい。巻取装置17は、フィルム11を巻き芯に巻いてロール状にする。
上記構成の作用を説明する。走行するベルト23へダイ28からドープ21が連続的に流出されることにより、ベルト23上に流延膜29が形成される(流延膜形成工程)。流延膜29は、走行するベルト23により搬送され、給気乾燥ユニット41へ案内される。第1給気部45〜第3給気部47からの給気により、流延膜29は乾燥をすすめられる。第1排気部48と第2排気部49とは、気体を吸引する吸引口が流延膜29に向いた状態に配されているから、第1給気部45〜第3給気部47から流出した乾燥気体は、より確実に流延膜29上を流れる。このため、流延膜29の乾燥はより効率的にすすむ。
ところでベルト23と第1ローラ26とは、精巧に製造しても、互いの接触における圧力(接触圧)にむら(以下、接触むらと称する)が生じ、接触むらはベルト23の温度むらの原因となり、ベルト23の温度むらは流延膜29の乾燥むらの原因となる。この接触むらによる乾燥むらは、偏光板の保護フィルムなどの光学フィルムとして用いる場合には問題にならないほどの小さなものであるが、これよりもさらに平滑性が求められる例えば前述のカバーフィルムなどにおいては問題であることがわかった。そして、この接触むらによる乾燥むらは、ベルト23を急速に冷却(以下、急冷と称する)した場合に特に顕著になることもわかった。また、ベルト23の冷却は、固体または液体による冷却、例えば第1ローラ26との接触による冷却または液体の供給による冷却よりも、気体による冷却の方が穏やかである。この点、ベルト冷却ユニット42は、第2ローラ27から第1ローラ26へ向かう流延支持体としてのベルト23を、気体により冷却し、しかも、その気体の温度は第1ローラ26よりも高い温度としている。そのため、ベルト冷却ユニット42は、5℃/分以下という遅い冷却速度でベルト23を冷却する(支持体冷却工程)から、ベルト23は、冷却された第1ローラ26に接触し始めても急冷されない。その結果、接触むらに起因する流延膜29の乾燥むらが抑えられ、得られるフィルム11の平滑性が向上する。また、ベルト冷却ユニット42は、反流延面側からのみにおいてベルト23を気体の流れで冷却している。このため、流延面側からの冷却に比べて、流延膜29の乾燥効率の低下を抑えられる。
|TS−TC|≦5℃であることにより、第1ローラ26によるベルト23の冷却速度も小さく抑えられるから、接触むらによる乾燥むらがより小さく抑えられる。冷却開始位置PRから接触開始位置PSまでの距離が長くても(1/5)×Lであるから、流延膜29の乾燥効率がより確実に保持される。
流延膜29をベルト23から剥ぎ取る(剥取工程)ことにより形成されるフィルム11は、テンタ14で搬送されながら、ダクト14bからの乾燥風により乾燥をすすめられ、この乾燥の間に、クリップ14aにより幅方向に延伸される。フィルム11は、ローラ乾燥装置15によりさらに乾燥される。このように、テンタ14とローラ乾燥装置15とによりフィルム11は乾燥する(乾燥工程)。スリッタ16で側部を除去された後に、巻取装置17によりロール状に巻かれる。
以下、実施例と比較例とを挙げる。詳細は実施例に記載し、比較例については実施例と異なる条件のみを記載する。
[実施例1]〜[実施例5]
溶液製膜設備10により、フィルム11を製造し、実施例1〜5とした。ドープ21の固形分を、ジクロロメタンとメタノールとの混合物に溶解してドープ21をつくった。ドープ21の固形分は以下である。条件は、表1に示す。
TAC 17.1質量部
第1可塑剤 1.7質量部
第2可塑剤 0.7質量部
得られた各フィルム11からシート状にサンプリングしたサンプルシート62(図2参照)につき、下記の方法及び基準により、平滑性としわとの評価を行い、製造中における流延膜29に発泡があったか否かを評価した。評価結果は表1に示す。
1.平滑性
図2を参照しながら平滑性の評価方法を説明する。まず、サンプル評価板として、平滑なガラス板61を準備した。このガラス板61の一面に前述のサンプルシート62を貼り付け、他面に黒色PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム63を貼り付けることにより、ガラス板61とサンプルシート62と黒色PETフィルム63とが積層した積層体64をつくった。貼り付けには、光学用透明粘着シート(図示無し)を用いた。蛍光灯67が設けられている平滑性評価系に、サンプルシート62が上向きになるように積層体64を置いた。この平滑性評価系には観察点PWが設定されており、この観察点PWから、サンプルシート62に映った蛍光灯67の像を観察する。蛍光灯67としては、管径32.5mmの40W直管型のものを用いた。
積層体64の置き場は水平とされており、これによりサンプルシート62の上面が水平とされている。また、一方向に延びた蛍光灯67の長手方向も水平に配されており、これにより蛍光灯67とサンプルシート62の上面とは互いに平行となっている。蛍光灯67と観察点PWとは同じ高さにされており、蛍光灯67からの光のサンプルシート62への入射角が60°となる状態に、かつ、反射角(つまり60°)での観察ができる状態に、積層体64の置き場は位置決めされており、観察点PWからはサンプルシート62の上面の中央62cに蛍光灯67の像が観察される。蛍光灯67とサンプルシート62の上面の中央62cとの距離、及び、観察点PWと前述の中央62cとの距離は、いずれも2mとしており、図2においては符号L1を付している。なお、図2においては、入射角と反射角とに符号θ1を付しており、蛍光灯67の光を照射した状態における蛍光灯67の像の外郭線Liを二点破線で描いている。この外郭線Liは、サンプルシート62の平滑性が極めて良い場合には直線として観察されるが、平滑性が悪いほど、振幅がより大きな波型の線として観察される。
蛍光灯67の光を照射した状態で、中央62cを回転中心として積層体64を回転させながら観察点PWでサンプルシート62に映った蛍光灯67の像を観察し、像の外郭線Liの振幅が最も大きい位置で積層体64の回転を止め、その姿勢を評価対象姿勢として特定した。外郭線Liの振幅のうち最も大きい値をV1とし、蛍光灯の幅(径)に対応する像の幅をV2とし、V1/V2の算出式で求められる値を下記の基準に基づき評価し、これを平滑性の評価とした。Aは合格であり、BとCとは不合格である。なお、外郭線Liに振幅がある場合には、一方の外郭線Liの振幅の中央から他方の外郭線Liの振幅の中央までの寸法をV2とした。
A:1/10未満であった
B:1/10以上1/5未満であった
C:1/5以上であった
2.発泡
流延膜29の乾燥条件によっては流延膜29の温度が上がりすぎることにより、発泡が発生する。発泡で生じている気泡が大きな場合にはテンタ14でのフィルム11の破断を引き起こし、流延を継続することが困難になる。また、流延膜29に生じた気泡が小さくてもその気泡がフィルム11に存在する場合は品質上の問題となる。そこで、流延膜29の発泡の評価を以下の基準で行った。Aは合格であり、Bは不合格である。
A:発泡が見られなかった。
B:発泡が見られた。
3.しわ
流延膜29の乾燥条件によっては剥取位置PPの溶媒含有率が高くなり、剥取ローラ33の上でフィルム11にしわが発生し、サンプルシート62上においてもしわが視認されることになる。そこでサンプルシート62を目視で観察し、下記の基準によりしわの評価を行った。Aは合格であり、Bは不合格である。
A:サンプルシートにしわが確認されなかった。
B:サンプルシートにしわが確認された。
しわの評価がBであった実施例4を実施した後に、ベルト23の走行速度をわずかに下げ(具体的には1分間あたりの走行距離を実施例4に対して10%下げ)、その他の条件は変えずに、すなわちその他の条件は実施例4と同じ条件で、再度フィルム11を製造した。そのようにして得られたフィルム11について、平滑性としわと発泡との評価を行ったところ、平滑性と発泡とは実施例4の場合と同じくAの評価結果が得られ、しわは実施例4の場合よりも向上し、Aの評価結果が得られた。
しわの評価がBであった実施例5を実施した後に、ベルト23の走行速度をわずかに下げ(具体的には1分間あたりの走行距離を実施例5に対して10%下げ)、その他の条件は変えずに、すなわちその他の条件は実施例5と同じ条件で、再度フィルム11を製造した。そのようにして得られたフィルム11について、平滑性としわと発泡との評価を行ったところ、平滑性と発泡とは実施例5の場合と同じくAの評価結果が得られ、しわは実施例5の場合よりも向上し、Aの評価結果が得られた。
[比較例1]〜[比較例6]
表1に示す条件により、フィルムを製造した。その他の条件は、実施例と同様である。
実施例と同様の方法及び基準で平滑性としわと発泡との評価を行った。評価結果は表1に示す。
Figure 0006606137
10 溶液製膜設備
11 フィルム
13 流延装置
14 テンタ
15 ローラ乾燥装置
16 スリッタ
17 巻取装置
21 ドープ
23 ベルト
26 第1ローラ
27 第2ローラ
28 ダイ
29 流延膜
31 ローラ
32 温度コントローラ
33 剥取ローラ
41 給気乾燥ユニット
42 ベルト冷却ユニット
45〜47 第1給気部〜第3給気部
48,49 第1排気部,第2排気部
51 チャンバ
52 送風コントローラ
56 給気部
57 排気部
58 コントローラ
61 ガラス板
62 サンプルシート
62c 中央
63 黒色PETフィルム
64 積層体
67 蛍光灯
Li 外郭線
L1 距離
PC 流延位置
PS 接触開始位置
PP 剥取位置
PR 冷却開始位置
PW 観察点
θ1 入射角,反射角

Claims (2)

  1. 第1ローラと周面の温度が前記第1ローラよりも高い第2ローラとに巻き掛けられた状態で長手方向に連続走行する環状の流延支持体に、ドープを流延する溶液製膜方法において、
    前記第1ローラ上の前記流延支持体または前記第1ローラから前記第2ローラへ向かう前記流延支持体に、前記ドープを流延することにより流延膜を形成する流延膜形成工程と、
    前記第2ローラから前記第1ローラへ向かう前記流延支持体に、前記第1ローラの周面よりも高い温度の気体を送ることにより、前記第1ローラへ向かう前記流延支持体を5℃/分以下の冷却速度で冷却する支持体冷却工程と、
    前記流延膜を前記流延支持体から剥がすことによりフィルムを形成する剥取工程と、
    前記剥取工程により形成されたフィルムを乾燥する乾燥工程と、
    を有し
    前記流延支持体と前記第1ローラとの接触開始位置における前記流延支持体の温度をTSとし、前記ドープが流延される流延位置の前記流延支持体の温度をTCとするときに、|TS−TC|≦5℃とし、かつ、35℃≦TC≦38℃である溶液製膜方法。
  2. 前記流延支持体の長さをLとするときに、
    前記支持体冷却工程を開始する冷却開始位置から、前記流延支持体と前記第1ローラとの接触開始位置までの距離は、長くても(1/5)×Lである請求項1に記載の溶液製膜方法。
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