ところで、内燃機関からの排気の温度が高温の場合や、排気浄化装置から排出される排気の温度が高温の場合には、低圧EGR通路を流れる排気(以下「低圧EGRガス」とも言う)の温度も高温になる傾向がある。その場合、吸気通路やインタークーラ等の吸気系機関部材やターボチャージャのコンプレッサ等を高温のガスが通過する事になるため、吸気系やコンプレッサに動作不良等の不具合が生じる虞があった。特に、排気の温度が高温になる高負荷運転状態では主に低圧EGR通路を用いてEGRが行われるため、この問題が発生し易い。
これに対し、排気の温度が高温の場合には低圧EGRガス量を減量することでこのような不具合を抑制することも考えられるが、そうすると内燃機関に供給されるEGRガスの量が不足してNOxの発生量が増大してしまう虞があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、排気の温度が高温になる状況において吸気系やコンプレッサを保護しつつNOxやスモークの発生量を好適に抑制することを可能にする技術を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関のEGRシステムは、
内燃機関の排気通路にタービンを有し且つ吸気通路にコンプレッサを有するターボチャージャと、
タービンより下流の排気通路とコンプレッサより上流の吸気通路とを接続する低圧EGR通路と、
低圧EGR通路を介して内燃機関に還流する排気(以下「低圧EGRガス」とも言う)
の温度が所定の基準温度を超えているか否かを判定する判定手段と、
判定手段によって低圧EGRガスの温度が基準温度を超えていると判定された場合に、低圧EGRガスの温度が基準温度を超えていると判定されない場合と比較して、低圧EGRガスの量を減量補正する補正手段と、
補正手段による低圧EGRガスの減量補正量に基づいて内燃機関の気筒の圧縮行程における筒内温度を低下させる筒内温度制御手段と、
を備えることを特徴とする。
ここで、所定の基準温度とは、吸気系やコンプレッサに動作不良や破損等の不具合を発生させる虞のない低圧EGRガス温度の上限値に基づいて予め定められる温度である。
上記構成によれば、低圧EGRガスの温度が基準温度を超えて高温になった場合、補正手段によって低圧EGRガスの量が減量補正されるので、吸気通路やコンプレッサを通過する低圧EGRガスが減少する。そのため、大量の高温の低圧EGRガスが吸気通路やコンプレッサを通過することで吸気通路やコンプレッサが過剰に昇温されて動作不良や破損等の不具合が発生することを抑制できる。ここで、低圧EGRガスの減量補正量は、低圧EGRガスの温度に基づいて決定される。例えば、低圧EGRガスの温度が高くなるほど低圧EGRガスの減量補正量が多くされる。
この場合、低圧EGRガス量が減量補正されるので、低圧EGRガスの温度が基準温度を超えていない通常時と比較して内燃機関に供給されるEGRガスの量が減少する。そのため、内燃機関における燃料の燃焼温度を十分に低下させることができなくなり、燃焼過程でのNOxの発生量が増大してしまう虞がある。
これに対し、本発明では、補正手段による低圧EGRガス量の減量補正量に基づいて、内燃機関の気筒の圧縮行程における筒内温度が低下させられるため、低圧EGRガス量の減量補正に起因する燃焼温度の上昇が抑制される。従って、燃焼温度の上昇に起因するNOxの発生量の増大を抑制することができる。ここで、筒内温度制御手段は、例えば低圧EGRガス量の減量補正量が多くなるほど筒内温度を低下させる。
これにより、本発明によれば、排気の温度が高温になった場合においても、吸気系やコンプレッサを過昇温から保護しつつ、NOxの発生量を好適に抑制することが可能になる。
ところで、上記のEGRシステムは、低圧EGRガス量の減量補正によってEGRガス量が不足することに起因する不具合(NOx発生量の増大)を、燃焼温度を低下させることで回避するものであるが、場合によってはEGRガス量が不足すること自体を回避することが必要になる。このような場合に対応するために、本発明のEGRシステムは、以下の構成を採用しても良い。
すなわち、
内燃機関の排気通路にタービンを有し且つ吸気通路にコンプレッサを有するターボチャージャと、
タービンより上流の排気通路とコンプレッサより下流の吸気通路とを接続する高圧EGR通路と、
タービンより下流の排気通路とコンプレッサより上流の吸気通路とを接続する低圧EGR通路と、
低圧EGR通路を介して内燃機関に還流する排気(以下「低圧EGRガス」とも言う)の温度が所定の基準温度を超えているか否かを判定する判定手段と、
判定手段によって低圧EGRガスの温度が基準温度を超えていると判定された場合に、
低圧EGRガスの温度が基準温度を超えていると判定されない場合と比較して、低圧EGRガスの量を減量補正するとともに、高圧EGR通路を介して内燃機関に還流する排気(以下「高圧EGRガス」とも言う)の量を増量補正する補正手段と、
補正手段による高圧EGRガスの増量補正量に基づいて内燃機関の気筒の圧縮行程における筒内温度を低下させる筒内温度制御手段と、
を備えることを特徴とするEGRシステムとしても良い。
この構成によれば、低圧EGRガスの温度が基準温度を超えて高温になった場合、補正手段によって低圧EGRガスの量が減量補正されるとともに、高圧EGRガスの量が増量補正される。これにより、吸気通路やコンプレッサを通過する低圧EGRガスが減少するため、大量の高温の低圧EGRガスが吸気通路やコンプレッサを通過することで吸気通路やコンプレッサが過剰に昇温されて動作不良や破損等の不具合が発生することを抑制できる。ここで、低圧EGRガスの減量補正量は、低圧EGRガスの温度に基づいて決定される。例えば、低圧EGRガスの温度が高くなるほど低圧EGRガスの減量補正量が多くされる。
さらに、高圧EGRガスの量が増量補正されるので、低圧EGRガス量の減量補正に起因する内燃機関へ供給されるEGRガス量の不足を、高圧EGRガス量の増量分によって相殺することができる。これにより、低圧EGRガスの温度が高温になった場合においても、吸気系やコンプレッサを過昇温による不具合から保護しつつ、内燃機関に供給されるEGRガス量の不足を回避することが可能になる。ここで、高圧EGRガスの増量補正量は、低圧EGRガスの減量補正量に基づいて決定される。例えば、低圧EGRガスの減量補正量に起因する気筒内吸入ガスのEGR率の変動を相殺するように高圧EGRガスの増量補正量が決定される。
この場合、高圧EGRガス量が増量補正されるので、低圧EGRガスの温度が基準温度を超えていない通常時と比較して気筒に吸入される吸気ガスの温度が高くなる。そのため、内燃機関における燃料の燃焼温度が高くなり、燃焼過程でのNOxの発生量が増大してしまう虞がある。
これに対し、本発明では、補正手段による高圧EGRガス量の増量補正量に基づいて、内燃機関の気筒の圧縮行程における筒内温度が低下させられるため、高圧EGRガス量の増量補正に起因する筒内温度の上昇が抑制される。従って、燃焼温度の上昇が抑制され、NOxの発生量が増大することを抑制することができる。ここで、筒内温度制御手段は、例えば高圧EGRガス量の増量補正量が多くなるほど筒内温度を低下させる。
よって、上記構成によれば、排気の温度が高温になった場合においても、内燃機関に供給されるEGRガス量の不足を回避し、吸気系やコンプレッサを過昇温から保護しつつ、NOxの発生量を好適に抑制することが可能になる。
ここで、内燃機関に供給されるEGRガス量の不足を回避する必要がある状況としては、触媒制御等の要求に基づいて所望の排気空燃比や排気酸素濃度を実現する必要がある状況を例示できる。
例えば、NOx触媒はNOxを吸蔵する場合と同様のメカニズムによって排気中の硫黄酸化物(SOx)を吸蔵する性質を有し、SOxの吸蔵量が増大するとNOx吸蔵能力が低下するため、適宜吸蔵されたSOxを放出させる処理(以下「硫黄被毒回復処理」とも言う)を行う必要がある。NOx触媒に対して硫黄被毒回復処理を実行する場合には、NOx触媒を昇温するとともにNOx触媒を通過する排気の酸素濃度を低下させる(排気空燃比をリッチ方向に移行させる)必要がある。従って、内燃機関に供給されるEGRガス
量が不足すると排気の酸素濃度を十分に低下させることができなくなり、NOx触媒の硫黄被毒回復処理を適切に実行できなくなる可能性がある。
それに対し、本発明を適用することで、排気の温度が高温の時に低圧EGRガス量が減量される場合であっても、高圧EGRガス量の増量によって要求されるEGRガスが内燃機関に供給されることになるので、硫黄被毒回復処理の要求する排気空燃比を実現することができ、好適に硫黄被毒回復処理を実行することが可能になる。
NOx触媒の硫黄被毒回復処理に限らず、排気の空燃比をリッチ方向に移行させたり酸素濃度を低下させることが要求される場合において、本発明を適用することで、そのような要求と、排気が高温の状況下における吸気系やコンプレッサの保護及びNOx発生量の抑制とを、好適に両立させることが可能になる。
本発明において、筒内温度制御手段が圧縮行程における筒内温度を低下させる方法としては、例えば、(1)吸気弁の開閉タイミングを可変制御する可変動弁機構を備えた構成において、吸気行程における吸気弁の閉弁時期を進角又は遅角させることで気筒の有効圧縮比を低下させる方法、(2)気筒の容積を可変にする可変圧縮比機構を備えた構成において、気筒の機械圧縮比を低下させる方法、(3)可変容量ターボチャージャを備えた構成において、タービンにおける排気の流量特性を可変にするノズルベーンを開き側に操作して過給圧を低下させる方法、(4)インタークーラの冷却効率を高めて吸気温度を低下させる方法、等を例示することができる。なお、有効圧縮比を低下させる手段、機械圧縮比を低下させる手段、過給圧を低下させる手段、吸気温度を低下させる手段としては、上記例示した手段に限られない。
また、判定手段が、低圧EGRガス温度が基準温度を超えているか否かを判定する具体的な方法としては、例えば、(1)低圧EGR通路を流れる排気の温度を検出又は推定し、この検出値又は推定値が所定の基準値を超えている場合に、低圧EGRガス温度が基準温度を超えていると判定する方法、(2)コンプレッサの直上流における吸気ガスの温度を検出又は推定し、この検出値又は推定値が所定の基準値を超えている場合に、低圧EGRガス温度が基準温度を超えていると判定する方法、(3)排気通路の途中にフィルタやNOx触媒等の排気浄化装置が配置されている構成において、排気浄化装置に対する昇温処理や排気浄化能力回復処理等の制御が実行されている場合や、それらの制御を実行終了直後の場合に、低圧EGRガス温度が基準温度を超えていると判定する方法、(4)内燃機関の運転状態が所定の高負荷運転領域に属している場合に、低圧EGRガス温度が基準温度を超えていると判定する方法、等を例示することができる。
本発明の内燃機関のEGRシステムによって、排気の温度が高温になる状況において吸気系やコンプレッサを保護しつつNOxやスモークの発生量を好適に抑制することが可能になる。
図1は本実施例に係る内燃機関のEGRシステムを適用する内燃機関とその吸気系及び排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有する水冷
式の4サイクルディーゼルエンジンである。
内燃機関1の気筒2には、吸気管3及び排気管4が接続されている。気筒2には、気筒2と吸気管3との接続部を開閉する吸気弁(図示せず)が設けられ、また、気筒2と排気管4との接続部を開閉する排気弁(図示せず)が設けられている。
内燃機関1には、吸気弁の開閉タイミングを可変制御する可変動弁機構(以下「VVT」とも言う)11が備えられている。
吸気管3の途中には、吸気管3を流れる吸気の流量を調節する第2吸気絞り弁9が設けられている。第2吸気絞り弁9は、電動アクチュエータによる開閉される。第2吸気絞り弁9より上流の吸気管3には、吸気と外気との間で熱交換を行うインタークーラ8が接続されている。インタークーラ8より上流の吸気管3には、排気のエネルギーを駆動源として作動するターボチャージャ5のコンプレッサハウジング5aが接続されている。コンプレッサハウジング5aより上流の吸気管3には、吸気管3を流れる吸気の流量を調節する第1吸気絞り弁6が設けられている。第1吸気絞り弁6は電動アクチュエータにより開閉される。第1吸気絞り弁6より上流の吸気管3には、吸気管3を流れる吸気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ7が設けられている。エアフローメータ7により吸入空気量が検出される。
一方、排気管4の途中には、ターボチャージャ5のタービンハウジング5bが設けられている。タービンハウジング5bより下流の排気管4には、排気浄化装置10が設けられている。排気浄化装置10は酸化触媒と該酸化触媒の後段に設けられたパティキュレートフィルタ(以下「フィルタ」とも言う)とを有して構成されている。フィルタには吸蔵還元型NOx触媒(以下「NOx触媒」とも言う)が担持されている。排気浄化装置10より下流の排気管4には、排気管4を流れる排気の流量を調節する排気絞り弁19が設けられている。排気絞り弁19は電動アクチュエータにより開閉される。
内燃機関1には、排気管4を流れる排気の一部を低圧で吸気管3へ導き気筒2に還流させる低圧EGR装置30が備えられている。低圧EGR装置30は、低圧EGR通路31、低圧EGR弁32、及び低圧EGRクーラ33を備えて構成されている。
低圧EGR通路31は、排気絞り弁19より下流の排気管4と、コンプレッサハウジング5aよりも上流且つ第1吸気絞り弁6より下流の吸気管3と、を接続している。低圧EGR通路31を通って排気が低圧で吸気管3へ導かれる。本実施例では、低圧EGR通路31を通って気筒2に還流する排気を低圧EGRガスと称している。
低圧EGR弁32は、低圧EGR通路31の流路断面積を変更することにより、低圧EGR通路31を流れる排気(以下「低圧EGRガス」とも言う)の量を変更可能な流量調節弁である。低圧EGRガス量の調量は低圧EGR弁32の開度を調節することによって行われる。なお、低圧EGRガス量の調量は低圧EGR弁32の開度調節以外の方法によって行っても良い。例えば、第1吸気絞り弁6の開度を調節することによって低圧EGR通路31の上流と下流の差圧を変化させ、これによって低圧EGRガス量を調量することができる。
低圧EGRクーラ33は、低圧EGRクーラ33を通過する低圧EGRガスと内燃機関1を冷却する冷却水との間で熱交換をして、低圧EGRガスの温度を低下させる。
また、内燃機関1には、排気管4を流れる排気の一部を高圧で吸気管3へ導き気筒2に還流させる高圧EGR装置40が備えられている。高圧EGR装置40は、高圧EGR通
路41、高圧EGR弁42、及び高圧EGRクーラ43を備えて構成されている。
高圧EGR通路41は、タービンハウジング5bより上流の排気管4と、第2吸気絞り弁9より下流の吸気管3と、を接続している。高圧EGR通路41を通って排気が高圧で吸気管3へ導かれる。本実施例では、高圧EGR通路41を通って気筒2に還流する排気を高圧EGRガスと称している。
高圧EGR弁42は、高圧EGR通路41の流路断面積を変更することにより、高圧EGR通路41を流れる排気(以下「高圧EGRガス」とも言う)の量を変更可能な流量調節弁である。高圧EGRガス量の調量は高圧EGR弁42の開度を調節することによって行われる。なお、高圧EGRガス量の調量は高圧EGR弁42の開度調節以外の方法によって行っても良い。例えば、第2吸気絞り弁9の開度を調節することによって高圧EGR通路41の上流と下流の差圧を変化させ、これによって高圧EGRガス量を調量することができる。また、ターボチャージャ5が可変容量型の場合には、タービンの流量特性を変更するノズルベーンの開度を調節することによっても高圧EGRガス量の調量を行うことができる。
高圧EGRクーラ43は、高圧EGRクーラ43を通過する高圧EGRガスと内燃機関1を冷却する冷却水との間で熱交換をして、高圧EGRガスの温度を低下させる。
内燃機関1には、クランク角度を検出するとともに内燃機関1の機関回転数を検出するクランクポジションセンサ16、運転者がアクセルペダル14を踏み込んだ量に応じた電気信号を出力し内燃機関1の機関負荷を検出するアクセル開度センサ15、吸気管3に流入する新気の流量を検出するエアフローメータ7、コンプレッサハウジング5aに流入する吸気ガスの温度を検出する吸気温度センサ12が設けられている。その他、特に図示及び説明を省略しているが、ディーゼルエンジンとして一般的に備えているセンサ類が備えられている。
以上説明したように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御する電子制御コンピュータであるECU20が併設されている。ECU20には、上記各センサが電気配線を介して接続され、各センサからの出力信号がECU20に入力されるようになっている。また、ECU20には、VVT11、低圧EGR弁32、高圧EGR弁42、第1吸気絞り弁6、第2吸気絞り弁9、排気絞り弁19を含む各種機器類が電気配線を介して接続され、ECU20から出力される指令信号に従ってこれらの機器が制御されるようになっている。
ここで、本実施例において低圧EGR装置30及び高圧EGR装置40を用いて行われる排気の再循環について説明する。低圧EGR装置30によって行われる排気の再循環と、高圧EGR装置40を用いて行われる排気の再循環とは、それぞれ好適に排気の再循環を行うことが可能な内燃機関の運転条件が予め実験により求められている。本実施例では、内燃機関1の運転状態に応じて低圧EGR装置30と高圧EGR装置40とを切り替えて、或いは併用して排気の再循環を行うようにしている。
図2は、内燃機関1の運転状態の領域毎に定められた、低圧EGR装置30及び高圧EGR装置40の切替パターンを示した図である。図2の横軸は内燃機関1の機関回転数を表し、縦軸は内燃機関1の燃料噴射量を表している。なお、ここでは燃料噴射量を内燃機関1の機関負荷を代表するパラメータとして用いているが、他の量(例えばアクセル開度等)を機関負荷を代表するパラメータとしても良い。
図2において、HPL領域は、内燃機関1の運転状態が低負荷低回転の領域であり、こ
こでは高圧EGR装置40によって排気の再循環が行われる。図2のMIX領域は、内燃機関1の運転状態が中負荷中回転の領域であり、ここでは高圧EGR装置40と低圧EGR装置30とが併用されて排気の再循環が行われる。図2のLPL領域は、内燃機関1の運転状態が高負荷高回転の領域であり、ここでは低圧EGR装置30によって排気の再循環が行われる。図2の内燃機関1の運転状態がLPL領域より高負荷又は高回転の領域では、排気の再循環は行われない。
また、上記各領域において、内燃機関1の運転状態に応じた目標EGR率が達成されるように低圧EGR弁32の開度の基本値(以下「基本低圧EGR弁開度」とも言う)及び高圧EGR弁42の開度の基本値(以下「基本高圧EGR弁開度」とも言う)が設定されている。ECU20は内燃機関1の運転状態に応じて基本低圧EGR弁開度及び基本高圧EGR弁開度を読み込み、低圧EGR弁32の開度が基本低圧EGR弁開度となるように低圧EGR弁32を制御するとともに、高圧EGR弁42の開度が基本高圧EGR弁開度となるように高圧EGR弁42を制御する。
このように、内燃機関1の運転状態に応じて高圧EGR装置40と低圧EGR装置30とを切り替えて、或いは併用して排気の再循環を行うことによって、広範な運転領域において排気の再循環を行うことができ、NOxの発生量を低減することができる。
排気浄化装置10のフィルタは排気中の微粒子物質(以下「PM」とも言う)を捕集する。フィルタに捕集されたPMは内燃機関1の運転に伴ってフィルタに堆積していく。フィルタに堆積したPMは内燃機関1からの排気の温度が高温になる時(例えば高負荷運転状態の時)に連続的に酸化除去される。しかし、アイドル状態や低速走行等、連続再生が行われるほど排気の温度が十分に高温にならない運転状態が長時間継続すると、フィルタにおけるPMの堆積量が許容限度を超えて増加する場合がある。この場合、フィルタにおける圧力損失が増大して内燃機関1の運転に不具合を生じさせる可能性があるため、本実施例では、フィルタにおけるPMの堆積量がある許容限度を超えた場合には、フィルタに堆積したPMを強制的に酸化除去する再生処理が行われる。
本実施例におけるフィルタの再生処理では、まず排気絞り弁19を通常制御時と比較して閉弁方向に制御する。これにより排気絞り弁19より上流の排気管4の背圧が上昇し、内燃機関1の負荷が高まり、燃料噴射量が増加して、内燃機関1からの排気の温度が上昇する。これにより、酸化触媒12の温度が上昇し、酸化触媒12が活性化する。ここで燃料添加弁17から排気中に燃料を添加することにより、添加燃料が酸化触媒12において酸化反応し、その反応熱によりフィルタ13に流入する排気の温度が更に上昇する。これにより、フィルタ13に堆積したPMの酸化反応が促進され、フィルタ13に堆積したPMが酸化除去される。
また、排気浄化装置10のNOx触媒は、NOx触媒に流入する排気の酸素濃度が高い時は排気中のNOxを吸蔵し、一方、NOx触媒に流入する排気の酸素濃度が低下した時は吸蔵していたNOxを放出する。その際、排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等の還元成分が存在していれば、NOx触媒から放出されたNOxが還元される。
NOx触媒にはNOxが吸蔵されるのと同様のメカニズムによって排気中の硫黄酸化物(以下「SOx」とも言う)も吸蔵される。NOx触媒におけるSOxの吸蔵量が増大するとNOx触媒のNOx吸蔵能力が低下して排気浄化性能が低下するため、本実施例では、NOx触媒におけるSOxの吸蔵量がある許容限度を超えた場合には、NOx触媒に吸蔵されたSOxを強制的に放出させる硫黄被毒回復処理が行われる。
本実施例におけるNOx触媒の硫黄被毒回復処理では、フィルタの再生処理と同様にN
Ox触媒を昇温するとともに、NOx触媒に流入する排気の酸素濃度を低下させる。これによりNOx触媒に吸蔵されたSOxがNOx触媒から放出される。
以下、フィルタに対する再生処理、NOx触媒に対するNOx還元処理や硫黄被毒回復処理を総称して「触媒制御」とも言う。
ところで、排気浄化装置10に対して触媒制御が実施される場合には、昇温処理や酸化還元反応に伴う反応熱によって排気浄化装置10から排出される排気の温度は非常に高温になるため、低圧EGR通路31に高温の排気が流入する。また、内燃機関1の運転状態が高負荷の場合にも、内燃機関1から排出される排気の温度が高温になるため、低圧EGR通路31に高温の排気が流入することになる。
従って、排気浄化装置10に対して触媒制御が実施されている場合や、内燃機関1の運転状態が高負荷の場合に、低圧EGR装置30による排気の再循環が行われると、高温の低圧EGRガスが吸気管3に流入し、吸気管3やコンプレッサ、インタークーラ8等の吸気系機関部材が高温の吸気ガスに曝されることになる。この場合、吸気系機関部材に動作不良や破損等の不具合が発生する可能性がある。特に、内燃機関1の運転状態が高負荷の場合には、上述のように内燃機関1の運転状態はLPL領域に属し、低圧EGR装置30による排気の再循環が行われるため、この問題はより顕著となる。
これに対し、触媒制御の実施中や高負荷運転時には低圧EGRガス量を減少させたり、或いは低圧EGR装置30による排気の再循環を停止したりすることで吸気系機関部材を過昇温から保護することが考えられるが、このようにすると、低圧EGRガス量が減少して目標EGR率が達成されなくなり、NOxの発生量が増大してしまうという問題がある。
そこで、本実施例のEGRシステムでは、触媒制御の実施中や高負荷運転時等のように排気の温度が高温になり低圧EGRガスの温度が高温になる虞のある状況においては、低圧EGRガス量を減量補正するとともに、低圧EGRガス量の減量補正量に基づいて気筒2の有効圧縮比を低下させるようにした。
具体的には、吸気温度センサ12によってコンプレッサに流入する吸気ガスの温度を検出し、この検出値が所定の基準温度を超えている場合には、低圧EGR弁32の開度を基本低圧EGR弁開度と比較して閉弁方向に補正する。さらに、VVT11によって吸気弁の閉弁時期を吸気行程の下死点より進角又は遅角させる。ここで、所定の基準温度とは、コンプレッサの動作に不具合が生じる虞のない吸気ガスの温度の上限値または該上限値に適当な安全マージンを考慮して予め実験的に求められる吸気ガスの温度である。
これにより、低圧EGRガスの温度が高温になりコンプレッサ等の吸気系に不具合が生じる虞のある状況下では、低圧EGRガス量が減少させられるため、コンプレッサ等の吸気系機関部材を大量の高温の吸気ガスが通過することが抑制される。よって、コンプレッサ等の吸気系が過昇温されて動作不良や破損等の不具合が発生することが抑制される。さらに、吸気弁の閉弁時期が進角又は遅角されることによって気筒2の有効圧縮比が低下させられ、圧縮行程における筒内温度が低下するため、燃料の燃焼温度が低下する。よって、燃焼過程でのNOxの発生量を低下させることができ、低圧EGRガス量の減少に起因するEGR不足によってNOxの発生量が増加してしまうことを抑制できる。
このように、本実施例のEGR制御によれば、低圧EGRガスの温度が高温になる状況下において、コンプレッサ等の吸気系機関部材を過昇温から保護しつつ、NOxの発生量を好適に低減することが可能になる。
以下、本実施例のEGR制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。図3のフローチャートは、本実施例のEGR制御を行うためのルーチンを示すフローチャートである。このルーチンはECU20によって所定期間毎に繰り返し実行される。
まず、ステップS301において、ECU20は、内燃機関1の運転状態を検出する。具体的には、アクセル開度センサ15の検出値に基づいて内燃機関1の機関負荷を検出し、クランクポジションセンサ16の検出値に基づいて内燃機関1の機関回転数を読み込む。
ステップS302では、ECU20は、前記ステップS301において検出した内燃機関1の運転状態に応じた基本高圧EGR弁開度及び基本低圧EGR弁開度を求める。基本高圧EGR弁開度及び基本低圧EGR弁開度は、それぞれ内燃機関1の機関負荷及び機関回転数に応じて定まる関数又はマップとして予め実験により求められている。
ステップS303では、ECU20は、高圧EGR弁42の開度が前記ステップS302において求めた基本高圧EGR弁開度となるように高圧EGR弁42を制御するとともに、低圧EGR弁32の開度が前記ステップS302において求めた基本低圧EGR弁開度となるように低圧EGR弁32を制御する。
ステップS304では、ECU20は、現時点において低圧EGR装置30による排気の再循環が行われているか否かを判定する。具体的には、前記ステップS302で求めた基本低圧EGR弁開度が0か否か、すなわち前記ステップS303で低圧EGR弁32が全閉されているか否かを判定する。ステップS304で肯定判定された場合は、前記ステップS301で検出された内燃機関1の運転状態は図2のHPL領域又はEGR停止領域に属していることになる。この場合、排気の温度が高温になったとしても高温の低圧EGRガスによってコンプレッサ等の吸気系が過昇温される虞はないので、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、ステップS304で否定判定された場合は、前記ステップS301で検出された内燃機関1の運転状態は図2のMIX領域又はLPL領域に属していることになる。従って、排気の温度が高温になった場合、低圧EGRガスが高温になりコンプレッサ等の吸気系に不具合が生じる虞がある。この場合、ECU20はステップS305に進む。
ステップS305では、ECU20は、低圧EGRガスの温度が高温になっているか否かを判定する。具体的には、吸気温度センサ12によって検出されるコンプレッサ直上流における吸気ガス温度が基準温度を超えているか否かを判定する。ステップS305で否定判定された場合は、ECU20は、低圧EGRガスの温度はコンプレッサ等の吸気系に不具合を生じさせるほど高温にはなっていないと判断して本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、ステップS305で肯定判定された場合は、ECU20は、低圧EGRガスの温度が非常に高温になっており、吸気系に不具合を生じさせる虞があると判断してステップS306に進む。なお、本実施例では、ステップS305を実行するECU20が本発明における判定手段に相当する。
ステップS306では、ECU20は、低圧EGR弁32の開度を基本低圧EGR弁開度から閉弁方向に補正する。低圧EGR弁32の開度の補正量は低圧EGRガスの温度に基づいて決定される。本実施例の場合、吸気温度センサ12による検出値が高くなるほど低圧EGR弁32の開度が小さくされる。なお、本実施例においては、ステップS306
を実行するECU20が本発明における補正手段に相当する。
続くステップS307において、ECU20は、VVT11を制御して吸気行程における吸気弁の閉弁時期を進角又は遅角させる。ここで、吸気弁の閉弁時期の進角量又は遅角量は、低圧EGR弁32の開度補正量に基づいて決定される。具体的には、低圧EGR弁32の開度が小さくされるほど、吸気弁の閉弁時期の進角量又は遅角量は大きくされる。なお、本実施例では、ステップS307を実行するECU20が本発明における筒内温度制御手段に相当する。
ステップS307の実行を終了したECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。
なお、本実施例では、低圧EGRガスの温度が高温になる状況下において、吸気系機関部材保護のために低圧EGRガス量を減少させた場合に、内燃機関1に供給されるEGRガス量が不足してNOxの発生量が増大する虞がある所、圧縮行程における筒内温度を低下させることで燃料の燃焼温度を低下させてNOxの発生量の増大を抑制するものである。
これに対し、本実施例の内燃機関の吸・排気系には低圧EGR装置30と高圧EGR装置40との双方が備えられているので、高圧EGRガス量を増量してEGRガス量の不足そのものを解消することによってNOxの発生量の増大を抑制することも可能である。
また、上述した種々の筒内温度(燃焼温度)低下手段を、NOx発生量を好適に低減することができるように適宜組み合わせても良い。例えば、低圧EGRガス量の減量補正に起因するNOx発生量の増加分を、気筒2の有効圧縮比の低下と高圧EGRガス量の増量補正との双方によるNOx低減効果によって相殺するようにしても良い。
次に、本発明の異なる実施例について説明する。本実施例に係る内燃機関のEGRシステムを適用する内燃機関とその吸気系及び排気系の概略構成は実施例1と同様である。本実施例では、排気浄化装置10のNOx触媒に対して硫黄被毒回復処理が実行される時に本発明に係るEGR制御を行う場合について説明する。
NOx触媒に対して硫黄被毒回復処理を実行する際には、上述のようにNOx触媒を非常に高い温度にまで昇温するとともに、NOx触媒に流入する排気の酸素濃度を低下させて排気の空燃比を硫黄被毒回復処理を実行しない場合よりリッチ側に移行させる必要がある。従って、内燃機関1に供給されるEGRガス量が不足すると排気の酸素濃度を十分に低下させることができなくなり、硫黄被毒回復処理を好適に実施できなくなる可能性がある。
そこで、本実施例では、NOx触媒に対して硫黄被毒回復処理が行われる時に低圧EGRガスの温度が非常に高温になった場合は、低圧EGRガス量を減量補正するとともに、低圧EGRガス量の減量補正量に基づいて高圧EGRガス量を増量補正するようにした。さらに、高圧EGRガス量の増量補正量に基づいて気筒2の有効圧縮比を低下させるようにした。
具体的には、吸気温度センサ12によってコンプレッサに流入する吸気ガスの温度を検出し、この検出値が所定の基準温度を超えている場合には、低圧EGR弁32の開度を基本低圧EGR弁開度より小さくするとともに、高圧EGR弁42の開度を基本高圧EGR弁開度より大きくする。さらに、VVT11によって吸気弁の閉弁時期を吸気行程の下死点より進角又は遅角させる。ここで、所定の基準温度とは、コンプレッサの動作に不具合
が生じる虞のない吸気ガスの温度の上限値又は該上限値に適当な安全マージンを考慮して予め実験的に求められる吸気ガスの温度である。
これにより、低圧EGRガスの温度が非常に高温になりコンプレッサ等の吸気系に不具合が生じる虞のある状況下では、低圧EGRガス量が減少させられるため、コンプレッサ等の吸気系機関部材が大量の高温の吸気ガスに曝されて動作不良や破損が発生することが抑制される。この時、低圧EGRガス量が減少するため、内燃機関1に供給されるEGRガス量が減少する。EGRガス量の減少に起因してNOxの発生量が増加する可能性は、実施例1のように筒内温度を低下させることで回避することができる。しかし、硫黄被毒回復処理が行われる場合に、このEGRガス量の減少に起因して排気の空燃比が硫黄被毒回復処理を好適に実施可能な目標空燃比からずれてしまう可能性は、気筒2の有効圧縮比の低下等の筒内温度を低下させる手段によっては回避することが難しい。
それに対し、本実施例では、低圧EGRガス量の減量補正量に基づいて高圧EGRガス量が増加させられる。従って、低圧EGRガス量の減量補正に起因する内燃機関1に供給されるEGRガス量の不足分は、高圧EGRガス量の増量分によって相殺される。よって、硫黄被毒回復処理を好適に実施するための排気の目標空燃比を達成することが可能になる。
このようにすると、高圧EGRガス量が増加するので、気筒に吸入される吸気ガスの温度が上昇して燃焼過程でのNOxの発生量が増大する可能性がある。これに対し、本実施例では、吸気弁の閉弁時期が進角又は遅角されることによって気筒2の有効圧縮比が低下させられ、圧縮行程における筒内温度が低下するため、燃料の燃焼温度が低下する。よって、燃焼過程でのNOxの発生量を低下させることができ、高圧EGRガス量の増加に起因してNOxの発生量が増加してしまうことを抑制できる。
このように、本実施例のEGR制御によれば、硫黄被毒回復処理が実施される時に、低圧EGRガスの温度が高温になった場合においても、排気空燃比が硫黄被毒回復処理を好適に実施可能なための目標排気空燃比から乖離することを抑制し、且つ、コンプレッサ等の吸気系機関部材を過昇温から保護しつつ、NOxの発生量を好適に低減することが可能になる。
以下、本実施例のEGR制御について、図4のフローチャートに基づいて説明する。図4のフローチャートは、本実施例のEGR制御を行うためのルーチンを示すフローチャートである。このルーチンはECU20によって所定期間毎に繰り返し実行される。
まず、ステップS401において、ECU20は、内燃機関1の運転状態を検出する。具体的には、アクセル開度センサ15の検出値に基づいて内燃機関1の機関負荷を検出し、クランクポジションセンサ16の検出値に基づいて内燃機関1の機関回転数を読み込む。
ステップS402では、ECU20は、前記ステップS401において検出した内燃機関1の運転状態に応じた基本高圧EGR弁開度及び基本低圧EGR弁開度を求める。基本高圧EGR弁開度及び基本低圧EGR弁開度は、それぞれ内燃機関1の機関負荷及び機関回転数に応じて定まる関数又はマップとして予め実験により求められている。
ステップS403では、ECU20は、高圧EGR弁42の開度が前記ステップS402において求めた基本高圧EGR弁開度となるように高圧EGR弁42を制御するとともに、低圧EGR弁32の開度が前記ステップS402において求めた基本低圧EGR弁開度となるように低圧EGR弁32を制御する。
ステップS404では、ECU20は、現時点において低圧EGR装置30による排気の再循環が行われているか否かを判定する。具体的には、前記ステップS402で求めた基本低圧EGR弁開度が0か否か、すなわち前記ステップS403で低圧EGR弁32が全閉されているか否かを判定する。ステップS404で肯定判定された場合は、前記ステップS401で検出された内燃機関1の運転状態は図2のHPL領域又はEGR停止領域に属していることになる。この場合、排気の温度が高温になったとしても高温の低圧EGRガスによってコンプレッサ等の吸気系が過昇温される虞はないので、ECU20は、本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、ステップS404で否定判定された場合は、前記ステップS401で検出された内燃機関1の運転状態は図2のMIX領域又はLPL領域に属していることになる。従って、排気の温度が高温になった場合、低圧EGRガスが高温になりコンプレッサ等の吸気系に不具合が生じる虞がある。この場合、ECU20はステップS405に進む。
ステップS405では、ECU20は、低圧EGRガスの温度が高温になっているか否かを判定する。具体的には、吸気温度センサ12によって検出されるコンプレッサ直上流における吸気ガス温度が基準温度を超えているか否かを判定する。ステップS405で否定判定された場合は、ECU20は、低圧EGRガスの温度はコンプレッサ等の吸気系に不具合を生じさせるほど高温にはなっていないと判断して本ルーチンの実行を一旦終了する。
一方、ステップS405で肯定判定された場合は、ECU20は、低圧EGRガスの温度が非常に高温になっており、吸気系に不具合を生じさせる虞があると判断してステップS406に進む。なお、本実施例では、ステップS405を実行するECU20が本発明における判定手段に相当する。
ステップS406では、ECU20は、低圧EGR弁32の開度を基本低圧EGR弁開度から閉弁方向に補正する。低圧EGR弁32の開度の補正量は低圧EGRガスの温度に基づいて決定される。本実施例の場合、吸気温度センサ12による検出値が高くなるほど低圧EGR弁32の開度が小さくされる。
続くステップS407では、ECU20は、前記ステップS406における低圧EGRガス量の減量補正に起因する内燃機関1に供給されるEGRガス量の減少分を高圧EGRガスによって補填する必要があるか否かを判定する。本実施例では、具体的には、排気浄化装置10のNOx触媒に対して硫黄被毒回復処理が実行されているか否かを判定する。
前記ステップS407で肯定判定された場合は、ECU20は、ステップS408に進み、高圧EGRガスを増量補正する。具体的には、高圧EGR弁42の開度を基本高圧EGR弁開度から開弁方向に補正する。高圧EGR弁42の開度の補正量は低圧EGRガスの減量補正量に基づいて決定される。具体的には、低圧EGR弁32の開度の減少量が多くなるほど高圧EGR弁42の開度が大きくされる。ステップS408を実行後、ECU20は、ステップS409に進む。なお、本実施例では、ステップS406〜S408を実行するECU20が本発明における補正手段に相当する。
一方、前記ステップS407で否定判定された場合は、ECU20は、ステップS409に進む。
ステップS409では、ECU20は、VVT11を制御して吸気行程における吸気弁の閉弁時期を進角又は遅角させる。ここで、吸気弁の閉弁時期の進角量又は遅角量は、前
記ステップS407で肯定判定された場合には、換言すると高圧EGRガス量の増量補正が行われている場合には、高圧EGRガスの増量補正量に基づいて決定される。具体的には、高圧EGR弁42の開度が大きくされるほど、吸気弁の閉弁時期の進角量又は遅角量は大きくされる。一方、前記ステップS407で否定判定された場合には、換言すると高圧EGRガス量の増量補正が行われていない場合には、実施例1の場合と同様に、低圧EGRガスの減量補正量に基づいて決定される。具体的には、低圧EGR弁32の開度が小さくされるほど、吸気弁の閉弁時期の進角量又は遅角量は大きくされる。なお、本実施例では、ステップS409を実行するECU20が本発明における筒内温度制御手段に相当する。
ステップS409の実行を終了したECU20は本ルーチンの実行を一旦終了する。
なお、以上述べた実施例は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において上記の実施形態には種々の変更を加え得る。例えば、本実施例では、低圧EGRガスの温度が吸気系に不具合を生じさせるほど高温であるか否かを、コンプレッサ直上流における吸気ガスの温度に基づいて判定しているが、判定方法はこの限りではない。例えば、低圧EGR通路31を流れる排気の温度を推定又は検出し、この推定値又は検出値が所定の基準値を超えているか否かによって判定することもできる。或いは、排気浄化装置10においてフィルタの再生処理やNOx触媒の硫黄被毒回復処理等の触媒制御が実施されている場合や実施終了直後である場合に低圧EGRガスの温度が高温であると判定することもできる。また、内燃機関1の運転状態が所定の高負荷運転領域に属している場合に、低圧EGRガスの温度が高温であると判定することもできる。
また、本実施例では、低圧EGRガス量の調量を低圧EGR弁32の開度調節によって行っているが、上述したように、低圧EGRガス量を調量する方法はこの限りではなく、例えば第1吸気絞り弁6の開度を調節することによって行っても良い。その場合も、第1吸気絞り弁6の開度は低圧EGRガスの温度に基づいて補正される。本実施例の場合は、吸気温度センサ12の検出値が高くなるほど、第1吸気絞り弁6の開度を大きくするようにしても良い。
また、本実施例では、気筒2の有効圧縮比を低下させることで筒内温度を低下させているが、筒内温度を低下させる方法はこの限りではない。例えば、気筒2の機械圧縮比を変更する可変圧縮比機構を備え、可変圧縮比機構によって気筒2の機械圧縮比を低下させることで圧縮行程での筒内温度を低下させることができる。また、吸気ガスの冷却効率を変更可能なインタークーラを備え、該インタークーラの冷却効率を高めることで吸気ガスの温度を低下させ、これによって筒内温度を低下させても良い。或いは、ターボチャージャによる過給圧を低下させることで圧縮行程での筒内温度を低下させるようにしても良い。過給圧を低下させる方法としては、可変容量ターボチャージャのノズルベーンの開度を開き側にしたり、ウェイストゲートバルブの開度を開き側にしたりする方法を例示できる。