JP2017027867A - リチウムイオン伝導性固体電解質 - Google Patents

リチウムイオン伝導性固体電解質 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン伝導度が高く、大気中での安定性を備えた酸化物固体電解質ガラスを提供する。【解決手段】本発明の酸化固体電解質ガラスは、少なくともLi、P、B、及びSiを含む元素から構成される酸化物固体電解質ガラスであって、前記酸化物固体電解質ガラスは、大気中に1時間放置後に測定することにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下であり、前記酸化物固体電解質ガラス中のLi、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率が10at.%以下である、ことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン伝導性固体電解質に関する。
従来、固体電解質膜の一面側に正極活物質を含む正極を設け、他面側に負極活物質を含む負極を設けた全固体リチウム電池が提案されている。このような固体電解質に用いるリチウムイオン伝導性物質の中でも、酸化物固体電解質はリチウムイオン伝導性が高い。
このような酸化物固体電解質の中で、LiPOガラスは構造が単純で、安定性が高いが、リチウムイオン伝導性が低いという問題があった。そこで、非特許文献1にはリチウムイオン伝導性を高めた超急冷LSiO−LiBOガラスが開示されている。
辰巳砂、外2名、「窯業協会誌」、1987年、第95巻、第2号、p.197−201
しかしながら、非特許文献1に記載の超急冷LiSiO−LiBOガラスを用いた固体電解質には、製造段階で反応中間体として生成されるLiOが多く残存してしまう。この固体電解質を大気中に長期間放置すると、残存したLiOがCOと反応してリチウムイオン伝導性の低いLiCOに変化するため、時間経過とともにリチウムイオン伝導性が低下してしまうという問題があった。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、リチウムイオン伝導性が高く、大気中での安定性を備えた酸化物固体電解質ガラスを提供することを目的とする。
本発明の酸化物固体電解質ガラスは、少なくともLi、P、B、及びSiを含む元素から構成される酸化物固体電解質ガラスであって、前記酸化物固体電解質ガラスは、大気中に1時間放置後に測定することにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下であり、前記酸化物固体電解質ガラス中のLi、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率が10at.%以下である、ことを特徴とする。
本発明によれば、高いリチウムイオン伝導率を有し、且つ、大気中での安定性を備えた酸化物固体電解質ガラスを提供することができる。
実施例、比較例の酸化物固体電解質ガラスのLi、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率とLiイオン伝導率の関係を示す図である。 実施例、比較例の酸化物固体電解質ガラスのLi、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率とラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積との関係を示す図である。 酸化物固体電解質ガラスのラマンスペクトルを示す図である。 物理蒸着法による酸化物固体電解質ガラスの製造装置の模式図である。 酸化物固体電解質ガラスのLiイオン伝導率の測定装置の模式図である。 本発明の酸化物固体電解質ガラスの組成を示す図である。
本発明の酸化物固体電解質ガラスは、少なくともLi、P、B、及びSiを含む元素から構成される酸化物固体電解質ガラスであって、前記酸化物固体電解質ガラスは、大気中に1時間放置後に測定することにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下であり、前記酸化物固体電解質ガラス中のLi、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率が10at.%以下である、ことを特徴とする。
本発明の酸化物固体電解質ガラスでは、構成元素として従来技術のLi、B、及びSiに加えてPを含有させることにより、LiOの含有量を減少させること、大気中に1時間放置後のラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積を4920以下とすることにより、大気中での安定性を向上させること、Li、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率を10at.%以下とするにより、実用材料として使用できるLiイオン伝導率を維持することが可能となる。
以下、本発明の酸化物固体電解質ガラスについて説明する。
本発明の酸化物固体電解質ガラスは、少なくともLi、P、B、及びSiを含む元素から構成される。構成元素としてPを含有させることにより、従来技術のLi、B、及びSiの元素から構成される酸化物固体電解質と比較して、酸化物固体電解質ガラス中のLiOの含有量を低減することができる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスは、X線回折(XRD)、ラマン分析、及び、誘導結合プラズマ(ICP)分析の結果、製造方法、並びに、Liイオン伝導率等を考慮すると、LiPO−LiBO−LiSiO系のガラスを主体とすると推定される。
本発明においてガラスとは、文字通りの非晶質体だけでなく、非晶質体を含有する物質や、XRDスペクトルでピークが確認されない物質などを含む広い概念で使用する。Liイオン伝導率を高くするために、本発明の酸化物固体電解質ガラスは非晶性が高いものであると好ましい。非晶性の高さは、上述のようにXRDやラマン分析により得られたスペクトルにより判断することができる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスの製造方法に、特に制限はないが、通常、図4に記載の装置を用いて、以下のように製造される。
本発明の酸化物固体電解質ガラスは、物理的蒸着(PVD)法を利用して、少なくともLi、P、B、及びSiを含む元素の蒸気を酸素と共に基板上に共堆積させることで製造することができる。
Li、B、及びSiは、金属の状態で抵抗加熱法又は電子ビーム法を用いてチャンバー11内に揮発させる。各元素の揮発量は、各元素の金属を入れたるつぼ12と基板13の間に設置したシャッターを調節することにより調整することができる。元素ごとに揮発量を調整するためは、別々に揮発させることが好ましい。
Pは、リンクラッカー15を用いてチャンバー11内に揮発させる。ここで、リンクラッカーとは、赤リンを非常に反応性の高い蒸気相のリンへ揮発させる装置であり、市販のものを使用することができる。バルブの開度や温度を調節することにより、リンの揮発量を調整することができる。
酸素プラズマは、酸素プラズマ発生装置を用いてチャンバー11内に供給される。流量及びプラズマパワーを調節することにより、供給量を調整することができる。
こうしてチャンバー11内に特定量が揮発・供給された成分元素は、別々の成分元素として基板13上に堆積され、基板上で初めて他の成分元素と反応する。粒子間に蒸気相での著しい相互作用はないので、物理蒸着法であると見なすことができる。
蒸着中の基板温度を225℃程度とすることで非晶性の高い本発明の酸化物固体電解質ガラスの薄膜14を得ることができる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスの製造では、基板13への各成分の蒸着は、好ましくは真空で、さらに好ましくは1×10−10hPa以下の真空で実施される。このように、真空にすることによって、緻密な薄膜14を形成することができる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスの大きさに特段の限定はない。本発明の固体電解質ガラスが薄膜状である場合には、薄膜の厚さは200nm以上であることが好ましく、500nm以上であることがより好ましく、800nm以上であることがさらに好ましい。また、薄膜の厚さは5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、従来技術のLSiO−LiBO系のガラスを製造する方法では、通常、網目修飾酸化物と呼ばれるLiO、並びに網目形成酸化物と呼ばれるSiO及びBを、原料又は反応中間体として下記式(1)の素反応を経て、酸化物固体電解質ガラスを製造する。
式(1)
1.75LiO+0.5SiO+0.5B→Li3.50.5Si0.53.5
一般的に、網目修飾酸化物と網目形成酸化物を反応させて、酸化物固体電解質ガラスを得る場合には、網目修飾酸化物と網目形成酸化物の光学的塩基度の差が大きい方が、より酸化物固体電解質ガラスを生成する反応が進行しやすいことが知られている。
ここで、網目修飾酸化物とは、LiO、NaO、RbO、CsO、MgO、CaOなど、イオン結合性が強い酸化物であり、ガラスの網目構造を切断する作用を持つ。
網目形成酸化物とは、B、SiO、Pなど、共有結合性が強い酸化物であり、ガラスの網目構造を形成する作用を持つ。
また、光学的塩基度とは、酸化物の塩基度を規定するために提案されたパラメータの1つであり、一般に、光学的塩基度が大きい酸化物ほど網目修飾酸化物としての機能が大きい酸化物といえる。
上記反応式(1)において、網目修飾酸化物であるLiOの光学的塩基度は1.06であるのに対し、網目形成酸化物であるSiO、Bの光学的塩基度は、それぞれ0.47、0.42であり、この程度の差では、式(1)の反応は進行しにくい。
そのため、従来技術のLSiO−LiBO系のガラスを主体とする酸化物固体電解質ガラスには、LiOが多く残存する。
これに対し、本発明では酸化物固体電解質ガラスに構成元素としてLi、Si、Bに加えてPを含有させるため、原料又は反応中間体として光学的塩基度が0.37と低い網目形成酸化物であるPが追加される。結果として、網目修飾酸化物と網目形成酸化物の光学的塩基度の差が大きくなり、下記式(2)の素反応が進みやすくなる。
式(2)
LiO+SiO+B+P→Li‐Si‐B‐P‐O
よって、本発明では構成元素としてLi、Si、Bに加えてPを含有させることで、酸化物固体電解質ガラス中のLiOの残存量を減少させることができると考えられる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスは、大気中に1時間放置後に測定することにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下である。(以下、「大気中に1時間放置後に測定することにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積」の記載を、単に「1090cm−1のピーク面積」と記載することがある。)
1090cm−1のピーク面積を4920以下にすることで、1090cm−1のピーク面積が4920を超える従来技術の酸化物固体電解質ガラスと比較して、大気中に放置してもLiイオン伝導率の低下を抑制し、大気中での安定性を向上することができる。
また、1090cm−1のピーク面積は4091以上であることが好ましい。
図3に示すラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積は、LiCOの含有量と相関を示すことが知られている。本発明の酸化物固体電解質ガラスは1090cm−1のピーク面積が4920以下であり、従来技術の酸化物固体電解質ガラスの1090cm−1のピーク面積より小さい。よって、本発明の酸化物固体電解質ガラスでは大気中に1時間放置後のLiCOの含有量は比較的少ないといえる。
上述のとおり、本発明の酸化物固体電解質ガラスの製造は真空中で行われるため、材料完成直後には、酸化物固体電解質中にLiOが存在する可能性はあるが、LiCOは存在しないと考えられる。
また、同一条件で大気中に放置された酸化物固体電解質ガラス中に存在する1分子のLiOが大気中のCOと下記式(3)の反応をする確率は一定であるため、酸化物固体電解質ガラス中における下記式(3)の反応速度はLiOの含有量に依存すると考えられる。
式(3)
LiO+CO→LiCO
よって、材料完成時に酸化物固体電解質ガラス中のLiOの含有量が多いほど、大気中に1時間放置された酸化物固体電解質ガラス中のLiCO含有量も多いといえる。
以上より、1090cm−1のピーク面積が4920以下である本発明の酸化物固体電解質ガラス完成時におけるLiOの含有量は、1090cm−1のピーク面積が4920を超える酸化物固体電解質ガラス完成時におけるLiOの含有量より少ないといえる。
また、式(3)の反応は不可逆的に進行するため、空気中に放置された酸化物固体電解質ガラス中のLiO量は、そのすべてが消費されるまで、経時的に減少すると考えられる。
1090cm−1のピーク面積が4920を超える酸化物固体電解質ガラスでは、大気中へ放置して1時間経過後もLiイオン伝導率が大きく減少する。従来技術の酸化物固体電解質ガラスでは、大気中に1時間放置した段階ではLiOが完全に消費されていないことから、大気中への放置時間を延長すると、残存したLiOがLiイオン伝導率の低いLiCOに変化するためであると考えられる。
これに対し、1090cm−1のピーク面積が4920以下である本発明の酸化物固体電解質ガラスは、大気中へ放置して1時間経過すると、その後は放置時間を延長してもLiイオン伝導率がほとんど変化しない。本発明の酸化物固体電解質ガラスでは、完成時に残存していたLiOは式(3)の反応に従いLiCOへと変化して消費され、大気中に1時間放置した段階で酸化物固体電解質ガラス中にはLiOはほとんど残存していないためであると考えられる。
よって、大気中に1時間放置後のラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下である本発明の酸化物固体電解質ガラスは、大気中への放置によるLiイオン伝導率の減少が抑制された、大気中での安定性が高い酸化物固体電解質ガラスであるといえる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスでは、Li、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率を10at.%以下とすることで、実用材料として使用できるLiイオン伝導度を示す。
ここで、本発明においてat.%とは、atomic percent(原子パーセント)の略であり、混合物等に含まれる総原子数に対する、目的元素の原子数の割合を表す単位である。
上述のように、本発明の酸化物固体電解質ガラスは、構成元素としてLi、B、及びSiに加えてPを含有させることによりLiOの残存量を減少させることができるが、Pを含有させることにより本発明の酸化物固体電解質ガラス中に形成されるLiPOはLiイオン伝導率が低い。
本発明の酸化物固体電解質ガラスでは、Li、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率を10at.%以下とすることで、LiPOの過剰な形成を阻止することができるため、実用材料として使用できるLiイオン伝導率を維持したまま、LiOの残存量を減少させることができる。
本発明の酸化物固体電解質ガラスにおいて、Li、P、B、及びSiの総量に対するLi、B、及びSiの含有率に特に制限はないが、酸化物固体電解質ガラスを前記のようにLiPO−LiBO−LiSiOと表した場合の化学量論組成のLi含有量に対してLi欠損率が0.7〜7.5at.%の範囲にあることが好ましい。
Li欠損率を0.7at.%以上とすることで、中間生成物であるLiOの残存量を低減することができる。また、7.5at.%以下にすることで、リチウム伝導率が損なわれない程度のLiイオン濃度を維持することができる。
また、本発明の酸化物固体電解質ガラスにおいて、Li、P、B、及びSiの総量に対するBの含有率は7.3〜12.0at.%、Siの含有率は7.3〜11.6at.%の範囲であることが好ましい。
以上より、本発明の酸化物固体電解質ガラスでは、構成元素としてLi、B、及びSiに加えてPを含有させることにより、LiOの含有量を減少させること、大気中に1時間放置後のラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積を4920以下とすることにより、大気中での安定性を向上させること、Li、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率を10at.%以下とすることで、LiPOの過剰な形成を阻止することができるため、実用材料として使用できるLiイオン伝導率を維持することが可能となった。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[固体電解質膜の合成]
(実施例1)
リチウム金属(純度99.9%、シグマアルドリッチ社製)、ホウ素金属(純度99.9%、シグマアルドリッチ社製)、シリコン金属(純度99.98%、アルファエイサー社製)、及びリン(純度99.99%、シグマアルドリッチ社製)を準備した。
リチウム金属、ホウ素金属、シリコン金属を熱分解窒化ホウ素(PBN)製のるつぼに入れ、チャンバー内に設置した。
リンは500cmのバルブ付きリンクラッカー(商品名:EP1−500V−P−IV、ビーコ社製)に入れ、チャンバー内にセットした。
また、酸素プラズマ発生装置(商品名:RFソースHD25、オックスフォードアプライドリサーチ社製)をチャンバーに接続した。
蒸着面が0.785cm(Φ10mm相当)のSi/SiO/Ti/Pt積層体(ノバエレクトリックマテリアル社製)を基板として、原料からの距離が500mmとなるように、チャンバー内に設置した。
チャンバー内を1×10−10hPa以下の真空にした状態で、リチウム金属が入ったるつぼに対しては抵抗加熱を、ホウ素金属及びシリコン金属が入ったるつぼに対しては電子ビーム照射を行うことで、リチウム金属、ホウ素金属、シリコン金属を揮発させた。各金属の揮発量は、るつぼと基板の間に設置されたシャッターを調節することにより調整した。
リンは、上記リンクラッカーを用い、41.2〜84.4℃の範囲の白リンゾーン温度で、揮発させた。リンの揮発量は、バルブの開度や温度を調節することにより調整した。
また、酸素は、10〜500sccmの範囲のO(g)流量で、100〜500Wの範囲のパワーで稼働する原子(すなわち、プラズマ)源を用い、チャンバー内に供給した。酸素プラズマの供給量は、流量及びプラズマパワーを調節することにより調整した。
揮発した各原料と酸素プラズマを225℃の前記基板上で蒸着・反応させることによって、基板上に薄膜状に堆積させた実施例1の固体電解質材料を得た。なお、堆積時間は60分とした。
(実施例2〜21、比較例1〜26)
金属の揮発量をシャッターの調節により、リンの揮発量をバルブの開度や温度の調節により、酸素プラズマの供給量を流量及びプラズマパワーの調節により、適宜調整したこと以外は実施例1と同様に、実施例2〜21、比較例1〜26の固体電解質材料を得た。堆積時間は30〜120分とした。
[Liイオン伝導率の測定]
Liイオン伝導率を求めるために使用したインピーダンス測定装置の構成を示す概略図を図5に示した。インピーダンス測定には、ソーラトロン(商品名:SI1260、株式会社東陽テクニカ製)を用いた。大気中に1時間放置した固体電解質材料をArガスで充填した不活性雰囲気の容器内に設置して測定を行った。また、実施例8、12及び比較例1に関しては、大気中に1日放置した固体電解質材料についても同様の測定を行った。結果を表1〜3及び図1に示す。
[偏光解析法による試料の厚さの測定]
固体電解質材料の厚さは、偏光解析装置(商品名:M−200FI Spectroscopic Ellipsometer、ウーラム社製)によって測定した。具体的には、入射光と反射光の偏光の変化を測定し、s偏光とp偏光の位相差(Δ)及びs偏光とp偏光の反射振幅比角(tanΨ)を求め、波長、入射角度、膜厚、物質の光学定数のパラメータをフィッティングすることにより固体電解質材料の厚さを求めた。
[X線回折測定]
固体電解質材料中の結晶相の組成は、XRD装置(商品名:D8回折装置(GADDS検出器及び高強度点線源を装備)、ブルーカー社製)によるCuKα線を用いたX線回折測定によって求めた。Arガスの不活性雰囲気で、スキャンスピードは10°/min、サンプリング幅は0.020°として、2θ=20〜52°の範囲で測定した。
[ラマン分析]
固体電解質材料完成後に大気中に1時間放置した後の固体電解質材料中の非晶質相の組成及びラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積は、ラマン分光測定装置(商品名:Xplora、株式会社堀場製作所製)を用いて求めた。酸化物固体電解質ガラスの分析によって得られた1090cm−1のピークを有する典型的なラマンスペクトルを、図3に示す。また、結果を表1〜3及び図2に示す。
[誘導結合プラズマ(ICP)分析]
固体電解質材料中の元素の含有量はICP測定装置(商品名:ELAN9000、パーキンエルマー社製)を用いて求めた。試料を、それぞれ硫酸溶媒中に加熱溶解させ、かかる溶液を分析することによって、Li、P、B、及びSiの総量に対する各元素の含有率(at.%)を算出した。結果を表1から表3に示す。
(評価結果)
表1に大気中に1時間放置後の実施例の固体電解質材料の評価結果を、表2に大気中に1時間放置後の比較例の固体電解質材料の評価結果を示す。
XRDスペクトル、ラマンスペクトル、ICP分析の結果より、実施例の固体電解質材料はLiPO−LiBO−LiSiO系のガラス、比較例1の固体電解質材料はLiSiO−LiBO系のガラス、比較例2の固体電解質材料はLiPO系のガラスであることが推定された。なお、データは示していないがXRDスペクトルではピークが確認されなかった。
図6に示すように、実施例の固体電解質材料を前記のLiPO−LiBO−LiSiOであると仮定した化学量論組成のLi含有量に対してLi欠損率が0.7〜7.5at.%の範囲にある材料であった。
また、偏光分析法によって求められた各サンプルの厚さは300〜650nmの範囲であった。
図1に示すように実施例、比較例の固体電解質材料では、Li、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率が高いほどLiイオン伝導率が低下した。
ここで、Pの含有率が10at.%以下である実施例の固体電解質材料では、LiSiO−LiBO系ガラスと推定される比較例1の固体電解質材料とLiPO系ガラスと推定される比較例2の固体電解質材料を一定の比率で混合した場合に想定されるLiイオン伝導率(図1破線)よりも、Liイオン伝導率が高い酸化物固体電解質ガラスとなった。
これに対し、Pの含有率が10at.%を超える比較例の酸化物固体電解質ガラスでは、LiSiO−LiBO系ガラスと推定される比較例1の固体電解質材料とLiPO系ガラスと推定される比較例2の固体電解質材料を一定の比率で混合した場合に想定されるLiイオン伝導率(図1破線)よりもLiイオン伝導率が低い酸化物固体電解質ガラスとなることが明らかとなった。
また、図2に示すように実施例、比較例の固体電解質材料では、Li、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率が高いほど、大気中に1時間放置後に測定をすることにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が減少することが明らかとなった。
上述のように1090cm−1のピーク面積が減少は、LiCO含有量の減少、すなわち、LiO含有量の減少を意味すると考えられた。
ここで、以下の表3に示すように、材料完成後に大気中に1時間放置した後に測定をすることにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が6800と大きく、構成元素としてPを含まない比較例1の固体電解質材料は、大気中に1時間放置後にはLiイオン伝導度が−5.6log(δ/Scm−1)と比較的高いが、材料完成後に1日放置すると−6.4log(δ/Scm−1)まで大幅に減少した。
これに対して、ラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下であり、Pの含有率が10at.%以下である実施例8及び12の固体電解質材料では、大気中に1時間放置後のLiイオン伝導度は−5.6log(δ/Scm−1)と比較例1と同様に高く、かつ、大気中に1日放置しても、ほとんどLiイオン伝導率に変化がなかった。
実施例8及び12の固体電解質材料では、完成時に固体電解質材料中に残存していたLiOはLiイオン伝導率の低いLiCOへと変化して消費され、大気中に放置して1時間経過後には固体電解質材料中にLiOはほとんど残存していないため、固体電解質材料の大気中への放置をさらに継続してもLiイオン伝導率が変化しないと考えられた。
比較例1の固体電解質材料では、大気中に放置して1時間経過後でもLiOが完全に消費されていないため、大気中への放置をさらに継続するとLiCOが増加し、Liイオン伝導率が低下すると考えられた。
表1より、実施例の固体電解質材料はすべて、大気中に1時間放置後のLiイオン伝導率が、LiPO系ガラスと推定される比較例2の固体電解質材料よりも高かった。
また、実施例の固体電解質材料のすべてにおいて、大気中に1時間放置後のLiイオン伝導率が、比較例1の電解質を大気中に1日放置後のLiイオン伝導率−6.4log(δ/Scm−1)以上であった。上述のように、大気中に1時間放置後のラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が、4920以下である実施例の固体電解質材料は、大気中への放置を継続しても、Liイオン伝導度は大きく変化しないと考えられる。従って、実施例の固体電解質材料を大気中に1日放置後においても、比較例1及び比較例2の固体電解質材料より、高いLiイオン伝導度を発揮すると考えられた。
さらに、実施例の固体電解質材料は、大気中に1時間放置後のLiイオン伝導率が、−6.1log(δ/Scm−1)以上であり、実用材料として使用できる範囲にあった。
以上の結果から、本発明によって、高いリチウムイオン伝導率を有し、且つ、大気中での安定性を備えた、従来にない酸化物固体電解質ガラスを提供できることが明らかとなった。
11 チャンバー、12 るつぼ、13 基板、14 酸化物固体電解質ガラスの薄膜、15 リンクラッカー

Claims (1)

  1. 少なくともLi、P、B、及びSiを含む元素から構成される酸化物固体電解質ガラスであって、
    前記酸化物固体電解質ガラスは、大気中に1時間放置後に測定することにより得られるラマンスペクトルの1090cm−1のピーク面積が4920以下であり、
    前記酸化物固体電解質ガラス中のLi、P、B、及びSiの総量に対するPの含有率が10at.%以下である、
    ことを特徴とする、酸化物固体電解質ガラス。
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