JP4318909B2 - 金属ベルト及び被覆ベルト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電鋳により無端状に形成された金属ベルト及びこの金属ベルトを基材として用いた被覆ベルトに関し、ファクシミリ、レーザビームプリンター等の画像形成装置における定着ベルト等に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、画像形成装置においては、画像形成装置の小型化、省エネルギー化、印字・複写の高速化などの要求に応えるために、定着ローラの代わりに無端状の定着ベルト(エンドレスベルトまたはチューブ)を従動回転させるベルト定着方式が採用されている。定着ベルトは、その内面に接触する加熱手段を接触させることにより、薄いベルトを介するだけで、転写材上のトナー像をほぼ直接的に加熱して定着させることができるため、電源投入後の待ち時間を少なくすることができるという利点がある。
【0003】
このような定着ベルトにおいては、無端状の金属ベルト基材の上に、直接または弾性層を介して離型層が被覆形成されている。離型層は、多くの場合、フッ素樹脂などの耐熱性と離型性に優れた耐熱性樹脂からなるものである。耐熱性樹脂製離型層は、弾力性に乏しいため、金属ベルト基材と離型層との間に弾性層を配置して、定着性及び画像を向上させることが多い。離型層がシリコーンゴム層等の弾力性と離型性とを備えたゴム層である場合、中間の弾性層を省略することができる。転写ベルト、帯電ベルト、搬送ベルトなどでは、金属ベルト基材を単独で、あるいは金属ベルト基材と離型層からなる無端状ベルトが用いられる。
【0004】
金属ベルト基材として、電鋳(電気鋳造・electroforming)を用いて形成された無端状ニッケルベルトが例えば特許文献1および特許文献2により公知である。電鋳法では、導電性を有する母型(電型、鋳型)、例えばステンレス製の円筒状母型を陰極とし、その表面にニッケルメッキ浴を用いて電気メッキを施すことによりニッケルメッキ膜を形成し、このメッキ膜を母型から剥離(脱型)して製品とする。母型が金属の場合には、剥離のための表面処理を施し、母型が非金属の場合には、メッキを行なうための導電性処理を施す。
【0005】
特許文献1には、電鋳により炭素含有量が0.01〜0.1質量%の無端状ニッケルベルトを形成することが記載されている。一方、特許文献2には、定着ベルトの一構成である金属層のニッケル電鋳が、結晶成長が(200)面優先成長で、結晶配向比I(200)/I(111)が3以上,好ましくは8以上であること、及びニッケル電鋳のカーボン元素の含有量は0.08質量%以下であることが好ましいことが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−148975号公報(第4頁の段落[0020]等)
【0007】
【特許文献2】
特開2002−258648号公報(第3頁の段落[0015],第4頁の段落[0029],第11頁の段落[0108]等)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の金属ベルトは、高温下では熱疲労強度が十分でなく、耐久性に乏しい。ベルト定着方式の場合には、ベルト自身の回転に伴ってニップ部およびその出入口においてベルトが繰り返し屈曲することに加え、周速差によるねじれが生じるために機械的に疲労しやすく、定着温度を上げると耐久時間が短くなるなど耐熱耐久性の点で懸念されている。特に高速プリンターの定着ニップは広く、加圧力も高く、ベルトに負荷される機械的な力が増加し、定着高温も高く設定するために、従来品は比較的短期間で破断する傾向にあり、ベルト交換頻度が高い。
【0009】
また、上記特許文献1,2のように、炭素含有量が大きいベルトにおいては、メッキ膜の内部応力が増大するので、脱型性が低下して電鋳品を母型から取り外し難く、過大な内部応力により電解中に母型から一部分が剥離する場合がある。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、耐久性に優れるとともに、電鋳品の母型からの取り外しが容易でかつ母型からの部分剥離の発生を回避しえる長寿命の金属ベルトを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、電子写真複写機などの画像形成装置における定着ベルトなどとして好適な被覆ベルトを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(金属ベルト)
本願第1の発明である金属ベルトは、電鋳により無端状に形成され、結晶配向比I(200)/I 111 147以上250以下の結晶配向性を有すると共に、炭素含有量が0.049〜0.10質量%である、ニッケルを主成分とする金属基材と、この金属基材の外周上に直接叉は少なくとも1層の弾性層を介して形成された離型層とを具備することを特徴とする。
【0013】
定着ベルトが持つべき特性として、最高加熱温度に耐えられるだけの耐熱性と機械的強度などの基本的な性能が挙げられるが、さらに耐久性を向上させるためには高温熱サイクル下での疲労特性に優れていることが要求される。本発明の金属ベルトでは、結晶成長が(200)面優先成長としており、これにより熱サイクル下での耐疲労性すなわち耐久性が向上する。結晶成長が(200)面優先成長であれば、高温下にさらされてもベルトの柔軟性や強度劣化が起こりにくく、高温で使用される定着ベルトにおいて有利になるからである。
【0014】
本発明において、(200)面優先成長とは、母型表面に平行方向の(200)に優先的に結晶成長することをいう。結晶配向比I(200)/I(111)は、広角X線散乱回折法により測定した(111)面ピーク強度に対する(200)面ピーク強度の比(ピーク強度比率)で定義される。なお、(200)面のd値は0.17620nmであり、(111)面のd値は0.20340nmである。
【0015】
また、本発明では結晶配向比I(200)/I(111)147〜250とすることによって、高温熱サイクルに対して十分な耐久性を確保することができる。本発明者らは、結晶配向比I(200)/I(111)がベルト耐久性に及ぼす影響について鋭意研究した結果、図3および後述する表1に示すように両者の相関について新たな知見を得た。なお、結晶配向比I(200)/I(111)が小さい場合、特に50以下である場合は、熱サイクル疲労性が悪く、耐久性が不十分になる。
【0016】
本発明において、ニッケルを主成分とする金属ベルトの炭素含有量は、0.03〜0.10質量%とする。炭素含有量を上記範囲内に制御することにより、無端状金属ベルト基材として要求される水準の硬さを維持しながら、熱老化によって硬さ及び強度が低下しない電鋳ニッケルベルトが得られやすくなる。ここで、炭素含有量が0.03質量%を下回ると、結晶配向比が小さくなり耐久性が低下する。また、炭素含有量が0.10質量%を超えると、メッキ膜の内部応力が増大し、脱型性が低下して電鋳品を母型から取り外し難くなる場合があること、また電解中に母型から一部が剥離する場合もあるからである。しかし、脱型技術がさらに向上すれば、炭素含有量0.14質量%あたりまでは製造可能であると推察される。なお、炭素含有量が0.14質量%を超えると、メッキ膜そのものが健全に形成されなくなる。炭素含有量と繰り返し耐久回数との関係は、図4及び後述する表1に示すような相関関係にある。
【0017】
また、前記炭素含有量と配向比との間には、図5及び後述する表1に示すような相関関係があり、炭素含有量に対する結晶配向比の依存性は強い。図5に示すように、炭素含有量が0.06質量%近傍に結晶配向比が最大となるピーク値(実測値246が得られたことからピーク値は250程度と推定される)が存在し、これにより炭素含有量が多くなっても少なくなっても結晶配向比は低下する傾向にある。なお、炭素含有量が0.10質量%を越えて過剰に存在すると、結晶配向比が80を下回るようになることが推定される。また、炭素含有量が0.10%を上回ると、内部応力が増大し、クラックが発生し、母型から部分的に剥離する場合があり、安定した結晶成長を期待できなくなる傾向にある。
【0018】
本発明の金属ベルト(金属基材)は、実質的にマンガンを含まない。マンガンを含有すると、理由は明らかでないが、結晶配向比を大きくすることができず、熱サイクル下での耐疲労性が向上しなくなるからである。
【0019】
金属ベルトには、通常、ニッケルメッキ浴の使用成分などに起因する硫黄やコバルト、炭素などの不純物が含有されていることが多い。硫黄やコバルトなどの不純物が多量に存在すると、配向比が低下する。これらの不純物の含有量を調整することにより、金属ベルトの特性をさらに改善することができる。
【0020】
金属ベルトの硫黄含有量は、0.03質量%未満に調整することが好ましい。硫黄含有量は、より好ましくは0.01質量%以下である。硫黄含有量が多すぎると、連続的な加熱条件下で硫黄がニッケルの結晶粒界に析出して、硬さ及び強度の低下を引き起こす。硫黄含有量の下限は、ゼロ質量%(0.00質量%)であるが、ニッケルメッキ浴の成分として硫黄含有化合物(例えば、一次光沢剤)などを用いると、通常0.01〜0.09質量%、できるだけ低減した場合でも、0.001〜0.009質量%、光沢剤を用いなくともスルファミン酸系の電解欲を用いた場合0.0001〜0.0009質量%になることが多い。
【0021】
硫黄含有量は、光沢剤などの硫黄含有化合物の使用量を少なくすることにより低減することができる。金属ベルトの硫黄成分は電着応力を低減させ、成型精度を向上させる必須成分ではあるが、一方、柔軟性や高温時の弾力性を損ない、金属疲労による破断現象に密に関与する。あまりに多くの硫黄が存在すると、高温状態において硫黄がニッケル粒界まわりに薄い脆性膜を形成し、ニッケル電鋳の粒界は不連続状態になることがあり、脆性破壊が発生しやすい場合がある。硫黄が少なすぎると母型からの離型性や強度が低下する場合があり、硫黄の含有率の下限は、通常、0.001〜0.009質量%である。
【0022】
炭素および硫黄の含有量がそれぞれ上記の範囲にあり、かつマンガンおよび不可避不純物元素のコバルトを実質的に含まないニッケル又はニッケル合金であれば、電鋳ニッケルの結晶成長が(200)面優先成長で、結晶配向比I(200)/I(111)が100以上になる結晶形態をとりやすい。また、硫黄の含有量が少なくなると、結晶成長が(200)面優先成長になりやすい傾向を示す。
【0023】
その他の不可避不純物の含有量は、通常0.01質量%以下とする。このように、本発明では、ニッケル以外の不可避不純物の含有量をできるだけ小さくすることが望ましい。結晶配向比I(200)/I(111)が低すぎると、耐久性が低下する傾向にある。
【0024】
金属ベルトは、例えばステンレス鋼製などの母型を陰極として、電鋳プロセスにより製造される。この場合の電解浴としては、例えばスルファミン酸系などの公知のニッケル電解浴を用いることができ、pH調整剤、ピット防止剤、光沢剤などの添加剤を適宜加えてもよい。例えば、スルファミン酸ニッケルを主成分とし、塩化ニッケルまたは臭化ニッケルが0〜30g/l、およびホウ酸が30〜45g/lからなるニッケル電解液が挙げられる。スルファミン酸ニッケルは目的に合わせ低濃度から高濃度まで選択可能である。スルファミン酸ニッケル四水塩として、450g/l程度のものは普通浴と呼ばれ、600g/lのものはニッケルスピード浴と呼ばれているものや高濃度浴と呼ばれているものがある。また、更に低濃度、高濃度を使用することもできる。
【0025】
そして、電解浴温度、陰極電流密度などを制御することによって、所望のニッケルまたはニッケル合金からなるニッケル電鋳が得られる。電鋳プロセスは、用いる電解浴によっても異なるが、通常、電解浴温度45〜60℃程度、陰極電流密度1〜10A/dm2程度で行うことが好ましい。電鋳プロセスによるニッケルは、電解浴中にサッカリン、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム等含む一次光沢剤(応力減少剤)、2−ブチン−1,4−ジオール、クマリン、ジエチルトリアミン等含む二次光沢剤と呼ばれる添加剤を加えることにより、電着応力を低減させて成型精度を向上させる。このとき加える添加剤の量を調整することにより、ニッケル電鋳中の硫黄含有量、炭素含有量を上記の範囲にすることができる。なお、析出される硫黄、炭素含有量は、浴中の一次光沢剤、二次光沢剤の濃度、および、電流密度、浴温等のプロセス条件で調整可能である。
【0026】
結晶配向比I(200)/I(111)を大きくするには、特定の浴組成と特定の製造プロセスとを組み合せる必要がある。浴組成の面からは、所定量の二次光沢剤および一次光沢剤を含有し、マンガンを実質的に含まず、かつ不可避的不純物であるコバルトを5mg/l未満に抑える。製造プロセスの面からは、電鋳時の電流密度を適切に調整することで(200)面を優先成長させることができ、X線回折法で測定した(200)面でのピーク強度が高くなる。
【0027】
金属ベルトの厚みは、次の式で表される表皮深さより厚く、特に1μm以上100μm以下にすることが好ましい。表皮深さσ[m]は、励磁回路の周波数f(Hz)と透磁率μと固有抵抗ρ(Ωm)でσ=503×(ρ/fμ)1/2と表される。これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっており、逆にいうとほとんどのエネルギーはこの深さまでで吸収されている。電鋳ニッケルベルトの厚みが1μmを下回ると、ベルトがほとんどの電磁エネルギーを吸収しきれなくなり、効率が低下してくることがあるので好ましくない。一方、電鋳ニッケルベルトの厚みが100μmを上回ると、剛性が大きくなり、柔軟性が低下してくるので、屈曲性が損なわれて回転体として使用しにくくなる傾向にある。セラミックヒータを用いたベルト定着方式に用いる場合では、熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、電鋳ニッケルベルトの厚みを100μm以下とすることが好ましく、さらに50μm以下とすることが最も好ましく、20μm以下とすることがさらに望ましい。
【0028】
金属ベルトの結晶は、研磨後、エッチングした面を観察することで、加熱温度、加熱時間により変化することがわかるが、配向比が高くなると変化しにくくなり、硬さの変化も少なく、強度低下も起こりにくい。また、高温条件下で結晶の変化や硬さの変化が大きくなると、耐疲労性が損なわれる。
【0029】
(被覆ベルト)
本願第2の発明である被覆ベルトは、電鋳により無端状に形成され、結晶配向比I(200)/I 111 147以上250以下の結晶配向性を有すると共に、炭素含有量が0.049〜0.10質量%である、ニッケルを主成分とする金属基材と、この金属基材の外周上に直接叉は少なくとも1層の弾性層を介して形成された離型層とを具備することを特徴とする。
【0030】
離型層には、PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムが好ましく、特にPFAが好ましい。なお、必要に応じて、離型層にはカーボン、酸化すず等の導電剤等を離型層の10質量%以下含有させてもよい。
【0031】
離型層の厚さは1μm以上100μm以下とすることが好ましい。離型層の厚みが1μmを下回ると、塗膜の塗ムラで離型性の悪い部分ができたり、耐久性が不足したりすることがある。一方、離型層の厚みが100μmを上回ると、熱伝導が悪化することがあり、特に樹脂系の離型層の場合は硬度が高くなって、後述する弾性層の効果がなくなってしまうことがある。
【0032】
離型層は公知の方法、例えば、フッ素樹脂系の材料で製造する場合、フッ素樹脂粉末を分散塗料化したものをコート・乾燥・焼成する方法により、あるいは予めチューブ化したものを被覆・接着する方法で形成すればよく、ゴム系の場合、液状の材料を成形型に注入し加熱硬化する方法、押出成形後に加熱硬化する方法、あるいは射出成形後に加熱硬化する方法等で形成することができる。
【0033】
また、予め内面プライマー処理されたチューブ、予め表面プライマー処理されたニッケル電鋳ベルトを円筒金型内に装着し、チューブとニッケル電鋳ベルト間隙間に液状シリコーンゴムを注入、加熱することでゴムの硬化および接着を行う手法を用いれば、弾性層、離型層を同時に形成することも可能である。
【0034】
弾性層は本発明の必須構成要素ではないが、ある程度のニップ幅と熱容量を確保するために設けることが好ましい。弾性層には、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が好ましく、特にシリコーンゴムが好ましい。弾性層に用いるシリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等を例示することができる。なお、必要に応じて弾性層には乾式シリカ、湿式シリカ等補強性充填材、炭酸カルシウム、石英紛、珪酸ジルコニウム、クレー(珪酸アルミニウム)、タルク(含水珪酸マグネシウム)、アルミナ(酸化アルミニウム)、ベンガラ(酸化鉄)等を含有させてもよい。
【0035】
弾性層の厚さは、良好な定着画像品質を得るために、10μm以上、特に50μm以上が好ましく、1000μm以下、特に500μm以下が好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では転写材上で大きな面積にわたってベタ画像が形成される。この場合、転写材の凹凸あるいはトナー層の凹凸に加熱面(離型層)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分とで画像に光沢ムラが発生する。つまり、伝熱量が多い部分は光沢度が高くなり、伝熱量が少ない部分は光沢度が低くなる。弾性層があまりに薄いと、転写材あるいはトナー層の凹凸に追従しきれず、画像光沢ムラが発生してしまうことがある。また、弾性層があまりに厚いと、弾性層の熱抵抗が大きくなり、クイックスタートを実現するのが難しくなることがある。
【0036】
摺動層は本発明の必須構成要素ではないが、定着装置を作動させる際の駆動トルクの低減を図るうえで設けることが好ましい。摺動層にはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PES(ポリエーテルスルホン)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂、PFA((テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体)樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、FEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体)樹脂、LCP(液晶ポリエステル)樹脂などを用いることができる。なお、必要に応じて、摺動層には摺動剤としてフッ素樹脂粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等を摺動層に含有させるようにしてもよい。摺動層は、例えば、液状の材料をコート・乾燥・硬化する方法、あるいは予めチューブ化したものを貼りつける方法等で形成することができる。摺動層を設けると、被覆ベルトの熱容量を大きくしすぎることなく、発熱層としての金属基材に発生した熱がベルトの内側に向かわないように断熱できるので、摺動層がない場合と比較して転写材側への熱供給効率がよくなり、消費電力を抑えることもできる。また立ち上がり時間の短縮を図ることもできる。
【0037】
摺動層の厚さは5μm以上100μm以下とすることが好ましい。摺動層の厚みが5μmを下回ると耐久性が不足することがある。摺動層が100μmを上回るとベルトの熱容量が大きくなり、立ち上がり時間が長くなることがある。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の種々の好ましい実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
図1に示すように、被覆ベルト10は、無端状の金属ベルトからなる金属基材1を基層として有し、基材1の外面に設けられた弾性層2と、さらにその外面を覆う離型層3と、基材1の内面を覆う摺動層4とを具備する複合構造をなすものである。被覆ベルト10において、摺動層4が内面側(ベルトガイド面側)であり、離型層3が外面側(加圧ローラ面側)である。なお、金属基材1と弾性層2との間、弾性層2と離型層3との間、あるいは金属基材1と摺動層4との間に、接着のためにプライマー層(図示せず)を設けてもよい。プライマー層はシリコーン系、エポキシ系、ポリアミドイミド系等の公知のものを使用することができ、その厚さは1〜30μm程度である。
【0039】
(金属ベルト;金属基材)
金属基材1は、本発明の金属ベルトにあたるものであり、電鋳により無端状に形成され、結晶配向比I(200)/I(111)147〜250で(200)面優先成長の結晶配向性を有するとともに、炭素含有量は0.03〜0.10質量%である。金属基材1は単独で定着ベルト等の用途に用いることができるが、通常の場合には外周面に、直接またはシリコーンゴムなどの弾性層2を介してフッ素樹脂などの離型層3が被覆形成された被覆ベルト10として用いられる。
【0040】
金属ベルトの厚み、幅、内径などは、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されないが、厚みは、通常10〜1000μm、好ましくは15〜500μm、より好ましくは20〜100μm程度である。熱容量、熱伝導性、機械的強度、可撓性などのバランスの観点から、30〜80μm程度の厚みであることが最も好ましい。電子写真複写機の定着ベルトや転写ベルトなどの用途に適用する場合には、幅を転写紙などの転写材の幅に応じて適宜定めることができる。
【0041】
炭素含有量を所望の範囲に制御するには、光沢剤の種類や添加量を調整する方法が好ましい。光沢剤は、一般に、一次光沢剤と二次光沢剤とに分類され、高光沢を得るために両者が併用されることが多い。これらのうち、一次光沢剤は、=C−SO2−の構造を持つ有機化合物であり、例えば、スルホン酸塩(例えば、ナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム等の芳香族スルホン酸塩)、スルホンイミド(例えば、サッカリン)、スルホンアミド、スルフィン酸などが用いられる。これらの中でも、芳香族スルホン酸塩が好ましい。
【0042】
二次光沢剤としては、C=O、C=C、C≡N、C=N、C≡C、N−C=S、N=N、−CH2−CH−O−等の構造を持つ有機化合物が挙げられる。これらの中でも、2−ブチン−1,4−ジオールなどのアルキンジオールやクマリンなどが代表的なものである。本発明において、無端状金属ベルトの炭素含有量を所望の範囲内に制御するには、例えば、スルファミン酸ニッケルメッキ浴へアルキンジオールを添加して、炭素を共析させる方法が採用されている。炭素含有量は、アルキンジオールの添加量を調整することにより制御することができる。より具体的には、一次光沢剤として、例えば芳香族スルホン酸塩を使用し、二次光沢剤として、例えば2−ブチン−1,4−ジオールの如きアルキンジオールを用いて調整する方法が挙げられる。ただし、本発明は、特定の方法に限定されるものではなく、炭素含有量を上記範囲内に制御できるならば如何なる方法でも採用することができる。
【0043】
(製造方法)
金属ベルトは、硫酸ニッケルや塩化ニッケルを主成分とするワット浴やスルファミン酸ニッケルを主成分とするスルファミン酸浴などのニッケルメッキ浴を用いて、電鋳法により形成される。電鋳法は、母型の表面に厚メッキを行ない、これを母型から剥離して製品を得る方法である。金属ベルトを得るには、ステンレス、黄銅、アルミニウムなどからなる円筒を母型とし、その表面にニッケルメッキ浴を用いてニッケルメッキ膜を形成する。母型がシリコーン樹脂や石膏などの不導体である場合には、黒鉛、銅粉、銀鏡、スパッタリングなどにより、導電性処理を行なう。金属母型への電鋳では、ニッケルメッキ膜の剥離を容易にするために、母型の表面に酸化膜、化合物膜、黒鉛粉塗布膜などの剥離膜を形成するなどの剥離処理を行なうことが好ましい。
【0044】
ニッケルメッキ浴は、ニッケルイオン源、アノード溶解剤、pH緩衝剤、その他の添加剤からなる。ニッケルイオン源としては、スルファミン酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケルなどがあげられる。アノード溶解剤としては、ワット浴の場合、塩化ニッケルがこの役割を果たしており、この他のニッケル浴では、塩化アンモニウム、臭化ニッケルなどが用いられている。ニッケルメッキは、一般に、pH3.0〜6.2の範囲で行なわれるが、この間の望ましい範囲に調整するために、ホウ酸、ギ酸、酢酸ニッケルなどのpH緩衝剤が用いられる。その他の添加剤としては、平滑化、ピット防止、結晶微細化、残留応力の低減などを目的として、例えば、光沢剤、ピット防止剤、内部応力減少剤などが用いられる。
【0045】
ニッケルメッキ浴の組成としては、例えば、スルファミン酸浴の組成としては、スルファミン酸ニッケル300〜600g/L、塩化ニッケル0〜30g/L、ホウ酸20〜40g/L、適量の界面活性剤、適量の光沢剤などを含有するものを挙げることができる。pHは、好ましくは3.5〜4.5である。浴温は好ましくは40〜60℃である。電流密度は、好ましくは0.5〜15A/dm2の範囲とし、高濃度浴の場合には、3〜40A/dmの範囲とする。
【0046】
(離型層)
離型層3は、通常、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの離型性を有する耐熱性樹脂を用いて形成されるが、所望により、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴムとフッ素樹脂との混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂との混合物などの離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層またはゴム組成物層とすることができる。後者の場合、離型層が弾性を有するので、弾性層を省略することができる。
【0047】
離型層が耐熱性樹脂層である場合、その厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは1〜100m、より好ましくは5〜50μmである。離型層が弾性を有するゴム層である場合には、通常、10μm〜5mm、好ましくは20μm〜3mm程度である。被覆ベルトの幅や外径などは、用途に応じて適宜定めることができる。
【0048】
離型層は、前述した通り、通常、フッ素樹脂などの離型性を有する耐熱性樹脂を用いて形成されるが、所望により、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはフッ素ゴムとフッ素樹脂との混合物、シリコーンゴムとフッ素樹脂との混合物などの離型性と弾性とを兼ね備えたゴム層またはゴム組成物層とすることができる。
【0049】
耐熱性樹脂としては、150℃以上の温度で連続使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、劣化も実質的に進行しない耐熱性を有する樹脂が好ましい。本発明の被覆ベルトが定着ベルトなどとして高温条件下で使用される場合を想定すると、耐熱性樹脂は、連続使用可能温度が200℃以上の高温下で耐熱性を有する合成樹脂であることがより好ましい。このような耐熱性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリベンズオキサゾール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ビスマレイミド樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性と離型性に優れる点で、フッ素樹脂を挙げることができる。
【0050】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。
【0051】
これらのフッ素樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。被覆ベルトを定着ベルトや加圧ベルトなどとして用いる場合には、これらのフッ素樹脂の中でも、耐熱性の観点からPTFE及びPFAが好ましい。溶融流動性があり、かつ、表面平滑性に優れたフッ素樹脂被膜が得られ易いことから、PFAがより好ましい。
【0052】
フッ素樹脂は、液状フッ素樹脂塗料として使用することができるが、成形性や離型性を高める上で、粉体の形状(粉体塗料)で使用することが好ましい。フッ素樹脂粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、粉体塗装法により均一な厚みの薄い被膜を形成する上で、10μm以下であることが好ましい。その下限は、通常1μm程度である。特に、平均粒子径10μm以下のPFA粉体を用いることが好ましい。フッ素樹脂粉体を塗装するには、汎用の各種粉体塗装法を採用することができるが、それらの中でも、粉体を帯電させて塗布する静電塗装法(静電粉体吹き付け法)を用いることが、均一で、よく締まった塗着粉体層を形成する上で好ましい。
【0053】
フッ素樹脂は、無端状金属基材の上に塗装した後、常法に従って焼成する。フッ素樹脂層と無端状金属ベルトとの間に弾性層を配置する場合には、無端状金属ベルト基材または予め内面塗装した無端状金属ベルトの上に弾性層を形成した後、フッ素樹脂を塗装、焼成することもできる。しかし、好ましくは、予め内面処理(接着性改善処理)された薄い(30μm以下の)フッ素樹脂チューブを円筒形状金型内に折れじわなどのない様に装着し、弾性層が形成された無端状金属ベルト基材または予め内面塗装した無端状金属ベルトを円柱または円筒型の中子に保持し、フッ素樹脂チューブ内に挿入し、チューブと弾性層の間に接着剤(液状シリコーンゴム)を注入、均一化し、加熱する。焼成後のフッ素樹脂被膜の厚みは、通常、0.1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μm程度である。弾性層が下層にある場合、弾性層の柔軟性を充分に生かすには、この厚みを30μm以下にすることができる。
予め、チューブ化されたフッ素樹脂を使用することにより、表面平滑性及び離型性に優れたフッ素樹脂層を形成することができる。
【0054】
(弾性層)
弾性層2は必要不可欠のものではなく、本発明では任意の構成要素である。したがって、被覆ベルト10を、離型層3/金属基材1/摺動層4の三層構造としてもよいし、また離型層3/金属基材1の二層構造としてもよい。特に、転写材上のトナーのり量が少なくトナー層の凹凸が比較的小さいモノクロ画像の加熱定着用の場合は、被覆ベルト10は弾性層2を省略した三層または二層の形態とすることができる。
【0055】
弾性層2を設ける場合には、通常は1層でよいが、必要に応じて2層以上とすることができる。弾性層2を形成する材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れたゴム材料であることが好ましい。また、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどのゴムにフッ素樹脂を混合したゴム組成物を用いることもできる。それによって複数の弾性層間の密着性を高めることができる。
【0056】
弾性層2の厚み(2層以上ある場合には、合計厚み)は、用途に応じて適宜定めることができ、特に限定されないが、画像形成装置の定着ベルトなどの用途では、通常、20μm〜1000μm、好ましくは150μm〜450μmである。
【0057】
弾性層2の形成に使用されるゴム材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性に優れたゴムが用いられる。耐熱性ゴムとは、被覆ベルトを例えば定着ベルトや加圧ベルトとして使用した場合、定着温度での連続使用に耐える程度の耐熱性を有するものをいう。具体的には、150℃以上の温度で連続使用しても、溶融もしくは軟化することがなく、劣化も実質的に進行しない耐熱性を有するゴム材料が好ましい。
【0058】
ゴム材料としては、耐熱性が特に優れている点で、ミラブルまたは液状のシリコーンゴム、フッ素ゴム、またはこれらの混合物が好ましい。具体的には、ジメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴム等のシリコーンゴム;フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどのフッ素ゴム;などが挙げられる。これらの中でも、金型内に注入しやすい液状シリコーンゴムを用いることが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
(摺動層)
ベルト内周面に摺動層4を形成する場合には、金属基材1の内周面にポリイミドワニスを塗布し、乾燥後、加熱して脱水・閉環(イミド化)させる。耐熱性樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、その溶液を塗布し乾燥させる。摺動層4の厚みも、離型層3の場合と同様に調整することが好ましい。摺動層4の厚さとしては、例えば5μm以上、特に10μm以上が好ましく、100μm以下、特に60μm以下とすることが好ましい。摺動層4の厚みが過剰に薄いと、耐久性が不足することがあり、摺動層4の厚みが過剰に厚いと、立ち上り時間が長くなる。なお、摺動層4には必要に応じて、摺動剤としてフッ素樹脂粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなどを含有させてもよい。
【0060】
【実施例】
参考例1)
参考例1の金属基材として内径34mm、厚み50μmの下記表1に示す金属ベルトを製造し、弾性層2として厚み300μmのシリコーンゴム、離型層3として厚み30μmのPFAチューブを各々プライマーを介して積層し、さらに摺動層4として厚み10μmのポリイミド樹脂層を積層して被覆ベルトを作製した。
【0061】
金属基材(金属ベルト)の製造において、先ず、電解浴として、スルファミン酸ニッケル四水塩500g/l、硼酸35g/lなる水溶液浴をつくり、活性炭を充填した容器で0.5μmのフィルターを用いてろ過しながら、低電流で電解精製を行った。次に、活性炭を取り出し、必要量のピット防止剤を加えた後、一次光沢剤としてナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウムを0.3g/l、二次光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオールを100mg/lそれぞれ添加した。
【0062】
得られた電解浴を用い、ステンレス鋼製の母型を陰極として、電流密度10.5A/dmとし、所定の浴温度下で電鋳を行ない、内径34mm、厚み50μmの電析体を成膜した。次に、純水で洗浄した後、電析体を母型から取り外し、これを金属基材とした。
【0063】
得られた金属ベルト(サンプルA)の結晶配向比I(200)/I(111)は、理学電機株式会社製X線回折装置の商品名:RINT2100 Ultima+/PC(解析ソフト:JADE)を用い、広角X線散乱回折法により(200)面(d値=1.7620nm)と(111)面(d値=0.20340nm)のX線回折強度を測定し、それらの積分強度の比率から求めた。
【0064】
金属ベルト中の炭素含有量及び硫黄含有量は、酸素気流中高周波加熱燃焼−赤外線吸収法により定量した。酸素気流中高周波燃焼−赤外線吸収法は、酸素気流中で試料を加熱し酸化反応させ、試料中の炭素を二酸化炭素と一酸化炭素にするとともに、硫黄は二酸化硫黄にして、一定流量で赤外線検出器に導入し、検出された二酸化炭素,一酸化炭素から試料中の炭素の濃度、二酸化硫黄から硫黄の濃度を算出するものである。検量線は,ブランク及び標準物質を測定して作成する。
【0065】
【表1】
Figure 0004318909
参考例2)
参考例2の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルB)を製造した。
【0066】
二次光沢剤の添加量を除いて上記参考例1と同じ条件下で金属ベルトを製造した。二次光沢剤として,2−ブチン−1,4−ジオールを120mg/l添加した。
【0067】
実施例1
実施例1の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルC)を製造した。
二次光沢剤の添加量を除いて上記参考例1と同じ条件下で金属ベルトを製造した。二次光沢剤として,2−ブチン−1,4−ジオールを180mg/l添加した。
【0068】
実施例2
実施例2の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルD)を製造した。
電流密度を除いて上記実施例1と同じ条件下で金属ベルトを製造した。電流密度は8.9A/dmとした。
【0069】
実施例3
実施例3の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルE)を製造した。
二次光沢剤の添加量と電流密度を除いて上記参考例1と同じ条件下で金属ベルトを製造した。二次光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオールを180mg/l添加した。電流密度は7.9A/dmとした。
【0070】
実施例4
実施例4の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルF)を製造した。
二次光沢剤の添加量と電流密度を除いて上記参考例1と同じ条件下で金属ベルトを製造した。二次光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオールを180mg/l添加した。電流密度は5.8A/dmとした。
【0071】
参考例3
参考例3の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルG)を製造した。
二次光沢剤の添加量と電流密度を除いて上記参考例1と同じ条件下で金属ベルトを製造した。二次光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオールを180mg/l添加した。電流密度は5.3A/dmとした。
【0072】
(比較例1)
比較例1の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルH)を製造した。この比較例1では二次光沢剤の2−ブチン−1,4−ジオールを添加しなかった。他の条件は上記参考例1と同じとした。
【0073】
(比較例2)
比較例2の金属基材として内径34mm、厚み50μmの上記表1に示す金属ベルト(サンプルI)を製造した。この比較例2では二次光沢剤として2−ブチン−1,4−ジオールを60mg/l添加した。他の条件は上記参考例1と同じとした。
【0074】
(比較例3)
比較例3の金属基材として内径34mm、厚み50μmの表1に示す金属ベルト(サンプルJ)を製造した。この比較例3では二次光沢剤として2-ブチン-1,4-ジオールを180mg/l添加し、電流密度を0.5A/dmとしたが、健全な電析体は形成されなかった。
【0075】
以上のようにして得た無端状の金属ベルトから図2に示す試験片20を採取して、それぞれにつき耐久性試験を行った。金属材料引張り試験片20にはJISZ2201に規定された13B号試験片を用いた。試験片20の各部サイズを次に示す。
平行部の幅W;12.5mm
平行部の長さL;60mm
評線間距離;50mm
肩部の半径R;20mm
つかみ部の幅W;20mm
耐久性試験条件は次に示すとおりである。
繰り返し最大応力;550N/mm
繰り返し最小応力;80N/mm
雰囲気温度;250℃
繰り返し周期;15Hz
図3及び上記表1に示すように、熱疲労試験による繰り返し耐久回数は、結晶配向比I(200)/I(111)が50以下のサンプルH(比較例1),I(比較例2)では約13万回と小さく、合格基準の20万回に達しないが、結晶配向比I(200)/I(111)がそれぞれ113,132,169,246,198,147,114の実施例1〜7のサンプルA〜Gではそれぞれ約25万回、約39万回、100万回以上、100万回以上、100万回以上、100万回以上、100万回以上となり、合格基準の20万回を大きく超えた。なお、結晶配向比が100付近のものは繰り返し耐久回数がばらつく傾向にある。また、結晶配向比が高くなるに従って繰り返し耐久回数は増加し、そのばらつきは小さくなる傾向にある。更に、比較例3のサンプルJでは、膜成長が不健全であったために結晶配向比を測定することができなかった。
【0076】
また、図4及び上記表1に示すように、金属ベルトの炭素含有量(質量%)はサンプルA、B,C,D,E,F,Gでは夫々0.030、0.034、0.049,0.061,0.070,0.084,0.088となり、このときの繰り返し耐久回数は上記のように良好である。
【0077】
更に、図5および上記表1に示すように、炭素含有量と配向比との関係は、参考例1,2,実施例1〜4及び参考例3においては、炭素含有量が0.030,0.034,0.049,0.061と上昇するにつれて、結晶配向比I(200)/I(111)も113,132,169,246と上昇するが、炭素含有量が0.070,0.084,0.088と更に上昇すると、配向比は198,147,114と減少する傾向にある。一方、炭素含有量が夫々0.0076,0.019の比較例1,比較例2においては、配向比が15,50にすぎない。また、炭素含有量が0.14の比較例3においては配向比の測定ができなかった。しかるに、参考例1〜3及び実施例1〜4の場合は、上述したように繰り返し回数が合格基準の20万回を大きく越えており、炭素含有量と配向比との間には相関関係があることが明らかである。従って、参考例及び本願発明においては、結晶配向比が80以上250以下でかつ炭素含有量が0.03〜0.10質量%の場合に耐久性に優れた金属ベルトが得られることが確認できた。
【0078】
なお、上記実施例及び比較例では金属ベルトについて試験を行って評価したが、金属基材を一構成要素とする被覆ベルトについても同様に評価することができる。
【0079】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、結晶配向比I(200)/I 111 147以上250以下の結晶配向性を有するとともに、炭素含有量を0.03〜0.10質量%とすることにより、耐久性に優れるとともに、電鋳品の母型からの取り外しが容易でかつ母型からの部分剥離の発生を回避しえる長寿命の金属ベルトを提供できる。
【0080】
また、本発明によれば、電子写真複写機などの画像形成装置における定着ベルトなどとして好適な被覆ベルトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被覆ベルトの断面図。
【図2】本発明の金属ベルトの評価試験に用いた試験片の平面図。
【図3】本発明の金属ベルトにおける配向比と繰り返し耐久回数との関係を示す特性図。
【図4】本発明の金属ベルトにおける炭素含有量と配向比(200)面/(111)面との関係を示す特性図。
【図5】本発明の金属ベルトにおける炭素含有量と繰り返し耐久回数との関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…金属基材(金属ベルト)、
2…弾性層(シリコーンゴム)、
3…離型層(PFA樹脂)、
4…摺動層(ポリイミド樹脂)、
10…被覆ベルト、
20…試験片。

Claims (2)

  1. 電鋳により無端状に形成され、結晶配向比I(200)/I 111 147以上250以下の結晶配向性を有すると共に、炭素含有量が0.049〜0.10質量%であり、ニッケルを主成分とすることを特徴とする金属ベルト。
  2. 電鋳により無端状に形成され、結晶配向比I(200)/I 111 147以上250以下の結晶配向性を有すると共に、炭素含有量が0.049〜0.10質量%である、ニッケルを主成分とする金属基材と、この金属基材の外周上に直接叉は少なくとも1層の弾性層を介して形成された離型層とを具備することを特徴とする被覆ベルト。
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