JP4694048B2 - ステンレス鋼の高速デスケーリング処理法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続焼鈍工程で高速(50m/min以上)で焼鈍されるステンレス鋼の表面に生成するスケールを処理炉後面において、連続的に効率的に且つ高速で除去すること、及び環境上問題となる硝酸イオンを含まない処理液を用いることを特徴とする高速デスケール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間圧延されたCr含有ステンレス鋼板は、通常連続炉で焼鈍される。このとき生成した酸化スケールは、表面の平滑さ、美麗さ、さらにその後の加工時の問題から、完全に除去することが必須となっている。この焼鈍皮膜の除去方法については、必要に応じて、硝酸とふっ酸、硫酸と硝酸とふっ酸などを組み合わせた混酸が適用されている。しかし、効率的に高速で処理する方法については明確にされていない。
【0003】
特開昭63−45480号公報は、焼鈍後のCr含有鋼板を20〜400g/Lの硫酸溶液をベースにフルオロケイ酸塩、又はフルオロホウ酸塩を添加し、更に硝酸塩、硫酸塩の1種、又は2種混合した溶液中で電解酸洗することを提案している。
【0004】
この方法では、焼鈍後電解処理のデスケール方法でデスケールが5秒程度で完了できるように、組成として硫酸、ふっ酸塩、硝酸塩を添加する。又処理温度も50〜80℃で高く、電流密度最大60A/dm2を規定している。また、高速処理するため従来の酸浸漬法との組み合わせの有効性を指摘している。しかし、焼鈍を含む連続処理についての方策は提案されていない。
【0005】
また、デスケールの前処理については、中性塩水溶液中での電解法(ルスナー法)が提案されている。この方法は、適用される鋼種に制限があり、又高速処理のため電解槽が長くなるという問題がある。
【0006】
また、他に焼鈍後のステンレス鋼を400〜480℃に保持した溶融アルカリ塩浴中に浸漬し、水洗後酸洗によりデスケールを行なう方法が行なわれている。この方法は、鋼種に制限がなく、また短時間処理が可能で、処理槽も短い。しかし、ロールを介してステンレス鋼板を溶融塩槽に浸漬するため、処理速度は、せいぜい50m/minが最大である。更に溶融塩を400〜480℃に保持するための耐熱性、耐食性に優れた装置が必要で、且つ加熱のための燃料コストが必要となる。また、持ち出しによる溶融アルカリ塩の消費量が多く操業コストが高くなる。
【0007】
特開昭59−200774号公報は、焼鈍処理を施し、引き続く高温状態にあるステンレス鋼板表面にアルカリ水溶液を微細粒子に霧化させて噴霧する方法を提案している。噴霧後アルカリ水溶液中の水分が蒸発すると、ステンレス鋼の表面に溶融ソルトバスの浸漬法と同様に溶融アルカリ層が形成され、この溶融アルカリ層と反応してデスケーリングの前処理として好ましい効果を発揮する。さらに特開昭59−200774号公報では、処理開始時のステンレス鋼の上限温度は700℃で、下限温度は、噴霧後水分の蒸発後に溶融アルカリが形成される600℃以上にすることを述べている。また上記溶融アルカリには、環境上問題となる硝酸イオンが含まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、焼鈍酸化スケールのデスケール法であって、その第1段階処理の装置や操業コストが従来のソルトバス法に比べ簡易で且つ高速での酸化スケール改質が可能であり、また中性塩水溶液での電解処理法の処理速度に比べこれを超える高速処理を可能とする処理方法を提供することを課題としている。また本発明はアルカリ水溶液の噴霧を第一段階として、これに第二段階の高電流密度電解酸洗または酸浸漬処理を組み合わせたことにより高速処理を可能にした方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明は、Cr含有ステンレス鋼の冷延後の連続焼鈍において、焼鈍炉出口で50m/min以上で搬送される鋼板の温度を500℃〜200℃に制御し、該鋼板に、第一段階で質量比でNaOH/KOHが1/4〜4/1の混合アルカリを95〜99.9質量%含有し、且つ、アルカリ金属の炭酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、ヨウ素酸塩、過硫酸塩の1または2種以上を0.05〜5質量%含有するアルカリ塩を用いて、該アルカリ塩の濃度を10〜50%に調整したアルカリ塩水溶液を焼鈍炉から出た50m/min以上で搬送されるステンレス鋼板が、500℃〜200℃に冷却された段階で該ステンレス鋼板表面に噴霧処理後、シャワー水洗する。
【0010】
第二段階が電解処理工程においては、第一段階の50m/min以上で処理されたステンレス鋼板を硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/L、三価のFeイオン:5g/L以上を含む溶液を用いて、50A/dm2以上の高電流密度で5秒以内の電解酸洗すること、又は第二段階が酸浸漬工程においては、第一段階の50m/min以上で処理されたステンレス鋼板を硫酸:50〜250g/Lの溶液1と硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/L,三価のFeイオン:5g/L以上を含む溶液2の両方に溶液1、溶液2の順に常温〜60℃で10秒以内浸漬し、あるいは溶液2のみに常温〜60℃で5〜10秒浸漬することを特徴としている。本発明はまた硝酸イオンを含まない薬剤を用いることを特徴とするステンレス鋼の高速デスケーリング処理法である。
【0011】
本発明では、NaOH/KOH 1/4〜4/1の混合アルカリを95〜99.9質量%含有するアルカリ塩を用い、これを水溶液にして焼鈍後の所定の温度に設定されたステンレス鋼板に噴霧する。微細なアルカリ塩水溶液を表面温度500℃〜200℃の範囲にある鋼板表面に噴霧すると、瞬時に水分が蒸発し、同時に焼鈍で発生した酸化スケールの改質が完了する。噴霧幅200mmとして搬送速度50m/minで噴霧時間0.24秒で表面の酸化スケールは、青紫色から従来通常のソルト浸漬処理により形成されていたと同じ黄茶色に変化し、部分的にスケールが除去され、更にその後のシャワー水洗により、更に改質スケールは部分的に除去される。
【0012】
下記(1)式は従来の溶融アルカリソルトとスケールの反応を示す式である。本発明における500〜200℃の範囲にある鋼板表面に本発明のアルカリ水溶液が微細噴霧された場合の反応は、下記(1)式に示した通常の反応よりも活性であり、水分の衝撃的な蒸発反応、及び薄膜化した水分の高温状態での酸化反応の促進と含有アルカリ塩による改質反応が同時に短時間に生じるものと考えられる。
【0013】
(FeO・Cr2 O3 )+5NaOH+5KOH+4(O)→{(K.Na)3 FeO3 +(K.Na)2 Cr2 O7 }+5H2 O+O2 … (1)
上記(1)の反応においては1モルの酸化スケールに対して、5モルの溶融アルカリ塩が必要であるが、本発明での必要アルカリ塩量は、通常の必要溶融アルカリ塩量に比べ、約1/3以下であり、上記の改質に必要な等量関係よりも大幅に少なくなっていることが明らかになっている。本発明においても反応の効果的な促進のためには、(1)式の4(O)に相当する酸化剤が重要である。これには、硝酸塩以外の炭酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、ヨウ素酸塩、過硫酸塩の1または2種以上を0.05〜5質量%含有させる。0.05%以下では効果がなく、5%を超えると効果が飽和する。更に必要に応じて過酸化水素を0.05〜10質量%、更に酸素、空気、オゾンの1種または2以上を酸化剤として第一段階のアルカリ塩水溶液に飽和量含有させることができる。
【0014】
過酸化水素は、0.05%以下では効果がなく、10%以上では効果が飽和する。空気は、アルカリ塩水溶液1m3当たり1〜10L/分を、酸素は、酸素ボンベから1〜10L/分を吹き込む。オゾンはオゾン発生装置により0.01〜0.1ppmオゾンを含有する空気を1〜10L/分を吹き込む。
【0015】
本発明では上記第一段階の所定温度に制御されたステンレス鋼板表面に前述のアルカリ塩水溶液を微細噴霧する工程のあと、引き続き酸洗を行なうことを特徴としている。第一段階のアルカリ塩水溶液噴霧において改質された酸化スケールは、薄い酸性溶液において容易に除去されるが、微細な酸化スケールが残留したり、改質スケール下部の薄いCr欠乏層の除去は不完全のままである。
【0016】
これを効果的に且つ短時間で除去し、健全な金属組織の表面を確保するには、電解酸洗が効果的である。即ち本発明では第二段階として、硝酸を用いないで、硫酸とフッ酸をベースにして、酸化ポテンシャルを250mV以上に維持した溶液中で、50A/dm2以上の高電流密度で陽極電解処理する。ベース溶液は硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/Lと三価のFeイオンを5g/L以上含み、50A/dm2以上の高電流密度で全5秒以内の電解処理を施すことにより完全なデスケールと美麗な表面を得ることができる。
【0017】
電解液の調整は、Fe3+イオン濃度の調整が重要で、Fe3+/Fe2+の割合が常に1以上になるように、過酸化水素で連続的に調整する。その他の硫酸、HFも必要に応じて連続的に追酸して調整する。
【0018】
また本発明では第一段階のアルカリ塩水溶液を噴霧処理後、硫酸が5〜250g/Lの溶液1に浸漬し、短時間で改質スケールを除去し、更に除去後の表面を調整するため硫酸+HF+三価のFeイオンを含む溶液2に浸漬する。一般に硫酸浸漬のみでは、改質スケール直下のクロム欠乏層は除去されない。その後の硫酸+HFをベースとした溶液2に短時間浸漬することによって安定した表面が得られる。硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/Lで、Fe3+イオンを5g/L以上含み溶液の酸化ポテンシャル>250mVに保持した溶液2に浸漬すると、Cr欠乏層を除去し安定した素地表面を得ることができる。この液管理は、前述の第二段階の電解酸洗の溶液と同じで、必要に応じて硫酸、ふっ酸、過酸化水素を連続的又は間欠的にて添加し調整する。処理温度は、50〜60℃程度で10秒以内の浸漬が効果的である。
【0019】
本発明者らは、第一段階のアルカリ塩水溶液を噴霧する工程において、質量比でNaOH/KOHが1/1の混合アルカリを99.97〜93.5質量%含有し、これを酸化剤としてKMnO4 を0.03〜6.5質量%含むアルカリ塩を用いて、その濃度が8%から55%までのアルカリ塩水溶液を作成した。これを用いて焼鈍後の表面温度の異なるステンレス鋼板に噴霧した。噴霧条件は、搬送速度80m/min、噴霧時間(噴霧幅200mm)0.15秒を基準に評価した。この場合の処理結果の評価は、噴霧直後にスプレイ水洗を行ない、その後の表面酸化スケールの色の変化とスケールの脱落状況を目視で評価した。表1にその結果を示した。
【0020】
◎は、焼鈍でできた青紫色の酸化スケールが黄茶色に変化し、部分的にスケールの脱落も生じ良好なスケールの改質が生じていたことを示す。△は、改質が十分に行なわれず、薄青紫色のスケールが残留した状態又は、部分的に点状に青色スケールが残留した状態で改質が不十分であったことを示す。
【0021】
鋼板表面温度がNo7の如く500℃超では、水分の急激な蒸発(ライデンフロスト反応)により、酸化スケールの未改質部分が生じる。そのため、その後の第二段階での電解酸洗、又は酸浸漬処理によっても良好な表面が得られない。また温度が適正範囲にあってもNo1,No3,No11,No13の如く、アルカリ塩水溶液の濃度が適切な範囲にないと酸化スケールの改質が均質に進まない。又酸化剤(添加剤)の濃度も0.05〜5%の適正範囲が有効である。
【0022】
上記の理由は必ずしも明確ではないが、上記の結果から効果的に酸化スケールを改質するには、適切な鋼板表面温度と適切なアルカリ塩水溶液濃度、及び適切な酸化剤濃度範囲が存在することを示している。本発明の第一段階のアルカリ塩水溶液を噴霧スプレイされたステンレス鋼は、この段階で表面酸化スケールは、全体的に改質されるが、焼鈍によって形成された酸化スケール直下のクロム欠乏層までを除去するには格別の工夫が必要である。
【0023】
本発明では、第二段階で改質されたステンレス鋼の酸化スケールを除去しかつ積極的にクロム欠乏層を溶解除去するため、電解酸洗を行なう。この場合の処理時間は、5秒以内の短時間であり、従って処理スピードを向上することができる。
【0024】
改質酸化スケールの除去と素地のクロム欠乏層の溶解を高速で行なうため、硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/Lで三価のFeイオンを5g/L以上を含む電解液を用いて、50A/dm2以上の高電流密度で5秒以内の電解処理を施すことにより完全なデスケールと美麗な表面を得ることができる。尚5秒以上にしても格別の利益はない。従って5秒以内にする。
【0025】
硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/Lは含有するがFe3+イオンを含まない電解液ではデスケールは不十分である。この溶液にFe3+イオン濃度5g/L以上含有させると、これを含まない電解液に比べ、処理後の表面光沢が一段と向上する。表2にその結果を示した。
【0026】
表2のNo7は、第一段階処理で微小スケールが残留したものである。第二段階の電解酸洗により、デスケールされることを期待したが、第一段階で十分に酸化スケールの改質が行なわれないとその後の処理でもデスケールが困難であることを示している。
【0027】
No8は、第一段階での改質も良好で、これを第二段階の電解酸洗を行なったもので、電解液中にFe3+イオンを含有させた場合、表面の光沢が一段と向上することが認められた。また処理時間も5秒以内の短時間処理が可能であることが明らかとなった。
【0028】
本発明で第一段階でのアルカリ水溶液の噴霧後、第二段階で電解を行なわない場合は下記の如くに酸浸漬を第二段階で行なう。即ち硫酸:50〜250g/Lの常温〜60℃の溶液1と10秒以内接触させた後更に硫酸:50〜250g/L,HF:1〜40g/L,Fe3+イオン:5g/L以上を含有し常温〜60℃の溶液2と10秒以内接触させ、あるいは溶液1には接触させないで溶液2と5〜10秒接触させる。表3は、第一段階でのアルカリ水溶液噴霧後、第二段階で電解は行なわないで表3の酸に浸漬した結果を示す。表3にみられる如く、第二段階が本発明の酸浸漬の場合は、電解を行なわなくても、ステンレス鋼の表面を十分に健全なデスケール後の表面とする事ができる。
【0029】
尚第二段階は、ステンレス鋼の搬送速度、酸洗槽の長さ、酸洗槽の基数、電解処理設備の有無により、電解酸洗法、処理液1と2を用いる酸浸漬法、処理液2のみの酸浸漬法の何れかを選択すればよい。
【0030】
【発明の実施例】
ステンレス鋼の連続焼鈍酸洗処理においてJIS SUS430,409 の冷延コイルの焼鈍酸洗を行なうに際して、デスケール方法の試験を行なった。
【0031】
焼鈍炉は、カテナリー炉で、出口温度は、SUS430,SUS409で若干異なるが、800〜850℃の範囲にある。焼鈍炉の出口に設けられた冷却装置により、800〜850℃に加熱されたステンレス鋼板を500〜200℃まで冷却した。本発明では焼鈍炉から出たステンレス鋼板を冷却装置により500℃〜200℃の温度に冷却調整し、その後第一段階のアルカリ塩水溶液を噴霧する。
【0032】
この試験では、アルカリ塩水溶液は予め霧化処理を行なって噴霧粒子が50μm以下の微粒子に調整したものを用いた。鋼板温度を450,300,200℃にしたステンレス鋼板表面に、均一に且つ十分濡れる程度にアルカリ塩水溶液を噴霧した。その直後スプレーで水洗し、鋼板温度が70〜40℃程度まで低下した鋼板をラインに沿って移動し、引き続き本発明の第二段階の電解酸洗槽に連続的に浸漬して短時間の電解処理を行ない、あるいは本発明の第二段階の酸浸漬槽に連続的に浸漬し、その後水洗、乾燥してその表面を目視観察した。
【0033】
実施に用いたアルカリ塩の成分と試験の概要を表4に示した。その処理条件は下記の如くである。
第一段階の処理条件
アルカリ塩の組成、鋼板表面温度、アルカリ塩水溶液の濃度は表4の通り。
第二段階の処理条件
電解処理……硫酸:150g/L,HF:20g/L,Fe3+:15g/L,50℃の電解液で65A/dm2で4秒間電解。
(溶液1+溶液2)の酸浸漬処理……硫酸150g/L,50℃に5秒間浸漬後更に硫酸:150g/L,HF:20g/L,Fe3+:15g/L,50℃に5秒間浸漬。
溶液2のみの酸浸漬処理……硫酸:150g/L,HF:20g/L,Fe3+:15g/L,50℃に8秒間浸漬。
【0034】
表4でNo1は、酸化剤KMnO4の含有量が本発明よりも少ない例で、且つアルカリ塩水溶液の濃度が低く、十分に酸化スケールが改質されていない。そのため第二段階での電解処理で十分なデスケールが出来ていない。No2は、酸化剤の濃度だけが所定量より少ない例であるが、この場合もスケールの改質が十分でなく、その後の電解処理での十分なデスケールが難しい。
【0035】
No3,No4,No5,No6は、本発明例で、第一段階のアルカリ塩水溶液噴霧の条件が適切であって酸化スケールの改質が十分に進行しており、その後の電解処理、酸浸漬処理のいずれにおいても表面の優れた状態が得られている。
【0036】
No7は、アルカリ塩水溶液濃度などの噴霧条件は適正であるがステンレス鋼板の表面温度が、550℃で本発明処理範囲より高温域にあり、微小なスケールが残存した例である。第二段階での電解処理、酸浸漬処理の何れによっても完全にデスケールされず、表面にスケールが残存した。
【0037】
No8,No9,No10は、本発明の範囲で鋼板表面温度、酸化剤濃度、更にアルカリ水溶液濃度の上限下限についての影響をみたもので第二段階の電解処理、あるいは酸浸漬処理を組み合わせることで表面性状の優れたステンレス鋼が得られることを示した。
【0038】
No11 は、第一段階のステンレス鋼の表面温度が所定領域から外れた場合の例で、良好な表面が得られなかった。No12は、鋼板表面温度、酸化剤濃度、アルカリ塩水溶液濃度が本発明の領域の略中央で処理したもので、光沢の優れた均質な表面が得られた。No13 は、酸化剤の上限を超えた添加のために良好な結果が得られないことを示した例である。
【0039】
以上本発明をクロム系ステンレス鋼に施した実施例を述べた。本発明者等は更にニッケル−クロム系ステンレス鋼に対しても同様の試験を行ったが、クロム系ステンレス鋼で得られたと同様の高速デスケーリング性を有する事が確認された。
【0040】
【発明の効果】
特開昭52−200774号もアルカリ塩の水溶液を噴霧する。しかしアルカリ塩の水溶液の成分や濃度やステンレス鋼の温度が本発明のように特定されていない。このため、スケールは短時間で改質されない。従って噴霧の後でスケールとアルカリを反応させるために所定時間保持することが必要な方法である。このため50m/min以上の高速処理は困難である。また溶融ソルトバスに浸漬する方法では、鋼板の走行速度は50m/minが最大でこれ以上の高速処理は困難である。
【0041】
本発明では、アルカリ塩水溶液の成分及び濃度を特定し、且つ噴霧処理するステンレス鋼の温度を500℃〜200℃に特定したため、噴霧後1秒以下の短時間でステンレス鋼の焼鈍時の青紫色の酸化スケールは十分に改質された黄茶色になる。更に第二段階の5秒以内の短時間の電解処理を組み合わせると、あるいは10以内の短時間の酸浸漬処理と組み合わせると、連続焼鈍酸洗でのステンレス鋼の処理を、従来は困難であった50m/min 以上の高速で行なう事が可能となり、且つ改質スケールの除去と素地表面調整を均一に行なうことが可能となる。
【0042】
尚本発明では環境汚染の原因となる硝酸は全く使用していない。このため酸の排出に際しても高価な前処理等が不必要である。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
Claims (3)
- Cr含有ステンレス鋼の冷延後の連続焼鈍酸洗において、第一段階のアルカリ塩水溶液を噴霧する工程において、質量比でNaOH/KOHが1/4〜4/1の混合アルカリを95〜99.9質量%含有し且つ炭酸塩、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、ヨウ素酸塩、過硫酸塩の1または2種以上を0.05〜5質量%含有するアルカリ塩を用いて、該アルカリ塩の濃度を10〜50%に調整したアルカリ塩水溶液を、焼鈍炉から出た50m/min以上で搬送されるステンレス鋼板が500℃〜200℃に冷却された段階で該ステンレス鋼板表面に噴霧後水洗すること、又第二段階の電解処理工程が第一段階の50m/min以上で処理されたステンレス鋼板を硫酸:50〜250g/L、HF:1〜40g/L、三価のFeイオン:5g/L以上を含む溶液を用いて、50A/dm2 以上の高電流密度で全5秒以内の電解酸洗すること、又第二段階の酸浸漬工程が第一段階の50m/min以上で処理されたステンレス鋼板を硫酸:50〜250g/Lの常温〜60℃の溶液1と10秒以内接触させた後更に硫酸:50〜250g/L、HF:1〜40g/L、三価のFeイオン:5g/L以上を含有する常温〜60℃の溶液2と10秒以内接触させること、あるいは溶液1には接触させないで溶液2と5〜10秒接触させることを特徴とするステンレス鋼の高速デスケーリング処理法。
- アルカリ塩水溶液が、更に過酸化水素を0.05〜10質量%含有し、且つ酸素、空気、オゾンの1種または2以上を常温で飽和量含有せしめたアルカリ塩水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼の高速デスケーリング処理法。
- アルカリ塩水溶液の噴霧が、粒径50μm以下の均質な粒子からなる噴霧であることを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼の高速デスケーリング処理法。
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