JP2002206188A - 電鋳ニッケルベルト、被覆ニッケルベルト、及び被覆ニッケルベルトの製造方法 - Google Patents

電鋳ニッケルベルト、被覆ニッケルベルト、及び被覆ニッケルベルトの製造方法

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JP2002206188A
JP2002206188A JP2001001652A JP2001001652A JP2002206188A JP 2002206188 A JP2002206188 A JP 2002206188A JP 2001001652 A JP2001001652 A JP 2001001652A JP 2001001652 A JP2001001652 A JP 2001001652A JP 2002206188 A JP2002206188 A JP 2002206188A
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nickel belt
layer
belt
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electroformed nickel
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Hideki Kashiwabara
秀樹 柏原
Shinko Yamakawa
真弘 山川
Toshihiko Takiguchi
敏彦 滝口
Yoshitaka Ikeda
吉隆 池田
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Sumitomo Electric Fine Polymer Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱処理や高温条件下での硬度及び強度の低
下が極めて小さく、耐久性が顕著に優れた電鋳ニッケル
ベルトを提供すること。また、該電鋳ニッケルベルトを
基材とする耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケルベル
ト及びその製造方法を提供すること。 【解決手段】 X線回折により測定した(111)面で
のピーク強度に対する(200)面でのピーク強度の比
で表される結晶配向面の強度比が0.6以上である電鋳
ニッケルベルト、並びに該電鋳ニッケルベルトを金属ベ
ルト基材とする被覆ニッケルベルトとその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電鋳(エレクトロ
フォーミング)により形成された耐熱性及び耐久性に優
れた電鋳ニッケルベルトに関する。また、本発明は、該
電鋳ニッケルベルトを無端状金属ベルト基材とし、その
上に、所望により弾性層を介して、離型層が形成された
層構成を有し、電子写真複写機などの定着ベルト等とし
て好適な耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケルベルト
とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式や静電記録方式の複写機、
ファクシミリ、レーザービームプリンタなどの画像形成
装置においては、一般に、感光体表面を一様かつ均一
に帯電する工程、像露光を行って、感光体表面に静電
潜像を形成する工程、静電潜像にトナーを付着させ
て、トナー像を形成する工程、感光体上のトナー像を
転写紙やOHPシートなどの転写材上に転写する工程、
転写材上のトナー像を定着する工程を含む一連の工程
によって、画像を形成している。トナーとしては、結着
樹脂と着色剤とを含有する着色粒子が用いられている。
トナー像の定着は、通常、転写材上のトナー像を加熱加
圧して、トナーを溶融または軟化させて転写材上に固着
させることにより行われている。
【0003】このような画像形成装置において、装置の
各部には、例えば、定着ローラ、加圧ローラ、搬送ロー
ラ、帯電ローラ、転写ローラなどの各種ローラ部材が配
置されており、各工程での機能を分担している。これら
のローラ部材としては、一般に、アルミニウムなどの芯
金上に、直接または弾性層を介して、フッ素樹脂などの
耐熱性樹脂からなる離型層が形成されたものが使用され
ている。
【0004】近年、装置の小型化、省エネルギー化、印
字・複写の高速化などの要求に応えるために、このよう
なローラ部材に代えて、無端状ベルト部材(エンドレス
ベルトまたはチューブともいう)を用いることが提案さ
れている。従来の定着ローラでは、電源を投入した後、
定着ローラ内に内蔵する加熱手段により、その表面を定
着温度にまで加熱するのに比較的長時間を必要とするた
め、複写機などの画像形成装置の使用に待ち時間が生じ
るという問題があった。これに対して、無端状ベルト部
材からなる定着ベルトでは、その内面に接触する加熱手
段を配置することにより、薄い定着ベルトを介するだけ
で、転写材上のトナー像をほぼ直接的に加熱して定着さ
せることができるため、電源投入後の待ち時間をなくす
ことができる。無端状金属ベルト基材を用いた定着ベル
トでは、電磁誘導加熱方式を適用することもできる。
【0005】このような定着ベルトは、一般に、ポリイ
ミド樹脂や金属からなるベルト基材の上に、直接または
弾性層を介して、離型層を形成した構造を有している。
離型層は、多くの場合、フッ素樹脂などの耐熱性と離型
性に優れた耐熱性樹脂からなる耐熱性樹脂層である。耐
熱性樹脂からなる離型層は、弾力性に乏しいため、ベル
ト基材と離型層との間に弾性層を配置して、定着性を向
上させることが多い。ただし、離型層がフッ素ゴム層な
どの弾力性と離型性を兼ね備えたゴム層である場合に
は、中間の弾性層を省略することができる。転写ベル
ト、帯電ベルト、搬送ベルトなどでは、ベルト基材単
独、もしくはベルト基材と離型層からなるベルト部材で
あってもよい。
【0006】このような無端状ベルト部材の金属ベルト
基材として、電鋳により形成された無端状ニッケルベル
トを用いることが知られている。電鋳法では、導電性を
有する母型(電型または鋳型ともいう)表面に、電気メ
ッキまたは無電解メッキにより金属を析出させた後、こ
の金属を母型から剥離して製品とする。母型の材質が金
属の場合には、剥離のための表面処理を施し、非金属の
場合には、メッキを行なうための導電性処理を施す。電
鋳によれば、母型の形状を忠実かつ正確に複写すること
ができ、精度の高い製品を得ることができる。
【0007】無端状の電鋳ニッケルベルトは、例えば、
ステンレス製の円筒状母型を陰極とし、その表面にニッ
ケルメッキ浴を用いて電気メッキを施してニッケルメッ
キ膜を形成し、これを脱型することにより製造すること
ができる。ところが、電鋳ニッケルベルとは、一般に、
耐熱性が不充分である。そのため、電鋳ニッケルベルト
の表面に、フッ素樹脂層などの離型層を形成する際の加
熱処理(例えば、高温でのフッ素樹脂の焼成)によっ
て、硬度及び強度が著しく低下する。また、電鋳ニッケ
ルベルトは、高温条件下での使用により硬度及び強度が
低下する。したがって、このような電鋳ニッケルベルト
を基材とする無端状ベルト部材は、耐熱性及び耐久性に
劣るという問題があった。
【0008】特許第2706432号公報には、0.0
5〜0.6重量%(質量%)のマンガン(Mn)を含むニ
ッケル・マンガン合金から形成されたマイクロビッカー
ス硬度が450〜650の無端状電鋳シートを基材とす
る電子写真用定着ベルトが提案されている。しかし、単
にマンガンを特定量で含有させた電鋳ニッケルベルト
は、場所による硬度のバラツキが生じやすく、これを基
材とする定着ベルトは、回転時に強度の弱い部分から破
壊する現象が生じやすいという問題があった。
【0009】また、該公報には、弾性層と離型層とを有
する定着ベルトの製造方法として、電鋳ニッケルベルト
基材の外周面にプライマーを塗布した後、シリコーンゴ
ム層を設けて、200℃で120分間の熱処理を行い、
次いで、該シリコーンゴム層の上にフッ素ゴムとフッ素
樹脂との混合物層を設けて、280℃で30分間焼き付
ける方法が開示されている。しかし、このような製造方
法では、離型層の焼成温度がシリコーンゴムの耐熱温度
を越えるため、焼成時の加熱処理により下層のシリコー
ンゴム層が劣化しやすい。したがって、無端状電鋳ニッ
ケルベルト基材上に弾性層と離型層とをこの順に形成す
る製造方法では、無端状ニッケルベルト基材の耐熱性を
向上させたとしても、弾性層が劣化しやすく、ベルト部
材の耐久性に悪影響を及ぼす。しかも、この製造方法で
は、シリコーンゴム層を形成した後、その表面を研削し
て形状を整える必要がある。また、フッ素樹脂とフッ素
ゴムとの混合物を形成した後にも、その表面を研磨して
表面平滑性を高める必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、加熱
処理や高温条件下での硬度及び強度の低下が極めて小さ
く、耐久性が顕著に優れた電鋳ニッケルベルトを提供す
ることにある。本発明の他の目的は、該電鋳ニッケルベ
ルトを基材とする耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケ
ルベルト及びその製造方法を提供することにある。
【0011】本発明者らは、前記目的を達成するために
鋭意研究した結果、X線回折による結晶配向面の強度比
が特定の関係式を満足する電鋳ニッケルベルトが優れた
耐熱性と耐久性を示すことを見出した。この電鋳ニッケ
ルベルトを無端状金属ベルト基材として用いることによ
り、耐熱性及び耐久性に優れた被覆ニッケルベルトを得
ることができる。また、電鋳ニッケルベルトを無端状金
属ベルト基材として使用し、離型層を先に形成した後、
弾性層を形成する方法を採用することにより、弾性層の
熱劣化のない被覆ニッケルベルトを製造することができ
る。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至っ
たものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、X線回
折により測定した(111)面でのピーク強度に対する
(200)面でのピーク強度の比で表される結晶配向面
の強度比が式(1) I(200)/I(111)≧0.6 …(1) I(200):X線回折における(200)面でのピーク強
度 I(111):X線回折における(111)面でのピーク強
度 で示される関係を満足することを特徴とする電鋳ニッケ
ルベルトが提供される。
【0013】また、本発明によれば、電鋳ニッケルベル
ト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)
を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆
ニッケルベルトにおいて、電鋳ニッケルベルト基材(A)
が前記の電鋳ニッケルベルトであることを特徴とする被
覆ニッケルベルトが提供される。
【0014】さらに、本発明によれば、電鋳ニッケルベ
ルト基材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層
(B)を介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被
覆ニッケルベルトの製造方法において、〔I〕電鋳ニッ
ケルベルト基材(A)として、前記の電鋳ニッケルベルト
を使用し、かつ、〔II〕下記の工程: (1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、
耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、(2)
所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有する
ゴム組成物を塗布し加硫して、弾性層(B2)を形成する工
程、(3)円筒状金型の中空内に電鋳ニッケルベルト基
材(A)を挿入する工程、及び(4)電鋳ニッケルベルト
基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の内面との
間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、弾性層(B1)を形
成する工程により各層を形成することを特徴とする被覆
ニッケルベルトの製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】1.電鋳ニッケルベルト 本発明の電鋳ニッケルベルトは、母型表面にニッケルメ
ッキ浴を用いて電気メッキを行う電鋳法により形成され
たニッケルベルトであり、通常、無端状のベルトであ
る。本発明の電鋳ニッケルベルトは、X線回折により測
定した(111)面でのピーク強度に対する(200)
面でのピーク強度の比で表される結晶配向面の強度比が
式(1) I(200)/I(111)≧0.6 …(1) I(200):X線回折における(200)面でのピーク強
度 I(111):X線回折における(111)面でのピーク強
度 で示される関係を満足するものである。
【0016】電鋳ニッケルベルトの結晶配向面の強度比
は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.5以
上、特に好ましくは2.5以上である。この強度比の上
限は、通常4.0、好ましくは3.5程度である。多く
の場合、この強度比が好ましくは0.8〜3.0、より
好ましくは1.50〜3.00、特に好ましくは2.5
〜3.00の範囲で良好な結果を得ることができる。
【0017】電鋳ニッケルベルトの結晶配向面の強度比
が小さすぎると、耐熱性が低下したり、耐久性が不充分
となる。電鋳ニッケルベルトについて、X線回折により
結晶構造を解析すると、(111)面でのピーク強度が
大きくなるほど、結晶構造がランダムとなる。一方、
(200)面でのピーク強度が大きくなるほど、層状配
向を示す傾向が強くなる。ニッケルの結晶構造が層状配
向を示すほど、電鋳ニッケルベルトの耐屈曲性が向上
し、耐熱性も良好となり、それによって、高度の耐久性
を達成できるものと推定される。
【0018】前記強度比を大きくする方法としては、電
鋳ニッケルベルト中の不純物量を低減させるとともに、
電鋳時の電流密度を小さくするなどして、緩やかにニッ
ケルの結晶を成長させる方法が挙げられる。緩やかにニ
ッケルの結晶が成長すると、整然と結晶が層状に配向し
て成長し、X線回折により測定した(200)面でのピ
ーク強度が大きくなるものと考えることができる。
【0019】電鋳ニッケルベルトには、通常、ニッケル
メッキ浴の使用成分などに起因する硫黄やコバルト、炭
素などの不純物が含有されている。電鋳ニッケルベルト
の硫黄含有量は、好ましくは0.05質量%以下、より
好ましくは0.03質量%以下、特に好ましくは0.0
2質量%以下である。硫黄含有量が多すぎると、連続的
な加熱条件下で硫黄がニッケルの結晶粒界に析出して、
硬度及び強度の低下を引き起こす。硫黄含有量の下限
は、ゼロ質量%(0.00質量%)であるが、ニッケル
メッキ浴の成分として硫黄含有化合物(例えば、第一種
光沢剤)などを用いると、できるだけ低減した場合で
も、通常は0.01質量%程度になる。硫黄含有量は、
光沢剤などの硫黄含有化合物の使用量を少なくすること
により低減することができる。
【0020】電鋳ニッケルベルトのコバルト(Co)含
有量は、好ましくは0.50質量%以下、より好ましく
は0.30質量%以下、特に好ましくは0.20質量%
以下である。コバルト含有量が多くなるほど、電鋳ニッ
ケルベルト及び被覆ニッケルベルトの耐久性が低下する
傾向を示す。コバルト含有量は、メッキ槽からのニッケ
ルメッキ浴をリザーブタンクに導き、さらに、これをメ
ッキ槽に循環して、電鋳を行い、その際、リザーブタン
ク内で0.1〜0.3A/dm2程度の電流密度で弱電
解処理を行うことにより低減させることができる。この
弱電解処理を行うことにより、ニッケルメッキ浴中のコ
バルト濃度が低減し、それによって、電鋳ニッケルベル
トのコバルト含有量が減少するものと考えられる。コバ
ルト含有量の下限は、通常0.10質量%程度である。
【0021】電鋳ニッケルベルトの炭素含有量は、好ま
しくは0.01〜0.10質量%、より好ましくは0.
01〜0.05質量%である。炭素含有量を上記範囲内
に制御することにより、無端状金属ベルト基材として要
求される水準の硬度を維持しながら、熱老化によって硬
度及び強度が低下しない電鋳ニッケルベルトを容易に得
ることができる。炭素含有量が多すぎると、炭素がニッ
ケルの結晶粒界に析出し、強度低下の原因となりやす
い。炭素含有量が少なすぎると、耐熱性が低下すること
があり、連続的な加熱条件下で硬度と強度が低下する傾
向を示す。
【0022】本発明の電鋳ニッケルベルトのマンガン
(Mn)含有量は、好ましくは0.5質量%以下であ
る。マンガン含有量は、ゼロ質量%(0.00質量%)
でもよいが、硬度を調整するためにマンガンを含有させ
る場合には、硬度と耐熱性とのバランスの観点から、好
ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.
05〜0.10質量%の範囲内に制御することが望まし
い。電鋳ニッケルベルトが少量のマンガンを含有してい
ると、マンガンが硫黄を固溶して結晶粒内に留めて粒界
への析出を防止し、それによって、熱老化による脆化を
抑制すると推定される。マンガン含有量が多すぎると、
電鋳ニッケルベルトが熱老化時に硬く脆くなり、また、
場所による硬度のバラツキが生じやすくなる。
【0023】その他の不純物の含有量は、通常0.01
質量%以下である。このように、本発明では、ニッケル
以外の不純物の含有量をできるだけ小さくすることが望
ましい。しかし、不純物の含有量が少なくなて、ニッケ
ル含有量が100質量%に近くなると、電鋳ニッケルベ
ルトの硬度が低下傾向を示す。電鋳ニッケルベルトの硬
度が低すぎると、柔らかくなりすぎて強度が低下し、破
断が生じやすくなる。一方、不純物の含有量が多すぎる
と、電鋳ニッケルベルトの硬度が高くなりすぎて、脆く
なり、屈曲に対する耐久性が不足する。そのため、前記
の如き不純物の含有量を制御して、電鋳ニッケルベルト
の硬度を好ましい範囲に調整することが望ましい。
【0024】本発明の電鋳ニッケルベルトは、好ましく
は、そのビッカース硬度(VH)が280〜480で、
かつ、230℃で2日間保持後のビッカース硬度の初期
値に対する変化率が10%以下である。ビッカース硬度
(HV)は、より好ましくは300〜450である。ビ
ッカース硬度が低すぎると、金属ベルト基材としての必
要な強度を得ることが難しくなる。ビッカース硬度は、
高くてもよいが、あまり高すぎると、耐熱性及び耐久性
が低下することがある。多くの場合、ビッカース硬度が
300〜400程度で良好な結果を得ることができる。
【0025】本発明の電鋳ニッケルベルトは、耐熱性及
び耐久性に優れており、230℃の雰囲気中で2日間保
持する熱老化試験後のビッカース硬度の初期値に対する
変化率が好ましくは10%以下、より好ましくは6%以
下である。この変化率は、ゼロ%であることが特に好ま
しい。この変化率が大きすぎると、連続的な加熱条件下
で、硬度及び強度が著しく低下する。
【0026】本発明の電鋳ニッケルベルトは、硫酸ニッ
ケルや塩化ニッケルを主成分とするワット浴やスルファ
ミン酸ニッケルを主成分とするスルファミン酸浴などの
ニッケルメッキ浴を用いて、電鋳により形成される。電
鋳は、母型の表面に厚メッキを行ない、これを母型から
剥離して製品を得る方法である。電鋳ニッケルベルトを
得るには、ステンレス、黄銅、アルミニウムなどからな
る円筒を母型とし、その表面にニッケルメッキ浴を用い
てニッケルメッキ膜を形成する。母型がシリコン樹脂や
石膏などの不導体である場合には、黒鉛、銅粉、銀鏡、
スパッタリングなどにより、導電性処理を行なう。金属
母型への電鋳では、ニッケルメッキ膜の剥離を容易にす
るために、母型の表面に酸化膜、化合物膜、黒鉛粉塗布
膜などの剥離膜を形成するなどの剥離処理を行なうこと
が好ましい。
【0027】ニッケルメッキ浴は、一般に、ニッケルイ
オン源、アノード溶解剤、pH緩衝剤、その他の添加剤
からなる。ニッケルイオン源としては、硫酸ニッケル、
塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケルなどが挙げられ
る。アノード溶解剤は、ワット浴の場合には、塩化ニッ
ケルがこの役割を果たしており、この他のニッケル浴の
場合には、塩化アンモニウム、臭化ニッケルなどが用い
られる。ニッケルメッキは、一般に、pH3.0〜6.
2の範囲で行なわれるが、この間の望ましい範囲に調整
するために、ホウ酸、ギ酸、酢酸ニッケルなどのpH緩
衝剤が用いられる。その他の添加剤としては、平滑化、
ピット防止、結晶微細化、残留応力の低減などを目的と
して、例えば、光沢剤、ピット防止剤、内部応力減少剤
などが用いられる。
【0028】本発明では、電鋳ニッケルベルトの硫黄含
有量、コバルト含有量、マンガン含有量、炭素含有量、
ビッカース硬度などを所望の範囲内に制御するために、
ニッケルメッキ浴で使用する各成分の種類や添加量を調
整する。例えば、マンガンを含有させるには、ニッケル
メッキ浴に、硫酸マンガンやスルファミン酸マンガンな
どのマンガン化合物を添加する。硫黄含有量を所望の範
囲内に制御するには、ニッケルイオン源や光沢剤などと
して、硫黄原子を含有しないか、硫黄原子の含有量が少
ない化合物を使用したり、あるいは硫黄含有化合物の使
用量を少なくする。
【0029】炭素含有量を所望の範囲に制御するには、
光沢剤の種類や添加量を調整する方法が好ましい。光沢
剤は、一般に、第一種光沢剤と第二種光沢剤とに分類さ
れ、高光沢を得るために両者が併用されることが多い。
これらのうち、第一種光沢剤は、=C−SO2−の構造
を持つ有機化合物であり、例えば、スルホン酸塩(例え
ば、1,3,6−トリナフタリンスルホン酸ナトリウム
等の芳香族スルホン酸塩)、スルホンイミド(例えば、
サッカリン)、スルホンアミド、スルフィン酸などが用
いられる。これらの中でも、芳香族スルホン酸塩が好ま
しい。
【0030】第二種光沢剤としては、C=O、C=C、
C≡N、C=N、C≡C、N−C=S、N=N、−CH
2−CH−O−等の構造を持つ有機化合物が挙げられ
る。これらの中でも、1,4−ブチンジオールなどのア
ルキンジオールやクマリンなどが代表的なものである。
本発明において、電鋳ニッケルベルトの炭素含有量を所
望の範囲内に制御するには、例えば、ニッケルメッキ浴
へアルキンジオールを添加して、炭素を共析させる方法
が好ましい。炭素含有量は、アルキンジオールの添加量
を調整することにより制御することができる。より具体
的には、第一種光沢剤として、例えば芳香族スルホン酸
塩を使用し、第二種光沢剤として、例えば1,4−ブチ
ンジオールの如きアルキンジオールを用いて、その際、
アルキンジオールの添加量を20〜100ppmの範囲
に調整する方法が挙げられる。
【0031】ニッケルメッキ浴の組成としては、例え
ば、硫酸ニッケル200〜350g/L、塩化ニッケル
20〜50g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の界
面活性剤、適量の光沢剤などを含有するワット浴を挙げ
ることができる。スルファミン酸浴の組成としては、ス
ルファミン酸ニッケル200〜450g/L、塩化ニッ
ケル0〜30g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の
界面活性剤、適量の光沢剤などを含有するものを挙げる
ことができる。マンガンを含有させる場合には、各浴中
に、硫酸マンガンやスルファミン酸マンガンを、好まし
くは150g/L以下、より好ましくは100g/L以
下の範囲で添加することが好ましい。pHは、好ましく
は3.5〜4.5の範囲内に調製する。浴温は、好まし
くは40〜60℃である。電流密度は、通常0.5〜1
5A/dm2、好ましくは1〜10A/dm2である。X
線回折により測定した(111)面でのピーク強度に対
する(200)面でのピーク強度の比で表される結晶配
向面の強度比を大きくしやすくするには、電流密度を1
〜8A/dm2 、さらには、2〜5A/dm2 程度に小
さくして、ニッケルの結晶が層状配向するように緩やか
に成長させることが望ましい。ただし、高濃度浴の場合
には、電流密度を3〜40A/dm2 とすることがあ
る。
【0032】電鋳ニッケルベルトのコバルト含有量を効
率よく低減させるために、ニッケルメッキ浴をリザーブ
タンクに導き、さらに、これをメッキ槽に循環させて、
電鋳を行い、その際、リザーブタンク内で0.1〜0.
3A/dm2程度の電流密度で弱電解処理を行うことが
好ましい。
【0033】本発明の電鋳ニッケルベルトは、通常、無
端状ベルトである。電鋳ニッケルベルトの厚み、幅、内
径などは、用途に応じて適宜定めることができ、特に限
定されないが、厚みは、通常10〜1000μm、好ま
しくは15〜500μm、より好ましくは20〜100
μm程度である。熱伝導性、機械的強度、可撓性などの
バランスの観点から、30〜80μm程度の厚みである
ことが最も好ましい。電子写真複写機の定着ベルトや転
写ベルトなどの用途に適用する場合には、幅を転写紙な
どの転写材の幅に応じて適宜定めることができる。
【0034】本発明の電鋳ニッケルベルトは、それ単独
で金属ベルトとして使用することができるが、定着ベル
ト等の用途に用いる場合には、通常は、その外周面に、
直接またはシリコーンゴム層などの弾性層を介して、フ
ッ素樹脂層などの離型層が形成された被覆ニッケルベル
トとして使用する。
【0035】2.被覆ニッケルベルトの構成 本発明の被覆ニッケルベルトは、電鋳ニッケルベルト基
材(A)上に、直接または少なくとも一層の弾性層(B)を介
して、離型層(C)が形成された被覆ニッケルベルトであ
って、該電鋳ニッケルベルト基材として、前記の特定の
電鋳ニッケルベルトを用いたものである。本発明の被覆
ニッケルベルトの層構成について、図面を参照しながら
説明する。
【0036】図1は、本発明の被覆ニッケルベルトの層
構成の一例を示す断面図であり、電鋳ニッケルベルト基
材1の上に離型層3が形成された層構成を有している。
図2は、本発明の被覆ニッケルベルトの層構成の他の一
例を示す断面図であり、電鋳ニッケルベルト基材1の上
に弾性層2が形成され、該弾性層2の上に離型層3が形
成された層構成を有している。図3は、本発明の被覆ニ
ッケルベルトの他の一例を示す断面図であり、電鋳ニッ
ケルベルト基材1の上に第一弾性層2′及び第二弾性層
2″がこの順に形成され、第二弾性層2″の上に離型層
3が形成されている。ただし、各層の実際の形成工程
は、これらの層構成の順と同じでない場合がある。後述
するように、円筒状金型を用いる被覆ニッケルベルトの
製造方法では、離型層3を形成した後、離型層3と電鋳
ニッケルベルト基材1との間に、第二弾性層2″または
弾性層2を形成することができる。
【0037】弾性層を設ける場合には、通常は一層でよ
いが、必要に応じて二層以上とすることができる。弾性
層を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴ
ムなどの耐熱性に優れたゴム材料であることが好まし
い。また、弾性層を形成する材料として、シリコーンゴ
ムやフッ素ゴムなどのゴム材料にフッ素樹脂を混合した
ゴム組成物を用いることもできる。例えば、図3に示す
層構成の被覆ニッケルベルトにおいて、第一弾性層2′
をシリコーンゴムまたはフッ素ゴムからなるゴム層と
し、第二弾性層2″をゴムとフッ素樹脂との混合物から
なるゴム組成物層とすることができ、それによって、第
一弾性層2′と離型層3(フッ素樹脂層)との間の密着
性を高めることができる。
【0038】弾性層の厚み(二層以上ある場合は、合計
厚み)は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限
定されないが、画像形成装置の定着ベルトなどの用途で
は、通常0.1〜5mm、好ましくは0.5〜3mmで
ある。弾性層が二層以上である場合には、各層の厚みは
任意に定めることができるが、シリコーンゴムやフッ素
ゴムなどの柔軟性を有するゴム層の厚みを30〜70%
程度とすることが好ましい。
【0039】離型層は、通常、フッ素樹脂、ポリイミド
樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの離型性を有する耐熱
性樹脂を用いて形成されるが、所望により、シリコーン
ゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴムとフッ素樹脂と
の混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂との混合物など
の離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層またはゴム組成物
層とすることができる。後者の場合、離型層が弾性を有
するので、弾性層を省略することができる。
【0040】離型層が耐熱性樹脂層である場合、その厚
みは、通常0.1〜150μm、好ましくは1〜100
μm、より好ましくは5〜50μmである。離型層が弾
性を有するゴム層である場合には、通常10μm〜5m
m、好ましくは20μm〜3mm程度である。被覆ニッ
ケルベルトの幅や外径などは、用途に応じて適宜定める
ことができる。
【0041】3.離型層 離型層は、前述した通り、好ましくはフッ素樹脂などの
離型性を有する耐熱性樹脂を用いて形成されるが、所望
により、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素
ゴムとフッ素樹脂との混合物、シリコーンゴムとフッ素
樹脂との混合物などの離型性と弾性とを兼ね備えたゴム
層またはゴム組成物層とすることができる。
【0042】耐熱性樹脂としては、150℃以上の温度
で連続使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、
劣化も実質的に進行しない程度の耐熱性を有する樹脂が
好ましい。本発明の被覆ニッケルベルトが定着ベルトな
どとして高温条件下で使用される場合を想定すると、耐
熱性樹脂は、連続使用可能温度が200℃以上の高度に
耐熱性を有する合成樹脂であることがより好ましい。こ
のような耐熱性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポ
リイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルス
ルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミ
ダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェ
ニレンスルフィド樹脂、ビスマレイミド樹脂などを挙げ
ることができる。これらの中でも、耐熱性及び離型性に
優れる点で、フッ素樹脂が特に好ましい。
【0043】本発明で使用するフッ素樹脂としては、例
えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テト
ラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエー
テル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘ
キサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン
/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリ
クロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン
/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTF
E)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げる
ことができる。
【0044】これらのフッ素樹脂は、それぞれ単独で、
あるいは二種以上を組み合わせて使用することができ
る。被覆ニッケルベルトを定着ベルトや加圧ベルトなど
として用いる場合には、これらのフッ素樹脂の中でも、
耐熱性の観点からPTFE及びPFAが好ましい。溶融
流動性があり、かつ、表面平滑性に優れたフッ素樹脂被
膜が得られやすいことから、PFAが特に好ましい。
【0045】フッ素樹脂は、液状フッ素樹脂塗料として
使用することができるが、成形性や離型性を高める上
で、粉体の形状(粉体塗料)で使用することが好まし
い。フッ素樹脂粉体の平均粒子径は、特に限定されない
が、粉体塗装法により均一な厚みの薄い被膜を形成する
上で、10μm以下であることが好ましい。その下限
は、通常1μm程度である。特に、平均粒子径10μm
以下のPFA粉体を用いることが好ましい。フッ素樹脂
粉体を塗装するには、汎用の各種粉体塗装法を採用する
ことができるが、それらの中でも、粉体を帯電させて塗
布する静電塗装法(静電粉体吹き付け法)を用いること
が、均一で、よく締まった塗着粉体層を形成する上で好
ましい。
【0046】電鋳ニッケルベルト基材の上にフッ素樹脂
を塗装した後、常法に従って焼成する。フッ素樹脂層と
電鋳ニッケルベルトとの間に弾性層を配置する場合に
は、円筒状金型の内面に、好ましくは粉体塗装法により
フッ素樹脂塗膜を形成した後、常法に従って、フッ素樹
脂を焼成する。焼成後のフッ素樹脂被膜の厚みは、通常
0.1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より
好ましくは5〜50μm程度である。弾性層が下層にあ
る場合、弾性層の柔軟性を充分に生かすには、この厚み
を30μm以下にすることができる。
【0047】フッ素樹脂粉体を粉体塗装することによ
り、液状フッ素樹脂塗料の場合のように、塗料中にフッ
素樹脂粒子を分散させるための界面活性剤が配合されて
いないので、純粋なフッ素樹脂の被膜が形成できる。こ
れによって、焼成後に炭化した不純物がフッ素樹脂被膜
中に残存することがないので、表面平滑性及び離型性に
優れたフッ素樹脂層を形成することができる。
【0048】ポリイミド層を形成する場合には、電鋳ニ
ッケルベルト基材上または円筒状金型内面にポリイミド
ワニスを塗布し、乾燥後、加熱して脱水・閉環(イミド
化)させる。耐熱性樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、そ
の溶液を塗布し乾燥させる。その他の耐熱性樹脂層の厚
みも、フッ素樹脂層の場合と同様に調整することが好ま
しい。
【0049】フッ素樹脂層などの耐熱性樹脂層と弾性層
との間の密着力を向上させるには、円筒状金型内面に形
成した耐熱性樹脂被膜の活性化処理を行うことが好まし
い。耐熱性樹脂被膜の活性化処理法としては、UVラン
プ、エキシマランプ等による紫外線照射、コロナ放電、
プラズマ処理、電子線照射、イオン照射、レーザー照射
等の照射による物理的処理;金属ナトリウムによる化学
的処理;処理液による湿式エッチング処理;などが挙げ
られる。これらの活性化処理によって、フッ素樹脂被膜
の表面からフッ素原子が引き抜かれたり、耐熱性樹脂被
膜の表面が親水化されたりするので、弾性層との間の密
着力が高まる。また、耐熱性樹脂層表面には、弾性層の
材質に適した接着剤を塗布することができる。
【0050】4.弾性層 弾性層を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ
素ゴムなどの耐熱性に優れたゴム材料を使用する。ま
た、弾性層を形成する材料として、シリコーンゴムやフ
ッ素ゴムなどのゴムにフッ素樹脂を混合したゴム組成物
を用いることもできる。弾性層は、一層でもよいが、二
層またはそれ以上の多層とすることもできる。
【0051】弾性層の形成に使用されるゴム材料として
は、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れた
ゴムが用いられる。耐熱性ゴムとは、被覆ニッケルベル
トを例えば定着ベルトや加圧ベルトとして使用した場
合、定着温度での連続使用に耐える程度の耐熱性を有す
るものをいう。具体的には、150℃以上の温度で連続
使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、劣化も
実質的に進行しない耐熱性を有するゴム材料が好まし
い。
【0052】ゴム材料としては、耐熱性が特に優れてい
る点で、ミラブルまたは液状のシリコーンゴム、フッ素
ゴム、あるいはこれらの混合物が好ましい。具体的に
は、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴ
ム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーン
ゴム等のシリコーンゴム;フッ化ビニリデンゴム、テト
ラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロ
エチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホ
スファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどの
フッ素ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、金型
内に注入しやすい液状シリコーンゴムを用いることが好
ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2
種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】ゴム材料には、所望により、カーボンブラ
ック、マイカ、酸化チタンなどの無機充填材や、天然樹
脂などの有機充填材を配合することができる。充填材の
配合量は、ゴム材料100重量部に対して、通常100
重量部以下、好ましくは80重量部以下である。ゴム材
料には、軽量化や柔軟性のために有機マイクロバルーン
を配合することができる。弾性層の厚みは、用途や設置
する機械装置の構造、目標とする弾性、用いる材料の硬
度等を勘案して適宜設定されるが、通常0.1〜5m
m、好ましくは0.5〜3mmである。
【0054】フッ素樹脂層からなる離型層(C)とゴム層
からなる弾性層(B)との間の密着性を高めるために、両
者の中間に、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物層
を設けることができる。円筒状金型の内面にフッ素樹脂
被膜を形成した後、フッ素樹脂被膜の内面にフッ素樹脂
を含有する耐熱性ゴム組成物層を形成する。加熱処理に
より、耐熱性ゴム組成物層をフッ素樹脂層と融着させる
ことができる。
【0055】耐熱性ゴム材料としては、短時間であって
も、フッ素樹脂の融点に相当する高温に耐えられるシリ
コーンゴムやフッ素ゴムが好ましいが、高耐熱性の点で
フッ素ゴムが特に好ましい。耐熱性ゴム材料中に含有さ
せるフッ素樹脂の種類は、特に限定されず、前述の如き
各種フッ素樹脂を使用することができる。耐熱性ゴム材
料中に含有させるフッ素樹脂は、比較的低温で溶融する
フッ素樹脂であることが、耐熱性ゴム材料の熱処理温度
を低くすることができるので好ましい。比較的低温で溶
融するフッ素樹脂としては、融点が350℃以下のフッ
素樹脂が好ましく、融点305℃以下のPFAが特に好
ましい。耐熱性ゴム組成物中のフッ素樹脂の含有量は、
特に限定されないが、最外層のフッ素樹脂被膜との融着
性の点から、耐熱性ゴム材料100重量部に対して、5
重量部以上が好ましく、耐熱性ゴム層の柔軟性の点から
50重量部以下が好ましい。
【0056】5.被覆ニッケルベルトの製造方法 電鋳ニッケルベルト基材上に、直接、フッ素樹脂などの
離型層が形成された被覆ベルトは、電鋳ニッケルベルト
基材上に、所望によりプライマー処理を行なった後、離
型性と耐熱性とを兼ね備えた耐熱性樹脂層やゴム層を直
接形成する方法により製造することができる。
【0057】これに対して、電鋳ニッケルベルト基材上
に、弾性層を介して、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂から
なる離型層を配置した被覆ベルトを製造する場合、電鋳
ニッケルベルト基材上に弾性層を形成した後、その上に
フッ素樹脂などの耐熱性樹脂層を形成する方法を採用す
ると、フッ素樹脂の焼成等の加熱処理により、下層の弾
性層が劣化して、両者の界面での密着性が損われやす
く、それによって、被覆ニッケルベルトの耐久性が低下
する。
【0058】そこで、本発明では、弾性層と離型層を有
する被覆ベルトの耐久性を向上させるために、電鋳ニッ
ケルベルト基材(A)上に、少なくとも一層の弾性層(B)を
介して、離型層(C)が形成された層構成を有する被覆ニ
ッケルベルトの製造方法において、電鋳ニッケルベルト
基材(A)として、前述の特定の電鋳ニッケルベルトを使
用するとともに、下記の一連の工程: (1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、
耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、(2)
所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有する
ゴム組成物を塗布し加硫して、弾性層(B2)を形成する工
程、(3)円筒状金型の中空内に電鋳ニッケルベルト基
材(A)を挿入する工程、及び(4)電鋳ニッケルベルト
基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の内面との
間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、弾性層(B1)を形
成する工程により各層を形成することが好ましい。工程
(4)の後、弾性層と離型層とを有する被覆ニッケルベ
ルトを円筒状金型から脱型する。
【0059】図4は、本発明の被覆ニッケルベルトの一
具体例の製造工程を示す説明図である。第1工程では、
円筒状金型4の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、耐熱
性樹脂層3を形成する。すなわち、図4(a)の断面図
に示すように、円筒状金型4の内面に耐熱性樹脂材料を
塗布して、耐熱性樹脂層3を形成する。耐熱性樹脂材料
として、例えば、フッ素樹脂を使用する場合には、円筒
状金型4の内面にフッ素樹脂を塗装し、焼成して、フッ
素樹脂被膜を形成する。耐熱性樹脂材料としてポリイミ
ドワニスを使用する場合には、円筒状金型4の内面にポ
リイミドワニスを塗布し、乾燥させた後、加熱処理によ
りイミド化して、ポリイミド樹脂被膜を形成する。熱可
塑性樹脂の場合には、その溶液を塗布し、乾燥して熱可
塑性樹脂被膜を形成する。耐熱性樹脂層を形成した後、
弾性層との密着性を高めるため、必要に応じて、耐熱性
樹脂層内面の活性化処理を行ったり、接着剤の塗布を行
うことができる。
【0060】工程(2)では、所望により、耐熱性樹脂
層の内面に、フッ素樹脂を含有する耐熱性ゴム組成物を
塗布し、該フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱処理し
て、フッ素樹脂を含有するゴム組成物からなる弾性層(B
2)を形成する。この工程(2)は、図面を省略してい
る。すなわち、図4には、弾性層が一層の場合が示され
ている。
【0061】工程(3)では、円筒状金型4の中空内に
電鋳ニッケルベルト基材(A)を挿入する。図4(b)に
示すように、円筒状金型4の中空内に、支持体5を差し
込んで変形しないように固定した電鋳ニッケルベルト1
を挿入する。電鋳ニッケルベルト基材1の表面には、弾
性層との密着性を高めるため、接着剤を塗布することが
できる。円筒状金型4の中心と電鋳ニッケルベルト1の
中心が一致するようにセットする(軸心を合わせる)。
電鋳ニッケルベルト1を差し込む支持体5としては、ス
テンレス製の棒や筒などの変形し難い耐熱性材料からな
るものが好ましい。
【0062】工程(4)では、電鋳ニッケルベルト1と
耐熱性樹脂層3との間の隙間に、ゴム材料を注入し、次
いで、加硫して弾性層を形成する。具体的には、図4
(c)に示すように、耐熱性樹脂層3と電鋳ニッケルベ
ルト1との間の隙間に、未加硫のゴム材料2を注入した
後、加硫して、加硫ゴム層を形成する。加硫条件は、使
用するゴムの種類に応じて選択される。液状シリコーン
ゴムの場合には、熱加硫を行う。ゴムの材料の注入に
は、インジェクション、押し出しなどの適当な方法を採
用することができる。ゴム材料の注入や加硫に際し、通
常は、円筒状金型の一端または両端を密封する。
【0063】図4(d)に示すように、ゴム材料の加硫
後、耐熱性樹脂層及びゴム層とともに、電鋳ニッケルベ
ルト1を円筒状金型4から引き抜く。また、電鋳ニッケ
ルベルト1から支持体5を抜き取る。かくして、電鋳ニ
ッケルベルト1上に弾性層と耐熱性樹脂からなる離型層
とがこの順に形成された被覆ニッケルベルトが得られ
る。
【0064】弾性層(B1)と耐熱性樹脂層(C)との中間
に、接着性を向上させるために、例えば、耐熱性ゴム材
料にフッ素樹脂を含有させたゴム組成物層(B2)を形成す
る場合には、図4(a)に示す第1工程の後、第2工程
として、耐熱性樹脂層3の表面に、ゴム組成物を塗布
し、該フッ素樹脂の融点以上の温度で加熱処理して、耐
熱性樹脂層と融着したゴム組成物層(B2)を形成する。次
いで、図3(b)〜(d)に示す各工程を実施する。こ
の方法では、第1工程の後、耐熱性樹脂層内面のエッチ
ング処理などの活性化処理工程を省略しても、ゴム組成
物層(B2)を介して、耐熱性樹脂層とゴム層(B1)との間の
密着性を充分に高めることが可能である。この方法で
は、弾性層が二層となる。
【0065】本発明で使用する円筒状金型は、鉄、ステ
ンレス、アルミニウムなどの金属製であることが好まし
いが、フッ素樹脂の焼成温度やポリイミド前駆体のポリ
イミド化時の熱処理温度に耐える耐熱性を持つものであ
れば、これらに限定されるものではない。円筒状金型の
内面に良好な離型性を持たせることが、最終工程で、耐
熱性樹脂層及び加硫ゴム層と共に電鋳ニッケルベルトを
円筒状金型から引き抜く(脱型する)のを容易にする上
で好ましい。円筒状金型内面に離型性を持たせるには、
平滑化処理を行うことが好ましい。
【0066】円筒状金型の内面を平滑化処理するには、
例えばアルミニウム製の場合には、引き抜き材を使用し
たり、その他の材質であれば、クロムメッキ、ニッケル
メッキなどの表面処理を行う方法がある。平滑化処理に
より、円筒状金型内面の表面粗さ(Rz)を20μm以
下とすることが好ましい。ホーニング処理等により、R
zで5μm以下とすることがより好ましい。円筒状金型
内面の平滑化処理により、脱型が容易になることに加え
て、表面平滑性に優れた耐熱性樹脂層(離型層)を形成す
ることができる。
【0067】円筒状金型の長さは、通常、所望の用途に
用いるベルト部材の被覆部分の長さであり、その内径
は、実質的に電鋳ニッケルベルトの外径と被覆層との厚
みの和により規定される。円筒状金型の厚みは、フッ素
樹脂の焼成時、ポリイミド前駆体のイミド化時、または
ゴムの加硫時などにおける熱伝導を考慮して適宜決定さ
れるが、1〜10mm程度であることが好ましい。ただ
し、好ましい厚みは、材質によって選択される。なお、
円筒状金型の外形は、必ずしも円筒状である必要はな
く、筒状の内面を有するものであればよい。
【0068】上記製造方法によれば、フッ素樹脂などの
耐熱性樹脂からなる離型層を先に形成しておき、弾性層
を後から形成することができるため、耐熱性樹脂層の加
熱処理による弾性層の劣化を防ぐことができる。また、
研削処理などの煩雑な操作を行なうことなく、表面平滑
性に優れた被覆ベルトを得ることができる。
【0069】6.作用 本発明では、電鋳により形成された耐熱性、耐屈曲性、
耐久性に優れた電鋳ニッケルベルトを金属ベルト基材と
して用いるため、耐熱性、耐久性、硬度、強度などのバ
ランスに優れている。本発明の電鋳ニッケルベルトを金
属ベルト基材とする被覆ニッケルベルトは、画像形成装
置の定着ベルト等の用途に好適であり、定着温度等の高
温条件下で連続使用しても、耐久性が損われることがな
い。
【0070】本発明の製造方法によれば、フッ素樹脂な
どの耐熱性樹脂からなる離型層を先に形成しておき、弾
性層を後から形成することができるため、耐熱性樹脂層
の加熱処理による弾性層の劣化を防ぐことができる。ま
た、研磨処理などの煩雑な操作を行なうことなく、表面
平滑性に優れた被覆ニッケルベルトを得ることができ
る。有機マイクロバルーンを含有するゴム材料を注入し
て熱加硫を行うと、耐熱性樹脂被膜の表面がより平滑で
離型性にも優れるものになる。円筒状金型の内面を平滑
化処理しておくことにより、耐熱性樹脂層の表面をさら
に平滑にすることができる。
【0071】フッ素樹脂被膜の形成方法として、円筒状
金型の内面にフッ素樹脂粉体を塗装し、焼成して、フッ
素樹脂被膜を形成すると、フッ素樹脂ワニスなどの液状
塗料を用いた場合に比較して、界面活性剤などの不純物
が被膜中に残留せず、離型性に優れた表面が得られる。
また、フッ素樹脂被膜などの離型層の厚みを30μm以
下にまで薄くすることができるため、弾性層の柔らかさ
を充分に生かすことができる。したがって、本発明の被
覆ニッケルベルトは、高度の柔軟性が要求される用途に
適用することが可能である。
【0072】本発明では、金属ニッケルベルト基材とし
て電鋳ニッケルベルトを用いているため、これを定着ベ
ルトの用途に使用する場合、ヒーターを用いた加熱方式
以外に、電磁誘導加熱方式をも採用することができる。
【0073】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明に
ついて、より具体的に説明する。ここでは、定着ベルト
としての実験結果を示すが、本発明の被覆ニッケルベル
トは、定着ベルトの用途に限定されるものではない。物
性等の測定法は、以下のとおりである。
【0074】(1)X線回折による結晶解析 電鋳ニッケルベルトを試料として使用し、広角ゴニオメ
ーターにより広角X線測定を行って、(111)面での
ピーク強度I(111)と(200)面でのピーク強度I(20
0)を測定し、次いで、式I(200)/I(111)により結晶配
向面の強度比を求めた。 (2)硫黄、コバルト、炭素、マンガンなどの含有量 ICP発光分析により測定した。
【0075】(3)ビッカース硬度 ビッカース硬度(VH)は、圧子として対面角136度
のダイヤモンドの正四角錐を用いた押し込み硬さの一種
である。一定の荷重で圧子を押し込んだときに生じる四
辺形のくぼみの対角線の長さを測定すると、対角線の長
さからくぼみの表面積が求められる。荷重をこの表面積
で割った値がビッカース硬度であり、単位をつけずに数
値のみで表わす。具体的には、微小硬さ試験機〔(株)
アカシ製MVK−H1〕を用いて、荷重100gf、荷
重保持時間15秒の条件でビッカース硬度を測定した。
【0076】(4)熱老化試験 電鋳ニッケルベルトを230℃の雰囲気中で2日間保持
した後、ビッカース硬度(VH1)を測定し、下記式に
より初期値(VH0)に対する変化率(%)を算出し
た。 変化率(%)=〔(VH0−VH1)/VH0 〕×100
【0077】(5)定着ベルトの耐久試験 各実施例及び比較例で作製した被覆ニッケルベルトを定
着ベルトとして定着ユニットに装着した。定着ベルトに
対向して配置する加圧ローラとして、アルミニウム製芯
金に、JISA硬度12度、厚み2mmのシリコーンゴ
ム層と厚み50μmのフッ素樹脂層とをこの順に積層し
たローラ部材を用いた。定着ベルトと加圧ローラの接触
幅が8mmになるように定着ベルトを押さえ、ハロゲン
ランプヒーターで定着ベルトのフッ素樹脂層(離型層)
の表面温度が200℃になるように昇温した。この状態
で定着ベルトを1回転/秒の回転速度で200時間回転
させた。200時間回転後の被覆ニッケルベルトの破壊
の有無、フッ素樹脂層表面での微小なクラックの発生状
況を調べた。微小クラックは、それが大きく成長する
と、被覆ニッケルベルト破壊の原因となるので、耐久性
の指標となる。なお、微小クラックが発生する場合に
は、発生するまでの時間を測定した。
【0078】[実施例1]硫酸ニッケル(NiSO4
6H2O)300g/L、塩化ニッケル(NiCl 2・6
2O)30g/L、ホウ酸30g/L、光沢剤(芳香
族スルホン酸塩)1g/L、及びアルキンジオール(す
なわち、1,4−ブチンジオール)50ppmを含有す
るニッケルメッキ浴(ニッケル電鋳浴)を調製した。ニ
ッケルメッキ浴には、ピット防止のため、少量の界面活
性剤を加えた。外径30mmφ、長さ300mmのステ
ンレス製母型を陰極とし、上記ニッケルメッキ浴を用い
て、浴温50℃、pH4.0、電流密度10A/dm2
で電鋳を行い、炭素含有量0.05質量%、硫黄含有量
0.02質量%、マンガン(Mn)含有量0.05質量
%、コバルト(Co)含有量0.50質量%、結晶配向
面の強度比1.00、ビッカース硬度(VH)400、
厚み50μmの無端状電鋳ニッケルベルト(A)を作製
した。この電鋳ニッケルベルトは、230℃の雰囲気中
で2日間保持する熱老化試験後のビッカース硬度の初期
値に対する変化率が0%であった。結果を表1に示す。
【0079】[実施例2]実施例1において、ニッケル
メッキ浴をリザーブタンクに循環させ、その際、電流密
度0.2A/dm2で弱電解処理を行ったこと以外は、
実施例1と同様にして電鋳ニッケルベルト(B)を作製
した。結果を表1に示す。
【0080】[実施例3]電鋳時の電流密度を10A/
dm2から5A/dm2に変更したこと以外は、実施例2
と同様にして電鋳ニッケルベルト(C)を作製した。結
果を表1に示す。
【0081】[実施例4]電鋳時の電流密度を10A/
dm2から2A/dm2に変更したこと以外は、実施例2
と同様にして電鋳ニッケルベルト(D)を作製した。結
果を表1に示す。
【0082】[実施例5]光沢剤の使用量を1g/Lか
ら0.2g/Lに、アルキンジオールの使用量を50p
pmから20ppmに、電鋳時の電流密度を10A/d
2から2A/dm2に、それぞれ変更したこと以外は、
実施例2と同様にして電鋳ニッケルベルト(E)を作製
した。結果を表1に示す。
【0083】[実施例6]硫酸マンガンの使用量を30
g/Lから100g/Lに変更したこと以外は、実施例
1と同様にして電鋳ニッケルベルト(F)を作製した。
結果を表1に示す。
【0084】[比較例1]硫酸マンガンの使用量を30
g/Lからゼロに、光沢剤の使用量を1g/Lから5g
/Lに、それぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様
にして電鋳ニッケルベルト(G)を作製した。結果を表
1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】[実施例7]内径32mmφ、長さ300
mmのステンレス製の円筒状金型の内面をクロムメッキ
して表面粗さ20μm以下とし、その面に、PFA粉体
(デュポン社製、MP−102)を粉体塗装し、380
℃で30分間熱処理して、厚み30μmのフッ素樹脂被
膜を形成した。このフッ素樹脂被膜の内面に、テトラエ
ッチ液(潤工社製)を塗布し、水洗してエッチング処理
を行った。フッ素樹脂被膜のエッチング処理面に、シリ
コーン系接着剤(東レダウコーニング社製、DY39−
012を塗布して風乾した。外径30mmφ、長さ30
0mmのステンレス製支持体に、内径30mmφ、長さ
300mmの電鋳ニッケルベルト(A)を差し込み、こ
の電鋳ニッケルベルト表面に、前記と同じシリコーン系
接着剤を塗布・乾燥させた後、フッ素樹脂被膜を形成し
た円筒状金型の中空内に、両者の軸心が一致するように
挿入した。円筒状金型内面のフッ素樹脂被膜と電鋳ニッ
ケルベルトとの間の隙間に、液状シリコーンゴム(信越
化学製、KE1380)を流し込み、次いで、160℃
で15分間加熱してゴムを熱加硫して、厚さ1mmのゴ
ム層を形成した。その後、脱型して、200℃で4時間
の熱処理を行い、被覆ニッケルベルトを得た。結果を表
2に示す。
【0087】[実施例8〜12及び比較例2]電鋳ニッ
ケルベルト(A)を電鋳ニッケルベルト(B)〜(G)
に変更したこと以外は、実施例7と同様にして被覆ニッ
ケルベルトを作製した。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】表2の結果から明らかなように、X線回折
により測定される結晶配向面の強度比I(200)/I(111)
が0.6以上、好ましくは0.8以上の電鋳ニッケルベ
ルト(A)〜(F)を金属ベルト基材とする被覆ニッケ
ルベルト(実施例7〜12)は、200時間(h)の耐
久試験で破壊することがなく、また、微小クラックが発
生しないか、発生するまでの耐久時間(h)が長いこと
が分かる。これに対して、X線回折により測定される結
晶配向面の強度比I(200)/I(111)が0.6未満の電鋳
ニッケルベルト(G)を金属ベルト基材とする被覆ニッ
ケルベルト(比較例2)は、耐久試験で破壊し、しかも
比較的端時間で微小クラックの発生が観察された。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、加熱処理や高温条件下
での硬度及び強度の低下が極めて小さく、耐久性が顕著
に優れた電鋳ニッケルベルトが提供される。また、本発
明によれば、該電鋳ニッケルベルトを基材とする耐熱性
及び耐久性に優れた被覆ニッケルベルト及びその製造方
法が提供される。本発明の電鋳ニッケルベルト及び被覆
ニッケルベルトは、電子写真複写機などの定着ベルト等
のベルト部材として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆ニッケルベルトの一例の層構成を
示す断面図である。
【図2】本発明の被覆ニッケルベルトの他の一例の層構
成を示す断面図である。
【図3】本発明の被覆ニッケルベルトの他の一例の層構
成を示す断面図である。
【図4】本発明の弾性層と離型層とを有する被覆ニッケ
ルベルトの製造方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1:電鋳ニッケルベルト基材 2:弾性層 2′:第一弾性層 2″:第二弾性層 3:離型層 4:円筒状金型 5:支持体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29K 705:08 B29K 705:08 B29L 29:00 B29L 29:00 (72)発明者 滝口 敏彦 大阪府大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 池田 吉隆 大阪府泉南郡熊取町大字野田950番地 住 友電工ファインポリマー株式会社内 Fターム(参考) 2H033 AA23 BA11 BA12 4F213 AA16 AA45 AD03 AG03 AG16 AH33 WA02 WA03 WA15 WA43 WA54 WA87 WB01 WB11 WC01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線回折により測定した(111)面で
    のピーク強度に対する(200)面でのピーク強度の比
    で表される結晶配向面の強度比が式(1) I(200)/I(111)≧0.6 …(1) I(200):X線回折における(200)面でのピーク強
    度 I(111):X線回折における(111)面でのピーク強
    度 で示される関係を満足することを特徴とする電鋳ニッケ
    ルベルト。
  2. 【請求項2】 硫黄含有量が0.05質量%以下である
    請求項1記載の電鋳ニッケルベルト。
  3. 【請求項3】 コバルト含有量が0.50質量%以下で
    ある請求項1または2記載の電鋳ニッケルベルト。
  4. 【請求項4】 ビッカース硬度(VH)が280〜48
    0で、かつ、230℃で2日間保持後のビッカース硬度
    の初期値に対する変化率が10%以下である請求項1乃
    至3のいずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルト。
  5. 【請求項5】 電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接
    または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)
    が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトにおい
    て、電鋳ニッケルベルト基材(A)が請求項1乃至4のい
    ずれか1項に記載の電鋳ニッケルベルトであることを特
    徴とする被覆ニッケルベルト。
  6. 【請求項6】 弾性層(B)がシリコーンゴムまたはフッ
    素ゴムからなるゴム層である請求項5記載の被覆ニッケ
    ルベルト。
  7. 【請求項7】 離型層(C)がフッ素樹脂層である請求項
    5または6記載の被覆ニッケルベルト。
  8. 【請求項8】 電鋳ニッケルベルト基材(A)上に、直接
    または少なくとも一層の弾性層(B)を介して、離型層(C)
    が形成された層構成を有する被覆ニッケルベルトの製造
    方法において、〔I〕電鋳ニッケルベルト基材(A)とし
    て、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電鋳ニッケ
    ルベルトを使用し、かつ、〔II〕下記の工程: (1)円筒状金型の内面に耐熱性樹脂材料を塗布して、
    耐熱性樹脂からなる離型層(C)を形成する工程、(2)
    所望により、離型層(C)の内面にフッ素樹脂を含有する
    ゴム組成物を塗布し加硫して、弾性層(B2)を形成する工
    程、(3)円筒状金型の中空内に電鋳ニッケルベルト基
    材(A)を挿入する工程、及び(4)電鋳ニッケルベルト
    基材(A)の外面と離型層(C)または弾性層(B2)の内面との
    間の空隙にゴム材料を注入し加硫して、弾性層(B1)を形
    成する工程により各層を形成することを特徴とする被覆
    ニッケルベルトの製造方法。
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