JP4717247B2 - スパッタリング用ターゲット及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
この発明は、誘電率が大きくリーク電流の小さい酸化物薄膜を成膜するための(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)(0≦x≦1、0.5≦y≦1.2)の組成で表されるスパッタリング用ターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOSトランジスターのゲート絶縁膜にSiO2膜が使用されていたが、ゲート長の短小化に伴いゲート絶縁膜の薄膜化が必要となる。しかし、ゲート絶縁膜の厚さが4nm以下になると,物理的に避けることのできないトンネル電流が流れてしまい、トランジスターとして作動しなくなるという問題が生じる。
そこで,誘電率の高い材料をゲート絶縁膜に用いることでSiO2換算膜厚は薄くしつつも、物理的な膜厚を厚くする検討が現在行われており、ZrO2、HfO2膜あるいはSiO2を含有するZrO2、HfO2膜が注目されている。
これらの薄膜を成膜する方法として、金属Zr、HfあるいはZr、Hfケイ化物ターゲットを用いて反応スパッタリングする方法が行われている。
しかし、反応性スパッタリングの場合、ガス中に酸素を含むためゲート絶縁膜とSi基板の界面に誘電率の低いSiO2膜が形成してしまい、総合的な誘電率が低下してしまう問題が有るため、最近Zr、Hfのケイ酸化物ターゲットを用いてrfスパッタリングで成膜する方法が提案されている。
【0003】
一般的にスパッタリング用ターゲットに要求される特性として,成膜面上のパーティクル発生による歩留まり低下を防止するため、高密度のターゲットが要求される。また、ゲート絶縁膜の場合、Si基板の直上に成膜するため高純度なものが要求される。
しかし、Zr、Hfのケイ酸化物の場合、原料にZrO2、HfO2およびSiO2を用いた酸化物混合法ではZr、Hfのケイ酸化物単体を得ることが困難であり、ZrO2、HfO2およびSiO2の混合相で焼成を行うと、ZrO2、HfO2の大きな体積変化を伴う相変態のために多数のクラックが生じるという問題が有る。
また、市販のZrO2、HfO2粉末では、純度2N程度のものしかなく、ゲート絶縁膜用ターゲットに要求される純度を得ることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決するために、SiO2膜に替わる特性を備えた高誘電体ゲート絶縁膜として使用することが可能であり、(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)膜の形成に好適な、誘電率が大きくリーク電流の小さい酸化物薄膜を成膜するためのスパッタリング用(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)ターゲット及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出発原料として塩化ジルコニウム若しくは塩化ハフニウム又はオキシ塩化ジルコニウム若しくはオキシ塩化ハフニウム及びシリコン含有アルコキシドを用い、湿式法で合成した(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)組成粉末を、温度1200°C以上、圧力200kg/cm2以上で加圧焼成することにより、以下の特徴を有するターゲットを得ることができる。即ち、本発明は下記のターゲットを得る。
1.(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)(0<x<1,0.5≦y≦1.2)の組成で表されるスパッタリング用ターゲット。
2.相対密度が95%以上であることを特徴とする上記1記載のスパッタリング用ターゲット。
3.ターゲット中に含まれるNa,K,Ca,Fe,Ni,Co,Cr,Cu,Alの総量が100ppm以下、U,Thの各放射性元素が10ppb以下であることを特徴とする上記1又は2記載のスパッタリング用ターゲット。
【0006】
本発明は、SiO2膜に替わる特性を備えた高誘電体ゲート絶縁膜として使用することが可能であり、(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)膜の形成に好適な誘電率が大きくリーク電流の小さい酸化物薄膜を成膜するためのスパッタリング用(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)ターゲットを得ることができるという優れた効果を有する。また、得られた焼結体ターゲットは高密度かつ高純度であり、割れやクラックの発生が無いという著しい特長を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
出発原料として塩素化精製した純度3N好ましくは4N以上のオキシ塩化ジルコニウムあるいはオキシ塩化ハフニウムおよび純度5N以上のSi含有アルコキシドを用い、目標組成となるように各原料溶液を秤量・混合する。
この混合水溶液に当量以上の超純水を加え加水分解した後、濾過・乾燥する。得られた結晶性水和ケイ酸ジルコニウム若しくはハフニウム粉末を600°C以上の温度で大気合成することにより、(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)(0≦x≦1,0.5≦y≦1.2)組成で表すことができる(ZrX,Hf1-X)SiO4,ZrO2,HfO2,SiO2の混合粉末を得ることができる。
ここで、y<0.5の場合、焼成時に相変態による大きな体積変化を有するZrO2,HfO2の体積分率が多くなるため、焼結体にクラックが発生してしまう。
また、y>1.2の場合、フリーのSiO2が(ZrX,Hf1-X)SiO4粒子の焼結を阻害するため、相対密度95%以上の焼結体を得ることができない。
従って、上記化学式で表されるケイ酸化ジルコニウム若しくはハフニウムにおいて、Si含有量は0.5≦y≦1.2であることが好ましい。
【0008】
上記合成法で得られた(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)粉末をグラファイト製のダイスに充填し、温度1200°C以上,圧力200kg/cm2以上でホットプレスすることにより、相対密度95%以上のクラックや割れのない焼結体を得ることができる。
ホットプレス温度が1200°C以下では焼結が不十分で、要求される密度を得ることができない。
また、1600°C以上でホットプレスすると、(ZrX,Hf1-X)SiO4の分解およびSiO2の還元・蒸発が起こり焼結体に割れや気孔を残存させてしまう。
一方、ホットプレス圧力は大きいほど高密度化に寄与するが、ダイスの強度を考慮すると実質的には300kg/cm2以下が好ましく、200kg/cm2以下では十分な密度は得られない.
【実施例】
【0009】
次に、実施例について説明する。尚、本実施例は発明の一例を示すためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。即ち、本発明の技術思想に含まれる他の態様および変形を含むものである。
【0010】
(実施例1)
純度3N以上のオキシ塩化ジルコニウムZrOCl2水溶液および純度5N以上のテトラエトキシシランSi(OC2H5)4の各出発原料を(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)化学式で表される組成において、X=1,y=0.5,0.7,1.0,1.2となるように所定量混合し、更に、使用したZrOCl2の1.5倍当量の(NH4)OH水溶液およびテトラエトキシシランの3倍当量の超純水を加え、80°Cに加熱しながら100時間攪拌した後、冷却・濾過した。
得られた結晶性水和ケイ酸化ジルコニウム粉末を乾燥し、850°C×10h大気中にて合成熱処理を行い、X=1,y=0.5,0.7,1.0,1.2の各(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)粉末を得た。
この粉末を粉砕し、100meshの篩で分級した。得られた粉末の化学分析値は表1に示す様に、Na,K,Ca,Fe,Ni,Co,Cr,Cu,Alの総量が100ppm以下、U,Thの各放射性元素が10ppb以下を満足するものであった。
【0011】
【表1】
【0012】
また。各粉末のXRD測定を行った結果、y=0.5,0.7組成粉はZrSiO4とZrO2の2相混合相、y=1組成粉末はZrSiO4単相、y=1.2組成はZrSiO4とSiO2のアモルファス相になっていた。
これら粉末をグラファイト製ダイスに充填し、1200°C、1500°Cの各温度でArガス雰囲気、200kg/cm2×2hのホットプレス焼成した。得られた焼結体の密度、XRD測定による結晶相の結果を表2に示す。
焼結体の結晶相はy=0.5,0.7組成の場合は、ZrSiO4と単斜晶ZrO2の混相になっているが、上記表2に示すように、さらにZrSiO 4 相及びHfSiO 4 相を含み、y=1組成の場合は、ZrSiO4相であるが、上記表2に示すように、さらにHfSiO 4 相を含み、y=1.2組成の場合は、上記表2に示すように、ZrSiO4とSiO2(クリストバライト)の混相になっていた。
このXRD測定結果をもとに、各組成の密度を複合則から算出し焼結体の相対密度を求めた結果、いずれの焼結体も割れやクラックの発生は無く、相対密度95%以上となっており、スパッタリング用ターゲットとしての特性を満足しうるものであった。
【0013】
【表2】
【0014】
(実施例2)
出発原料として純度3N以上のオキシ塩化ハフニウムHfOCl2を用いX=0組成とし、得られた結晶性水和ケイ酸化ハフニウムの合成熱処理温度を900°Cとした以外は、実施例1と同条件にて粉末の作製、焼成を行った。
実施例1と同様に、粉末の化学分析値を表1に焼結体のXRD結果および相対密度を表2に示す。焼結体の結晶相は、実施例1と同様に、y=0.5,0.7組成の場合は、ZrSiO 4 と単斜晶ZrO 2 の混相になっているが、上記表2に示すように、さらにZrSiO 4 相及びHfSiO 4 相を含み、y=1組成の場合は、ZrSiO 4 相であるが、上記表2に示すように、さらにHfSiO 4 相を含み、y=1.2組成の場合は、上記表2に示すように、ZrSiO 4 とSiO 2 (クリストバライト)の混相になっていた。
得られた焼結体はいずれも割れやクラックの発生は無く、相対密度は95%以上であり、スパッタリング用ターゲットとしての特性を満足しうるものであった。
【0015】
(実施例3)
組成をx=0.5とした以外は実施例2と同条件にて粉末の作製および焼成を行った。粉末の化学分析値を実施例1と同様に、表1に焼結体のXRD結果および相対密度を表2に示す。
焼結体の結晶相は、実施例1と同様に、y=0.5,0.7組成の場合は、ZrSiO 4 と単斜晶ZrO 2 の混相になっているが、上記表2に示すように、さらにZrSiO 4 相及びHfSiO 4 相を含み、y=1組成の場合は、ZrSiO 4 相であるが、上記表2に示すように、さらにHfSiO 4 相を含み、y=1.2組成の場合は、上記表2に示すように、ZrSiO 4 とSiO 2 (クリストバライト)の混相になっていた。
得られた焼結体にはいずれも割れやクラックの発生は無く、相対密度は95%以上であり、
スパッタリング用ターゲットとしての特性を満足しうるものであった。
【0016】
(比較例1)
X=0.5,y=0.4および1.3とした以外は、実施例3と同条件にて粉末の作製および焼成を行った。得られた焼結体のXRD結果および相対密度、割れクラックの有無を上記と同様に表2に示す。
Y=0.4組成の焼結体は、1500°Cのホットプレスで相対密度が95%以上となったが焼結体に多数のクラックの発生が認められた。また,y=1.3組成の焼結体は、1500°Cのホットプレスでも相対密度が95%以下であった。
このように比較例1に示す焼結体はスパッタリング用ターゲットとしての特性を満足しうるものではなく、加工歩留まりや成膜中のパーティクル発生による歩留まり低下を引き起こす可能性がある。
【0017】
(比較例2)
X=0.5,y=1.0組成において、ホットプレス時の温度を1150°Cおよび1600°Cとした以外は実施例1と同条件で粉末の製造および焼成を行った。
得られた焼結体のXRD結果および相対密度、割れクラックの有無を上記と同様に表2に示す。1150°Cでホットプレスした焼結体の相対密度は93%であった。
また、1600°Cでホットプレスした焼結体の相対密度は92%で微細なクラックが多数存在しており、両焼結体ともスパッタリング用ターゲットとしての特性を満足しうるものではなく、加工歩留まりや成膜中のパーティクル発生による歩留まり低下を引き起こす可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、SiO2膜に替わる特性を備えた高誘電体ゲート絶縁膜として使用することが可能であり、(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)膜の形成に好適な誘電率が大きくリーク電流の小さい酸化物薄膜を成膜するためのスパッタリング用(Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)ターゲットを得ることができるという優れた効果を有する。
また、得られた焼結体ターゲットは高密度かつ高純度であり、割れやクラックの発生が無いという著しい特長を有する。
したがって、MOSトランジスターなどのゲート絶縁膜を形成するためのスパッタリングターゲットとして有用である。
Claims (6)
- (Zrx,Hf1-x)SiyO2(1+y)(0<x<1、0.5≦y≦1.2)の組成で表され、相対密度が95%以上であることを特徴とするスパッタリング用ターゲット。
- ターゲット中に含まれるNa,K,Ca,Fe,Ni,Co,Cr,Cu,Alの総量が100ppm以下、U,Thの各放射性元素が10ppb以下であることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング用ターゲット。
- ZrSiO4相及びHfSiO4相を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のスパッタリングターゲット用ターゲット。
- さらに、ZrO2相及びHfO2相又はクリストバライト(SiO2相)を含むことを特徴とする請求項3記載のスパッタリングターゲット用ターゲット。
- 出発原料として塩化ジルコニウム若しくは塩化ハフニウム又はオキシ塩化ジルコニウム若しくはオキシ塩化ハフニウム及びシリコン含有アルコキシドを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
- 塩化ジルコニウム若しくは塩化ハフニウム又はオキシ塩化ジルコニウム若しくはオキシ塩化ハフニウム及びシリコン含有アルコキシドの出発原料を用いて合成した粉末を温度1200°C〜1600°C、圧力200kg/cm2以上で加圧焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパッタリング用ターゲットの製造方法。
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