JP4695375B2 - 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池 - Google Patents

固体電解質およびそれを含んだ全固体電池 Download PDF

Info

Publication number
JP4695375B2
JP4695375B2 JP2004296139A JP2004296139A JP4695375B2 JP 4695375 B2 JP4695375 B2 JP 4695375B2 JP 2004296139 A JP2004296139 A JP 2004296139A JP 2004296139 A JP2004296139 A JP 2004296139A JP 4695375 B2 JP4695375 B2 JP 4695375B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solid electrolyte
transition metal
lithium
oxide
solid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004296139A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006108026A (ja
Inventor
直樹 松村
正弥 宇賀治
辰治 美濃
靖幸 柴野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2004296139A priority Critical patent/JP4695375B2/ja
Publication of JP2006108026A publication Critical patent/JP2006108026A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4695375B2 publication Critical patent/JP4695375B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Description

本発明は、リチウムイオン伝導性の固体電解質、ならびにその固体電解質を含む全固体電池に関する。
近年、ノート型パソコンや携帯電話などのポータブル電子機器の発達に伴い、高密度・高容量の二次電池が必要とされている。このような用途に用いられる代表的な二次電池として、正極活物質にコバルト酸リチウムを用い、負極活物質に炭素系材料を用いた非水電解液二次電池が挙げられる。このような電池においては、イオンを移動させる媒体として、有機溶媒に電解質を溶解した電解液が使用されている。このような液体の電解質は、電池の圧壊や誤使用によって電池から漏液する可能性がある。
このような問題を解決するために、液体の電解質の代わりに、固体電解質を用いる全固体電池の開発が進められている。中でも、全固体リチウム二次電池は、高エネルギー密度を得ることができる電池として各方面で盛んに研究が行われている。これはリチウムが軽い比重を有し、イオン化傾向が最も大きく、また電気化学的に最も卑な金属であることに起因する。
全固体リチウム二次電池に用いられる固体電解質としては、例えば、ヨウ化リチウム、窒化リチウム、リチウム酸素酸塩、およびこれらの誘導体などが知られている。特に、リン酸リチウム含有固体電解質Liab(1-b)d(ここで、Mは13族元素および14族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素である)、中でもオルトリン酸リチウム(Li3PO4)とオルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)とから得られる固体電解質LixySi(1-y)4(x=3×y+4×(1−y)、0<y<1)は、酸化物系の材料であるにも関わらず、3×10-6S/cmの高いリチウムイオン伝導性を有することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
Y−W.Hu,I.D.Raistrick,and R.A.Huggins,J.Electrochem.Soc.,124,1977,1240−1242
ところが、非特許文献1に記載されるような固体電解質が湿潤雰囲気に曝されると、固体電解質を構成するリン酸リチウム中のリン原子(P)は、湿潤雰囲気中の水分子と反応する。このとき、リン原子は、+5価の酸化状態から、より低い酸化状態に還元される。これにより、リン酸リチウムが分解してしまい、その固体電解質のイオン伝導性が著しく低下する。
このようなイオン伝導性の低下は、リン原子の還元によって生じるため、オルトリン酸リチウムとオルトケイ酸リチウムとからなる2元系の固体電解質のみならず、非特許文献1に記載されるようなリン酸リチウムを含有する固体電解質材料Liab(1-b)d(ここで、Mは、13族元素および14族元素より選ばれる少なくとも一種)においても、本質的な問題である。
また、このようなイオン伝導性の低下が生じると、上記固体電解質を用いる全固体電池では、内部インピーダンスが増加する。このため、その充放電レート特性が著しく損なわれてしまう。
そこで、本発明は、湿潤雰囲気下でも、イオン伝導性の低下を抑制することができる固体電解質、ならびにそのような固体電解質を用いる全固体電池を提供することを目的とする。
本発明は、以下の一般式:
Liab(1-b)cd
(ここで、Mは、13族元素および14族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、TはMo、TaおよびWよりなる群から選ばれる少なくとも1種である遷移金属元素であり、0.426≦a≦6.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦1、1.7725≦d≦8)
で表される固体電解質に関する。なお、本発明の固体電解質は、1種の遷移金属元素Tを含んでいてもよいし、2種以上の遷移金属元素Tを含んでいてもよい。
このように、固体電解質が遷移金属元素を含むことにより、湿潤雰囲気下においても、その固体電解質の電気化学的特性が低下することを防止することができる。
上記固体電解質において、13族元素はB、AlおよびGaより選択される少なくとも1種であり、14族元素はSiおよびGeの少なくとも一方であることが好ましい。
上記一般式において、0.426≦a≦3.99、0.01≦c≦0.5、および1.7725≦d≦4であることが好ましい。
上記一般式において、0.426≦a≦3.99、および1.7925≦d≦7であることが好ましい。
上記一般式において、0.436≦a≦6.99、および1.8025≦d≦8であることが好ましい。
また、本発明は、正極、負極、および正極と負極との間に配置された上記固体電解質を備える全固体電池に関する。
遷移金属元素Tは、リン原子と比較して、還元性が高く、かつ容易に価数が変化し得る。このような遷移金属元素Tを含む固体電解質が湿潤雰囲気に曝された場合、リン原子よりも、遷移金属元素Tが優先的に還元される。これによりリン原子の大部分は還元されず、もとの酸化数が維持され、固体電解質の分解が抑制される。従って、固体電解質の分解に起因するイオン伝導性の低下も抑制することが可能となる。
本発明の固体電解質は、Li(リチウム)、P(リン)、13族元素および14族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種の元素M、O(酸素)、ならびに遷移金属元素Tからなる。この固体電解質は、以下の一般式:
Liab(1-b)cd
(ここで、0.426≦a≦6.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦1、1.7725≦d≦8である)
で表される。なお、遷移金属元素Tは、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびタングステン(W)なる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
例えば、このような固体電解質は、リン酸リチウムと、Mを含む複合酸化物(例えば、Li−M−O系酸化物(ケイ酸リチウム等)など)と、遷移金属元素Tの単体とから作製できる。この場合、リン酸リチウムと、Mを含む複合酸化物と、遷移金属元素Tとは、原子レベルで混合されていてもよいし、粒子レベルで混合されていてもよい。また、本発明の固体電解質は、上記遷移金属元素Tの単体の代わりに、遷移金属元素Tの酸化物、例えばリチウム含有遷移金属酸化物等を用いて作製してもよい。
本発明においては、上記組成式で表される固体電解質において、PとMとの合計が1になるようにしている。PまたはMが完全に欠如した状態では、常温ではイオン伝導性を発現しない。つまり、Li、PおよびOのみ、あるいはLi、MおよびOのみではイオン伝導性は発現しない。
しかし、Liab(1-b)cdで表される固体電解質におけるPのモル比bが0.01〜0.99であれば、イオン伝導性が発現する。例えば、リン酸リチウムとケイ酸リチウムと遷移金属元素からなる固体電解質では、リンのモル比bが0.01〜0.99であった場合、10-9S/cm程度のイオン伝導度が発現する。一方、リン酸リチウム単体もしくはケイ酸リチウム単体からなる固体電解質では、常温においてイオン伝導性は発現しない。
以上のことから、リンのモル比bは0.01以上0.99以下が好ましい。また、PとMとの合計が1であるから、Mのモル比は、0.01以上0.99以下であることが好ましい。
本発明の固体電解質に含まれる遷移金属元素Tは、リン原子と比較して、還元性が高く、かつ容易に価数が変化し得る。このような遷移金属元素Tを含む固体電解質が湿潤雰囲気に曝された場合、リン原子よりも、遷移金属元素Tが優先的に還元される。これによりリン原子の大部分は還元されず、もとの酸化数が維持され、固体電解質の分解が抑制される。従って、固体電解質の分解に起因するイオン伝導性の低下も抑制されることになる。
従って、本発明においては、前記固体電解質の骨格を構成するPとMとの合計に対する遷移金属元素Tのモル比c(以下、モル比cともいう)が重要になる。上記のように、そのモル比cは、0.01以上1以下である。
モル比cが、0.01未満である場合には、固体電解質中に散在するリン原子に対して、遷移金属元素Tの割合が十分でないため、リン原子の還元を十分に抑制することができない。
一方、固体電解質が遷移金属元素Tの単体を用いて作製される場合、モル比cが0.5を超えると電子伝導性が増加する。また、遷移金属元素Tの酸化物を用いて固体電解質が作製される場合、モル比cが1を超えると電子伝導性が増加する。遷移金属元素Tのリチウム含有酸化物を用いて固体電解質が作製される場合、モル比cが1を超えると、リチウムからなる電極との反応性が高くなる。
このような電子伝導性が増加した固体電解質を全固体電池に用いると、その全固体電池が充電状態にある場合に、電池が自己放電する可能性が高くなる。
上記固体電解質は、上記のように、遷移金属元素Tの単体を用いて作製してもよいし、あるいは遷移金属元素Tの単体の代わりに、遷移金属酸化物またはリチウム含有遷移金属酸化物を用いて作製することもできる。用いる遷移金属元素Tの状態(つまり、単体、遷移金属酸化物またはリチウム含有遷移金属酸化物)や、リン酸リチウムとLi−M−O系酸化物との混合比等によって、固体電解質中のリチウムおよび酸素の組成は変化する。このため、PとMとの合計に対するリチウムのモル比a(以下、モル比aともいう)は0.426以上6.99以下であり、また、PとMとの合計に対する酸素のモル比d(以下、モル比dともいう)は1.7725以上8以下である。
次に、本発明の固体電解質について作製方法を示す。
本発明の固体電解質は、例えば、リン酸リチウム、Li−M−O系酸化物(ここで、Mは13族および14族から選ばれる少なくとも1種の元素)および遷移金属元素Tの単体を原料として作製することができる。
また、上記のように、遷移金属元素Tの単体の代わりに、遷移金属酸化物、またはリチウム含有遷移金属酸化物を用いてもよい。
また、用いられる代表的なリン酸リチウムとしては、オルトリン酸リチウム(Li3PO4)が挙げられるが、他のリン酸リチウム(LiPO3)やLi2OとP25の混合物などを用いることもできる。
同様に、Li−M−O系酸化物の代わりに、Li2OとM含有酸化物の混合物などを用いることもできる。
以下に、リン酸リチウム、Li−M−O系酸化物および遷移金属元素Tの単体等から固体電解質を作製する方法について説明する。
(A)遷移金属元素Tの単体を用いて作製されたLi−P−M−T−O系固体電解質
本発明の固体電解質は、種々の方法で作製することができる。例えば、固体電解質の薄膜を作製する場合、その作製方法としては、真空下で行われる薄膜作製法を用いることができる。
上記真空下で行われる薄膜作製方法としては、スパッタリング法、蒸着法などが挙げられる。
上記スパッタリング法としては、例えば、マグネトロン、高周波発生装置などの手段により、アルゴン(Ar)雰囲気下、酸素(O2)雰囲気下、あるいはアルゴンと酸素との混合雰囲気下において、ターゲットをスパッタする方法(例えば、rfマグネトロンスパッタリング法)などが挙げられる。
蒸着法としては、例えば、抵抗に通電することにより生じる熱で蒸着源を加熱蒸着する抵抗加熱蒸着法、イオンビームを蒸着源に照射するイオンビーム蒸着法、蒸着源に電子ビームを照射し加熱蒸着を行う電子ビーム蒸着法、蒸着源にレーザーを照射し加熱蒸着を行うレーザーアブレーション法などが挙げられる。
例えば、スパッタリング法を用いて、固体電解質を作製する場合、ターゲットとして、Li3PO4ターゲットとLi−M−O系酸化物ターゲットと遷移金属元素の単体ターゲットの3つが用いられる。また、Li3PO4に、Li−M−O系酸化物、遷移金属元素Tの単体を所定の混合比で混合したものをターゲットとして用いることもできる。
蒸着法を用いて固体電解質の薄膜を作製する場合には、Li3PO4蒸着源とLi−M−O系酸化物蒸着源と遷移金属元素蒸着源が用いられる。また、Li3PO4に、Li−M−O系酸化物および遷移金属元素Tの単体を所定の混合比で混合したものを蒸着源として用いることもできる。
スパッタリング法もしくは蒸着法において、Li3PO4とLi−M−O系酸化物と遷移金属元素Tの単体の混合比は、所望の固体電解質の組成に応じて、適宜調節される。
また、蒸着法を用いて固体電解質を作製する場合には、Li3PO4の蒸着に抵抗加熱蒸着法を用い、Li−M−O系酸化物および遷移金属元素Tの蒸着に電子ビーム蒸着法を用いるというように、各蒸着源に対して異なる蒸着法を適用することも可能である。
固体電解質を作製する場合に用いられる遷移金属元素Tの単体としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これら以外にも、遷移金属元素Tとして、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、白金(Pt)、および金(Au)よりなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。さらに、本発明の効果を損なわなければ、上記以外の遷移金属元素を用いることもできる。
このような固体電解質に含まれる各元素の価数は、リチウム原子が+1価であり、リン原子が+5価であり、13族および14族原子がそれぞれ+3価および+4価であり、酸素原子が−2価である。遷移金属元素Tは、固体電解質中に金属の状態で取り込まれていると考えられるため、0価とみなすことができる。
また、このような固体電解質を式Liab(1-b)cdで表した場合、0.426≦a≦3.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦0.5、1.7725≦d≦4であることが好ましい。
(B)遷移金属元素Tの単体の代わりに、遷移金属酸化物を用いて作製されるLi−P−M−T−O系固体電解質
本発明の固体電解質は、遷移金属酸化物とLi3PO4とLi−M−O系酸化物とから作製することもできる。この場合も、上記(A)のようなスパッタリング法や蒸着法を用いることができる。
用いられる遷移金属酸化物としては、酸化タングステン(WO3、WO2)、酸化モリブデン(MoO2、MoO3)および酸化タンタル(Ta25)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。また、これら以外にも、遷移金属酸化物Tとして、酸化チタン(TiO2)、酸化バナジウム(V25、VO2)、酸化クロム(Cr23)、酸化マンガン(MnO2、Mn23)、酸化鉄(Fe23、Fe34)、酸化コバルト(Co34、CoO)、酸化ニッケル(Ni34、NiO)、酸化銅(CuO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化銀(Ag2O、Ag22)、酸化白金(PtO、PtO2)、および酸化金(Au23)よりなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。本発明の効果を損なわなければ、上記以外の酸化物を用いることもできる。
このような固体電解質を式Liab(1-b)cdで表した場合、0.426≦a≦3.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦1、1.7925≦d≦7であることが好ましい。
(C)遷移金属元素Tの単体の代わりに、リチウム含有遷移金属酸化物を用いて作製されたLi−P−M−T−O系固体電解質
リチウム含有遷移金属酸化物とLi3PO4とLi−M−O系酸化物とから、本発明の固体電解質を作製することもできる。
上記リチウム含有遷移金属酸化物としては、モリブデン酸リチウム(Li2MoO4)、タンタル酸リチウム(Li3TaO4、LiTaO3)、およびタングステン酸リチウム(Li2WO4)よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、これら以外にも、チタン酸リチウム(Li4TiO4、Li2TiO3)、バナジン酸リチウム(Li3VO4、LiVO3)、クロム酸リチウム(Li2CrO4)、マンガン酸リチウム(LiMnO4、Li2MnO2、LiMnO2)、リチウム鉄酸化物(LiFeO2)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウム銅酸化物(Li2CuO2)、ジルコン酸リチウム(Li4ZrO4、Li2ZrO3)、およびニオブ酸リチウム(Li3NbO4、LiNbO3)よりなる群から選択される少なくとも1種を用いてもよい。もちろん、本発明の効果を損なわなければ、上記以外のリチウム含有遷移金属酸化物を用いることもできる。
このような固体電解質を式Liab(1-b)cdで表した場合、0.436≦a≦6.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦1、1.8025≦d≦8であることが好ましい。
次に、本発明の固体電解質を用いる全固体電池について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の固体電解質を用いる全固体リチウム二次電池の縦断面図を示す。
図1の全固体リチウム二次電池は、基板11、ならびに基板11に順次積層されている第1集電体12、第1電極13、固体電解質14、第2電極15、および第2集電体16からなる。図1では、第1電極13を正極とし、第2電極15を負極としている。第1電極13は、その上面と側面とが固体電解質14で完全に覆われている。第2電極15は、固体電解質14を介して、第1電極13と対向するように配置される。さらに、第2電極15は、その上面と側面とが第2集電体16で完全に覆われている。なお、第1電極13が負極であり、第2電極15が正極であってもよい。
上記基板11としては、アルミナ、ガラス、ポリイミドフィルム等の電気絶縁性基板、シリコン等の半導体基板、あるいはアルミニウムや銅等の導電性基板などを用いることができる。ここで、基板はその表面粗さが小さいことが好ましいため、鏡面板など、表面が平らな基板を用いることが有用である。
第1集電体12としては、薄膜形成可能な電子伝導性材料からなるものを用いることができる。このような材料としては、白金、白金/パラジウム、金、銀、アルミニウム、銅、ITO(インジウム−錫酸化膜)などが挙げられる。また、上記材料以外でも、電子伝導性があり、かつ第1電極と反応しない材料を用いることができる。ただし、基板11として、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などの導電性材料からなるものを用いる場合には、これが集電体として機能するので、基板11に集電体の役割を持たせてもよい。
正極である第1電極13としては、薄膜形成が可能な正極活物質材料からなるものを用いることができる。例えば、全固体リチウム二次電池の場合には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、または遷移金属酸化物である酸化バナジウム(V25)、酸化モリブデン(MoO3)、硫化チタン(TiS2)などからなるものを正極として用いることが可能である。
負極である第2電極15としては、薄膜形成可能な負極活物質材料からなるものを用いることができる。例えば、全固体リチウム二次電池の場合には、グラファイト、ハードカーボンなどの炭素材料、シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiOx(0<x<2))、スズ合金、リチウムコバルト窒化物(LiCoN)、Li金属またはリチウム合金(例えば、LiAl)などからなるものを負極として用いることが可能である。
第2集電体16としては、薄膜形成可能な電子伝導性材料からなるものを用いることができる。このような材料としては、白金、白金/パラジウム、金、銀、アルミニウム、銅、ITO、炭素材料などが挙げられる。また、上記の材料以外にも、電子伝導性であり、かつ固体電解質14および第2電極15と反応しない材料を用いることもできる。
図1の全固体リチウム二次電池には、本発明の固体電解質が用いられる。本発明の固体電解質は、湿潤雰囲気下でも高いイオン伝導度を維持することができる。このため、このような固体電解質を用いる全固体電池は、湿潤雰囲気下でも、その電池性能、例えば、充放電レート特性の低下を抑制することが可能となる。また、このような固体電解質が全固体リチウム二次電池に用いられる場合、その厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
また、このような全固体電池を複数個積層して、積層電池とすることも可能である。
さらに、第2集電体16の上に、樹脂やアルミラミネートフィルムを積層して、電池の保護層とすることもできる。
図1には、本発明のLi−P−M−T−O系固体電解質を、全固体リチウム二次電池に用いた場合を示した。全固体リチウム二次電池以外の電池にも、本発明の固体電解質を用いることができる。
次に、図1に示される全固体電池の作製方法について説明する。
図1に示される全固体電池は、例えば、基板11上に、第1集電体12、第1電極13、固体電解質14、第2電極15、および第2集電体16を、順番に積層することによって作製することができる。
次に、その作製方法を、具体的に説明する。
基板11上に、第1集電体12が、上記のような材料を用いて、スパッタリング法や蒸着法を用いて形成される。スパッタリング法としては、例えば、マグネトロン、高周波発生装置などの手段により、ターゲットを、アルゴン雰囲気下、酸素雰囲気下、あるいはアルゴンと酸素との混合雰囲気下でスパッタするスパッタリング法(例えば、rfマグネトロンスパッタリング法など)が挙げられる。蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、インビーム蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法などが挙げられる。また、第1電極13、第2電極15および第2集電体16も、第1集電体12と同様に、スパッタリング法、や蒸着法を用いて形成することができる。
次いで、第1集電体12上に、正極である第1電極13が、上記のような正極材料を用いて形成される。
次に、固体電解質14が、第1電極13を覆うようにして形成される。
固体電解質14は、上述したように、リン酸リチウムと、Li−M−O系酸化物(Mは13族および14族元素よりなる群から選ばれる少なくとも一種)と、遷移金属元素Tの単体、遷移金属酸化物またはリチウム含有遷移金属酸化物とを用いるスパッタリング法または蒸着法を用いて形成される。
次に、負極である第2電極15が、上記のような負極材料を用いて、固体電解質14の上に形成される。
最後に、第2集電体16が、上記のような集電体用材料を用いて、第2電極15を覆うように形成されることにより、全固体電池が作製される。
全固体電池を、所定の寸法および形状とするために、第1集電体12、第1電極13、固体電解質14、第2電極15、第2集電体16のそれぞれの寸法および形状を規定した所定のマスクを用いて、作製してもよい。
また、上記全固体電池は、上記スパッタリング法や蒸着法のような真空下での薄膜作製方法以外の方法を用いて作製することもできる。
以下に、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
固体電解質中に含まれる遷移金属元素Tのモル比cを、表1に示されるように変化させて、図2に示されるような試験セルを作製した。図2に示されるように、この試験セルは、シリコン基板21、白金集電体層22、固体電解質層23、および白金集電体層24から構成した。
まず、第1工程で、シリコン基板21の所定の位置に、白金をターゲットとするrfマグネトロンスパッタ法を用いて、厚さ0.5μmの白金集電体層22を形成した。このとき、シリコン基板21としては、表面酸化され、鏡面研磨された、表面粗さが30nm以下のものを用いた。また、白金集電体層22の形成時には、窓(20mm×210mm)を有するメタルマスクを用いた。
第2工程で、3元rfマグネトロンスパッタリングを2時間行うことにより、白金集電体層22上に厚さ1.0μmの固体電解質層23を形成した。このとき、窓の寸法が、15mm×15mmであるメタルマスクを用いた。
固体電解質の成膜には、第一ターゲットとしてオルトリン酸リチウムを用い、第二ターゲットとしてオルトケイ酸リチウムを用い、第三ターゲットとしてタングステンの単体を用いた。スパッタガスとしては、アルゴンを使用した。用いられる装置のチャンバー内圧を2.7Paとし、ガス導入量を10sccmとし、オルトリン酸リチウムターゲットに照射される高周波のパワーを200wとした。オルトケイ酸リチウムおよびタングステンターゲットに照射される高周波のパワーを制御することで、Li3.50.5Si0.5C4(0.05≦c≦0.6)のような組成を有する固体電解質を得た。
第3工程で、白金をターゲットとするrfマグネトロンスパッタ法により、固体電解質層23の上に、固体電解質層23からはみ出さないように、厚さ0.5μmの白金集電体層24を形成した。このようにして、図2に示されるような試験セルを作製した。ここで、白金集電体層を形成するとき、10mm×10mmの寸法の窓を有するメタルマスクを用いた。
このようにして得られた試験セルを、それぞれセル3〜9および比較セル2とした。また、遷移金属元素Tを含まない固体電解質を備える試験セルを作製し、これを比較セル1とした。
まず、作製直後に、セル3〜9、ならびに比較セル1および2の交流インピーダンスを測定した。次いで、相対湿度が50%で、温度が20℃の恒温槽中で、これらのセルを2週間保存した後、それぞれのセルの交流インピーダンスを測定した。
上記交流インピーダンス測定では、平衡電圧をゼロとし、印加される電圧の振幅を±10mVとし、そして用いられる周波数領域を106Hzから0.1Hzまでとした。交流インピーダンス測定の結果から、イオン伝導度を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、表1では、作製直後のイオン伝導度を100とし、2週間保存後のイオン伝導度を、換算イオン伝導度として、作製直後のイオン伝導度に対する百分率値として示す。
また、作製直後の試験セルに、平衡電圧から+1.0Vの電圧を印加して、1時間後に流れる電流値を測定した。この得られた結果から、電子伝導度を求めた。試験セル作製直後のイオン伝導度(S/cm)に対する電子伝導度(S/cm)の割合((電子伝導度)/(イオン伝導度))を、電子伝導度/イオン伝導度比率として、表1に併せて示す。
Figure 0004695375
固体電解質が遷移金属元素Tを含むまない比較セル1においては、湿潤雰囲気下で2週間保存した場合、換算イオン伝導度が14.3%となり、そのイオン伝導度が大きく低下した。
一方、固体電解質が遷移金属元素Tを含むセル3〜9および比較セル2においては、遷移金属元素Tのモル比cが0.01以上になると、湿潤雰囲気下で保存しても、その換算イオン伝導度は72%よりも大きく、そのイオン伝導度は、湿潤雰囲気下での保存の前後で大きくは変化しなかった。
また、上記モル比cが0.50以下の場合、電子伝導度比率は、非常に低い値であった。しかし、モル比cが、0.50より大きくなると、電子伝導度/イオン伝導度比率が高くなった。
以上の結果より、モル比cは、0.01以上0.5以下であることが好ましいことがわかる。
固体電解質層を作製するときに、タングステン(W)の単体以外に、モリブデン(Mo)の単体、またはタンタル(Ta)の単体を第3ターゲットとして用い、モル比cを0.2に固定したこと以外、実施例1と同様にして試験セルを作製した。得られた試験セルをそれぞれ、セル21〜セル23とした。作製した固体電解質の組成は、ターゲットに印加する高周波のパワーを調整することで、Li3.50.5Si0.50.24(ここで、Tは、W、MoおよびTaよりなる群から選ばれる1種)とした。なお、セル21は上記セル6と同様なものである。
作製したセルのインピーダンスを実施例1と同様にして測定し、リチウムイオン伝導度を測定した。表2においても、セル作製直後のイオン伝導度を100とし、作製直後のイオン伝導度に対する2週間保存した後のイオン伝導度の割合を百分率で表したものを換算イオン伝導度として示す。
Figure 0004695375
表2より、モリブデン(セル22)およびタンタル(セル23)についても、タングステン(セル22)と同様の効果を発揮することがわかる。これは、遷移金属元素が、リンによりも先に還元され、リン酸リチウムの分解を抑制していることを示している。
また、他の遷移金属元素、すなわち、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、白金(Pt)、および金(Au)よりなる群から選択される少なくとも1種の単体を用いても同様の結果が得られる。また、本発明の効果を損なわなければ、上記以外の遷移金属元素を用いることもできる。
固体電解質層を作製するときに、第二ターゲットとして、オルトケイ酸リチウム(Li4SiO4、)の他に、LiBO2、LiAlO42、LiGaO2、またはLi2GeO3を用いたこと以外、実施例1と同様にして試験セルを作製した。得られた試験セルをそれぞれ、セル31〜35とした。なお、本実施例では、PとMとの比(モル比)が8:2となり、モル比cが0.2となるようにターゲットに印加する高周波のパワーを調整した。
また、比較として、遷移金属元素であるタングステン(W)を含有しないこと以外は、セル31〜35の場合と同様して、比較セル36〜40を作製した。
表3に、セル31〜35および比較セル36〜40に用いられる固体電解質の組成を示す。
作製したセルおよび比較セルのインピーダンスを、実施例1と同様にして測定し、換算イオン伝導度を求めた。得られた結果を表3に示す。
Figure 0004695375
セル31〜35とセル36〜40との比較から、Mとして、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウムを用いた場合にも、この固体電解質がさらに遷移金元素を含むことにより、湿潤雰囲気下での安定性が向上すること、つまり湿潤雰囲気下で保存した後でもそのイオン伝導度があまり低下しないことがわかる。
なお、13族元素および14族元素の添加方法としては、例えば、ケイ素ならば、Li4SiO4に限定されるものではない。例えば、Li2OとSiO2の混合物、Li2OとLi2SiO3の混合物、またはLi2SiO3のみを用いて、固体電解質を作製することにより、固体電解質にケイ素を含ませることが可能となる。
固体電解質を作製するときに、第二ターゲットとして、Li2Si511(Li0.4SiO2.2)またはLi247(Li0.5BO1.75)を用い、固体電解質に含まれるPとMとの合計に対するPのモル分率b(以下、モル比bともいう)およびPとMとの合計に対するMのモル分率1−bを表4および5に示されるように変化させたこと以外、実施例1と同様にして、試験セルを作製した。得られた試験セルを、それぞれセル43〜48およびセル52〜57とした。なお、セル43〜48および52〜57では、Wのモル比cが0.2となるようにターゲットに印加する高周波のパワーを調整した。表4および5に、各セルに含まれる固体電解質の組成を示す。
比較として、Li3PO4のみ、Li2Si511のみ、またはLi247のみを固体電解質として用いた試験セルを作製した。得られた試験セルを、それぞれ、比較セル41、50、および59とした。
また、上記と同様にして、固体電解質が遷移金属を含まない比較セル42、49、51および58を作製した。
比較セル41、42、49、50、51、58および59に用いられる固体電解質の組成式についても、表4および5に示す。
これらの作製したセルを用いて、実施例1と同様にして、換算イオン伝導度を求めた。得られた結果を表4および5に示す。
Figure 0004695375
Figure 0004695375
表4のセル43〜48と比較セル42および49とを比較すると、固体電解質が遷移金属元素を含み、かつ、PとMとの合計に対するPのモル分率b(以下、モル比bともいう)が0.01〜0.99であれば、固体電解質の保存特性が向上することがわかる。なお、このとき、リチウムのモル比aは0.426から2.974まで変化し、酸素のモル比dは2.218から3.982まで変化する。
また、表5のセル52〜57と比較セル51および58とを比較すると、固体電解質が遷移金属元素を含み、かつモル比bが0.01〜0.99であれば、固体電解質の保存特性が向上することがわかる。このとき、リチウムのモル比aは0.525から2.975まで変化し、酸素のモル比dは1.7725から3.9775まで変化する。
一般に、Li−P−M−O系酸化物は、Mとして13族元素および/または14族元素を用いることによって、Liイオン伝導固体電解質として機能することが知られている。このようなLi−P−M−O系固体電解質(Mは13族および/または14族元素)が遷移金属元素を含むことにより、湿潤雰囲気下での安定性が向上することを、本実施例の結果は示している。
なお、ターゲットにLi3PO4のみを用いたセル(比較セル41)、Li2Si511のみを用いたセル(比較セル50)、またはLi247のみを用いたセル(比較セル59)については、所望の組成の膜は得られた。しかしながら、固体電解質のインピーダンスが測定限界を超えたため、イオン伝導度の評価は困難であった。
固体電解質層を作製するときに、タングステンの単体の代わりに、酸化タングステン(WO3)を第三ターゲットとして用い、固体電解質に含まれるWのモル比cを表6に示されるように変化させたこと以外、実施例1と同様にして試験セルを作製した。得られた試験セルを、それぞれセル63〜68、ならびに比較セル62および69とした。なお、固体電解質を作製するときに、LiabSi(1-b)cdにおけるPのモル比bが0.5となるように、ターゲットに印加する高周波のパワーを調整した。
また、遷移金属元素を含まない固体電解質を同様にして作製し、これを比較セル61とした。ここで、比較セル61は比較セル1と同様なものである。
なお、表6に、各セルに含まれる固体電解質の組成を示す。
これらの作製したセルを用いて、実施例1と同様にして、換算イオン伝導度を求めた。
また、実施例1と同様にして、電子伝導度/イオン伝導度比率を測定した。得られた結果を表6に示す。
Figure 0004695375
表6からわかるように、タングステンのモル比cが0.01以上の場合は、湿潤雰囲気下で2週間保存しても、換算イオン伝導度は70%より大きく、そのイオン伝導度は、大きくは変化しなかった。
しかし、モル比cが、0.005以下の場合には、湿潤雰囲気下での保存により、イオン伝導度が大きく低下した。
また、モル比cが1の場合には、電子伝導度比率は、非常に低いのに対し、1より大きくなると、電子伝導度比率が高くなることが分かる。
以上の結果から、遷移金属酸化物を用いて固体電解質を作製しても、その固体電解質の保存特性が向上することがわかった。
また、遷移金属酸化物を用いて作製した固体電解質の場合、そのモル比cは0.01〜1であることが好ましいことがわかる。
固体電解質層を作製するときに、タングステンの単体の代わりに、酸化タングステン(WO3)を第三ターゲットとして用い、固体電解質に含まれるWのモル比cを表7に示されるように変化させたこと以外、実施例1と同様にして試験セルを作製した。得られた試験セルを、それぞれセル73〜77、ならびに比較セル72および78とした。なお、固体電解質を作製するときに、LiabSi(1-b)cdにおけるPのモル比bが0.99となるように、ターゲットに印加する高周波のパワーを調整した。
また、遷移金属元素を含まない固体電解質を同様にして作製し、これを比較セル71とした。
これらの作製したセルを用いて、実施例1と同様にして、換算イオン伝導度を求めた。
また、実施例1と同様にして、電子伝導度/イオン伝導度比率を測定した。得られた結果を表7に示す。
Figure 0004695375
表7からわかるように、タングステンのモル比cが0.01以上の場合は、湿潤雰囲気下で2週間保存しても、換算イオン伝導度は67%より大きく、そのイオン伝導度は、大きくは変化しなかった。
しかし、モル比cが、0.005以下の場合には、湿潤雰囲気下での保存により、イオン伝導度が大きく低下した。
また、モル比cが1の場合には、電子伝導度比率は、非常に低いのに対し、モル比cが1より大きくなると、電子伝導度比率が高くなることが分かる。
以上の結果から、遷移金属酸化物を用いて固体電解質を作製しても、その固体電解質の保存特性が向上することがわかった。
また、上記実施例5と同様に、遷移金属酸化物を用いて作製した固体電解質の場合、そのモル比cは0.01〜1であることが好ましいことがわかる。
固体電解質層を作製するときに、第三ターゲットとして、遷移金属元素の単体の代わりに、リチウム含有遷移金属酸化物であるLi3TaO4を用い、タンタル(Ta)のモル比cを表8に示されるように変化させたこと以外、実施例1と同様にして、試験セルを作製した。得られた試験セルをそれそれセル83〜88、ならびに比較セル82および89とした。なお、LiabSi(1-b)TacdにおけるPのモル比bが0.01となるようにターゲットに印加する高周波のパワーを調整した。
また、比較として、遷移金属酸化物を含まない固体電解質を含む試験セルを作製し、比較セル81とした。
表8に、各セルに含まれる固体電解質の組成を示す。
これらの作製したセルを用いて、実施例1と同様にして、換算イオン伝導度を求めた。得られた結果を表8に示す。
また、これらの固体電解質の電子伝導度/イオン伝導度比率を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表8に示す。
Figure 0004695375
表8に示されるように、Taのモル比cが0.01以上の場合は、湿潤雰囲気下で2週間保存しても、換算イオン伝導度が70%より大きく、そのイオン伝導度は、大きくは変化しなかった。
しかし、モル比cが、0.005以下の場合には、湿潤雰囲気下での保存により、イオン伝導度が大きく低下した。
次に、表8に示される組成式で表される固体電解質と、Li金属との反応性を調べるため、図3に示されるような試験セルを作製した。なお、図3の試験セルは、はシリコン基板31、白金集電体層32、固体電解質層33、およびLi層34から構成した。
図3の試験セルは、図2に示される試験セルの白金集電体層24の代わりに、Li層34を、抵抗加熱蒸着法で形成したこと以外、実施例7と同様にして作製した。得られた試験セルを、セル93〜98、ならびに比較セル91、92および99とした。
得られたセルを、露点温度が−40℃以下のドライエアー環境下にある部屋に設置した20℃の恒温槽の中に2週間保存した。保存後のこれらのセルのLi層の状態を目視で観察した。表9に、2週間保存後のLi層の状態を示す。また、表9には、各セルに用いられている固体電解質の組成も示す。
Figure 0004695375
表9に示されるように、比較セル99では、固体電解質とLi金属とが反応し、Li層が黒色に変化していた。
一方、セル93〜98、ならびに比較セル91および92では、これらのセルをドライエアー環境下で2週間保存したとしても、Li層が安定に存在していた。
以上のように、実施例7および実施例8の結果から、リチウム含有遷移金属酸化物を用いて作製された固体電解質の場合、モル比cは0.01以上1以下であることが好ましいことがわかる。
固体電解質層を作製するときに、第三ターゲットとして、タングステンの単体、モリブデンの単体またはタンタルの単体を用い、PとSiとの合計に対するPのモル分率b(同時に、Siのモル分率も変化する)、およびLiのモル比aを、表10に示されるように変化させたこと以外、実施例1と同様にして試験セルを作製した。得られた試験セルを、それぞれセル101〜109とした。
なお、上記試験セルにおいては、ターゲットに印加する高周波のパワーを調整することで、表10に示されるような組成の固体電解質を形成した。
これらのセル101〜109を用い、実施例1と同様にして、換算イオン伝導度を求めた。得られた結果を表10に示す。
Figure 0004695375
表10から、PとSiとの混合比が変化したとしても、固体電解質が遷移金属元素を含むことにより、湿潤雰囲気下での安定性が向上することがわかる。
以上の結果より、例えば、本発明の固体電解質を全固体電池に用いることにっより、その全固体電池が湿潤雰囲気下にある場合にも、その電気化学的な特性、例えば、充放電レート特性の劣化を抑制できることがわかる。
本発明により、湿潤雰囲気下でも、そのイオン伝導性が高く維持される固体電解質を提供することができる。このような固体電解質は、全固体電池の固体電解質として使用することができる。
本発明の固体電解質を備える全固体電池の縦断面図を概略的に示す。 実施例において作製した試験セルの縦断面図を概略的に示す。 固体電解質上に、集電体の代わりに、Li金属層が形成された試験セルの縦断面図を概略的に示す。
符号の説明
11 基板
12 第1集電体
13 第1電極
14 固体電解質
15 第2電極
16 第2集電体
21、31 シリコン基板
22、24、32 白金集電体層
23、33 固体電解質層
34 リチウム金属層

Claims (7)

  1. 以下の一般式:
    Liab(1-b)cd
    (ここで、Mは、13族元素および14族元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、TはMo、TaおよびWよりなる群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素であり、0.426≦a≦6.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦1、1.7725≦d≦8)
    によって表される固体電解質。
  2. 前記13族元素が、B、Al、およびGaよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載の固体電解質。
  3. 前記14族元素が、SiおよびGeの少なくとも一方である請求項1記載の固体電解質。
  4. 前記一般式において、0.426≦a≦3.99、0.01≦c≦0.5、および1.7725≦d≦4である請求項1記載の固体電解質。
  5. 前記一般式において、0.426≦a≦3.99、および1.7925≦d≦7である請求項1記載の固体電解質。
  6. 前記一般式において、0.436≦a≦6.99、および1.8025≦d≦8である請求項1記載の固体電解質。
  7. 正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置された請求項1〜6のいずれかに記載の固体電解質を備える全固体電池。
JP2004296139A 2004-10-08 2004-10-08 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池 Active JP4695375B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004296139A JP4695375B2 (ja) 2004-10-08 2004-10-08 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004296139A JP4695375B2 (ja) 2004-10-08 2004-10-08 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006108026A JP2006108026A (ja) 2006-04-20
JP4695375B2 true JP4695375B2 (ja) 2011-06-08

Family

ID=36377472

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004296139A Active JP4695375B2 (ja) 2004-10-08 2004-10-08 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4695375B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008112635A (ja) * 2006-10-30 2008-05-15 Kyoto Univ 全固体リチウムイオン電池およびその製造方法
CN102859028A (zh) * 2010-03-22 2013-01-02 应用材料公司 使用远程等离子体源的介电沉积
JP5780322B2 (ja) * 2014-02-13 2015-09-16 トヨタ自動車株式会社 硫化物固体電解質材料およびリチウム固体電池
JP2017027867A (ja) * 2015-07-24 2017-02-02 トヨタ自動車株式会社 リチウムイオン伝導性固体電解質
KR20220122603A (ko) * 2019-12-27 2022-09-02 쇼와 덴코 가부시키가이샤 리튬 이온 전도성 산화물 소결체 및 그의 용도

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02302356A (ja) * 1989-05-17 1990-12-14 Cosmo Oil Co Ltd リチウムイオン導電性固体電解質
JP2004193112A (ja) * 2002-11-27 2004-07-08 Matsushita Electric Ind Co Ltd 固体電解質およびそれを用いた全固体電池

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02302356A (ja) * 1989-05-17 1990-12-14 Cosmo Oil Co Ltd リチウムイオン導電性固体電解質
JP2004193112A (ja) * 2002-11-27 2004-07-08 Matsushita Electric Ind Co Ltd 固体電解質およびそれを用いた全固体電池

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006108026A (ja) 2006-04-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3690684B2 (ja) 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池
JP5540643B2 (ja) 薄膜固体リチウムイオン二次電池及びその製造方法
JP6748344B2 (ja) 全固体電池
JP5316809B2 (ja) リチウム電池およびその製造方法
JP4213474B2 (ja) 二次電池とその製造方法
JP4978194B2 (ja) リチウムイオン電池用正極とこれを用いたリチウムイオン電池
JP5515308B2 (ja) 薄膜固体リチウムイオン二次電池及びその製造方法
JP3677508B2 (ja) 固体電解質およびそれを用いた全固体電池
US9991555B2 (en) Solid electrolyte for a microbattery
JP2011108532A (ja) 固体電解質電池および正極活物質
JP3677509B2 (ja) 固体電解質およびそれを用いた全固体電池
JP5217455B2 (ja) リチウム電池、及びリチウム電池の製造方法
JP2011044368A (ja) 非水電解質電池
CN100413138C (zh) 固体电解质和使用该固体电解质的全固态电池
JP2006156284A (ja) リチウムイオン導電体およびそれを用いた二次電池
JP2011086555A (ja) 非水電解質電池と、その製造方法
JP4695375B2 (ja) 固体電解質およびそれを含んだ全固体電池
US20110070503A1 (en) Solid Electrolyte, Fabrication Method Thereof and Thin Film Battery Comprising the Same
JP4522078B2 (ja) 全固体電池用固体電解質およびそれを用いた全固体電池
JP5272460B2 (ja) リチウム電池
JP7476867B2 (ja) 硫化物固体電解質、電池および硫化物固体電解質の製造方法
JP2006120337A (ja) 電池用負極とこれを用いた電池
JP2009218125A (ja) リチウム電池

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20061225

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071003

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100713

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100722

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100826

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110203

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110225

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140304

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4695375

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150