JPH11172478A - ステンレス鋼の脱スケール方法 - Google Patents

ステンレス鋼の脱スケール方法

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JPH11172478A
JPH11172478A JP36188797A JP36188797A JPH11172478A JP H11172478 A JPH11172478 A JP H11172478A JP 36188797 A JP36188797 A JP 36188797A JP 36188797 A JP36188797 A JP 36188797A JP H11172478 A JPH11172478 A JP H11172478A
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stainless steel
acid
chromium
weight
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JP36188797A
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Hiromichi Ideguchi
寛路 井手口
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Daido Steel Co Ltd
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Daido Steel Co Ltd
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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 スケール層中の可溶性スケール成分の除去効
果に優れ、さらにはその後のソルト処理によるクロム濃
化層の改質効率を高めて、脱スケール効果を向上させる
ことができるステンレス鋼の脱スケール処理方法を提供
する。 【解決手段】 表面にスケール層が形成されたステンレ
ス鋼被処理部材を前酸洗液中に浸漬して、スケール層中
の可溶性スケール成分を除去する前酸洗処理工程と、そ
の前酸洗処理工程にて除去されなかった不溶性のスケー
ル成分を可溶性スケール成分に改質するために、該被処
理部材をアルカリ金属塩系の溶融塩浴中にて処理するソ
ルト処理工程とを含む。前酸洗液としては、弗酸を0.
3重量%以上と、硝酸を1.0重量%以上とを含有し、
さらに弗酸と硝酸との合計含有量が3重量%以上である
弗酸−硝酸系前酸洗液が使用される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼の脱
スケール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ステンレス鋼線材は、熱間圧延に
より製造されることが多いが、その熱間圧延加工あるい
はそれに続く熱処理により線材表面にはかなりの厚さの
スケール層を生ずるので、これを酸洗処理により除去す
ることが広く行われている。ここでステンレス鋼は鉄の
ほかにクロムが多量に含有されていることから、スケー
ル中には鉄系酸化物のほか、鉄−クロム系複合酸化物
や、緻密で強固なクロム系酸化物等を含有したクロム濃
化層も形成される。そのため、まず前酸洗により可溶性
の鉄系酸化物あるいは鉄−クロム系複合酸化物を除去し
た後、次にアルカリ金属塩等を主体に構成された溶融塩
浴に浸漬するいわゆるソルト処理を行い、難溶性のクロ
ム酸化物を可溶性のクロム酸塩等に改質し、引き続き硫
酸等の酸浴でこれを溶解除去することが行なわれてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記ソルト
処理に先立つ前酸洗処理工程においては、従来より硫酸
水溶液等の硫酸系酸洗液が使用されてきた。しかしなが
ら、この硫酸系酸洗液による前酸洗処理では、鉄系酸化
物は比較的容易に除去することができるものの、クロム
濃化層中のやや溶解しにくい鉄−クロム系複合酸化物
は、必ずしも十分に除去できずに一部が表面に残留する
場合がある。このような鉄−クロム系複合酸化物が被処
理部材の表面に大量に残留した場合、上記ソルト処理に
よるクロム濃化層の改質が不十分となってスケール残り
等を発生し、被処理部材の仕上がり品質が低下したり、
あるいは再脱スケール処理が必要になるなど処理コスト
の高騰につながる問題を生ずる。
【0004】本発明の課題は、スケール層中の可溶性ス
ケール成分の除去効果に優れ、さらにはその後のソルト
処理によるクロム濃化層の改質効率を高めて、脱スケー
ル効果を向上させることができるステンレス鋼の脱スケ
ール方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課
題を解決するために本発明のステンレス鋼の脱スケール
処理方法は、表面にスケール層が形成されたステンレス
鋼被処理部材を前酸洗液中に浸漬して、スケール層中の
可溶性スケール成分を除去する前酸洗処理工程と、その
前酸洗処理工程にて除去されなかった不溶性のスケール
成分を可溶性スケール成分に改質するために、該被処理
部材をアルカリ金属塩系の溶融塩浴中にて処理するソル
ト処理工程とを含み、前酸洗液として、弗酸を0.3重
量%以上と、硝酸を1.0重量%以上とを含有し、さら
に弗酸と硝酸との合計含有量が3重量%以上である弗酸
−硝酸系前酸洗液が使用されることを特徴とする。ステ
ンレス鋼被処理部材は、例えばステンレス鋼線材であ
る。
【0006】本発明が適用可能なステンレス鋼としては
具体的には、JIS:G4304に記載された各種ステ
ンレス鋼があり、例えば、SUS201、SUS20
2、SUS301、SUS301J、SUS302、S
US302B、SUS304、SUS304L、SUS
304N1、SUS304N2、SUS304LN、S
US305、SUS309S、SUS310S、SUS
316、SUS316L、SUS316N、SUS31
6LN、SUS316J1、SUS316J1L、SU
S317、SUS317L、SUS317J1、SUS
321、SUS347、SUSXM15J1等のオース
テナイト系ステンレス鋼(常温においてもオーステナイ
ト組織を示すステンレス鋼)、SUS329J1、SU
S329J2L等のオーステナイト−フェライト系ステ
ンレス鋼(オーステナイトとフェライトとの2相組織を
示すステンレス鋼)、SUS405、SUS410L、
SUS429、SUS430、SUS430LX、SU
S434、SUS436L、SUS444、SUS44
7J1、SUSXM27等のフェライト系ステンレス鋼
(熱処理によって硬化せず、かつフェライト組織を示す
ステンレス鋼)、SUS631等の析出硬化系ステンレ
ス鋼(アルミニウム、銅などの元素を添加することによ
り、熱処理によってこれらの元素を主体とする化合物等
を析出させ、硬化させることができるステンレス鋼)等
を例示できる。
【0007】なお、本発明でいう「ステンレス鋼」の概
念には、下記に例示される耐熱鋼も含まれるものとし、
これら鋼種に対しても本発明を適用することができる。 オーステナイト系耐熱鋼 例えばJIS:G4311及びG4312に組成が規定
されたものがあり、SUS31、SUH35、SUH3
6、SUH37、SUH38、SUH309、SUH3
10、SUH330、SUH660、SUH661等を
例示できる。なお、該オーステナイト系耐熱鋼は、本発
明においてオーステナイト系ステンレス鋼の概念に含ま
れるものとして取り扱う。 フェライト系耐熱鋼 例えばJIS:G4311及びG4312に組成が規定
されたものがあり、SUH446等を例示できる。な
お、該フェライト系耐熱鋼は、本発明においてフェライ
ト系ステンレス鋼の概念に含まれるものとして取り扱
う。 マルテンサイト系耐熱鋼 例えばJIS:G4311及びG4312に組成が規定
されたものがあり、SUS1、SUS3、SUS4、S
US11、SUS600、SUS616等を例示でき
る。なお、該マルテンサイト系耐熱鋼は、本発明におい
てマルテンサイト系ステンレス鋼の概念に含まれるもの
として取り扱う。
【0008】なお、本発明が適用可能な被処理部材は線
材に限らず、例えば帯状鋼や棒鋼、板鋼、管鋼等であっ
てもよい。
【0009】例えば熱間圧延後、熱処理を施して製造さ
れたステンレス鋼線材の表面には、金属成分の主体が鉄
である鉄系酸化物と、金属成分の主体が鉄とクロムであ
る鉄−クロム系複合酸化物と、金属成分の主体がクロム
であるクロム系酸化物とを含有するスケール層が表面に
かなりの厚さで形成される。このようなスケール層中に
は、多くの場合、鉄−クロム系複合酸化物及び/又はク
ロム系酸化物を主体とするクロム濃化層が10μm以上
の厚さで形成されており、場合によっては該クロム濃化
層の厚さは20μm以上に達することもある。
【0010】そして本発明の脱スケール方法によれば、
上述のような厚いクロム濃化層を有するステンレス鋼線
材であっても、弗酸を少なくとも0.3重量%以上と、
硝酸を1.0重量%以上とを含有し、さらに弗酸と硝酸
とを合計で3重量%以上含有する弗酸−硝酸系前酸洗液
より前酸洗処理することで、クロム濃化層中の鉄−クロ
ム系複合酸化物も十分に除去することができるようにな
る。これにより、その後のソルト処理によるクロム濃化
層の改質効率が高められて脱スケール効果が向上し、被
処理部材の仕上がり品質が高められるほか、再脱スケー
ル処理等も行わなくてよいので経済的である。
【0011】該弗酸−硝酸系前酸洗液において、弗酸の
含有量が0.3重量%未満になるか、硝酸の含有量が
1.0重量%未満となるか、あるいは弗酸と硝酸との合
計含有量が3重量%未満になると、前酸洗処理後におけ
るクロム濃化層中の鉄−クロム系複合酸化物の除去が不
十分となってこれが残留し、ソルト処理によるクロム濃
化層の改質が不十分となってスケール残り等を発生しや
すくなる。それ故、弗酸の含有量は0.3重量%以上、
硝酸の含有量は1.0重量%以上、弗酸と硝酸との合計
含有量は3重量%以上とされる。
【0012】なお、弗酸及び硝酸の各含有量の上限値
は、鋼種及びスケールの形成状況に応じ、前酸洗後の被
処理部材表面に肌荒れ等が生じない範囲で適宜設定す
る。
【0013】なお、被処理部材がオーステナイト系ステ
ンレス鋼線材である場合、圧延後の線材にオーステナイ
ト化処理として、オーステナイト変態温度よりもかなり
高い温度域、例えば1000〜1200℃の高温で熱処
理が施されることが多い。この場合、形成されるスケー
ル層の厚さは特に厚くなるため、弗酸−硝酸系前酸洗液
は、弗酸濃度を1〜2重量%、硝酸濃度を3〜4重量%
と、やや高めに設定することが望ましい。
【0014】一方、フェライト系ステンレス鋼の場合
は、フェライト化の熱処理は比較的低温の700〜80
0℃(750℃前後)に設定されることが多く、スケー
ル層の厚さは上記オーステナイト系ステンレス鋼の場合
ほどには厚くならないことが多い。また、マルテンサイ
ト系ステンレス鋼の場合は、その後の線材の加工を容易
にするために、焼きなましのための熱処理が施されるこ
とが多いが、この温度はおおむね800〜900℃(8
50℃前後)である。従って、この場合もスケール層の
厚さはオーステナイト系ステンレス鋼の場合ほどには厚
くならない。それ故、上記熱処理が施されたフェライト
系あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼線材の場合
は、弗酸濃度は0.5〜1重量%、硝酸濃度を2〜3重
量%と、多少低めに設定することが望ましい。
【0015】上述のような弗酸−硝酸系酸洗液において
は、弗酸はその腐食作用により酸化物層の骨格を破壊し
て層中への酸洗液の浸透性が高められ、さらにその浸透
した酸洗液中の硝酸成分(あるいは酸化により生じたF
3+イオン)の酸化力により酸化物皮膜の溶解が促進さ
れるので、例えば鉄−クロム系複合酸化物のような難溶
性の酸化物皮膜に対しても、その除去効果が高められる
ものと考えられる。この場合、弗酸−硝酸系酸洗液は、
弗酸の含有量をWHF、硝酸の含有量をWHNO3として、W
HF/WHNO3を0.25〜2の範囲で調整するのがよい。
WHF/WHNO3が該範囲を外れると、鉄−クロム系複合酸
化物等の除去効果が不十分となる場合がある。これは、
WHF/WHNO3が0.25未満になると弗酸含有量が相対
的に不足して、酸化物層の骨格破壊効果が低下し、逆に
2を超えると硝酸含有量が相対的に不足して、酸化物層
の溶解除去効果が低下するためであると考えられる。
【0016】次に、上記前酸洗処理工程においてステン
レス鋼被処理部材は、弗酸−硝酸系酸洗液により処理す
るのに先立って、酸成分の主体が硫酸である硫酸系酸洗
液にて処理することにより、脱スケール効果を一層顕著
なものとすることができる。例えば、鉄−クロム系複合
酸化物を多く含むクロム濃化層が相当厚く形成される場
合(例えば10〜20μm以上)でも、これを予め上記
硫酸系酸洗液による1段階目の前酸洗処理を行い、例え
ば鉄系酸化物等を予め除去した後に上記弗酸−硝酸系酸
洗液により2段階目の前酸洗処理を行えば、スケール残
りの原因となる鉄−クロム系複合酸化物等はほぼ確実に
除去することができるようになる。この場合、硫酸系酸
洗液は、硫酸を2重量%以上含有するものを使用するの
がよい。硫酸の含有量が2重量%未満になると、該硫酸
系酸洗液処理による脱スケール性向上効果が余り期待で
きなくなる。なお、硫酸含有量はより望ましくは5重量
%以上とするのがよい。一方、硫酸の含有量が10重量
%を超えると、硫酸含有量の増加に見合う脱スケール効
果向上がもはや期待できないことが多く、コストアップ
につながる場合もある。
【0017】次に、ソルト処理工程で使用される溶融塩
浴は、アルカリ金属塩を主体とするもの、例えば水酸化
ナトリウムと硝酸ナトリウムとの混合塩浴(例えば水酸
化ナトリウムの重量をW1、硝酸ナトリウムの重量をW2
としてW1/W2が2〜5)等を使用できる。これは、酸
化クロム(例えばCr23)等、クロム濃化層に含まれ
る難溶性のクロム系酸化物を、重クロム酸ナトリウム等
の水溶性塩成分を主体とする層に改質する働きをなす。
また、高熱(温度が例えば400〜450℃)の溶融塩
浴に浸漬加熱した後急冷することでスケール層に亀裂を
生じさせ、以降の酸洗処理におけるスケール層への酸洗
液の浸透を促す効果も生じうる。
【0018】さて、本発明のステンレス鋼の脱スケール
方法においては、上記ソルト処理の後に、例えば次のよ
うな工程を実施することができる。 補助酸洗処理工程 ソルト処理で生じた水溶性塩成分を溶解除去する。例え
ば硫酸系酸洗液が使用される。 後酸洗工程 上記ソルト処理後、あるいは補助酸洗処理後に実施され
る。例えば、上記補助酸洗処理を行っても、ステンレス
鋼被処理部材の表面には、クロム水和物等の皮膜が相当
量残留することが多い。そこで、上記後酸洗処理を行う
ことにより、化学的にこの残留皮膜を剥離除去すること
ができる。しかしながら使用する酸洗液によっては、処
理後の線材表面にスマットと呼ばれる層が残ることがあ
る。このスマット層が形成される原因としては、例えば
ステンレス鋼素地中に存在していたクロム系炭化物等が
酸洗により遊離して、素地表面に再吸着することが考え
られている。いずれにしても該スマット層が形成される
と、酸洗後の線材の表面が黒変して外観が損われるほ
か、ばねなどの線材加工製品を製造するために処理後の
線材に伸線加工を施す場合は、スマット層により摩擦が
増大して傷発生や断線等のトラブルを起こしたり、伸線
ダイスの寿命を縮めたりする問題が生じうる。そこで、
このようなスマットの残留しにくい後酸洗処理として、
次のような方法を採用することができる。
【0019】(1)後酸洗処理A 弗酸と硫酸とを含有する弗酸−硫酸系後酸洗液に浸漬す
る第一後酸洗工程と、その第一後酸洗工程が終了した被
処理部材の表面に残留する残留物層を、弗酸と硝酸とを
含有する弗酸−硝酸系後酸洗液に浸漬してこれを除去す
る第二後酸洗工程とを含む処理とする。この方法によれ
ば、第一後酸洗工程においては、弗酸と硫酸とを含有す
る弗酸−硫酸系後酸洗液により、ステンレス鋼製被処理
部材の表面に残留するクロム水和物等の強固な皮膜も容
易に剥離除去することができる。そして、この第一後酸
洗工程にて例えばスマット層等の残留物層が被処理部材
の表面に形成されても、弗酸と硝酸とを含有する弗酸−
硝酸系後酸洗液中に浸漬することで、そのスマット層等
を極めて効果的に除去することができ、結果としてスマ
ット層等の残留が少ない健全で清浄な処理表面を得るこ
とができる。
【0020】そして、上記第一後酸洗工程は、クロム系
酸化物又は該クロム系酸化物に由来するクロム系化合物
のうち、上記前酸洗処理、ソルト処理及び補助酸洗処理
(以下、後酸洗処理に先立つこれらの処理を総称する場
合は、これを先行脱スケール処理という)において除去
しきれなかったもの(例えば上記クロム水和物等)を除
去する仕上酸洗工程とすることができる。
【0021】そして上記弗酸−硫酸系後酸洗液による第
一後酸洗処理後において、主にクロム含有炭化物(例え
ばM236、Mはクロムを主成分とする金属元素)から
なるスマット層が線材表面に残留する場合、第二後酸洗
工程は、そのスマット層を除去する脱スマット工程とす
ることができる。
【0022】第一後酸洗処理に使用される弗酸−硫酸系
後酸洗液は、0.5〜7重量%の弗酸と、2〜20重量
%の重量%の硫酸とを含有するものを使用するのがよ
い。これら2成分の含有量が上述の範囲の下限値未満と
なっている場合、例えばクロム水和物等の皮膜除去の効
果が不十分となり、脱スケール効果が不十分となる場合
がある。また、弗酸が7重量%を超えて含有された場合
は、被処理部材の腐食溶解が過剰となり、表面状態が却
って悪化する場合がある。一方、硫酸の含有量が20重
量%を超えた場合は、酸洗液の粘性率が上がり過ぎ、液
中の物質移動が妨げられて反応速度が低下して、脱スケ
ール効果が却って低下する場合がある。なお、弗酸−硫
酸系後酸洗液中の弗酸の含有量は、より望ましくは1〜
4重量%とするのがよく、硫酸の含有量はより望ましく
は4〜10重量%とするのがよい。
【0023】なお、弗酸−硫酸系後酸洗液中のFe3+
オンの重量をM(III)、同じくFe2+イオンの重量をM
(II)として、M(III)/(M(III)+M(II))が0.3〜
1の範囲となるように調整するのがよい。
【0024】本発明者は、弗酸−硫酸系後酸洗液の脱ス
ケール能力は、酸洗液中のFe系イオン濃度、特にFe
3+イオンとFe2+イオンとの濃度比率に依存して大きく
変化することを見い出した。すなわち、上記方法によれ
ば、弗酸と硫酸とを含有する弗酸−硫酸系後酸洗液によ
り、ステンレス鋼製被処理部材の表面に残留するクロム
水和物等の強固な皮膜、あるいはスケール層形成に伴い
素地側に形成されるクロム欠乏層等の脱クロム層等を容
易に剥離除去することができる。そして、弗酸−硫酸系
後酸洗液中のFe3+イオンの重量(M(III))とFe2+
イオンの重量(M(II))とを、M(III)/(M(III)+M
(II))が0.3〜1の範囲となるように調整すること
で、被処理部材表層部の酸化溶解の進行が鈍ったり、あ
るいは逆に過剰になったりすることがなく、その脱スケ
ール能力を安定に制御することが可能となる。これによ
り、部材表面の過不足のない酸化溶解状況を常に安定し
て形成でき、ひいてはスケール層ないし脱クロム層の除
去が十分になされ、表面の仕上がりも良好なものとする
ことができる。
【0025】M(III)/(M(III)+M(II))が0.3未
満になると、酸洗液の脱スケール能力が不十分となり、
被処理部材表面にスケールが残留する問題を生ずる場合
がある。本発明者らの検討によれば、酸洗液の自然電位
はM(III)/(M(III)+M(II))が大きくなるほど高く
なることが判明している。従って、M(III)/(M(III)
+M(II))が0.3未満になった場合に脱スケール効果
が不足するのは、酸洗液の自然電位が低くなり過ぎ、十
分な脱スケール状態を得るのに必要な酸化溶解電流密度
を確保できなくなるためであると考えられる。
【0026】酸洗液の前記M(III)/(M(III)+M(I
I))の値の調整は、Fe3+イオン源となる電解質(例え
ばFe2(SO43など)、あるいはFe2+イオン源と
なる電解質(例えばFeSO4など)を酸洗液中に適宜
投入する方法の他、Fe3+イオンの含有量を増加させる
場合には、適当な酸化剤(例えば過酸化水素)を酸洗液
中に投入して、液中のFe2+イオンをFe3+イオンに酸
化する方法がある。また、酸洗液中のFe3+イオン及び
Fe2+イオンの含有量は、チオシアン酸カリウム比色滴
定法等の化学滴定法により同定可能である。
【0027】図9は、ステンレス鋼被処理部材の、弗酸
−硫酸系後酸洗液中におけるアノード分極曲線を模式的
に表したものである。前述の通り、酸洗液の自然電位
は、M(III)/(M(III)+M(II))が大きくなるほど高
くなり、アノード分極曲線には、低電位側から、電位増
加に伴い酸化溶解電流密度が比較的大きく増加する活性
態域、電流密度値が比較的小さく、また電位変化に対す
る電流密度変化も鈍くなる不働態域、電位変化に伴い電
流密度値が再び大きく増加する過不働態域が現われる。
この場合、電流密度レベルは脱スケール効果が過不足な
く得られる範囲(以下、最適電流密度範囲という)に設
定する必要があり、M(III)/(M(III)+M(II))の値
は、酸洗液の自然電位がアノード分極曲線上において、
上記最適電流密度範囲に対応した値のものとなるように
調整されることとなる。
【0028】例えば、最適電流密度範囲がアノード分極
曲線の活性態域と不働態域とにまたがって存在する場
合、M(III)/(M(III)+M(II))の値(すなわち酸洗
液の自然電位)は、不働態域に対応した範囲で制御する
ほうが、液の電位変化に対する溶解電流密度の変化も小
さいので、安定した脱スケール効果が得られ、表面の仕
上がりもより良好なものとできる。しかしながら、鋼種
によっては不働態域でも電流密度がやや過剰となる場合
があり、この場合は活性態域の、電流密度ピーク点より
も負側の電位領域を採用することで、電流密度を適当な
値に下げることが可能となる。
【0029】例えばオーステナイト系ステンレス鋼は、
比較的多量のNiを含んで耐酸化性が高く、酸洗液のM
(III)/(M(III)+M(II))の値を0.5以上の比較的
高い値に設定することが、良好な脱スケール効果を得る
上で望ましい。これは、M(III)/(M(III)+M(II))
を0.5以上とすることで、酸洗液の被処理部材に対す
る自然電位が不働態域のものになるためであると考えら
れる。また、オーステナイト系ステンレス鋼の場合は、
脱スケールの処理速度を高めるため、弗酸及び硫酸の濃
度を上限値(前者4重量%、後者15重量%)近くまで
増加させることも十分可能である。
【0030】一方、フェライト系あるいはマルテンサイ
ト系のステンレス鋼はNiを実質的に含有しないため、
オーステナイト系ステンレス鋼に比べるとやや耐酸化性
が低く、M(III)/(M(III)+M(II))の値(すなわち
酸洗液の自然電位)をオーステナイト系ステンレス鋼と
同様の高い値に設定すると、酸化溶解速度がやや過剰と
なって肌荒れ等の問題を生ずる場合もある。これを防止
するためには、M(III)/(M(III)+M(II))の値を
0.3〜0.5と、オーステナイト系ステンレス鋼の場
合よりも幾分低く設定することが有効となる。また被処
理部材の過剰な溶解を同様に抑制するために、酸洗液中
の弗酸含有量は3重量%以下、同じく硫酸含有量は7重
量%以下と、これもやや低めに設定することが望ましい
といえる。
【0031】次に、第二後酸洗処理に使用する弗酸−硝
酸系後酸洗液は、0.5〜3重量%の弗酸と、1〜5重
量%の硝酸とを含有するものを使用するのがよい。これ
ら2成分の含有量が上述の範囲の下限値未満となってい
る場合、スマット層の除去力が不十分となり、線材表面
の清浄化効果が十分に得られなくなる場合がある。ま
た、弗酸ないし硝酸成分が上述の範囲の上限値を超えて
含有された場合は、酸成分の増加に見合うスマット除去
効果の向上がもはや期待できなくなり、酸洗液の無駄な
コストアップにつながる。また、これら酸成分の含有量
が極端に多くなった場合には、酸による腐食を受けて線
材の表面状態が却って悪化する場合がある。なお、弗酸
−硝酸系後酸洗液中の弗酸の含有量は、より望ましくは
1〜2重量%とするのがよい。また、硝酸の含有量は、
より望ましくは1〜4重量%とするのがよい。
【0032】(2)後酸洗処理B 例えば所定の仕上酸洗処理が施されたステンレス鋼被処
理部材の表面に、クロム含有炭化物を主体とするスマッ
ト層が表面に形成されたステンレス鋼被処理部材を、飽
和カロメル電極を基準として20℃にて測定したその被
処理部材に対する自然電位が−280mV以上となる処
理液中に浸漬することにより、スマット層を除去する。
なお、仕上酸洗処理工程は、例えば前述の後酸洗処理A
における第一後酸洗工程と同様のものを採用できるが、
これに限定されるものではない。
【0033】例えば同一の被処理部材に対して、含有成
分あるいはその組成が異なる酸洗液を使用すれば、各酸
洗液はその被処理部材に対して固有の自然電位を示すこ
とはいうまでもないが、同一の組成の酸洗液を使用して
も、被処理部材の材質あるいは酸洗処理前の表面状態に
応じて、上記自然電位は一般には異なるものとなる。そ
して、この後酸洗処理Bの概念において重要なことは、
被処理部材の材質及び酸洗液の組成に関係なく、その被
処理部材に対する自然電位が−280mV以上となる酸
洗液を用いる点にある。すなわち、各種ステンレス鋼の
脱スマット処理について鋭意検討した結果、被処理部材
に対する酸洗液の自然電位が−280mV以上となって
いる場合に、該被処理部材の表面に形成されたスマット
層を極めて効果的に除去できるようになるのである。酸
洗液の自然電位が−280mV以上となることでスマッ
トの吸着力が弱まり、スマット層の剥離除去が促進され
るものと考えられる。
【0034】処理液の自然電位は、20℃に温度調節し
た処理液中の被処理部材と、参照電極としての飽和カロ
メル電極(ただし電解質溶液として飽和KClを用い
る)との間に生ずるガルバニー起電力として測定するこ
とができる。
【0035】該後酸洗処理Bにおいて使用できる処理液
の具体的な種類としては、例えば硫酸水溶液あるいは硝
酸水溶液等の各種酸洗液から材質に応じて上記自然電位
の条件を満たすものを適宜選択できる。また、過マンガ
ン酸カリウム水溶液や苛性ソーダ水溶液など、酸系水溶
液以外のものも使用できる。
【0036】処理液のもつ脱スマット作用は、処理液中
に含有されるFe3+イオンの酸化力に依存する部分が大
きく、自然電位はこのFe3+イオンの濃度が増加するほ
ど、具体的にはFe3+イオンのFe2+イオンに対する濃
度比率が増加するほど高くなる傾向にある。例えば脱ス
マット反応の進行によりFe3+イオンがFe2+イオンに
還元されて消費されると、該Fe3+イオンの含有量が低
下し、処理液の自然電位が低下することとなる。
【0037】この低下した自然電位を再び上記範囲のも
のとなるように高めるには、Fe3+イオンの含有量を高
めることが重要である。例えば処理液として硫酸を含有
する酸洗液(以下、硫酸系酸洗液という)を使用する場
合は、過酸化水素、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリ
ウムや過マンガン酸ナトリウム)等の酸化剤を、適量酸
洗液中に投入して、液中のFe2+イオンをFe3+イオン
に酸化することにより、その自然電位を調整できる。な
お、建浴直後など、Fe系イオンを含有しない酸洗液を
使用する場合においても、もし自然電位が不足していれ
ば、上記酸化剤の投入により自然電位を補うことが可能
である。この場合、液中に遊離状態で含有される酸化剤
成分に基づいて自然電位が高められる形となる。
【0038】一方、処理液として硝酸を含有する酸洗液
(以下、硝酸系酸洗液という)を使用する場合は、硝酸
自体がFe2+イオンに対する強力な酸化剤として作用す
るので、自然電位を該硝酸の含有量により調整すること
ができる。
【0039】なお、脱スマット処理に硫酸系酸洗液を用
いる場合は、硫酸含有量(濃度)を1〜15重量%の範
囲で調整するのがよい。硫酸成分の含有量が上述の範囲
の下限値未満になっていると、十分な脱スマット効果が
得られなくなる場合がある。また、硫酸成分が上述の範
囲の上限値を超えて含有されても脱スマット効果のそれ
以上の向上は見込めず、酸洗液の無駄なコストアップに
つながる。この場合、酸洗液の自然電位自体は、硫酸濃
度を増加させてもそれほど変化しないことが多いので、
十分な脱スマット効果を得るためには、過酸化水素等の
前述の酸化剤の投入により、被処理部材に対する酸洗液
の自然電位を前述の範囲に調整することが肝要である。
【0040】一方、硝酸系酸洗液を使用する場合、硝酸
成分濃度に依存して酸洗液の自然電位が変化するので、
該自然電位が前記範囲のものとなるように硝酸濃度を調
整する必要が生ずる。この望ましい硝酸濃度の範囲は、
鋼種やその表面状態によっても異なるが、例えばオース
テナイト系ステンレス鋼の場合は、硝酸濃度を3〜20
重量%程度に設定するのがよい。硝酸濃度が3重量%未
満になると、酸洗液の自然電位が不足し、十分な脱スマ
ット効果が得られなくなる場合がある。一方、硝酸濃度
が20重量%以上では、酸濃度増加によるそれ以上の脱
スマット効果の向上が見込めず、酸洗液の単なるコスト
アップのみを招いてしまう場合がある。また、フェライ
ト系ステンレス鋼の場合も、硝酸濃度を3〜20重量%
に設定するのがよい。硝酸濃度が3重量%未満になる
と、酸洗液の自然電位が不足し、十分な脱スマット効果
が得られなくなる場合がある。一方、硝酸濃度が20重
量%以上では、被処理部材の表面の酸化溶解が過剰とな
って肌荒れ等の問題を生ずる場合がある。さらに、マル
テンサイト系ステンレス鋼の場合は、硝酸濃度を10〜
20重量%に設定するのがよい。硝酸濃度が10重量%
未満になると、酸洗液の自然電位が不足し、十分な脱ス
マット効果が得られなくなる場合がある。一方、硝酸濃
度が20重量%以上では、被処理部材の表面の酸化溶解
が過剰となって肌荒れ等の問題を生ずる場合がある。
【0041】なお、上記硫酸系酸洗液あるいは硝酸系酸
洗液には、適量の弗酸を含有させることができる。弗酸
は腐食による溶解作用が強いため、その酸洗液中への配
合により脱スマット効果を高めたり、あるいは所期の脱
スマット能力を確保しつつ硫酸ないし硝酸の含有量を削
減できることがある。この場合、その最適の配合量は鋼
種や酸洗液の種類によっても異なるが、例えば1〜5重
量%程度の範囲において、酸洗液の脱スマット能力向上
において一定の効果が生ずるよう、適宜調整される。な
お、弗酸を配合し過ぎると、酸洗液の自然電位が却って
低下し、脱スマット効果を低下させる場合があるので、
このような問題が生じない範囲で弗酸の配合量を調整す
るのがよい。
【0042】また、1段階の脱スマット処理では線材表
面のスマット層を十分に除去できない場合、脱スマット
処理を2段階以上に行なうことも可能である。この場
合、段階毎に異なる酸洗液を用いて脱スマット処理を行
なうようにしてもよい。この場合、それら2段階以上の
脱スマット処理のいずれか1において、酸洗液の被処理
材に対する自然電位が−280mV以上となっていれば
よい。
【0043】ここで、上記後酸洗処理A及び後酸洗処理
Bの後に、なお線材表面にスマット層が残留している場
合には、1〜4重量%の硫酸と0.1〜1重量%の過酸
化水素とを含有する硫酸−過酸化水素系酸洗液に浸漬す
る仕上脱スマット工程(第三後酸洗工程)を行うことが
できる。これにより、上記スマットをさらに確実に除去
することができる。この仕上脱スマット工程による脱ス
マット効果は、被処理部材が後述のフェライト系あるい
はマルテンサイト系ステンレス鋼の場合に特に顕著であ
る。
【0044】なお、硫酸−過酸化水素系酸洗液中の硫酸
濃度が1重量%未満になると、被処理部材表面の清浄化
効果が十分に達成できなくなる。一方、硫酸を4重量%
を超えて含有させても、硫酸濃度増加に見合う表面清浄
化効果の向上が期待できなくなり、余分に硫酸を含有さ
せる分だけ酸洗液コストをいたずらに高騰させる結果に
つながる。
【0045】一方、過酸化水素濃度については、これが
0.1重量%未満になると過酸化水素の酸化力に基づく
清浄化効果の向上がほとんど期待できなくなる。また、
過酸化水素濃度が1重量%を超えると、過酸化水素濃度
増加に見合う表面清浄化効果の向上が期待できなくな
り、余分に過酸化水素を含有させる分だけ酸洗液コスト
をいたずらに高騰させる結果につながる。
【0046】なお、過酸化水素は化学的安定性が一般に
それほど高くないことから、上記硫酸−過酸化水素系酸
洗液(あるいは第一酸洗処理に使用される弗酸−硫酸系
酸洗液)中に含有される過酸化水素は、例えば液中の鉄
イオンやその他分解触媒となりうる物質の存在により、
被処理部材の浸漬を行なわなくとも自己分解を起こして
徐々に濃度を減少させる。従って、被処理部材の浸漬直
前時に前述の望ましい範囲の過酸化水素濃度が確保され
るよう、先行する被処理部材の処理に伴う減少分あるい
は自己分解による減少分を補う形で、酸洗液に対し新た
な過酸化水素を連続的又は断続的に供給することが望ま
しい。なお、過酸化水素を供給した後は被処理部材をな
るべく直ちに液中に投入することが望ましい。
【0047】例えば、硫酸−過酸化水素系酸洗液によ
り、線材等の被処理部材を、所定の処理単位に区切って
バッチ酸洗処理する場合は、その1単位の処理が終了す
る毎に、望ましい過酸化水素濃度が確保されるよう、そ
の都度所定量の過酸化水素を硫酸−過酸化水素系酸洗液
に補充することができる。こうすれば、被処理部材の投
入時において酸洗液中の過酸化水素濃度を確実に前述の
濃度範囲に調整することが可能となり、表面清浄化の効
果をより確実に達成できるほか、1単位の処理により消
耗した分だけ次の単位の処理時に過酸化水素を補充すれ
ばよいから、過酸化水素の無駄が抑さえられて効率的で
ある。この場合も、過酸化水素を供給した後は被処理部
材をなるべく直ちに液中に投入するようにすることが、
自己分解等に基づく過酸化水素の無駄な消費を抑さえる
上で望ましい。
【0048】なお、酸洗液に過酸化水素を配合する場
合、次のような装置を用いることにより、その酸洗液に
よる酸洗処理を能率よく実施することができる。すなわ
ち、該装置は、酸洗液を収容する酸洗液収容部と、少な
くとも被処理部材の浸漬直前時において、所期の過酸化
水素濃度が確保されるよう、先行する被処理部材の処理
に伴う減少分あるいは自己分解による減少分を補う形
で、新たな過酸化水素を連続的又は断続的に補充する過
酸化水素補充機構と、を備えて構成される。
【0049】また、その酸洗処理を前述のバッチ処理で
行なう場合、上記装置を次のように構成すると、これを
能率よく実施することができる。すなわち、被処理部材
を所定の処理単位毎に酸洗液収容部内に搬入して、これ
を酸洗液中に浸漬させる被処理部材搬入機構と、酸洗液
による処理が終了した被処理部材の単位を、酸洗液収容
部から搬出する被処理部材搬出機構とを設け、過酸化水
素補充機構は、被処理部材の1単位の処理が終了する毎
に、所期の過酸化水素濃度が確保されるよう、その都度
所定量の過酸化水素を系酸洗液に補充するものとして構
成する。
【0050】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付
の図面を参照して説明する。図1は、本発明のステンレ
ス鋼の脱スケール方法を実施するラインの一例を概念的
に示している。この例では、被処理部材はステンレス鋼
線材のコイル、例えば熱間圧延後必要に応じて熱処理す
ることにより製造されて、表面にスケール層が形成され
たステンレス鋼線材のコイルWであり、例えば図2に示
すレール4に沿って移動するトラバーサ2により、吊具
7に引っ掛けられた状態で、図1に示す各工程位置に順
次搬送されるようになっている。なお、図2において符
号3はトラバーサ2を自走させるための駆動モータであ
り、符号5は、例えば吊具7を懸架するワイヤ(あるい
はチェーン)6を巻き取りあるいは繰り出すことによ
り、コイルWを上昇位置と下降位置との間で昇降させる
昇降機構である。なお、トラバーサ2と昇降機構5と
は、被処理部材搬入機構及び被処理部材搬出機構を構成
する。
【0051】図1に示すラインでは、前酸洗槽50、シ
ャワー槽51、ソルト処理槽52、冷却槽53、補助酸
洗槽54、シャワー槽55、仕上げ酸洗槽56、シャワ
ー槽57、脱スマット層58、シャワー槽59及び中和
槽60がこの順序で配置され、被処理部材である線材
は、上記コイルWを処理単位として各槽にてバッチ処理
されることとなる。すなわち、図2に示すように、吊具
7により保持されたコイルWは上昇位置に位置した状態
でトラバーサ2により各槽8(50,52,54,5
6,58:図では符号8により統一的に表示)の上方へ
移動し、ついで昇降機構5により下降位置へ下降してそ
の槽中の液9中に所定時間浸漬されて各処理が行なわれ
る。液9への浸漬が終了するとコイルWは昇降機構5に
より上昇位置へ引き上げられ、トラバーサ2により次の
シャワー槽51,55,57,59あるいは冷却槽53
へ運ばれて再び下降位置となる。各シャワー槽には水洗
用のシャワーノズル10が、例えばコイルWを周方向に
取り囲む形態で複数配置されており、それぞれコイルW
に向けて水を噴射することによりこれを水洗する。
【0052】以下、各槽での処理内容について説明す
る。図3(a)は、脱スケール前のステンレス鋼線材表
面のスケール形成状態の一例を模式的に示すものであ
る。ステンレス鋼素地は鉄を主成分として、少ないもの
で10重量%程度、多いもので30重量%以上のクロム
を含有している。クロムは酸素との親和力が強く、大気
など酸素を含有する雰囲気中で熱間加工や熱処理を行う
と、そのスケール形成過程の初期段階で優先的に酸化さ
れて、緻密で強固なCr23等を主体とするクロム系酸
化物となり、酸化クロム系スケール層(図ではCr23
と略記)を形成する。そして、鉄成分はそれに準じて酸
化が進行して鉄系酸化物を生成し、酸化クロム系スケー
ル層の上に酸化鉄系スケール層(図ではFe−Oと略
記)を形成する。また、酸化クロム系スケール層と酸化
鉄系スケール層との間には、鉄−クロム系複合酸化物を
主体とする複合酸化物スケール層(図ではFe−Cr−
Oと略記)が形成される場合が多い。そして、この酸化
クロム系スケール層と複合酸化物スケール層とからなる
クロム濃化層(すなわち鉄−クロム系複合酸化物及びク
ロム系酸化物を主体とする層)の厚さは10μm以上、
時に20μm以上に達することがある。
【0053】このような線材からなるコイルWは、ま
ず、前酸洗槽50(図1)にて前酸洗処理される。この
前酸洗槽50は、2つの酸洗槽、すなわち前酸洗槽(I)
50aと前酸洗槽(II)50cとを含み、前者には、例え
ば硫酸を2重量%以上(望ましくは5重量%以上)の範
囲で含有する硫酸水溶液(例えば10重量%硫酸水溶
液)からなる硫酸系前酸洗液が収容されている。また、
後者には、弗酸を0.3重量%以上と、硝酸を1.0重
量%以上とを含有し、さらに弗酸と硝酸との合計含有量
が3重量%以上、かつ弗酸の含有量をWHF、硝酸の含有
量をWHNO3として、WHF/WHNO3が0.25〜2である
弗酸−硝酸系前酸洗液が収容されている。そして、コイ
ルWは、前酸洗槽(I)50aにて硫酸系前酸洗液に浸漬
されることにより第一前酸洗処理が施され、シャワー層
50bにて水洗後、前酸洗槽(II)50cにて弗酸−硝酸
系前酸洗液に浸漬されることにより第二前酸洗処理が施
される。これにより、線材表面に形成されたスケール層
のうち、可溶性の酸化鉄系スケール層あるいは複合酸化
物スケール層が除去される。
【0054】例えば従来のステンレス鋼の脱スケール処
理においては、この前酸洗処理は硫酸系酸洗液のみを用
いて行っていた。しかしながら、硫酸系酸洗液は、鉄系
酸化物の除去は問題なく行えるが、やや溶解しにくい複
合酸化物スケール層に対しては脱スケール力が不足し、
図3(b)に仮想線で示すように、その一部が除去しき
れずに残留する場合があった。このような複合酸化物が
被処理材の表面に大量に残留した場合、後述のソルト処
理によるクロム濃化層の改質が不十分となってスケール
残り等につながる問題を生ずる。
【0055】そこで、脱スケール力に優れた上記組成の
弗酸−硝酸系前酸洗液により2段階目の前酸洗処理を行
うことで、硫酸系酸洗液では除去しきれなかった複合酸
化物スケール層も問題なく除去できるようになる。弗酸
はその腐食作用により酸化物層の骨格を破壊して層中へ
の酸洗液の浸透性を高め、さらにその浸透した酸洗液中
の硝酸成分(あるいは酸化により生じたFe3+イオン)
の酸化力により酸化物皮膜の溶解が促進されるので、脱
スケール効果が高められていると考えられる。
【0056】なお、線材(コイルW)の材質がフェライ
ト系ステンレス鋼あるいはマルテンサイト系ステンレス
鋼である場合は、圧延後に1000〜1200℃の高温
で熱処理が施されることが多く、形成されるスケール層
の厚さも厚くなりがちなので、弗酸−硝酸系前酸洗液
は、弗酸濃度を1〜2重量%、硝酸濃度を3〜4重量%
と、やや高めに設定される。一方、フェライト系ステン
レス鋼あるいはマルテンサイト系ステンレス鋼の場合
は、熱処理温度がやや低く、スケール層の厚さはオース
テナイト系ステンレス鋼の場合ほどには厚くならないこ
とが多い。従って、弗酸濃度は0.5〜1重量%、硝酸
濃度は2〜3重量%と多少低めに設定される。
【0057】こうして前酸洗処理が終了したコイルW
は、シャワー槽51(図1)で水洗された後、ソルト処
理槽52でソルト処理される。この槽には、アルカリ金
属塩を主体とする溶融塩、例えば水酸化ナトリウムと硝
酸ナトリウムとの混合溶融塩浴(例えば水酸化ナトリウ
ムの重量をW1、硝酸ナトリウムの重量をW2としてW1
/W2が2〜5)が形成されている。浴温は例えば40
0〜450℃である。スケール層に含まれる酸化クロム
系スケール層は、前述のように緻密で強固なものであ
り、前酸洗ではほとんど除去することができない。そこ
で、上記溶融塩浴に浸漬することで、図3(c)に示す
ように酸化クロム系スケール層は、溶融塩との間で化学
反応を起こして重クロム酸ナトリウム等の水溶性塩成分
を主体とする層に改質される。ソルト処理後のコイルW
は、冷却槽53(図1)にて冷却水中に投じられ急冷さ
れる。これにより、線材表面のスケール層には亀裂が生
じ、以降の酸洗処理におけるスケール層への酸洗液の浸
透を容易にする。
【0058】コイルWは、次に補助酸洗槽54(図1)
にて補助酸洗処理される。酸洗液としては、例えば硫酸
を5〜10重量%含有する硫酸系酸洗液が使用される。
この酸洗液への浸漬により、ソルト処理で生じた水溶性
塩成分が溶解除去される。しかしながら、補助酸洗処理
を行なってもなお、図4(a)に示すように、ステンレ
ス鋼線材の素地表面には相当量の残留皮膜が残るのが通
常である。この残留皮膜は、一般に、図4(b)に示す
ような構造を有するクロム水和物皮膜であるといわれて
いる。
【0059】そこで、コイルWはシャワー槽55(図
1)で水洗後、仕上酸洗槽56へ運ばれ、そこで仕上酸
洗処理(第一後酸洗処理)される。仕上酸洗処理では、
コイルWは、弗酸−硫酸系後酸洗液、具体的には0.5
〜7重量%(望ましくは1〜4重量%)の弗酸と、2〜
20重量%(望ましくは4〜10重量%)の硫酸とを含
有する水溶液系後酸洗液に浸漬される。
【0060】弗酸−硫酸系後酸洗液中のFe3+イオンの
重量(M(III))とFe2+イオンの重量(M(II))と
は、0.3〜1の範囲となるように調整される。さら
に、Fe3+イオンとFe2+イオンとの合計含有量は、
0.05〜10重量%の範囲で調整される。
【0061】これにより上記残留皮膜が効果的に除去さ
れる。その推測される除去のメカニズムを図4(c)及
び(d)に示している。すなわち、含まれる弗酸に由来
するF-イオンが残留皮膜中のクロム水和物の骨格を破
壊する一方、硫酸はその酸化力により、露出した素地の
鉄成分を溶かし出して残留皮膜を剥がしとると考えられ
る。なお、硫酸は、酸洗液中のFe2+イオンを酸化して
Fe3+イオンとし、このFe3+イオンが素地中の鉄成分
をFe2+イオンに酸化して溶かし出す機構が主体になっ
ていると推測される。なお、素地の表層部には、スケー
ル層側へのクロム拡散に起因するクロム欠乏層(脱クロ
ム層)が形成されることがある。この場合、酸洗液との
接触により、このクロム欠乏層も溶解除去することがで
きる。
【0062】また、M(III)/(M(III)+M(II))が
0.3〜1の範囲となるように調整することで、被処理
部材表層部の酸化溶解の進行が鈍ったり、あるいは過剰
になったりすることがなく、その脱スケール能力を安定
に制御することが可能となる。これにより、部材表面の
過不足のない酸化溶解状況を安定して形成でき、ひいて
はスケール層の除去が十分になされ、表面の仕上がりも
良好なものとすることができる。
【0063】ここで、線材コイルWの処理を繰り返すう
ちに、弗酸−硫酸系後酸洗液中のFe3+イオンは、Fe
2+イオンに還元されて量が次第に減少し、M(III)/
(M(III)+M(II))の値も小さくなる。この場合、例
えば酸洗液中のFe3+イオン及びFe2+イオンの含有量
を、前述の化学滴定法等により定期的に同定するととも
に、M(III)/(M(III)+M(II))が0.3未満となっ
た場合には、過酸化水素等の酸化剤を適量酸洗液中に投
入してFe2+イオンをFe3+イオンに酸化し、該M(II
I)/(M(III)+M(II))の値を0.3以上の値に維持
するようにする。
【0064】また、弗酸−硫酸系後酸洗液の温度は室温
(約20℃前後)としてもよいが、これを昇温すること
で、脱スケールの反応速度を増大させて処理の能率を向
上させることができる。なお、酸洗液を昇温する場合
は、その液温は、蒸気等が過剰に発生しない範囲で、線
材の材質あるいは表面のスケール形成状態に応じて所期
の脱スケール反応速度が得られるよう、適宜(例えば7
0℃以下)調整することができる。
【0065】なお、酸洗液の組成は線材コイルWの材質
によって適宜調整することができる。例えばコイルWの
材質がオーステナイト系ステンレス鋼である場合は、比
較的多量のNiを含んで耐酸化性が高く、酸洗液のM(I
II)/(M(III)+M(II))の値を0.5以上の比較的高
い値に設定することが、良好な脱スケール効果を得る上
で望ましい。一方、フェライト系あるいはマルテンサイ
ト系のステンレス鋼の場合は、オーステナイト系ステン
レス鋼よりも幾分酸化溶解が進行しやすいので、過剰な
溶解による肌荒れ等の発生を避けるため、M(III)/
(M(III)+M(II))の値は0.3〜0.5とやや低目
に設定するのがよい。また、過剰な溶解を同様に抑制す
るために、酸洗液中の弗酸含有量は3重量%以下、同じ
く硫酸含有量は7重量%以下と、これもやや低めに設定
することが望ましい。
【0066】なお、仕上酸洗処理においては、弗酸−硫
酸系後酸洗液に代えて、弗酸−硝酸系後酸洗液を使用し
てもよい。この場合、弗酸ないし硝酸濃度の低下した使
用済み後酸洗液を、そのまま、あるいは弗酸ないし硝酸
濃度を調整して、これを前述の前酸洗工程における弗酸
−硝酸系前酸洗液として流用してもよい。
【0067】次に、上記仕上酸洗処理が終わった後の線
材には、スマットと呼ばれる残留物層が残ることがあ
る。このスマット層が形成される原因としては、図4
(e)に示すように、素地中に存在していた金属炭化
物、例えばクロム含有炭化物(例えばM236あるいは
2C、Mはクロムを主成分とする金属元素)等の粒子
が酸洗により遊離して、素地表面に再吸着することが考
えられる。このようなスマット層が形成されると線材の
表面が黒変して外観が損われるほか、ばねなどの線材加
工製品を製造するために、処理後の線材に伸線加工を施
す場合はスマット層により摩擦が増大して傷発生や断線
等のトラブルを起こしたり、伸線ダイスの寿命を縮めた
りする問題が生じうる。
【0068】そこで、線材のコイルWは、シャワー槽5
7で水洗後、脱スマット槽58(図1)にて脱スマット
処理(第二後酸洗工程)される。脱スマット処理では、
コイルWは、飽和カロメル電極を基準として20℃にて
測定したその被処理部材に対する自然電位が−280m
V以上となる酸洗液中に浸漬される。使用される酸洗液
の上記自然電位が−280mV以上となっていること
で、線材表面に形成されたスマット層を極めて効果的に
除去できる。
【0069】スマット層の剥離・除去を十分に行なうた
めには、線材の材質あるいは酸洗液の種類によらず、線
材表層部を必要十分な程度に溶解する必要があり、酸洗
液中で生ずるその溶解の程度は、線材表面の自然電位に
よってほぼ一義的に定まるものと考えられる。そして、
本発明者らは鋭意検討の結果、液の該自然電位のレベル
を具体的に−280mV以上に設定することで、線材の
材質あるいは酸洗液の種類とは実質的に無関係に、スマ
ット層を効果的に除去できることを見い出したのであ
る。
【0070】脱スマット用の酸洗液としては、例えば硫
酸水溶液又は硝酸水溶液等が使用される。ここで、酸洗
液の自然電位はこのFe3+イオンの濃度が増加するほ
ど、具体的にはFe3+イオンのFe2+イオンに対する濃
度比率が増加するほど高くなる。そして、コイルWを繰
返し処理するうちにFe3+イオンの含有量が低下して、
処理液の自然電位が不足した場合は次のようにする。ま
ず、硫酸水溶液を使用する場合は、過酸化水素等の酸化
剤を酸洗液中に投入して、液中のFe2+イオンをFe3+
イオンに酸化することにより、その自然電位を−280
mV以上の値となるように調整する。一方、処理液とし
て硝酸水溶液を使用する場合は、硝酸自体がFe2+イオ
ンに対する強力な酸化剤として作用するので、硝酸を投
入してその濃度を高め、自然電位を−280mV以上の
値となるように調整する。
【0071】なお、脱スマットに硫酸水溶液を用いる場
合は、硫酸含有量を1〜15重量%の範囲で調整するの
がよい。また硝酸水溶液を使用する場合、線材がオース
テナイト系ステンレス鋼の場合は、硝酸濃度を3〜20
重量%程度に設定する。また、フェライト系ステンレス
鋼及びマルテンサイト系ステンレス鋼の場合は、硝酸濃
度を10〜20重量%に設定する。また、これら酸洗液
には、適量の弗酸を配合させることができる。弗酸の配
合量は、例えば1〜5重量%程度の範囲において、酸洗
液の脱スマット能力向上において一定の効果が生ずるよ
う適宜調整する。
【0072】さて、脱スマット処理が終了したコイルW
は、図1のシャワー槽59に運ばれて水洗され、さらに
中和槽60に搬送されるとともに、そこで苛性ソーダ水
溶液等のアルカリ性水溶液かならる中和液に浸漬されて
残留した処理液等が中和処理され、図示しない乾燥装置
により乾燥されて処理が終了する。
【0073】なお、上記脱スマット処理によるスマット
層除去の程度が不十分な場合は、コイルWをシャワー槽
59で水洗した後、仕上脱スマット槽61へ運び、そこ
で仕上脱スマット処理(第三後酸洗工程)を行うことが
できる。図5に示すように、仕上脱スマット槽61(酸
洗液収容部)には、1〜4重量%の硫酸と、0.1〜1
重量%の過酸化水素とを含有する水溶液からなる硫酸−
過酸化水素系酸洗液(以下、単に酸洗液とも言う)21
が収容されている。コイルWはそこで下降位置へ下降し
て槽61内の硫酸−過酸化水素系酸洗液21に所定時間
浸漬され、仕上脱スマット処理が行なわれる。
【0074】上記酸洗液21中では、液中に存在する鉄
イオンは過酸化水素の配合により実質的に全てFe3+
オンとなっており、さらに上記濃度の過酸化水素が一種
の過剰状態で含有されている。これにより、コイルWの
線材は、過酸化水素の強力な酸化作用により、上記スマ
ット層を確実かつ効果的に除去することができる。ま
た、液中のFe3+イオンもその酸化作用により、線材表
面の清浄化に寄与しうる。
【0075】なお、過酸化水素は化学的安定性が一般に
それほど高くないことから、上記硫酸−過酸化水素系酸
洗液中に含有される過酸化水素は、例えば液中の鉄イオ
ンやその他分解触媒となりうる物質の存在により、コイ
ルWの浸漬を行なわなくとも自己分解を起こして徐々に
濃度を減少させる。そこで、図5に示すように、コイル
Wの浸漬直前時に前述の過酸化水素濃度が確保されるよ
う、先行するコイルWの処理に伴う減少分あるいは自己
分解による減少分を補う形で、新たな過酸化水素を供給
する過酸化水素供給機構15が設けられている。
【0076】この過酸化水素供給機構15は、コイルW
が1バッチ処理される毎に、その都度所定量の過酸化水
素を硫酸−過酸化水素系酸洗液に補充するものとして構
成されている。すなわち、該過酸化水素供給機構15
は、過酸化水素(H22)を貯溜する主貯溜部27と、
その主貯溜部27からの過酸化水素を1回投入分だけ一
時的に貯溜する一時貯溜部23とを有している。主貯溜
部27からの過酸化水素は電磁バルブ26を有する配管
28を経て一時貯溜部23へ供給される。また、一時貯
溜部23内の過酸化水素は電磁バルブ25を開くことに
より槽61内に投入される。さらに、一時貯溜部23内
には、過酸化水素の上記1回分投入量に対応する高さ位
置に液面センサ24が配置されている。また、符号22
は、槽61内にコイルWが存在するか否かを検出するた
めのコイル検出センサである。そして、コイル検出セン
サ22、液面センサ24、バルブ25、バルブ26およ
びタイマー39等が、過酸化水素供給機構15の作動シ
ーケンスを司る制御部30(マイクロプロセッサ又はハ
ードウェア回路で構成される)に接続されている。
【0077】以下、上記過酸化水素供給機構15の作動
を説明する。図6(a)は、コイルWが酸洗液21中で
酸洗される状態を示している。そして、この浸漬時間を
利用して一時貯溜部23に過酸化水素を満たす。制御部
30(図5)は電磁バルブ26を開とし、電磁バルブ2
5を閉とする。そして、過酸化水素の液面が液面センサ
24に検出されたら電磁バルブ26を閉じ、コイルWの
酸洗が終了するまで待機する。図8は被処理材(コイル
W)の投入/引上げを繰り返したときの、酸洗液21中
の過酸化水素濃度の時間的変化を模式的に示したもので
ある。被処理材を投入すると、酸洗の進行により液中の
過酸化水素が消費され、濃度は減少する。
【0078】タイマー39(図5)が計測するコイルW
の浸漬時間がタイムアップすると、図6(b)に示すよ
うにコイルWは引き上げられる。しかしながら、酸洗液
21中の過酸化水素は、引き上げ後も前述の自己分解を
起こすため、そのまま放置すれば図8に破線で示すよう
に、濃度はさらに減少することとなる。そこで、図6
(c)に示すように、コイルWが引き上げられてコイル
検出センサ22(図5)が非検出状態になると制御部3
0(図5)は電磁バルブ25を開き、一時貯溜部23内
の過酸化水素を全て槽61内に投入する。これにより、
図8に示すように酸洗液21中の過酸化水素濃度は再び
上昇する。そして、過酸化水素の投入が終了すれば、電
磁バルブ25が閉じられるとともに、図6(d)に示す
ように、次のコイルWが酸洗液21中に浸漬され、以下
同様の処理が繰り返される。
【0079】これにより、コイルWの投入時において硫
酸−過酸化水素系酸洗液21中の過酸化水素濃度を確実
に前述の濃度範囲(上限をCU、下限をCLとする)に調
整することができるようになり、線材の表面清浄化、す
なわちスマット層等の除去を確実に行なうことができ
る。また、コイルWの1バッチ(単位)の処理により消
耗した分だけ次のコイルWの処理時に過酸化水素を補充
すればよいから、過酸化水素の無駄が抑さえられて効率
的である。なお、槽61へのコイルの浸漬時間tは、そ
の浸漬期間中において過酸化水素濃度が上記CU〜CLに
維持されるように設定することが望ましい。この場合、
槽61内の酸洗液21の絶対量が少なければ浸漬時間t
は短くなり、逆に多ければtは長くなる。従って、線材
表面を清浄化するのに必要十分な浸漬時間tが確保でき
るよう、槽61内の酸洗液21の量を調整することが望
ましいといえる。
【0080】なお、上記説明した例では仕上脱スマット
処理において、1バッチの酸洗処理が終了する毎に、槽
61内の酸洗液21に対し断続的に過酸化水素を供給し
ていたが、過酸化水素濃度(あるいは該濃度を反映した
情報:例えば酸洗液の自然電位)をモニタしながら、こ
れが所定の範囲内に維持されるよう連続的に過酸化水素
を供給するようにしてもよい。図7は、その場合の過酸
化水素供給機構15の構成例を示している。槽61内の
酸洗液21は、槽61と連通する循環管路31とこれに
設けられたポンプ32により循環させられている。ま
た、過酸化水素は貯溜部27から比例制御弁等の流量可
変バルブ125を介して槽61内に供給される。一方、
その循環管路31内の酸洗液21の自然電位が、該酸洗
液中に浸漬される鉄系電極(ただし、腐食等を防止する
ためにステンレス鋼製等のものを用いる)及び標準電極
と、それらの電極間のガルバニ起電力を測定するポテン
ショメータ等(いずれも図示せず)を含んで構成された
電位測定部33により測定される。制御部30はその自
然電位の測定結果を受け、酸洗液21の自然電位が所定
の範囲内のものとなるように流量可変バルブ125の開
き量を制御し、過酸化水素の供給量を調整する。
【0081】図1に戻り、仕上脱スマット処理が終了し
たコイルWはシャワー槽62で水洗され、さらに中和槽
60で中和された後、図示しない乾燥装置により乾燥さ
れて処理が終了する。なお、上記過酸化水素供給機構1
5は、仕上酸洗処理に使用する弗酸−硫酸系酸洗液にお
いて過酸化水素を含有させる場合にも、その仕上酸洗槽
56(図1)に同様に設けることができる。
【0082】
【実施例】(実施例1)所定の圧延装置により熱間圧延
した後、大気中にて温度1000℃で熱処理したオース
テナイト系ステンレス鋼線材(SUS304、線径5.
5mm)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。この
コイルWを、図1のラインにて酸洗処理した。なお、各
処理の条件は以下の通りである。 前酸洗処理(1) 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:300秒 前酸洗処理(2) 酸洗液:弗酸−硝酸水溶液(表1の各種組成を採用)。 ソルト処理 溶融塩:水酸化ナトリウム60重量%、残部硝酸ナトリ
ウム 浴温:450℃ 浸漬時間:350秒 補助酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:180秒 仕上酸洗処理 酸洗液:弗酸−硫酸水溶液(弗酸3重量%、硫酸7重量
%)。ただしFe3+イオン及びFe2+イオンを、Fe2
(SO43及びFeSO4の形で配合し、チオシアン酸
カリウム比色滴定法により各イオンの含有量M(III),
M(II)を同定した。ここで、M(III)+M(II)=4重量
%、M(III)/(M(III)+M(II))=0.5である。浸
漬時間:300秒
【0083】こうして酸洗処理が終了後、線材Wを苛性
ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・乾燥してそ
の表面のスケール層の除去状態を評価した。なお、評価
は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮影し、その
脱スケール領域の面積率を画像処理により求め、面積率
がほぼ100%に近いものを優(◎)、90%以上のも
のを良(○)、50〜90%のものを可(△)、50%
未満のものを不可(×)として行った。以上の結果を表
1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】すなわち、前酸洗処理(2)にて、弗酸を
0.3重量%以上と、硝酸を1.0重量%以上とを含有
し、さらに弗酸と硝酸との合計含有量が3重量%以上で
ある弗酸−硝酸系前酸洗液を使用したものは、良好な脱
スケール状態が得られていることがわかる。
【0086】次いで、脱スケールの総合評価にて良好な
結果が得られたものについては、下記の条件にて脱スマ
ット処理を行った。 脱スマット処理 酸洗液:弗酸−硝酸水溶液(弗酸濃度1.5重量%、硝
酸濃度3重量%)。その結果、いずれも良好な脱スマッ
ト結果が得られた。
【0087】(実施例2)所定の圧延装置により熱間圧
延した後、窒素雰囲気中にて温度850℃で熱処理した
フェライト系ステンレス鋼線材(SUS430、線径
5.5mm)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。
このコイルWを、図1のラインにて酸洗処理した。な
お、各処理の条件は以下の通りである。 前酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:300秒 前酸洗処理(2) 酸洗液:弗酸−硝酸水溶液(表2の各種組成を採用)。 ソルト処理 溶融塩:水酸化ナトリウム60重量%、残部硝酸ナトリ
ウム 浴温:450℃ 浸漬時間:350秒 補助酸洗処理 酸洗液:10重量%硫酸水溶液 浸漬時間:180秒 仕上酸洗処理 酸洗液:弗酸−硫酸水溶液(弗酸2.5重量%、硫酸5
重量%)。ただしFe3+イオン及びFe2+イオンを、F
2(SO43及びFeSO4の形で配合し、チオシアン
酸カリウム比色滴定法により各イオンの含有量M(II
I),M(II)を同定した。ここで、M(III)+M(II)=4
重量%、M(III)/(M(III)+M(II))=0.4であ
る。 浸漬時間:250秒
【0088】こうして酸洗処理が終了後、線材Wを苛性
ソーダ水溶液で中和し、さらにこれを洗浄・乾燥してそ
の表面のスケール層の除去状態を評価した。なお、評価
は、線材表面の拡大写真(倍率10倍)を撮影し、その
脱スケール領域の面積率を画像処理により求め、面積率
がほぼ100%に近いものを優(◎)、90%以上のも
のを良(○)、50〜90%のものを可(△)、50%
未満のものを不可(×)として行った。以上の結果を表
2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】すなわち、前酸洗処理(2)にて、弗酸を
0.3重量%以上と、硝酸を1.0重量%以上とを含有
し、さらに弗酸と硝酸との合計含有量が3重量%以上で
ある弗酸−硝酸系前酸洗液を使用したものは、良好な脱
スケール状態が得られていることがわかる。
【0091】次いで、脱スケールの総合評価にて良好な
結果が得られたものについては、下記の条件にて脱スマ
ット処理を行った。 脱スマット処理 酸洗液:弗酸−硝酸水溶液(弗酸濃度1.5重量%、硝
酸濃度3重量%)。 その結果、いずれも良好な脱スマット結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステンレス鋼の脱スケール方法を実施
するラインの一例を示す概念図。
【図2】その線材のコイルの搬送機構の一例を示す模式
図。
【図3】ステンレス鋼線材の脱スマット過程を示す推定
模式図。
【図4】図3に続く模式図。
【図5】仕上脱スマット工程で使用する過酸化水素供給
機構の一例を示す概念図。
【図6】図5の作用説明図。
【図7】過酸化水素供給機構の変形例を示す概念図。
【図8】被処理部材をバッチ酸洗処理するときの、硫酸
−過酸化水素系酸洗液中の過酸化水素濃度変化の様子を
示す説明図。
【図9】弗酸−硫酸系後酸洗液中におけるステンレス鋼
材のアノード分極曲線の模式図。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にスケール層が形成されたステンレ
    ス鋼被処理部材を前酸洗液中に浸漬して、前記スケール
    層中の可溶性スケール成分を除去する前酸洗処理工程
    と、 その前酸洗処理工程にて除去されなかった不溶性のスケ
    ール成分を可溶性スケール成分に改質するために、該被
    処理部材をアルカリ金属塩系の溶融塩浴中にて処理する
    ソルト処理工程とを含み、 前記前酸洗液として、弗酸を0.3重量%以上と、硝酸
    を1.0重量%以上とを含有し、さらに弗酸と硝酸との
    合計含有量が3重量%以上である弗酸−硝酸系前酸洗液
    が使用されることを特徴とするステンレス鋼の脱スケー
    ル方法。
  2. 【請求項2】 前記弗酸−硝酸系前酸洗液は、弗酸の含
    有量をWHF、硝酸の含有量をWHNO3として、WHF/WHN
    O3が0.25〜10の範囲で調整される請求項1記載の
    ステンレス鋼の脱スケール方法。
  3. 【請求項3】 前記前酸洗処理工程において前記ステン
    レス鋼被処理部材は、前記弗酸−硝酸系前酸洗液により
    処理するのに先立って、酸成分の主体が硫酸である硫酸
    系前酸洗液にて処理される請求項1又は2に記載のステ
    ンレス鋼の脱スケール方法。
  4. 【請求項4】 前記硫酸系前酸洗液は、硫酸を2重量%
    以上含有するものが使用される請求項3記載のステンレ
    ス鋼の脱スケール方法。
  5. 【請求項5】 前記ステンレス鋼被処理部材は、金属成
    分の主体が鉄である鉄系酸化物と、金属成分の主体が鉄
    とクロムである鉄−クロム系複合酸化物と、金属成分の
    主体がクロムであるクロム系酸化物とを含有するスケー
    ル層が表面に形成されたステンレス鋼線材であり、前記
    前酸洗処理工程において、前記スケール層中の前記鉄系
    酸化物と前記鉄−クロム系複合酸化物とが除去又は減少
    させられる請求項1ないし4のいずれかに記載のステン
    レス鋼の脱スケール方法。
  6. 【請求項6】 前記スケール層中には、前記鉄−クロム
    系複合酸化物及び/又は前記クロム系酸化物を主体とす
    るクロム濃化層が10μm以上の厚さで形成されている
    請求項1ないし5のいずれかに記載のステンレス鋼の脱
    スケール方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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