JP5380718B2 - 金属ベルトおよびこれを用いた定着ベルト - Google Patents
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Description
これまでの画像形成装置の定着装置では、加熱ローラと加圧ローラ間に記録媒体を通しトナーを定着させる方式が広く用いられており、例えばローラ内にハロゲンヒータ等の熱源を設置した熱ローラと、対向して設置された加圧ローラとの間に記録媒体を通してトナーを加圧・熱接着して像を固定化するものである。
このような加熱方式を用いると、ヒータ自身の加熱やロールの加熱に時間が掛かるためエネルギー効率が悪く、また待機時間が長くなるという欠点があった。
しかし、このような定着ベルトは回転軸となるローラ間を繰り返し周回するために屈曲耐久性を求められる。
近年、定着装置の印字スピードの高速化や、省エネ、環境影響を考慮した機械の耐久性アップを実現するために、樹脂ベルトでは要求を満たすことが不十分になってきた。
このIHヒーター方式では、セラミックヒーター方式の定着ベルトと比較すると、小径化、薄膜化することができる。
しかし、このようなセラミックヒーターベルトをIH加熱方式で用いた場合、小径・薄膜化により耐屈曲性が高くないという問題点がある。ベルトは定着ロールの回転に伴い、屈曲して回転するので頻繁に屈曲を繰り返す事になり、機械的疲労が生じやすいという問題がある。
さらに、特許文献2には、結晶配向比I ( 2 0 0 ) / I ( 1 1 1 ) が内周面から外周面に向かう方向に増加し、かつ ビッカース硬度が内周面側から外周面側に向かって減少するベルトが例示されている。
また、定着装置に用いることでコンパクト化と耐久性を確保することができる金属ベルトを用いた定着ベルトを提供しようとするものである。
また、金属層が鉄を成分とするニッケル合金層で構成されているので、金属層のニッケル成分比(組成)の異なる、鉄を有するニッケル合金層によって変形に伴うベルトへの外部応力を確実に緩和させ、金属ベルトの耐久性を向上させることができる。
さらに、ニッケル合金層が内周層のニッケル成分比に比べ外周層のニッケル成分比が低いニッケル合金層で構成されているので、ベルトの内周側の圧縮応力と外周側の引張り応力を緩和することができ、大きな曲率で変形した状態で回転させられる場合でも、内外周でのニッケル成分比(組成)の差によって変形に伴うベルトへの外部応力を緩和させ、この定着ベルトを機器にセッティングし、加圧ロールとの間にニップ部を形成したときの変形に伴うベルトへの外部応力を緩和させることができ、定着ベルトの耐久性を向上させることができる。
本発明における金属ベルトは、ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、金属層がニッケル成分比の異なる2種以上のニッケル合金層で構成されており、例えば、図1に示すように、金属ベルト10が、鉄を成分とする2層のニッケル合金層11,12で構成されている。
そして、これら2層のニッケル合金層11,12は、合金中のニッケルの成分比を変え、ニッケル成分比の異なる2層で構成してある。
なお、金属ベルト10を構成するニッケル合金層11とニッケル合金層12は、層厚ta、tbは必ずしも同厚みでなくても良く、tb>taやtb<taとしても良いが、例えばtb>taとすることで、金属ベルト10の外周側にかかる引っ張り応力を層厚みを厚くしたtbにより吸収させ、耐久性向上も期待できる。
このような内周側のニッケル合金層11のニッケル成分比を大きく、外周側のニッケル合金層12のニッケル成分比を小さくすることで、金属ベルト10の内周側で圧縮応力に耐えうる強度を持ち、金属ベルト10の外周側では、引張り応力に追従するしなやかさを持つ組成構造とすることができ、金属ベルト10や金属ベルト10を用いた定着ベルト20の使用時のベルト10,20に掛かる応力は低減され、ベルト10,20の破損を防ぐことができる。
なお、金属ベルト10のニッケル合金層を2層構造として説明したが、2層構造に限らず2層以上の複層構造としても良く、その場合、更なる耐久性の向上が期待できる。
すなわち、金属ベルト10は、大きな曲率で変形した状態で回転させられる場合、金属ベルト10の内周側と外周側で同一構成・組成(ニッケルの成分比が同一)であると、内外周で受ける異なった応力に対応できず金属ベルト10の破断の原因となるが、内外周でニッケル成分に組成差を設けることで解消することが出来る。
そして、内周側と外周側のニッケル合金層11,12のニッケル成分比の差が大きい方が好ましく、たとえば0.70%〜3.00%の差がある方が好ましい。
SUS等の円筒状の母型を用い、このSUSなどの母型を陰極として、ニッケル電鋳浴、例えば、ワット浴やスルファミン酸浴など公知のニッケル電解浴に浸漬させ、母型の表面に電鋳により2層のニッケル合金層を成長させることで、本発明のニッケル電鋳の金属ベルトが製造される。この電解浴には、pH調整剤、ピット防止剤、光沢剤などの添加剤を適宜加えても良い。
例えば、電鋳法により本願のニッケルの無端状金属ベルト10を作るには、ワット浴やスルファミン酸浴などのニッケル電解液中にサッカリン、ベンゼンスルフホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等を含む1次光沢剤(応力減少剤)や、2−ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ホルマリン等を含む2次光沢剤を添加することによって、得ることが出来る。また、1次、2 次光沢剤の添加量を変化させる、あるいはその含有比率を変えることによりニッケル合金層の内部応力分布や硬度を変化させることができる。
例えば、電流密度を5〜20A/dm2の範囲内で、定時間ごとに変えて電鋳を行うことで、ニッケル成分比の異なる層構造の金属ベルト10を作製できる。
なお、ニッケル成分比の異なる2層構造の金属ベルトは、単槽の電鋳槽で電流密度を定時間毎に変える方法だけではなく、各層のニッケル成分比となる条件に電鋳液を調整した電鋳槽を複槽準備し、各ニッケル成分比の合金層を各電鋳槽にて電鋳して作製することもできる。
本発明の金属ベルトを用いた定着ベルトは、図3で説明したように、複写機やレーザープリンター、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置における定着装置の定着ベルトとして使用されるものである。
なお、弾性層22は必ずしも必要ではないが、弾性層22を設けることにより硬い金属であるニッケルの金属ベルト10の屈曲性を補って回転による屈曲疲労を緩和するためのものであり、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びフッ素変性シリコーンゴムからなる群から選択された少なくとも一種を含むものが使用される。
また、弾性層22上には、接着剤層23を介して離型層21が設けてあり、例えば、シリコーン系、エポキシ系などの接着剤が使用され、通常接着に必要とされる厚さに塗布される。なお、弾性層22と接着層23との間にプライマー層を設けても良い。
この弾性層22に使用されるシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、やこれらポリシロキサンの共重合体等を挙げられる。また、フッ素ゴムとしてはフッ化ビニリデンゴム、などが挙げられる。
なお、これらのゴムには、必要に応じて、乾式シリカ、湿式シリカ等の補強性添加材、炭酸カルシウム、石英粉、タルク 、クレー 、酸化チタン、ベンガラ、マイカ、カーボンブラック等の添加材を含有させても良い。
また、弾性層22の硬度(ビッカース硬度)は、画像の抜けやカブリの発生を抑制するのに、700以下が好ましく、600以下がより好ましい。
ニッケルの電鋳による金属ベルトを用いた定着ベルトを以下のように作製した。
先ず、1:スルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、
2:塩化ニッケル10g/l、
3:硼酸30g/l、
4:クエン酸10.5g/l、からなる水溶液浴を作り、続いて、
5:ピット防止剤としてラウリル硫酸ナトリウムを加えた後、
6:光沢剤としてNSF−H5(日本化学産業社製)、
7:スルファミン酸鉄五水塩10.4g/lを添加し、電鋳浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dm2とし、そのまま一定濃度を保持して、12分間電鋳を開始し、12分後、直ちに(断続的に)5A/dm2に電流密度を変え、25分間電鋳を行い、長さ250mm、内径34mm、厚み50μm のニッケルの電鋳による金属ベルトを得た。
得られたニッケルの電鋳による金属ベルトを分析したところ、表1に示すように、円筒の内周面から25μmまでの厚さの内周側のニッケル合金層11(図1参照)のNi成分は99.0%であり、Fe成分は1.0%であった。また、金属ベルトの中間から外周面までの外周側のニッケル合金層12の25μm厚みの層(図1参照)のNi成分比は96.0%であり、Fe成分は4.0%であった。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側のニッケル合金層11は1731、外周側のニッケル合金層12は512であった。
なお、結晶配向比は、内周側のニッケル合金層11が0.27、外周側のニッケル合金層12が0.39であった。
このように作製した定着ベルトについて、屈曲耐久性試験を行うため2軸のローラ間に定着ベルトを巻きかける回転試験装置を用意し、屈曲耐久性試験条件として、50Nの加圧力で加圧ローラを定着ベルトに押し付けた状態で、定着ベルトを加圧ローラに主動回転させた。
なお、定着ベルトの表面速度は100mm/secとし、加圧ローラとして、肉厚3mmのシリコーン層に30μmのPFAチューブを被覆した外径50mmのゴムローラを用いた。
(評価基準)
ニッケルの電鋳による金属ベルトを用いた定着ベルトが、割れや欠け等の破損が生じるまでの時間を定着ベルトの屈曲耐久時間とし、その時間が、
200時間以上 :◎
200〜100時間:○
50 〜100時間:△
50時間未満 :× 、とした。
その結果は、表1に示すように、200時間以上:◎、であった。
ニッケルの電鋳による金属ベルトを以下のように作製した。
先ず、1:スルファミン酸ニッケル四水塩450g/l、
2:塩化ニッケル10g/l、
3:硼酸30g/l、からなる水溶液浴を作り、続いて、
4:ピット防止剤としてラウリル硫酸ナトリウムを加えた後、
5:光沢剤としてNSF−H5(日本化学産業社製)を添加し、浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dm2で開始し、1分間当たり0.23A/dm2の割合で12分間、連続的に電流密度を減少させ、最終的に5A/dm2まで変化させて、長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケルの電鋳による金属ベルトを作製した。
この金属ベルトを分析した結果、金属ベルトの内周面から外周面のNi成分比は、99.96%と一定なものであった。なお、結晶配向比が5であった。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側は609、外周側は455であった。
そして、この定着ベルトについて、実施例1と同様の屈曲耐久性試験を行った。
その結果、表1に示すように、50時間未満:×、であった。
ニッケルの電鋳による金属ベルトを以下のように作製した。
実施例1同様の電鋳浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dm2とし、そのまま一定濃度を保持して50分間、連続的に電鋳を行い、長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケルの電鋳による金属ベルトを作製した。
このニッケルの電鋳による金属ベルトを分析したところ、内周側から外周側までのニッケル合金層のNi成分比は、96.76%、Fe成分は3.24%と一定なものであった。なお、結晶配向比は0.66であった。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側は502、外周側は510であった。
得られたこの定着ベルトについて、実施例1と同様の屈曲耐久性試験を行った。
その結果、表1に示すように、50時間未満:×、であった。
ニッケル電鋳ベルトを以下のように作製した。
実施例1同様の電鋳浴を作製した。
そして、SUS製の母型を陰極として、母型の外周面上へ浴温50℃±10、初期電流密度10A/dm2とし、そのまま一定濃度を保持して12分間電鋳を開始し、12分後、断続せずに連続的に5A/dm2に電流密度を変え、25分間電鋳を行い、長さ250mm、内径34mm、厚み50μmのニッケルの電鋳による金属ベルトを作製した。
このニッケルの電鋳による金属ベルトを分析したところ、内周側の合金層のNi成分は98.1%、Fe成分は1.9%であり、外周側の合金層のNi成分比は97.4%、Fe成分は2.6%であった。なお、中間部分については内周面側から外周面側に向けて連続的にNiの成分比が低下していた。
また、ビッカース硬度(Hv)を測定したところ、内周側は1731、外周側は512であった。
そして、この定着ベルトについて、実施例1と同様の屈曲耐久性試験を行った。
その結果は、表1に示すように、50〜100時間:△、であった。
11 ニッケル合金層
12 ニッケル合金層
20 定着ベルト
21 離型層
22 弾性層
23 接着剤層
t1 金属ベルトの厚み
ta 内周側の合金層の厚み
tb 外周側の合金層の厚み
1 定着ロール
2 加圧ロール
3 支持ロール
4 定着ベルト
5 IHコイル
6 支持ロール
7 加圧ベルト
Claims (3)
- ニッケルを含有する金属層を有するエンドレスの金属ベルトであって、
前記金属層は鉄を成分とする2層以上の層からなるニッケル合金層で構成され、前記2層以上の各ニッケル合金層は、内周層のニッケル成分比に比べ外周層のニッケル成分比が低いニッケル合金層で構成されていることを特徴とする金属ベルト。 - 前記請求項1に記載の金属ベルトの外周層上に離型層を設けて構成したことを特徴とする金属ベルトを用いた定着ベルト。
- 前記離型層と前記金属ベルトの外周層との間に弾性層を設けて構成したことを特徴とする請求項2に記載の金属ベルトを用いた定着ベルト。
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