JP4344158B2 - 定着ベルトおよび像加熱定着装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真装置・静電記録装置等の画像形成装置に用いられる定着ベルト部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
画像形成装置において、電子写真プロセス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の画像形成プロセス手段部で記録材(転写材シート・エレクトロファックスシート・静電記録紙・OHPシート・印刷用紙・フォーマット紙等)に転写方式あるいは直接方式で形成担持させた目的の画像情報の未定着画像(トナー画像)を記録材面に加熱定着させる定着装置としては、熱ローラ方式の装置が広く用いられていた。これはローラ内にハロゲンヒータ等の熱源を用いるものが一般的である。
【0003】
一方、近年、加熱方式としては、セラミックヒータを熱源として小熱容量の樹脂ベルトあるいは金属ベルトを加熱するものが広く提案、実施されている。すなわち、加熱方式では一般に、加熱体としてのセラミックヒータと加圧部材としての加圧ローラとの間に耐熱性ベルト(定着ベルト)を挟ませてニップ部を形成させ、前記ニップ部の定着ベルトと加圧ローラとの間に画像定着すべき未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入してベルトと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータの熱がベルトを介して記録材に与えられ、この熱とニップ部の加圧力とで未定着トナー画像を記録材面に熱圧定着させる。
【0004】
このベルト加熱方式の定着装置は、ベルトとして低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができる。すなわち、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイックスタート性)、スタンバイ時の消費電力も大幅に小さい(省電力)等の利点がある。図3にベルト加熱方式の定着装置の一構成例を示す。
【0005】
このようなベルト加熱方式におけるベルトとしては耐熱樹脂等が用いられ、特に耐熱性、強度に優れたポリイミド樹脂が用いられている。しかしながら、さらに機械を高速化、高耐久化した場合、一般的に樹脂フィルムでは強度が不十分である。このことから、強度に優れた金属、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミニウム等を基層とするベルトを用いることが提案されている。
【0006】
また、金属ベルトを利用して、これを電磁誘導による渦電流で自己発熱させる誘導加熱方式も開示されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、磁束によりベルト自身あるいはベルトに近接させた導電性部材に渦電流を発生させ、ジュール熱によって発熱させる加熱装置が提案されている。この電磁誘導加熱方式は、発熱域をより被加熱体に近くすることができるため、消費エネルギーの効率アップが達成できる。図4に誘導加熱方式の像加熱装置の構成例を示す。
【0007】
ベルト加熱方式の定着装置の定着ベルト駆動方法としては、ベルト内面を案内するフィルムガイドと加圧ローラとで圧接されたフィルムを加圧ローラの回転駆動によって従動回転させる方法(加圧ローラ駆動方式)や、逆に駆動ローラとテンションローラによって張架された無端ベルト状のベルトの駆動によって加圧ローラを従動回転させる方法等がある。
【0008】
金属ベルトを用いた定着ベルトとしては、ヒータ面接触部の表面粗さが0.5μm未満で、40μm前後の厚みのニッケル製定着ベルトを用いたものが(例えば、特許文献2参照。)、外周面に離型性を有するコーティング層を有し、内周面には樹脂層を有する10〜35μm厚みのニッケル製定着ベルトも例示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
このように、電子写真用像・静電記録装置等に画像形成装置に用いられる定着ベルト部材には一般にシームレスのベルト基材が使用されており、ニッケル材からなるシームレスベルト基材は、一般に硫酸ニッケル浴やスルファミン酸ニッケル等による電気鋳造法を用いて製造される。
この電気鋳造法では、所要形状の母型が使用され、その母型の外周上に電気鋳造成膜が行われた後、母型から引き抜かれてシームレスベルト基材が製造される。
【0010】
シームレスベルト基材のベルトガイド側(内周面)には摺動層を設ける。これは、図3のベルトガイド16や摺動層板40と定着ベルトが接触することによる抵抗を小さくするためである。摺動層としては、ポリイミド樹脂を形成することが提案されている。
【0011】
加熱部材の支持部材と摺動する面に、セラミック粒子及び合成樹脂粒子の少なくとも一方を金属マトリックス中に分散させた潤滑性金属層を設けた定着ベルトが提案されていた(例えば、特許文献4参照。)。金属マトリックス中にセラミック粒子或は合成樹脂粒子を分散させた金属層を設けたことで、加熱部材の支持部材との摺動面の摺動抵抗を低減し、さらに通紙耐久による摺動抵抗の増加を抑制することができる。よって、被加熱部材のスリップを防止できるので、安定した被加熱部材の搬送を確保することができ、画像加熱定着装置にあっては、高品位な画像と安定した記録材の搬送を提供することが可能となる。
【0012】
現像アルミスリーブの表面に化学めっきの無電解Ni−Pめっき、無電解Ni−Bめっき、無電解Pd−Pめっき又は無電解Crめっきを実施することによって、アルミスリーブの表面耐磨耗性を向上させ、スリーブの材質をSUS材からアルミへ変換することが可能となる(例えば、特許文献5参照。)。アルミスリーブ表面に無電解めっき層を実施することによって、小粒径および低帯電性の現像剤を用いた場合でも、長寿命化および現像剤担持体表面の汚染の軽減が可能である。しかし、無電解Ni−P、Ni−B、Pd−P、Crめっきなどが非晶質であり、一般的にニップ幅が要求されている定着ベルトの内面摺動材として、屈曲特性に満足できない。
【0013】
現在までに摺動として数多くの2元、3元の合金膜が発表されている。合金膜としては耐摩耗性を有するNi−Cr、Ni−Mo、Ni−W、Ni−P、Ni−Co−P、Co−P、Co−W、Co−Mo、Fe−W、Cr−Moなど、装飾用、防食用のSn−Ni、Ni−Fe、Fe−Ni−Cr、Cu−Ni、Ni−Mn、Ni−Coなど、柔軟性を持つSn−Ni、Ni−Fe、Ni−Mn、Co−Mo、Co−Wなどが知られている。
【0014】
置換型合金めっきの硬さはマトリックス金属に固溶する溶質元素濃度と共に増大する。固溶した溶質原子が母相格子をひずませるので、硬さの増大は固溶強化によるものである。また、置換型固溶体でも構成原子が規則的に配列した規則格子では規則強化が生じる。従って、合金めっきではめっき金属の特徴である結晶粒の微細化、電着応力などに加え溶質原子による固溶強化、析出強化、規則強化などにより高硬度の被膜を得ることができる。また、置換型固溶体であるNi−Fe合金めっきではダクティリティーと組成はほぼ直線的に変化することが分かった(例えば、非特許文献1参照。)。
【0015】
ニッケル−鉄合金膜は薄膜磁気ヘッドに応用されている(例えば、特許文献6〜特許文献8参照。)。軟磁性ニッケル−鉄薄膜を用いた磁気ヘッドの磨耗を完全に防ぐために、ニッケル−鉄合金磁気ヘッドの表面にDLCなどのハードコーティング膜を被覆されている。
【0016】
【引用文献1】
特開平7−114276号公報
【特許文献2】
特開平7−13448号公報
【特許文献3】
特開平6−222695号公報
【特許文献4】
特開2001−6868号公報
【特許文献5】
特開2000−155462号公報
【特許文献6】
特許公報第3048382号
【特許文献7】
特開平07−220921
【特許文献8】
特開平06−195640
【非特許文献1】
「金属表面技術」、1963年、第34巻、第4号、p165
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、一般的に薄膜磁気ヘッドに用いられているNi−Fe合金めっき膜を機械部品に応用する場合には、Ni−Fe合金膜の耐摩擦磨耗特性はわからないままであった。
【0018】
電子写真用像・静電記録装置等に画像形成装置に用いられる定着ベルトは、定着ベルト表面温度180℃以上の下で長時間耐久性を持たなければならない。さらに、省エネルギー、省スペースの要求が厳しくなり、画像形成装置に用いられる定着器が小型化へ、定着ベルトの内径が小寸法化へ進められている。従って、金属定着ベルトの内周面摺動層には耐磨耗性以外に高温の耐酸化性、潤滑性、熱伝導性および柔軟性などが要求されていた。
【0019】
本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ニッケル材を用いた定着ベルトの摺動面を構成する層の耐磨耗性、耐酸化性、潤滑性、柔軟性及び熱伝導度の向上を図ることをその課題とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明により達成される。
(1)少なくとも、離型層と該離型層上に設けられた金属層とを有し、該金属層の該離型層と反対側の面が摺動面である定着ベルトにおいて、
前記摺動面が少なくともニッケルと鉄を含む合金からなる合金層により形成されていることを特徴とする定着ベルト。
(2)前記金属層を、電気めっきもしくは電気鋳造法で設けたことを特徴とする前記(1)に記載の定着ベルト。
(3)前記金属層が、その層厚方向において、ニッケルと鉄の組成比を変化させた積層構成を持つことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の定着ベルト。
【0021】
(4)前記合金層の前記摺動面側から厚み1〜20μmの部分における鉄の含有量が1質量%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の定着ベルト。
(5)前記合金層の前記摺動面側から厚み1〜20μmの部分における鉄の含有量が5質量%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れかに記載の定着ベルト。
【0022】
(6)前記離型層と前記金属層との間に弾性層を有する前記(1)〜(5)のいずれかに記載の定着ベルト。
(7)前記弾性層がシリコーンゴム、フッ素ゴム及びフルオロシリコーンゴムからなる群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする前記(6)に記載の定着ベルト。
【0023】
(8)無端状の定着ベルトと、該定着ベルトの所定部を、それぞれがその内周面側と外周面側から圧接して挟持する一対の圧接部材と、該定着ベルトの所定部を加熱する加熱手段と、を有し、
該定着ベルトの内周面は該内周面側に配置された圧接部材に対する摺動面として形成され、かつ該定着ベルトの外周面と該外周面側に配置された圧接部材とによって未定着画像を有する記録材が挿入されるニップ部が構成されている像加熱定着装置であって、
該定着ベルトは前記(1)〜(7)の何れかに記載の定着ベルトであることを特徴とする像加熱定着装置。
【0024】
(9)前記加熱手段が、定着ベルトを発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段からなることを特徴とする前記(8)に記載の像加熱定着装置。
(10)前記加熱手段が、前記定着ベルトの内周面に対して摺動する圧接部材を加熱体とした構成からなることを特徴とする前記(9)に記載の像加熱定着装置。
【0025】
【発明の実施の形態】
(1)定着ベルト
本発明の定着ベルトについて説明する。図1は本発明における定着ベルト10の層構成模型図の一例である。本発明の定着ベルト10は、電気めっき或は電気鋳造プロセスによる無端金属ベルトからなる金属層1と、その外周面に積層した弾性層2と、さらにその外周面に積層した離型層3との複合構造を有する。金属層1は、無端ベルト内周面或は摺動面において摺動層とするニッケル−鉄合金層4および電鋳ニッケル層11から構成されている。定着ベルト10において、摺動層とする合金層4が内周面側(ベルトガイド面側)であり、離型層3が外周面側(加圧ローラ面側)である。金属層1と弾性層2との間、弾性層2と離型層3との間には、接着のためにプライマー層(不図示)を設けても良い。プライマー層はシリコーン系、フッ素系、エポキシ系、ポリアミドイミド系等の公知のものを使用すればよく、その厚さは、通常、1〜10μm程度である。また、金属層1の表面に弾性層2を形成せず、金属層1に離型層3を直接形成しても良い。特に、記録材上のトナーのり量が少なくトナー層の凹凸が比較的小さいモノクロ画像の加熱定着用の場合は、このような弾性層を省略した形態のものとすることができる。
【0026】
摺動層とするニッケル−鉄合金層はステンレス母型の表面に一定厚さの合金膜を電気めっきプロセスにより成膜することで形成できる。このようにして形成したニッケル−鉄合金層の外周面上に電鋳ニッケル層を電鋳プロセスにより形成した後、母型から引き抜きシームレスベルト基材とする金属層が製造できる。
また、金属層は、電鋳ニッケル基層としてステンレス母型の表面にニッケル膜を電気めっきプロセスにより成膜し脱型して電鋳ニッケル基層とした後、この電鋳ニッケル基層の内周面に摺動層とするニッケル−鉄合金層を形成することによっても製造可能である。この方法では、電鋳ニッケル基層11の両面に摺動層とするニッケル−鉄合金層4を電気めっき法で形成しても良い。
【0027】
電鋳プロセスにより成膜した電鋳ニッケル基層11の外周面上に弾性層2、弾性層2の外周面上に更に離型層3を形成したのち、摺動層とするニッケル−鉄合金層4を電鋳ニッケル基層11の内周面に形成することも望ましい。形成方法はスリーブ形状でも膜厚を均一に形成できるめっき法が良く、この方法では金属層以外の例えば弾性層や離型層にはめっき層を付着しない。また、めっきの際には弾性層及び離型層を積層した電鋳ニッケル基層をめっき浴に浸漬するが、浴温度は高くても60℃程度であり、弾性層、離型層に悪影響は与えない。
【0028】
また、層厚方向において摺動層とするニッケル−鉄合金層のニッケルと鉄の組成比を変化させることが好ましい。図2は本発明例における定着ベルト10’の層構成模型図の一例である。図2では、摺動面から厚み(1μm)の部分から、層厚方向の外周方向に合金中の鉄含量が低減する層構成となっている。すなわち、このような構成とすることで内周面の摺動面の耐磨耗特性、耐酸化性、潤滑性特性を満足した上で、ベルトの柔軟性を十分に与えることができる。より硬度、柔軟性などの特性を改善するためには、摺動層とするニッケル−鉄合金層中には、ニッケル−鉄合金の多層構造を設けることが望ましい。
【0029】
この定着ベルトを電磁誘導加熱方式に用いた場合、電鋳ニッケル無端ベルトからなる金属層1が電磁誘導発熱性を示す発熱層として機能する。後述するが、金属層1に交番磁束が作用することで金属層1に渦電流が発生し、金属層1が発熱する。その熱が弾性層2・離型層3を介して定着ベルト10または10’を加熱し、定着ニップ部Nに通紙される記録材を加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。また、本発明の定着ベルト10または10’は、セラミックヒータを用いたベルト加熱方式に用いても良い。
以下、電鋳ニッケル層を基層とした場合について定義ベルトの構成を詳細に説明する。
【0030】
a.電鋳ニッケル基層11
電鋳ニッケル基層11としてはステンレス材等の円筒状母型を電鋳浴に浸漬させ、母型の表面或は裏面に電鋳プロセスにより成長させたニッケル層を母型から電鋳ニッケルベルトとして取り出したものが利用できる。この電鋳ニッケル層における金属成分はニッケルである。
【0031】
この場合の電解浴としては、例えばスルファミン酸ニッケル、硫酸ニッケルなどの公知のニッケル電解浴を用いることができ、pH調整剤、ピット防止剤、光沢剤などの添加剤を適宜加えても良い。例えば、スルファミン酸ニッケルが250〜650g/l、塩化ニッケルが0〜60g/l、およびホウ酸が20〜55g/lからなるニッケル電解液が挙げられる。そして、添加する光沢剤濃度、電解浴温度、陰極電流密度などを制御することによって、所望の表面粗さを有したニッケルからなる電鋳ニッケルベルトが得られる。電鋳プロセスに用いる電解浴によっても異なるが、通常、電解浴温度45〜60℃程度、陰極電流密度1〜30A/dm2程度で行なうことが好ましい。添加する光沢剤はサッカリン、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等含む応力減少剤・一次光沢剤、ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ジエチルトリアミン等含む二次光沢剤と呼ばれる添加剤等が加えられる。
【0032】
電鋳ニッケル基層11の厚みは、次の式で表される表皮深さより厚く、特に1μm以上にすることが好ましく、20μm以上にすることがより好ましい。また、200μm以下にすることが好ましく、100μm以下にすることがより好ましく、50μm以下にすることが更に好ましい。表皮深さσ[m]は、励磁回路の周波数f[Hz]と透磁率μと固有抵抗ρ[Ωm]で
【0033】
【数1】
Figure 0004344158
【0034】
と表される。これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっており、逆に言うとほとんどのエネルギーはこの深さまでで吸収されている。電鋳ニッケル基層11があまりに薄いと、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれなくなってきて電磁誘導加熱の効率が悪くなることがある。また、電鋳ニッケル基層11があまりに厚いと、剛性が高くなり、また、屈曲性が悪くなって回転体として使用しにくくなることがある。また、セラミックヒータを使用するベルト加熱方式に金属層を用いる場合、金属層の厚みを上記範囲内とすることによって、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させることができる。
【0035】
b.弾性層2
弾性層2は設けても設けなくても良い。弾性層を設けることにより、ニップ部において被加熱像を覆って熱の伝達を確実にするとともに、基層を形成する電鋳ニッケルベルトの復元力を補って回転・屈曲による疲労を緩和することができる。また、弾性層を付与することにより、定着ベルト離型層表面と記録材上の未定着トナー像の凹凸との密着性が増し、効率よく熱伝達させることが可能になる。弾性層2を設けた定着ベルトは、特に、未定着トナーののり量が多いカラー画像の加熱定着に適している。
【0036】
弾性層2の材質としては、特に限定されず、耐熱性が良く、熱伝導率が良いものを選べばよい。弾性層2としてはシリコーンゴム、フッ素ゴム及びフルオロシリコーンゴムからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。
【0037】
弾性体層に使用されるシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等を例示することができる。
なお、必要に応じて、弾性体層には乾式シリカ、湿式シリカ等補強性充填材、炭酸カルシウム、石英紛、珪酸ジルコニウム、クレー(珪酸アルミニウム)、タルク(含水珪酸マグネシウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ベンガラ(酸化鉄)等を含有させても良い。
【0038】
弾性層2の厚さは、良好な定着画像品質を得るために10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では記録材P上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、定着ベルトの加熱面(離型層3)が、記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸の形状に変形できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分とで画像に光沢ムラが発生する。つまり、伝熱量が多い部分は光沢度が高くなり、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。弾性層2があまりに薄いと、記録材あるいはトナー層の凹凸形状に変形することができず、画像光沢ムラが発生してしまうことがある。また、弾性層2があまりに厚いと、弾性層の熱抵抗が大きくなりクイックスタートを実現するのが難しくなることがある。
【0039】
弾性層2の硬度(国際規格と整合し1993年に制定された新JIS−K−6253(ISO−7619))は、画像光沢ムラの発生が十分抑制され、良好な定着画像品質が得られるので、60°以下、特に45°以下が好ましい。
弾性層2の熱伝導率λは、2.5×10-1[W/m・K]以上が好ましく、3.3×10-1[W/m・K]以上がより好ましい。また、8.4×10-1[W/m・K]以下が好ましく、6.3×10-1[W/m・K]以下がより好ましい。熱伝導率λがあまりに小さい場合には、熱抵抗が大きくなり定着フィルムの表層(離型層3)における温度上昇が遅くなることがある。熱伝導率λがあまりに大きい場合には、硬度が高くなったり、圧縮永久歪みが悪化したりすることがある。
【0040】
このような弾性体層は公知の方法、例えば、液状のシリコーンゴム等の材料をブレードコート法等の手段によって金属層上に均一な厚みでコート、加熱硬化する方法、液状のシリコーンゴム等の材料を成形型に注入し加硫硬化する方法;押出成形後に加硫硬化する方法;射出成形後に加硫硬化する方法等で形成すれば良い。
【0041】
c.離型層3
本発明の定着ベルトは離型層を有することによって、記録材からの定着ベルトの良好な離型性を確保することができる。離型層3の材料としては特に限定されず、離型性、耐熱性の良いものを選べば良い。離型層3としては、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、PFAがより好ましい。なお、必要に応じて、離型層にはカーボン、酸化すず等導電剤等を離型層の10質量%以下含有させても良い。
【0042】
離型層3の厚さは1μm以上が好ましい。また、100μm以下が好ましい。離型層3があまりに薄いと、塗膜の塗りムラで離型性の悪い部分ができたり、耐久性が不足したりすることがある。また、離型層があまりに厚いと、熱伝導が悪化することがあり、特に樹脂系の離型層の場合は硬度が高くなって、良好な熱伝達性や回転・屈曲による疲労の緩和性などの弾性層2の効果がなくなってしまうことがある。
【0043】
このような離型層は公知の方法、例えば、フッ素樹脂系の場合、フッ素樹脂粉末を分散塗料化したものをコート・乾燥・焼成により、あるいは予めチューブ化したものを被覆・接着する方法で形成すれば良く、ゴム系の場合、液状の材料を成形型に注入し加硫硬化する方法;押出成形後に加硫硬化する方法;射出成形後に加硫硬化する方法等で形成すればよい。
【0044】
また、予め内周面をプライマー処理されたチューブ、予め外周面をプライマー処理された電鋳ニッケルベルトを円筒母型内に装着し、チューブと電鋳ニッケルベルト間隙間に液状シリコーンゴムを注入、加熱することでゴムの硬化及び接着を行う手法を用いれば、弾性層、離型層を同時に形成することも可能である。
【0045】
d.摺動層とする合金層4
次に本発明の摺動層とするニッケル−鉄合金層4について説明する。摺動層は、本発明の像加熱定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減と伝熱特性向上および耐久性アップを図るうえで重要な役割を果たす。電鋳ニッケルベルトは室温でも時間が経つと表面にニッケル酸化物が形成される。像定着の際には200℃以上の加熱が行われるため、電鋳ニッケルベルト上には加速度的にニッケル酸化物が形成される。このニッケルの酸化物は例えば金属や樹脂と擦れると削れる脆い酸化物である。そこでまず、その電気めっきによるNi−Fe合金膜の耐磨耗性について調査した。
【0046】
摩擦磨耗実験は日本協和界面科学株式会社製のDFPM−SS型自動摩擦磨耗解析装置を用い、φ3mmのアルミナボールを荷重300gの下で、電鋳ニッケル品(厚み50μm)、Ni−20質量%Fe、Ni−5質量%Fe合金膜に押し付け摩擦磨耗試験を行なった。試験環境は、室温と220℃に加熱した場合について行なった。比較用に電鋳ニッケル品の表面にポリイミド膜(厚み10μm)(U−ワニス−A或はU−ワニス−S(商品名)、宇部興産株式会社製)を積層させたもの(試験はポリイミド樹脂に対して行った)、SUS304シート材のみのものについても摩擦摩耗試験を行なった。図5に結果を示す。
【0047】
ここで、図5の磨耗体積(単位:mm3)とは摩擦痕の平均断面積と摩擦距離との積を表す。摩擦痕の断面積はZygo社製New View 5000型三次元表面構造解析装置を用い、断面のプロファイルを作成することにより求めた。図5より単純な電鋳ニッケル品の摩擦磨耗量は大きいことが分かる。定着ベルト10、10’の金属層1に含まれる基材とする電鋳ニッケル基層11は、機械特性(引張強度、硬度、柔軟性、耐熱劣化性など)、磁気特性、熱伝導特性、実機耐久特性などを同時に満足しなければならない。従って、定着ベルトに使われている電鋳ニッケル基層のビッカ−ス硬度(Hv)は450以下に抑えられている。実際に、実機の耐久特性に満足できる電鋳ニッケル基層のビッカ−ス硬度はHv300〜400である。こういったビッカ−ス硬度を持つニッケル基材は直接に摺動面に接触させる場合には、一般的に電鋳ニッケル基材が磨耗され、定着器がトルクアップの現象を起こってしまう。
【0048】
そこで、定着ベルト内周面側あるいは摺動層のベルトガイドと接触する摺動面側には、像加熱定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減を図るうえで摺動層を設けることが好ましい。従来の設計では、摺動層としてポリイミド樹脂をはじめとするいわゆる樹脂系材料が採用されている。
図5に示すように、ポリイミド膜の磨耗量は耐久性を持つ電鋳ニッケル基層の五分の一である。しかし、ポリイミドの熱伝導度が基材であるニッケルに比べ約300倍程度小さいという欠点がある。さらに、像加熱定着装置は高速化、フルカラー化へ進めるためには、ニップ部での定着温度、定着圧力を高めなければならない。
【0049】
ポリイミド樹脂に対し、SUS材を定着ベルト基材としたものも提案されている。SUS材は優れた引張強度、熱伝導率などの特性を有する。定着ベルトの基材とするSUS系金属材およびSUS材による定着ベルトが注目されている。比較のため、上記条件下で、SUS系金属材のみの摩擦磨耗特性も検討した。
図5に示すように、SUS304材の磨耗量は耐久特性を持つ電鋳ニッケルに比較しニ分の一であるが、ポリイミド樹脂の磨耗量に比べ、2倍であることをわかった。
【0050】
従って、高速定着ベルトに要求される定着ベルト内周面を構成する摺動材に要求される特性は耐磨耗性、潤滑性および金属材のような優れた熱伝導率、耐熱性などであることがわかる。
そこで、本発明では耐磨耗性、耐酸化性、耐熱性、柔軟性が高く、熱伝導度がニッケルとほぼ同程度ニッケル−鉄合金めっき膜に注目した。電鋳ニッケル品に電気めっき法でニッケル−鉄合金めっき膜を形成し、耐磨耗性の実力を評価した。金属層1に含まれる摺動層とするニッケル−鉄合金層4或は41を形成する手法として電気めっき法が適している。
【0051】
摺動層とするニッケル−鉄合金層4或は41は、電鋳ニッケル基層11をニッケルー鉄合金めっき浴に浸漬させ、電気めっきプロセスにより電鋳ニッケル基層11の内周面に成膜させるものである。本発明のニッケル−鉄合金めっき膜は、電気めっき浴から形成されるものである。
また、電気めっきプロセスによりステンレス母型に摺動層とするニッケル−鉄合金層4或は41を成膜したのち、合金層の外周面上に電鋳ニッケルベルトを成膜しても良い。
【0052】
図5にニッケル電鋳上にニッケル−鉄合金めっき膜を形成したものの摩擦磨耗試験の結果を示す。ニッケル−鉄合金めっき膜は、室温や220℃の高温度でも電鋳ニッケル品やSUS304シート材と比べて、摩耗体積の上昇する割合が小さく、耐磨耗性に優れていることが分かった。
【0053】
Ni−Fe合金めっき浴は一般に硫酸塩浴、スルファミン酸塩浴、塩化物浴のような単純塩浴が用いられる。水酸化第二鉄Fe(OH)3沈殿物の生成を防ぐためには、還元剤(ホルムアルデヒド)や錯化剤(クエン酸ナトリウム)が安定剤として添加される。応力減少剤或は第一光沢剤とするサッカリンナトリウムも添加される。浴中のFe2+濃度、電流密度、攪拌条件などの制御により、異なるFe含有量のNi−Fe合金めっき膜が得られる。
【0054】
また、ニッケル−鉄合金層の摺動面側からの厚み1〜20μmの部分における合金層中の鉄の含量は良好な耐磨耗性、潤滑性、柔軟性を有するために1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、安定的に電気めっき叉は電気鋳造を行うために、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。なお、ニッケル−鉄合金層の元素組成比は蛍光X線定量分析、電子顕微鏡の元素分析(SEM−EDX)又は誘導結合プラズマ発光分光(ICP)のいずれか一種の方法を用いて公知の条件で測定する。
【0055】
摺動層とするニッケル−鉄合金層の厚さとしては、摺動層部材との必要とされる圧力(ニップをかせぐため)によるが、ベルトの片面(内周面)に1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。摺動層があまりに薄いとピンホールやめっき不良によりニッケル面が露出する可能性がある。この場合、耐久時に露出したニッケル面から磨耗が始まる場合がある。逆に摺動層があまりに厚いと定着ベルトの越しが強くなり折れや、必要とするニップ量が得られないことがある。
【0056】
無端状の本発明の定着ベルトと、該定着ベルトの所定部を、それぞれがその内周面側と外周面側から圧接して挟持する一対の圧接部材と、該定着ベルトの所定部を加熱する加熱手段と、を有し、該定着ベルトの内周面は該内周面側に配置された圧接部材に対する摺動面として形成され、かつ該定着ベルトの外周面と該外周面側に配置された圧接部材とによって未定着画像を有する記録材が挿入されるニップ部が構成されている像加熱定着装置を用いることが好ましい。また、加熱手段が、前記定着ベルトの内周面に対して摺動する圧接部材を加熱体とした構成からなることが好ましい。
【0057】
図3は、本発明の定着ベルトを用いた、像加熱定着装置の一例を表す図である。この加熱方式では加熱体としてのセラミックヒータ12と加圧部材としての加圧ローラ30との間に耐熱性ベルト(定着ベルト10)を挟ませてニップ部を形成させ、前記ニップ部の定着ベルト10と加圧ローラ30との間に画像定着すべき未定着トナー画像tを形成担持させた記録材Pを導入してベルトと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータ12の熱を、ベルト10を介して記録材Pに与え、この熱とニップ部の加圧力とで未定着トナー画像tを記録材P面に熱圧定着させる。
【0058】
また、好ましくは、加熱手段が、定着ベルトを発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段からなることが好ましい。
図4は、誘導加熱方式の像加熱定着装置の一例を表す図である。磁性コア17a、17b及び17cは高透磁率の部材であり、励磁コイル18は励磁回路(不図示)から供給される交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生する。金属層1にこの交番磁束が作用することで渦電流が発生し、金属層1が発熱する。その熱が弾性層2及び離型層3を介して定着ベルト10を加熱し、定着ニップ部Nに通紙される記録材Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
【0059】
【実施例】
[参考例1]
金属層1に含まれる電鋳ニッケル基層11として長さ250mm、内径30mm、厚み40μmの電鋳ニッケルベルトを下記のように作製した。電鋳ニッケルベルト基材を作製するためにスルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、塩化ニッケル10g/l、硼酸40g/lなる水溶液浴を作り、次に、3g/lの濃度となるように必要量のピット防止剤(ピットレスS(商品名)、日本化学産業会社製)を加えた後、第一光沢剤としてサッカリン、第二光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオールを適時の組み合わせ(第一光沢剤:第二光沢剤=1:10)で添加した浴を作製した。そして、ステンレス鋼製の母型を陰極として、浴温50℃、電流密度7A/dm2の条件で母型の表面にニッケルを電析させベルトを作製した。そして、弾性層2として300μmシリコーンゴム(GE東芝シリコーン株式会社製)、離型層3として30μmPFAチューブ(グンゼ株式会社製)を各々プライマー(東レダウコーニング株式会社製)を介して積層し、ベルトを作製した。
【0060】
次に、電鋳ニッケル基材11を陰極として、ベルトの端面に電極をつけ、下記実施例記載の条件でニッケル−鉄合金めっき浴に浸漬させ、電鋳ニッケル基材11の内周面にニッケル−鉄合金膜を形成した。
得られたニッケル−鉄合金層4の鉄元素組成は理学株式会社製RIX3000型蛍光X線分析装置を用いて定量分析した。
【0061】
[実施例1]
硫酸ニッケル(140g/l)、硫酸第一鉄(7g/l)、ホウ酸(30g/l)、塩化ナトリウム(25g/l)、応力減少剤とするサッカリンナトリウム(0.3g/l)、ピット防止剤とするラウリル硫酸ナトリウム(0.02g/l)なる水溶液を作り、浴温度40℃、電流密度1.7A/dm2の条件でベルトの内周面に摺動層4であるNi−Fe合金を10μm形成し、図1の定着ベルトを得た。このようにして作製した定着ベルトについて、図3のような像加熱定着装置に装着し、空回転耐久テストを行った。蛍光X線により得られたニッケル−鉄合金膜の鉄含有量は30質量%であることが確認された。
【0062】
[実施例2]
硫酸ニッケル(140g/l)、硫酸第一鉄(4.5g/l)、ホウ酸(30g/l)、塩化ナトリウム(25g/l)、応力減少剤とするサッカリンナトリウム(0.3g/l)、ピット防止剤とするラウリル硫酸ナトリウム(0.02g/l)なる水溶液を作り、浴温度40℃、電流密度1.7A/dm2の条件でベルトの内周面に摺動層4であるNi−Fe合金を10μm形成した。蛍光X線により得られたニッケル−鉄合金膜の鉄含有量は20質量%であることが確認された。
【0063】
[実施例3]
硫酸ニッケル(140g/l)、硫酸第一鉄(3.5g/l)、ホウ酸(30g/l)、塩化ナトリウム(25g/l)、応力減少剤とするサッカリンナトリウム(0.3g/l)、ピット防止剤とするラウリル硫酸ナトリウム(0.02g/l)なる水溶液を作り、浴温度40℃、電流密度1.7A/dm2の条件でベルトの内周面に摺動層4であるNi−Fe合金を10μm形成した。蛍光X線により得られたニッケル−鉄合金膜の鉄含有量は15質量%であることが確認された。
【0064】
[実施例4]
硫酸ニッケル(140g/l)、硫酸第一鉄(2.5g/l)、ホウ酸(30g/l)、塩化ナトリウム(25g/l)、応力減少剤とするサッカリンナトリウム(0.3g/l)、ピット防止剤とするラウリル硫酸ナトリウム(0.02g/l)なる水溶液を作り、浴温度40℃、電流密度1.7A/dm2の条件でベルトの内周面に摺動層4であるNi−Fe合金を10μm形成した。蛍光X線により得られたニッケル−鉄合金膜の鉄含有量は10質量%であることが確認された。
【0065】
[実施例5]
硫酸ニッケル(140g/l)、硫酸第一鉄(1.1g/l)、ホウ酸(30g/l)、塩化ナトリウム(25g/l)、応力減少剤とするサッカリンナトリウム(0.3g/l)、ピット防止剤とするラウリル硫酸ナトリウム(0.02g/l)なる水溶液を作り、浴温度40℃、電流密度1.7A/dm2の条件でベルトの内周面に摺動層4であるNi−Fe合金を10μm形成した。蛍光X線により得られたニッケル−鉄合金膜の鉄含有量は5質量%であることが確認された。
【0066】
[実施例6]
硫酸ニッケル(140g/l)、硫酸第一鉄(0.25g/l)、ホウ酸(30g/l)、塩化ナトリウム(25g/l)、応力減少剤とするサッカリンナトリウム(0.3g/l)、ピット防止剤とするラウリル硫酸ナトリウム(0.02g/l)なる水溶液を作り、浴温度40℃、電流密度8A/dm2の条件でベルトの内周面に摺動層4であるNi−Fe合金を10μm形成した。蛍光X線により得られたニッケル−鉄合金膜の鉄含有量は1質量%であることが確認された。
【0067】
[実施例7〜実施例9]
実施例1、実施例3および実施例5と同じ浴組成で、めっき時間を半分にすることにより、それぞれ鉄含量が同じで膜厚5μmの実施例7、実施例8および実施例9のニッケル−鉄合金膜を形成した。
【0068】
[実施例10〜実施例12]
実施例2、実施例4および実施例6と同じ浴組成で、めっき時間を十分の一にすることにより、それぞれ鉄含量が同じで膜厚1μmの実施例10、実施例11および実施例12のニッケル−鉄合金膜を形成した。
【0069】
「空回転実験」
実施例1〜実施例12で成膜したニッケルー鉄合金層を有する定着ベルトについて空回転実験を行った。
【0070】
まず、実施例1〜実施例5で成膜した膜厚10μm、Fe含有量それぞれ30質量%、20質量%、15質量%、10質量%、5質量%のニッケルー鉄合金層を有する定着ベルトの空回転実験を以下の条件の下で行った。空回転耐久テストは、220℃に温度調節しながら、所定の加圧力で加圧ローラを定着ベルトに押し付け、定着ベルトを加圧ローラに従動回転させた。加圧ローラは、肉厚3mmシリコーン層(GE東芝シリコーン株式会社製)に30μmのPFAチューブ(グンゼ株式会社製)を被覆した外径30mmのゴムローラを用いた。本実施例では、加圧力は200N、定着ニップは8mm×230mmであり、定着ベルトの表面速度は100mm/secとなる条件に定めた。滑り部材と定着ベルト内周面との間にグリース(HP300(商品名)、ダウ コーニング アジア社製)を0.9g加えた。
【0071】
また、定着ベルトを従動回転させるために要した加圧ローラの負荷トルクを測定した。耐久時間5時間、100時間、500時間後のトルク変化を表1に示す。実施例1〜実施例5の定着ベルトは、初期トルクも耐久500時間後のトルクも変化せず良好なことがわかった。
【0072】
実施例6には、膜厚10μmのニッケル−鉄合金層のFe含有量が1質量%であるので、耐久500時間後に定着器のトルクが2.7まで上昇したが、依然としてトルクの値は低かった。初期から通常より多くのグリース1.5gを添加すると、定着器のトルクアップの問題は発生しなかった。
実施例7〜実施例9の定着ベルトのように、ニッケル−鉄合金層の厚みが5μmになっても、定着ベルト内周面の磨耗、トルクアップなどの問題は発生せず、初期トルクも耐久500時間後のトルクも変化せず良好なことがわかった。
【0073】
実施例10及び実施例11はそれぞれ実施例2、実施例4と同じ膜組成を有するが、合金層の厚みが1μmであるので、耐久500時間後に定着器のトルクが2.4までアップしたが、依然としてトルクの値は低かった。また、初期から通常より多くのグリース1.5gを添加すると定着器のトルクアップの問題は発生しなかった。
実施例12のニッケル−鉄合金層のFe含有量が1質量%であり、合金層の厚みが1μmであるので、耐久500時間後に定着器のトルクアップが発生したが、依然としてトルクの値は低かった。また、初期から通常より多くのグリース2gを添加すると定着器のトルクアップの問題は発生しなかった。
【0074】
[比較例1]
金属層1の電鋳ニッケル基層11として内径30mm、厚み50μmの電鋳ニッケルベルトを作製した。その後、弾性層2として300μmシリコーンゴム(GE東芝シリコーン株式会社製)、離型層3として30μmPFAチューブ(グンゼ株式会社製)を各々プライマー(東レダウコーニング株式会社製)を介して積層した。このベルトを実施例1と同様な条件で空回転耐久試験を行った。
【0075】
その結果を表1に示す。実施例1〜実施例12と比べ、初期のトルクが高く、試験10時間には多量のグリース(2g)を添加しても、加圧ローラで回転させることができなくなった。
【0076】
【表1】
Figure 0004344158
【0077】
「実機耐久通紙実験」
さらに、実施例1、5、9、11及び12の定着ベルトを用いた上記定着装置をキヤノン製フルカラーLBP LASER SHOT『LBP−2040』に搭載し、画出して耐久テストを行った。加圧力は200N、定着ニップは8mm×230mmであり、定着温度は200℃、プロセススピードは100mm/secに設定した。実機耐久通紙実験の結果を表2に示す。
【0078】
通常のグリース0.9g添加条件の下で、実施例1、実施例5、実施例9の定着ベルトを用いたものはトラブルなく10万枚画出し耐久テストを終了した。実施例11の定着ベルトを用いたものは初期から通常より多くのグリースとして1.5gを添加することによってトラブルなく10万枚画出し耐久テスト終了した。実施例12の定着ベルトを用いたものは初期から通常より多くのグリースとして2.0gを添加することによって10万枚画出し耐久テスト終了した。また、この際、定着性に問題はなく良好であった。
【0079】
【表2】
Figure 0004344158
【0080】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明により、電鋳ニッケルベルト基材の金属面(内周面)に適正なニッケルー鉄合金摺動層を形成することで、優れた耐酸化性、耐磨耗性、潤滑性、柔軟性および良好な耐久性、定着性を持つ高品質な定着ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の定着ベルトの層構成模型図の一例である。
【図2】本発明の定着ベルトの層構成摸型図の一例である。
【図3】像加熱装置の概略構成図の一例である。
【図4】像加熱装置の概略構成図の一例である。
【図5】磨耗試験の結果を示す。
【符号の説明】
1 金属層
2 弾性層
3 離型層
4 合金層(摺動層)
10、10’ 定着ベルト
11 電鋳ニッケル
12 セラミックヒータ
12b 発熱層
12c ガラスやフッ素樹脂等の保護層
16 ベルトガイド
16a、16b ベルトガイド部材
17a、17b、17c 磁性コア
18 励磁コイル
19 絶縁部材
22 加圧用剛性ステイ
26 温度検知素子(サーミスタ)
30 加圧部材(加圧ローラ)
30a、30b シリコーンゴム等の弾性層
40 摺動板
41 合金
N 定着ニップ部
t トナー画像
P 記録材
100 像加熱定着装置

Claims (6)

  1. 少なくとも、離型層と該離型層上に設けられた金属層とを有し、該金属層の該離型層と反対側の面が摺動面である定着ベルトにおいて、
    前記金属層は、唯一の金属成分としてニッケルを含むニッケル電鋳層と、該ニッケル電鋳層の表面に形成してなる、ニッケル−鉄合金からなる合金層とからなり、
    前記摺動面が、前記合金層により形成されており、前記合金層中の鉄の含量は1質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする定着ベルト。
  2. 前記金属層中の前記合金層は、その膜厚方向の鉄の含有量が、内周面である摺動面から外周方向に低減する層構成を持つことを特徴とする請求項1に記載の定着ベルト。
  3. 前記離型層と前記金属層との間に弾性層を有する請求項1又は2に記載の定着ベルト。
  4. 前記弾性層がシリコーンゴム、フッ素ゴム及びフルオロシリコーンゴムからなる群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項3に記載の定着ベルト。
  5. 無端状の定着ベルトと、該定着ベルトの所定部を、それぞれがその内周面側と外周面側から圧接して挟持する一対の圧接部材と、該定着ベルトの所定部を加熱する加熱手段と、を有し、
    該定着ベルトの内周面は該内周面側に配置された圧接部材に対する摺動面として形成され、かつ該定着ベルトの外周面と該外周面側に配置された圧接部材とによって未定着画像を有する記録材が挿入されるニップ部が構成されている像加熱定着装置であって、
    該定着ベルトは請求項1〜4の何れかに記載の定着ベルトであることを特徴とする像加熱定着装置。
  6. 前記加熱手段が、定着ベルトを発熱させるための磁束を発生する磁束発生手段からなることを特徴とする請求項5に記載の像加熱定着装置。
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