JP4344189B2 - 定着ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真装置・静電記録装置等の画像形成装置に用いられる定着ベルトに関するものである。
画像形成装置において、電子写真プロセス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の画像形成プロセス手段部で記録材(転写材シート・エレクトロファックスシート・静電記録紙・OHPシート・印刷用紙・フォーマット紙等)に転写方式或いは直接方式で形成担持させた目的の画像情報の未定着画像(トナー画像)を記録材面に永久固着画像として加熱定着させる定着装置としては、熱ローラ方式の装置が広く用いられていた。これはローラ内にハロゲンヒータ等の熱源を用いるものが一般的である。
一方、近年、加熱方式としては、セラミックヒータを熱源として小熱容量の樹脂ベルト或いは金属ベルトを加熱するものが広く提案、実施されている。すなわち、加熱方式では一般に、加熱体としてのセラミックヒータと加圧部材としての加圧ローラとの間に耐熱性ベルト(定着ベルト)を挟ませてニップ部を形成させ、前記ニップ部の定着ベルトと加圧ローラとの間に画像定着すべき未定着トナー画像を形成担持させた記録材を導入してベルトと一緒に挟持搬送させる事で、ニップ部においてセラミックヒータの熱を、ベルトを介して記録材に与え、この熱とニップ部の加圧力とで未定着トナー画像を被記録材面に熱圧定着させる。
このベルト加熱方式の定着装置は、ベルトとして低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができる。すなわち、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすればよく、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイックスタート性)、スタンバイ時の消費電力も大幅に小さい(省電力)等の利点がある。図4にベルト加熱方式の像加熱定着装置の一構成例を示す。この加熱方式では一般に、加熱体としてのセラミックヒータ12と加圧部材としての加圧ローラ30との間に耐熱性ベルト(定着ベルト10)を挟ませてニップ部を形成させ、前記ニップ部の定着ベルトと加圧ローラとの間に画像定着すべき未定着トナー画像tを形成担持させた記録材Pを導入してベルトと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータ12の熱を、ベルト10を介して記録材Pに与え、この熱とニップ部の加圧力とで未定着トナー画像を記録材Pに熱圧定着させる。
この様なベルト加熱方式に使用されるベルトとしては耐熱樹脂等が用いられ、特に耐熱性、強度に優れたポリイミド樹脂が用いられている。しかしながら、更に機械を高速化、高耐久化した場合、樹脂フィルムでは強度が不十分な場合があった。このことから、強度に優れた金属、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミニウム等を基層とするベルトを用いることが提案されている。
ベルト加熱方式の定着装置における定着ベルトの駆動方法としては、ベルト内面を案内するフィルムガイドと加圧ローラとで圧接されたフィルムを加圧ローラの回転駆動によって従動回転させる方法(加圧ローラ駆動方式)や、逆に駆動ローラとテンションローラによって張架された無端ベルトの駆動によって加圧ローラを従動回転させる方法等がある。
金属ベルトを用いた定着ベルトとしては、特許文献2にはヒータ面接触部の表面粗さが0.5μm未満で、40μm前後の厚みのニッケル製定着ベルトを用いたものが、特許文献3には外周面に離型性を有するコーティング層を有し、内周面には樹脂層を有する10〜35μm厚みのニッケル製定着ベルトが例示されている。
また、特許文献1では、金属ベルトを利用して、これを電磁誘導による渦電流で自己発熱させる誘導加熱方式も開示されている。すなわち、磁束によりベルト自身あるいはベルトに近接させた導電性部材に渦電流を発生させ、ジュール熱によって発熱させる加熱装置が提案されている。この電磁誘導加熱方式は、発熱域をより被加熱体に近くすることができるため、消費エネルギーの効率アップが達成できる。図3に示した構成の定着ベルトを用いた場合の構成例を示す。磁性コア17a、17b及び17cは高透磁率の部材であり、励磁コイル18は励磁回路(不図示)から供給される交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生する。金属層1にこの交番磁束が作用することで渦電流が発生し、金属層1が発熱する。その熱が弾性層2及び離型層3を介して定着ベルト10を加熱し、定着ニップ部Nに通紙される記録材Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
また、図6に図5の像加熱装置の磁場発生手段模型図を示す。図5の磁場発生手段は、磁性コア17a、励磁回路27に接続した給電部18a及び18b並びに励磁コイル18からなる。励磁コイル18は励磁回路27から給電部18a及び18bを通して供給される交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生する。
このように、電子写真用像・静電記録装置等に画像形成装置に用いられる定着ベルト部材には一般にシームレスのベルト基材が使用されており、ニッケル材からなるシームレスベルト基材は、一般にスルファミン酸ニッケルやワット浴等による電気鋳造法を用いて製造される。
この電気鋳造法では、所要形状の母型が使用され、その母型の外周上に電気鋳造成膜が行われた後、母型から引き抜かれてシームレスベルト基材が製造される。
また、2層以上積層した構造の金属ベルトの例としては、特許文献4に光沢剤を添加した浴から形成した内層に無光沢電着層を積層した例が示されている。しかしこれは、電鋳面にシボを形成するのと、内層の応力を圧縮応力にするのが目的である。また、特許文献5には、内側表層部がニッケルで外側表層部が鉄−ニッケル合金である例が示されている。しかし、この様に55〜65%と鉄を多量に含んだ合金では、膜自体の内部応力が大きく、応力減少剤無しでは膜にする事が難しい場合があった。また、応力減少剤を添加すると応力減少剤中のイオウ化合物の影響で高温時の耐久性に欠け、定着ベルトへの応用は困難である場合があった。また、この電鋳は線膨張率を調整して、母型からの離型としわの発生を抑える事を目的としている。
特開平7−114276号公報 特開平7−13448号公報 特開平6−222695号公報 特開平5−17892号公報 特開平6−75489号公報
従来、一般的な電鋳ニッケルでは微小な結晶組織を得て材料の強度と靭性の向上を図るため、イオウが含まれる一次光沢剤を添加していた。この場合、結晶構造は(111)面優先成長である。この一次光沢剤の添加によって表面の光沢性・硬度等が確保され、装飾用あるいは摺動面に利用されてきた。しかし、このような一次光沢剤を電鋳時に多量に用いると、一次光沢剤の分解物であるイオウがめっき層に多量に取り込まれ、電鋳製品を高温、例えば200℃以上に加熱すると、イオウがニッケル粒界へ析出し、ニッケル粒界では薄い脆性イオウ層が形成されてしまう恐れがある。このようなニッケル粒界が形成されると、定着ベルトのような高温状態で繰り返し応力がかかる条件下ではニッケル粒界が弱くなり、ニッケル粒界でクラックが発生し、定着ベルトが早期に破断してしまう場合があった。
そこで、電鋳の際に使用する一次光沢剤添加量を減らすと、このような問題が起こらず、定着ベルトに高温耐久性を付与することができる。この場合、電鋳ニッケルベルトの結晶構造は(200)面優先成長であることが分って来ている。しかし、このベルトは膜中のイオウの含有量が低く、結晶粒径が比較的大きめで、硬度がビッカース硬度400(荷重:100g)以下と低く、ベルト材料の電鋳ニッケル自体の強度が弱い場合があり、その取り扱いに注意が必要であった。また、強度が弱いことにより、特に両端部等に亀裂・破断等が発生して長期間の耐熱耐久性及び引張破壊強度を維持する事が難しい場合があった。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決する為になされたものであり、引張強度に優れる硬度の高いニッケル電鋳層と高温耐久性に優れるニッケル電鋳層を積層することにより、ニッケル材からなるシームレスべルトの機械的強度と高温耐久性の両立を図ることを課題とする。
本発明は、上記課題を達成するために、
(1)少なくとも離型層と、該離型層上に設けられた金属層と、を有する定着ベルトであって、
該金属層は、少なくとも3層のニッケル電鋳膜を積層して形成されてなり、互いに隣接するニッケル電鋳膜は、結晶配向比I(200)/I(111)が異なっており、かつ、該3層のニッケル電鋳膜のうちの2層は、結晶配向比I(200)/I(111)が同じであることを特徴とする定着ベルト。
(2)前記金属層は、結晶配向比I(200)/I(111)が低いニッケル電鋳膜を、該ニッケル電鋳膜よりも結晶配向比I(200)/I(111)が高い2層のニッケル電鋳膜で挟むように積層されている3層のニッケル電鋳膜からなる上記(1)に記載の定着ベルト。
(3)前記結晶配向比I(200)/I(111)の低いニッケル電鋳膜の結晶配向比が5であり、前記結晶配向比I(200)/I(111)の高いニッケル電鋳膜の結晶配向比が40である上記(2)に記載の定着ベルト。

なお、本明細書記載のビッカース硬度とは全て荷重100gでの測定値を表す。
本発明では、電鋳ベルト基材が少なくとも結晶構造の異なる2種類以上の層で積層されることにより、良好な耐久性、定着性を持つ高品質な定着ベルトを提供することができる。
本発明の定着ベルトは、少なくとも離型層とニッケル電鋳からなる金属層とを有し、金属層が結晶構造の異なる2種類以上の層で積層されている。そして、上記したような層構成とすることにより、高い機械的強度と高温耐久性を有する定着ベルトを得ることができる。「結晶構造が異なる層」とは対象となる層の結晶配向比I(200)/I(111)が異なる値を示すことを表す。
本発明の定着ベルトの有する金属層は、結晶構造の異なる層の2以上を含む多層積層構造を有し、同じ結晶構造の層の2以上を含むものであってもよい。例えば、結晶構造の異なる2つの層(第1の層及び第2の層)を用いる場合には、この第1の層及び第2の層の少なくとも一方を2以上用い、かつ第1の層と第2の層が互いに隣接して積層されるようにして金属層を構成することができる。あるいは、結晶構造の異なる3つの層(第1の層〜第3の層)を用いる場合には、第1の層〜第3の層の少なくとも1層を2以上用い、異なる結晶構造の層が互いに隣接して積層されるようにして金属層を構成することができる。
更に、結晶構造の異なる2以上の層には、ビッカース硬度が異なる2以上の層が含まれていることが好ましく、ビッカース硬度が400未満の層とビッカース硬度が400以上の層との組合せを含んでいることがより好ましい。なお、ビッカース硬度が400未満の層を複数用いる場合には、複数の層のビッカース硬度は同一あるいは同程度でもよく、また、ビッカース硬度が異なる層の2以上が含まれていてもよい。ビッカース硬度が400以上の層を複数用いる場合も同様である。
ビッカース硬度が異なる層を積層することで、金属層の機械的強度及び高温耐久性の調和の取れた定着ベルトとすることができる。図5に定着装置の要部横断模型図を示す。ここで、ニッケル電鋳とは電鋳プロセスにより形成したニッケル又はその合金のことをいう。本発明の(200)面優先成長とは母型表面に平行方向の(200)面に優先的に結晶成長することである。結晶配向比I(200)/I(111)とは(200)と(111)結晶面のX線回折強度比率I(200)/I(111)で定義される。なお、(200)面のd値は1.7619Åであり(111)面のd値は2.0345Åである。
従来、一般的な電鋳ニッケルでは結晶構造は(111)面優先成長となっている。これによって表面の光沢性・硬度等が確保され、装飾用あるいは摺動面に利用されてきた。それに対し、最近の研究で高温耐久性のある電鋳ニッケルベルトは結晶構造(200)面優先成長であることが分って来ている。
これは以下の原理による。一般的に小さい結晶組織を得るために通常、電鋳時に応力減少剤とするイオウが含まれる一次光沢剤を添加する。一次光沢剤を添加すると陰極表面(母型)に生成するイオウ・ニッケル化合物は微小粒子であるため、結晶粒径は約1/100以下となり、電鋳製品に光沢性を付与することができると共に、材料の強度が向上し材料強度と靭性が両立できる。また、この場合、結晶構造は(111)面優先成長となる。しかしながら、このように一次光沢剤を用いると一次光沢剤の分解物であるイオウがめっき層に多量に取り込まれ、電鋳製品を高温、例えば200℃以上に加熱すると、イオウがニッケル粒界へ析出し、ニッケル粒界では薄い脆性イオウ層が形成されてしまう可能性がある。定着ベルトのような高温状態で繰り返し応力がかかる条件下ではニッケル粒界が弱くなり、ニッケル粒界でクラックが発生し、定着ベルトが早期に破断してしまう場合があった。しかもこの場合、電鋳ニッケルの結晶構造は微結晶になりやすく、ベルトの柔軟性に関しても問題が生じる場合があった。
このため、本発明者が検討した結果、電鋳時の一次光沢剤添加量を減らすと、金属層は高温耐久性を示すと共に結晶構造は(200)面優先成長となることが分かった。このように、(200)面優先成長の電鋳ニッケルの高温耐久性が(111)面優先成長の電鋳ニッケルの高温耐久性よりも優れる理由は、(111)面優先成長の電鋳ニッケルでは、電解浴中の光沢剤に起因するイオウや有機物等が、ニッケルの結晶成長とともに共析しない。このため、定着ベルトとして高温で長時間使用した場合でも、ニッケル粒界のクラックが発生せず、高温耐久性が良好となる。
しかし、(200)面優先成長の定着ベルトは、一次光沢剤量の添加量を少なくしているため、膜中のイオウの含有量が低く、結晶粒径が比較的大きくなる。このため、硬度がビッカース硬度400(荷重:100g)以下と低く、ベルト材料の電鋳ニッケル自体の強度が弱い場合があり、その取り扱いに注意が必要であった。また、強度が弱いことにより、特に両端部等に亀裂・破断等が発生して長期間の耐熱耐久性を維持する事が難しい場合があった。
以下に、結晶が優先成長する面によって材料強度が異なる例を示す。電鋳液としてスルファミン酸ニッケル系を用い、一例を示すと、強度を表す指標として、引張破壊強度を示すが、(111)面優先成長の結晶配向比I(200)/I(111)が1である電鋳ニッケルは、当方の実験では、その硬度はHv500(荷重:100g)以上で、引張破壊強度1500MPa以上を示すのに対し、(200)面優先成長の結晶配向比I(200)/I(111)が40である電鋳ニッケルは、せいぜい硬度はHv350(荷重:100g)で、引張破壊強度1050MPa程度である。
さらに、当方の研究で引張強度と硬度の間には相関関係が見られ、単位は違うが、硬度のほぼ3倍の値の引張破壊強度を示すことがわかっている。つまり、ビッカース硬度Hv350(荷重:100g)のベルトは、上記のように、引張破壊強度1050MPa前後の値を示す。また、結晶配向比I(200)/I(111)と硬度は図2の様に相反する関係にあり、従来のベルト作成方法では、引張破壊強度と高温耐久性両方を確保することは困難であった。ここで、ビッカース硬度はJIS Z2244の方法によって試験サンプル(形状 平板、サイズ10mm、膜厚30〜50μm)を調製して測定した。
本発明の様に引張強度に優れる硬度の高いニッケル電鋳層と高温耐久性に優れるニッケル電鋳層を積層することにより、充分な高温耐久性を有し、かつ引張破壊強度が強く取り扱い性に優れる、ニッケル電鋳ベルトを供給可能となる。
引張破壊強度は、JIS(JIS番号 Z2241)の試験法にのっとりアレイ形状のサンプルをニッケル電鋳から切出し、引張試験機よりその強度を求めた。ビッカース硬度に関しては、AKASHI製微小硬度計によりその硬度を求めた。
以下、本発明の詳細を説明する。
(1)定着ベルト10
本発明の定着ベルトについて説明する。
図3は定着ベルト10の層構成模型図の一例である。定着ベルト10は、基層となるニッケル電鋳無端ベルトからなる金属層1と、その外面に積層した弾性層2と、さらにその外面に積層した離型層3と、金属層1の内面に積層した摺動層4との複合構造を有する。定着ベルト10において、摺動層4が内面側(ベルトガイド面側)であり、離型層3が外面側(加圧ローラ面側)である。金属層1と弾性層2との間、弾性層2と離型層3との間、あるいは金属層1と摺動層4との間には、接着のためにプライマー層(不図示)を設けてもよい。プライマー層はシリコーン系、エポキシ系、ポリアミドイミド系等の公知のものを使用すればよく、その厚さは、通常、1〜10μm程度である。また、金属層1に弾性層2を形成せず、金属層1に離型層3を直接形成しても良い。特に、記録材上のトナーのり量が少なくトナー層の凹凸が比較的小さいモノクロ画像の加熱定着用の場合は、このような弾性層を省略した形態のものとすることができる。
この定着ベルトを電磁誘導加熱方式に用いた場合、ニッケル電鋳無端ベルトからなる金属層1が電磁誘導発熱性を示す発熱層として機能する。後述するが、金属層1に交番磁束が作用することで金属層1に渦電流が発生し、金属層1が発熱する。その熱が弾性層2・離型層3を介して定着ベルト10を加熱し、定着ニップ部Nに通紙される記録材を加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。また、本発明の定着ベルト10は、セラミックヒータを用いたベルト加熱方式に用いてもよい。
a.金属層1
金属層1はステンレス材等の円筒状金型を電鋳浴に浸漬させ、金型の表面或は裏面に電鋳プロセスにより成長させたニッケル又はニッケル合金からなる。ニッケル合金としては、ニッケル−鉄、ニッケル−コバルト、ニッケル−マンガン、ニッケル−モリブデンあるいはニッケル−タングステン等を用いることが好ましい。
本発明においては、金属層は結晶構造の異なる2以上の層を含む多層構造とし、例えばステンレス鋼製などの母型を陰極として、電鋳プロセスにより製造される。この場合の電解浴としては、例えばスルファミン酸系などの公知のニッケル電解浴を用いることができ、pH調整剤、ピット防止剤、光沢剤などの添加剤を適宜加えてもよい。例えば、スルファミン酸ニッケルが300〜450g/l、塩化ニッケルが0〜30g/lおよびホウ酸が30〜45g/lからなるニッケル電解液が挙げられる。そして、添加する光沢剤濃度、電解浴温度、陰極電流密度などを制御することによって、所望の特性を有したニッケルまたはニッケル合金からなるニッケル電鋳ベルトが得られる。電鋳プロセスに用いる電解浴によっても異なるが、通常、電解浴温度45〜60℃程度、陰極電流密度1〜20A/dm2程度で行なうことが好ましい。添加する光沢剤はサッカリン、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等含む応力減少剤・一次光沢剤、2−ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ジエチルトリアミン等含む二次光沢剤と呼ばれる添加剤等が加えられる。
次に積層の方法に関して述べる。層の積層に関して、液組成の異なる電鋳槽により順次電鋳して所望の厚さのベルトを得ることも可能である。しかしながら、その方法を用いると、電鋳槽の数が積層したい層の種類だけ必要となること、積層の作業が煩雑になること、積層した層の間に、界面が出来てしまい、その界面からの剥離の可能性があること等の不具合がある。
ここで、本発明の電鋳ニッケルは液温、攪拌方法およびその強度(流量)、電流密度、電流形状(直流・パルス状)などの作業パラメータにより結晶構造(結晶配向性)、硬度を制御する。
一般的に、電鋳ニッケルは、電解液中にサッカリン、ベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ナフタレンスルフォン酸ナトリウム等を含む1次光沢剤(応力減少剤)、2−ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ホルマリン等を含む2次光沢剤を添加し、所望の電鋳ニッケルを得ることが出来る。1次、2次光沢剤は相乗効果があるので単独での効果は明確に出来ないが、膜中に含まれる含有量・含有割合により基本的な結晶構造が決定される。そして、前記の作業パラメータを組み合わせることで最終的な結晶構造(結晶配向性)・硬度を得ることが出来る。
例えば、電鋳浴の液温を高めると、電鋳浴の成分の移動度が増して,拡散層の厚さが減少する。従って多くの成分が陰極に達することが可能となる。電鋳浴の温度を5℃上昇させるだけで、電鋳ニッケル膜中に取り込まれる光沢剤の量が大幅に増加し、結晶構造は微細化し硬度が大きくなり、結晶配向比I(200)/I(111)は小さくなる。
同様に攪拌強度を強めることにより、拡散層の厚さが減少し、電鋳ニッケル膜中に取り込まれる光沢剤の量が増加し、液温を高めたのと同様の効果を得ることが出来る。
また、電流密度を調整することによっても制御可能である。単位時間内に析出する電鋳ニッケルの量は、陰極効率と電流密度に正比例する。一定の攪拌強度および温度において、陰極の電流密度を2倍にすればニッケル電鋳の膜厚は2倍になる。しかし、光沢剤の移動度は増加しないので単位厚さの膜中に取り込まれる光沢剤の量は減少する。それにより、結晶粒径は大きくなり、硬度は低下、結晶配向比I(200)/I(111)は大きくなる。
電流の波形を調整することによっても結晶構造(結晶配向性)、硬度の制御は可能である。特に、矩形状のパルスを添加した場合、通電のON・OFFの時間的長さおよびそのON/OFFの比率により結晶構造を制御可能である。例えば、電流のOFF時に陰極近傍の光沢剤成分が補給される為、電鋳ニッケル膜中に取り込まれる光沢剤の量が増加し、結晶構造は微細化し硬度が大きくなり、結晶配向比I(200)/I(111)は小さくなる。
例えば、スルファミン酸ニッケル液でサッカリン(1次光沢剤)と2−ブチン1,4−ジオール(2次光沢剤)を光沢剤として、噴流を掛けながら、作成した電鋳ニッケルの電流密度による硬度・結晶配向強度比I(200)/I(111)の変化の一例を図2に示す。電流密度を増加させることにより、結晶配向強度比I(200)/I(111)は増加し、硬度は減少していることがわかる。
このことより、電鋳時の膜中の光沢剤含有割合により、結晶構造(結晶配向性)、硬度が決定されていることがわかる。
以上より、電鋳ニッケル析出中に液温、攪拌方法およびその強度(流量)、電流密度、電流の波形などの操作パラメータを制御することで、所望の結晶構造(結晶配向性)、硬度をもった電鋳ニッケルベルトを任意に作成することが可能となり、操作パラメータをニッケル析出中に変化させることで異なる積層構造を持った金属層を形成することができる。また、金属層を構成する各層の構成材料は、上記のように同じ物であっても良いし、異なるものであっても良い。
また、結晶配向性に関しては、理学電気(株)製X線回折装置(RAD−3R型)
により、各配向面回折強度を測定し、それから配向強度比I(200)/I(111)を求めた。
金属層1の厚みは、次の式(1)で表される表皮深さより厚く、10μm以上にする事が好ましい。また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。表皮深さσ[m]は、励磁回路の周波数f[Hz]と透磁率μと固有抵抗ρ[Ωm]で
Figure 0004344189
と表される。これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっており、逆にいうとほとんどのエネルギーはこの深さまでで吸収されている。金属層1があまりに薄いと、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれなくなってきて効率が悪くなってくることがある。また、金属層1があまりに厚いと、剛性が高くなり、また、屈曲性が悪くなって回転体として使用しにくくなることがある。また、セラミックヒータを使用するベルト加熱方式に金属層を有する定着ベルトを用いる場合、金属層の厚みを上記範囲内とすることによって、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させることができる。
それぞれの積層される層の厚みは、特に限定されないが、金属層全体の厚みが50μmの場合、ビッカース硬度400(荷重:100g)以上の層の合計が6.3μm以上39μm以下であることが好ましく、19.5μm以上33μm以下であることがより好ましい。厚みがこれらの範囲内にあることによって、金属層全体が高耐熱性を有し、材料の強度も高く積層の効果が表れる。また、結晶構造の異なる二種類以上の層に、ビッカース硬度が250以上400未満(荷重:100g)の層と、ビッカース硬度が400以上600以下(荷重:100g)の層との組み合わせが含まれており、さらにビッカース硬度(以下、「硬度」と記載する。)400以上600以下(荷重:100g)の層の膜厚(2層以上の場合は多層の合計膜厚)が、金属層全体膜厚の1/8以上3/4以下であるときに本発明の効果をより効果的に発揮し、好ましい。結晶構造の異なる層のうち一方の層のビッカース硬度は250以上400未満であることがより好ましく、300以上380以下であることが更に好ましい。また、他方の層のビッカース硬度は400以上600以下であることがより好ましく、450以上550以下であることが更に好ましい。硬度が異なるこれらの層を積層させることによって、より機械的強度及び高温耐久性の調和の取れた定着ベルトとすることができる。
また、ビッカース硬度が400以上600以下の層の合計膜厚は、金属層全体の膜厚の1/8以上、3/4以下であるのが好ましい。ビッカース硬度が250以上400未満の層の合計膜厚は金属層全体の膜厚よりも、好ましくは1/4以上、7/8以下、より好ましくは3/8以上、5/8以下であるのが良い。金属層全体の膜厚に対して、厚みをこれらの範囲内にすることによって、機械的強度及び高温耐久性の調和の取れた定着ベルトとすることができる。厚みはベルトを軸方向に2分し、軸方向における膜厚をハイデンハイン測定器で10mm間隔で測定する。
また、ベルト全体として式(1)より求められる表皮深さより厚くすることが好ましい。通常100μm以下であり、特に好ましくは、上記の様に10〜50μm程度とすることにより、良好な結果を得る事が出来る。
結晶構造の異なる層の積層の数およびその順番は特に限定されない。図1(a)及び(b)のように「硬度400以上の層/硬度400未満の層」を一組として、作業性や生産性の観点から、通常1〜20組、好ましくは1〜10組程度の範囲で形成することが望ましい。そして、「硬度400以上の層/硬度400未満の層/硬度400以上の層」および「硬度400未満の層/硬度400以上の層/硬度400未満の層」といった奇数層の構成で積層しても良い。さらに、「硬度400以上の層(1)/硬度400以上の層(2)/硬度400未満の層」および「硬度400未満の層(1)/硬度400未満の層(2)/硬度400以上の層」といった形態としても良い。
b.弾性層2
弾性層2は設けても設けなくても良い。弾性層を設けることにより、ニップ部において被加熱像を覆って熱の伝達を確実にするとともに、金属層1の復元力を補って回転・屈曲による疲労を緩和することができる。また、弾性層を付与することにより、定着ベルト離型層表面と記録材上の未定着トナー像の凹凸との密着性を増し、効率よくトナー画像へ熱伝達を行なうことが可能になる。弾性層2を設けた定着ベルトは、特に、未定着トナーののり量が多いカラー画像の加熱定着に適している。
弾性層2の材質としては、特に限定されず、耐熱性がよく、熱伝導率がよいものを選べばよい。弾性層2としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びフルオロシリコーンゴムからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。
弾性体層に使用されるシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等を例示することができる。
なお、必要に応じて、弾性体層には乾式シリカ、湿式シリカ等補強性充填材、炭酸カルシウム、石英紛、珪酸ジルコニウム、クレー(珪酸アルミニウム)、タルク(含水珪酸マグネシウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ベンガラ(酸化鉄)等を弾性体層に含有させてもよい。
弾性層2の厚さは、良好な定着画像品質が得られるので、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では記録材P上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、定着ベルトの加熱面(離型層3)が、記録材の凹凸あるいはトナー層の凹凸の形状に変形できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分とで画像に光沢ムラが発生する。つまり、伝熱量が多い部分は光沢度が高くなり、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。ここで、弾性層2があまりに薄いと、定着ベルトが記録材あるいはトナー層の凹凸形状に変形することができず、画像光沢ムラが発生してしまうことがある。また、弾性層2があまりに厚いと、弾性層の熱抵抗が大きくなりクイックスタートを実現するのが難しくなることがある。
弾性層2の硬度(JIS K 6301(JIS−A))は、画像光沢ムラの発生が十分抑制され、良好な定着画像品質が得られるので、60゜以下が好ましく、45゜以下がより好ましい。
弾性層2の熱伝導率λは2.5×10-1[W/m・K]以上が好ましく、3.3×10-1[W/m・K]以上がより好ましい。また、8.4×10-1[W/m・K]以下が好ましく、6.3×10-1[W/m・K]以下がより好ましい。熱伝導率λがあまりに小さい場合には熱抵抗が大きくなり、定着フィルムの表層(離型層3)における温度上昇が遅くなることがある。熱伝導率λがあまりに大きい場合には、硬度が高くなったり、圧縮永久歪みが悪化したりすることがある。
このような弾性体層は公知の方法、例えば、液状のシリコーンゴム等の材料をブレードコート法等の手段によって金属層上に均一な厚みでコート、加熱硬化する方法、液状のシリコーンゴム等の材料を成形型に注入し加硫硬化する方法;押出成形後に加硫硬化する方法;射出成形後に加硫硬化する方法等で形成すればよい。
c.離型層3
離型層3の材料としては特に限定されず、離型性、耐熱性のよいものを選べばよい。離型層3としては、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、特にPFAが好ましい。なお、必要に応じて離型層にはカーボン、酸化すず等を導電剤等を離型層の10質量%以下で含有させてもよい。
離型層3の厚さは1μm以上が好ましい。また、100μm以下が好ましい。離型層3があまりに薄いと、塗膜の塗りムラで離型性の悪い部分ができたり、耐久性が不足したりすることがある。また、離型層があまりに厚いと、熱伝導が悪化することがあり、特に樹脂系の離型層の場合は硬度が高くなって、良好な熱伝達性や回転・屈曲による疲労の緩和性などの弾性層2の効果を相殺してしまうことがある。
このような離型層は公知の方法、例えば、フッ素樹脂系の場合、フッ素樹脂粉末を分散塗料化したものをコート・乾燥・焼成により、あるいは予めチューブ化した物を被覆・接着する方法で形成すればよく、ゴム系の場合、液状の材料を成形型に注入し加硫硬化する方法;押出成形後に加硫硬化する方法;射出成形後に加硫硬化する方法等で形成すればよい。
また、予め内面プライマー処理されたチューブ、予め表面プライマー処理されたニッケル電鋳ベルトを円筒金型内に装着し、チューブとニッケル電鋳ベルト間隙間に液状シリコーンゴムを注入、加熱することでゴムの硬化及び接着を行う手法を用いれば、弾性層、離型層を同時に形成することも可能である。
d.摺動層4
摺動層4は本発明の必須成分ではないが、本発明の像加熱定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減、作動時の耐摩耗対策を図る上で設ける事が好ましい。摺動層4を設けると、定着ベルトの熱容量を大きくしすぎる事なく、金属層1に発生した熱が定着ベルトの内側に向かわないように断熱できるので、摺動層4が無い場合と比較して記録材P側への熱供給効率が良くなり、消費電力を抑えることもできる。また、立ち上がり時間の短縮を図ることも出来る。
その材質は、特に限定されず、高耐熱性で強度が高く、表面が滑らかに出来るものを選べばよい、摺動層4としては、ポリイミド樹脂等が好ましい。なお、必要に応じて、摺動層には摺動剤としてフッ素樹脂粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等を摺動層に含有させても良い。
摺動層4の厚さとしては5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。摺動層4があまりに薄いと耐久性が不足する事がある。摺動層4があまりに厚いと定着ベルトの熱容量が大きくなり、立ち上がり時間が長くなる事がある。
この様な摺動層は、公知の方法、例えば、液状の材料をコート・乾燥・硬化等の方法、あるいは予めチューブ化したものを貼り付ける方法等で形成すればよい。
金属層1となる長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケル電鋳ベルト基材を下記のように作製した。ニッケル電鋳ベルト基材を作製するためにスルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、塩化ニッケル10g/l、硼酸40g/lなる水溶液浴を作り、次に1g/lとなるようピット防止剤を加えた後、第一光沢剤としてサッカリン(0.04g/l)、第二光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオール(0.4g/l)を適時の組み合わせで添加した浴を作製した。そして、ステンレス鋼製の母型を陰極として、浴温50℃、初期電流密度11A/dm2で電鋳を開始し、目的の全体膜厚50μmに相当する電気量の1/3を流し終わったところで、連続的に速やかに電流密度を7A/dm2まで変化させ、2/3の膜厚まで膜を析出させる。そしてその後、再び電流密度を11A/dm2まで上昇させて、残りの1/3の電鋳膜を析出させた。この電鋳ベルトを分析した結果、3層の積層・結晶構造変化が見られた。電流密度の値から図2により換算して、内面側から第1・3層は、結晶配向比I(200)/I(111)が40前後、硬度約350(荷重:100g)、引張破壊強度1050MPaの析出層が、第2層は、結晶配向比I(200)/I(111)が5前後、硬度約450(荷重:100g)、引張破壊強度1350MPaの析出層が形成されていると考えられる。また、ベルト全体としての引張破断強度は、1170MPaであった。そして、上記で得た電鋳ベルトに、弾性層2として300μmシリコーンゴム、離型層3として30μmPFAチューブを各々プライマーを介して積層し、摺動層4のポリイミド樹脂層の厚みは15μmとなる各定着ベルトを作製した。
このようにして作製した定着ベルトについて、図5のような像加熱定着装置に装着し、空回転耐久テストを行った。空回転耐久テストは、220℃に温度調節しながら、所定の加圧力で加圧ローラを定着ベルトに押し付け、定着ベルトを加圧ローラに従動回転させた。加圧ローラは、心金の外周に肉厚3mmシリコーン層に30μmのPFAチューブを被覆した外径30mmのゴムローラを用いた。本実験例では、加圧力は220N(通常テストの1割増し)、定着ニップは8mm×230mmであり、定着ベルトの表面速度は100mm/secとなる条件に定めた。この結果、本発明の定着ベルトは、耐久500時間後も変形もなく良好であり、端面の破壊・亀裂が見られなかった。また、上記定着装置をキヤノン製フルカラーLBP LASER SHOT『LBP−2040』に搭載し、画出して耐久テストを行った。10万枚画出し耐久テストを行ったが定着性に問題はなく良好であった。
実施例1と電流密度を変化させる割合が異なる以外は、同様に金属層1となる長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケル電鋳ベルトを作製した。今回は全体膜厚の1/10(つまり、5μm)を電流密度7A/dm2で電鋳し、次に全体膜厚の1/10(5μm)を電流密度11A/dm2で電鋳する。この操作を5回繰り返して、10層のニッケル電鋳ベルトを作成した(図1(b))。実施例1と同様に、電流密度7A/dm2で積層した層は、結晶配向比I(200)/I(111)5前後、硬度約450(荷重:100g)、引張破壊強度1350MPaであった。電流密度11A/dm2で積層した層は、結晶配向比I(200)/I(111)40前後、硬度約350(荷重:100g)、引張破壊強度1050MPaの析出層が得られた。また、ベルト全体の引張破断強度としては、1220MPaであった。その後、弾性層2として300μmシリコーンゴム、離型層3として30μmPFAチューブを、各々プライマーを介して積層し、図1(b)のベルトを得た。実施例1と同様に耐久試験を行った。表1に結果を示す。
実施例1と同様に耐久500時間後の変形も端面の破壊・亀裂もなく、良好なことがわかった。また、上記定着装置をキヤノン製フルカラーLBP LASER SHOT『LBP−2040』に搭載し、画出して耐久テストを行った。10万枚画出し耐久テストを行ったが定着性に問題はなく良好であった。
[比較例1]
金属層1として長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケル電鋳ベルトを下記のように作製した。ニッケル電鋳ベルト基材を作製するためにスルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、塩化ニッケル10g/l、硼酸40g/lなる水溶液浴を作り、次に1g/lとなるようピット防止剤を加えた後、第一光沢剤としてサッカリン(0.04g/l)、第二光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオール(0.4g/l)を適時の組み合わせで添加した浴を作製した。そして、ステンレス鋼製の母型を陰極として、浴温50℃、電流密度7A/dm2で電鋳し、膜厚50μmの電鋳ベルト得た。このベルトを分析した結果、結晶配向比I(200)/I(111)5、硬度460(荷重:100g)、引張破壊強度1360MPaのベルトが得られた。その後、弾性層2として300μmシリコーンゴム、離型層3として30μmPFAチューブを、各々プライマーを介して積層した。このベルトを実施例1と同様な条件で空回転耐久試験を行った。
その結果を表1に示す。
Figure 0004344189
実施例1、2と比べ結晶配向比I(200)/I(111)の小さい比較例の定着ベルトは、空回転耐久150時間において、ベルトに割れが見られた。
図1(a)は、本発明の電鋳ニッケル積層方法の一例である。図1(b)は、電鋳ニッケル層の厚み方向の断面を表す図である。 本発明の電鋳ニッケルの電流密度による硬度・配向比の変化の例である。 本発明の定着ベルトの層構成摸型図の一例である。 像加熱装置の概略構成図の一例である。 像加熱装置の概略構成図の一例である 図6像加熱装置の磁場発生手段模型図である。
符号の説明
1 金属層
2 弾性層
3 離型層
4 摺動層
10 定着ベルト
12 セラミックヒータ
12b 発熱層
12c ガラスやフッ素樹脂等の保護層
16a,16b,16e ベルトガイド部材
16c ベルトガイド
17a,17b,17c 磁性コア
18 励磁コイル
18a,18b 給電部
19 絶縁部材
22 加圧用剛性ステイ
26 温度検知素子(サーミスタ)
27 励磁回路
30 加圧部材(加圧ローラ)
30a,30b シリコーンゴム等の弾性層
40 摺動板
M 駆動手段
N 定着ニップ部
t トナー画像
P 被記録材
100 像加熱定着装置

Claims (3)

  1. 少なくとも離型層と、該離型層上に設けられた金属層と、を有する定着ベルトであって、
    該金属層は、少なくとも3層のニッケル電鋳膜を積層して形成されてなり、互いに隣接するニッケル電鋳膜は、結晶配向比I(200)/I(111)が異なっており、かつ、該3層のニッケル電鋳膜のうちの2層は、結晶配向比I(200)/I(111)が同じであることを特徴とする定着ベルト。
  2. 前記金属層は、結晶配向比I(200)/I(111)が低いニッケル電鋳膜を、該ニッケル電鋳膜よりも結晶配向比I(200)/I(111)が高い2層のニッケル電鋳膜で挟むように積層されている3層のニッケル電鋳膜からなる請求項1に記載の定着ベルト。
  3. 前記結晶配向比I(200)/I(111)の低いニッケル電鋳膜の結晶配向比が5であり、前記結晶配向比I(200)/I(111)の高いニッケル電鋳膜の結晶配向比が40である請求項2に記載の定着ベルト。
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