JP2000026990A - 疲労強度に優れた電鋳ベルト - Google Patents

疲労強度に優れた電鋳ベルト

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JP2000026990A
JP2000026990A JP10196040A JP19604098A JP2000026990A JP 2000026990 A JP2000026990 A JP 2000026990A JP 10196040 A JP10196040 A JP 10196040A JP 19604098 A JP19604098 A JP 19604098A JP 2000026990 A JP2000026990 A JP 2000026990A
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Atsushi Kato
淳 加藤
Hidekazu Ido
秀和 井戸
Takenori Nakayama
武典 中山
Wataru Urushibara
亘 漆原
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温使用条件下での疲労強度に優れ、しかも
良好な抜管性を有する電鋳ベルトを提供する。 【解決手段】 本発明に係る疲労強度に優れた電鋳ベル
トとは、Ni−P合金からなることを特徴とするもので
あり、Pの平均含有率は0.4〜1.6質量%とするこ
とが望ましい。更に、ベルト内周面に皺が形成されるこ
とを防止する観点からベルトの内面側表面におけるPの
含有率は、平均P含有率より高くすることが望ましく、
また疲労特性を一層向上させるという観点からベルトの
外面側表面におけるPの含有率を平均P含有率より高く
することが推奨される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電鋳法により製造
される金属製エンドレスベルトである電鋳ベルトに関
し、詳細には疲労強度に優れた電鋳ベルトに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】電鋳ベルトは、コピー機やプリンター等
の駆動用ベルトとして利用されており、製造するにあた
っては電鋳浴で満たされた電鋳槽中に中実の円柱形の管
(鋳型)を設置し、電流を供給して円柱管表面に純Ni
を析出させた後、管より引き抜く方法が採用されてい
る。この際、電鋳ベルトを鋳型よりスムーズに抜管する
ためには、電鋳膜の応力を低く保つことが重要であり、
例えば特開昭63−238294号公報に記載されてい
るように、膜応力が低いスルファミン酸Ni浴を電鋳浴
に用い応力を緩和させた状態で純Ni電鋳ベルトを製造
する方法が一般的に用いられている。尚、電鋳ベルトの
応力が低いと抜管しやすくなるが、従来の純Ni電鋳ベ
ルトの場合は、膜応力は低いものの十分な疲労強度が得
られないという問題があった。
【0003】更に最近のコピー機やプリンターは高速稼
動が行われるようになってきており、機内の温度が20
0℃付近に上昇することもあることから、高温雰囲気下
においても高い疲労強度を有する電鋳ベルトが必要とな
ってきている。しかも、この様な高温下で前記スルファ
ミン酸Ni浴等で製造された純Ni電鋳ベルトを使う
と、寿命が短くなり部品の交換頻度が高くなることか
ら、従来以上に耐熱性及び耐摩耗性が優れた電鋳ベルト
の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであって、高温使用条件下での疲労
強度に優れ、しかも良好な抜管性を有する電鋳ベルトを
提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明に係る疲労強度に優れた電鋳ベルトとは、Ni−P合
金からなることを要旨とするものであり、Pの平均含有
率は0.4〜1.6%(質量%の意味、以下同じ)とす
ることが望ましい。
【0006】更に、ベルト内周面に皺が形成されること
を防止するという観点からベルトの内面側表面(内層表
面)におけるPの含有率を平均P含有率より高くするこ
とが望ましく、また疲労特性を一層向上させるという観
点からベルトの外面側表面(外層表面)におけるPの含
有率も平均P含有率より高くすることが推奨される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、従来のNi電鋳ベ
ルトが不充分であることが指摘されていた疲労強度は、
Ni−Pを採用することにより、大幅に高強度化するこ
とができると共に、従来以上の耐熱性及び耐摩耗性をも
たせることが可能であることを見出し、本発明に想到し
た。
【0008】高温使用条件下での疲労強度に優れ、しか
も良好な抜管性を有するNi−P合金製電鋳ベルトを得
るためには、ベルト中のP含有率を制御することが重要
であり、ベルト全体の平均P含有率を0.4〜1.6%
の範囲にすることが望ましい。平均P含有率が小さい
と、膜の応力は低く抜管には好都合であるがベルトの疲
労強度向上効果が不足するので、平均P含有率は0.4
%以上が望ましく、0.7%以上であればより望まし
い。一方、平均P含有率が1.6%を超えるとベルトの
強度は十分であるものの膜の応力が高くなりすぎて抜管
が困難となるので、平均P含有率は1.6%以下が望ま
しく、1.3%以下であればより望ましい。
【0009】尚、膜の応力を下げて抜管しやすい状態に
した場合(換言すれば、平均P含有率が小さい場合)に
は、しばしばNi−P電鋳ベルトに水たまり状の皺が形
成される場合がある。これは、鋳型である金属パイプ表
面で膜が成長する初期段階で膜と鋳型の間に処理浴が侵
入し、膜が局部的に浮いた状態になるためである。これ
を防止するためには、電鋳の初期の段階で膜応力を弱い
引張り状態にして膜と鋳型を密着させることが有効であ
る。そのためには、電鋳初期におけるP含有率を高めに
設定することが望ましく、具体的には、ベルトの内層表
面のP含有率を1.3%以上にすることが望ましく、
1.6%以上であるとより望ましい。ベルトの内層表面
のP含有率の上限については、特に規定するものではな
いが、無電解Ni−Pめっきにて多用される12%程度
のP含有率を大きく超えてPを添加することは、析出速
度の低下などの問題を起こすため、いたずらにP含有量
を上げることは推奨できない。尚、このように、電鋳の
初期の段階で膜応力が引張り状態であっても、その後成
長する膜の応力を低く維持して膜全体として圧縮応力と
すれば、抜管することに支障は生じない。更に、ベルト
表面のP含有率を増すことはベルトの疲労強度を増す効
果ももたらし、純Niめっきを適用しないことによって
抜管後に純Ni層を薬液除去する手間を省くことが可能
である。
【0010】また疲労破壊の起点は表面に形成されるこ
とが多く、表面の強度を増すことは非常に有効な疲労強
度改善策となりえる。特に、強い引張りの曲げ応力が加
わるベルトの外層表面のP含有率は高めに設定すること
が望ましく、具体的には1.0%以上にすることが好ま
しく、1.6%以上とすればより好ましい。このよう
に、電鋳の最終段階、即ち、膜の外層表面が引張り状態
であっても、上記のような理由によって、抜管すること
に支障は生じない。外層表面のP含有率の上限も、析出
速度の観点から12%以下とすることが望ましい。
【0011】尚、Ni−P合金めっきは、電解めっきと
無電解めっきに分類できるが、電解Ni−Pめっきを採
用することにより、P量の制御によってNi電鋳ベルト
の特性を大きく変えずに疲労強度を上げることが可能で
ある。一方、無電解Ni−Pめっきでは、低いP量にお
ける量産が困難であり、本発明にて規定する0.4〜
1.6%の範囲でP量を管理することは極めて難しい。
また電解Ni−Pめっきの場合は、析出速度が無電解N
i−Pめっきのほぼ10倍と高速なため、生産性の問題
が生じることもない。尚、同一P量で無電解めっきと電
解めっきのNi−P膜を比較した場合、膜質は極めて似
通っており、無電解の方が不純物含有量が多く、温度が
上昇した場合のNiP化合物の析出がやや遅いが、無電
解Ni−Pめっきを内層または外層に適用する方法も本
発明に含まれる。
【0012】更に、抜管性を向上させることを目的とし
て、電鋳の前処理として金属管に薬液処理を行ったり、
電鋳浴に添加剤を加える方法も知られているが、本発明
に係る電鋳ベルトを製造する際にこれらの方法を採用し
てもよい。また、本発明に係る電鋳ベルトは、内層表面
及び/又は外層表面のP含有率を変えた2層または3層
からなる複層構造の電鋳ベルトの場合に限らず4層以上
の層構造を有しているものであってもよく、更には表面
から内部に向かって連続的または断続的にP含有率が変
化する構造のものも含まれる。
【0013】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の主旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
【0014】
【実施例】実施例1 鏡面研磨を施したチタン管(直径30mm)を脱脂洗浄
し、鋳型として用い、下記の条件でP含有率を変化させ
て電鋳を行い、P含有率の異なる各種Ni−P電鋳ベル
トを作製した。
【0015】[電鋳浴組成] 硫酸Ni 100〜250g/l 塩酸Ni 30〜150g/l 燐酸 0〜 30g/l 亜燐酸 0〜 4g/l 硼酸 5〜 25g/l サッカリン 0.2〜0.5g/l
【0016】[電鋳条件] ・温度 60℃ ・電流密度 7〜23A/dm2 ・目標厚さ 40μm
【0017】電鋳後に水冷し、手で管を引きぬいて抜管
性を評価した(○:抜管が比較的容易、△:抜管が困難
ではあるが可能、×:抜管できず)。抜管性と平均P含
有率の関係を図1にグラフとして示した様に、平均P含
有率は1.6%以下が望ましく、1.3%以下がより望
ましいことが分かる。尚、平均P含有率は膜を溶解して
ICPにより分析を行ったものである。
【0018】次に抜管できた電鋳ベルトについて、20
0℃の雰囲気中でベルトに50kgfの張力をかけて回
転試験を行い、破断するまでの回転数で疲労強度を評価
すると共に、市販のスパイラル応力計を用いて膜応力を
測定した。結果は図2及び図3に示す。図2のグラフよ
り平均P含有率が1.6%を超えると、膜応力がプラス
となって引張応力となっている。これは図1で平均P含
有率が1.6%を超えると抜管できなかった結果と対応
している。また図3のグラフから高い疲労強度を得る上
で平均P含有率は0.4%以上が好ましく、0.7%以
上であるとより好ましいことが分かる。
【0019】実施例2 ベルト内表面のP含有率を1.3〜12%の範囲で変化
させたこと以外は、実施例1と同様にして、Ni−P電
鋳ベルトを作製し、皺の発生率を調べた。結果は表1に
示す。
【0020】尚、表1のNo.1〜8は、夫々10個の
サンプルについて実験を行い、またNo.9〜12は、
夫々6個のサンプルについて実験を行ったものであり、
例えばNo.1の場合、10個のサンプルの平均P含有
率は0.3〜0.5の範囲でばらついているが、内層表
面のP含有率はいずれも12.0%であり、すべてのサ
ンプルで皺が発生していなかったことを示す。また内層
のP含有率は、EPMA(Electron Probe X-ray Microa
nalyzer)を用いて分析したものであり、内層とは表面か
ら約1μmの深さの層に相当する。
【0021】
【表1】
【0022】平均P含有率が低めの場合には、内層のP
含有率を本発明の範囲(1.3%以上)に制御すること
によって、皺の発生率をゼロか若しくは極めて低く抑え
ることができることが分かる。
【0023】実施例3 ベルト外表面のP含有率を0.4〜1.3%の範囲で変
化させたこと以外は、実施例1と同様にして、Ni−P
電鋳ベルトを作製し、回転疲労寿命を調べた。結果は表
2に示す。尚、外層のP含有率は、EPMAを用いて分
析した。
【0024】
【表2】
【0025】外層のP含有率を本発明範囲(1.0%以
上)に制御することによって、低いP含有率においても
安定した高疲労寿命を達成できることが分かる。
【0026】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、高温使用条件下での疲労強度に優れ、しかも良好な
抜管性を有する電鋳ベルトが提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ni−P電鋳ベルトの平均P含有率と抜管性の
関係を示すグラフである。
【図2】Ni−P電鋳ベルトの平均P含有率と膜応力の
関係を示すグラフである。
【図3】Ni−P電鋳ベルトの平均P含有率と回転疲労
強度の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中山 武典 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 漆原 亘 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni−P合金からなることを特徴とする
    疲労強度に優れた電鋳ベルト。
  2. 【請求項2】 Pの平均含有率が0.4〜1.6質量%
    である請求項1に記載の電鋳ベルト。
  3. 【請求項3】 ベルトの内面側表面におけるPの含有率
    が、平均P含有率より高いものである請求項1または2
    に記載の電鋳ベルト。
  4. 【請求項4】 ベルトの外面側表面におけるPの含有率
    が、平均P含有率より高いものである請求項1〜3のい
    ずれかに記載の電鋳ベルト。
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