JP3677508B2 - 固体電解質およびそれを用いた全固体電池 - Google Patents

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Description

本発明は、全固体電池に関し、特に、全固体薄膜リチウム二次電池に用いられる固体電解質に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話などのポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が、非常に大きくなってきている。
上記のような用途に用いられる電池においては、従来から、イオンを移動させる媒体として、有機溶媒のような液体からなる電解質が使用されている。このため、電池からの電解質の漏液などの問題が生じる可能性がある。
このような問題を解決するために、液体の電解質の代わりに、固体電解質を用いる全固体電池の開発が進められている。なかでも、全固体リチウム二次電池は、高エネルギー密度を得ることができる電池として各方面で盛んに研究が行われている。これは、Liが小さな原子量を有し、そのイオン化傾向が最も大きく、また電気化学的に最も卑な金属であるため、例えば、Li金属を負極活物質に用いると高い起電力が得られるからである。
上記全固体リチウム二次電池に用いられる固体電解質としては、例えば、ハロゲン化リチウム、窒化リチウム、リチウム酸素酸塩、およびこれらの誘導体などが知られている。例えば、特許文献1では、オルトリン酸リチウム(Li3PO4)に窒素Nを導入して得られる窒化リン酸リチウム(LixPOyz:式中、x、yおよびzは、x=2.8、および3z+2y=7.8を満たす。)は、酸化物系の材料であるにも関わらず、1×10-6〜2×10-6S/cmの非常に高いリチウムイオン伝導性を有することが報告されている。
ところが、上記窒化リン酸リチウムが湿潤雰囲気に曝されると、窒化リン酸リチウムを構成するリン原子(P)は、湿潤雰囲気中の水分子と反応する。このとき、リン原子は、+5価の酸化状態からより低い酸化状態に還元される。これにより、窒化リン酸リチウムが分解してしまい、そのイオン伝導性が著しく低下する。
このようなイオン伝導性の低下が生じると、窒化リン酸リチウムからなる固体電解質を用いる全固体電池では、内部インピーダンスが増加する。このため、その充放電レート特性が著しく損なわれてしまう。
米国特許第5,597,660号明細書
そこで、本発明は、湿潤雰囲気下でも、イオン伝導性の低下を抑制することができる固体電解質、ならびにそのような固体電解質を用いる全固体電池を提供することを目的とする。
本発明の固体電解質は、一般式:
Liabcde
(式中、MはSi、B、Ge、Al、C、GaおよびSよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、かつa、b、c、dおよびeは、それぞれa=0.62〜4.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=1.070〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0を満たす。)で表される。
前記式において、a=0.62〜2.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=1.070〜3.965、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0であるのが好ましい。
前記式において、a=1.61〜2.99、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=2.060〜3.975、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0であるのが好ましい。
前記式において、a=1.61〜2.99、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=3.050〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0であるのが好ましい。
前記式において、a=2.6〜3.0、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=2.060〜3.975、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0であるのが好ましい。
前記式において、a=2.61〜3.99、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=3.050〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0であるのが好ましい。
前記式において、a=2.62〜4.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=3.050〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0であるのが好ましい。
また、本発明は、正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置された上記の固体電解質を備える全固体電池に関する。
本発明によれば、湿潤雰囲気下でも、イオン伝導性の低下を抑制することができる固体電解質を提供することができる。
本発明に係る固体電解質は、Li(リチウム)、O(酸素)、N(窒素)、P(リン)、ならびにSi(ケイ素)、B(ホウ素)、Ge(ゲルマニウム)、Al(アルミニウム)、C(炭素)、Ga(ガリウム)およびS(硫黄)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素Mからなる。
例えば、この固体電解質は、リンと元素Mとを含むリチウム酸素酸塩の窒化物からなる。この場合、リンと元素Mとが原子レベルで混ざり合い、リチウム酸素酸塩の窒化物を形成していてもよい。また、リンを含むリチウム酸素酸塩の窒化物である窒化リン酸リチウムと、元素Mを含むリチウム酸素酸塩の窒化物とが粒子レベルで混合されていてもよい。
本発明の固体電解質は、一般式Liabcde(式中、MはSi、B、Ge、Al、C、GaおよびSよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、かつa、b、c、dおよびeは、それぞれa=0.62〜4.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=1.070〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0を満たす。)で表される。
ところで、従来より用いられている固体電解質である窒化リン酸リチウムは、湿潤雰囲気に放置すると、水分と容易に反応し、そのイオン伝導性が著しく低下する。これは、窒化リン酸リチウムに含まれる一部のP(リン)が、大気中の水分と反応し+5価から還元されることに起因する。
これに対し、本発明に係る固体電解質は、窒化リン酸リチウム中のリンと酸素との結合状態と比較して、熱力学的に酸素とより安定な結合を形成する元素Mを含み、これにより、固体電解質の構造が安定化し、リンの耐還元性が向上し、固体電解質中のPを+5価の状態に保持することができる。このため、湿潤雰囲気下における固体電解質のイオン伝導性の低下を抑制することができる。
上記の一般式におけるcが0.01〜0.99のとき、湿潤雰囲気下での保存によるイオン伝導性の低下が抑制される。cが0.01未満の場合、リンの還元を十分に抑制することができない。また、cが0.10〜0.99であるのがより好ましい。固体電解質にリンと元素Mとを含むリチウム酸素酸塩の窒化物を用いた場合、この窒化物は固溶体を形成し、電池内において化学的に安定な固体電解質が得られる。
さらに、cが0.1〜0.5であるのが特に好ましい。このとき本発明の固体電解質中のリン濃度を上げることにより、Li金属などと接しても化学的な安定性が得られるだけでなく、さらに高いリチウムイオン伝導性を有する固体電解質が得られる。
eが0.01〜0.50のとき、高いイオン伝導性が得られ、かつ湿潤雰囲気下での保存によるイオン伝導性の低下が抑制される。eが0.01未満の場合、高いイオン伝導性を保持することが困難となる。また、固体電解質にリチウム酸素酸塩の窒化物を用いた場合、eが0.50を超えると、リチウム酸素酸塩の骨格構造が壊れることにより、イオン伝導性が低下しやすい。このような、イオン伝導性が低下した固体電解質を薄膜二次電池全固体電池に用いると当該固体電解質の抵抗が大きくなるため、充放電特性が著しく損なわれる。
また、用いる元素Mの種類や、本発明の固体電解質中のリンと元素Mとの割合等により、電解質の組成は変化する。すなわち、上記一般式におけるa、b、およびdは、原材料として用いる元素Mを含むリチウム酸素酸塩の組成や種類、および本発明の固体電解質中のリンと元素Mとの割合等に依存する。このため、aは0.62〜4.98の範囲、bは0.01〜0.99の範囲、dは1.070〜3.985の範囲である。
上記の固体電解質は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した以外の元素を含んでいてもよい。
本発明の固体電解質は、例えば、リンを含むリチウム酸素酸塩であるオルトリン酸リチウム(Li3PO4)と、上記の元素Mを含むリチウム酸素酸塩とを原料として、酸素の一部を窒素化することで作製することができる。なお、原料である元素Mを含むリチウム酸素酸塩は1種類でも、2種類以上の混合物でもよい。また、オルトリン酸リチウム以外にも、リンを含むリチウム酸素酸塩として他のリン酸リチウム(例えばLiPO3など)やLi2OとP25の混合物などを用いることもできる。また、元素Mを含むリチウム酸素酸塩以外に、Li2Oと、元素Mを含むリチウム酸素酸塩との混合物、またはLi2Oと、元素Mを含む酸化物との混合物を用いてもよい。また、窒化リン酸リチウムおよび上記の元素Mを含むリチウム酸素酸塩の窒化物を原料としても作製することができる。
例えば、オルトリン酸リチウムと、LiBO2、LiAlO2、またはLiGaO2とを原料として用いる場合、すなわち上記の一般式において、MがB、Al、またはGaである固体酸化物を作製する場合、aは0.62〜2.98、bは0.01〜0.99、cは0.01〜0.99、dは1.070〜3.965、eは0.01〜0.50、およびb+c=1であるのが好ましい。
例えば、オルトリン酸リチウムと、Li2SiO3、Li2GeO3、またはLi2CO3とを原料として用いる場合、すなわち上記の一般式において、MがSi、Ge、またはCである固体酸化物を作製する場合、aは1.61〜2.99、bは0.01〜0.99、cは0.01〜0.99、dは2.060〜3.975、eは0.01〜0.50、およびb+c=1であるのが好ましい。
例えば、オルトリン酸リチウムと、Li2SO4とを原料として用いる場合、すなわち上記の一般式において、MがSである固体酸化物を作製する場合、aは1.61〜2.99、bは0.01〜0.99、cは0.01〜0.99、dは3.050〜3.985、eは0.01〜0.50、およびb+c=1であるのが好ましい。
例えば、オルトリン酸リチウムと、Li3BO3とを原料として用いる場合、すなわち上記の一般式において、MがBである固体酸化物を作製する場合、aは2.6〜3.0、bは0.01〜0.99、cは0.01〜0.99、dは2.060〜3.975、eは0.01〜0.50、およびb+c=1であるのが好ましい。
例えば、オルトリン酸リチウムと、Li4SiO4またはLi4GeO4とを原料として用いる場合、すなわち上記の一般式において、MがSiまたはGeである固体酸化物を作製する場合、aは2.61〜3.99、bは0.01〜0.99、cは0.01〜0.99、dは3.050〜3.985、eは0.01〜0.50、およびb+c=1であるのが好ましい。
例えば、オルトリン酸リチウムと、Li5AlO4とを原料として用いる場合、すなわち上記の一般式において、MがAlである固体酸化物を作製する場合、aは2.62〜4.98、bは0.01〜0.99、cは0.01〜0.99、dは3.050〜3.985、eは0.01〜0.50、およびb+c=1であるのが好ましい。
オルトリン酸リチウムおよび上記のリチウム酸素酸塩は、上記一般式を満たすような組成になるように用いればよい。
本発明に係る固体電解質は、薄膜状であるのが好ましい。その膜厚は適宜制御することができるが、0.1〜10μmであるのが好ましい。
また、本発明に係る固体電解質は、結晶質または非晶質のどちらでもよい。
さらに、本発明に係る固体電解質としては、リンと元素Mとが原子レベルで混ざり合い、リチウム酸素酸塩の窒化物の固溶体を形成していてもよい。また、リンを含むリチウム酸素酸塩の窒化物である窒化リン酸リチウムと、元素Mを含むリチウム酸素酸塩の窒化物とが粒子レベルで混合されている混合物の状態でもよい。
本発明に係る固体電解質の作製方法としては、従来の固体電解質である窒化リン酸リチウム単体を作製する場合と同様に、例えば、真空装置を用いた薄膜形成技術によって作製する方法が挙げられる。もちろん、これ以外の方法を用いてもよい。
本発明の固体酸化物からなる薄膜の作製方法としては、例えば、マグネトロンまたは高周波などの手段により、ターゲットを窒素(N2)でスパッタするスパッタリング法や、蒸着法と窒素イオンを導入するイオンビーム照射とを組み合わせた方法が挙げられる。この蒸着法としては、抵抗により蒸着源を加熱して蒸着させる抵抗加熱蒸着法、電子ビームにより蒸着源を加熱して蒸着させる電子ビーム蒸着法、およびレーザーにより蒸着源を加熱して蒸着させるレーザーアブレーション法などが挙げられる。
このとき、ターゲットまたは蒸着源として、オルトリン酸リチウム(Li3PO4)と、元素Mを含むリチウム酸素酸塩とを用いる必要がある。
例えば、スパッタリング法の場合は、ターゲットとしてリンを含むリチウム酸素酸塩としてオルトリン酸リチウムと、元素Mを含むリチウム酸素酸塩とが用いられる。例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法およびレーザーアブレーション法の場合は、蒸着源としてリンを含むリチウム酸素酸塩としてオルトリン酸リチウムと、元素Mを含むリチウム酸素酸塩とが用いられる。
スパッタリング法および蒸着法のいずれの場合でも、窒素を導入することにより、オルトリン酸リチウムと元素Mを含むリチウム酸素酸塩とに含まれる酸素の一部をそれぞれ同時に窒素化させることができるという利点がある。
さらに、蒸着源としてオルトリン酸リチウムを用いた抵抗加熱蒸着法と、蒸着源として元素Mを含むリチウム酸素酸塩を用いた電子ビーム蒸着法とを組み合わせてもよい。これ以外に抵抗加熱蒸着法とレーザーアブレーション法、および電子ビーム蒸着法とレーザーアブレーション法を組み合わせてもよい。
また、元素Mを含むリチウム酸素酸塩をリン酸リチウムとともに所定の混合比で混合して得られたリチウム酸素酸塩の混合物をターゲットや蒸着源としてもよい。
また、ターゲットや蒸着源として、上記のオルトリン酸リチウム以外にも、リンを含むリチウム酸素酸塩である他のリン酸リチウム(例えばLiPO3など)やLi2OとP25の混合物などを用いることもできる。また、元素Mを含むリチウム酸素酸塩以外に、Li2Oと、元素Mを含むリチウム酸素酸塩との混合物、またはLi2Oと、SiO2、Bi23、GeO2、Al23、もしくはGa23との混合物を用いてもよい。
本発明に係る全固体電池は、上記の固体電解質を用いることにより得られる。
本発明に係る固体電解質を用いた全固体電池の一例として、全固体薄膜リチウム二次電池の概略縦断面図を図2に示す。
全固体薄膜リチウム二次電池は、基板21、ならびに基板21上に設けられた第1集電体22、第1電極23、本発明に係る固体電解質24、第2電極25、および第2集電体26より構成される。なお、ここでは第1電極を正極層、第2電極を負極層とするが、第1電極が負極層で、第2電極が正極層でも構わない。
この電池は、真空装置を用いた薄膜作製方法により、基板21上から第1集電体22、第1電極23、固体電解質24、第2電極25、第2集電体26の順序で積層することにより得られる。もちろん、真空装置を用いた薄膜作製方法以外の方法でも構わない。さらに、第2集電体26の上に保護層として樹脂やアルミラミネートフィルムを配しても構わない。
基板21としては、例えば、アルミナ、ガラス、およびポリイミドフィルムなどの電気絶縁性基板、シリコンなどの半導体基板、アルミニウムおよび銅などの導電性基板を用いることができる。導電性基板を用いる場合、第1集電体22と第2集電体26とが導通することがないように、第1集電体22と基板21との境界面、あるいは第2集電体26と基板21との境界面の少なくともいずれかに電気絶縁性を有する材料を配置する。ここで、基板表面の表面粗さは小さい方が好ましいため、鏡面板などを用いることが有効である。
基板21上に配される第1集電体22としては、例えば、白金、白金/パラジウム、金、銀、アルミニウム、銅、ITO(インジウム−錫酸化膜)など電子伝導性のある材料が用いられる。これら以外にも、電子伝導性を有し、且つ第1電極23と反応しない材料であれば、集電体として用いることができる。
この第1集電体22の作製方法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム蒸着法、または電子ビーム蒸着法などが用いられる。ただし、基板21にアルミニウム、銅、ステンレスなどの導電性を有する材料を用いた場合は、第1集電体22は配置されなくてもよい。
第1電極(正極層)23には、例えば、リチウム二次電池の正極材料として用いられるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、およびマンガン酸リチウム(LiMn24)、ならびに酸化バナジウム(V25)、酸化モリブデン(MoO3)、硫化チタン(TiS2)などの遷移金属酸化物を用いることが好ましい。これら以外にも、リチウム二次電池の正極に用いられる材料であれば、第1電極23に用いることができる。
第1電極(正極層)23の作製方法としては、スパッタリング法や、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム蒸着法、電子ビーム蒸着法、あるいはレーザーアブレーション法などが用いられる。
固体電解質24としては、上述の本発明に係る固体電解質が用いられる。
第2電極(負極層)25には、例えば、リチウム二次電池の負極材料として用いられるグラファイトおよびハードカーボンなどの炭素材料(C)、ならびにスズ(Sn)を含む合金、リチウムコバルト窒化物(LiCoN)、リチウム金属(Li)、およびリチウム合金(例えば、LiAl)などを用いることが好ましい。これら以外にも、リチウム二次電池の負極に用いられる材料であれば、第2電極25に用いることができる。
第2電極(負極層)25の作製方法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム蒸着法、電子ビーム蒸着法あるいはレーザーアブレーション法などが用いられる。
第2集電体26としては、第1集電体22と同様の材料が用いられる。また、この第2集電体26の作製方法としては、第1集電体22と同様の方法が用いられる。
上記の全固体電池を複数個積層して積層電池を構成することも可能である。
また、本実施の形態では、本発明に係る全固体電池の一例として、全固体薄膜リチウム二次電池を場合を示したが、本発明は、この電池のみに限定されない。
以下に、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
《実施例1〜10》
固体電解質を評価するための試験セルを以下に示す手順で作製した。試験セルの概略縦断面図を図1に示す。
第1工程として、表面粗さが30nm以下の表面が酸化された鏡面のシリコン基板11における所定の位置に、20mm×10mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、rfマグネトロンスパッタ法により白金からなる膜を形成し、膜厚0.5μmの白金集電体層12を得た。
次に、第2工程として、上記で得られた白金集電体層12上に、15mm×15mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、rfマグネトロンスパッタ法により、表2に示す膜厚1.0μmの固体電解質層13を得た。
このとき、ターゲットとしてオルトリン酸リチウム(Li3PO4)と、表1に示すリチウム酸素酸塩とを用い、スパッタガスには窒素(N2)を使用した。
Figure 0003677508
rfマグネトロンスパッタ法の条件として、チャンバー内圧は2.7Pa、ガス導入量は10sccm、オルトリン酸リチウムのターゲットに照射される高周波のパワーは200w、およびスパッタ時間は2時間とした。また、リンと元素Mをモル比1:4の割合で含む、表2に示す組成のリチウム酸素酸塩の固体電解質が得られるように、元素Mを含むリチウム酸素酸塩のターゲットに照射される高周波のパワーを制御した。
さらに、第3工程として、上記で得られた固体電解質層13上に、当該固体電解質層13からはみ出さないように10mm×10mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、rfマグネトロンスパッタ法で白金からなる膜を形成し、膜厚0.5μmの白金集電体層14を得た。
《比較例1》
第2工程において、ターゲットとしてオルトリン酸リチウムを用い、実施例1と同様の方法により窒化リン酸リチウム(Li2.8PO3.450.3)からなる固体電解質薄膜を形成し、膜厚1.0μmの固体電解質を得た。この第2工程以外は、実施例1と同様の方法により試験セルを作製した。
[評価]
固体電解質膜の耐水性を評価するために、上記で作製した実施例1〜10および比較例1の各試験セルを、それぞれ湿度が50%、温度が20℃の恒温槽中で2週間保存した。そして、各実験用セルについて、作製直後、1日保存後、2日保存後、1週間保存後、および2週間保存後に、それぞれ交流インピーダンス測定を行い、イオン伝導度の経時変化を調べた。交流インピーダンス測定の条件として、平衡電圧はゼロ、印加される電圧の振幅は±10mV、および周波数領域は105〜0.1Hzとした。その測定結果よりイオン伝導度を決定した。
その評価結果を表2に示す。なお、イオン伝導度は、試験セル作製直後のインピーダンス測定結果から得られたイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。
Figure 0003677508
表2より、実施例1〜10の固体電解質では、湿潤雰囲気で保存してもイオン伝導度の低下が抑制されることがわかった。しかし、元素Mを含まない比較例1の固体電解質では、保存後に大きくイオン伝導性が低下した。
これより、実施例1〜10では、固体電解質の劣化が抑制されていることがわかった。
《実施例11〜18および比較例2》
第2工程において、リチウム酸素酸塩にオルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)を用いた。そして、表3に示す組成の固体電解質が得られるように、オルトケイ酸リチウムのターゲットに照射される高周波のパワーを制御した。すなわち、一般式LiabSicdeで表される固体電解質においてcを0.005〜0.99の範囲で変化させた。これ以外は実施例1と同様の方法により試験セルを作製した。
そして、作製直後と2週間保存後の各試験セルについて、実施例1と同様の方法により評価を行った。その評価結果を表3に示す。なお、イオン伝導度は、試験セル作製直後におけるイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。さらに、作製直後のイオン伝導度を、比較例2のイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。
Figure 0003677508
表3より、一般式LiabSicdeで表される固体電解質においてcが0.01以上である実施例11〜18では、湿潤雰囲気下での保存後においてイオン伝導度の低下が抑制されることがわかった。特に、cが0.1〜0.99である実施例13〜18では、イオン伝導度の低下がさらに抑制されていた。しかし、cが0.005である比較例2では、保存後に大きくイオン伝導性が低下した。
また、表3よりcが0.5以下である実施例11〜15で高いイオン伝導性が得られることがわかった。
このことから、リン酸リチウムと、オルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)を原料として作製された本発明に係る固体電解質は、一般式LiabSicdeで表され、cが0.01〜0.99のとき、湿潤雰囲気下での保存によるイオン伝導性の低下が抑制されることがわかった。この中でも、cが0.1〜0.99であるのがより好ましく、さらに、cが0.1〜0.5であるのが特に好ましいことがわかった。
《実施例19〜24および比較例3》
第2工程において、リチウム酸素酸塩にゲルマン酸リチウム(Li4GeO4)を用いた。そして、表4に示す組成の固体電解質が得られるように、ゲルマン酸リチウムのターゲットに照射される高周波のパワーを制御した。すなわち、一般式LiabGecdeで表される固体電解質においてcを0.005〜0.99の範囲で変化させた。これ以外は実施例1と同様の方法により試験セルを作製した。
そして、作製直後と2週間保存後の各試験セルについて実施例1と同様の方法により評価を行った。その評価結果を表4に示す。なお、イオン伝導度は、試験セル作製直後のイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。さらに、作製直後のイオン伝導度を、比較例3のイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。
Figure 0003677508
表4より、一般式LiabGecdeで表される固体電解質においてcが0.01以上である実施例19〜24では、湿潤雰囲気での保存後においてイオン伝導度の低下が抑制されることがわかった。特に、cが0.1〜0.99である実施例20〜24では、イオン伝導度の低下がさらに抑制されていた。しかし、cが0.005である比較例3では、保存後に大きくイオン伝導性が低下した。
また、表4よりcが0.5以下である実施例19〜22で高いイオン伝導性が得られることがわかった。
このことから、リン酸リチウムとゲルマン酸リチウム(Li4GeO4)とを原料として作製された本発明に係る固体電解質は、一般式LiabGecdeで表され、cが0.01〜0.99でのとき、湿潤雰囲気下での保存によるイオン伝導度の低下が抑制されることがわかった。この中でも、cが0.1〜0.99であるのがより好ましく、さらに、cが0.1〜0.5であるのが特に好ましいことがわかった。
《実施例25〜28および比較例4〜5》
第2工程において、表5に示す組成の固体電解質が得られるように、抵抗加熱蒸着法と窒素イオンを導入するイオンビーム照射とを組み合わせた方法により導入する窒素量を変化させた。すなわち、一般式LiabSicdeで表される固体電解質においてeを0.005〜1.0の範囲で変化させた。抵抗加熱蒸着法の条件として、オルトリン酸リチウムとオルトケイ酸リチウム(Li4SiO4)とを蒸着源にし、窒素イオンビームのイオンエネルギーを100eVとし、表5に示す組成の固体電解質が得られるように、窒素イオンの電流密度を制御した。蒸着時間は20分とした。これ以外は実施例1と同様の方法により試験セルを作製した。
そして、作製直後と2週間保存後の各試験セルについて、実施例1と同様の方法により評価を行った。その評価結果を表5に示す。なお、イオン伝導度は、試験セル作製直後におけるイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。さらに、作製直後のイオン伝導度を、実施例27のイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。
Figure 0003677508
表5より、一般式LiabSicdeで表される固体電解質においてeの値が0.005〜1.0ではeの値によらず湿潤雰囲気下での保存後においてイオン伝導度の低下が抑制されることがわかった。
また、eの値が0.005または1.0である比較例4または比較例5に比べて、eの値が0.01〜0.50である実施例25〜28で、高いイオン伝導性が得られることがわかった。
このことから、リン酸リチウムとオルトケイ酸リチウムとを原料として作製された本発明に係る固体電解質は、一般式LiabSicdeで表され、eが0.01〜0.50のとき、高いイオン伝導性を有し、かつ湿潤雰囲気下での保存によるイオン伝導性の低下が抑制されることがわかった。
《実施例29〜31》
第2工程において、リチウム酸素酸塩として、SiおよびGeを含むリチウム酸素酸塩と、ゲルマン酸リチウムおよびホウ酸リチウムの混合物と、BおよびAlを含むリチウム酸素酸塩とをそれぞれ用いた。そして、オルトリン酸リチウムとSiおよびGeを含むリチウム酸素酸塩(Li4Si0.5Ge0.54)との窒化物(実施例29)、オルトリン酸リチウムとゲルマン酸リチウム(Li4GeO4)およびホウ酸リチウム(LiBO2)との窒化物(実施例30)、ならびにオルトリン酸リチウムとBおよびAlを含むリチウム酸素酸塩(LiB0.5Al0.52)との窒化物(実施例31)からなる表6に示す組成の固体電解質が得られるように、これらのリチウム酸素酸塩のターゲットに照射される高周波のパワーを制御した。これ以外は、実施例1と同様の方法により試験セルをそれぞれ作製した。
そして、作製直後と2週間保存後の各試験セルについて実施例1と同様の方法により評価を行った。その評価結果を表6に示す。なお、イオン伝導度は、試験セル作製直後のイオン伝導度を100とし、これに対する指数として示した。
Figure 0003677508
表6より、一般式Liabcdeで表される固体電解質において、元素Mが異なる2種類の元素を含む場合においても、湿潤雰囲気下での保存後におけるイオン伝導度の大きな変化はなく、いずれもイオン伝導度の低下が抑制されることがわかった。
《実施例32〜41》
本発明の固体電解質を用いた全固体電池を評価するため、図2に示す構成の全固体電池を以下に示す手順で作製した。
第1工程として、表面粗さが30nm以下の表面が酸化された鏡面のシリコン基板21における所定の位置に、20mm×12mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、rfマグネトロンスパッタ法により白金からなる膜を形成し、膜厚0.5μmの第1集電体22を得た。
次に、第2工程として、上記で得られた第1集電体22上に、10mm×10mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、rfマグネトロンスパッタ法によりコバルト酸リチウム(LiCoO2)からなる薄膜を形成し、膜厚1.0μmの第1電極(正極層)23を得た。
次に、第3工程として、上記で得られた第1電極23上に、15mm×15mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、rfマグネトロンスパッタ法により、表8に示す膜厚1.0μmの固体電解質24を得た。
このとき、ターゲットとしてオルトリン酸リチウム(Li3PO4)と、表7に示すリチウム酸素酸塩とを用い、スパッタガスには窒素(N2)を使用した。
Figure 0003677508
rfマグネトロンスパッタ法の条件として、チャンバー内圧は2.7Pa、ガス導入量は10sccm、オルトリン酸リチウムのターゲットに照射される高周波のパワーは200w、およびスパッタ時間は2時間とした。また、リンと元素Mとをモル比1:4の割合で含む、表8に示す組成のリチウム酸素酸塩の固体電解質が得られるように、元素Mを含むリチウム酸素酸塩のターゲットに照射される高周波のパワーを制御した。
第4工程として、上記で得られた固体電解質24上に、10mm×10mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、抵抗加熱蒸着法でリチウム金属からなる薄膜を形成し、膜厚0.5μmの第2電極(負極層)25を得た。
さらに、第5工程として、上記で得られた第2電極25上に、20mm×12mmの大きさの窓を有するメタルマスクを配置し、第1集電体22と接触せず、第2電極25を完全に覆うように、rfマグネトロンスパッタ法で銅からなる薄膜を形成し、膜厚1.0μmの第2集電体26を得た。
《比較例6》
第3工程において、ターゲットとしてオルトリン酸リチウムを用い、実施例32と同様の方法により窒化リン酸リチウム(Li2.8PO3.450.3)からなる薄膜を形成し、膜厚1.0μmの固体電解質を得た。この第3工程以外は、実施例32と同様の方法により電池を作製した。
[評価]
上記で作製した実施例32〜41および比較例6の各全固体電池を、相対湿度が50%、温度が20℃の恒温槽中で2週間保存した。そして、各電池について、作製直後、および2週間保存後に、それぞれ交流インピーダンス測定を行った。交流インピーダンス測定の条件として、平衡電圧はゼロ、印加される電圧の振幅は±10mV、および周波数領域は105〜0.1Hzとした。その測定結果より内部インピーダンスを決定した。
内部インピーダンスの測定結果を表8に示す。なお、内部インピーダンスは、電池の作製直後の内部インピーダンスを100とし、これに対する指数として示した。
Figure 0003677508
表8より、実施例32〜41の電池では、湿潤雰囲気で保存しても内部インピーダンスに大きな変化は見られなかった。しかし、元素Mを含まない比較例6の電池では、保存後に固体電解質が劣化したため、著しく内部インピーダンスが増大した。
これより、実施例32〜41では、固体電解質の劣化が抑制されていることがわかった。
本発明の湿潤雰囲気下において劣化しにくい固体電解質は全固体電池に用いることができる。
本発明の実施例における固体電解質評価用試験セルの概略縦断面図である。 本発明の実施例における全固体電池の概略縦断面図である。
符号の説明
11 シリコン基板
12、14 白金集電体層
13 固体電解質層
21 基板
22 第1集電体
23 第1電極
24 固体電解質
25 第2電極
26 第2集電体

Claims (8)

  1. 一般式:
    Liabcde
    (式中、MはSi、B、Ge、Al、C、GaおよびSよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、かつa、b、c、dおよびeは、それぞれa=0.62〜4.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=1.070〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0を満たす。)で表される固体電解質。
  2. 前記式において、a=0.62〜2.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=1.070〜3.965、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0である請求項1記載の固体電解質。
  3. 前記式において、a=1.61〜2.99、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=2.060〜3.975、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0である請求項1記載の固体電解質。
  4. 前記式において、a=1.61〜2.99、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=3.050〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0である請求項1記載の固体電解質。
  5. 前記式において、a=2.6〜3.0、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=2.060〜3.975、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0である請求項1記載の固体電解質。
  6. 前記式において、a=2.61〜3.99、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=3.050〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0である請求項1記載の固体電解質。
  7. 前記式において、a=2.62〜4.98、b=0.01〜0.99、c=0.01〜0.99、d=3.050〜3.985、e=0.01〜0.50、およびb+c=1.0である請求項1記載の固体電解質。
  8. 正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置された請求項1記載の固体電解質を備える全固体電池。
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