JP4707844B2 - 電鋳ニッケルベルト、被覆ニッケルベルト、及び被覆ニッケルベルトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電鋳(エレクトロフォーミング)により形成された耐熱性及び耐久性に優れた電鋳ニッケルベルトに関する。また、本発明は、該電鋳ニッケルベルトを無端状金属ベルト基材とし、その上に、所望により弾性層を介して、離型層が形成された層構成を有し、電子写真複写機などの定着ベルト等として好適な耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケルベルトとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式や静電記録方式の複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタなどの画像形成装置においては、一般に、▲1▼感光体表面を一様かつ均一に帯電する工程、▲2▼像露光を行って、感光体表面に静電潜像を形成する工程、▲3▼静電潜像にトナーを付着させて、トナー像を形成する工程、▲4▼感光体上のトナー像を転写紙やOHPシートなどの転写材上に転写する工程、▲5▼転写材上のトナー像を定着する工程を含む一連の工程によって、画像を形成している。トナーとしては、結着樹脂と着色剤とを含有する着色粒子が用いられている。トナー像の定着は、通常、転写材上のトナー像を加熱加圧して、トナーを溶融または軟化させて転写材上に固着させることにより行われている。
【0003】
このような画像形成装置において、装置の各部には、例えば、定着ローラ、加圧ローラ、搬送ローラ、帯電ローラ、転写ローラなどの各種ローラ部材が配置されており、各工程での機能を分担している。これらのローラ部材としては、一般に、アルミニウムなどの芯金上に、直接または弾性層を介して、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂からなる離型層が形成されたものが使用されている。
【0004】
近年、装置の小型化、省エネルギー化、印字・複写の高速化などの要求に応えるために、このようなローラ部材に代えて、無端状ベルト部材(エンドレスベルトまたはチューブともいう)を用いることが提案されている。従来の定着ローラでは、電源を投入した後、定着ローラ内に内蔵する加熱手段により、その表面を定着温度にまで加熱するのに比較的長時間を必要とするため、複写機などの画像形成装置の使用に待ち時間が生じるという問題があった。これに対して、無端状ベルト部材からなる定着ベルトでは、その内面に接触する加熱手段を配置することにより、薄い定着ベルトを介するだけで、転写材上のトナー像をほぼ直接的に加熱して定着させることができるため、電源投入後の待ち時間をなくすことができる。無端状金属ベルト基材を用いた定着ベルトでは、電磁誘導加熱方式を適用することもできる。
【0005】
このような定着ベルトは、一般に、ポリイミド樹脂や金属からなるベルト基材の上に、直接または弾性層を介して、離型層を形成した構造を有している。離型層は、多くの場合、フッ素樹脂などの耐熱性と離型性に優れた耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層である。耐熱性樹脂からなる離型層は、弾力性に乏しいため、ベルト基材と離型層との間に弾性層を配置して、定着性を向上させることが多い。ただし、離型層がフッ素ゴム層などの弾力性と離型性を兼ね備えたゴム層である場合には、中間の弾性層を省略することができる。転写ベルト、帯電ベルト、搬送ベルトなどでは、ベルト基材単独、もしくはベルト基材と離型層からなるベルト部材であってもよい。
【0006】
このような無端状ベルト部材の金属ベルト基材として、電鋳により形成された無端状ニッケルベルトを用いることが知られている。電鋳法では、導電性を有する母型(電型または鋳型ともいう)表面に、電気メッキまたは無電解メッキにより金属を析出させた後、この金属を母型から剥離して製品とする。母型の材質が金属の場合には、剥離のための表面処理を施し、非金属の場合には、メッキを行なうための導電性処理を施す。電鋳によれば、母型の形状を忠実かつ正確に複写することができ、精度の高い製品を得ることができる。
【0007】
無端状の電鋳ニッケルベルトは、例えば、ステンレス製の円筒状母型を陰極とし、その表面にニッケルメッキ浴を用いて電気メッキを施してニッケルメッキ膜を形成し、これを脱型することにより製造することができる。ところが、電鋳ニッケルベルトは、一般に、耐熱性が不充分である。そのため、電鋳ニッケルベルトの表面に、フッ素樹脂層などの離型層を形成する際の加熱処理(例えば、高温でのフッ素樹脂の焼成)によって、硬度及び強度が著しく低下する。また、電鋳ニッケルベルトは、高温条件下での使用により硬度及び強度が低下する。したがって、このような電鋳ニッケルベルトを基材とする無端状ベルト部材は、耐熱性及び耐久性に劣るという問題があった。
【0008】
特許第2706432号公報には、0.05〜0.6重量%(質量%)のマンガン(Mn)を含むニッケル・マンガン合金から形成されたマイクロビッカース硬度が450〜650の無端状電鋳シートを基材とする電子写真用定着ベルトが提案されている。しかし、単にマンガンを特定量で含有させた電鋳ニッケルベルトは、場所による硬度のバラツキが生じやすく、これを基材とする定着ベルトは、回転時に強度の弱い部分から破壊する現象が生じやすいという問題があった。
【0009】
また、該公報には、弾性層と離型層とを有する定着ベルトの製造方法として、電鋳ニッケルベルト基材の外周面にプライマーを塗布した後、シリコーンゴム層を設けて、200℃で120分間の熱処理を行い、次いで、該シリコーンゴム層の上にフッ素ゴムとフッ素樹脂との混合物層を設けて、280℃で30分間焼き付ける方法が開示されている。しかし、このような製造方法では、離型層の焼成温度がシリコーンゴムの耐熱温度を越えるため、焼成時の加熱処理により下層のシリコーンゴム層が劣化しやすい。したがって、無端状電鋳ニッケルベルト基材上に弾性層と離型層とをこの順に形成する製造方法では、無端状ニッケルベルト基材の耐熱性を向上させたとしても、弾性層が劣化しやすく、ベルト部材の耐久性に悪影響を及ぼす。しかも、この製造方法では、シリコーンゴム層を形成した後、その表面を研削して形状を整える必要がある。また、フッ素樹脂とフッ素ゴムとの混合物を形成した後にも、その表面を研磨して表面平滑性を高める必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、加熱処理や高温条件下での硬度及び強度の低下が極めて小さく、耐久性に優れた電鋳ニッケルベルトを提供することにある。本発明の他の目的は、該電鋳ニッケルベルトを基材とする耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケルベルト、及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、電鋳ニッケルベルトに、周期表の2族、3族、4族、及び5族に属する少なくとも一種の金属元素を質量分率で10〜10,000ppmの割合で含有させたところ、適度の硬度を有するとともに、耐熱老化性が顕著に改善され、耐久性に優れた電鋳ニッケルベルトの得られることを見出した。
【0012】
この電鋳ニッケルベルトを無端状金属ベルト基材として用いることにより、耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケルベルトを得ることができる。また、電鋳ニッケルベルトを無端状金属ベルト基材として使用し、離型層を先に形成した後、弾性層を形成する方法を採用することにより、弾性層の熱劣化のない被覆ニッケルベルトを製造することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、金属元素を質量分率で10〜10000ppmの割合で含有する電鋳ニッケルベルトであって、
該金属元素が、タリウムまたは鉛であることを特徴とする電鋳ニッケルベルトが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトにおいて、電鋳ニッケルベルト基材(A)が前記の電鋳ニッケルベルトであることを特徴とする被覆ニッケルベルトが提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトの製造方法において、
〔I〕電鋳ニッケルベルト基材(A)として、前記の電鋳ニッケルベルトを使用し、かつ、
〔II〕下記の工程:
(1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、
(2)所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有するゴム組成物を塗布し加硫して、弾性層(B2)を形成する工程、
(3)円筒状金型の中空内に電鋳ニッケルベルト基材(A)を挿入する工程、及び
(4)電鋳ニッケルベルト基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の内面との間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、弾性層(B1)を形成する工程
により各層を形成することを特徴とする被覆ニッケルベルトの製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
1.電鋳ニッケルベルト
本発明の電鋳ニッケルベルトは、母型表面にニッケルメッキ浴を用いて電気メッキを行う電鋳法により形成されたニッケルベルトであり、一般に、無端状ベルトとして得られるものである。本発明の電鋳ニッケルベルトは、周期表の2族乃至5族に属する少なくとも一種の金属元素を質量分率で10〜10,000ppmの割合で含有するものである。
【0017】
周期表の2族乃至5族の金属元素としては、2A族乃至5A族及び2B族乃至5B族の金属であればよいが、好ましい金属元素としては、例えば、カルシウム(2A族)、亜鉛(2B族)、アルミニウム(3B族)、タリウム(3B族)、ケイ素(4B族)、スズ(4B族)、鉛(4b族)、アンチモン(5B族)、ビスマス(5B族)が挙げられる。
【0018】
これらの金属元素は、それぞれ金属として、あるいは金属化合物として、ニッケルメッキ浴中に添加して用いられる。金属化合物としては、塩化物、硫酸塩、ホウフッ化塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、フェノールスルホン酸塩など任意である。これらの金属元素の微量の使用量を正確に決定するには、和光純薬(株)などから原子吸光分析用などとして市販されている金属標準液をそのままで、あるいは適宜希釈して用いるか、当該金属標準液を分析用標準試薬として使用し、滴定により濃度決定した二次金属標準液やその希釈液などを用いることができる。例えば、鉛標準液としては、硝酸鉛水溶液が、また、タリウム標準液としては、硝酸タリウム水溶液が、それぞれ市販されている。ニッケルメッキ浴に金属標準液を添加する場合、硝酸鉛や硝酸タリウムなどの硝酸塩、硫酸鉛や硫酸タリウムなどの流酸塩、酢酸鉛や酢酸タリウムなどの酢酸塩などの金属化合物として添加することが好ましい。
【0019】
ニッケルメッキ浴中に周期表の2族乃至5族の金属元素を存在させて電鋳を行うと、これらの金属元素がニッケルメッキ結晶の成長を調整して、結晶を整然と成長させ、配向を促進する働きがあるものと推定される。電鋳ニッケルベルト中に、これらの金属元素を10ppm以上の質量分率で含有させることにより、熱老化に対して強靭な結晶が形成される。すなわち、これらの金属元素は、ニッケルメッキ結晶の熱による粗大化を抑制する効果があり、それによって、熱老化によっても硬度が低下しにくく、耐熱性に優れた電鋳ニッケルベルトが得られるものと推定される。
【0020】
周期表の2族乃至5族の金属元素の質量分率は、10〜10,000ppmであることが必要である。この質量分率が小さすぎると、熱老化による電鋳ニッケルベルトの硬度の低下を充分に抑制することができない。一方、この質量分率が10,000ppm(1質量%)を超えて大きくなると、これらの金属元素が結晶粒界に析出して、電鋳ニッケルベルトが脆くなりやすい。
【0021】
周期表の2族乃至5族の金属元素の前記の如き作用効果は、独特のものであって、他の金属元素を含有させた場合には、硬度を高くすることはできるものの,脆くなりやすく、また、結晶の成長を調整する作用が少ないため、充分に耐熱性に優れた電鋳ニッケルベルトを得ることが困難である。ただし、その他の金属元素であっても、例えばマンガンの如き一部の金属元素は、硫黄の結晶粒界への析出を抑えて、熱老化を抑制する作用を示す場合があるので、一定量を含有させることができる。
【0022】
電鋳ニッケルベルト中の周期表の2族乃至5族の金属元素の質量分率は、10〜10,000ppmであるが、好ましくは20〜1,000ppm、より好ましくは30〜500ppmとすることにより、厳しい条件下での熱老化によっても硬度の変化が殆んどない電鋳ニッケルベルトを得ることができ、また、該電鋳ニッケルベルトを基材とすることにより、耐久性が顕著に優れた被覆ニッケルベを得ることができる。
【0023】
周期表の2族乃至5族の金属元素として、タリウム(Tl)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、及びスズ(Sn)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素を含有させると、耐熱老化性が顕著に優れた電鋳ニッケルベルト、及び耐久性が顕著に優れた被覆ニッケルベルトを得ることができる。これらの金属元素の中でも、特に、鉛、タリウムまたはビスマスを含有させると、ニッケルの結晶が(200)面に強く配向するようになり、曲げに対して強靭な組織の電鋳ニッケルベルトを得ることができる。これらの金属元素に比べて、(200)面への配向の程度がやや低いものの、スズも同様の効果を示す。
【0024】
また、鉛、タリウムまたはビスマスを含有させると、ニッケル結晶の転移温度が上昇する。結晶転移温度は、ニッケルの結晶が粗大化して、軟化を開始する温度であり、この結晶転移温度が高いほど熱老化時の硬度低下が少ない電鋳ニッケルベルトを得ることができる。
【0025】
さらに、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、及びアンチモン(Sb)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素も、それを電鋳ニッケルベルト中に含有させることによって、良好な結果が得られるので好ましい。これらの金属元素は、それぞれ単独で用いた場合に良好な結果を得ることができるが、所望により、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
電鋳ニッケルベルトには、通常、ニッケルメッキ浴の使用成分などに起因する硫黄やコバルト、炭素などの不純物が含有されていることが多い。硫黄やコバルトなどの不純物が多量に存在すると、メッキ時にニッケルの結晶が層状に整然と成長しにくくなる。これらの不純物の含有量を調整することにより、電鋳ニッケルベルトの特性をさらに改善することができる。
【0027】
電鋳ニッケルベルトの硫黄含有量は、0.10質量%未満に調整することが好ましい。硫黄含有量は、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以下、特に好ましくは0.02質量%以下である。硫黄含有量が多すぎると、連続的な加熱条件下で硫黄がニッケルの結晶粒界に析出して、硬度及び強度の低下を引き起こす。硫黄含有量の下限は、ゼロ質量%(0.00質量%)であるが、ニッケルメッキ浴の成分として硫黄含有化合物(例えば、第一種光沢剤)などを用いると、できるだけ低減した場合でも、0.01〜0.02質量%程度になることが多い。硫黄含有量は、光沢剤などの硫黄含有化合物の使用量を少なくすることにより低減することができる。
【0028】
電鋳ニッケルベルトのコバルト(Co)含有量は、好ましくは1.00質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下である。コバルト含有量が多くなるほど、電鋳ニッケルベルト及び被覆ニッケルベルトの耐久性が低下傾向を示す。コバルト含有量の下限は、好ましくはゼロ質量%(0.00質量%)であるが、多くの場合、0.10質量%程度になる。
【0029】
電鋳ニッケルベルトの炭素含有量は、好ましくは0.01〜0.10質量%、より好ましくは0.01〜0.05質量%である。炭素含有量を上記範囲内に制御することにより、無端状金属ベルト基材として要求される水準の硬度を維持しながら、熱老化によって硬度及び強度が低下しない電鋳ニッケルベルトが得られやすくなる。炭素含有量が多すぎると、炭素がニッケルの結晶粒界に析出し、強度低下の原因となりやすい。炭素含有量が少なすぎると、耐熱性が低下することがあり、連続的な加熱条件下で硬度と強度が低下する傾向を示す。
【0030】
その他の不純物の含有量は、通常0.01質量%以下である。このように、本発明では、ニッケル以外の不純物の含有量をできるだけ小さくすることが望ましい。しかし、不純物の含有量が少なくなりすぎると、電鋳ニッケルベルトの硬度が低下傾向を示しやすい。電鋳ニッケルベルトの硬度が低すぎると、柔らかくなりすぎて、破断が生じやすくなる。一方、不純物の含有量が多すぎると、電鋳ニッケルベルトの硬度が高くなりすぎて、脆くなり、屈曲に対する耐久性が不足する。そのため、前記の如き不純物の含有量を制御して、電鋳ニッケルベルトの硬度を好ましい範囲に調整することが望ましい。
【0031】
本発明の電鋳ニッケルベルトには、一定量のマンガン(Mn)を含有させることができる。電鋳ニッケルベルト中のマンガン含有量は、0.50質量%以下とすることが好ましい。マンガン含有量は、ゼロ質量%(0.00質量%)でもよいが、硬度を調整するためにマンガンを含有させる場合には、硬度と耐熱老化性とのバランスの観点から、好ましくは0.01〜0.50質量%、より好ましくは0.01〜0.10質量%、特に好ましくは0.02〜0.05質量%の範囲内に調整することが望ましい。電鋳ニッケルベルトに少量のマンガンを含有させると、マンガンが硫黄を固溶して結晶粒内に留めて結晶粒界への析出を防止し、それによって、熱老化による脆化が抑制されると推定される。マンガン含有量が多すぎると、電鋳ニッケルベルトが熱老化時に硬く脆くなり、また、場所による硬度のバラツキが生じやすくなる。
【0032】
本発明の電鋳ニッケルベルトの結晶転移温度は、340℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。結晶転移温度は、示差熱分析計(DSC)で測定される吸熱ピーク温度である。結晶転移温度では、ニッケルメッキの結晶が粗大化して、電鋳ニッケルベルトが軟化し、硬度が低下する。高温条件下で電鋳ニッケルベルトの硬度変化が大きくなると、耐熱老化性及び耐久性が損われる。周期表の2族乃至5族の金属元素を含有していない電鋳ニッケルベルトの結晶転移温度は、300℃程度である。これに対して、周期表の2族乃至5族の金属元素を前記範囲内で含有させると、電鋳ニッケルベルトの結晶転移温度を好ましくは340℃以上、より好ましくは350℃以上、特に好ましくは370℃以上に高めることができる。電鋳ニッケルベルトの結晶転移温度の上限は、特に制限されず、高ければ高いほど好ましい。多くの場合、結晶転移温度が450℃または500℃程度まででも、従来品に比べて優れた結果を得ることができる。
【0033】
本発明の電鋳ニッケルベルトは、X線回折により測定した(111)面でのピーク強度に対する(200)面でのピーク強度の比で表される結晶配向面の強度比が式(1)
I(200)/I(111)≧0.6 …(1)
I(200):X線回折における(200)面でのピーク強度
I(111):X線回折における(111)面でのピーク強度
で示される関係を満足するものであることが好ましい。
【0034】
電鋳ニッケルベルトの結晶配向面の強度比は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは3.0以上である。この強度比の上限は、特に制限されず、大きければ大きいほど好ましく、100またはそれ以上でもよい。多くの場合、結晶配向面の強度比が15または20程度まででも、従来品に比べて優れた結果を得ることができる。
【0035】
電鋳ニッケルベルトの結晶配向面の強度比が小さすぎると、耐熱性が低下したり、耐久性が不充分となる。電鋳ニッケルベルトについて、X線回折により結晶構造を解析すると、(111)面でのピーク強度が大きくなるほど、結晶構造がランダムとなる。一方、(200)面でのピーク強度が大きくなるほど、層状配向を示す傾向が強くなる。ニッケルの結晶構造が層状配向を示すほど、電鋳ニッケルベルトの耐屈曲性が向上し、耐熱性も良好となり、それによって、高度の耐久性を達成することができるものと推定される。
【0036】
結晶配向面の強度比を大きくするには、2族乃至5族の金属元素を前記範囲内で含有させ、さらには、それらの金属元素の中から、タリウム、鉛、ビスマス、及びスズなどを選択することが望ましい。また、電鋳ニッケルベルト中の不純物量を低減させるとともに、電鋳時の電流密度を小さくするなどして、緩やかにニッケルの結晶を成長させる方法が、強度比を向上させる上で好ましい。緩やかにニッケルの結晶が成長すると、整然と結晶が層状に配向して成長し、X線回折により測定した(200)面でのピーク強度が大きくなるものと考えることができる。
【0037】
本発明の電鋳ニッケルベルトのビッカース硬度(VH)は、好ましくは300〜480、より好ましくは350〜450である。このビッカース硬度が低すぎると、金属ベルト基材としての必要な強度を得ることが難しくなる。ビッカース硬度は、高くてもよいが、あまり高すぎると、耐熱性及び耐久性が低下することがある。
【0038】
本発明の電鋳ニッケルベルトは、230℃で2日間の熱老化試験後のビッカース硬度(VH)の初期値に対する変化率(絶対値)で10%以下であることが好ましい。本発明の電鋳ニッケルベルトは、耐熱老化性に優れており、230℃の雰囲気中で2日間保持する熱老化試験後のビッカース硬度の初期値に対する変化率は、より好ましくは6%以下である。この変化率は、ゼロ%であることが特に好ましい。この変化率が大きすぎると、連続的な加熱条件下で、硬度及び強度が著しく低下する。
【0039】
また、本発明の350℃で2時間の熱老化試験後のビッカース硬度(VH)の初期値に対する変化率(絶対値)で20%以下であることが好ましい。この変化率は、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。これに対して、2族乃至5族の金属元素を含有しない電鋳ニッケルベルトでは、230℃で2日間の熱老化試験で、ビッカース硬度が初期値の半分程度にまで減少(変化率=約50%)し、350℃で2時間の熱老化試験では、1/3程度にまで減少(変化率=約70%)する。従って、本発明の電鋳ニッケルベルトは、極めて顕著な耐熱老化性を示すものである。
【0040】
本発明の電鋳ニッケルベルトは、硫酸ニッケルや塩化ニッケルを主成分とするワット浴やスルファミン酸ニッケルを主成分とするスルファミン酸浴などのニッケルメッキ浴を用いて、電鋳により形成される。電鋳は、母型の表面に厚メッキを行ない、これを母型から剥離して製品を得る方法である。電鋳ニッケルベルトを得るには、ステンレス、黄銅、アルミニウムなどからなる円筒を母型とし、その表面にニッケルメッキ浴を用いてニッケルメッキ膜を形成する。母型がシリコン樹脂や石膏などの不導体である場合には、黒鉛、銅粉、銀鏡、スパッタリングなどにより、導電性処理を行なう。金属母型への電鋳では、ニッケルメッキ膜の剥離を容易にするために、母型の表面に酸化膜、化合物膜、黒鉛粉塗布膜などの剥離膜を形成するなどの剥離処理を行なうことが好ましい。
【0041】
ニッケルメッキ浴は、一般に、ニッケルイオン源、アノード溶解剤、pH緩衝剤、その他の添加剤からなる。ニッケルイオン源としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケルなどが挙げられる。アノード溶解剤は、ワット浴の場合には、塩化ニッケルがこの役割を果たしており、この他のニッケル浴の場合には、塩化アンモニウム、臭化ニッケルなどが用いられる。ニッケルメッキは、一般に、pH3.0〜6.2の範囲で行なわれるが、この間の望ましい範囲に調整するために、ホウ酸、ギ酸、酢酸ニッケルなどのpH緩衝剤が用いられる。その他の添加剤としては、平滑化、ピット防止、結晶微細化、残留応力の低減などを目的として、例えば、光沢剤、ピット防止剤、内部応力減少剤などが用いられる。
【0042】
本発明では、電鋳ニッケルベルト中の2族乃至5族の金属元素の含有量、硫黄含有量、マンガン含有量、炭素含有量、ビッカース硬度などを所望の範囲内に制御するために、ニッケルメッキ浴で使用する各成分の種類や添加量を調整する。例えば、2族乃至5族の金属元素を含有させるには、ニッケルメッキ浴にこれらの金属または金属化合物の必要量を添加する。マンガンを含有させる場合には、硫酸マンガンやスルファミン酸マンガンなどのマンガン化合物として必要量を添加する。硫黄含有量を所望の範囲に制御するには、ニッケルイオン源や光沢剤などとして、硫黄原子を含有しないか、硫黄原子の含有量が少ない化合物を使用したり、あるいは硫黄含有化合物の使用量を少なくする。
【0043】
炭素含有量を所望の範囲に制御するには、光沢剤の種類や添加量を調整する方法が好ましい。光沢剤は、一般に、第一種光沢剤と第二種光沢剤とに分類され、高光沢を得るために両者が併用されることが多い。これらのうち、第一種光沢剤は、=C−SO2−の構造を持つ有機化合物であり、例えば、スルホン酸塩(例えば、1,3,6−トリナフタリンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸塩)、スルホンイミド(例えば、サッカリン)、スルホンアミド、スルフィン酸などが用いられる。これらの中でも、芳香族スルホン酸塩が好ましい。
【0044】
第二種光沢剤としては、C=O、C=C、C≡N、C=N、C≡C、N−C=S、N=N、−CH2−CH−O−等の構造を持つ有機化合物が挙げられる。これらの中でも、1,4−ブチンジオールなどのアルキンジオールやクマリンなどが代表的なものである。本発明において、電鋳ニッケルベルトの炭素含有量を所望の範囲に制御するには、例えば、ニッケルメッキ浴へアルキンジオールを添加して、炭素を共析させる方法が好ましい。炭素含有量は、アルキンジオールの添加量を調整することにより制御することができる。より具体的に、第一種光沢剤として、例えば芳香族スルホン酸塩を使用し、第二種光沢剤として、例えば1,4−ブチンジオールの如きアルキンジオールを用いて、その際、アルキンジオールの添加量を20〜100ppmの範囲に調整する方法が挙げられる。
【0045】
ニッケルメッキ浴の組成としては、例えば、硫酸ニッケル200〜350g/L、塩化ニッケル20〜50g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の界面活性剤、適量の光沢剤などを含有するワット浴を挙げることができる。スルファミン酸浴の組成としては、スルファミン酸ニッケル200〜450g/L、塩化ニッケル0〜30g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の界面活性剤、適量の光沢剤などを含有するものを挙げることができる。
【0046】
周期表の2族乃至5族の金属元素を含有させる場合には、これらの金属または金属化合物を調整された量でメッキ浴に添加する。マンガンを含有させる場合には、メッキ浴中に、硫酸マンガンやスルファミン酸マンガンを、好ましくは150g/L以下、より好ましくは100g/L以下の範囲で添加することが好ましい。
【0047】
メッキ浴のpHは、好ましくは3.5〜4.5の範囲内に調製する。浴温は、好ましくは40〜60℃である。電流密度は、通常0.5〜20A/dm2、好ましくは1〜15A/dm2である。X線回折により測定した(111)面でのピーク強度に対する(200)面でのピーク強度の比で表される結晶配向面の強度比を大きくするには、電流密度を1〜10A/dm2 程度に小さくして、ニッケルの結晶が層状配向するように緩やかに成長させることが望ましい。高濃度浴の場合には、電流密度を3〜40A/dm2 とすることがある。
【0048】
電鋳ニッケルベルトのコバルト含有量を効率よく低減させるために、ニッケルメッキ浴をリザーブタンクに導き、さらに、これをメッキ槽に循環させて、電鋳を行い、その際、リザーブタンク内で0.1〜0.3A/dm2程度の電流密度で弱電解処理を行うことが好ましい。
【0049】
本発明の電鋳ニッケルベルトは、通常、無端状ベルトである。電鋳ニッケルベルトの厚み、幅、内径などは、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されないが、厚みは、通常10〜1000μm、好ましくは15〜500μm、より好ましくは20〜100μm程度である。熱伝導性、機械的強度、可撓性などのバランスの観点から、30〜80μm程度の厚みであることが最も好ましい。電子写真複写機の定着ベルトや転写ベルトなどの用途に適用する場合には、幅を転写紙などの転写材の幅に応じて適宜定めることができる。
【0050】
本発明の電鋳ニッケルベルトは、それ単独で金属ベルトとして使用することができるが、定着ベルト等の用途に用いる場合には、通常は、その外周面に、直接またはシリコーンゴム層などの弾性層を介して、フッ素樹脂層などの離型層が形成された被覆ニッケルベルトとして使用する。
【0051】
2.被覆ニッケルベルトの構成
本発明の被覆ニッケルベルトは、電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された被覆ニッケルベルトであって、該電鋳ニッケルベルト基材として、前記の特定の電鋳ニッケルベルトを用いたものである。本発明の被覆ニッケルベルトの層構成について、図面を参照しながら説明する。
【0052】
図1は、本発明の被覆ニッケルベルトの層構成の一例を示す断面図であり、電鋳ニッケルベルト基材1の上に離型層3が形成された層構成を有している。図2は、本発明の被覆ニッケルベルトの層構成の他の一例を示す断面図であり、電鋳ニッケルベルト基材1の上に弾性層2が形成され、該弾性層2の上に離型層3が形成された層構成を有している。図3は、本発明の被覆ニッケルベルトの他の一例を示す断面図であり、電鋳ニッケルベルト基材1の上に第一弾性層2′及び第二弾性層2″がこの順に形成され、第二弾性層2″の上に離型層3が形成されている。ただし、各層の実際の形成工程は、これらの層構成の順と同じでない場合がある。後述するように、円筒状金型を用いる被覆ニッケルベルトの製造方法では、離型層3を形成した後、離型層3と電鋳ニッケルベルト基材1との間に、第二弾性層2″または弾性層2を形成することができる。
【0053】
弾性層を設ける場合には、通常は一層でよいが、必要に応じて二層以上とすることができる。弾性層を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れたゴム材料であることが好ましい。また、弾性層を形成する材料として、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどのゴム材料にフッ素樹脂を混合したゴム組成物を用いることもできる。例えば、図3に示す層構成の被覆ニッケルベルトにおいて、第一弾性層2′をシリコーンゴムまたはフッ素ゴムからなるゴム層とし、第二弾性層2″をゴムとフッ素樹脂との混合物からなるゴム組成物層とすることができ、それによって、第一弾性層2′と離型層3(フッ素樹脂層)との間の密着性を高めることができる。
【0054】
弾性層の厚み(二層以上ある場合は、合計厚み)は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されないが、画像形成装置の定着ベルトなどの用途では、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mmである。弾性層が二層以上である場合には、各層の厚みは任意に定めることができるが、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの柔軟性を有するゴム層の厚みを30〜70%程度とすることが好ましい。
【0055】
離型層は、通常、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの離型性を有する耐熱性樹脂を用いて形成されるが、所望により、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴムとフッ素樹脂との混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂との混合物などの離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層またはゴム組成物層とすることができる。後者の場合、離型層が弾性を有するので、弾性層を省略することができる。
【0056】
離型層が耐熱性樹脂層である場合、その厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。離型層が弾性を有するゴム層である場合には、通常10μm〜5mm、好ましくは20μm〜3mm程度である。被覆ニッケルベルトの幅や外径などは、用途に応じて適宜定めることができる。
【0057】
3.離型層
離型層は、前述した通り、好ましくはフッ素樹脂などの離型性を有する耐熱性樹脂を用いて形成されるが、所望により、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴムとフッ素樹脂との混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂との混合物などの離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層またはゴム組成物層とすることができる。
【0058】
耐熱性樹脂としては、150℃以上の温度で連続使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、劣化も実質的に進行しない程度の耐熱性を有する樹脂が好ましい。本発明の被覆ニッケルベルトが定着ベルトなどとして高温条件下で使用される場合を想定すると、耐熱性樹脂は、連続使用可能温度が200℃以上の高度に耐熱性を有する合成樹脂であることがより好ましい。このような耐熱性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ビスマレイミド樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性及び離型性に優れる点で、フッ素樹脂が特に好ましい。
【0059】
本発明で使用するフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。
【0060】
これらのフッ素樹脂は、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。被覆ニッケルベルトを定着ベルトや加圧ベルトなどとして用いる場合には、これらのフッ素樹脂の中でも、耐熱性の観点からPTFE及びPFAが好ましい。溶融流動性があり、かつ、表面平滑性に優れたフッ素樹脂被膜が得られやすいことから、PFAが特に好ましい。
【0061】
フッ素樹脂は、液状フッ素樹脂塗料として使用することができるが、成形性や離型性を高める上で、粉体の形状(粉体塗料)で使用することが好ましい。フッ素樹脂粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、粉体塗装法により均一な厚みの薄い被膜を形成する上で、10μm以下であることが好ましい。その下限は、通常1μm程度である。特に、平均粒子径10μm以下のPFA粉体を用いることが好ましい。フッ素樹脂粉体を塗装するには、汎用の各種粉体塗装法を採用することができるが、それらの中でも、粉体を帯電させて塗布する静電塗装法(静電粉体吹き付け法)を用いることが、均一で、よく締まった塗着粉体層を形成する上で好ましい。
【0062】
電鋳ニッケルベルト基材の上にフッ素樹脂を塗装した後、常法に従って焼成する。フッ素樹脂層と電鋳ニッケルベルトとの間に弾性層を配置する場合には、円筒状金型の内面に、好ましくは粉体塗装法によりフッ素樹脂塗膜を形成した後、常法に従って、フッ素樹脂を焼成する。焼成後のフッ素樹脂被膜の厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μm程度である。弾性層が下層にある場合、弾性層の柔軟性を充分に生かすには、この厚みを30μm以下にすることができる。
【0063】
フッ素樹脂粉体を粉体塗装することにより、液状フッ素樹脂塗料の場合のように、塗料中にフッ素樹脂粒子を分散させるための界面活性剤が配合されていないので、純粋なフッ素樹脂の被膜が形成できる。これによって、焼成後に炭化した不純物がフッ素樹脂被膜中に残存することがないので、表面平滑性及び離型性に優れたフッ素樹脂層を形成することができる。
【0064】
ポリイミド層を形成する場合には、電鋳ニッケルベルト基材上または円筒状金型内面にポリイミドワニスを塗布し、乾燥後、加熱して脱水・閉環(イミド化)させる。耐熱性樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、その溶液を塗布し乾燥させる。その他の耐熱性樹脂層の厚みも、フッ素樹脂層の場合と同様に調整することが好ましい。
【0065】
フッ素樹脂層などの耐熱性樹脂層と弾性層との間の密着力を向上させるには、円筒状金型内面に形成した耐熱性樹脂被膜の活性化処理を行うことが好ましい。耐熱性樹脂被膜の活性化処理法としては、UVランプ、エキシマランプ等による紫外線照射、コロナ放電、プラズマ処理、電子線照射、イオン照射、レーザー照射等の照射による物理的処理;金属ナトリウムによる化学的処理;処理液による湿式エッチング処理;などが挙げられる。これらの活性化処理によって、フッ素樹脂被膜の表面からフッ素原子が引き抜かれたり、耐熱性樹脂被膜の表面が親水化されたりするので、弾性層との間の密着力が高まる。また、耐熱性樹脂層表面には、弾性層の材質に適した接着剤を塗布することができる。
【0066】
4.弾性層
弾性層を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れたゴム材料を使用する。また、弾性層を形成する材料として、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどのゴムにフッ素樹脂を混合したゴム組成物を用いることもできる。弾性層は、一層でもよいが、二層またはそれ以上の多層とすることもできる。
【0067】
弾性層の形成に使用されるゴム材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れたゴムが用いられる。耐熱性ゴムとは、被覆ニッケルベルトを例えば定着ベルトや加圧ベルトとして使用した場合、定着温度での連続使用に耐える程度の耐熱性を有するものをいう。具体的には、150℃以上の温度で連続使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、劣化も実質的に進行しない耐熱性を有するゴム材料が好ましい。
【0068】
ゴム材料としては、耐熱性が特に優れている点で、ミラブルまたは液状のシリコーンゴム、フッ素ゴム、あるいはこれらの混合物が好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴム;フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどのフッ素ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、金型内に注入しやすい液状シリコーンゴムを用いることが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
ゴム材料には、所望により、カーボンブラック、マイカ、酸化チタンなどの無機充填材や、天然樹脂などの有機充填材を配合することができる。充填材の配合量は、ゴム材料100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは80重量部以下である。ゴム材料には、軽量化や柔軟性のために有機マイクロバルーンを配合することができる。弾性層の厚みは、用途や設置する機械装置の構造、目標とする弾性、用いる材料の硬度等を勘案して適宜設定されるが、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mmである。
【0070】
フッ素樹脂層からなる離型層(C)とゴム層からなる弾性層(B)との間の密着性を高めるために、両者の中間に、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物層を設けることができる。円筒状金型の内面にフッ素樹脂被膜を形成した後、フッ素樹脂被膜の内面にフッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物層を形成する。加熱処理により、耐熱性ゴム組成物層をフッ素樹脂層と融着させることができる。
【0071】
耐熱性ゴム材料としては、短時間であっても、フッ素樹脂の融点に相当する高温に耐えられるシリコーンゴムやフッ素ゴムが好ましいが、高耐熱性の点でフッ素ゴムが特に好ましい。耐熱性ゴム材料中に含有させるフッ素樹脂の種類は、特に限定されず、前述の如き各種フッ素樹脂を使用することができる。耐熱性ゴム材料中に含有させるフッ素樹脂は、比較的低温で溶融するフッ素樹脂であることが、耐熱性ゴム材料の熱処理温度を低くすることができるので好ましい。比較的低温で溶融するフッ素樹脂としては、融点が350℃以下のフッ素樹脂が好ましく、融点305℃以下のPFAが特に好ましい。耐熱性ゴム組成物中のフッ素樹脂の含有量は、特に限定されないが、最外層のフッ素樹脂被膜との融着性の点から、耐熱性ゴム材料100重量部に対して、5重量部以上が好ましく、耐熱性ゴム層の柔軟性の点から50重量部以下が好ましい。
【0072】
5.被覆ニッケルベルトの製造方法
電鋳ニッケルベルト基材上に、直接、フッ素樹脂などの離型層が形成された被覆ベルトは、電鋳ニッケルベルト基材上に、所望によりプライマー処理を行なった後、離型性と耐熱性とを兼ね備えた耐熱性樹脂層やゴム層を直接形成する方法により製造することができる。
【0073】
これに対して、電鋳ニッケルベルト基材上に、弾性層を介して、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂からなる離型層を配置した被覆ベルトを製造する場合、電鋳ニッケルベルト基材上に弾性層を形成した後、その上にフッ素樹脂などの耐熱性樹脂層を形成する方法を採用すると、フッ素樹脂の焼成等の加熱処理により、下層の弾性層が劣化して、両者の界面での密着性が損われやすく、それによって、被覆ニッケルベルトの耐久性が低下する。
【0074】
そこで、本発明では、弾性層と離型層を有する被覆ベルトの耐久性を向上させるために、電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトの製造方法において、電鋳ニッケルベルト基材(A)として、前述の特定の電鋳ニッケルベルトを使用するとともに、下記の一連の工程:
(1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、
(2)所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有するゴム組成物を塗布し加硫して、弾性層(B2)を形成する工程、
(3)円筒状金型の中空内に電鋳ニッケルベルト基材(A)を挿入する工程、及び
(4)電鋳ニッケルベルト基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の内面との間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、弾性層(B1)を形成する工程
により各層を形成することが好ましい。工程(4)の後、弾性層と離型層とを有する被覆ニッケルベルトを円筒状金型から脱型する。
【0075】
図4は、本発明の被覆ニッケルベルトの一具体例の製造工程を示す説明図である。第1工程では、円筒状金型4の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱性樹脂層3を形成する。すなわち、図4(a)の断面図に示すように、円筒状金型4の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱性樹脂層3を形成する。耐熱性樹脂材料として、例えば、フッ素樹脂を使用する場合には、円筒状金型4の内面にフッ素樹脂を塗装し、焼成して、フッ素樹脂被膜を形成する。耐熱性樹脂材料としてポリイミドワニスを使用する場合には、円筒状金型4の内面にポリイミドワニスを塗布し、乾燥させた後、加熱処理によりイミド化して、ポリイミド樹脂被膜を形成する。熱可塑性樹脂の場合には、その溶液を塗布し、乾燥して熱可塑性樹脂被膜を形成する。耐熱性樹脂層を形成した後、弾性層との密着性を高めるため、必要に応じて、耐熱性樹脂層内面の活性化処理を行ったり、接着剤の塗布を行うことができる。
【0076】
工程(2)では、所望により、耐熱性樹脂層の内面に、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物を塗布し、該フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱処理して、フッ素樹脂を含有するゴム組成物からなる弾性層(B2)を形成する。この工程(2)は、図面を省略している。すなわち、図4には、弾性層が一層の場合が示されている。
【0077】
工程(3)では、円筒状金型4の中空内に電鋳ニッケルベルト基材(A)を挿入する。図4(b)に示すように、円筒状金型4の中空内に、支持体5を差し込んで変形しないように固定した電鋳ニッケルベルト1を挿入する。電鋳ニッケルベルト基材1の表面には、弾性層との密着性を高めるため、接着剤を塗布することができる。円筒状金型4の中心と電鋳ニッケルベルト1の中心が一致するようにセットする(軸心を合わせる)。電鋳ニッケルベルト1を差し込む支持体5としては、ステンレス製の棒や筒などの変形し難い耐熱性材料からなるものが好ましい。
【0078】
工程(4)では、電鋳ニッケルベルト1と耐熱性樹脂層3との間の隙間に、ゴム材料を注入し、次いで、加硫して弾性層を形成する。具体的には、図4(c)に示すように、耐熱性樹脂層3と電鋳ニッケルベルト1との間の隙間に、未加硫のゴム材料2を注入した後、加硫して、加硫ゴム層を形成する。加硫条件は、使用するゴムの種類に応じて選択される。液状シリコーンゴムの場合には、熱加硫を行う。ゴムの材料の注入には、インジェクション、押し出しなどの適当な方法を採用することができる。ゴム材料の注入や加硫に際し、通常は、円筒状金型の一端または両端を密封する。
【0079】
図4(d)に示すように、ゴム材料の加硫後、耐熱性樹脂層及びゴム層とともに、電鋳ニッケルベルト1を円筒状金型4から引き抜く。また、電鋳ニッケルベルト1から支持体5を抜き取る。かくして、電鋳ニッケルベルト1上に弾性層と耐熱性樹脂からなる離型層とがこの順に形成された被覆ニッケルベルトが得られる。
【0080】
弾性層(B1)と耐熱性樹脂層(C)との中間に、接着性を向上させるために、例えば、耐熱性ゴム材料にフッ素樹脂を含有させたゴム組成物層(B2)を形成する場合には、図4(a)に示す第1工程の後、第2工程として、耐熱性樹脂層3の表面に、ゴム組成物を塗布し、該フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱処理して、耐熱性樹脂層と融着したゴム組成物層(B2)を形成する。次いで、図3(b)〜(d)に示す各工程を実施する。この方法では、第1工程の後、耐熱性樹脂層内面のエッチング処理などの活性化処理工程を省略しても、ゴム組成物層(B2)を介して、耐熱性樹脂層とゴム層(B1)との間の密着性を充分に高めることが可能である。この方法では、弾性層が二層となる。
【0081】
本発明で使用する円筒状金型は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製であることが好ましいが、フッ素樹脂の焼成温度やポリイミド前駆体のポリイミド化時の熱処理温度に耐える耐熱性を持つものであれば、これらに限定されるものではない。円筒状金型の内面に良好な離型性を持たせることが、最終工程で、耐熱性樹脂層及び加硫ゴム層と共に電鋳ニッケルベルトを円筒状金型から引き抜く(脱型する)のを容易にする上で好ましい。円筒状金型内面に離型性を持たせるには、平滑化処理を行うことが好ましい。
【0082】
円筒状金型の内面を平滑化処理するには、例えばアルミニウム製の場合には、引き抜き材を使用したり、その他の材質であれば、クロムメッキ、ニッケルメッキなどの表面処理を行う方法がある。平滑化処理により、円筒状金型内面の表面粗さ(Rz)を20μm以下とすることが好ましい。ホーニング処理等により、Rzで5μm以下とすることがより好ましい。円筒状金型内面の平滑化処理により、脱型が容易になることに加えて、表面平滑性に優れた耐熱性樹脂層(離型層)を形成することができる。
【0083】
円筒状金型の長さは、通常、所望の用途に用いるベルト部材の被覆部分の長さであり、その内径は、実質的に電鋳ニッケルベルトの外径と被覆層との厚みの和により規定される。円筒状金型の厚みは、フッ素樹脂の焼成時、ポリイミド前駆体のイミド化時、またはゴムの加硫時などにおける熱伝導を考慮して適宜決定されるが、1〜10mm程度であることが好ましい。ただし、好ましい厚みは、材質によって選択される。なお、円筒状金型の外形は、必ずしも円筒状である必要はなく、筒状の内面を有するものであればよい。
【0084】
上記製造方法によれば、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂からなる離型層を先に形成しておき、弾性層を後から形成することができるため、耐熱性樹脂層の加熱処理による弾性層の劣化を防ぐことができる。また、研削処理などの煩雑な操作を行なうことなく、表面平滑性に優れた被覆ベルトを得ることができる。
【0085】
6.作用
本発明では、電鋳により形成された耐熱老化性、耐屈曲性、耐久性に優れた電鋳ニッケルベルトを金属ベルト基材として用いるため、耐熱性、耐久性、硬度、強度などのバランスに優れている。本発明の電鋳ニッケルベルトを金属ベルト基材とする被覆ニッケルベルトは、画像形成装置の定着ベルト等の用途に好適であり、定着温度等の高温条件下で連続使用しても、耐久性が損われることがない。
【0086】
本発明の製造方法によれば、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂からなる離型層を先に形成しておき、弾性層を後から形成することができるため、耐熱性樹脂層の加熱処理による弾性層の劣化を防ぐことができる。また、研磨処理などの煩雑な操作を行なうことなく、表面平滑性に優れた被覆ニッケルベルトを得ることができる。有機マイクロバルーンを含有するゴム材料を注入して熱加硫を行うと、耐熱性樹脂被膜の表面がより平滑で離型性にも優れるものになる。円筒状金型の内面を平滑化処理しておくことにより、耐熱性樹脂層の表面をさらに平滑にすることができる。
【0087】
フッ素樹脂被膜の形成方法として、円筒状金型の内面にフッ素樹脂粉体を塗装し、焼成して、フッ素樹脂被膜を形成すると、フッ素樹脂ワニスなどの液状塗料を用いた場合に比較して、界面活性剤などの不純物が被膜中に残留せず、離型性に優れた表面が得られる。また、フッ素樹脂被膜などの離型層の厚みを30μm以下にまで薄くすることができるため、弾性層の柔らかさを充分に生かすことができる。したがって、本発明の被覆ニッケルベルトは、高度の柔軟性が要求される用途に適用することが可能である。
【0088】
本発明では、金属ニッケルベルト基材として電鋳ニッケルベルトを用いているため、これを定着ベルトの用途に使用する場合、ヒーターを用いた加熱方式以外に、電磁誘導加熱方式をも採用することができる。
【0089】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について、より具体的に説明する。ここでは、定着ベルトとしての実験結果を示すが、本発明の被覆ニッケルベルトは、定着ベルトの用途に限定されるものではない。物性等の測定法は、以下のとおりである。
【0090】
(1)X線回折による結晶解析
電鋳ニッケルベルトを試料として使用し、広角ゴニオメーターにより広角X線測定を行って、(111)面でのピーク強度I(111)と(200)面でのピーク強度I(200)を測定し、次いで、結晶配向面の強度比〔I(200)/I(111)〕を求めた。
(2)結晶転移温度
示差熱分析計(DSC)を用いて、電鋳ニッケルベルトの吸熱ピーク温度を測定した。
(3)硫黄、炭素、金属元素などの含有量
電鋳ニッケルベルト中の金属元素などの含有量は、ICP発光分析またはフレーム原子吸光分析により測定した。
【0091】
(4)ビッカース硬度
ビッカース硬度(VH)は、圧子として対面角136度のダイヤモンドの正四角錐を用いた押し込み硬さの一種である。一定の荷重で圧子を押し込んだときに生じる四辺形のくぼみの対角線の長さを測定すると、対角線の長さからくぼみの表面積が求められる。荷重をこの表面積で割った値がビッカース硬度であり、単位をつけずに数値のみで表わす。具体的には、微小硬さ試験機〔(株)アカシ製MVK−H1〕を用いて、荷重100gf、荷重保持時間15秒の条件でビッカース硬度を測定した。
【0092】
(5)熱老化試験
電鋳ニッケルベルトを230℃の雰囲気中で2日間保持した後、ビッカース硬度(VH1)を測定した。また、電鋳ニッケルベルトを350℃の雰囲気中に2時間保持した後、ビッカース硬度(VH2)を測定した。ビッカース硬度の初期値(VH0)に対する変化率(%)は、下記の式により算出することができる。変化率は、その絶対値で評価することができる。
変化率(%)=〔(VH0−VH1)/VH0 〕×100
変化率(%)=〔(VH0−VH2)/VH0 〕×100
【0093】
(6)定着ベルトの耐久試験
各実施例及び比較例で作製した被覆ニッケルベルトを定着ベルトとして定着ユニットに装着した。定着ベルトに対向して配置する加圧ローラとして、アルミニウム製芯金に、JISA硬度12度、厚み2mmのシリコーンゴム層と厚み50μmのフッ素樹脂層とをこの順に積層したローラ部材を用いた。定着ベルトと加圧ローラの接触幅が8mmになるように定着ベルトを押さえ、ハロゲンランプヒーターで定着ベルトのフッ素樹脂層(離型層)の表面温度が200℃になるように昇温した。この状態で定着ベルトを1回転/秒の回転速度で200時間回転させた。
【0094】
200時間回転後の被覆ニッケルベルトの破壊の有無、微小なクラックの発生状況を調べた。200時間回転後に、被覆ニッケルベルトの破壊もクラックも無い場合には、500時間までさらに回転させて、被覆ニッケルベルトの破壊の有無、微小なクラックの発生状況を調べた。微小クラックは、それが大きく成長すると、被覆ニッケルベルト破壊の原因となるので、耐久性の指標となる。なお、微小クラックが発生する場合には、発生するまでの時間を測定した。
【0095】
「破壊」とは、長さ10mm程度以上の大きなクラック(割れ)が発生して、回転がスムーズにできない、画像を定着した場合に、画像スジなどの明瞭な不具合が発生するレベルから、さらにクラックが成長して、ベルトそのものが破壊してしまうレベルまでを指している。「微小クラック」とは、長さ2〜3mm程度のヒビ、スジから、長さ2〜3mm程度のクラック(割れ)までであり、画像を定着した場合には、画像スジなどの問題が発生しないレベルである。
【0096】
[実施例1]
硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)300g/L、塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)30g/L、ホウ酸30g/L、光沢剤(芳香族スルホン酸塩)1g/L、アルキンジオール(すなわち、1,4−ブチンジオール)50ppm、及び鉛の添加量が1ppmとなる量の鉛標準液を加えて、ニッケルメッキ浴を調製した。ニッケルメッキ浴には、ピット防止のため、界面活性剤を少量加えた。
【0097】
外径30mmφ、長さ300mmのステンレス製母型を陰極とし、上記ニッケルメッキ浴を用いて、浴温50℃、pH4.0、電流密度5A/dm2で電鋳を行い、炭素含有量0.05質量%、硫黄含有量0.02質量%、マンガン(Mn)含有量0.00質量%、コバルト(Co)含有量0.50質量%、結晶配向面の強度比1.5、ビッカース硬度(VH)の初期値380、厚み50μmの無端状電鋳ニッケルベルト(A1)を作製した。
【0098】
この電鋳ニッケルベルトは、230℃の雰囲気中で2日間保持する熱老化試験後のビッカース硬度の初期値に対する変化率は、0%であり、350℃で2時間保持する耐熱老化試験後のビッカース硬度の初期値に対する変化率は、5%であった。ニッケルメッキ浴の組成を表1に、結果を表2に示す。
【0099】
[実施例2〜20、及び比較例1〜3]
ニッケルメッキ浴の組成を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、電鋳ニッケルベルト(A2〜A20、及びB1〜B3)を作製した。結果を表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
[実施例33]
内径32mmφ、長さ300mmのステンレス製の円筒状金型の内面をクロムメッキして表面粗さ20μm以下とした後、その面に、PFA粉体(デュポン社製、MP−102)を粉体塗装し、380℃で30分間熱処理して、厚み30μmのフッ素樹脂被膜を形成した。このフッ素樹脂被膜の内面に、テトラエッチ液(潤工社製)を塗布し、水洗してエッチング処理を行った。フッ素樹脂被膜のエッチング処理面に、シリコーン系接着剤(東レダウコーニング社製、DY39−012を塗布して風乾した。外径30mmφ、長さ300mmのステンレス製支持体に、実施例1で作製した内径30mmφ、長さ300mmの電鋳ニッケルベルト(A1)を差し込み、この電鋳ニッケルベルト表面に前記と同じシリコーン系接着剤を塗布・乾燥させた後、フッ素樹脂被膜を形成した円筒状金型の中空内に、両者の軸心が一致するように挿入した。
【0103】
円筒状金型内面のフッ素樹脂被膜と電鋳ニッケルベルトとの間の隙間に、液状シリコーンゴム(信越化学製、KE1380)を流し込み、次いで、160℃で15分間加熱してゴムを熱加硫して、厚さ1mmのゴム層を形成した。その後、脱型して、200℃で4時間の熱処理を行い、被覆ニッケルベルトを得た。耐久評価の結果を表3に示す。
【0104】
[実施例34〜52、及び比較例4〜6]
電鋳ニッケルベルト(Niベルト)を表3に示すものに代えたこと以外は、実施例33と同様にして、被覆ニッケルベルトを作製した。用いた電鋳ニッケルベルトの種類を含む被覆ニッケルベルトの層構成、及び耐久評価の結果を表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
表3の結果から明らかなように、本発明の電鋳ニッケルベルト(A1)〜(A20)を無端状金属ベルト基材として作製した被覆ニッケルベルト(実施例33〜52)は、200時間(h)の耐久試験で破壊することがなく、微小クラックも発生しない。また、500時間(h)までの耐久試験の結果、鉛(Pb)、タリウム(Tl)の含有量を好ましい範囲に調整することにより、微小クラックの発生がないか、発生までの時間の長い被覆ニッケルベルトの得られることが分かる。これに対して、鉛(Pb)の含有量が少なすぎる電鋳ニッケルベルト(B1〜B2)や多すぎる電鋳ニッケルベルト(B3)を、金属ベルト基材とする被覆ニッケルベルト(比較例4〜6)は、耐久試験で破壊し、しかも比較的端時間で微小クラックの発生が観察された。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、加熱処理や高温条件下での硬度及び強度の低下が極めて小さく、耐熱老化性及び耐久性が顕著に優れた電鋳ニッケルベルトが提供される。また、本発明によれば、該電鋳ニッケルベルトを基材とする耐熱老化性及び耐久性が顕著に優れた被覆ニッケルベルト及びその製造方法が提供される。本発明の電鋳ニッケルベルト及び被覆ニッケルベルトは、電子写真複写機などの定着ベルト等のベルト部材として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆ニッケルベルトの一例の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の被覆ニッケルベルトの他の一例の層構成を示す断面図である。
【図3】本発明の被覆ニッケルベルトの他の一例の層構成を示す断面図である。
【図4】本発明の弾性層と離型層とを有する被覆ニッケルベルトの製造方法の一例を示す説明図である。図4(a)は、円筒状金型内面に耐熱性樹脂層(離型層)を形成する工程、(b)は、金属ベルト基材の挿入工程、(c)は、ゴム材料の注入工程、(d)は、脱型工程を示す。
【符号の説明】
1:電鋳ニッケルベルト基材
2:弾性層
2′:第一弾性層
2″:第二弾性層
3:離型層
4:円筒状金型
5:支持体
Claims (11)
- 金属元素を質量分率で10〜10000ppmの割合で含有する電鋳ニッケルベルトであって、
該金属元素が、タリウムまたは鉛であることを特徴とする電鋳ニッケルベルト。 - マンガンを0.02質量%の割合でさらに含有する請求項1に記載の電鋳ニッケルベルト。
- 硫黄含有量が0.05質量%以下である請求項1または2に記載の電鋳ニッケルベルト。
- 結晶転移温度が340℃以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルト。
- X線回折により測定した(111)面でのピーク強度に対する(200)面でのピーク強度の比で表される結晶配向面の強度比が式(1)
I(200)/I(111)≧0.6 …(1)
I(200):X線回折における(200)面でのピーク強度
I(111):X線回折における(111)面でのピーク強度
で示される関係を満足する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルト。 - ビッカース硬度(VH)が300〜480である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルト。
- 230℃で2日間の熱老化試験後のビッカース硬度(VH)の初期値に対する変化率が絶対値で10%以下で、かつ、350℃で2時間の熱老化試験後のビッカース硬度(VH)の初期値に対する変化率が絶対値で20%以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルト。
- 電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトにおいて、
電鋳ニッケルベルト基材(A)が請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルトであることを特徴とする被覆ニッケルベルト。 - 弾性層(B)がシリコーンゴムまたはフッ素ゴムからなるゴム層である請求項8に記載の被覆ニッケルベルト。
- 離型層(C)がフッ素樹脂層である請求項8または9に記載の被覆ニッケルベルト。
- 電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトの製造方法において、
〔I〕電鋳ニッケルベルト基材(A)として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルトを使用し、かつ、
〔II〕下記の工程:
(1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、
(2)所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有するゴム組成物を塗布し加硫して、弾性層(B2)を形成する工程、
(3)円筒状金型の中空内に電鋳ニッケルベルト基材(A)を挿入する工程、及び
(4)電鋳ニッケルベルト基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の内面との間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、弾性層(B1)を形成する工程
により各層を形成することを特徴とする被覆ニッケルベルトの製造方法。
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