JP5380718B2 - 金属ベルトおよびこれを用いた定着ベルト - Google Patents

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Description

本発明は金属ベルトおよびこれを用いた定着ベルトに関し、エンドレスの金属ベルトおよび複写機やレーザープリンター、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置に用いられる金属ベルトを用いた定着ベルトに関するものである。
エンドレスの金属ベルトを用いる機器のひとつに電子写真方式などの画像形成装置があり、記録媒体上へトナー を加熱定着させる定着装置の定着ベルトとしてエンドレスの金属ベルトが用いられている。
これまでの画像形成装置の定着装置では、加熱ローラと加圧ローラ間に記録媒体を通しトナーを定着させる方式が広く用いられており、例えばローラ内にハロゲンヒータ等の熱源を設置した熱ローラと、対向して設置された加圧ローラとの間に記録媒体を通してトナーを加圧・熱接着して像を固定化するものである。
このような加熱方式を用いると、ヒータ自身の加熱やロールの加熱に時間が掛かるためエネルギー効率が悪く、また待機時間が長くなるという欠点があった。
これに対して新たな定着装置の加熱方式としては熱ローラ以外に、セラミックヒータを熱源として樹脂ベルトや金属ベルトを加熱する方式なども実施されている。このような加熱方式では、セラミックヒータと加圧ローラとの間に定着ベルトを挟ませてニップ部を形成させ、ここに記録媒体を通してしてベルトと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータの熱を、ベルトを介して記録媒体に与え、この熱とニップ部の加圧力とで未定着トナー画像を記録媒体面に熱圧定着させるものである。このような無端状定着ベルトを用いた定着装置はロール(ハロゲンヒーター方式)と比較すると、ベルトの厚みが薄いために素早く加熱できるという利点がある。
このようなベルト加熱方式における素材としては、従来、耐熱樹脂等が多く用いられてきた。耐熱性、強度に優れたポリイミド樹脂がその代表例である。
しかし、このような定着ベルトは回転軸となるローラ間を繰り返し周回するために屈曲耐久性を求められる。
近年、定着装置の印字スピードの高速化や、省エネ、環境影響を考慮した機械の耐久性アップを実現するために、樹脂ベルトでは要求を満たすことが不十分になってきた。
そこで、より強度に優れている金属ベルト、例えばSUS 、ニッケル、などの素材によるベルトが提案されている。
電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着ベルトとしては、画像ムラをなくすために、一般に無端状金属ベルトが基材として使用される。このような表面が平滑で継ぎ目のない金属ベルトを作製する方法として電気鋳造法が挙げられ、ニッケルの無端状ベルト基材を作製するためには、ワット浴やスルファミン酸ニッケル浴等が良く用いられて陰極となる金属製の母型を使用し、その母型の外周面上もしくは内周面上にニッケルの析出皮膜が形成された後、母型からこのニッケル膜を引き抜くことによって無端の金属ベルト基材が製造される。
一方、コピー機の複合化に伴い、コンパクト化、高速加熱化が要求されており、高速加熱化のため、例えばIHヒーター方式が提案されている。例えば図3に示すように、定着ロール1と加圧ロール2とを対向させ、定着ロール1と2つの支持ロール3,3との間に定着ベルト4を巻きかけ、この定着ベルト4の支持ロール3の外周側からIHヒータ5で加熱する一方、加圧ロール2と2つの支持ロール6,6との間に加圧ベルト7を巻きかけて構成してある。
このIHヒーター方式では、セラミックヒーター方式の定着ベルトと比較すると、小径化、薄膜化することができる。
しかし、このようなセラミックヒーターベルトをIH加熱方式で用いた場合、小径・薄膜化により耐屈曲性が高くないという問題点がある。ベルトは定着ロールの回転に伴い、屈曲して回転するので頻繁に屈曲を繰り返す事になり、機械的疲労が生じやすいという問題がある。
このような傾向への対応として特許文献1には、内部圧縮応力がベルト内周側から外周側へ次第に増加するような内部応力勾配を有するベルトが例示されている。
さらに、特許文献2には、結晶配向比I ( 2 0 0 ) / I ( 1 1 1 ) が内周面から外周面に向かう方向に増加し、かつ ビッカース硬度が内周面側から外周面側に向かって減少するベルトが例示されている。
特開平5−230684号公報 特許第3905053号
しかしながら、近年、プリンター等の画像形成装置はさらなる高速化、コンパクト化が進んでおり、画像装置の高速化は、ベルトの回転数アップ、高速回転での確実な接触確保のために大きくニップ部をとり、加圧力を増す等の処置がなされ、ベルトの変形による負担が大きくなるという問題がある。
また、最近、プリンター、ファクシミリ、スキャナー、複写機等は、複合機化されてきているため、スペースが限れていることから定着装置のコンパクト化が進み、ベルトが小径化する傾向にあることから、ベルトに加わる外部応力は増加し、ベルトには、より耐久性が求められるようになるという問題もある。
本発明は、かかる従来技術における課題を解決するためなされたものであり、小径化や変形による負担増大に対しても耐久性を確保することができる金属ベルトを提供しようとするものである。
また、定着装置に用いることでコンパクト化と耐久性を確保することができる金属ベルトを用いた定着ベルトを提供しようとするものである。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1記載の金属ベルトは、ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、前記金属層は鉄を成分とする2層以上の層からなるニッケル合金層で構成され、前記2層以上の各ニッケル合金層は、内周層のニッケル成分比に比べ外周層のニッケル成分比が低いニッケル合金層で構成されていることを特徴とするものである。
本発明の請求項2に記載の金属ベルトを用いた定着ベルトは、前記請求項1に記載の金属ベルトの外周層上に離型層を設けて構成したことを特徴とするものである。
本発明の請求項3に記載の金属ベルトを用いた定着ベルトは、請求項2に記載の構成に加え、前記離型層と前記金属ベルトの外周層との間に弾性層を設けて構成したことを特徴とするものである。
本発明の請求項1記載の金属ベルトによれば、ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、前記金属層は鉄を成分とする2層以上の層からなるニッケル合金層で構成され、前記2層以上の各ニッケル合金層は、内周層のニッケル成分比に比べ外周層のニッケル成分比が低いニッケル合金層で構成されているので、ベルトの内周側の圧縮応力と外周側の引張り応力を緩和することができ、大きな曲率で変形した状態で回転させられる場合でも、内外周でのニッケル成分比(組成)の差によって変形に伴うベルトへの外部応力を緩和させ、金属ベルトの耐久性を向上させることができる。
また、金属層が鉄を成分とするニッケル合金層で構成されているので、金属層のニッケル成分比(組成)の異なる、鉄を有するニッケル合金層によって変形に伴うベルトへの外部応力を確実に緩和させ、金属ベルトの耐久性を向上させることができる。
さらに、ニッケル合金層が内周層のニッケル成分比に比べ外周層のニッケル成分比が低いニッケル合金層で構成されているので、ベルトの内周側の圧縮応力と外周側の引張り応力を緩和することができ、大きな曲率で変形した状態で回転させられる場合でも、内外周でのニッケル成分比(組成)の差によって変形に伴うベルトへの外部応力を緩和させ、この定着ベルトを機器にセッティングし、加圧ロールとの間にニップ部を形成したときの変形に伴うベルトへの外部応力を緩和させることができ、定着ベルトの耐久性を向上させることができる。
本発明の請求項2に記載の金属ベルトを用いた定着ベルトによれば、前記請求項1に記載の金属ベルトの外周層上に離型層を設けて構成したので、記録媒体を確実に剥離させることができ、定着ベルトの耐久性を向上させることができる。
本発明の請求項3に記載の金属ベルトを用いた定着ベルトによれば、前記離型層と前記金属ベルトの外周層との間に弾性層を設けて構成したので、弾性層により、変形に伴うベルトへの外部応力を緩和させることができ、定着ベルトの耐久性を向上させることができる。
本発明の金属ベルトの一実施の形態にかかる横断面図である。 本発明の金属ベルトを用いた定着ベルトの一実施の形態にかかる横断面図である。 本発明の金属ベルトおよび金属ベルトを用いた定着ベルトを用いた定着装置の概略構成図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細を説明する。
本発明における金属ベルトは、ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、金属層がニッケル成分比の異なる2種以上のニッケル合金層で構成されており、例えば、図1に示すように、金属ベルト10が、鉄を成分とする2層のニッケル合金層11,12で構成されている。
この金属ベルト10は、例えば、図1に示すように、金属ベルト10の総厚みをt1とした場合、内周側のニッケル合金層11の層厚みtaは、t1/2とされ、外周側のニッケル合金層11の層厚みtbは、例えばt1/2とされる。
そして、これら2層のニッケル合金層11,12は、合金中のニッケルの成分比を変え、ニッケル成分比の異なる2層で構成してある。
なお、金属ベルト10を構成するニッケル合金層11とニッケル合金層12は、層厚ta、tbは必ずしも同厚みでなくても良く、tb>taやtb<taとしても良いが、例えばtb>taとすることで、金属ベルト10の外周側にかかる引っ張り応力を層厚みを厚くしたtbにより吸収させ、耐久性向上も期待できる。
これら2層のニッケル合金層11,12の異なる2層のニッケル成分比は、例えば、内周側のニッケル合金層11のニッケル成分比を大きく、外周側のニッケル合金層12のニッケル成分比が小さくなる2層構造とされる。
このような内周側のニッケル合金層11のニッケル成分比を大きく、外周側のニッケル合金層12のニッケル成分比を小さくすることで、金属ベルト10の内周側で圧縮応力に耐えうる強度を持ち、金属ベルト10の外周側では、引張り応力に追従するしなやかさを持つ組成構造とすることができ、金属ベルト10や金属ベルト10を用いた定着ベルト20の使用時のベルト10,20に掛かる応力は低減され、ベルト10,20の破損を防ぐことができる。
なお、金属ベルト10のニッケル合金層を2層構造として説明したが、2層構造に限らず2層以上の複層構造としても良く、その場合、更なる耐久性の向上が期待できる。
このような2層のニッケル合金層11,12のニッケル成分比を変えることにより、金属ベルト10の内周側の圧縮応力と金属ベルト10の外周側の引張り応力を緩和することができる。
すなわち、金属ベルト10は、大きな曲率で変形した状態で回転させられる場合、金属ベルト10の内周側と外周側で同一構成・組成(ニッケルの成分比が同一)であると、内外周で受ける異なった応力に対応できず金属ベルト10の破断の原因となるが、内外周でニッケル成分に組成差を設けることで解消することが出来る。
したがって、後述するように、ニッケルの成分比(組成)に差を付けた金属ベルト10を用いて定着ベルト20とした場合には、定着ベルト20を機器にセッティングし、加圧ロールとの間にニップ部を形成したときの変形に伴う定着ベルト20への外部応力を緩和させ、定着ベルトの耐久性を向上させることができる。
このようなニッケル成分比の異なる2層で構成される金属ベルト10のニッケル合金層11,12としては、ニッケル−鉄、ニッケル−コバルト、ニッケル−マンガン、ニッケル−モリブデン、ニッケル−タングステン等のニッケル合金を挙げることができ、特に、合金層の硬度に差ができるニッケル−鉄、ニッケル−コバルト、ニッケル−マンガンの組み合わせが好ましく、中でもニッケル−鉄が最も好ましい。
この2層のニッケル合金層11,12のニッケル成分比は、例えば、ニッケル−鉄合金の場合、内周側のニッケル合金層11では、ニッケル成分が98.10%以上が好ましく、特に99.00%以上がより好ましい。また、外周側のニッケル合金層12では、ニッケルの成分比が97.40%以下が好ましく、特に96.00%以下がより好ましい。
そして、内周側と外周側のニッケル合金層11,12のニッケル成分比の差が大きい方が好ましく、たとえば0.70%〜3.00%の差がある方が好ましい。
ニッケル成分比が異なる金属ベルト10の製造は、例えば、次のような電鋳法により行われる。
SUS等の円筒状の母型を用い、このSUSなどの母型を陰極として、ニッケル電鋳浴、例えば、ワット浴やスルファミン酸浴など公知のニッケル電解浴に浸漬させ、母型の表面に電鋳により2層のニッケル合金層を成長させることで、本発明のニッケル電鋳の金属ベルトが製造される。この電解浴には、pH調整剤、ピット防止剤、光沢剤などの添加剤を適宜加えても良い。
電鋳条件は、電解浴温度は50〜60℃、陰極電流密度は5〜20A/dm2程度で行なうことが好ましい。光沢剤としては一次光沢剤と二次光沢剤を併用することが好ましく、サッカリン、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等を含む応力減少剤及び一次光沢剤、2−ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ジエチルトリアミン等を含む二次光沢剤を用いることが好ましい。
電鋳でのニッケル合金層11,12の成分比、内部応力の制御は、電鋳液の液温、電流密度、電流の印加電圧 、電鋳液中の金属イオン濃度、光沢剤の種類、電鋳液中の光沢剤濃度、pH 、電鋳液中の緩衝剤濃度などを2段階(経時的)に変化させることにより制御可能である。特に、電鋳時の金属イオンの濃度、光沢剤の濃度、電流密度、液温を変化させることにより、ニッケル合金層の金属成分比、内部応力を変化させることが可能となる。
例えば、電鋳法により本願のニッケルの無端状金属ベルト10を作るには、ワット浴やスルファミン酸浴などのニッケル電解液中にサッカリン、ベンゼンスルフホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等を含む1次光沢剤(応力減少剤)や、2−ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ホルマリン等を含む2次光沢剤を添加することによって、得ることが出来る。また、1次、2 次光沢剤の添加量を変化させる、あるいはその含有比率を変えることによりニッケル合金層の内部応力分布や硬度を変化させることができる。
また、電流密度を調整することによって、合金層の成分比や硬度を変化させることができる。さらに結晶構造や内部応力をも変化させることができる。単位時間内に析出する電鋳ニッケルの量は、陰極効率と電流密度に比例する。
例えば、電流密度を5〜20A/dm2の範囲内で、定時間ごとに変えて電鋳を行うことで、ニッケル成分比の異なる層構造の金属ベルト10を作製できる。
なお、ニッケル成分比の異なる2層構造の金属ベルトは、単槽の電鋳槽で電流密度を定時間毎に変える方法だけではなく、各層のニッケル成分比となる条件に電鋳液を調整した電鋳槽を複槽準備し、各ニッケル成分比の合金層を各電鋳槽にて電鋳して作製することもできる。
以上のように、本発明の金属ベルト10によれば、ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、金属層がニッケル成分比の異なる2種以上のニッケル合金層11,12で構成されているので、金属ベルト10の内周側の圧縮応力と外周側の引張り応力を緩和することができ、大きな曲率で変形した状態で回転させられる場合でも、内外周でのニッケル成分比(組成)の差によって変形に伴う金属ベルト10への外部応力を緩和させ、金属ベルト10の耐久性を向上させることができる。
また、本発明の金属ベルト10によれば、金属層が鉄を成分とする2層のニッケル合金層11,12で構成されているので、内外周2層のニッケル成分比(組成)の異なる、鉄を有するニッケル合金層11,12によって変形に伴うベルトへの外部応力を確実に緩和させ、金属ベルトの耐久性を向上させることができる。
さらに、本発明の金属ベルト10によれば、鉄に代えてコバルトまたはマンガンのいずれかを成分とするニッケル合金層で構成した場合にも、これらコバルトまたはマンガンとのニッケル合金層によっても、変形に伴うベルトへの外部応力を確実に緩和させ、金属ベルトの耐久性を向上させることができる。
次に、本発明の金属ベルトを用いた定着ベルトの一実施の形態について説明する。
本発明の金属ベルトを用いた定着ベルトは、図3で説明したように、複写機やレーザープリンター、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置における定着装置の定着ベルトとして使用されるものである。
この定着ベルト20は、例えば、図2に示すように、金属ベルト10の外周層上に離型層21を設けて構成されるが、この実施の形態では、金属ベルト10の外周層上に弾性層22を介して離型層21が設けられて積層状態で構成されている。
この離型層21は、定着ベルト20と記録媒体との離型性を向上するために設けられ、例えば、テトラフルオロエチレン/ パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)を焼成したり、加熱収縮などによる接着で設けられる。
なお、弾性層22は必ずしも必要ではないが、弾性層22を設けることにより硬い金属であるニッケルの金属ベルト10の屈曲性を補って回転による屈曲疲労を緩和するためのものであり、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びフッ素変性シリコーンゴムからなる群から選択された少なくとも一種を含むものが使用される。
また、弾性層22上には、接着剤層23を介して離型層21が設けてあり、例えば、シリコーン系、エポキシ系などの接着剤が使用され、通常接着に必要とされる厚さに塗布される。なお、弾性層22と接着層23との間にプライマー層を設けても良い。
本発明の定着ベルト20の離型層21の材料としては、離型性と耐熱性を兼ね備えたものを選べば良く、特に限定するものではないが、例えば、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂や、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、PFAがより好ましい。
この離型層21の厚さは3μm以上50μm以下が好ましい。離型層21が薄すぎると、離型性の不足や、摩耗による離型層21の耐久性の低下が生じたりすることがある。逆に、離型層21が厚すぎると、定着ベルト20の屈曲性が低下して、離型層21の割れや欠けが生じる危険性がある。
このような離型層21を形成する方法は、例えば、既存のフッ素樹脂塗料をコートして焼成したり、あるいはフッ素樹脂の熱収縮チューブを金属ベルト10に被覆して加熱収縮させて密着させて接着する方法で離型層21を形成することができる。また、金属ベルト10上に、接着剤層を設けて離型層21を形成しても良いし、さらに、金属ベルト10上に、プライマー層と接着剤層を設けて離型層21を形成しても良い。
定着ベルト20の弾性層22は必ずしも必要ではないが、弾性層22としては耐熱性が良く、熱伝導率が良いものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムからなる群から選択されることが好ましく、特にシリコーンゴムが好ましい。
この弾性層22に使用されるシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、やこれらポリシロキサンの共重合体等を挙げられる。また、フッ素ゴムとしてはフッ化ビニリデンゴム、などが挙げられる。
なお、これらのゴムには、必要に応じて、乾式シリカ、湿式シリカ等の補強性添加材、炭酸カルシウム、石英粉、タルク 、クレー 、酸化チタン、ベンガラ、マイカ、カーボンブラック等の添加材を含有させても良い。
弾性層22の厚さは、金属ベルト10の屈曲耐久性を補う目的と、記録媒体への密着性を向上させ良好な画像を得る目的から、5μm以上、500μm以下が使用に当たり好ましい範囲であり、さらに好ましくは、50μm以上、100μm以下の範囲である。この弾性層22はあまりに厚いと、弾性層22の熱抵抗が大きくなり、熱伝導が悪くなるので好ましくない。
また、弾性層22の硬度(ビッカース硬度)は、画像の抜けやカブリの発生を抑制するのに、700以下が好ましく、600以下がより好ましい。
このような弾性層22は、例えば、液状のシリコーンゴム等の材料をロールコータやカーテンコータ、ブレードコータなどの塗工機で金属ベルト10の外周層上に塗布した後、加熱硬化する方法、液状のシリコーンゴム等の材料を注型型に注入し加硫硬化する方法、ミラブルシリコーンゴム等の材料を金属層上に押出成形後に加硫硬化する方法、射出成形後に加硫硬化する方法等で形成することができる。
[実施例1]
ニッケルの電鋳による金属ベルトを用いた定着ベルトを以下のように作製した。
先ず、1:スルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、
2:塩化ニッケル10g/l、
3:硼酸30g/l、
4:クエン酸10.5g/l、からなる水溶液浴を作り、続いて、
5:ピット防止剤としてラウリル硫酸ナトリウムを加えた後、
6:光沢剤としてNSF−H5(日本化学産業社製)、
7:スルファミン酸鉄五水塩10.4g/lを添加し、電鋳浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dmとし、そのまま一定濃度を保持して、12分間電鋳を開始し、12分後、直ちに(断続的に)5A/dmに電流密度を変え、25分間電鋳を行い、長さ250mm、内径34mm、厚み50μm のニッケルの電鋳による金属ベルトを得た。
得られたニッケルの電鋳による金属ベルトを分析したところ、表1に示すように、円筒の内周面から25μmまでの厚さの内周側のニッケル合金層11(図1参照)のNi成分は99.0%であり、Fe成分は1.0%であった。また、金属ベルトの中間から外周面までの外周側のニッケル合金層12の25μm厚みの層(図1参照)のNi成分比は96.0%であり、Fe成分は4.0%であった。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側のニッケル合金層11は1731、外周側のニッケル合金層12は512であった。
なお、結晶配向比は、内周側のニッケル合金層11が0.27、外周側のニッケル合金層12が0.39であった。
こうして得られたニッケルの電鋳による金属ベルトの外周面上に、弾性層として300μmの厚さのシリコーンゴム(GE東芝シリコーン社製)を積層し、この弾性層の上に離型層として厚さ40 μmのPFAチューブを、各々プライマーを介して積層し、定着ベルト20(図2参照)を作製した。
(屈曲耐久試験)
このように作製した定着ベルトについて、屈曲耐久性試験を行うため2軸のローラ間に定着ベルトを巻きかける回転試験装置を用意し、屈曲耐久性試験条件として、50Nの加圧力で加圧ローラを定着ベルトに押し付けた状態で、定着ベルトを加圧ローラに主動回転させた。
なお、定着ベルトの表面速度は100mm/secとし、加圧ローラとして、肉厚3mmのシリコーン層に30μmのPFAチューブを被覆した外径50mmのゴムローラを用いた。
(評価基準)
ニッケルの電鋳による金属ベルトを用いた定着ベルトが、割れや欠け等の破損が生じるまでの時間を定着ベルトの屈曲耐久時間とし、その時間が、
200時間以上 :◎
200〜100時間:○
50 〜100時間:△
50時間未満 :× 、とした。
その結果は、表1に示すように、200時間以上:◎、であった。
[比較例1]
ニッケルの電鋳による金属ベルトを以下のように作製した。
先ず、1:スルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、
2:塩化ニッケル10g/l、
3:硼酸30g/l、からなる水溶液浴を作り、続いて、
4:ピット防止剤としてラウリル硫酸ナトリウムを加えた後、
5:光沢剤としてNSF−H5(日本化学産業社製)を添加し、浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dmで開始し、1分間当たり0.23A/dmの割合で12分間、連続的に電流密度を減少させ、最終的に5A/dmまで変化させて、長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケルの電鋳による金属ベルトを作製した。
この金属ベルトを分析した結果、金属ベルトの内周面から外周面のNi成分比は、99.96%と一定なものであった。なお、結晶配向比が5であった。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側は609、外周側は455であった。
また、この金属ベルトに、実施例1と同様にして、弾性層として厚さ300μmのシリコーンゴム、離型層として厚さ40mのPFAチューブを、各々プライマーを介して積層させ、定着ベルトを作製した。
そして、この定着ベルトについて、実施例1と同様の屈曲耐久性試験を行った。
その結果、表1に示すように、50時間未満:×、であった。
[比較例2]
ニッケルの電鋳による金属ベルトを以下のように作製した。
実施例1同様の電鋳浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dmとし、そのまま一定濃度を保持して50分間、連続的に電鋳を行い、長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケルの電鋳による金属ベルトを作製した。
このニッケルの電鋳による金属ベルトを分析したところ、内周側から外周側までのニッケル合金層のNi成分比は、96.76%、Fe成分は3.24%と一定なものであった。なお、結晶配向比は0.66であった。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側は502、外周側は510であった。
この金属ベルトを用いて、実施例1と同様にして、弾性層として厚さ300μmのシリコーンゴム、離型層として厚さ40μmのPFAチューブを、各々プライマーを介して積層させ、定着ベルトを作製した。
得られたこの定着ベルトについて、実施例1と同様の屈曲耐久性試験を行った。
その結果、表1に示すように、50時間未満:×、であった。
[比較例3]
ニッケル電鋳ベルトを以下のように作製した。
実施例1同様の電鋳浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dmとし、そのまま一定濃度を保持して12分間電鋳を開始し、12分後、断続せずに連続的に5A/dmに電流密度を変え、25分間電鋳を行い、長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケルの電鋳による金属ベルトを作製した。
このニッケルの電鋳による金属ベルトを分析したところ、内周側の合金層のNi成分は98.1%、Fe成分は1.9%であり、外周側の合金層のNi成分比は97.4%、Fe成分は2.6%であった。なお、中間部分については内周面側から外周面側に向けて連続的にNiの成分比が低下していた。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側は1731、外周側は512であった。
また、この金属ベルトを用いて、実施例1と同様にして弾性層として厚さ300μmのシリコーンゴム、離型層として厚さ40μmのPFAチューブを、各々プライマーを介して積層させ、定着ベルトを得た。
そして、この定着ベルトについて、実施例1と同様の屈曲耐久性試験を行った。
その結果は、表1に示すように、50〜100時間:△、であった。
Figure 0005380718
10 金属ベルト
11 ニッケル合金層
12 ニッケル合金層
20 定着ベルト
21 離型層
22 弾性層
23 接着剤層
t1 金属ベルトの厚み
ta 内周側の合金層の厚み
tb 外周側の合金層の厚み
1 定着ロール
2 加圧ロール
3 支持ロール
4 定着ベルト
5 IHコイル
6 支持ロール
7 加圧ベルト

Claims (3)

  1. ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、
    前記金属層は鉄を成分とする2層以上の層からなるニッケル合金層で構成され、前記2層以上の各ニッケル合金層は、内周層のニッケル成分比に比べ外周層のニッケル成分比が低いニッケル合金層で構成されていることを特徴とする金属ベルト。
  2. 前記請求項1に記載の金属ベルトの外周層上に離型層を設けて構成したことを特徴とする金属ベルトを用いた定着ベルト。
  3. 前記離型層と前記金属ベルトの外周層との間に弾性層を設けて構成したことを特徴とする請求項2に記載の金属ベルトを用いた定着ベルト。
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